JPWO2009107575A1 - 複合構造物の非破壊検査装置及び非破壊検査方法 - Google Patents

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Abstract

宇宙線ミュオンを利用して、複合構造物の表層内部を検査する非破壊検査装置及び非破壊検査方法を提供する。進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオン12を利用して、複合構造物11の表層内部を検査する非破壊検査装置であって、前記複合構造物11の内部に静止した前記宇宙線ミュオン12の消滅に伴って前記宇宙線ミュオン12の照射方向とは逆方向に特性の時定数を持って反射放出される陽電子・電子量を検出する陽電子・電子量検出手段13と、前記陽電子・電子量検出手段13おいて検出された陽電子・電子量から前記複合構造物11の前記表層内部に存在する前記表層の第1の物質11−1とは異なる第2の物質11−2の状態をラジオグラフィとしてデータ処理し出力するラジオグラフィデータ処理手段14、15、16、の各手段を備える。

Description

本発明は、例えば鉄筋コンクリート建造物のような複合構造物の内部の状態を当該構造物に何らの悪影響を与えることなく検査することが可能な非破壊検査装置及びその非破壊検査方法に関する。
例えば、建築物、高架道路橋脚又はダム等の鉄筋コンクリート等の複合構造物内の内部の状態(鉄筋の不織状態等)、又は高炉内の鉄成分若しくは温度分布等の表層内部の状態を検査対象に物理的又は化学的な悪影響を与えることなく検査又は検出する非破壊検査方法としては、従来から、超音波法、赤外線サーモグラフィー法、レーダー法及びX線法等が広く知られている。しかしながら、これらの手法は何れも、検査対象が著しく限定されると共に内部状態の解像度と検出できる表層内部の深度に限界があった。
このため、本願の発明者等は、粒子加速器を使用してミュオン粒子を人為的に発生させ、当該粒子加速器により発生させたミュオン粒子を所定の立体角で捕獲した上で磁場閉じ込めを行いつつ検査対象となる鉄筋コンクリートまで輸送して照射し、この照射した正ミュオンの鉄筋部におけるエネルギーの損失に伴って放出される陽電子の量を検出することによって、鉄筋コンクリート内部の状態を検出するようにした非破壊検査方法及び装置を提案していた(例えば、特許文献1を参照)。
特開2008−14816号公報
しかし、特許文献1に記載の発明は、大型で高価な粒子加速器を使用してミュオン粒子を発生させ且つこのように人為的に発生させた正ミュオン粒子を所定の立体角で捕獲した上で磁場閉じ込めを行いつつ検査対象となる鉄筋コンクリートまで輸送して照射するものであり、現実的な実施可能性の点において大きな問題があった。また、特許文献1に記載の陽電子検出手段(プラスチックシンチレータ)からの出力信号の具体的なデータ処理の詳細が示されておらず、ミュオンの消滅に伴って発生する選別された陽電子・電子量の検出信号を現実的に処理し所望のラジオグラフィ情報を作成することは当該従来技術においては困難であった。さらに、特許文献1に記載の発明では、正ミュオンのみをミュオン粒子として扱っており、負ミュオンからの元素選別の信号を取ることができず、このため、複合構造物内における鉄棒の形状やサイズ等の具体的なラジオグラフィのための詳細で精緻なデータを取得することは現実的には困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオンを利用して、複合構造物の表層内部を検査する非破壊検査装置であって、前記複合構造物の内部に静止した前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って前記宇宙線ミュオンの照射方向とは逆方向に特性の時定数を持って反射放出される陽電子・電子量を検出する陽電子・電子量検出手段と、前記陽電子・電子量検出手段おいて検出された陽電子・電子量から、前記複合構造物の前記表層内部に存在する前記表層の第1の物質とは異なる第2の物質の状態をラジオグラフィとしてデータ処理し出力するラジオグラフィデータ処理手段と、の各手段を備えたことを特徴とする複合構造物の非破壊検査装置を提供するものである。
ここで、前記宇宙線ミュオンは正ミュオン及び負ミュオンを含み、前記正ミュオンは、進行方向に対して概ね30%スピン偏極しているものである。
そして、前記陽電子・電子量検出手段は、前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って生じる50MeVまでの崩壊電子・陽電子の強度を検出するようにしている。このため、前記陽電子・電子量検出手段は、前記宇宙線ミュオンの照射側に配置され前記ミュオンの位置と経路を検出するための第1の検出プレートと、前記第1の検出プレートと前記複合構造物の間に配置され、前記複合構造物内で前記ミュオンの消滅に伴って発生する陽電子・電子量を検出する第2の検出プレートと、から構成される。
そして、前記第1の検出プレートは、その位置分解能が±2.50cmであり、その有感面積は1m×1mであって、前記第2の検出プレートは、その位置分解能は±1.25cmであり、その有感面積は0.5m×0.5mである、ことを特徴とする。
また、前記ラジオグラフィデータ処理手段は、前記陽電子・電子量検出手段からの入力信号を所定の基準クロックでサンプリングし、当該サンプリングした入力信号からノイズ成分を除去してミュオンの検出信号のみを選別するディスクリミネータ手段と、前記ディスクリミネータ手段からの出力信号を処理してラジオグラフィ情報を作成するデータ処理手段と、から構成される。
ところで、前記複合構造物は、鉄筋コンクリートであって、前記第1の物質はコンクリートであり、前記第2の物質は鉄棒又は鉄骨であり、当該鉄筋コンクリートにおいて、前記鉄棒又は鉄筋は、前記コンクリートの表層から10乃至20cmの位置にあることを特徴とする。
本発明は、さらに、進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオンを利用して、複合構造物の表層内部を検査する非破壊検査方法であって、(a)前記複合構造物の内部に静止した前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って前記ミュオンの照射方向とは逆方向に特性の時定数を持って反射放出される陽電子・電子量を所定の基準クロックでサンプリングするステップと、(b)当該サンプリングした信号からノイズ成分を除去するステップと、(c)前記ノイズ成分が除去された信号からミュオンの検出信号を選別するステップと、(d)前記選別されたミュオンの検出信号を処理してラジオグラフィ情報を作成するステップと、の各ステップを有し、前記複合構造物の前記表層内部に存在する前記表層の第1の物質とは異なる第2の物質の状態を示すラジオグラフィ情報を得ることにより前記複合構造物の内部を検査する非破壊検査方法を提供するものである。
ここで、前記宇宙線ミュオンは、正ミュオン及び負ミュオンを含み、その進行方向に対して概ね30%スピン偏極しているものであることを特徴とする。
これにより、本発明に係る非破壊検査装置及びその方法においては、宇宙線ミュオンを使用するので如何なる場所の検査対象物においても実施することが可能である。また、大型で高価な粒子加速器と当該粒子加速器により発生させたミュオン粒子を所定の立体角で捕獲した上で磁場閉じ込めを行いつつ検査対象物まで輸送する磁気封じ込め輸送手段を必要としないので低コストで複合構造物の非破壊検査の実施を可能としたのである。
さらに、本発明においては、陽電子・電子量検出手段が検出した正ミュオン及び負ミュオンを含むミュオンの消滅に伴って発生する陽電子・電子量の全てを正確に検出し得たので、複合構造物内における鉄棒の形状やサイズ等の具体的なラジオグラフィ表示のための詳細で精緻なデータの取得を可能にしたのである。特に、鉄筋コンクリートの全体の厚さが1m以上あり、そのかぶり厚が10乃至20cmであるような鉄筋コンクリート建造物の表層内部に位置する鉄棒の形状やサイズ等のような腐食等の具体的な情報を、極めて精緻に短時間で測定することを可能にしたのである。
本発明の複合構造部の非破壊検査装置の全体構成の概要を示す。 本発明において使用するμSR法の原理図を示すものである。ここで、図2左図は、パイオン崩壊でスピン偏極したミュオンが生まれる様子を示し、図2右図は、スピン偏極したミュオンから空間非対称性をもって陽電子が発生する様子を示す。 μSR測定装置の概念図(上図)と、観測されるμSR信号と微視的な磁場の対応の代表例である外部磁場零の場合(下図)を示す。 鉄筋コンクリート中に宇宙線ミュオンを止め、放出される陽電子の強度を測定してμSR法により、鉄棒の存在状態を調べる様子を示す。 負ミュオンの原子核への吸収と自由崩壊の確率が原子核の電荷Zで変化する様子を示す。 宇宙線ミュオンのつくる反射信号を示し、コンクリートに比べて鉄の止まった場合に、陽電子と電子の強度の総和において17%の減少が起こることを示す。 天頂角70度の宇宙線ミュオンの強度を示すグラフである。 本発明を構成する陽電子・電子量検出装置を説明するものである。 ROM回路(図1の符合15)のブロック(上図)とユニット全体写真(下図)を示す。 宇宙線ミュオンが、炭素(火山体、岩石等の地殻等)と透過する様子を示すものである。 宇宙線ミュオン透過型ラジオグラフィ測定装置とそれを用いて火山体山頂の透過像を観測している様子及びその測定結果を示すものである。 稼働中の高炉の実験における測定の状況、F/B比の生データ、得られた密度分布を示す。
符号の説明
11:複合構造物(鉄筋コンクリート)
12:宇宙線ミュオン
13:陽電子・電子量検出装置
14:ディスクリミネータ
15:ディスクリミネータ14からの出力信号を処理するROM回路
16:データ処理装置(パーソナルコンピュータ)
以下、本発明に係る宇宙線ミュオンを使用する複合構造物の非破壊検査装置及び検査方法の詳細について説明する。
図1は、本発明の複合構造部の非破壊検査装置の全体構成の概要を示すものである。本発明の非破壊検査装置において特に特徴的なことは、進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオン12を利用する点にある。そして、本発明は、この宇宙線ミュオンを使用して複合構造物の表層内部を検査するのである。
図1において、本非破壊検査の対象となる複合構造物11は、表層部のコンクリート11−1と内部の鉄棒(又は鉄骨)11−2とから構成された鉄筋コンクリート11である。
図1に示すように、本発明の非破壊検査装置は、鉄筋コンクリートの内部の鉄棒又は鉄骨11−2に静止した宇宙線ミュオンの消滅に伴って宇宙線ミュオンの照射方向とは逆方向に反射放出される陽電子・電子量を検出する陽電子・電子量検出手段13と、この陽電子・電子量検出手段13おいて検出された陽電子・電子量から、複合構造物である鉄筋コンクリート11の表層であるコンクリート(第1の物質)11−1の内部に存在する鉄棒又は鉄骨11−2(第2の物質)の例えば腐食の状態等をラジオグラフィとしてデータ処理し出力するラジオグラフィデータ処理手段14、15、16と、の各手段により構成されている。
ここで、宇宙線ミュオン12は、本願発明の場合は、正ミュオン及び負ミュオンを含み、前記正ミュオンは、進行方向に対して概ね30%スピン偏極しているものである。
そして、陽電子・電子量検出手段13(13−1及び13−2)は、宇宙線ミュオン12の消滅に伴って生じる50MeVまでの崩壊電子・陽電子の強度を検出するようにしている。このため、陽電子・電子量検出手段13は、宇宙線ミュオン12の照射側に配置され測定対象の複合構造物11に照射させる宇宙線ミュオンの位置と経路を検出するための第1の検出プレート13−1と、この第1の検出プレート13−1と複合構造物である鉄筋コンクリート11の間に配置され、表層のコンクリート11−1の内部に存在する鉄棒又は鉄骨11−2において宇宙線ミュオン12の消滅に伴って発生する陽電子量及び電子量(本願では、「陽電子・電子量」と記載する)を検出する第2の検出プレート13−2と、から構成される。
ここで、第1の検出プレート13−1は、その一例として、その位置分解能が±2.50cmであり、その有感面積は1m×1mである。また、第2の検出プレート13−2は、その位置分解能は±1.25cmであり、その有感面積は0.5m×0.5mである。
また、前記ラジオグラフィデータ処理手段14、15、16は、前記陽電子・電子量検出手段13からの入力信号を所定の基準クロックでサンプリングされ、当該サンプリングされた入力信号からノイズ成分を除去してミュオンの検出信号のみを選別するディスクリミネータ14(14−1、14−2)と、このディスクリミネータ14(14−1、14−2)からの出力信号を処理するROM回路(Read-Out Module Circuit)15と、このROM回路15と例えばイーサネット等の屋内通信回線(LAN)で接続されたデータ処理手段(例えば、パーソナルコンピュータ)16と、から構成される。
ここで、本発明において、宇宙線ミュオン12を利用する非破壊検査の対象となる複合構造物の鉄筋コンクリート11においては、鉄棒又は鉄筋11−2は、コンクリート11−1の表層から10乃至20cmの範囲であっても充分に測定可能である。
次に、上記した本発明の非破壊検査装置を構成する上記した各構成について、以下詳しく説明する。
A.ミュオンの説明
最初に、本発明において使用するミュオン(以下、適宜「μ」という)の概要について説明する。
ミュオンは、質量が陽子質量の約1/9倍、電子質量の約207倍の素粒子であり、正、負の電荷をもつμ+、μ-の2つの種類がある。μ+と真空中のμ-は、2.2μsの寿命で死滅するが、その死滅の際に、50メガ電子ボルト(MeV)のエネルギーの陽電子e+、電子e-とニュートリノを発生する。ミュオンは宇宙線として地表に飛来するものの、大強度のミュオンを得るには、素粒子加速器を用いて高エネルギーの陽子や電子を得て、原子核との反応でパイ中間子(湯川中間子、π+、π-)を発生させ、それらの崩壊によって大量のμ+、μ-を発生させることが出来る。物質中でミュオンは主として電磁相互作用のみが働く。この素粒子ミュオンの性質を利用して、種々の応用実用科学分野への適用が可能であるが、本発明においては、そのような粒子加速器により人為的に発生させたミュオンではなく宇宙線ミュオンを利用することを特徴とする。
宇宙線ミュオンは、天頂角を決めると、どの場所でも何時でもほぼ一定のエネルギースペクトルを持つ。従って、未知の“厚さ”(密度×長さ)を持つ物体を透過する際の強度減衰を測ることで、“厚さ”を知ることが出来る。この強度減衰測定を、本発明においては、2基以上の位置敏感型検出器(陽電子・電子量検出装置13:第1の検出プレート13−1及び第2の検出プレート13−2)を用いて、検査対象構造物を通るミュオンの経路について次々と求めることにより、物体内部の“厚さ”の空間分布のマッピングを得ることができる。この際、ミュオンの質量が電子より200倍重く電磁相互作用のみが働く特徴が効いていて、高いエネルギーであることから、例えば、岩石では数kmまで、鉄では100mまでは通過することから、ラジオグラフィの対象とすることができる。このような高エネルギーのミュオンが環境放射線である宇宙線として得られることから、本願発明ではこれを利用している。
B.反射型宇宙線ミュオンラジオグラフィの原理
透過型ラジオグラフィでは、宇宙線の飛来する方向に対して対象物の背後に検出器を配置することが必要になる。既存の大型建造物や高架道橋脚などにはそのような配置が取れない場合がある。その際には反射型の信号を得て内部探索をすることのみが許される。このため、本発明に係る非破壊検査においては、水平宇宙線ミュオンによる反射型信号として利用しているのである。
C.ミュエスアール(μSR)法による陽電子・電子量の検出
μSR法とは、ミュオンが持っている磁気モーメントを微視的な磁針として利用して物質中の磁場を測定する方法をいう。宇宙線ミュオンの60%は正ミュオンで進行方向に30%程スピン偏極している。これによって、ミュエスアール信号により、対象物深部の組成分析が可能になる。但し、本発明においては、正ミュオンのみならず負ミュオンからの元素選別の信号を取るようにしたので、複合構造物内における鉄棒の形状やサイズ等の具体的なラジオグラフィのための詳細で精緻なデータを取得すること可能にしたのである。
進行方向にスピンを揃えて(偏極して)得られるμ+が死滅して生まれる50MeVまでのエネルギーを持つ陽電子は、揃ったスピンの方向に放出される。そして、その陽電子をとらえることで物質のもつ微視的な磁気的性質をプローブすることができる。このようにして実現されるミュエスアール法と呼ばれる手法を適用することによって、微弱な静的及び動的な磁場の高感度観測が可能となる。
図2は、上記したμSR法の原理図を示すものである。ここで、図2左図は、パイオン崩壊でスピン偏極したミュオンが生まれる様子を示し、図2右図は、スピン偏極したミュオンから空間非対称性をもって陽電子が発生する様子を示す。
また、図3は、μSR測定装置の概念図(上図)と、観測されるμSR信号と微視的な磁場の対応の代表例である外部磁場零の場合(下図)をそれぞれ示す。このμSR法を用いることにより、コンクリートの中の鉄棒又は鉄筋の存在状態を簡単に鮮明にとらえることが出来るのである。
図4は、鉄筋コンクリート中に宇宙線ミュオンを止め、放出される陽電子の強度を測定してμSR法により、鉄棒の存在状態を調べる様子を示すものである。コンクリートに止まったミュオンのスピンは磁性不純物などによる弱い緩和現象を持ち、図3の右上図に示すようになっているが、鉄に止まった場合は、磁気的内部場により、急速な50MHz程のスピン回転を起こし、測定系の時間分解能を20ナノ秒以上に甘くすると回転が見えなくなり、検出される陽電子強度が、3分の1になる。従って、例えば、図4に示す様に、測定器を配置することにより、ミュオンビームが鉄に止まった時に、陽電子強度の減少が起きることとなる。このため、陽電子強度をビームの位置の関数で測定することにより、鉄筋コンクリート中の鉄棒の配置及び太さを明確に短時間で測定することが出来る。
D.ミュオン核吸収電子信号
ところで、本発明においては正ミュオンのみならず負ミュオンの崩壊をも測定の対象としている。宇宙線ミュオンの40%を占める負ミュオンを測定の対象物とし、次の様な物質特有の反射型信号を得ることができる。物質中に止まった負ミュオンは減速した後、物質の原子核の周りをまわる小さな原子となり原子遷移の後、原子の基底状態にいたる。基底状態では、原子核の電荷Zに応じて原子核との重なりが増大し、負ミュオンは原子核に吸収される。その結果、ミュオンの自由崩壊の確率が電荷Zと共に変化する。コンクリートでは50%であるが、鉄では10%となる。従ってミュオンが鉄に止まった際に反射型信号として表われる50MeVまでの崩壊電子・陽電子の強度の減衰が起こるのである。
図5は、負ミュオンの原子核への吸収と自由崩壊の確率が原子核の電荷Zで変化する様子を示すものである。
E.宇宙線ミュオンの反射型信号の説明
以上詳しく述べたように、水平方向に進行する宇宙線ミュオンを対象物とし、反射型信号として得られる高エネルギーの陽電子・電子量を検出することにより例えば、図6に示すように、ミュオンがコンクリートに止まった場合に比べ、鉄に止まった場合には次の様な変化が起こることが判る。
一般に静止したミュオンからの崩壊陽電子・電子の強度Ne(T)は次のように表せる。すなわち、
(T)=αNμ-T/τμ(1+AμμcosωT)ΔΩ
ここでNμ;宇宙線ミュオン強度、α;正負のミュオン強度比、τμ;ミュオンの寿命、Pμ;ミュオンの偏極度、Aμ;崩壊陽電子・電子の非対称度、ω;原子内部磁場によるミュオンスピン回転角速度、ΔΩ;検出器の立体角を、それぞれ示す。そして、上記した崩壊陽電子・電子の強度Ne(T)を時間積分して、コンクリートと鉄について正負ミュオンからの反射型信号の和を取る。
e/ΔΩ(コンクリート)=0.6×2.2×(1+0.3×0.3×1)+0.4×0.9×1=1.44+0.30=1.74、
e/ΔΩ(鉄)=0.6×2.2×(1+0.3×0.3×1/3)+0.4×0.2×1=1.36+0.08=1.44
上記した計算処理を、図1に示すラジオグラフィデータ処理手段14、15、16が行うのである。
図6は、宇宙線ミュオンのつくる反射信号を示し、コンクリートに比べて鉄の止まった場合に、陽電子と電子の強度の総和において17%の減少が起こることを示すものである。この17%の変化を、複数の位置敏感検出器を用いてミュオンの止まる位置を同定することにより、鉄筋コンクリートの反射型ラジオグラフィが実現する。この際、信号として得られるミュオン崩壊電子・陽電子のエネルギーが50MeVであるためにコンクリートの厚みにして10−20cmまでの鉄筋コンクリートを対象にすることができ、かぶり圧10cm以上を対象にできる。
尚、反射型信号としては、この他に負ミュオン厚子X線信号や負ミュオン核吸収中性子などを利用することができるが、効率の悪さと信号の経路が決めにくいことに加えて正ミュオンの利用が無いこととのため、実用化には困難を伴うが、宇宙線ミュオンの反射型信号の検出には、一つ一つのミュオンの検出とそれに付随する陽電子・電子の検出が必要で、時間相関のとれない乾板法で行うことは不可能である。このため、本発明の係る手法が極めて有効となるのである。
F.陽電子・電子量検出装置13の説明
本願発明において使用される陽電子・電子量検出装置13は、その第1の検出プレート13−1は、全体が1m四方で厚みが50cmの長方体の箱の中に全ての検出器系1台分が納まる形態で、それを複数組み合わせて大型建造物などの対象物に密着させて測定し、かぶり厚10−20cmの鉄筋コンクリートの鉄骨の状態を解像度±5mm、時間6ヶ月で測定する。データは、対象物の実表面座標の上に、反射型信号の強度が表示され、強度の低い部分が鉄部に対応し、その部分の構造で、鉄筋の健全性を評価する。全てのデータは、10nsの精度の絶対時間と10mmの精度の空間座標を付加して記録される。測定されたデータの内で、同類と推察される空間のデータをまとめ加算積算するなどの時間空間再構成により、長時間の測定の健全性をモニターすることが出来る。
ここで、必要な測定時間について述べる。天頂角70度の宇宙線ミュオンの強度は、図7に示すように、0.001/(sTr)/(cm)/sであることが知られている。この内2%が10cm厚のコンクリートに止まる。従って、前方宇宙線ミュオンカウンターで定義される入射ミュオンの(最大入射面積、かぶり厚10cm位置での拡がり)に応じミュオン強度は次のようになる:10/日(1m×1m、5cm×5cm)、0.1/日(10cm×10cm、5mm×10mm)。
ミュオン崩壊陽電子・電子の立体角が0.12、0.0012と変ずるため、反射信号として得られる崩壊陽電子・電子の検出量は、かぶり厚10cmの位置での空間分解能に応じて次のようになる:0.12/日(5cm×5cm、5cm×5cm)、0.1/日(10cm×10cm、5mm×10mm)。これに応じて、ミュオン崩壊陽電子・電子の立体角が0.12、0.0012と変ずるため、反射信号検出は、空間分解能に応じて次のようになる:0.12/日(5cm×5cm)、0.00012/日(5mm×5mm)である。上述したように、コンクリートに止まった場合と鉄に止まった場合とで、陽電子・電子量の強度は17%の差がある。以上から、提案している宇宙線ミュオン反射型ラジオグラフィの方法でコンクリート内の鉄を識別するには、cmの分解能で3ヶ月、mmの分解能で10年以上かかることになる。
以上の考察から、本発明における反射型宇宙線ミュオンラジオグラフィの方法の実用化は、測定時間上の限界があると誤解されるかもしれない。つまり、装置を拡大しても対象領域が拡大するため、同じ空間分解能を得るためには、同じ長時間測定が必要になる。しかし、この限界を乗り越える手法が、後述する宇宙線ミュオンラジオグラフィ用高速電子回路ROMによる時間空間再構成法となる。宇宙線ミュオンの通過位置と方向を位置敏感検出器の精度で、事象の絶対時間を10nsの精度で決定し記録しておくことが出来る。よって、データ取得後に、適切な時間域と空間域とで纏め上げ、データの精度を有効的に上げ、目標とする6ヶ月でmm台の精度を得ることが出来るのである。
G.検出器系の説明
図8は、本願発明における陽電子・電子量検出装置13の原理を説明するものである。宇宙線ミュオンの位置と経路を知るための、入射側Fカウンター(第1の検出プレート)が、厚さ3cm位置分解能±2.5cmで有感面積1m×1mを有し、対象物側Bカウンター(第2の検出プレート)が、厚さ1.5cm、±1.25cmで0.5m×0.5mとし、FとBとの間隔を0.5mと取ることにより、天頂角45度から90度の水平に近い宇宙線を利用することになる。反射型電子・陽電子信号検出は対象物側カウンターBが兼ねることとし、ROM回路15を有効に利用するために、厚さ0.5cm、0.5m×0.5mのトリガーカウンターTを対象物の直前に配するようにすると良い。これにより、直線性の良いミュオンを選び、対象物にカウンターを密接させ、かつ取得データを内挿補間などして、対象鉄筋コンクリートのかぶり厚10cm以上に置かれた鉄骨を10mm以上の精度でイメージング出来るのである。
図8において、宇宙線の経路と位置をきめる入射側Fカウンターが、厚さ3センチメートル(cm)位置分解能±2.5cmで有感面積1メートル(m)×1m有し、対象物側Bカウンターが、厚さ1.5cm、±1.25cmで有感面積0.5m×0.5m、FとBとの間隔を0.5mとする。反射型電子・陽電子信号検出は対象物側カウンターBがかねることとし、ROM回路系を有効に利用するために、厚さ0.5cm、0.5m×0.5mのトリガーカウンターTを対象物の直前に配する。対象物にカウンターを密接させ、取得データを内挿補間などして、対象鉄筋コンクリートのかぶり厚10cmに置かれた鉄骨を10mm以上の精度でイメージングできる。
H.時間空間再構成法とROM回路の説明
使用するミュオンラジオグラフィティ実験の為に開発した万能回路系データ読取モジュール(Read-Out Module、ROM)は、図11に示すように、最大40×40(x軸×y軸)個の交差させたシンチレータ(フォトマル)出力を処理しミュオンが通過した点を検出することができ、この40×40個のシンチレータを2組使用してミュオンの飛跡を決定する。
図9は、読み出しボードのブロック(上図)と、ユニット全体写真(下図)を示す。x、y軸のフォトマル出力はディスクリミネータに接続され、ディスクリミネータの出力信号は時刻基準クロック(100MHz)でサンプリングされる。次にサンプリングされたフォトマル入力から通過点を決定する。通過点は、同時刻にx、y軸シンチレータ出力がそれぞれ一つだけ有効な時としてシャワー成分を除き、宇宙線ミュオンのみを選別している。ミュオン通過点と判定された場合、検出した結果はイーサネットを介してPCに転送され、PCに転送されるデータは以下3つの項Hで構成されている。ここで、時刻は、絶対時間が10nsの精度で記され、x軸シンチレータ番号及びy軸シンチレータ番号を示す。
本発明の検出システムにおいては、上記のROMボードを2枚で使用することにより、検出器系で得られるデータは、軟成分宇宙線バックグラウンドが除去された宇宙線ミュオンの前方、後方カウンターでのミュオンの通過位置と絶対時間F(x1、y1、Tμ)、B(x2、y2、Tμ)を知り、宇宙線ミュオンの位置と経路と10nsの精度での飛来した時間を知るようにしている。加えて、通過し対象物に止まったミュオンが放出する50MeVまでの電子・陽電子を後方カウンターでF(x’、y’、T)を測り、(Te−Tμ)の分布を(x1、y1、x2、y2、x’、y’、)で決定される対象物内部の位置の関数で求める。時間分布が、ミュオン崩壊時定数と一致することから反射型信号であることを確認するのである。
そして、この測定法の一般性を生かして、時間・空間的にデータを再構築するのである。例えば、データの統計が不足して、鉄骨の状態の全貌を短時間に知りたい場合は、似かよった領域を(x1、y1、x2、y2、x’、y’、)の再構築により加算集積し、見かけ上精度良く見ることができる。また周期的に起こる現象については、後日時間的に纏めて解析を行うことが出来る。
以上詳しく説明したように、本発明に係る複合構造物の非破壊検査方法においては、次のような特徴を持つ。すなわち、
(a)宇宙線ミュオンは何時でも何処でも利用できる。
(b)水平近くの宇宙線を使うために、対象物をそのままにしてすぐに測定にかかれる。
(c)検査対象に対して完全に非破壊的である。すなわち検査対象の複合構造物に対して何らの物理的又は化学的な悪影響を与えない。
(d)宇宙線ミュオンと崩壊陽電子・電子の透過性から、少なくともかぶり厚で10乃至20cm程度の鉄筋を対象に出来る。
(e)長時間測定の経過のモニターが、万能読み出し回路系を用いて、時間空間再構成で可能である。
このため、本発明の非破壊検査装置及び方法は、大型建造物の健全性の検証、高架道路橋脚やダムなどの健全性の検証等が可能である。
以上詳しく説明したように、本発明は、宇宙線ミュオンの消滅時に発生する陽電子・電子量を反射型ラジオグラフィティを利用して複合構造物の非破壊検査を実現するものである。一方、宇宙線ミュオンを透過型ラジオグラフィティの利用により種々の応用が可能である。以下、本発明の理解の一助としてその具体例を述べる。
H.透過型ラジオグラフィの原理と成果
(1)透過強度減衰法の原理
レントゲン写真が、光(X線)を用いて人体の透過像をとるように、透過像を得るためには、次のことが必要である。ア)光・粒子の持つエネルギーに対する飛程(止まるまでに物質中を通過する距離)が、対象物の厚さより長いか同程度である。イ)光・粒子の検出が容易で経路が容易に同定できる。図10に示すように、一般に粒子のエネルギーを上げるにつれて、さまざまな物質における粒子の飛程は増大する。しかしながら、電子は「質量が軽いことによる光への変換」のために、陽子は「核反応の増大」のために、どんなにエネルギーを上げても、飛程を上げることができない。このような場合では、ミュオンが極めて有効となる。
図10は、宇宙線ミュオンが、炭素(火山体、岩石等の地殻等)と透過する様子を示すものである。また、図7は、宇宙線ミュオンの炭素(上)と鉄(下)に対する透過強度の厚さ依存性を示すものである。図7において、透過強度の絶対値が左に、F/B比に対応する厚さゼロの値との相対値を右に示し、種々の天頂角に対応して表示している。図示するように、密度の差に応じて同じ厚さに対する透過量が異なる。
(2)透過強度減衰法の火山・大型産業機器への応用
水平方向すれすれ(天頂角60度〜85度)の宇宙線ミュオンを用いたラジオグラフィ表示を実現するために、図11に示す検出器系を構築した。複数の位置敏感型検出器として、格子状に細分割されたプラスチックシンチレータを用いる。ここでは、透過性はよいが強度が弱い水平方方向のミュオンを利用するために、反対方向からの宇宙線ミュオンを同時にとらえ、規格化し、F(対象物側)/B(空側)比を求める方式が考案された。ミュオンに比べ数10倍近い多量の軟成分(電子、ガンマ線など)バックグラウンドのノイズ成分を除去するために、中間に置いた鉄による軟成分がつくる多発生信号を用いた。
水平に近い宇宙線ミュオンは透過性がよく、実験条件の設定が容易で対象物をそのままにして測定することが可能であり、対象とする火山体や溶鉱炉などの下にトンネルを掘る必要がない。また、複数の測定器系によるトモグラフィー観測も可能である。
図11は、宇宙線ミュオン透過型ラジオグラフィ測定装置とそれを用いて火山体浅間山の山頂の透過像を観測している様子及びその測定結果を示すものである。縦横に10cm幅で区画化され、ミュオンの通過点を識別する1m×1mの2面のプラスチックカウンター集合体がある。前後の通過点を逆に戻って対象物のどこを通ったかがわかる。途中に置かれた鉄板を使って、「多重発生エベント除去」により、軟成分バックグラウンドを除去する。
(3)火山体の内部探索への応用
浅間山山頂の北側4キロメートルの位置にある鬼押出し浅間園に測定器を置き、外からは見えない噴火口を外からみることを試みた。浅間山山頂の位置のところを狙って画像をとり、全部詰まっていたら外形と同じになるべきところに、へこみが見えてきた。噴火口を外から透かして見たことになる。約100日間のデータをとって計算機シミュレーションと比較すると、噴火口は「空」でありマグマの上昇がないことと一致するデータが得られた。
また、岩手山火山活動のメカニズムとして、岩手山頂上から10km西側にある黒倉山と姥倉山との間の約4kmにわたる東西にのびた尾根沿いで起っている“水蒸気爆発”の可能性が論じられている。2003年から2004年にかけて、測定器を火山活動が起っている黒倉山と姥倉山尾根から直角に2.7km北側で、高さが尾根から0.8km低い位置に設置した。測定結果をまとめ、山体を透過するミュオンの強度から得られる山体断面の密度長で表示し、黒倉山−姥倉山の尾根は、一様密度とすると2.5g/cm(±10%)の密度を持った山体構造であると考えることができることが判った。結果の時系列的解析で、発生した噴煙柱の高さと比較して、冬期における山体内水分の凍結が原因である可能性が指摘された。
(4)溶鉱炉の内部探索への応用
火山に用いたと同じ測定系を用いて、高炉炉底や炉壁を探索し、内部状態の探索と健全性の確認を目的として、実際の製鉄所において実験を行なった。
図12は、稼働中の高炉の実験における測定の状況、F/B比の生データ、得られた密度分布を示す。左右中心位置でのF/B比が底から上に向って変化し、鉄部とレンガ部との違いが判る。図12の左図は、宇宙線ミュオンラジオグラフィ実験の測定系配置状況を示し、図12の中図は、得られたF/B比の生データを示し、図12の右図は、高炉を見込む上下、左右の角度(mrad)で決まる高炉の各点について、宇宙線ミュオン強度のF/B比の大きさを3次元的高さと色で表示し、解析により得られた密度分布を示す。これにより、以下のことが判明した。
(a)炉底部や炉壁部のレンガ厚の測定の決定精度は、解析において高炉の円筒対象性を仮定すると、±5cm/45日となる。このことは、2ヶ月の測定で、20年といわれる高炉の寿命の推定を数ヶ月の精度で行うことが可能である。
(b)鉄密度の決定は、50cm×50cmの区画断面について二ヶ月の測定で±0.2g/cmであることが判明した。
(c)炉内の鉄の状態の時間的・空間的変動のモニターがある程度可能であり、休風の効果による鉄部の空間的変動が観測された。
本発明は、宇宙線ミュオンを利用して、例えば鉄筋コンクリート建造物のような複合構造物の内部の状態を当該構造物に何らの悪影響を与えることなく検査することが可能な非破壊検査装置及びその検査方法に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。

Claims (12)

  1. 進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオンを利用して、複合構造物の表層内部を検査する非破壊検査装置であって、
    前記複合構造物の内部に静止した前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って前記宇宙線ミュオンの照射方向とは逆方向に特性の時定数を持って反射放出される陽電子・電子量を検出する陽電子・電子量検出手段と、
    前記陽電子・電子量検出手段おいて検出された陽電子・電子量から、前記複合構造物の前記表層内部に存在する前記表層の第1の物質とは異なる第2の物質の状態をラジオグラフィとしてデータ処理し出力するラジオグラフィデータ処理手段と、
    の各手段を備えたことを特徴とする複合構造物の非破壊検査装置。
  2. 前記宇宙線ミュオンは正ミュオン及び負ミュオンを含み、前記正ミュオンは、進行方向に対して概ね30%スピン偏極しているものであることを特徴とする請求項1に記載の非破壊検査装置。
  3. 前記陽電子・電子量検出手段は、前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って生じる50MeVまでの崩壊電子・陽電子の強度を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の非破壊検査装置。
  4. 前記陽電子・電子量検出手段は、
    前記宇宙線ミュオンの照射側に配置され前記ミュオンの位置と経路を検出するための第1の検出プレートと、
    前記第1の検出プレートと前記複合構造物の間に配置され、前記複合構造物内で前記ミュオンの消滅に伴って発生する陽電子・電子量を検出する第2の検出プレートと、
    から構成された請求項3に記載の非破壊検査装置。
  5. 前記第1の検出プレートは、その位置分解能が±2.50cmであり、その有感面積は1メートル×1メートルであって、
    前記第2の検出プレートは、その位置分解能は±1.25cmであり、その有感面積は0.5メートル×0.5メートルである、
    ことを特徴とする請求項4に記載の非破壊検査装置。
  6. 前記ラジオグラフィデータ処理手段は、
    前記陽電子・電子量検出手段からの入力信号を所定の基準クロックでサンプリングし、
    当該サンプリングした入力信号からノイズ成分を除去して前記ミュオンの検出信号のみを選別するディスクリミネータ手段と、
    前記ディスクリミネータ手段からの出力信号を処理してラジオグラフィ情報を作成するデータ処理手段と、
    から構成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の非破壊検査装置。
  7. 前記複合構造物は、鉄筋コンクリートであって、
    前記第1の物質はコンクリートであり、前記第2の物質は鉄棒又は鉄骨である、
    ことを特徴とする請求項6に記載の非破壊検査装置。
  8. 前記検査対象の鉄筋コンクリートにおいて、前記鉄棒又は鉄筋は、前記コンクリートの表層から10乃至20cmの位置にあることを特徴とする請求項7に記載の非破壊検査装置。
  9. 進行方向に所定量だけスピン偏極し概ね水平方向に進行する宇宙線ミュオンを利用して、複合構造物の表層内部を検査する非破壊検査方法であって、
    (a)前記複合構造物の内部に静止した前記宇宙線ミュオンの消滅に伴って当該宇宙線ミュオンの照射方向とは逆方向に特性の時定数を持って反射放出される陽電子・電子量を所定の基準クロックでサンプリングするステップと、
    (b)当該サンプリングした信号からノイズ成分を除去するステップと、
    (c)前記ノイズ成分が除去された信号から前記宇宙線ミュオンの検出信号を選別するステップと、
    (d)前記選別された前記宇宙線ミュオンの検出信号を処理してラジオグラフィ情報を作成するステップと、
    の各ステップを有し、前記複合構造物の前記表層内部に存在する前記表層の第1の物質とは異なる第2の物質の状態を示すラジオグラフィ情報を得ることにより前記複合構造物の内部を検査する非破壊検査方法。
  10. 前記宇宙線ミュオンは正ミュオン及び負ミュオンを含み、前記正ミュオンは、進行方向に対して概ね30%スピン偏極しているものであることを特徴とする請求項9に記載の非破壊検査方法。
  11. 前記複合構造物は鉄筋コンクリートであって、前記第1の物質はコンクリートであり、前記第2の物質は、鉄棒又は鉄骨であることを特徴とする請求項9又は10に記載の非破壊検査方法。
  12. 前記検査対象の鉄筋コンクリートにおいて、前記鉄棒又は鉄筋は、前記コンクリートの表層から10乃至20cmの位置にあることを特徴とする請求項11に記載の非破壊検査方法。
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