本発明は、基地局装置及び移動端末に関し、特に基地局装置の形成するセル内において無線通信方式を切り替える手法に関する。
W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いた移動通信システムでは、周波数利用効率の向上を図るため、セル間で同じ周波数帯域を用いる周波数繰り返し構成が採られる。このような周波数配置では、隣接セルへの干渉が大きくセル内のユーザ位置によって通信環境が大きく異なる。そこで、このような移動通信システムにおいて、送信電力制御(TPC(Transmit Power Control))が適用される場合がある。
送信電力制御では、基地局と移動端末との間でパイロットシンボルに基づいて算出されるSIR(Signal to Interference Ratio)値に対応する制御情報(TPC制御ビット)がやりとりされることにより、基地局における各移動端末からの信号の受信電力が一定となるように制御される。
この送信電力制御には、インナループ制御とアウタループ制御とがある。インナループ制御は、送信局からのパイロットシンボルから算出されたSIR測定値とSIR目標値とが比較されることによりTPC制御ビット値が得られ、送信局がこのTPC制御ビット値に応じて送信信号の電力を制御するというものである。アウタループ制御は、RNC(Radio Network Controller)と基地局との間のやりとりにより、SIR目標値が所定の周期で適切な値に更新されるというものである。
一方で、W−CDMA方式を用いた移動通信システムにおいて、より高速な通信を実現するために、通信環境に応じて通信可能な符号化及び変調方式を動的に選択する適応変調符号化(AMC(Adaptive Modulation and Coding))方式の採用が検討されている。このAMC方式を用いた移動通信システムでは、セル内のいずれの場所に移動端末が存在する場合であっても、その存在する位置の通信環境に応じたAMCが実行される。従って、AMCを実行するために必要な制御情報は、セル端まで確実に送信される必要がある。また、AMCの変調符号化方式セット(MCS:Modulation and Coding Scheme)もセル端においても通信可能となるように用意する必要がある。
図24は、移動端末2110と基地局2111との間のAMC実行のための通信シーケンスを示す図である。図24では、まず、移動端末2110は、基地局2111へパイロット信号を送信する(S2101)。基地局2111は、このパイロット信号に基づいてチャネル状態(例えばSINR(Signal-to-Interference and Noise power Ratio)値)を推定する。基地局2111は、このSINRを移動端末2110へ送信する(S2102)。このとき、基地局2111は、このSINRに基づいて決定される移動端末2110のためのスケジューリング情報等を併せて送信する。
移動端末2110は、このスケジューリング情報により送信許可が与えられるまではユーザデータパケットを送信しない。移動端末2110は、送信許可が与えられると、そのSINR値、送信キューに入ったパケット情報量等を加味することにより、自身の通信環境に応じた変調フォーマット(符号化及び変調方式)を決定する。移動端末2110は、この変調フォーマットを基地局2111へ通知し(S2103)、この決定された変調フォーマットが適用されたパケット信号を送信する(S2104)。基地局2111は、この変調フォーマットが適用されたパケット信号の受信状況に応じて、ACK若しくはNACKを移動端末2110へ応答する(S2105)。なお、図24は、移動端末から基地局への上りリンクに関する通信シーケンスを示すが、基地局から移動端末への下りリンクに関する場合も同様の通信シーケンスが実行される。
ところで、図24に示される通信シーケンスにおいて、S2102及びS2103で送信される情報がAMC用の制御情報となっている。従って、AMC方式を用いる場合には、このようなAMC用の制御情報を上りリンク及び下りリンクの双方においてやりとりする必要がある。
更に、このAMC用の制御情報はセルのエッジまで確実に送信される必要があるため、この制御情報データにRepetitionやSpreading等を施すことにより制御情報信号の利得を上げることが行われる。図25は、AMC用の制御情報の通信方法を示す図であり、セルのエッジでの特性保証をするためにRepetition=16が適用され、制御情報の通信領域として80ビットの領域が確保された場合の例を示す。この例によれば、制御情報の通信領域のうち「CB」エリアには制御情報ビットが配置されその右隣りの「CB(R)」エリアにはその「CB」エリアにセットされる制御情報ビットの繰り返しデータが配置される。すなわち、図25の例によれば、80ビットの制御情報通信領域に対して5ビットの制御情報が送信可能である。このようにして、データ通信のために確保されている通信領域と略同じ比率でこの制御情報通信領域を確保する可能性がある。
その他、本願発明に関連する先行技術を開示する文献として以下の文献がある。
特開2004−72157号公報
特開2003−37554号公報
上述のように、AMC方式を用いた従来の移動通信システムでは、データ通信を最適化することが目的でありながら、このAMC用の制御情報をセル端付近まで確実に伝送するためにユーザデータのための通信領域が圧迫されるという問題がある。この問題は、伝搬路変動が略同じの狭帯域で短時間のリソースブロック単位できめ細かくパケットスケジューリングやAMCを実行しようとする場合に発生しやすいため、将来避けては通れない問題である。
本発明は、周波数利用効率を向上させ高速通信を実現する基地局装置及び移動端末を提供することを目的とする。
本発明は、上述した課題を解決するために以下の構成を採用する。即ち、本発明は、セルを形成しこのセル内に存在する移動端末と無線通信を行う基地局装置に関し、当該セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用を決定する決定手段を備えるというものである。
このような構成を実現するためには、上記基地局装置が、移動端末からのパイロット信号に基づいてチャネル状態情報を推定する推定手段を更に備え、上記決定手段が、上記推定手段により推定されるチャネル状態情報に基づいて、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用するか否かを決定するようにしてもよい。例えば、チャネル状態が悪い移動端末(セル端付近に存在する移動端末)には適応変調符号化が適用されないようにすれば、セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用が決定されることになる。
このような構成を採ることにより、上記基地局装置が、適応変調符号化に利用される制御情報の冗長度を他の制御情報の冗長度よりも小さくする制御信号生成手段を更に備えるようにすることができる。冗長度には、例えば、対象情報の繰返し数、拡散率、符号化率等がある。
これにより、制御情報の冗長度を小さくすることでユーザデータの周波数利用率を上げることができ、ひいては、通信スループットを向上させることができる。
更に、上記基地局装置は、上記決定手段により適応変調符号化の適用が決定されなかった場合には、適応変調符号化に利用される制御情報の代わりにユーザデータを配置した通信フォーマットに変更するフォーマット変更手段を備えるようにしてもよい。
これによれば、制御情報自体の情報量を更に削減することができるため、ユーザデータの周波数利用率を更に上げることができる。
また、上記決定手段が、チャネル状態情報と対応するMCS(Modulation and Coding Scheme)セットを有し、上記推定手段により推定されるチャネル状態情報がこのMCSセットの有効値に該当する場合に、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用することを決定するようにしてもよい。
本発明では、セル内の一部の所定の領域に関し適応変調符号化を適用させるため、セル内の全領域に適用させる場合に較べこのMCSセットの有効範囲を狭くすることができる。すなわち、基地局装置自体が持つ、若しくは移動端末に通知するチャネル状態情報自体の情報量を小さくすることができる。
これにより、制御情報自体の情報量を更に削減することができるため、ユーザデータの周波数利用率を更に上げることができる。
このような構成を採る場合には、更に、上記決定手段が、このMCSセットの有効値の範囲を変更する変更手段を有するようにしてもよい。
これにより、適応変調符号化を適用する領域をその基地局装置が配置される通信環境に応じて適応的に調整することが可能となり、適応変調符号化を適用する領域を適切に設定することができる。
また、上記基地局装置が、移動端末からの受信データの誤り判定を行う誤り判定手段と、この誤り判定手段による誤り判定結果を各移動端末についてそれぞれ逐次記録する記録手段とを更に備えるようにし、上記決定手段が、当該記録手段に記録される誤り判定結果に基づいて移動端末について取られた統計により、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用するか否かを決定するようにしてもよい。
また、上記決定手段が、上記所定領域外のセル領域に存在する移動端末との無線通信には送信電力制御の適用を決定するようにしてもよい。
これにより、送信電力制御は適応変調符号化方式に比較して制御情報が少ないため、セル端付近までカバーするべくその制御情報の冗長度を考慮したとしてもユーザデータのための無線リソースが圧迫されることはない。
従って、この送信電力制御が適用される領域内では、適応変調符号化用の制御情報を削除することで周波数利用効率を向上させながら、更に一定通信レートを確保しつつ送信電力を低減することができる。さらには、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
本発明は、上述の本発明に係る基地局装置と無線通信を行う移動端末、この基地局装置と移動端末とを有する移動通信システム、情報処理装置(コンピュータ)を本発明に係る基地局装置若しくは移動端末として機能させるプログラム、或いは、当該プログラムを記録した記録媒体としても実現可能である。
本発明によれば、周波数利用効率を向上させ高速通信を実現する基地局装置及び移動端末を提供することができる。
図1は第一実施形態における移動通信システムのシステム構成を示す図である。
図2は第一実施形態におけるAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。
図3はSINR通知に用いられる情報としてCQI値が用いられる場合のCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。
図4は第一実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示す図である。
図5は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図6は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図7は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図8は第一実施形態における基地局の受信局としての機能構成を示す図である。
図9は基地局と隣接基地局とが構成するセルを示す図である。
図10は第一実施形態における基地局の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示す図である。
図11はモード切り替えの第1判断方法による動作例を示す図である。
図12はモード切り替えの第2判断方法による動作例を示す図である。
図13はモード切り替えの第2判断方法による動作例を示す図である。
図14はモード切り替えの第3判断方法による動作例を示す図である。
図15はMCSセットの自動最適化の第1手法の動作例を示す図である。
図16はMCSセットの自動最適化の第2手法の動作例を示す図である。
図17は従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示す図である。
図18は従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(送信電力)を示す図である。
図19は第一変形例における基地局の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示す図である。
図20は第二変形例における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示す図である。
図21は第二実施形態における移動通信システムのシステム構成を示す図である。
図22は第二実施形態におけるCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。
図23は第二実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示す図である。
図24は移動端末と基地局との間のAMC実行のための通信シーケンスを示す図である。
図25はAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。
符号の説明
1、1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、2111 基地局
2、3、2110 移動端末
5 AMCエリア
6 TPCエリア
7 MIMOエリア
401、402 受信アンテナ
403、404 受信部
405 復調及び復号部
406 選択部
410 上位レイヤ機能部
411 スケジューラ
412 送信パケットキュー
413 適応レート制御部
414 一定レート設定部
415 符号化及び変調部
416、416−1、416−2 電力調整部
417 適応電力制御部
418、418−1、418−2 送信部
419 送信アンテナ
801 送信アンテナ
802 送信部
803 送信電力制御設定部
804 SINR通知部
805 選択部
807 適応レート制御部
808 一定レート設定部
810 上位レイヤ機能部
815 スケジューラ制御部
816 データ判定部
820 復調及び復号部
821 フォーマット分離部
822 モード切替判定部
823 閾値モニタ
825 SINR推定部
826 チャネル推定部
827、828 受信部
829、830 受信アンテナ
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態における移動通信システムについてそれぞれ説明する。なお、以下に述べる各実施形態の構成はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態における移動通信システムについて、以下に説明する。
〔システム構成〕
まず、第一実施形態における移動通信システムのシステム構成について、図1を用いて説明する。図1は、第一実施形態における移動通信システムのシステム構成を示すブロック図である。第一実施形態における移動通信システムは、複数の基地局(例えば、図1に示す基地局1)がそれぞれネットワーク(図示せず)により接続され、構成される。携帯電話等の移動端末2及び3は、最寄りの基地局1と無線通信することにより、本実施形態における移動通信システムと接続され、通話サービス等の通信サービスの提供を受ける。
〔第一実施形態の原理〕
第一実施形態における移動通信システムを構成する各装置の詳細機能について説明する前に、まず、第一実施形態における移動通信システムで実行される通信手法の概念について説明する。
基地局1は、図1に示されるように、自身の形成するセル内において、AMCを適用するエリア(以降、AMCエリアと表記する)5とTPCを適用するエリア(以降、TPCエリアと表記する)6とを設ける。AMCエリア5内に存在する移動端末2と基地局1との通信においてはAMCが利用され、TPCエリア6内に存在する移動端末3と基地局1との通信においてはTPCが利用される。
基地局1は、個別制御チャネルを、AMC及びTPC用の制御情報(以降、選択制御情報とも表記する)を配置する選択制御情報チャネルとそれ以外の制御情報(以降、一般制御情報とも表記する)を配置する一般制御情報チャネルとに区別して利用する。
基地局1及び移動端末2及び3は、図2に示されるように、Repetitionを行わない方法でAMC用の制御情報を送信する。これにより、セル端付近の移動端末3ではこのAMC用の制御情報を受信することができないため、AMCエリア5は、セルの全領域よりも狭い基地局1周辺の領域に限定される。
図2は、従来手法の図25に対応する第一実施形態におけるAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。図2の通信方法によれば、図25の通信方法の場合に較べ、制御情報の通信領域として75ビットの領域が削減される。これにより、この削減された領域は、ユーザデータ通信領域として確保することができる。
更に、この通信方法によれば、相乗効果として、SINR通知に用いられる情報の量を抑えることが可能となる。これは、セル端に対応するMCSセットを設ける必要がないからである。図3は、SINR通知に用いられる情報としてCQI(Channel Quality Indicator)値が用いられる場合のCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。従来手法のようにセル端においてもAMCを適用する場合にはセル端におけるMCSセット及びそれに対応するCQI値を設ける必要があったが、第一実施形態によれば、そのようなセル端におけるMCSセット及びCQI値を設ける必要がない。図3の例によればCQI伝送に必要な制御ビットを従来の6ビット(26=64)から5ビット(25=32)に削減することができる。なお、SINR通知に用いられる情報としてCQI値以外の値が利用される場合においても同様である。
第一実施形態における移動通信システムでは、セル領域内のAMCエリア5より外側のエリアには、TPCが利用される(TPCエリア6)。これによれば、従来方式のようにセル全体でAMCを適用する場合に対し、このTPCエリア内ではSINR通知を削減し周波数利用効率を向上させる事が可能である。更に、このTPCエリア6において従来通りスケジューラを動作させ伝搬環境の良好な時間、周波数帯域、空間を選択することができれば、一定通信レートの条件下で送信電力を低減でき、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
TPCエリア6においてもスケジューラを動作させる場合には、AMCで利用されるSINR通知情報の配置されていた通信領域を上位通信レイヤの機能部が通信フォーマットを変えることによりパケット通信等に流用することが可能となる。また、インナループ型のTPCを行う場合には、受信側装置から送信側装置へ通知されるTPC制御ビットをこのSINR通知情報の配置されていた通信領域に配置するようにしてもよい。なお、本発明は、このAMCエリア5より外側のエリアで利用される無線通信方式を限定するものではないため、TPC以外の無線通信方式が利用されるようにしてもよい。
〔装置構成〕
以下、第一実施形態における移動通信システムを構成する各装置の詳細機能構成について説明する。なお、以下、説明の便宜のため、基地局1については受信局としての機能を中心に説明し、移動端末2及び3については送信局としての機能を中心に説明する。基地局1、移動端末2及び3はそれぞれ、送信局としての機能及び受信局としての機能の双方を備えるものとする。
〈移動端末〉
移動端末2及び3の機能構成について図4を用いて説明する。図4は、第一実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示すブロック図である。移動端末2及び3はそれぞれ図4に示す機能部を備えるものとし、以下の説明では移動端末2について代表して説明する。
移動端末2は、送信局として動作するための機能として、受信アンテナ401及び402、受信部403及び404、復調及び復号部405、選択部406、上位レイヤ機能部410、スケジューラ411、送信パケットキュー412、適応レート制御部413、一定レート設定部414、符号化及び変調部415、電力調整部416、適応電力制御部417、送信部418、送信アンテナ419等を備える。ハードウェア構成としては、上記機能部がそれぞれハードウェア回路で実現されるようにしてもよいし、メモリに記憶された制御プログラムがCPU(Central Processing Unit)にロードされ実行されることにより実現されるようにしてもよい。
受信部403は受信アンテナ401と接続され、受信部404は受信アンテナ402と接続される。受信部403及び404はそれぞれ接続される受信アンテナ401及び402で受信された基地局1からの制御信号(一般制御情報及び選択制御情報)を受けると、当該制御信号を周波数変換、アナログ/デジタル変換などの処理を施す。受信部403及び404は、これら所定の処理が施されたデジタルベースバンド信号を復調及び復号部405に送る。
復調及び復号部405は、受信部403及び404から制御信号を受けると、その制御信号を個別制御チャネルのための所定の方式で復調及び復号する。このとき制御信号が拡散変調されている場合には、復調及び復号部405は、ユーザ固有の制御チャネル用拡散コードにより逆拡散する。本発明は、この復調及び復号方式を限定するものではないため、利用される方式に適用可能な一般的な復調機能及び復号機能を有するようにすればよい。
図5、6及び7は、個別制御チャネルにより受信される制御信号のフォーマットの例をそれぞれ示す図である。基地局1からの制御信号は、その制御状態に応じて図5、6及び7のいずれかのフォーマットを持つ。この制御信号のフォーマットの詳細については後述する。復調及び復号部405は、受信された制御信号のうち、復調及び復号により得られた選択制御情報を選択部406に送り、同様に得られた一般制御情報及びこの選択制御情報を上位レイヤ機能部410に送る。
上位レイヤ機能部410は、一般制御情報のうちの切替指示を参照し、TPCを適用すべきか或いはAMCを適用すべきかを判断する。上位レイヤ機能部410は、この通信方式及び選択制御情報チャネルの通信フォーマットを選択部406に通知する。また、上位レイヤ機能部410は、決定された通信方式を適応電力制御部417に送る。
また、上位レイヤ機能部410は、通信方式としてTPCが選択されると、更に、スケジューラ411を動作させるか或いは一定の周波数帯域及びタイミングによるスケジューリングをするか若しくはそれの伝送レート等を決定する。上位レイヤ機能部410は、このように決定された情報をスケジューラ411へ送る。上位レイヤ機能部410は、例えば、選択制御情報にスケジューリング情報(図5及び6参照)が格納されている場合に、スケジューラ411を動作させると決定し、このスケジューリング情報をスケジューラ411へ通知する。
選択部406は、上位レイヤ機能部410から通知される通信方式及び通信フォーマットを受けると、その通信方式に基づいて、復調及び復号部405から送られる選択制御情報を取得する。選択部406は、通知された通信方式がAMCである場合には、選択制御情報のうちSINR通知情報(図5参照)を得る。選択部406は、取得されたSINR通知情報をスケジューラ411に送る。
一方、選択部406は、通知された通信方式がTPCの場合には、選択制御情報のうちTPC制御ビット(図6参照)を得る。なお、TPCとしてアウタループ制御のみが実装されている場合にはこのTPC制御ビットを参照しないようにしてもよい。選択部406は、取得されたTPC制御ビットを適応電力制御部417に送る。
スケジューラ411は、選択部406からSINR通知情報を受けると、AMCのための処理を行う。具体的には、スケジューラ411は、送信パケットキュー412から通知される蓄積された送信予定のパケット量とSINR通知情報とに基づいて適切な変調方式及び符号化方式を決定する。このスケジューラ411により決定される適切な変調方式及び符号化方式を適応変調レートと表記する場合もある。スケジューラ411は、決定された適応変調レートを適応レート制御部413に送る。なお、本発明は、このスケジューラ411による適応変調レートの決定方法を限定するものではなく一般的な決定方法であればよいため、詳細説明を省略する。また、スケジューラ411により決定される適応変調レートに関する情報は、上りリンクの制御情報として送信アンテナ419から送信される。
また、スケジューラ411は、上位レイヤ機能部410から通信方式(TPC)、伝送レート等の通知を受けると、この通知された伝送レートに対応する変調方式及び符号化方式を決定する。スケジューラ411は、このように決定された変調方式及び符号化方式を一定レート設定部414に送る。
また、スケジューラ411は、上位レイヤ機能部410からスケジューリング情報を受けると、この情報に基づき、送信機会割り当てを決定する。スケジューラ411は、決定された割り当て機会に応じて、送信パケットキュー412へ所定データ量を読み出す指令を出す。
送信パケットキュー412は、スケジューラ411からの読み出し指令に応じて、同様に通知されるデータ量に相当する送信パケットを符号化及び変調部415に送る。
符号化及び変調部415は、送信パケットキュー412から送られた送信パケットデータに対し、適応レート制御部413若しくは一定レート設定部414から送られる変調方式及び符号化方式に基づいて、符号化及び変調を行う。符号化及び変調部415は、符号化及び変調された信号を電力調整部416へ送る。
適応電力制御部417は、上位レイヤ機能部410から通知される通信方式に応じた送信電力を決定する。具体的には、適応電力制御部417は、通知された通信方式がAMCの場合には、送信電力を最大送信電力とすることを決定する。一方で、適応電力制御部417は、通知された通信方式がTPCの場合には、選択部406から送られるTPC制御ビットに応じて送信電力の増減を行い、決定された送信電力を電力調整部416に送る。なお、通知された通信方式がAMCの場合に、MCSセットによって送信電力低減を指定するようにしてもよい。このようなMCSセットによる送信電力低減処理については従来手法を用いればよい。
電力調整部416は、符号化及び変調部415から送られる信号を適応電力制御部417から送られる送信電力に設定する。電力調整部416は、電力設定された信号を送信部418に送る。
送信部418は、電力調整部416から送られる信号に対して、デジタル/アナログ変換、周波数変換等を行い、送信信号を接続される送信アンテナ419から放射させる。なお、明記していないが、所定のパイロット信号は、一般的な方法でチャネル配置され、送信アンテナ419から随時送信される。
〈基地局〉
以下、基地局1の機能構成について図8を用いて説明する。図8は、第一実施形態における基地局1の受信局としての機能構成を示すブロック図である。
基地局1は、受信局として動作するための機能として、送信アンテナ801、送信部802、送信電力制御設定部803、SINR通知部804、選択部805、適応レート制御部807、一定レート設定部808、上位レイヤ機能部810、スケジューラ制御部815、データ判定部816、復調及び復号部820、フォーマット分離部821、モード切替判定部822、閾値モニタ823、SINR推定部825、チャネル推定部826、受信部827及び828、受信アンテナ829及び830等を備える。ハードウェア構成としては、上記機能部がそれぞれハードウェア回路で実現されるようにしてもよいし、メモリに記憶された制御プログラムがCPU(Central Processing Unit)にロードされ実行されることにより実現されるようにしてもよい。
受信部827は受信アンテナ829と接続され、受信部828は受信アンテナ830と接続される。受信部827及び828はそれぞれ接続される受信アンテナ829及び830で受信された移動端末2及び3からの信号を受けると、この受信信号に周波数変換、アナログ/デジタル変換などの処理を施す。受信部827及び828は、受信信号のうちパイロット信号をチャネル推定部826へ送り、それ以外の受信信号をフォーマット分離部821へ送る。
チャネル推定部826は、受信部827及び828から送られるパイロット信号に基づいて、送信元の移動端末2又は3と基地局1との間のチャネル推定値を算出する。本発明は、このチャネル推定方法を限定するものではないため、一般的なチャネル推定方法が実施されればよい。チャネル推定部826は、このチャネル推定値を復調及び復号部820、SINR推定部825にそれぞれ送る。
フォーマット分離部821は、受信信号を受けると、上位レイヤ機能部810から通知される通信フォーマットにより、制御信号及びユーザデータ信号を分離する。このとき、送信元の移動端末との通信にAMCが適用されている場合には、この制御信号にはその移動端末により選択された適応変調レートに関する情報が含まれる。一方、TPCが適用されている場合にはこの情報は含まれず、それの配置エリアにはユーザデータが含まれている。フォーマット分離部821は、分離された制御信号及びユーザデータ信号をスケジューラ制御部815、復調及び復号部820へそれぞれ送る。
スケジューラ制御部815は、上位レイヤ機能部810から通知されるスケジューラ情報に基づき、スケジューラが利用されている場合にはその送信元移動端末に関する割り当て領域(周波数帯域、タイミング)を復調及び復号部820に通知する。また、スケジューラ制御部815は、送信元移動端末に対しAMCが適用されている場合には制御信号に含まれるその移動端末により選択された適応変調レートに関する情報を適応レート制御部807へ送る。
適応レート制御部807は、スケジューラ制御部815からのこの適応変調レートに関する情報を受ける。このとき、適応レート制御部807は、その送信元移動端末からの信号についてはAMC方式が適用されていることが選択部805から既に通知されている。従って、適応レート制御部807は、その送信元移動端末からの信号に関する通信方式と適応変調レートに関する情報とを復調及び復号部820へ通知する。
一定レート設定部808は、その送信元移動端末からの信号にTPC方式が適用されている場合には、選択部805からその送信元移動端末からの信号についてはTPC方式が適用されていること、及びTPCの場合に適用される変調方式及び符号化方式に関する情報が既に通知されている。一定レート設定部808は、その送信元移動端末からの信号に関する通信方式と変調方式及び符号化方式に関する情報とを復調及び復号部820へ通知する。
復調及び復号部820は、スケジューラ制御部815から送られる割り当て領域、適応レート制御部807若しくは一定レート設定部808のいずれかにより通知される変調方式及び符号化方式により、ユーザデータ信号に対し復調及び復号処理を行う。このとき、復調及び復号部820は、チャネル推定部826から送られるチャネル情報を復調及び復号時の伝搬路変動補正に利用するようにしてもよい。このように復調及び復号されたユーザデータはデータ判定部816に送られる。
データ判定部816は、復号されたユーザデータに関し誤りなく受信されたかどうかを判定する。この判定には、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)が利用される。データ判定部816は、誤りなく正常にデータが受信された(ACK状態)か、誤りが発生し正しくデータが受信されなかった(NACK状態)かを判定する。データ判定部816は、これらの結果をモード切替判定部822にフィードバックするようにしてもよい。データ判定部816は、ACK状態と判定した場合には、そのユーザデータを他の機能部(図示せず)に送る。
SINR推定部825は、チャネル推定部826から送られるチャネル推定値、既知パイロットシンボル等を用いてSINRを推定する。本発明は、このSINRの推定方法を限定するものではないため、一般的なSINR推定方法が実施されればよい。SINR推定部825は、推定されたSINRを閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、図3に示すMCSセットを管理する。閾値モニタ部823は、SINR推定部825から送られるSINRに対応するCQIを取得する。このとき、閾値モニタ部823は、例えばルックアップテーブル(図示せず)に格納されるCQIとSINRとの対応関係に基づいてこのSINRに対応するCQIを取得する。続いて、閾値モニタ部823は、MCSセットを参照することにより、取得された有効なCQI値が存在するか否かを判断する。図3の例によれば、閾値モニタ部823は、SINRに対応するCQIが31以下である場合には有効なCQIが存在すると判断し、このCQIが32以上である場合には有効なCQIが存在しないと判断する。
閾値モニタ部823は、上記CQIチェックの判断結果をモード切替判定部822に通知する。閾値モニタ部823は、有効なCQIが存在すると判断した場合にはそのCQI値も同様にモード切替判定部822に通知する。
閾値モニタ部823は、更に、MCSセットを所定の情報(823−1)に基づいて最適化するような機能を持ってもよい。この機能について図9を用いて説明する。図9は、基地局1と隣接基地局1−1、1−2、1−3、1−4、1−5及び1−6とが構成するセルを示す図である。このセル構成の例では、基地局1にとって各隣接基地局はそれぞれ干渉局となる。例えば、基地局1の上位レイヤ機能部810が、隣接基地局1−1から1−6のRoT(Rise over Thermal)の情報を集め、閾値モニタ部823がこのRoT情報に基づいてMCSセットの有効値の増減を決定する。具体的には、隣接基地局のうちRoTが高い1以上の基地局が存在する場合にはMCSの有効値を削り(図3の×を増やし)、逆に全ての基地局においてRoTが少ない場合はMCSの有効値を増やす(図3の×を減らす)。閾値モニタ部823によるこのMCSセットの自動最適化方法の詳細については、動作例の項において述べることとする。
なお、RoT値は、パイロット信号を受信してSINRを算出する過程において取得されている(I+N)と初期値Nとを比較することで算出される。隣接基地局は、このように算出されたRoT情報を隣接基地局へ通知するようにすればよい。
モード切替判定部822は、閾値モニタ部823における上記CQIチェックに基づいて、対象の移動端末との間で伝送される信号について通信方式を切り替える(モードを切り替える)べきか否かを判断する。モード切替判定部822は、対象の移動端末について現在適用されている通信方式を上位レイヤ機能部810から取得し、これを参照してモード切り替えを決定する。モード切替判定部822によるこのモード切り替え方法の詳細については、動作例の項において述べることとする。モード切替判定部822は、決定されたモード切り替え情報及びCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る。
上位レイヤ機能部810は、各移動端末について適用されている通信方式(AMCかTPC)に関する情報をそれぞれ保持する。上位レイヤ機能部810は、この保持される情報を要求によりモード切替判定部822へ送る。また、上位レイヤ機能部810は、モード切替判定部822からモード切り替えが発生する旨の通知を受けると、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送される制御信号のモード切り替え後のフォーマット(図5、6及び7参照)を決定する。上位レイヤ機能部810は、決定されたモード切り替え後の制御信号のフォーマットをフォーマット分離部821へ通知する。
上位レイヤ機能部810は、TPCからAMCへの切り替え発生時には、図5に示す制御信号フォーマットに変更する。このとき、上位レイヤ機能部810は、このAMCへの切り替え発生を示す情報と共にモード切替判定部822から送られているCQI値を選択部805へ送る。なお、SINR通知情報として送信される情報はCQIに限られず、SINR値そのものを送信するようにしてもよい。
また、上位レイヤ機能部810は、AMCからTPCへの切り替え時には、図6又は7に示す制御信号フォーマットに変更する。このとき、上位レイヤ機能部810は、図5におけるSINR通知部であったエリアをユーザデータエリアとして決定するようにしてもよい。スケジューリングが実行されない場合には選択制御情報のスケジューリング情報部は削除されるようにしてもよい(図7参照)。上位レイヤ機能部810は、このTPCへの切り替え発生を示す情報と共に送信機会割り当てに関するスケジューリング情報及びTPC制御ビット等を選択部805へ送る。このスケジューリング情報は、スケジューラ制御部815へも送られる。
また、上位レイヤ機能部810は、通信方式の切り替えが発生する旨の通知を受けると、対象の移動端末との間でシグナリングによる通信フォーマットの切り替え認識を行うようにしてもよい。これによれば、対象の移動端末は、そのシグナリング完了後は、新たなフォーマットによる通信を実行することができるようになる
選択部805は、上位レイヤ機能部810から受けた切り替え情報に基づいて、AMCへの切り替え時にはCQI値をSINR通知部804へ送り、対象の移動端末に関しAMCが適用されることを適応レート制御部807に通知する。一方、選択部805は、TPCへの切り替え時にはTPC制御ビット及びスケジューリング情報を送信電力制御設定部803へ送り、TPC時に適用される一定の変調方式及び符号化方式に関する情報を一定レート設定部808へ通知する。
SINR通知部804は、選択部805からCQI値を受けると、その移動端末への制御情報における一般制御情報の切替指示部にAMCへの切り替えフラグを設定し、選択制御情報のSINR通知部にCQI値を設定し、スケジューリング情報部には送信機会割り当て情報を設定する。なお、スケジューリングが実行されない場合には選択制御情報のスケジューリング情報部は削除されるようにしてもよい。
送信電力制御設定部803は、選択部805からスケジューリング情報及びTPC制御ビットを受けると、その移動端末への制御情報における一般制御情報の切替指示部にTPCへの切り替えフラグを設定し、選択制御情報にTPC制御ビットを設定し、スケジューリング情報部には割り当て情報を設定する。
送信部802は、このように生成された制御信号に対して、デジタル/アナログ変換、周波数変換等を行い、生成された送信信号を接続される送信アンテナ801から放射させる。
〔動作例〕
以下、モード切替判定部822によるモード切り替え動作及び閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の動作についてそれぞれ説明する。
これらの動作例について説明する前に、まず、第一実施形態における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作について図10を用いて説明する。図10は、第一実施形態における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示すフローチャートである。
受信アンテナ829及び830により受信された移動端末からの信号が受信部827及び828により所定の信号処理が施される。これにより得られたその移動端末からのパイロット信号からチャネル推定部826により得られるチャネル推定値等を用いてSINR推定部825がSINRを推定する。第一実施形態における基地局1はこのSINRを用いて切り替えモードを以下のように決定する。
閾値モニタ部823が、SINR推定部825から送られるSINRに対応するCQIを取得する(S101)。閾値モニタ部823は、MCSセットを参照することにより、このCQIが有効なCQI値であるか否かを確認する(S102)。閾値モニタ部823は、このCQIチェックの結果をモード切替判定部822に通知する。
モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からこのCQIチェック結果を受けると共に、このCQIの対象移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報を上位レイヤ機能部810から取得する。モード切替判定部822は、このCQIチェックの結果及び現在の通信方式に基づき、モード切り替えを決定する(S103)。モード切替判定部822は、決定されたモード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送る。
モード切替判定部822から送られるモード切り替え情報によりモード切り替えが発生しないと判断される場合には(S103;NO)、その移動端末との通信に現在使用されている通信フォーマットがそのまま継続使用される(S108)。
一方、モード切り替えが発生すると判断されている場合には(S103;YES)、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送される制御信号のモード切り替え後の通信フォーマットを決定する(S104)(図5、6及び7参照)。上位レイヤ機能部810は、モード切り替え後の通信フォーマットを決定すると、その移動端末との間でシグナリングにより通信モード切り替えを認識し合う(S105)。それ以降、その移動端末との間で伝送される通信フォーマットは切り替え後の通信フォーマットとなる(S106及びS107)。
ここで、モード切替判定部822によるモード切り替え動作の詳細について図11、12、13及び14を用いてそれぞれ説明する。モード切替判定部822によるモード切り替えの判断方法には3つの方法がある。図11は第1判断方法による動作を示し、図12及び13は第2判断方法による動作を示し、図14は第3判断方法による動作を示すフローチャートである。
第1判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823によるCQIチェックの結果及びCQI値を受けると、以下のようにモード切り替えを判断する。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として対応する有効なCQI値が存在すると判断されている場合には(S111;YES)、その移動端末との通信にAMC方式を適用することを決定する(S112)。逆に、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として対応する有効なCQI値が存在しないと判断されている場合には(S111;NO)、その移動端末との通信にTPC方式を適用することを決定する(S113)。
モード切替判定部822は、この決定された通信方式と対象の移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報とを比較してモード切り替えが発生するか否かを判定する(S114)。モード切替判定部822は、決定された通信方式と現在の通信方式とが異なる場合にモード切り替えが発生すると判定し(S114;YES)、モード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送る(S115)。一方、決定された通信方式と現在の通信方式とが同じ場合にモード切り替えが発生しないと判定し(S114;NO)、モード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送らない。そして、モード切替判定部822は、決定された通信方式がAMCである場合にはCQI値を上位レイヤ機能部810へ送り(S117)、TPCである場合にはTPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S118)。
第2判断方法では、モード切替判定部822は、各移動端末について過去n回のCQIチェックの結果をそれぞれ保持し、この過去n回のCQIチェックの結果の統計に基づいてモード切り替えを判断する。まず、モード切替判定部822は、上位レイヤ機能部810から対象の移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報を受けると、その現在の通信方式に応じて判断手法を切り替える(S121)。
モード切替判定部822は、現在の通信方式がAMCである場合には以下のようにモード切り替えを判断する(S121;AMC)。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在しないと判断されている場合には(S122;NO)、今回のCQIチェックの結果を含め過去n回のCQIチェックの結果の統計を取る(S125)。これにより、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されている場合に(S125;YES)、その移動端末との通信をAMC方式からTPC方式へモード切り替えを行うことを決定する(S127)。モード切替判定部822は、モード切り替え情報とTPC制御ビットとを上位レイヤ機能部810へ送る(S128)。
一方、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されていない場合に(S125;NO)、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S123)。この場合、モード切替判定部822は、上位レイヤ機能部810へ送るCQI値をMCSセットの最低レベルの値(図3のCQI=63)に設定する(S126)。モード切替判定部822は、MCSセットの最低レベルの値に設定されたCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S124)。
また、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在すると判断されている場合にも(S122;YES)同様に、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S123)。この場合には、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823から送られるCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S124)。
次に、モード切替判定部822は、現在の通信方式がTPCである場合には以下のようにモード切り替えを判断する(S121;TPC)。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在すると判断されている場合には(S131;YES)、今回のCQIチェックの結果を含め過去n回のCQIチェックの結果の統計を取る(S135)。これにより、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されていない場合に(S125;NO)、その移動端末との通信をTPC方式からAMC方式へモード切り替えを行うことを決定する(S136)。この場合、モード切替判定部822は、モード切り替え情報とCQI情報とを上位レイヤ機能部810へ送る(S137)。
一方、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されている場合に(S125;YES)、その移動端末との通信にTPC方式を継続適用することを決定する(S132)。また、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在しないと判断されている場合にも(S131;NO)同様に、その移動端末との通信にTPC方式を継続適用することを決定する(S132)。この場合には、モード切替判定部822は、TPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S133)。
なお、図12及び13のフローチャートでは、モード切り替えを判定するために1つの統計閾値mが利用される場合について示しているが、現在適用されている通信方式によってこの統計閾値が切り替るようにしてもよい。例えば、現在適用されている通信方式がAMCの場合には有効なCQI値が存在しない回数がm回以上か否かが判断され、現在適用されている通信方式がTPCの場合には有効なCQI値が存在しない回数がp(p<m)回以上か否かが判断されるようにしてもよい。
第3判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からはCQI値のみを受け(S101)、データ判定部816からデータ判定結果を受け(S141)、以下のようにモード切り替えを判定する。第3判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からのCQIチェック結果を利用しない。この第3判断方法は、現在適用されている通信方式がAMCの場合で動作する。
モード切替判定部822は、各移動端末について過去n回のデータ判定結果をそれぞれ保持する。そして、モード切替判定部822は、今回のデータ判定結果を含め過去n回のデータ判定結果の統計を取る(S142)。これにより、モード切替判定部822は、ACK状態(受信データ正常)とm回以上判定されていない場合に(S142;NO)、その移動端末との通信をAMCからTPC方式へモード切り替えを行うべきと判定する(S144)。モード切替判定部822は、モード切り替え情報とTPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S145)。
一方、モード切替判定部822は、ACK状態(受信データ正常)とm回以上判定されている場合に(S142;YES)、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S146)。モード切替判定部822は、CQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S147)。
次に、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の動作について図15及び16を用いて説明する。閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の手法には2つの方法がある。図15は、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の第1手法の動作を示すフローチャートであり、図16は、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の第2手法の動作を示すフローチャートである。
MCSセットの第1手法による自動最適化は、以下のように実行される。
基地局1の上位レイヤ機能部810は、各隣接基地局(図9の例における基地局1−1から1−6)からRoT(Rise over Thermal)情報をそれぞれ収集する(S151)。上位レイヤ機能部810は、収集された各RoT情報をそれぞれ閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、取得された各隣接基地局のRoT情報のうちのいずれか1つのRoTが所定の閾値A以上であるか否かを判断する(S152)。閾値モニタ部823は、いずれか1つのRoTが所定の閾値A以上であると判断すると(S152;YES)、MCSセット内の有効CQI値を削る(S155)。具体的には、図3に示されるMCSセットの低レベルのレコード(CQI値が大きいレコード)から所定の数レコード分を無効化する(S155)。この無効化する所定のレコード数はメモリ等に調整可能に保持されるようにしてもよい。
一方、取得された各隣接基地局のRoT情報のうちのいずれも所定の閾値A以上でないと判断されると(S152;NO)、閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下であるか否かを判断する(S153)。閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下であると判断すると(S153;YES)、MCSセット内の有効CQI値を増やす(S156)。具体的には、図3に示されるMCSセットの無効化されているレコードのうち高レベルのレコード(CQI値が小さいレコード)から所定の数レコード分を有効化する(S156)。この有効化する所定のレコード数はメモリ等に調整可能に保持されるようにしてもよい。
閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下でないと判断すると(S153;NO)、MCSセットの更新を行わない(S157)。なお、有効CQI値を削るとは、AMCモードにて使用できる最低送信レートを高めることでAMCモードからTPCモードへ遷移させ、送信電力制御により干渉低減を図るものである。反対に、有効CQI値を増やすとは、AMCモードにて使用できる最低送信レートを低めることでTPCモードからAMCモードへ遷移させ、システムスループット増大を図るものである。
次に、MCSセットの第2手法による自動最適化の動作について説明する。
基地局1の上位レイヤ機能部810は、自局内の各移動端末に関するSINR値の統計情報を用いてMCSセットの自動最適化を行う。上位レイヤ機能部810は、自局内の各移動端末に関するSINR値のうち高品質の上位X(%)に対してAMC方式が適用されるように設定する(S161)。上位レイヤ機能部810は、システムスループットを目標値に近づけるようにこの割合値X(%)を決定する。
上位レイヤ機能部810は、各ユーザの伝搬情報を統計的に処理しているスケジューラ(図示せず)に対し、SINR累積分布を計算させる(S162)。上位レイヤ機能部810は、計算された累積分布の品質上位X(%)をAMCエリアとするために、品質上位X(%)の閾値となるSINR値αを算出する(S163)。上位レイヤ機能部810は、このSINR値αを閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、このSINR値αに対応する閾値CQIを取得し、MCSセットのその閾値CQIより品質の悪いレコードを無効化する。これにより、その閾値CQI以下の移動端末との通信には、TPC方式が利用される。
なお、上位レイヤ機能部810により設定される割合値X(%)は、周辺基地局との間でトラヒック状況等をやりとりすることにより決定されるようにしてもよい。この場合、例えば、トラヒックが集中している基地局の割合値Xが高く設定され、トラヒックが集中していない基地局の割合値Xが低く設定されるように制御される。
〈第一実施形態の作用及び効果〕
ここで、上述した第一実施形態における移動通信システムの作用及び効果について述べる。
第一実施形態における移動通信システムを構成する各基地局では、AMC用及びTPC用の制御情報(選択制御情報)を配置する選択制御情報チャネルとそれ以外の制御情報を配置する一般制御情報チャネルとに区別して個別制御チャネルを構成する。本実施形態における基地局1は、このAMC用の制御情報(SINR通知)についてRepetitionを行わないで送信することによりAMCエリアをセルの全領域よりも狭い領域に設定する。これは、TPC等の他の通信方式に比べAMC用の制御情報は情報量が大きくなるからである。
これにより、AMC用の制御情報量を削減することができ、その削減された領域をユーザデータ送信に利用すれば、ユーザデータ送信のための無線リソースを有効に利用することができる。また、MCSセットをセル端までカバーさせる必要がないため、AMC用の制御情報ビット自体を小さくすることができる。
従って、第一実施形態によれば、周波数利用効率を向上させつつAMCを適用することができるため高速通信を実現することができる。
また、本実施形態における基地局1では、セル領域内のAMCエリア以外の領域にはTPCが適用される。TPCは、AMCに比較して制御情報が少ないため、セル端付近までカバーするべくRepetition等を施したとしても制御情報が多量になることは考え難い。
これにより、このTPCエリア内では、AMC用の制御情報を削除することで周波数利用効率を向上させながら、更に一定通信レートを確保しつつ送信電力を低減することができる。これにより、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
本実施形態における基地局1では、自局内の移動端末がAMCエリアに存在するか否かを判断するために、その移動端末から送信されるパイロット信号から推定されるSINR値が有効なCQI値に対応するか否かがMCSセットを参照することにより判定される。
これにより、移動端末がAMC用の制御情報を正常受信できない程度の伝搬環境に存在する場合には、AMC方式が適用されない。すなわち、自局内の各移動端末に関し、存在するエリア(AMCかTPC)をそれぞれ適切に判断することができる。
図17及び18は、従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(スループット及び送信電力)を示すグラフである。図17及び18では、実線が本実施形態における移動通信システムの通信特性を示し、破線が従来システムの通信特性を示している。
図17によれば、AMC用制御情報を削減しユーザデータの送信割合を大きくすることができるため、AMCエリアにおいて従来システムよりも本実施形態のシステムのほうがスループットを向上できる。また、TPCエリアではAMCが適用されないので従来例に比べスループットは低下するが、AMC用の制御情報を削減しかつTPCによる隣接セルへの干渉量低減を図ることができるため、セル端付近では従来システムよりも本実施形態のシステムのほうがスループットは向上する。
図18によれば、従来システムではAMCがセルの全領域で適用されるため、送信電力は略一定となるが、本実施形態のシステムではTPCエリアにおいて送信電力を低減させることができる。
〔第一変形例〕
上述の第一実施形態における基地局1では、図10の動作例に示すように、上位レイヤ機能部810が、モード切り替えの発生を検知すると、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送されるモード切り替え後の制御信号の通信フォーマットを決定し、その移動端末との間でシグナリングにより通信モード切り替えを認識し合うという通信シーケンスが実行されていた。すなわち、第一実施形態における移動通信システムでは、シグナリングにより通信モード切り替えが認識されるまでは、切替え前の通信方式により通信が継続されていた。
以下に述べる第一変形例では、シグナリングにより通信モード切り替えが認識される前に、一時的な措置としてTPC方式へ強制的に切り替えを開始する。この第一変形例によれば、即座に適切な通信方式への切り替えを実施し干渉抑圧を実現することができる。なお、この第一変形例は、AMCエリアからTPCエリアへの切り替え時に好適な手法である。図19は、第一変形例における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示すフローチャートである。
図19に示されるように、上位レイヤ機能部810は、モード切り替えが発生すると判断されている場合には(S103;YES)、暫定TPC通信モードへ移行する旨を制御信号により対象移動端末へ通知する(S191)。この通知は、図5、6及び7に示される制御信号の所定の箇所にその旨を示すビットを設けることにより実現するようにしてもよい。
この暫定TPC通信モードでの通信フォーマット(変調方式、符号化方式等)は基地局及び移動端末において既知とする。これにより、上記通知を受けた移動端末は、以降、その既知の通信フォーマットを用いてTPC通信を行う(S192)。基地局1の上位レイヤ機能部810は、この暫定TPC通信モードでの通信中に、上述の第一実施形態のようにモード切り替え後の適切な通信フォーマットを決定し(S104)、適用されるように(S106、S107)制御する。
〔第二変形例〕
上述の第一実施形態における移動端末2及び3では、通信方式がTPCに決定された場合には一定レート設定部414に一定の変調方式及び符号化方式が送られ、符号化及び変調部415がこれらに応じて変調及び符号化を実行していた。
第二変形例では、基地局1がTPCエリアにおいても適応的に通信レートを調整する。第二変形例における基地局1は、ターゲット電力を設定しておき、送信電力がターゲット電力よりも十分低い場合は上位レイヤ機能部810を介して通信レートを増加させ、送信電力がターゲット電力よりも十分高い場合は上位レイヤ機能部810を介して通信レートを減少させる制御を行う。
図20は、第二変形例における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示すグラフである。第一実施形態では図17に示されるようにTPCエリアでは従来システムにスループットで劣っていた領域を、第二変形例では通信レート変換とTPCを組み合わせることによりスループットの向上を図ることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態における移動通信システムについて以下に説明する。上述の第一実施形態における基地局1は、基地局近辺にAMCエリアを設け、その外側にTPCエリアを設けていた。第二実施形態における基地局1は、AMCエリアの内側に更にMIMO(Multi Input Multi Output)を実行するエリア(以降、MIMOエリアと表記する)を設ける。以下、第一実施形態と異なる装置及び機能部についてのみ説明するものとし、第一実施形態と同様のものについては説明を省略する。
〔システム構成及び原理〕
図21は、第二実施形態における移動通信システムのシステム構成を示すブロック図である。第二実施形態における移動通信システムは、第一実施形態と同様のシステム構成を持つ。但し、基地局1は、図21に示されるように、自信の形成するセル内においてMIMOエリア7を設けることにおいて、第一実施形態のそれとは異なる。
第二実施形態における基地局1は、図22に示すMCSセットを管理する。品質レベルの高いCQIには、MIMOエリアが適用される。図22の例では、2ストリームのMIMOを示すが、本発明はこのストリーム数を限定するものではない。また、有効なCQI値は、第一実施形態において利用されるMCSセット(図3参照)と同様に31までに設定されているが、第二実施形態ではAMCエリアを広げて有効なCQI値を増やすようにしてもよい。この場合には、AMC用の制御情報(SINR通知)に適用されるRepetitionを大きくすればよい。
〔装置構成〕
第二実施形態における移動通信システムでは、送信局としての移動端末に関する機能が第一実施形態とは異なる。以下、第二実施形態における移動端末の機能構成について第一実施形態とは異なる機能を中心に説明する。なお、第一実施形態と同様の機能部については説明を省略する。
〈移動端末〉
図23は、第二実施形態における送信局としての移動端末2及び3の機能構成を示している。第一実施形態における移動端末と異なるのは、2つのMIMOストリームが設けられており、これにより電力調整部、送信部及び送信アンテナがそれぞれ2つ設けられていることである。
復調及び符号部405から出力される制御情報(SINR通知情報)に基づいてMIMO通信を行うべきことが上位レイヤ機能部410若しくはスケジューラ411により決定される。例えば、SINR通知情報が高い通信品質を示している場合で送信パケットキュー412に多量にパケットが蓄積されている場合に、MIMO多重通信が選択される。このとき、送信パケットキュー412からは2ストリーム分の送信パケットが読み出され、各MIMOストリームに対応して適応変調符号化が実行される。このようにして得られた各ストリームの信号は、各電力調整部416−1及び416−2で最大電力にそれぞれ設定され、各送信部418−1及び418−2において無線周波数にそれぞれアップコンバートされた後に各送信アンテナ419−1及び419−2から放射される。
〈第二実施形態の作用及び効果〕
上述した第二実施形態における移動通信システムでは、通信状態が良好な領域においてはMIMO多重通信が適用される。これにより、基地局1の近辺ではAMCが適用されかつMIMO多重通信が適用されるため、第一実施形態に較べてより高速通信が実現される。
本発明は、基地局装置及び移動端末に関し、特に基地局装置の形成するセル内において無線通信方式を切り替える手法に関する。
W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いた移動通信シス
テムでは、周波数利用効率の向上を図るため、セル間で同じ周波数帯域を用いる周波数繰り返し構成が採られる。このような周波数配置では、隣接セルへの干渉が大きくセル内のユーザ位置によって通信環境が大きく異なる。そこで、このような移動通信システムにおいて、送信電力制御(TPC(Transmit Power Control))が適用される場合がある。
送信電力制御では、基地局と移動端末との間でパイロットシンボルに基づいて算出されるSIR(Signal to Interference Ratio)値に対応する制御情報(TPC制御ビット)がやりとりされることにより、基地局における各移動端末からの信号の受信電力が一定となるように制御される。
この送信電力制御には、インナループ制御とアウタループ制御とがある。インナループ制御は、送信局からのパイロットシンボルから算出されたSIR測定値とSIR目標値とが比較されることによりTPC制御ビット値が得られ、送信局がこのTPC制御ビット値に応じて送信信号の電力を制御するというものである。アウタループ制御は、RNC(Radio Network Controller)と基地局との間のやりとりにより、SIR目標値が所定の周期で適切な値に更新されるというものである。
一方で、W−CDMA方式を用いた移動通信システムにおいて、より高速な通信を実現するために、通信環境に応じて通信可能な符号化及び変調方式を動的に選択する適応変調符号化(AMC(Adaptive Modulation and Coding))方式の採用が検討されている。このAMC方式を用いた移動通信システムでは、セル内のいずれの場所に移動端末が存在する場合であっても、その存在する位置の通信環境に応じたAMCが実行される。従って、AMCを実行するために必要な制御情報は、セル端まで確実に送信される必要がある。また、AMCの変調符号化方式セット(MCS:Modulation and Coding Scheme)もセル端においても通信可能となるように用意する必要がある。
図24は、移動端末2110と基地局2111との間のAMC実行のための通信シーケンスを示す図である。図24では、まず、移動端末2110は、基地局2111へパイロット信号を送信する(S2101)。基地局2111は、このパイロット信号に基づいてチャネル状態(例えばSINR(Signal-to-Interference and Noise power Ratio)値)を推定する。基地局2111は、このSINRを移動端末2110へ送信する(S2102)。このとき、基地局2111は、このSINRに基づいて決定される移動端末2110のためのスケジューリング情報等を併せて送信する。
移動端末2110は、このスケジューリング情報により送信許可が与えられるまではユーザデータパケットを送信しない。移動端末2110は、送信許可が与えられると、そのSINR値、送信キューに入ったパケット情報量等を加味することにより、自身の通信環境に応じた変調フォーマット(符号化及び変調方式)を決定する。移動端末2110は、この変調フォーマットを基地局2111へ通知し(S2103)、この決定された変調フォーマットが適用されたパケット信号を送信する(S2104)。基地局2111は、この変調フォーマットが適用されたパケット信号の受信状況に応じて、ACK若しくはNACKを移動端末2110へ応答する(S2105)。なお、図24は、移動端末から基地局への上りリンクに関する通信シーケンスを示すが、基地局から移動端末への下りリンクに関する場合も同様の通信シーケンスが実行される。
ところで、図24に示される通信シーケンスにおいて、S2102及びS2103で送信される情報がAMC用の制御情報となっている。従って、AMC方式を用いる場合には、このようなAMC用の制御情報を上りリンク及び下りリンクの双方においてやりとりする必要がある。
更に、このAMC用の制御情報はセルのエッジまで確実に送信される必要があるため、この制御情報データにRepetitionやSpreading等を施すことにより制御情報信号の利得を上げることが行われる。図25は、AMC用の制御情報の通信方法を示す図であり、セルのエッジでの特性保証をするためにRepetition=16が適用され、制御情報の通信領域として80ビットの領域が確保された場合の例を示す。この例によれば、制御情報の通信領域のうち「CB」エリアには制御情報ビットが配置されその右隣りの「CB(R)」エリアにはその「CB」エリアにセットされる制御情報ビットの繰り返しデータが配置される。すなわち、図25の例によれば、80ビットの制御情報通信領域に対して5ビットの制御情報が送信可能である。このようにして、データ通信のために確保されている通信領域と略同じ比率でこの制御情報通信領域を確保する可能性がある。
その他、本願発明に関連する先行技術を開示する文献として以下の文献がある。
特開2004−72157号公報
特開2003−37554号公報
上述のように、AMC方式を用いた従来の移動通信システムでは、データ通信を最適化することが目的でありながら、このAMC用の制御情報をセル端付近まで確実に伝送するためにユーザデータのための通信領域が圧迫されるという問題がある。この問題は、伝搬路変動が略同じの狭帯域で短時間のリソースブロック単位できめ細かくパケットスケジューリングやAMCを実行しようとする場合に発生しやすいため、将来避けては通れない問題である。
本発明は、周波数利用効率を向上させ高速通信を実現する基地局装置及び移動端末を提供することを目的とする。
本発明は、上述した課題を解決するために以下の構成を採用する。即ち、本発明は、セルを形成しこのセル内に存在する移動端末と無線通信を行う基地局装置に関し、当該セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用を決定する決定手段を備えるというものである。
このような構成を実現するためには、上記基地局装置が、移動端末からのパイロット信号に基づいてチャネル状態情報を推定する推定手段を更に備え、上記決定手段が、上記推定手段により推定されるチャネル状態情報に基づいて、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用するか否かを決定するようにしてもよい。例えば、チャネル状態が悪い移動端末(セル端付近に存在する移動端末)には適応変調符号化が適用されないようにすれば、セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用が決定されることになる。
このような構成を採ることにより、上記基地局装置が、適応変調符号化に利用される制御情報の冗長度を他の制御情報の冗長度よりも小さくする制御信号生成手段を更に備えるようにすることができる。冗長度には、例えば、対象情報の繰返し数、拡散率、符号化率等がある。
これにより、制御情報の冗長度を小さくすることでユーザデータの周波数利用率を上げることができ、ひいては、通信スループットを向上させることができる。
更に、上記基地局装置は、上記決定手段により適応変調符号化の適用が決定されなかった場合には、適応変調符号化に利用される制御情報の代わりにユーザデータを配置した通信フォーマットに変更するフォーマット変更手段を備えるようにしてもよい。
これによれば、制御情報自体の情報量を更に削減することができるため、ユーザデータの周波数利用率を更に上げることができる。
また、上記決定手段が、チャネル状態情報と対応するMCS(Modulation and Coding Scheme)セットを有し、上記推定手段により推定されるチャネル状態情報がこのMCSセットの有効値に該当する場合に、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用することを決定するようにしてもよい。
本発明では、セル内の一部の所定の領域に関し適応変調符号化を適用させるため、セル内の全領域に適用させる場合に較べこのMCSセットの有効範囲を狭くすることができる。すなわち、基地局装置自体が持つ、若しくは移動端末に通知するチャネル状態情報自体の情報量を小さくすることができる。
これにより、制御情報自体の情報量を更に削減することができるため、ユーザデータの周波数利用率を更に上げることができる。
このような構成を採る場合には、更に、上記決定手段が、このMCSセットの有効値の範囲を変更する変更手段を有するようにしてもよい。
これにより、適応変調符号化を適用する領域をその基地局装置が配置される通信環境に応じて適応的に調整することが可能となり、適応変調符号化を適用する領域を適切に設定することができる。
また、上記基地局装置が、移動端末からの受信データの誤り判定を行う誤り判定手段と、この誤り判定手段による誤り判定結果を各移動端末についてそれぞれ逐次記録する記録手段とを更に備えるようにし、上記決定手段が、当該記録手段に記録される誤り判定結果に基づいて移動端末について取られた統計により、移動端末との無線通信に適応変調符号化を適用するか否かを決定するようにしてもよい。
また、上記決定手段が、上記所定領域外のセル領域に存在する移動端末との無線通信には送信電力制御の適用を決定するようにしてもよい。
これにより、送信電力制御は適応変調符号化方式に比較して制御情報が少ないため、セル端付近までカバーするべくその制御情報の冗長度を考慮したとしてもユーザデータのための無線リソースが圧迫されることはない。
従って、この送信電力制御が適用される領域内では、適応変調符号化用の制御情報を削除することで周波数利用効率を向上させながら、更に一定通信レートを確保しつつ送信電力を低減することができる。さらには、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
本発明は、上述の本発明に係る基地局装置と無線通信を行う移動端末、この基地局装置と移動端末とを有する移動通信システム、情報処理装置(コンピュータ)を本発明に係る
基地局装置若しくは移動端末として機能させるプログラム、或いは、当該プログラムを記録した記録媒体としても実現可能である。
本発明によれば、周波数利用効率を向上させ高速通信を実現する基地局装置及び移動端末を提供することができる。
図1は第一実施形態における移動通信システムのシステム構成を示す図である。
図2は第一実施形態におけるAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。
図3はSINR通知に用いられる情報としてCQI値が用いられる場合のCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。
図4は第一実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示す図である。
図5は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図6は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図7は制御信号のフォーマットの例を示す図である。
図8は第一実施形態における基地局の受信局としての機能構成を示す図である。
図9は基地局と隣接基地局とが構成するセルを示す図である。
図10は第一実施形態における基地局の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示す図である。
図11はモード切り替えの第1判断方法による動作例を示す図である。
図12はモード切り替えの第2判断方法による動作例を示す図である。
図13はモード切り替えの第2判断方法による動作例を示す図である。
図14はモード切り替えの第3判断方法による動作例を示す図である。
図15はMCSセットの自動最適化の第1手法の動作例を示す図である。
図16はMCSセットの自動最適化の第2手法の動作例を示す図である。
図17は従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示す図である。
図18は従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(送信電力)を示す図である。
図19は第一変形例における基地局の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示す図である。
図20は第二変形例における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示す図である。
図21は第二実施形態における移動通信システムのシステム構成を示す図である。
図22は第二実施形態におけるCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。
図23は第二実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示す図である。
図24は移動端末と基地局との間のAMC実行のための通信シーケンスを示す図である。
図25はAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態における移動通信システムについてそれぞ
れ説明する。なお、以下に述べる各実施形態の構成はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態における移動通信システムについて、以下に説明する。
〔システム構成〕
まず、第一実施形態における移動通信システムのシステム構成について、図1を用いて説明する。図1は、第一実施形態における移動通信システムのシステム構成を示すブロック図である。第一実施形態における移動通信システムは、複数の基地局(例えば、図1に示す基地局1)がそれぞれネットワーク(図示せず)により接続され、構成される。携帯電話等の移動端末2及び3は、最寄りの基地局1と無線通信することにより、本実施形態における移動通信システムと接続され、通話サービス等の通信サービスの提供を受ける。
〔第一実施形態の原理〕
第一実施形態における移動通信システムを構成する各装置の詳細機能について説明する前に、まず、第一実施形態における移動通信システムで実行される通信手法の概念について説明する。
基地局1は、図1に示されるように、自身の形成するセル内において、AMCを適用するエリア(以降、AMCエリアと表記する)5とTPCを適用するエリア(以降、TPCエリアと表記する)6とを設ける。AMCエリア5内に存在する移動端末2と基地局1との通信においてはAMCが利用され、TPCエリア6内に存在する移動端末3と基地局1との通信においてはTPCが利用される。
基地局1は、個別制御チャネルを、AMC及びTPC用の制御情報(以降、選択制御情報とも表記する)を配置する選択制御情報チャネルとそれ以外の制御情報(以降、一般制御情報とも表記する)を配置する一般制御情報チャネルとに区別して利用する。
基地局1及び移動端末2及び3は、図2に示されるように、Repetitionを行わない方法でAMC用の制御情報を送信する。これにより、セル端付近の移動端末3ではこのAMC用の制御情報を受信することができないため、AMCエリア5は、セルの全領域よりも狭い基地局1周辺の領域に限定される。
図2は、従来手法の図25に対応する第一実施形態におけるAMC用の制御情報の通信方法を示す図である。図2の通信方法によれば、図25の通信方法の場合に較べ、制御情報の通信領域として75ビットの領域が削減される。これにより、この削減された領域は、ユーザデータ通信領域として確保することができる。
更に、この通信方法によれば、相乗効果として、SINR通知に用いられる情報の量を抑えることが可能となる。これは、セル端に対応するMCSセットを設ける必要がないからである。図3は、SINR通知に用いられる情報としてCQI(Channel Quality Indicator)値が用いられる場合のCQI値とMCSセットとの対応表を示す図である。従来
手法のようにセル端においてもAMCを適用する場合にはセル端におけるMCSセット及びそれに対応するCQI値を設ける必要があったが、第一実施形態によれば、そのようなセル端におけるMCSセット及びCQI値を設ける必要がない。図3の例によればCQI伝送に必要な制御ビットを従来の6ビット(26=64)から5ビット(25=32)に削減することができる。なお、SINR通知に用いられる情報としてCQI値以外の値が利用される場合においても同様である。
第一実施形態における移動通信システムでは、セル領域内のAMCエリア5より外側のエリアには、TPCが利用される(TPCエリア6)。これによれば、従来方式のようにセル全体でAMCを適用する場合に対し、このTPCエリア内ではSINR通知を削減し周波数利用効率を向上させる事が可能である。更に、このTPCエリア6において従来通りスケジューラを動作させ伝搬環境の良好な時間、周波数帯域、空間を選択することができれば、一定通信レートの条件下で送信電力を低減でき、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
TPCエリア6においてもスケジューラを動作させる場合には、AMCで利用されるSINR通知情報の配置されていた通信領域を上位通信レイヤの機能部が通信フォーマットを変えることによりパケット通信等に流用することが可能となる。また、インナループ型のTPCを行う場合には、受信側装置から送信側装置へ通知されるTPC制御ビットをこのSINR通知情報の配置されていた通信領域に配置するようにしてもよい。なお、本発明は、このAMCエリア5より外側のエリアで利用される無線通信方式を限定するものではないため、TPC以外の無線通信方式が利用されるようにしてもよい。
〔装置構成〕
以下、第一実施形態における移動通信システムを構成する各装置の詳細機能構成について説明する。なお、以下、説明の便宜のため、基地局1については受信局としての機能を中心に説明し、移動端末2及び3については送信局としての機能を中心に説明する。基地局1、移動端末2及び3はそれぞれ、送信局としての機能及び受信局としての機能の双方を備えるものとする。
〈移動端末〉
移動端末2及び3の機能構成について図4を用いて説明する。図4は、第一実施形態における移動端末の送信局としての機能構成を示すブロック図である。移動端末2及び3はそれぞれ図4に示す機能部を備えるものとし、以下の説明では移動端末2について代表して説明する。
移動端末2は、送信局として動作するための機能として、受信アンテナ401及び402、受信部403及び404、復調及び復号部405、選択部406、上位レイヤ機能部410、スケジューラ411、送信パケットキュー412、適応レート制御部413、一定レート設定部414、符号化及び変調部415、電力調整部416、適応電力制御部417、送信部418、送信アンテナ419等を備える。ハードウェア構成としては、上記機能部がそれぞれハードウェア回路で実現されるようにしてもよいし、メモリに記憶された制御プログラムがCPU(Central Processing Unit)にロードされ実行されることに
より実現されるようにしてもよい。
受信部403は受信アンテナ401と接続され、受信部404は受信アンテナ402と接続される。受信部403及び404はそれぞれ接続される受信アンテナ401及び402で受信された基地局1からの制御信号(一般制御情報及び選択制御情報)を受けると、当該制御信号を周波数変換、アナログ/デジタル変換などの処理を施す。受信部403及び404は、これら所定の処理が施されたデジタルベースバンド信号を復調及び復号部405に送る。
復調及び復号部405は、受信部403及び404から制御信号を受けると、その制御信号を個別制御チャネルのための所定の方式で復調及び復号する。このとき制御信号が拡散変調されている場合には、復調及び復号部405は、ユーザ固有の制御チャネル用拡散コードにより逆拡散する。本発明は、この復調及び復号方式を限定するものではないため、利用される方式に適用可能な一般的な復調機能及び復号機能を有するようにすればよい
。
図5、6及び7は、個別制御チャネルにより受信される制御信号のフォーマットの例をそれぞれ示す図である。基地局1からの制御信号は、その制御状態に応じて図5、6及び7のいずれかのフォーマットを持つ。この制御信号のフォーマットの詳細については後述する。復調及び復号部405は、受信された制御信号のうち、復調及び復号により得られた選択制御情報を選択部406に送り、同様に得られた一般制御情報及びこの選択制御情報を上位レイヤ機能部410に送る。
上位レイヤ機能部410は、一般制御情報のうちの切替指示を参照し、TPCを適用すべきか或いはAMCを適用すべきかを判断する。上位レイヤ機能部410は、この通信方式及び選択制御情報チャネルの通信フォーマットを選択部406に通知する。また、上位レイヤ機能部410は、決定された通信方式を適応電力制御部417に送る。
また、上位レイヤ機能部410は、通信方式としてTPCが選択されると、更に、スケジューラ411を動作させるか或いは一定の周波数帯域及びタイミングによるスケジューリングをするか若しくはそれの伝送レート等を決定する。上位レイヤ機能部410は、このように決定された情報をスケジューラ411へ送る。上位レイヤ機能部410は、例えば、選択制御情報にスケジューリング情報(図5及び6参照)が格納されている場合に、スケジューラ411を動作させると決定し、このスケジューリング情報をスケジューラ411へ通知する。
選択部406は、上位レイヤ機能部410から通知される通信方式及び通信フォーマットを受けると、その通信方式に基づいて、復調及び復号部405から送られる選択制御情報を取得する。選択部406は、通知された通信方式がAMCである場合には、選択制御情報のうちSINR通知情報(図5参照)を得る。選択部406は、取得されたSINR通知情報をスケジューラ411に送る。
一方、選択部406は、通知された通信方式がTPCの場合には、選択制御情報のうちTPC制御ビット(図6参照)を得る。なお、TPCとしてアウタループ制御のみが実装されている場合にはこのTPC制御ビットを参照しないようにしてもよい。選択部406は、取得されたTPC制御ビットを適応電力制御部417に送る。
スケジューラ411は、選択部406からSINR通知情報を受けると、AMCのための処理を行う。具体的には、スケジューラ411は、送信パケットキュー412から通知される蓄積された送信予定のパケット量とSINR通知情報とに基づいて適切な変調方式及び符号化方式を決定する。このスケジューラ411により決定される適切な変調方式及び符号化方式を適応変調レートと表記する場合もある。スケジューラ411は、決定された適応変調レートを適応レート制御部413に送る。なお、本発明は、このスケジューラ411による適応変調レートの決定方法を限定するものではなく一般的な決定方法であればよいため、詳細説明を省略する。また、スケジューラ411により決定される適応変調レートに関する情報は、上りリンクの制御情報として送信アンテナ419から送信される。
また、スケジューラ411は、上位レイヤ機能部410から通信方式(TPC)、伝送レート等の通知を受けると、この通知された伝送レートに対応する変調方式及び符号化方式を決定する。スケジューラ411は、このように決定された変調方式及び符号化方式を一定レート設定部414に送る。
また、スケジューラ411は、上位レイヤ機能部410からスケジューリング情報を受
けると、この情報に基づき、送信機会割り当てを決定する。スケジューラ411は、決定された割り当て機会に応じて、送信パケットキュー412へ所定データ量を読み出す指令を出す。
送信パケットキュー412は、スケジューラ411からの読み出し指令に応じて、同様に通知されるデータ量に相当する送信パケットを符号化及び変調部415に送る。
符号化及び変調部415は、送信パケットキュー412から送られた送信パケットデータに対し、適応レート制御部413若しくは一定レート設定部414から送られる変調方式及び符号化方式に基づいて、符号化及び変調を行う。符号化及び変調部415は、符号化及び変調された信号を電力調整部416へ送る。
適応電力制御部417は、上位レイヤ機能部410から通知される通信方式に応じた送信電力を決定する。具体的には、適応電力制御部417は、通知された通信方式がAMCの場合には、送信電力を最大送信電力とすることを決定する。一方で、適応電力制御部417は、通知された通信方式がTPCの場合には、選択部406から送られるTPC制御ビットに応じて送信電力の増減を行い、決定された送信電力を電力調整部416に送る。なお、通知された通信方式がAMCの場合に、MCSセットによって送信電力低減を指定するようにしてもよい。このようなMCSセットによる送信電力低減処理については従来手法を用いればよい。
電力調整部416は、符号化及び変調部415から送られる信号を適応電力制御部417から送られる送信電力に設定する。電力調整部416は、電力設定された信号を送信部418に送る。
送信部418は、電力調整部416から送られる信号に対して、デジタル/アナログ変換、周波数変換等を行い、送信信号を接続される送信アンテナ419から放射させる。なお、明記していないが、所定のパイロット信号は、一般的な方法でチャネル配置され、送信アンテナ419から随時送信される。
〈基地局〉
以下、基地局1の機能構成について図8を用いて説明する。図8は、第一実施形態における基地局1の受信局としての機能構成を示すブロック図である。
基地局1は、受信局として動作するための機能として、送信アンテナ801、送信部802、送信電力制御設定部803、SINR通知部804、選択部805、適応レート制御部807、一定レート設定部808、上位レイヤ機能部810、スケジューラ制御部815、データ判定部816、復調及び復号部820、フォーマット分離部821、モード切替判定部822、閾値モニタ823、SINR推定部825、チャネル推定部826、受信部827及び828、受信アンテナ829及び830等を備える。ハードウェア構成としては、上記機能部がそれぞれハードウェア回路で実現されるようにしてもよいし、メモリに記憶された制御プログラムがCPU(Central Processing Unit)にロードされ実
行されることにより実現されるようにしてもよい。
受信部827は受信アンテナ829と接続され、受信部828は受信アンテナ830と接続される。受信部827及び828はそれぞれ接続される受信アンテナ829及び830で受信された移動端末2及び3からの信号を受けると、この受信信号に周波数変換、アナログ/デジタル変換などの処理を施す。受信部827及び828は、受信信号のうちパイロット信号をチャネル推定部826へ送り、それ以外の受信信号をフォーマット分離部821へ送る。
チャネル推定部826は、受信部827及び828から送られるパイロット信号に基づいて、送信元の移動端末2又は3と基地局1との間のチャネル推定値を算出する。本発明は、このチャネル推定方法を限定するものではないため、一般的なチャネル推定方法が実施されればよい。チャネル推定部826は、このチャネル推定値を復調及び復号部820、SINR推定部825にそれぞれ送る。
フォーマット分離部821は、受信信号を受けると、上位レイヤ機能部810から通知される通信フォーマットにより、制御信号及びユーザデータ信号を分離する。このとき、送信元の移動端末との通信にAMCが適用されている場合には、この制御信号にはその移動端末により選択された適応変調レートに関する情報が含まれる。一方、TPCが適用されている場合にはこの情報は含まれず、それの配置エリアにはユーザデータが含まれている。フォーマット分離部821は、分離された制御信号及びユーザデータ信号をスケジューラ制御部815、復調及び復号部820へそれぞれ送る。
スケジューラ制御部815は、上位レイヤ機能部810から通知されるスケジューラ情報に基づき、スケジューラが利用されている場合にはその送信元移動端末に関する割り当て領域(周波数帯域、タイミング)を復調及び復号部820に通知する。また、スケジューラ制御部815は、送信元移動端末に対しAMCが適用されている場合には制御信号に含まれるその移動端末により選択された適応変調レートに関する情報を適応レート制御部807へ送る。
適応レート制御部807は、スケジューラ制御部815からのこの適応変調レートに関する情報を受ける。このとき、適応レート制御部807は、その送信元移動端末からの信号についてはAMC方式が適用されていることが選択部805から既に通知されている。従って、適応レート制御部807は、その送信元移動端末からの信号に関する通信方式と適応変調レートに関する情報とを復調及び復号部820へ通知する。
一定レート設定部808は、その送信元移動端末からの信号にTPC方式が適用されている場合には、選択部805からその送信元移動端末からの信号についてはTPC方式が適用されていること、及びTPCの場合に適用される変調方式及び符号化方式に関する情報が既に通知されている。一定レート設定部808は、その送信元移動端末からの信号に関する通信方式と変調方式及び符号化方式に関する情報とを復調及び復号部820へ通知する。
復調及び復号部820は、スケジューラ制御部815から送られる割り当て領域、適応レート制御部807若しくは一定レート設定部808のいずれかにより通知される変調方式及び符号化方式により、ユーザデータ信号に対し復調及び復号処理を行う。このとき、復調及び復号部820は、チャネル推定部826から送られるチャネル情報を復調及び復号時の伝搬路変動補正に利用するようにしてもよい。このように復調及び復号されたユーザデータはデータ判定部816に送られる。
データ判定部816は、復号されたユーザデータに関し誤りなく受信されたかどうかを判定する。この判定には、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Check)が利用される。
データ判定部816は、誤りなく正常にデータが受信された(ACK状態)か、誤りが発生し正しくデータが受信されなかった(NACK状態)かを判定する。データ判定部816は、これらの結果をモード切替判定部822にフィードバックするようにしてもよい。データ判定部816は、ACK状態と判定した場合には、そのユーザデータを他の機能部(図示せず)に送る。
SINR推定部825は、チャネル推定部826から送られるチャネル推定値、既知パイロットシンボル等を用いてSINRを推定する。本発明は、このSINRの推定方法を限定するものではないため、一般的なSINR推定方法が実施されればよい。SINR推定部825は、推定されたSINRを閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、図3に示すMCSセットを管理する。閾値モニタ部823は、SINR推定部825から送られるSINRに対応するCQIを取得する。このとき、閾値モニタ部823は、例えばルックアップテーブル(図示せず)に格納されるCQIとSINRとの対応関係に基づいてこのSINRに対応するCQIを取得する。続いて、閾値モニタ部823は、MCSセットを参照することにより、取得された有効なCQI値が存在するか否かを判断する。図3の例によれば、閾値モニタ部823は、SINRに対応するCQIが31以下である場合には有効なCQIが存在すると判断し、このCQIが32以上である場合には有効なCQIが存在しないと判断する。
閾値モニタ部823は、上記CQIチェックの判断結果をモード切替判定部822に通知する。閾値モニタ部823は、有効なCQIが存在すると判断した場合にはそのCQI値も同様にモード切替判定部822に通知する。
閾値モニタ部823は、更に、MCSセットを所定の情報(823−1)に基づいて最適化するような機能を持ってもよい。この機能について図9を用いて説明する。図9は、基地局1と隣接基地局1−1、1−2、1−3、1−4、1−5及び1−6とが構成するセルを示す図である。このセル構成の例では、基地局1にとって各隣接基地局はそれぞれ干渉局となる。例えば、基地局1の上位レイヤ機能部810が、隣接基地局1−1から1−6のRoT(Rise over Thermal)の情報を集め、閾値モニタ部823がこのRoT情
報に基づいてMCSセットの有効値の増減を決定する。具体的には、隣接基地局のうちRoTが高い1以上の基地局が存在する場合にはMCSの有効値を削り(図3の×を増やし)、逆に全ての基地局においてRoTが少ない場合はMCSの有効値を増やす(図3の×を減らす)。閾値モニタ部823によるこのMCSセットの自動最適化方法の詳細については、動作例の項において述べることとする。
なお、RoT値は、パイロット信号を受信してSINRを算出する過程において取得されている(I+N)と初期値Nとを比較することで算出される。隣接基地局は、このように算出されたRoT情報を隣接基地局へ通知するようにすればよい。
モード切替判定部822は、閾値モニタ部823における上記CQIチェックに基づいて、対象の移動端末との間で伝送される信号について通信方式を切り替える(モードを切り替える)べきか否かを判断する。モード切替判定部822は、対象の移動端末について現在適用されている通信方式を上位レイヤ機能部810から取得し、これを参照してモード切り替えを決定する。モード切替判定部822によるこのモード切り替え方法の詳細については、動作例の項において述べることとする。モード切替判定部822は、決定されたモード切り替え情報及びCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る。
上位レイヤ機能部810は、各移動端末について適用されている通信方式(AMCかTPC)に関する情報をそれぞれ保持する。上位レイヤ機能部810は、この保持される情報を要求によりモード切替判定部822へ送る。また、上位レイヤ機能部810は、モード切替判定部822からモード切り替えが発生する旨の通知を受けると、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送される制御信号のモード切り替え後のフォーマット(図5、6及び7参照)を決定する。上位レイヤ機能部810は、決定されたモード切り替え後の制御信号のフォーマットをフォーマット分離部821へ通知する。
上位レイヤ機能部810は、TPCからAMCへの切り替え発生時には、図5に示す制御信号フォーマットに変更する。このとき、上位レイヤ機能部810は、このAMCへの切り替え発生を示す情報と共にモード切替判定部822から送られているCQI値を選択部805へ送る。なお、SINR通知情報として送信される情報はCQIに限られず、SINR値そのものを送信するようにしてもよい。
また、上位レイヤ機能部810は、AMCからTPCへの切り替え時には、図6又は7に示す制御信号フォーマットに変更する。このとき、上位レイヤ機能部810は、図5におけるSINR通知部であったエリアをユーザデータエリアとして決定するようにしてもよい。スケジューリングが実行されない場合には選択制御情報のスケジューリング情報部は削除されるようにしてもよい(図7参照)。上位レイヤ機能部810は、このTPCへの切り替え発生を示す情報と共に送信機会割り当てに関するスケジューリング情報及びTPC制御ビット等を選択部805へ送る。このスケジューリング情報は、スケジューラ制御部815へも送られる。
また、上位レイヤ機能部810は、通信方式の切り替えが発生する旨の通知を受けると、対象の移動端末との間でシグナリングによる通信フォーマットの切り替え認識を行うようにしてもよい。これによれば、対象の移動端末は、そのシグナリング完了後は、新たなフォーマットによる通信を実行することができるようになる
選択部805は、上位レイヤ機能部810から受けた切り替え情報に基づいて、AMCへの切り替え時にはCQI値をSINR通知部804へ送り、対象の移動端末に関しAMCが適用されることを適応レート制御部807に通知する。一方、選択部805は、TPCへの切り替え時にはTPC制御ビット及びスケジューリング情報を送信電力制御設定部803へ送り、TPC時に適用される一定の変調方式及び符号化方式に関する情報を一定レート設定部808へ通知する。
SINR通知部804は、選択部805からCQI値を受けると、その移動端末への制御情報における一般制御情報の切替指示部にAMCへの切り替えフラグを設定し、選択制御情報のSINR通知部にCQI値を設定し、スケジューリング情報部には送信機会割り当て情報を設定する。なお、スケジューリングが実行されない場合には選択制御情報のスケジューリング情報部は削除されるようにしてもよい。
送信電力制御設定部803は、選択部805からスケジューリング情報及びTPC制御ビットを受けると、その移動端末への制御情報における一般制御情報の切替指示部にTPCへの切り替えフラグを設定し、選択制御情報にTPC制御ビットを設定し、スケジューリング情報部には割り当て情報を設定する。
送信部802は、このように生成された制御信号に対して、デジタル/アナログ変換、周波数変換等を行い、生成された送信信号を接続される送信アンテナ801から放射させる。
〔動作例〕
以下、モード切替判定部822によるモード切り替え動作及び閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の動作についてそれぞれ説明する。
これらの動作例について説明する前に、まず、第一実施形態における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作について図10を用いて説明する。図10は、第一実施形態における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示すフローチャートである。
受信アンテナ829及び830により受信された移動端末からの信号が受信部827及び828により所定の信号処理が施される。これにより得られたその移動端末からのパイロット信号からチャネル推定部826により得られるチャネル推定値等を用いてSINR推定部825がSINRを推定する。第一実施形態における基地局1はこのSINRを用いて切り替えモードを以下のように決定する。
閾値モニタ部823が、SINR推定部825から送られるSINRに対応するCQIを取得する(S101)。閾値モニタ部823は、MCSセットを参照することにより、このCQIが有効なCQI値であるか否かを確認する(S102)。閾値モニタ部823は、このCQIチェックの結果をモード切替判定部822に通知する。
モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からこのCQIチェック結果を受けると共に、このCQIの対象移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報を上位レイヤ機能部810から取得する。モード切替判定部822は、このCQIチェックの結果及び現在の通信方式に基づき、モード切り替えを決定する(S103)。モード切替判定部822は、決定されたモード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送る。
モード切替判定部822から送られるモード切り替え情報によりモード切り替えが発生しないと判断される場合には(S103;NO)、その移動端末との通信に現在使用されている通信フォーマットがそのまま継続使用される(S108)。
一方、モード切り替えが発生すると判断されている場合には(S103;YES)、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送される制御信号のモード切り替え後の通信フォーマットを決定する(S104)(図5、6及び7参照)。上位レイヤ機能部810は、モード切り替え後の通信フォーマットを決定すると、その移動端末との間でシグナリングにより通信モード切り替えを認識し合う(S105)。それ以降、その移動端末との間で伝送される通信フォーマットは切り替え後の通信フォーマットとなる(S106及びS107)。
ここで、モード切替判定部822によるモード切り替え動作の詳細について図11、12、13及び14を用いてそれぞれ説明する。モード切替判定部822によるモード切り替えの判断方法には3つの方法がある。図11は第1判断方法による動作を示し、図12及び13は第2判断方法による動作を示し、図14は第3判断方法による動作を示すフローチャートである。
第1判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823によるCQIチェックの結果及びCQI値を受けると、以下のようにモード切り替えを判断する。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として対応する有効なCQI値が存在すると判断されている場合には(S111;YES)、その移動端末との通信にAMC方式を適用することを決定する(S112)。逆に、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として対応する有効なCQI値が存在しないと判断されている場合には(S111;NO)、その移動端末との通信にTPC方式を適用することを決定する(S113)。
モード切替判定部822は、この決定された通信方式と対象の移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報とを比較してモード切り替えが発生するか否かを判定する(S114)。モード切替判定部822は、決定された通信方式と現在の通信方式とが異なる場合にモード切り替えが発生すると判定し(S114;YES)、モード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送る(S115)。一方、決定された通信方式と現在の通信
方式とが同じ場合にモード切り替えが発生しないと判定し(S114;NO)、モード切り替え情報を上位レイヤ機能部810へ送らない。そして、モード切替判定部822は、決定された通信方式がAMCである場合にはCQI値を上位レイヤ機能部810へ送り(S117)、TPCである場合にはTPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S118)。
第2判断方法では、モード切替判定部822は、各移動端末について過去n回のCQIチェックの結果をそれぞれ保持し、この過去n回のCQIチェックの結果の統計に基づいてモード切り替えを判断する。まず、モード切替判定部822は、上位レイヤ機能部810から対象の移動端末の現在適用されている通信方式に関する情報を受けると、その現在の通信方式に応じて判断手法を切り替える(S121)。
モード切替判定部822は、現在の通信方式がAMCである場合には以下のようにモード切り替えを判断する(S121;AMC)。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在しないと判断されている場合には(S122;NO)、今回のCQIチェックの結果を含め過去n回のCQIチェックの結果の統計を取る(S125)。これにより、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されている場合に(S125;YES)、その移動端末との通信をAMC方式からTPC方式へモード切り替えを行うことを決定する(S127)。モード切替判定部822は、モード切り替え情報とTPC制御ビットとを上位レイヤ機能部810へ送る(S128)。
一方、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されていない場合に(S125;NO)、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S123)。この場合、モード切替判定部822は、上位レイヤ機能部810へ送るCQI値をMCSセットの最低レベルの値(図3のCQI=63)に設定する(S126)。モード切替判定部822は、MCSセットの最低レベルの値に設定されたCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S124)。
また、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在すると判断されている場合にも(S122;YES)同様に、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S123)。この場合には、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823から送られるCQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S124)。
次に、モード切替判定部822は、現在の通信方式がTPCである場合には以下のようにモード切り替えを判断する(S121;TPC)。
モード切替判定部822は、CQIチェックの結果として有効なCQI値が存在すると判断されている場合には(S131;YES)、今回のCQIチェックの結果を含め過去n回のCQIチェックの結果の統計を取る(S135)。これにより、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されていない場合に(S125;NO)、その移動端末との通信をTPC方式からAMC方式へモード切り替えを行うことを決定する(S136)。この場合、モード切替判定部822は、モード切り替え情報とCQI情報とを上位レイヤ機能部810へ送る(S137)。
一方、モード切替判定部822は、有効なCQI値が存在しないとm回以上判断されている場合に(S125;YES)、その移動端末との通信にTPC方式を継続適用することを決定する(S132)。また、モード切替判定部822は、CQIチェックの結果と
して有効なCQI値が存在しないと判断されている場合にも(S131;NO)同様に、その移動端末との通信にTPC方式を継続適用することを決定する(S132)。この場合には、モード切替判定部822は、TPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S133)。
なお、図12及び13のフローチャートでは、モード切り替えを判定するために1つの統計閾値mが利用される場合について示しているが、現在適用されている通信方式によってこの統計閾値が切り替るようにしてもよい。例えば、現在適用されている通信方式がAMCの場合には有効なCQI値が存在しない回数がm回以上か否かが判断され、現在適用されている通信方式がTPCの場合には有効なCQI値が存在しない回数がp(p<m)回以上か否かが判断されるようにしてもよい。
第3判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からはCQI値のみを受け(S101)、データ判定部816からデータ判定結果を受け(S141)、以下のようにモード切り替えを判定する。第3判断方法では、モード切替判定部822は、閾値モニタ部823からのCQIチェック結果を利用しない。この第3判断方法は、現在適用されている通信方式がAMCの場合で動作する。
モード切替判定部822は、各移動端末について過去n回のデータ判定結果をそれぞれ保持する。そして、モード切替判定部822は、今回のデータ判定結果を含め過去n回のデータ判定結果の統計を取る(S142)。これにより、モード切替判定部822は、ACK状態(受信データ正常)とm回以上判定されていない場合に(S142;NO)、その移動端末との通信をAMCからTPC方式へモード切り替えを行うべきと判定する(S144)。モード切替判定部822は、モード切り替え情報とTPC制御ビットを上位レイヤ機能部810へ送る(S145)。
一方、モード切替判定部822は、ACK状態(受信データ正常)とm回以上判定されている場合に(S142;YES)、その移動端末との通信にAMC方式を継続適用することを決定する(S146)。モード切替判定部822は、CQI値を上位レイヤ機能部810へ送る(S147)。
次に、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の動作について図15及び16を用いて説明する。閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の手法には2つの方法がある。図15は、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の第1手法の動作を示すフローチャートであり、図16は、閾値モニタ部823によるMCSセットの自動最適化の第2手法の動作を示すフローチャートである。
MCSセットの第1手法による自動最適化は、以下のように実行される。
基地局1の上位レイヤ機能部810は、各隣接基地局(図9の例における基地局1−1から1−6)からRoT(Rise over Thermal)情報をそれぞれ収集する(S151)。
上位レイヤ機能部810は、収集された各RoT情報をそれぞれ閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、取得された各隣接基地局のRoT情報のうちのいずれか1つのRoTが所定の閾値A以上であるか否かを判断する(S152)。閾値モニタ部823は、いずれか1つのRoTが所定の閾値A以上であると判断すると(S152;YES)、MCSセット内の有効CQI値を削る(S155)。具体的には、図3に示されるMCSセットの低レベルのレコード(CQI値が大きいレコード)から所定の数レコード分を無効化する(S155)。この無効化する所定のレコード数はメモリ等に調整可能に保持さ
れるようにしてもよい。
一方、取得された各隣接基地局のRoT情報のうちのいずれも所定の閾値A以上でないと判断されると(S152;NO)、閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下であるか否かを判断する(S153)。閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下であると判断すると(S153;YES)、MCSセット内の有効CQI値を増やす(S156)。具体的には、図3に示されるMCSセットの無効化されているレコードのうち高レベルのレコード(CQI値が小さいレコード)から所定の数レコード分を有効化する(S156)。この有効化する所定のレコード数はメモリ等に調整可能に保持されるようにしてもよい。
閾値モニタ部823は、全てのRoT情報が閾値B以下でないと判断すると(S153;NO)、MCSセットの更新を行わない(S157)。なお、有効CQI値を削るとは、AMCモードにて使用できる最低送信レートを高めることでAMCモードからTPCモードへ遷移させ、送信電力制御により干渉低減を図るものである。反対に、有効CQI値を増やすとは、AMCモードにて使用できる最低送信レートを低めることでTPCモードからAMCモードへ遷移させ、システムスループット増大を図るものである。
次に、MCSセットの第2手法による自動最適化の動作について説明する。
基地局1の上位レイヤ機能部810は、自局内の各移動端末に関するSINR値の統計情報を用いてMCSセットの自動最適化を行う。上位レイヤ機能部810は、自局内の各移動端末に関するSINR値のうち高品質の上位X(%)に対してAMC方式が適用されるように設定する(S161)。上位レイヤ機能部810は、システムスループットを目標値に近づけるようにこの割合値X(%)を決定する。
上位レイヤ機能部810は、各ユーザの伝搬情報を統計的に処理しているスケジューラ(図示せず)に対し、SINR累積分布を計算させる(S162)。上位レイヤ機能部810は、計算された累積分布の品質上位X(%)をAMCエリアとするために、品質上位X(%)の閾値となるSINR値αを算出する(S163)。上位レイヤ機能部810は、このSINR値αを閾値モニタ部823に送る。
閾値モニタ部823は、このSINR値αに対応する閾値CQIを取得し、MCSセットのその閾値CQIより品質の悪いレコードを無効化する。これにより、その閾値CQI以下の移動端末との通信には、TPC方式が利用される。
なお、上位レイヤ機能部810により設定される割合値X(%)は、周辺基地局との間でトラヒック状況等をやりとりすることにより決定されるようにしてもよい。この場合、例えば、トラヒックが集中している基地局の割合値Xが高く設定され、トラヒックが集中していない基地局の割合値Xが低く設定されるように制御される。
〈第一実施形態の作用及び効果〕
ここで、上述した第一実施形態における移動通信システムの作用及び効果について述べる。
第一実施形態における移動通信システムを構成する各基地局では、AMC用及びTPC用の制御情報(選択制御情報)を配置する選択制御情報チャネルとそれ以外の制御情報を配置する一般制御情報チャネルとに区別して個別制御チャネルを構成する。本実施形態における基地局1は、このAMC用の制御情報(SINR通知)についてRepetitionを行わないで送信することによりAMCエリアをセルの全領域よりも狭い領域に設定
する。これは、TPC等の他の通信方式に比べAMC用の制御情報は情報量が大きくなるからである。
これにより、AMC用の制御情報量を削減することができ、その削減された領域をユーザデータ送信に利用すれば、ユーザデータ送信のための無線リソースを有効に利用することができる。また、MCSセットをセル端までカバーさせる必要がないため、AMC用の制御情報ビット自体を小さくすることができる。
従って、第一実施形態によれば、周波数利用効率を向上させつつAMCを適用することができるため高速通信を実現することができる。
また、本実施形態における基地局1では、セル領域内のAMCエリア以外の領域にはTPCが適用される。TPCは、AMCに比較して制御情報が少ないため、セル端付近までカバーするべくRepetition等を施したとしても制御情報が多量になることは考え難い。
これにより、このTPCエリア内では、AMC用の制御情報を削除することで周波数利用効率を向上させながら、更に一定通信レートを確保しつつ送信電力を低減することができる。これにより、隣接セルへ与える干渉量を低減することができる。
本実施形態における基地局1では、自局内の移動端末がAMCエリアに存在するか否かを判断するために、その移動端末から送信されるパイロット信号から推定されるSINR値が有効なCQI値に対応するか否かがMCSセットを参照することにより判定される。
これにより、移動端末がAMC用の制御情報を正常受信できない程度の伝搬環境に存在する場合には、AMC方式が適用されない。すなわち、自局内の各移動端末に関し、存在するエリア(AMCかTPC)をそれぞれ適切に判断することができる。
図17及び18は、従来システム及び第一実施形態における移動通信システムにおける通信特性(スループット及び送信電力)を示すグラフである。図17及び18では、実線が本実施形態における移動通信システムの通信特性を示し、破線が従来システムの通信特性を示している。
図17によれば、AMC用制御情報を削減しユーザデータの送信割合を大きくすることができるため、AMCエリアにおいて従来システムよりも本実施形態のシステムのほうがスループットを向上できる。また、TPCエリアではAMCが適用されないので従来例に比べスループットは低下するが、AMC用の制御情報を削減しかつTPCによる隣接セルへの干渉量低減を図ることができるため、セル端付近では従来システムよりも本実施形態のシステムのほうがスループットは向上する。
図18によれば、従来システムではAMCがセルの全領域で適用されるため、送信電力は略一定となるが、本実施形態のシステムではTPCエリアにおいて送信電力を低減させることができる。
〔第一変形例〕
上述の第一実施形態における基地局1では、図10の動作例に示すように、上位レイヤ機能部810が、モード切り替えの発生を検知すると、対象の移動端末のための個別制御チャネルにより伝送されるモード切り替え後の制御信号の通信フォーマットを決定し、その移動端末との間でシグナリングにより通信モード切り替えを認識し合うという通信シーケンスが実行されていた。すなわち、第一実施形態における移動通信システムでは、シグ
ナリングにより通信モード切り替えが認識されるまでは、切替え前の通信方式により通信が継続されていた。
以下に述べる第一変形例では、シグナリングにより通信モード切り替えが認識される前に、一時的な措置としてTPC方式へ強制的に切り替えを開始する。この第一変形例によれば、即座に適切な通信方式への切り替えを実施し干渉抑圧を実現することができる。なお、この第一変形例は、AMCエリアからTPCエリアへの切り替え時に好適な手法である。図19は、第一変形例における基地局1の通信方式(切り替えモード)決定の概略動作を示すフローチャートである。
図19に示されるように、上位レイヤ機能部810は、モード切り替えが発生すると判断されている場合には(S103;YES)、暫定TPC通信モードへ移行する旨を制御信号により対象移動端末へ通知する(S191)。この通知は、図5、6及び7に示される制御信号の所定の箇所にその旨を示すビットを設けることにより実現するようにしてもよい。
この暫定TPC通信モードでの通信フォーマット(変調方式、符号化方式等)は基地局及び移動端末において既知とする。これにより、上記通知を受けた移動端末は、以降、その既知の通信フォーマットを用いてTPC通信を行う(S192)。基地局1の上位レイヤ機能部810は、この暫定TPC通信モードでの通信中に、上述の第一実施形態のようにモード切り替え後の適切な通信フォーマットを決定し(S104)、適用されるように(S106、S107)制御する。
〔第二変形例〕
上述の第一実施形態における移動端末2及び3では、通信方式がTPCに決定された場合には一定レート設定部414に一定の変調方式及び符号化方式が送られ、符号化及び変調部415がこれらに応じて変調及び符号化を実行していた。
第二変形例では、基地局1がTPCエリアにおいても適応的に通信レートを調整する。第二変形例における基地局1は、ターゲット電力を設定しておき、送信電力がターゲット電力よりも十分低い場合は上位レイヤ機能部810を介して通信レートを増加させ、送信電力がターゲット電力よりも十分高い場合は上位レイヤ機能部810を介して通信レートを減少させる制御を行う。
図20は、第二変形例における移動通信システムにおける通信特性(スループット)を示すグラフである。第一実施形態では図17に示されるようにTPCエリアでは従来システムにスループットで劣っていた領域を、第二変形例では通信レート変換とTPCを組み合わせることによりスループットの向上を図ることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態における移動通信システムについて以下に説明する。上述の第一実施形態における基地局1は、基地局近辺にAMCエリアを設け、その外側にTPCエリアを設けていた。第二実施形態における基地局1は、AMCエリアの内側に更にMIMO(Multi Input Multi Output)を実行するエリア(以降、MIMOエリアと表記する)を設ける。以下、第一実施形態と異なる装置及び機能部についてのみ説明するものとし、第一実施形態と同様のものについては説明を省略する。
〔システム構成及び原理〕
図21は、第二実施形態における移動通信システムのシステム構成を示すブロック図である。第二実施形態における移動通信システムは、第一実施形態と同様のシステム構成を
持つ。但し、基地局1は、図21に示されるように、自信の形成するセル内においてMIMOエリア7を設けることにおいて、第一実施形態のそれとは異なる。
第二実施形態における基地局1は、図22に示すMCSセットを管理する。品質レベルの高いCQIには、MIMOエリアが適用される。図22の例では、2ストリームのMIMOを示すが、本発明はこのストリーム数を限定するものではない。また、有効なCQI値は、第一実施形態において利用されるMCSセット(図3参照)と同様に31までに設定されているが、第二実施形態ではAMCエリアを広げて有効なCQI値を増やすようにしてもよい。この場合には、AMC用の制御情報(SINR通知)に適用されるRepetitionを大きくすればよい。
〔装置構成〕
第二実施形態における移動通信システムでは、送信局としての移動端末に関する機能が第一実施形態とは異なる。以下、第二実施形態における移動端末の機能構成について第一実施形態とは異なる機能を中心に説明する。なお、第一実施形態と同様の機能部については説明を省略する。
〈移動端末〉
図23は、第二実施形態における送信局としての移動端末2及び3の機能構成を示している。第一実施形態における移動端末と異なるのは、2つのMIMOストリームが設けられており、これにより電力調整部、送信部及び送信アンテナがそれぞれ2つ設けられていることである。
復調及び復号部405から出力される制御情報(SINR通知情報)に基づいてMIMO通信を行うべきことが上位レイヤ機能部410若しくはスケジューラ411により決定される。例えば、SINR通知情報が高い通信品質を示している場合で送信パケットキュー412に多量にパケットが蓄積されている場合に、MIMO多重通信が選択される。このとき、送信パケットキュー412からは2ストリーム分の送信パケットが読み出され、各MIMOストリームに対応して適応変調符号化が実行される。このようにして得られた各ストリームの信号は、各電力調整部416−1及び416−2で最大電力にそれぞれ設定され、各送信部418−1及び418−2において無線周波数にそれぞれアップコンバートされた後に各送信アンテナ419−1及び419−2から放射される。
〈第二実施形態の作用及び効果〕
上述した第二実施形態における移動通信システムでは、通信状態が良好な領域においてはMIMO多重通信が適用される。これにより、基地局1の近辺ではAMCが適用されかつMIMO多重通信が適用されるため、第一実施形態に較べてより高速通信が実現される。
〈付記〉
上述の本実施形態は、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
セルを形成し該セル内に存在する移動端末と無線通信を行う基地局装置において、
前記セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用を決定する決定手段であって、前記所定領域外のセル領域に存在する移動端末との無線通信には送信電力制御の適用を決定する決定手段、
を備えることを特徴とする基地局装置。
(付記2)
前記決定手段は、前記所定領域内の一部の第二所定領域に存在する移動端末との無線通
信にはMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を併せて適用することを決定する付記1に記載の基地局装置。
(付記3)
セルを形成する基地局と無線通信する移動端末において、
前記セル内の一部の所定領域に存在する場合にのみ前記基地局との無線通信に適応変調符号化を実行する信号処理手段、
を備える移動端末。
(付記4)
前記信号処理手段は、前記所定領域以外のセル領域に存在する場合には前記基地局との無線通信には送信電力制御を実行する付記3に記載の移動端末。
(付記5)
セルを形成する基地局と該基地局と無線通信を行う移動端末とを有する移動通信システムにおいて、
前記基地局は、
前記セル内の一部の所定領域に存在する移動端末との無線通信にのみ適応変調符号化の適用を決定する決定手段、
を備え、
前記移動端末は、
前記所定領域に存在する場合にのみ前記基地局との無線通信に適応変調符号化を実行する信号処理手段、
を備える移動通信システム。
(付記6)
前記基地局の決定手段は、前記所定領域以外のセル領域に存在する移動端末との無線通信には送信電力制御の適用を決定し、
前記移動端末の信号処理手段は、前記所定領域以外のセル領域に存在する場合には前記基地局との無線通信には送信電力制御を実行する、
付記5に記載の移動通信システム。
1、1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、2111 基地局
2、3、2110 移動端末
5 AMCエリア
6 TPCエリア
7 MIMOエリア
401、402 受信アンテナ
403、404 受信部
405 復調及び復号部
406 選択部
410 上位レイヤ機能部
411 スケジューラ
412 送信パケットキュー
413 適応レート制御部
414 一定レート設定部
415 符号化及び変調部
416、416−1、416−2 電力調整部
417 適応電力制御部
418、418−1、418−2 送信部
419 送信アンテナ
801 送信アンテナ
802 送信部
803 送信電力制御設定部
804 SINR通知部
805 選択部
807 適応レート制御部
808 一定レート設定部
810 上位レイヤ機能部
815 スケジューラ制御部
816 データ判定部
820 復調及び復号部
821 フォーマット分離部
822 モード切替判定部
823 閾値モニタ
825 SINR推定部
826 チャネル推定部
827、828 受信部
829、830 受信アンテナ