JPWO2008146848A1 - 炭化水素油の脱硫方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、オレフィン分を含む炭化水素油を長期間にわたって安定にかつ経済的に脱硫できる方法に関し、より詳しくは、硫黄分を2質量ppm以上且つオレフィン分を5容量%以上含有する炭化水素油を多孔質脱硫剤と水素存在下で、温度50〜250℃、圧力0.1〜2.0MPa、液空間速度が2.0h−1を超える条件で接触させることを特徴とする炭化水素油の脱硫方法に関するものである。

Description

本発明は、オレフィン分を含む炭化水素油の脱硫方法に関する。
ガソリンに含まれる硫黄分は燃焼により硫黄酸化物(SOx)となり、主に直噴車の排出ガス浄化触媒として用いられる窒素酸化物吸蔵触媒の活性点を被覆して被毒する。そのため、触媒上に吸着した硫黄酸化物を定期的に高温化し除去(再生)して被毒・劣化した触媒の機能を回復させることが必要である。直噴車ではこの工程が必要なため、燃費が犠牲となっている。この燃費の悪化による二酸化炭素排出量の増加を避けるため、ガソリン中の硫黄分を低減させることが求められており、国内のガソリン中の硫黄分は2005年1月から自主的に10質量ppm以下まで低減されている。
通常、ガソリンは様々なガソリン基材を混合して製造されるが、ガソリン中の硫黄分のほとんどは分解ガソリン基材に由来する。分解ガソリン基材としては、流動接触分解装置から得られる接触分解ガソリン基材や熱分解装置から得られる熱分解ガソリン基材などが挙げられるが、これら分解ガソリン基材にはオクタン価の高いオレフィン分が多く含まれるため、従来から知られている水素化脱硫法(例えば、コバルト、ニッケル、モリブデンを担持したアルミナ触媒を用いて、高温高圧水素雰囲気下で脱硫する方法)によって脱硫すると、オレフィン分も同時に水素化されるため、分解ガソリン基材のオクタン価が低下してしまうという問題がある。
この問題に対して、炭化水素油を特定の条件下で吸着剤と接触させて硫黄化合物を吸着させる工程と、吸着剤に水素を通気させることにより吸着剤から硫黄化合物を脱離させる工程とを繰り返すことにより、オレフィンの水素化反応など不要な反応を抑制しつつガソリンの基材となる炭化水素油に含まれる硫黄分を連続的に低減する方法が提案されている(特開2003−277768号)。しかしながら、この方法は、水素非存在下であることや室温での脱硫であることによって頻繁に再生処理を行う必要があり、経済的な脱硫という観点からは必ずしも満足できる方法ではない。
これに対して本出願人は、ニッケルと亜鉛を含む脱硫剤を用いて特定の条件のもとで脱硫することで、接触分解ガソリンを高度に脱硫できることを見いだしている(国際公開第2005/044959号、特開2006−312663号)。しかしながらこの方法では、300℃と比較的高い反応温度が必要であり、経済的な脱硫という観点では十分とは言えなかった。
前述したように、オクタン価を大幅に減らすことなくオレフィン分を含む炭化水素油の硫黄分を10質量ppm以下、さらには1質量ppm以下まで比較的マイルドな条件において安定にかつ経済的に脱硫する方法は、未だ確立されていない。そこで、本発明は、特定の条件下でオレフィン分を含む炭化水素油を長期間にわたって安定にかつ経済的に脱硫できる方法を提供することを課題とする。
本出願人は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、オレフィン分を含む炭化水素油を特定の条件のもと多孔質脱硫剤によって処理することで、長期間安定的に炭化水素油中の硫黄分を低減できることを見出し、この発明に至った。
すなわち、本発明は、硫黄分を2質量ppm以上、オレフィン分を5容量%以上含有する炭化水素油を、多孔質脱硫剤と水素存在下で温度50〜250℃、圧力0.1〜2.0MPa、液空間速度が2.0h−1を超える条件で接触させることを特徴とする炭化水素油の脱硫方法である。また、前記多孔質脱硫剤がニッケル及び亜鉛を含有し、前記炭化水素油が接触分解ガソリンである炭化水素油の脱硫方法である。ここで、該多孔質脱硫剤は、ニッケル含有量が50質量%以下で且つ亜鉛含有量が30質量%以上であることが好ましく、また、該多孔質脱硫剤中の亜鉛含有量に対するニッケル含有量の質量比(Ni/Zn)は1.0以下であることが好ましい。
また、本発明においては、前記多孔質脱硫剤の比表面積が30m/g以上であること、前記多孔質脱硫剤が水素雰囲気下100〜350℃で還元処理されていること、前記炭化水素油のジエン価が0.5g/100g以下であること、並びに、水素/油比が0.01〜200NL/Lであることが好ましい。
本発明によれば、オレフィン分を含む炭化水素油を特定の条件下、多孔質脱硫剤によって処理する事により、オレフィン分を含む炭化水素油の脱硫を長期間にわたって安定かつ経済的に実施する事ができる。
[炭化水素油]
本発明の対象となる炭化水素油は、硫黄分が2質量ppm以上で、オレフィン分が5容量%以上であれば特に限定されないが、流動接触分解装置から得られる接触分解ガソリン、熱分解装置から得られる熱分解ガソリン、脱ろう装置から得られる脱ろうガソリンが好ましい炭化水素油として挙げられる。中でも硫黄分が比較的少ない接触分解ガソリンを好適に使用することできる。
上記炭化水素油の硫黄分の範囲は、好ましくは2〜100質量ppmであり、さらに好ましくは2〜50質量ppmであり、特に好ましくは2〜20質量ppmである。硫黄分が100質量ppmを超えると、多孔質脱硫剤の寿命が短くなり好ましくない。
上記炭化水素油のオレフィン分の範囲は、好ましくは5〜70容量%であり、より好ましくは5〜40容量%であり、特に好ましくは5〜25容量%である。オレフィン分が70容量%を超えると、オレフィンの水素化がある程度進行する場合があり、その結果、炭化水素油のオクタン価が低下してしまうため好ましくない。
上記炭化水素油のジエン価は、好ましくは0.5g/100g以下であり、より好ましくは0.3g/100g以下であり、特に好ましくは0.1g/100g以下である。ジエン価が0.5g/100gを超えると、多孔質脱硫剤の脱硫性能を低下させるので好ましくない。
[脱硫反応条件]
本発明の脱硫方法では、水素共存下にて炭化水素油を多孔質脱硫剤と接触させる。水素非共存下で炭化水素油と多孔質脱硫剤とを接触させると、脱硫剤の寿命が大きく低下してしまうため好ましくない。
反応温度は50〜250℃であり、好ましくは100〜200℃であり、さらに好ましくは100〜175℃、より好ましくは100〜150℃である。反応温度が50℃未満であると、脱硫速度が低下し、効率的に脱硫ができず好ましくない。また、反応温度が250℃を超えると、多孔質脱硫剤中の金属成分がシンタリングしやすくなり、脱硫速度、脱硫容量とも低下して好ましくなく、また、オレフィンの水素化が進行して、炭化水素油のオクタン価が低下してしまうため好ましくない。なお、反応温度が100℃以上であれば、脱硫速度が十分に高く、効率的に脱硫を行うことができる。
また、反応圧力は、ゲージ圧で0.1〜2.0MPa、好ましくは0.1〜1.0MPa、さらに好ましくは0.1〜0.5MPaである。反応圧力が0.1MPa未満だと、脱硫速度が低下し、効率的に脱硫ができず好ましくない。また、反応圧力が2.0MPaを超えると、炭化水素油中に含まれるオレフィン分の水素化等の副反応が進行するため好ましくない。なお、反応圧力が1.0MPa以下であれば、オレフィン分の水素化等の副反応を十分に抑制でき、0.5MPa以下であれば、該副反応をほぼ確実に防止できる。
更に、液空間速度(LHSV)は、2.0h−1を超え、好ましくは2.1h−1以上である。また、LHSVは、好ましくは50.0h−1以下、より好ましくは20.0h−1以下、特に好ましくは10.0h−1以下である。LHSVが2.0h−1以下であると、通油量が制限されたり、脱硫リアクターが大きくなり過ぎたりするため、経済的な脱硫を行うことができず好ましくない。また、LHSVが50.0h−1を超えると、脱硫するのに十分な接触時間が得られず、脱硫率が低下するため好ましくない。なお、LHSVが2.1h−1以上であれば、十分経済的に脱硫を行うことができ、LHSVが20.0h−1以下であれば、接触時間が十分に長いため、脱硫率が向上し、10.0h−1以下であれば、脱硫率が特に高くなる。
本発明の炭化水素油の脱硫方法は、上述のように水素共存下で行う。炭化水素油を多孔質脱硫剤と接触させる際に水素が存在しないと、チオフェンやベンゾチオフェンなどの比較的脱硫が進行しにくい硫黄化合物が低減できない。ここで、水素/油比は、0.01〜200NL/Lの範囲が好ましく、0.01〜100NL/Lの範囲がより好ましく、0.1〜20NL/Lの範囲が特に好ましい。水素/油比が0.01NL/L未満だと、十分に脱硫が進行せず好ましくない。また、水素/油比が200NL/Lを超えると、オレフィンの水素化などの副反応が起こる割合が多くなり好ましくない。
使用する水素は、メタン等の不純物を含んでいてもよいが、水素コンプレッサーが大きくなり過ぎないよう、水素純度は50容量%以上が好ましく、さらには80容量%以上、特には95%以上が好ましい。なお、水素中に硫化水素などの硫黄化合物が含まれると脱硫剤の寿命が短くなるので、水素中の硫黄分は、1,000容量ppm以下が好ましく、さらには100容量ppm以下、特には10容量ppm以下が好ましい。
[多孔質脱硫剤]
本発明の脱硫方法に用いる多孔質脱硫剤は、硫黄分を水素共存下で多孔質脱硫剤内に取り込むことができるものであれば特に限定されないが、ニッケルを含むことが好ましく、ニッケルと亜鉛を含むことがさらに好ましい。多孔質脱硫剤は、例えば、共沈法によって金属成分を沈殿させてろ過、洗浄し、成形、焼成等の工程を経ることによって得ることができる。
多孔質脱硫剤がニッケルを含んでいる場合、脱硫剤総質量に対するニッケル含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは1〜30質量%、より一層好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
また、多孔質脱硫剤が亜鉛を含んでいる場合、脱硫剤総質量に対する亜鉛含有量は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50〜80質量%であり、特に好ましくは50〜75質量%である。
ニッケル含有量が50質量%を超えたり、亜鉛含有量が30質量%未満の場合、多孔質脱硫剤の寿命が短くなるため好ましくない。一方、ニッケル含有量が30質量%以下かつ、亜鉛含有量が50質量%以上の場合、多孔質脱硫剤の寿命が長くなる。なお、ニッケル及び亜鉛の総含有量は、脱硫剤の総質量に対して20〜85質量%、特には50〜80質量%の範囲が好ましい。
また、多孔質脱硫剤中の亜鉛含有量に対するニッケル含有量の質量比(Ni/Zn)は1.0以下が好ましく、0.05〜0.5の範囲が更に好ましく、0.05〜0.35の範囲が特に好ましい。亜鉛含有量に対するニッケル含有量の質量比が1.0を超えると、多孔質脱硫剤の寿命が著しく短なり好ましくない。
多孔質脱硫剤の比表面積は、30m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましい。比表面積が30m/g未満であると脱硫性能が低くなり好ましくない。また、多孔質脱硫剤の細孔容積は、0.2mL/g以上であることが好ましく、0.3mL/g以上であることがより好ましい。細孔容積が0.2mL/g未満であると脱硫性能が低くなり好ましくない。
本発明の脱硫方法に用いる多孔質脱硫剤は、水素雰囲気下100〜350℃、特には200〜350℃で処理してから用いられることが好ましい。水素雰囲気下での処理温度が100℃未満では、ニッケルが十分に還元されないため好ましくない。また、該処理温度が350℃を超えると、ニッケルがシンタリングしてしまって活性が低くなるため好ましくない。なお、該処理温度を200℃以上とすることで、ニッケルを十分に還元することができる。
本発明の脱硫方法に用いる多孔質脱硫剤は、共沈法により調製されることが好ましい。共沈法による調製方法は、アルミナのような多孔質担体に亜鉛、ニッケルなどの金属成分を含浸、担持して焼成する製造方法に比べて脱硫に有効なニッケルと亜鉛を脱硫剤中に多く含ませることができるため脱硫剤の長寿命化を達成できる。なお、酸化亜鉛担体にニッケルを含浸する方法は、酸化亜鉛担体の細孔の閉塞により比表面積及び細孔容積が減少し、脱硫活性が低くなるため好ましくない。
本発明の脱硫方法に好適なニッケルと亜鉛を含有する多孔質脱硫剤は、ニッケルや亜鉛を含む酸性溶液を、アルカリ溶液に混合して調製することができる。ニッケルと亜鉛を含む酸性溶液は、亜鉛やニッケルの硝酸塩、酢酸塩等を水で溶解することにより得られる。また、上記アルカリ溶液には、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等を用いることができるが、なかでも炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。
上記の工程で生成した沈殿物は、ろ過後に乾燥する必要があるが、乾燥温度は100〜200℃が好ましい。また、その後の焼成は必ずしも必要でないが、焼成する場合の温度は400℃以下が好ましく、350℃以下が更に好ましい。焼成温度が400℃を超えると、塩が分解してできるニッケルと亜鉛の酸化物の結晶化が進み、ニッケルおよび亜鉛の結晶子径が大きくなり比表面積が低下するので好ましくない。
なお、本発明において、多孔質脱硫剤とは、硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤をいう。ここでいう硫黄収着機能を持った多孔質脱硫剤とは、有機硫黄化合物中の硫黄原子を脱硫剤に固定化するとともに、有機硫黄化合物中の硫黄原子以外の炭化水素残基については有機硫黄化合物中の炭素−硫黄結合が開裂することによって脱硫剤から脱離させる機能をもった多孔質脱硫剤をいう。この有機硫黄化合物中の炭化水素残基が脱離する際には、硫黄との結合が開裂した炭素に、系内に存在する水素が付加する。したがって、有機硫黄化合物から硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が生成物として得られることになる。ただし、硫黄原子が除かれた炭化水素化合物が、さらに水素化、異性化、分解等の反応を受けた生成物を与えることがあっても構わない。一方、硫黄は脱硫剤に固定化されるため、水素化精製処理とは異なり、生成物として硫化水素などの硫黄化合物を発生しない。そのため、水素をリサイクルして使用する場合、硫化水素を除去する設備が不要となり、経済的に有利である。
〔活性回復処理〕
本発明の脱硫方法に好適に使用されるニッケルと亜鉛を含む多孔質脱硫剤は、水素処理によって活性を回復させることができる。水素処理によって、活性が回復する理由及びそのメカニズムは必ずしも明確ではないが、次のようにして活性が回復されるものと推察される。炭化水素油中の硫黄化合物の多くはニッケル上で脱硫され、すなわち、硫黄原子はまずニッケルに取り込まれる。次に、ニッケルに取り込まれた硫黄原子は水素の存在下で亜鉛に移動する。ニッケルから亜鉛への硫黄の移動速度が十分でない状況(反応温度が低い、水素分圧が低い、水素/油比が低い)では、ニッケルと亜鉛に対する硫黄取り込み量が化学量論量に達する前に、大きく脱硫性能が低下してしまう。そして、このような場合、水素処理をすることによって活性を回復させることができる。なお、水素処理においては、ニッケルから亜鉛への硫黄の移動が促進されて活性が回復されるものと推察される。活性回復中は硫化水素が発生しないことからも、ニッケルから亜鉛に硫黄の移動が起きるだけと考えられる。
活性回復処理に用いる水素ガスは、通常、コンプレッサーによってリサイクル使用される。メタン等の不純物を含んでいてもよいが、コンプレッサーが大きくなりすぎないよう、水素純度は50容量%以上が好ましく、さらには80容量%以上、特には95%以上が好ましい。水素中に硫化水素などの硫黄化合物が含まれると脱硫剤の寿命が低下するので、水素ガス中の硫黄濃度は1,000容量ppm以下が好ましく、さらには100容量ppm以下、特には10容量ppm以下が好ましい。硫化水素濃度は、リサイクルガスの循環ラインに公知の硫化水素洗浄装置を設けて低下させたり、あるいはパージガスの量を制御したりして調整することができる。処理温度としては200〜400℃が好ましく、250〜350℃がより好ましい。処理圧力は、特に限定されるものではないが、0.1〜1.0MPaが好ましい。
ただし、ニッケルと亜鉛に硫黄が化学量論量まで取り込まれ、完全に硫化物となってしまった脱硫剤は、水素処理を行っても活性はほとんど回復しない。このような場合には、過熱されないように酸素濃度をコントロールして、硫黄化合物を酸化(燃焼)してSOガスとしてニッケルや亜鉛から切り離して活性を取り戻すことができる。脱硫剤として使用する際には、新品の脱硫剤を用いる場合と同様に、通油前に水素による還元処理を行うことが好ましい。
<実施例>
以下に、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら制限されるものではない。
(実施例1)
炭酸ナトリウム106gを水に溶かした溶液を60℃に加温し、これに硝酸亜鉛六水和物214gを水に溶かした溶液に硝酸ニッケル六水和物23gを加えたものを滴下した。得られた沈殿物をろ過した後、水で洗浄した。その後、120℃で16時間乾燥後、350℃で3時間焼成し脱硫剤Aを得た。脱硫剤Aは、ニッケル含有量が6.9質量%、亜鉛含有量が71.0質量%、ナトリウム含有量が0.01質量%、比表面積が54m/g、細孔容積が0.34mL/gであった。また、亜鉛に対するニッケルの割合は9.7質量%であった。なお、金属分の含有量はアルカリ融解ICP法で測定し、比表面積は窒素吸脱着法によるBET法で測定し、細孔容積は窒素吸脱着法によるBJH法で測定した。
中東系原油の減圧軽油留分を水素化精製処理したものを主たる原料油として流動接触分解して得られた接触分解ガソリンを、酸化型のスイートニング装置によって処理した後、分留して得られる重質分を水素化脱硫処理し、接触分解重質ガソリンを得た。この接触分解重質ガソリンは、硫黄分が12.5質量ppm、オレフィン分が15.3容量%、ジエン価が0.1g/100g未満、RON(リサーチ法オクタン価)が86.0であった。なお、硫黄分は、ASTM D5453(紫外蛍光法)に準拠して測定し、オレフィン分およびRONはJIS K2536−2(ガスクロマトグラフによる全成分の求め方)に準拠してヒューレットパッカード社製PIONA装置を用いて測定し、ジエン価はUOP326−82に準拠して測定した。
脱硫剤Aを水素気流中300℃にて16時間処理した後、接触分解重質ガソリンを、反応温度120℃、反応圧力0.5MPa、液空間速度(LHSV)10.0h−1、水素/油比100NL/Lの条件で通油して反応を行った。反応開始から24時間後の硫黄分は0.25質量ppm、オレフィン分は7.7容量%、RONは83.3であり、48時間後の硫黄分は3.6質量ppm、オレフィン分は12.5容量%、RONは84.8であり、72時間後の硫黄分は5.4質量ppm、オレフィン分は14.2容量%、RONは85.4であった。
(比較例1)
反応温度を25℃とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応開始から24時間後の硫黄分は9.5質量ppm、オレフィン分は15.2容量%、RONは86.0であった。
(比較例2)
水素/油比を0NL/L(水素非共存)とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応開始から24時間後の硫黄分は4.1質量ppm、オレフィン分は15.2容量%、RONは86.0であった。
(実施例2)
反応温度200℃、反応圧力0.3MPa、LHSV5.0h−1、水素/油比10NL/Lとした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。反応開始24時間後の硫黄分は0.02質量ppm、オレフィン分は11.5容量%、RONは84.4であり、反応開始48時間後の硫黄分は0.13質量ppm、オレフィン分は12.9容量%、RONは84.9であり、反応開始180時間後の硫黄分は3.1質量ppm、オレフィン分は15.2容量%、RONは85.9であり、反応開始1,000時間後の硫黄分は4.4質量ppm、オレフィン分は15.3容量%、RONは86.0であった。
(比較例3)
反応温度300℃、反応圧力0.3MPaとした以外は実施例1と同様にして実験を行った。反応開始24時間後の硫黄分は0.01質量ppm、オレフィン分は3.2容量%、RONは82.4であり、反応開始48時間後の硫黄分は0.01質量ppm、オレフィン分は4.4容量%、RONは82.5であった。以上の結果を表1にまとめる。
Figure 2008146848
以上に示す通り本発明の脱硫方法によると、長期間安定的にオクタン価のロスを最小減に抑えながら脱硫することが可能であることが分かる。一方、比較例1及び比較例2から、反応温度が50℃未満であったり、水素非共存下で反応を行うと、効率的に脱硫できず、また、比較例3から、反応温度が250℃を超えると、オレフィン分が水素化されて、オクタン価が低下することが分かる。

Claims (8)

  1. 硫黄分を2質量ppm以上、オレフィン分を5容量%以上含有する炭化水素油を多孔質脱硫剤と水素存在下で、温度50〜250℃、圧力0.1〜2.0MPa、液空間速度が2.0h−1を超える条件で接触させることを特徴とする炭化水素油の脱硫方法。
  2. 前記多孔質脱硫剤がニッケル及び亜鉛を含有し、前記炭化水素油が接触分解ガソリンである請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  3. 前記多孔質脱硫剤は、ニッケル含有量が50質量%以下で且つ亜鉛含有量が30質量%以上である請求項2に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  4. 前記多孔質脱硫剤中の亜鉛含有量に対するニッケル含有量の質量比(Ni/Zn)が1.0以下である請求項2に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  5. 前記多孔質脱硫剤の比表面積が30m/g以上である請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  6. 前記多孔質脱硫剤が水素雰囲気下100〜350℃で還元処理されている請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  7. 前記炭化水素油のジエン価が0.5g/100g以下である請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
  8. 水素/油比が0.01〜200NL/Lである請求項1に記載の炭化水素油の脱硫方法。
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