JPWO2008053571A1 - 有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置 - Google Patents

有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置 Download PDF

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Abstract

有機物含有廃棄物を無酸素で熱分解するとともに、熱分解により発生した熱分解ガスの漏洩および/または逆流を防止しながら、通常運転時の連続処理を実現する方法を提供する。本方法は、有機物含有廃棄物を熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解する方法であって、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、且つ残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込み、密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気する方法である。

Description

本発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムに関し、より具体的には、熱分解加熱部を形成した密閉室に、常に大気圧を上回るように不活性ガスを送込むことにより外気を遮断し、いわゆる限界酸素濃度以下の無酸素状態で有機物含有廃棄物を熱分解する方法および装置並びに熱分解ガス化システムに関する。
限界酸素濃度とは、継続的に可燃物を燃焼または燃焼爆発させるための必要最小限の酸素濃度をいう。この値以下の酸素濃度であれば、無酸素状態と同様に可燃物の燃焼または燃焼爆発が起こらないので、本発明においては、この限界酸素濃度以下の状態を無酸素状態という。
熱分解とは、以下の公知例から明らかなように、可燃物を通常は外気を遮断した状態で約500〜600℃で加熱すると熱分解反応が促進され、燃焼または燃焼爆発させることなく熱分解ガスと残渣とにすることができる。いわゆる可燃物の蒸し焼き状態である。熱分解反応は、キルンなどの加熱炉の外被をガスバーナーなどで加熱するかまたは1000℃以上の高温空気を外周に配送させる方法を用いて加熱炉自体を加熱し、空気を絶った状態で加熱炉内部を500℃程度に加熱することによって実現することができる。また、電磁誘導を利用して加熱することを誘導加熱または電磁誘導加熱という。原理は、導線に交流電流を流すと周りに磁力線が発生する。導線をコイル状に巻き中心線に沿って置かれた金属などの導電性材料に渦電流が流れ、導電性材料の電気抵抗によってジュール熱が発生し、その金属自体を加熱する。この原理を採用して導電性材料からなる熱分解加熱部を形成し、その内部において可燃物を無酸素状態で熱分解反応させる方法もある。
都市ごみ、産業廃棄物、特に医療廃棄物などは有機材料を含有しており、焼却炉などによる燃焼によって塩素ガスや許容以上のダイオキシンを発生させることにもなる。1994年の焼却飛灰の特別管理廃棄物指定や1997年の第2次のダイオキシン類の抑制ガイドラインなどの環境・公害に関する規制の強化にともなって、例えば、医療機関においては自前の焼却炉を閉鎖ないし廃棄し、医療廃棄物処理業者に医療廃棄物が入ったプラスチック容器毎引き取らせて処理をしているのが現状である。そのため、プラスチック容器を細かく裁断し高周波加熱などによる滅菌処理を施し、圧縮梱包後の埋め立てや加熱分解処理する技術および/またはシステムなどが実用化され、公知技術化している。
従来技術についてみると、特開平7−323270号公報には、開口部が熱分解物によってマテリアルシーリングされ、それに続く気密状の熱分解菅に沿う加熱外被にガスバーナーによって250〜500℃に熱分解菅を加熱し、その内部で廃棄物を熱分解する装置が記載されている。同じく特許3377359号公報に記載の装置は、横向き加熱ドラムの下流側に設けた燃焼溶融炉内の空気加熱器で生成された熱風を加熱ドラムの外周に供給し、加熱ドラム内で被燃焼物を熱分解させるものであって、空気に代わる不活性ガスの注入により加熱ドラム内を低酸素状態のまま大気圧近くに維持するようにした特徴を有する。次に、電磁誘導加熱による廃棄物の熱分解方法および装置についてみると、特開平10−43714号公報には、密閉容器に廃棄物を充填し、その容器毎に電磁誘導加熱源に挿入して、外気を完全に遮断して廃棄物を蒸し焼き状態にすることで廃棄物中の塩素成分を効果的に抽出できるようにしたものが記載されている。特関2003−14216号公報には、電磁誘導加熱による熱分解反応のための電磁誘導加熱ドラムに関するドラム内雰囲気が発生した熱分解ガスを抜気ポンプの吸引によって抜気し、ほぼ真空状態(無酸素状態の雰囲気)にし、ジュール熱で加熱したドラム内で廃棄物を熱分解反応させるものが記載されている。具体的には、加熱ドラムは、廃棄物の取入口および排出口、熱分解ガスの排気孔の各々に密閉自在シャッターを設け、ドラム外からの大気の流入を阻止する。ドラム内は気密状態に維持され、投入された廃棄物がスクリューコンベアで移送されながら無酸素状態で熱分解反応することができるように、取入口および排出口のいずれか一方を交互に開閉自在とする2重シャッター装置と、内部の気圧を低くするための抜気口とが別途設けられている。同系列の特許文献としては、特開2005−127680号公報、特開2005−127682号公報、特開2004−209339号公報を挙げることができる。これらの特許文献に開示された電磁誘導加熱装置は、粉砕・乾燥部、加熱部および冷却部を1つの横向きドラム状燃焼室の前後に乾燥部および冷却部を配する構造か、または各部に取入口および排出口を有する複数段の横向きドラム状燃焼室を設け、前段燃焼室の排出口と後段燃焼室の取入口とを着脱可能とした構造かのいずれかである。後者の場合、被燃焼物の誘導加熱部への搬入および排出を前処理乾燥工程および後処理冷却工程とする構造であれば、いずれの構造のものも可能である。少なくとも電磁誘導加熱部は、外壁を断熱材および/またはウォータ・ジャケットで覆い、その周壁を交流電流が流れる導線をコイル状に巻き、2重シャッターを有する取入口および排出口を両端部に少なくとも設けた導電性材料からなる横向きドラム状燃焼室構造であり、必要に応じて軸線の周りに回転自在とすることもできる。さらに燃焼室内の被燃焼物の攪拌機能を高めるべくスクリューコンベアを採用し回転軸上に攪拌バトルを配するかドラム内壁にコルクスクリュー状羽などを配することもできる。
次に、特開2005−83718号公報に記載された加熱ドラム内における不活性ガス(又は流体)の置換および気密性の維持方法および装置についてみると、上記した特開平10−43713号公報に記載された、完全に大気を遮断した開閉自在の密閉蓋を有する密閉室に配した加熱筒に被燃焼物を投入し、加熱筒の電磁誘導加熱により被燃焼物を蒸し焼き状態にして被燃焼物に含まれる塩素成分をガス化させることなく塩素または塩素化合物として処理できるようにした被燃焼物の処理方法と同様に、大気を遮断しつつ被燃焼物の電磁誘導加熱によるバッチ処理をより効率的な処理できるように、開閉自在な密閉蓋に代えて上蓋と底蓋を交互に開閉自在にした2重シャッターを有する被燃焼物の投入ホッパーを設け、かつ被燃焼物の燃焼にともなう可燃性ガスの燃焼または燃焼爆発させないように、投入ホッパーと密閉室との内部を不活性ガス雰囲気に置換する方法が開示されている。開示された装置は、投入ホッパーと密閉室と密閉室に配した加熱筒が縦型に配されており、それらの外部に設けた不活性ガス貯蔵タンクから配管によってそれぞれに連通させバルブを介し不活性ガス流量を調整できるようにしたものである。具体的には、不活性ガス貯蔵タンクからバルブを介し不活性ガスを投入ホッパーおよび密閉室に連通させる。投入ホッパーおよび密閉室において被燃焼物から発生したガスをそれぞれのバルブを介し排ガス処理施設に連通させ排出する。その際に、可燃性ガスが発生するので、事前に投入ホッパーおよび密閉室に酸素濃度センサーを配し、酸素(大気)と窒素(N)などの不活性ガスとの置換状態を常に監視できるようにしている。さらにまた、同文献においては被燃焼物の燃焼温度の上昇にともない発生ガス量が増加するが、密閉室内への大気の流入を抑えるべく密閉室内を大気圧より若干高い圧力に保たせるように不活性ガスの流量を初期段階で多くし、発生ガス量の増加にともない僅かな流量で間に合うようにすることも開示されている。但し、こうした密閉室内の処理は一回毎に解除と設定とを繰返さなければならない。ところで、不活性ガスによる廃棄物の燃焼環境の形成は、これ以外にも様々な方法および装置が提案されている。例えば特開平6−281362号公報に記載されているように、半導体製造におけるリフローのような熱処理は、本来不活性ガス雰囲気炉内での処理であり、被処理物の出入口に不活性ガスを含むガス膜を形成し炉内雰囲気と炉外雰囲気とを完全遮断する方法が採用されている。その中には、出入口のそれぞれに一定の距離をおいて不活性ガス膜を形成する2重ゲートなども含まれるものとして特許2635459号公報に記載のものが挙げられる。この他にも、爆発性または引火性処理対象物の焼却処理装置において不活性ガスで常時封入させる装置に関する提案として、上記した特許3377359号公報および特開2005−207684号公報を挙げることができる。特に後者は、例えば廃棄物を大気に曝さないような、または、作業者が接触する恐れがないような取扱の大変難しい医療系廃棄物の処理を含むものでもある。
さらに、医療廃棄物処理方法および装置として開示された被燃焼物の前処理方法および装置に関する提案として特表2002−516720号公報には、減菌処理など事前の粉砕および/または加熱処理であっても出入口を複数のエアロックを用いて完全に大気と遮断した予備的処理室で行う医療廃棄物処理である。また。同文献では、加熱処理により発生する汚染空気を漏洩および/または逆流させないように処理室内を負圧状態に保つエアフィルタを装備した大型ファン装置も開示されている。
[特許文献1] 特開平7−323270号公報
[特許文献2] 特許3377359号公報
[特許文献3] 特開平10−43714号公報
[特許文献4] 特開2003−14216号公報
[特許文献5] 特開2005−127680号公報
[特許文献6] 特開2005−127682号公報
[特許文献7] 特開2004−209339号公報
[特許文献8] 特開2005−83718号公報
[特許文献9] 特開平6−281362号公報
[特許文献10] 特許2635459号公報
[特許文献11] 特開2005−207684号公報
[特許文献12] 特表2002−516720号公報
有機物含有廃棄物を焼却炉などで燃焼加熱をすると、発生する汚染物質やダイオキシンなどの有毒ガスの発生は避けられない。汚染物質の除去および有毒ガス排出を抑制するための解決手段の一つが無酸素状態での加熱分解を可能にする方法および装置の開発である。そのことにより、一酸化炭素、ダイオキシンなどを含む有毒ガスの発生を抑制するとともに、併せてウイルスおよび病原菌などの汚染物質を除去することもできる。ところが無酸素状態の形成は容易ではない。有機物含有廃棄物の熱分解室を抜気による真空またはほぼ真空状態に形成するか、形成された真空またはほぼ真空状態に不活性ガスなどを導入させることなどが提案されている。有機含有廃棄物の熱分解室を真空またはほぼ真空状態に形成する技術的課題は、処理室内を負圧状態にすると外気流入環境となるため、廃棄物の投入口、排出口および排気孔などの大気との接点に完全な遮蔽手段を採用しなければならない。
これまでに提示されている機械的シャッター、エアロックまたはエアシャッター、マテリアルシーリング、窒素(N)などの不活性ガスによる置換方法などの手段によって加熱装置の内部を大気と完全遮断することは極めて難しく、より完全なものを求める場合には手段も高価なものにならざるを得ない。そこで次善の策として、機械的およびエア手段における2重シャッター構造や内部を大気圧より高い不活性ガスの圧力勾配を形成するようにした点を含まない単なる不活性ガス雰囲気形成方法などを挙げることができる。
さらなる技術的課題は、熱分解により発生した熱分解ガスの漏洩および/または逆流を防止することである。有機物含有廃棄物の熱分解反応により発生する熱分解ガスの処理室からの漏洩および/または逆流防止は、有機物含有廃棄物の処理方法における汚染または有毒ガスの処理室からの漏洩という観点から重要な技術的課題の一つである。そのため、従来技術の多くは、通常は出入口および排気孔の密閉性を保ちつつ室内の負圧状態を形成することによって、この技術的課題を克服してきた。ところが、こうした室内を負圧状態に形成することは、上記したように有機物含有廃棄物の熱分解室内を負圧状態にすることによって大気の流入を完全に遮断することが困難になるという問題に直面することにもなる。トレードオフ関係にあるこの2つの課題を同時に解決することが求められる。
次なる技術課題は、高分子材料を含む有機物含有廃棄物の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止することである。例えば、医療廃棄物処理など、有機物含有廃棄物が充填されたプラスチック容器毎破砕する前工程を含む熱分解または燃焼処理の場合に、高分子材料が大量に含まれる被燃焼物は、高温に曝され溶融された粘性の高い高分子材料を含んだ状態で横向きのドラム状加熱室内を排出口へと搬送されるため、搬送手段として通常採用されているスクリューコンベアに溶融した粘性のある高分子材料が付着蓄積することは避けられない。このことによる装置機能の低下を回避しようとすると、かなりの頻度で装置全体を止め、燃焼室内およびスクリューコンベア自体を分解してクリーニングするしかない。
問題は、有機物含有廃棄物の熱分解反応の連続性をどう維持するかである。特に不活性ガス雰囲気を形成し大量の有機物含有廃棄物の処理をする場合、始動時を除き通常運転時は連続処理を前提としなければならない。ところが、上記したような技術的課題を解決しつつ通常運転時の連続処理を実現する手段はこれまでに提案されておらず、そうした提案が待たれるところでもあった。
上述したような課題の解決は、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、且つ残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込み、密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するようにした有機物含有廃棄物を連続的に熱分解するという以下の特徴を有する本発明によって達成することができる。
請求の範囲1に記載の発明は、有機物含有廃棄物を熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解する方法であって、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、且つ残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込み、密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲2に記載の発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法であって、a)上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口とを有し、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室に、不活性ガス注入手段が不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成し、b)密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入し、c)密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動手段によって、不活性ガスが往復動する前記プッシャー板の前後を移動できる連通手段を介して不活性ガス溜まりを維持しながら有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に順次送込み、d)密閉室に送込まれた不活性ガスによって熱分解加熱部の有機物含有廃棄物を無酸素状態で熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解し、e)密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力が常に熱分解ガスのガス圧力を上回るように密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室の排気孔から熱分解ガスを回収し、f)排出手段によって密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する工程を含み、g)前記a)からf)の一連の工程による有機物含有廃棄物の連続的熱分解は、不活性ガス注入手段によって密閉室内に送込まれた不活性ガスのガス圧力Pが常に大気圧Pを上回る、
P>P・・・・(1)
すなわち、密閉室に不活性ガスによる正圧状態が形成されており、そのことにより、密閉室への大気の流入を遮断して無酸素状態でなされるとともに、密閉室の不活性ガスのガス圧力が熱分解によって発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回る、
>P≧P>P・・・・(2)
すなわち、密閉室の上流側の不活性ガスのガス圧力Pと熱分解加熱部の不活性ガスと熱分解ガスとの混合ガス圧力Pと下流側の主に熱分解ガスのガス圧力Pとが、大気圧Pを上回る不活性ガスの圧力勾配を形成し、そのことにより、密閉室において熱分解ガスの下流側から上流側への逆流を阻止するようになされることを特徴とする。
請求の範囲3に記載の発明は、請求の範囲2に記載の発明の特徴に加えて、上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口と有し、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする。
請求の範囲4に記載の発明は、請求の範囲3に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の熱分解加熱部が導電性材料からなり、熱分解加熱部の外壁が電磁誘導加熱コイルで巻回されており、電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲5に記載の発明は、請求の範囲2から4に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入する工程が、有機物含有廃棄物を密閉室の投入口に連続する密閉搬送路を経由して投入口に順次搬送する工程をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲6に記載の発明は、請求の範囲5に記載の発明の特徴に加えて、有機物含有廃棄物を投入口へ順次搬送する工程が、有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する工程をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲7に記載の発明は、請求の範囲2から6のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口に少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入手段によって、有機物含有廃棄物を一時的に搬送室に滞留させながら、密閉室に順次投入するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲8に記載の発明は、請求の範囲7に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口の密閉自在な搬送室および/または密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を有する不活性ガス注入手段によって、搬送室および/または密閉室に不活性ガスを送込み、少なくとも密閉室の不活性ガスのガス圧力が大気圧を上回るように制御することを特徴とする。
請求の範囲9に記載の発明は、請求の範囲8に記載の発明の特徴に加えて、少なくとも密閉室の投入口の密閉自在な搬送室、密閉室の最上流側の不活性ガス注入口の近傍、密閉室の熱分解加熱部の上流側、および密閉室の熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサーを適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、往復動手段のプッシャー板の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、不活性ガスの送込量を制御して密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲10に記載の発明は、請求の範囲2から9のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、連通手段は、往復動手段のプッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガスが、往復動手段のプッシャー板の前進ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動手段のプッシャー板の後退ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の前方に流入するようにして不活性ガスの形成された圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲11に記載の発明は、請求の範囲2から10のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力が常に熱分解ガスのガス圧力を上回るように密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室の排気孔から熱分解ガスを回収する工程は、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する工程をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲12に記載の発明は、請求の範囲11に記載の発明の特徴に加えて、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する工程は、ミスト分離手段を経由させ、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気する工程をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲13に記載の発明は、請求の範囲2から12のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に順次送込まれる有機物含有廃棄物を往復動手段のプッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、密閉室の排出口から残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲14に記載の発明は、請求の範囲2から13にいずれかに記載の発明の特徴に加えて、排出手段によって密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する工程は、排出口に接続された上流側の投入口および回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させ、回収容器に残渣の炭化物を回収する工程をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲15に記載の発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解装置であって、a)上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室と、b)密閉室に不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成する密閉室に連通する不活性ガス注入装置と、c)密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入し、密閉室の熱分解加熱部に順次送込む密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動装置と、d)往復動装置と連動し、往復動するプッシャー板の前後を移動する不活性ガスによって不活性ガス溜まりを維持しながら、有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に順次送込むようにする不活性ガスの連通装置と、e)密閉室の熱分解加熱部の有機物含有廃棄物を熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解する熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置と、f)密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力を常に熱分解ガスのガス圧力より上回らせて密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成する熱分解ガスの回収装置と、g)密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する排出装置とを含み、h)通常の運転中には、不活性ガス注入装置を用いて送込まれた不活性ガスのガス圧力が少なくとも大気圧を上回るようにし、外気を遮断して密閉室を無酸素状態にするとともに、熱分解加熱装置の熱分解によって発生し徐々に増大する熱分解ガスのガス圧力と密閉室の上流側から送込まれる不活性ガスのガス圧力とが、少なくとも密閉室の下流側で均衡するような密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するように密閉室内への不活性ガスの送込量を制御するようにしたことを特徴する。
請求の範囲16に記載の発明は、請求の範囲15に記載の発明の特徴に加えて、上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする。
請求の範囲17に記載の発明は、請求の範囲15または16に記載の発明の特徴に加えて、熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置が電磁誘導加熱装置であり、導電性材料からなる熱分解加熱部に巻回された電磁誘導コイルに交流電流を流すことによって熱分解加熱部を加熱するとともに、熱分解加熱部の外壁を断熱構造にする、および/または、冷媒が循環するウォータ・ジャケットで覆うようにしたことを特徴とする。
請求の範囲18に記載の発明は、請求の範囲17に記載の発明の特徴に加えて、電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲19に記載の発明は、請求の範囲15または18に記載の発明の特徴に加えて、有機物含有廃棄物を順次投入する密閉室の投入口に接続する密閉搬送路をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲20に記載の発明は、請求の範囲19に記載の発明の特徴に加えて、密閉搬送路が有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する装置をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲21に記載の発明は請求の範囲15から20のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口に有機物含有廃棄物を一時的に滞留させながら密閉室に順次投入する、少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入装置をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲22に記載の発明は、請求の範囲15から21のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に不活性ガスを送込む不活性ガス注入装置が、密閉室の投入口の密閉自在な搬送室および/または密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を設けるようにしたことを特徴とする。
請求の範囲23に記載の発明は、請求の範囲15から22のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、少なくとも密閉室の投入口の密閉自在な搬送室、密閉室の最上流側に不活性ガス注入口の近傍、密閉室の熱分解加熱部の上流側、および密閉室の熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサー適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、往復動装置のプッシャー板の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、ガス圧力センサーと連動させた不活性ガス注入装置が、不活性ガスの送込量を制御し、密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲24に記載の発明は、請求の範囲15から23のいずれかの記載の発明の特徴に加えて、連通装置は、往復動装置のプッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガスが、往復動装置のプッシャー板の前進ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動装置のプッシャー板の後退ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の前方に流入するようにして不活性ガスの形成された圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲25に記載の発明は、請求の範囲15から24のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力を常に熱分解ガスのガス圧力より上回らせて密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成する熱分解ガスの回収装置は、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する油水分離装置をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲26に記載の発明は、請求の範囲25に記載の発明の特徴に加えて、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する油水分離装置は、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気するミスト分離装置をさらに含むことを特徴とする。
請求の範囲27に記載の発明は、請求の範囲15から26のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に順次送込まれる有機物含有廃棄物を往復動装置のプッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、密閉室の排出口から残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲28に記載の発明は、請求の範囲15から27にいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の排出口から炭化物を回収する排出装置は、排出口に接続された上流側の投入口と回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させて回収容器に前記炭化物を回収するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲29に記載の発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解ガス化システムであって、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが回収される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入システムを用いて不活性ガスを送込み、密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側へ不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から回収するようにしたことを特徴とする。
請求の範囲30に記載の発明は、請求の範囲29に記載の発明の特徴に加えて、熱分解加熱部が電磁誘導コイルで巻回された導電性材料からなり、外壁を断熱構造にする、および/または、冷媒が循環するウォータ・ジャケットで覆うようにしたことを特徴とする。
請求の範囲31に記載の発明は、請求の範囲30に記載の発明の特徴に加えて、電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする。
発明の効果
上記したような特徴を有する本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1) 例えば医療廃棄物などの有機物含有廃棄物の連続的熱分解を可能にする方法および装置並びに熱分解ガス化システムにおいて、熱分解加熱部を有する密閉室を抜気するのではなく大気圧より常に高い圧力で不活性ガスを送込み、且つ密閉室の上流から下流に向かって不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室内の無酸素状態を容易に形成できるようにしたことである。
(2) このことにより、熱分解加熱部を有する密閉室に外気が流入し燃焼または燃焼爆発を誘発することがないようにするとともに、不活性ガスの圧力勾配を利用して熱分解によって発生した熱分解ガスを逆流させことなく下流側の排気孔から確実に排気できるようにしたことである。
(3) さらに密閉室の断面形状にほぼ一致する形状のプッシャー板によって有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に送込むようにしたことにより、高分子材料を含む有機物含有廃棄物の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止できるようにしたことである。
(4) さらに密閉室内の不活性ガス圧力を監視しながら不活性ガスの送込量を制御するようにしたことにより、大量の有機物含有廃棄物の連続的熱分解処理を可能にした。
(5) さらにまた、有機物含有廃棄物の連続的熱分解によって発生する熱分解ガスおよび残渣の炭化物を回収し、公害化させることなく再資源化できるようにしたことなどである。
図1は、本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムを表す全体構成図である。
図2は、本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムの動作手順を表すフロチャートである。
図3は、密閉室の熱分解加熱部の縦断面図(a)および左側面図(b)である。
図4は、往復動装置のプッシャー板の往復動動作による密閉室内の不活性ガス流れを示す模式図である。
本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムの実施例を図面に基づいて説明する。実施例の全体構成を図1に示し、図2のフロチャートにより動作手順を示した。本発明の実施例は、電磁誘導による熱分解手段または装置を示す。しかしながら、本発明における熱分解は電磁誘導手段または装置に限定されるものではなく、図示されてはいないが加熱空気またはガス、或いは熱分解装置自体をガスバーナーなどで直接加熱する手段をも含むことができる。
図1は全体構成図であるとともに概念図である。医療廃棄物などの有機物含有廃棄物1は、外部から搬送コンベアなどにより破砕装置に送込まれ裁断されて、例えばドラム式の乾燥装置を経由させて固化成型装置において成型され、密閉搬送路2に順次送込まれる。ここに示される破砕装置、乾燥装置および固化成型装置は、有機物含有廃棄物1が汚染物質を含むかまたは爆発性や引火性などの危険物質を含むこともあり、有機物含有廃棄物1の熱分解の前処理工程として全体装置の一部とすることもできる。図1から明らかなように、密閉搬送路2は、後述する密閉室3の投入装置4の投入口41に通じている。
密閉搬送路2の終端は投入装置4の上流側に続く。投入装置4の下流側は密閉室3への投入口41を含む。投入装置4には、搬送されてきた有機物含有廃棄物1を密閉室3に順次投入する際に、一時的に滞留させるための搬送室42を設けることができる。搬送室42は、上下2段のシャッター装置43を含むことができる。上段のシャッター装置431および下段のシャッター装置432は、アクチュエータなどにより交互に開閉するシャッターを有する。密閉搬送路2を経由してきた有機物含有廃棄物1は、開状態の上段シャッターと閉状態の下段シャッターとで構成される搬送室42に一時的に滞留する。次に上段シャッター431を閉状態とし、下段シャッター432を開状態とすることにより、有機物含有廃棄物1を投入口41から密閉室3に投入することができる。
密閉搬送路2と密閉室3とを接続する投入装置4に交互に開閉自在な上下2段シャッター装置431および432を設けることにより、密閉室3を密閉搬送路2との間を密閉自在に維持することができる。
密閉室3の全体構成は図1に示される。図3は、密閉室の一部を構成する電磁誘導の熱分解加熱部31の断面図および側面図である。図1から明らかなように、密閉室3の上流側には、上記した有機物含有廃棄物1の投入口41と、アクチュエータなどにより密閉室3の内部を往復動する往復動装置5のプッシャー板51の裏面の最上流側に後述する不活性ガス注入装置6からバルブを有する配管により密閉室3に連通する不活性ガス注入口61とが設けられる。プッシャー板51の引込位置すなわち最後退位置は、投入口41とプッシャー板51との間になるように構成される。往復動装置5のプッシャー板51は密閉室3の断面形状にほぼ一致する外周を有し、密閉室3に送込まれた不活性ガスの流出入を可能にする表裏を貫通する1つまたは複数の連通孔511からなる不活性ガスの連通装置52を設けることができる。具体的には、図4の模式図に示すように、密閉室3に不活性ガス注入装置6によって送込まれた不活性ガスが、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークにともないプッシャー板の連通孔511からなる連通装置52を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動装置5のプッシャー板51の後退ストロークにともないプッシャー板51の連通孔511からなる連通装置52を通じて徐々にプッシャー板51の前方に流入するようにすることができる。図4の模式図に示した連通装置52は、プッシャー板51の表裏を貫通する1つまたは複数の連通孔511からなるが、こうした構成に限定されることなく、プッシャー板51の前進ストロークにともないプッシャー板51の後方に流入し、且つプッシャー板51の後退ストロークにともないプッシャー板51の前方に流入するようにして密閉室3に送込まれた不活性ガスによって形成された圧力勾配を維持することができる構成にあればよく、例えば往復動装置5のプッシャー板51の前進および後退ストロークの前進位置および後退位置の内壁に連通孔を有するガス連通路を密閉室の外壁に併設し、そのガス連通路を介して不活性ガスの流出入を可能にする連通装置52とすることもできる。
また、高分子材料を含む有機物含有廃棄物1の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止することは、有機物含有廃棄物1の熱分解反応の連続性をどう維持するか、すなわち、始動時を除き通常運転時は連続処理を前提としなければならないという点で重要な技術的課題である。そのため必要に応じ密閉室3の内壁への付着物を掻き落す着脱自在な掻き落し爪512を装着することもできる。
上記した不活性ガス注入装置6は、窒素(N)またはアルゴン(Ar)などのガスを貯蔵するタンクである。バルブを有する配管によって密閉室3の最上流側の不活性ガス注入口61を介して不活性ガスを送込むとともに、上記した搬送室42にもバルブを有する配管によって同じく不活性ガス注入口62を介して不活性ガスを送込むようにすることもできる。不活性ガスが密閉室3に送込まれることによって、プッシャー板51の往復動によってもプッシャー板51に設けた連通孔511からなる連通装置52を介して不活性ガスが流出入でき、密閉室3に不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気63を形成し、維持させることができる。密閉室3の内部に形成されるNまたはArなどの不活性ガス雰囲気63を監視するために、少なくとも密閉室3の投入口41の密閉自在な搬送室42、密閉室3の最上流側の不活性ガス注入口61の近傍、密閉室3の熱分解加熱部31の上流側、および密閉室3の熱分解加熱部31の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサー641、642、643、644(まとめて64)を適宜設ける必要がある。これらのガス圧力センサー641から644によって、後述するように熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物1を投入した不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気63の不活性ガス圧力と、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視することができる。さらに、不活性ガス注入装置6は、これらのガス圧力センサー641から644と連動させて搬送室42および密閉室3への不活性ガスの送込量を制御することができる。
密閉室3の下流側には、有機物含有廃棄物1の熱分解反応により発生する熱分解ガスを排気回収する装置7に接続される排気孔71と、有機物含有廃棄物1の熱分解反応の残渣である炭化物を回収する排出装置8に接続される排出口81とが設けられる。熱分解ガス回収装置7および残渣の炭化物排出装置8に関する詳細は後述する。通常は、排気孔71および排出口81の近傍には外気の流入を阻止するためのシャッター装置が適宜設けられるが、後述するように本発明の特徴の1つは、こうした装置を必ずしも必要としないことにある。
電磁誘導による熱分解加熱部31は、密閉室3の上流側と下流側との間に形成される。図3にみるように熱分解加熱部31は電磁誘導加熱により発熱する導電性材料の円筒形容器311からなり、その外周を断熱材312が覆う。円筒形容器311の外周両端に設けたコイル支持部材314により、断熱材312の外周に巻回された電磁誘導加熱コイル313を支持することができる。さらに電磁誘導加熱コイル313上を冷却水などの冷媒が循環する冷却パイプ(「ウォータ・ジャケット」という。)315を巻回し、巻回された冷却パイプ315を円筒形容器311の長手方向に支持する支持部材316を設ける。図示しないが、冷却水を冷却パイプ315に供給するポンプ装置および電磁誘導コイル313に電流を供給する高周波電源を設けることはいうまでもない。図3に示す高周波電源接続端子位置317は、電磁誘導コイル313との端子位置である。また、図3から明らかなようにコイル支持部材314および316を解除することによって、密閉室3内のクリーニングのために円筒形容器311を電磁誘導コイル313と一体的に2分割できるように設計することも可能である。取付けボルト位置318は円筒容器311と密閉室3の上流側との接合部であり、取付けボルト位置319は円筒容器311と密閉室3の下流側との接合部であるが、これらは密閉室3として一体的に形成するようにしてもよい。電磁誘導加熱による円筒形容器311の温度を計測し、電磁誘導コイル313の高周波電源への電圧を制御することによって円筒形容器311の内部温度を調整するために、断熱材312を貫通する熱電対の温度センサー320を円筒形容器311に適宜設けることができる。熱分解加熱部31を円筒形容器311と断熱材312とウォータ・ジャケット315から構成したことにより、円筒容器311が電磁誘導による500から1000℃に熱した場合であっても熱分解加熱部31の外周温度は約40℃程度に保たせることができるので、円筒形容器内部への外気流入にともなう燃焼または燃焼爆発さえ制御できれば、作業上の安全性や火災の危険は一切生じない。
密閉室3を上記のように構成することにより、不活性ガス注入装置6を用いて送込まれた不活性ガスのガス圧力が少なくとも大気圧を上回るようにし、外気を遮断して密閉室3を無酸素状態にすることができる。さらに密閉室3における熱分解によって発生し徐々に増大する熱分解ガスのガス圧力と密閉室3の上流側から送込まれる不活性ガスのガス圧力とが少なくとも密閉室3の下流側で均衡するような、密閉室3の上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室3から排気するように密閉室3内への不活性ガスの送込量を制御するようにすることもできる。より具体的には、密閉室3に投入され熱分解加熱部31に順次送込まれた有機物含有廃棄物1の連続的熱分解は、不活性ガス注入装置6によって密閉室3の内部に送込まれた不活性ガスのガス圧力Pが常に大気圧Pを上回る、
P>P・・・・(1)
すなわち、密閉室3に不活性ガスによる正圧状態が形成され、そのことにより、密閉室への大気の流入を遮断して無酸素状態にすることができるとともに、密閉室の不活性ガスのガス圧力が熱分解によって発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回る、
>P≧P>P・・・・(2)
すなわち、密閉室3の上流側の不活性ガスのガス圧力Pと熱分解加熱部31の不活性ガスと熱分解ガスとの混合ガス圧力Pと下流側の主に熱分解ガスのガス圧力Pとが、大気圧Pを上回る不活性ガスの圧力勾配を形成し、そのことにより、密閉室において熱分解ガスの下流側から上流側への逆流を阻止し、熱分解ガスを排気孔71を経由させて排気回収することができる。
次に、発生した熱分解ガスは、排気孔71を経由させて排気回収装置7によって回収される。より具体的には、大気を上回る密閉室3の不活性ガスのガス圧力によって、発生した熱分解ガスは排気孔71およびガス誘導管72を通り外周を冷却水で冷やされる冷却装置73を経由して油水分離装置74に送られる。ここで油化物と水に分離され、次に排気ファン76によって、残渣の熱分解ガスは油水分離装置74からミスト分離装置75に吸引され、ここで洗浄された後に外部に排気される。油水分離装置74によって分離され、回収装置によって回収された油化物は、重油並みの発熱量を有しており、例えば上記した乾燥装置の燃料として再利用することができる。
熱分解反応による残渣の炭化物は、排出口81を経由させて排出装置8によって回収される。排出装置8は横設された円筒形冷却装置82と容器型回収装置83とからなる。円筒形冷却装置82は、上流側に密閉窓3の排出口81に接続する投入口821から投入された残渣の炭化物が搬送スクリューによって送られ、ここで冷却された後に、下流側に設けた排出口822から容器型回収装置83に排出されるようにしたものである。残渣の炭化物は飛散し粉塵状態になりやすいので、そうした飛散を防ぐために排出口822または容器型回収装置83の入口に機密性シャッターを設けるようにすることが好ましい。ところで、回収された炭化物は固形燃料とすることによって石炭並みの発熱量を有し、固形燃料として再資源化できることも指摘しておく。
図2からは、本発明に係る有機物含有廃棄物1の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムの始動時から通常運転に至る動作手順が明らかになる。破砕、乾燥および固化成型された有機物含有廃棄物1の処理物量が準備され、不活性ガス注入装置6の作動確認、密閉室3の熱分解加熱部31の冷却水循環の確認、その他の各部の設定と動作を確認した後に、主電源をオン状態にする。熱分解加熱部31の温度は850℃に設定し、図2にみるように、密閉搬送路2の搬送装置を駆動する。搬送されてきた有機物含有廃棄物1は、上段シャッターが開状態で下段シャッターが閉状態の搬送室42に至り一時的に滞留される。その搬送室42に連通された不活性ガス注入口62を介して不活性ガスが送込まれる。送込まれた不活性ガスは開状態の上段シャッターを通り密閉搬送路2に流れ込む。
同様に不活性ガス注入口61を介して密閉室3に不活性ガスが送込まれ、連通孔511からなる連通装置52により、送込まれた不活性ガスは密閉室3の下流側に流れ込み密閉室の空気を追い出すとともに、密閉室3の内部には不活性ガス雰囲気が形成される。次に、搬送室42の上段シャッターが閉じられ下段シャッターが開かれることよって、不活性ガス注入口62から送込まれた不活性ガスは、不活性ガス雰囲気の密閉室3に流れ込み、不活性ガス溜まりが形成される。滞留された有機物含有廃棄物1は、こうして形成された不活性ガス溜まりに投入される。その投入された有機物含有廃棄物1は、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークによって、少なくとも熱分解加熱部31まで送込まれる。
密閉室3の熱分解加熱部31に送込まれた有機物含有廃棄物1は、850℃の熱分解加熱部において熱分解反応が生じる。ここで有機物含有廃棄物1に含まれるプラスチックなどが熱分解ガスになり、紙や繊維などが炭化物になる。こうした熱分解反応が生じるまでの密閉室3の不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気において、図2からも明らかなように、搬送室42の上段シャッターが閉じられ下段シャッターが開かれた際には、搬送室42の不活性ガスのガス圧力は、不活性ガス注入口62を介して送込まれる不活性ガスによって、不活性ガス注入口61を介して送込まれる不活性ガスによって形成される不活性ガス雰囲気の密閉室3のガス圧力を上回る。熱分解加熱部31において熱分解反応が始まり、それにともない発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回るように、ガス圧力センサー641から644を用いて密閉室3のガス圧力を監視しながら、それらと連動させて、不活性ガス注入装置6から密閉室3への不活性ガスの送込量を制御する。このことにより、密閉室3の内部のガス圧力が常に大気圧を上回るようにすることが可能となり、同時に密閉室の上流側から下流側に向かって不活性ガスの圧力勾配を形成することも可能となる。
密閉搬送路2を経由して送られてくる有機物含有廃棄物1は、2段シャッター装置43で区画される搬送室42おいて一時的に滞留しながら順次密閉室3に投入され、順次投入された有機物含有廃棄物1は、往復動装置5のプッシャー板51の往復動により密閉室3の熱分解加熱部31に順次送込まれる。発生した熱分解ガスは、密閉室3の内部に形成された不活性ガスの圧力勾配によって、排気孔71に確実に送込まれることになる。また残渣の炭化物は、例えばプッシャー板52の前進ストロークを排出口81近傍にまで伸ばすことによって排出することもできる。これ以外に排出装置を別途設けることも可能である。
本発明は、実施例およびフロチャートで示した動作手順からも明らかなように、上記したような効果を奏するものである。さらに、大気汚染物質をほとんど発生させることなく有機物含有廃棄物を連続的に熱分解可能にし、加熱温度設定を処理物の性状、種類に応じて調整することも可能にするものである。
【書類名】 明細書
【発明の名称】 有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法および装置に関し、より具体的には、熱分解加熱部を形成した密閉室に、常に大気圧を上回るように不活性ガスを送込み、不活性ガス溜まりを形成し、この不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入および送込み、外気を遮断して、いわゆる限界酸素濃度以下の無酸素状態で有機物含有廃棄物を熱分解する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
限界酸素濃度とは、継続的に可燃物を燃焼または燃焼爆発させるための必要最小限の酸素濃度をいう。この値以下の酸素濃度であれば、無酸素状態と同様に可燃物の燃焼または燃焼爆発が起こらないので、本発明においては、この限界酸素濃度以下の状態を無酸素状態という。
【0003】
熱分解とは、以下の公知例から明らかなように、可燃物を通常は外気を遮断した状態で約500〜600℃で加熱すると熱分解反応が促進され、燃焼または燃焼爆発させることなく熱分解ガスと残渣とにすることができる。いわゆる可燃物の蒸し焼き状態である。熱分解反応は、キルンなどの加熱炉の外被をガスバーナーなどで加熱するかまたは1000℃以上の高温空気を外周に配送させる方法を用いて加熱炉自体を加熱し、空気を絶った状態で加熱炉内部を500℃程度に加熱することによって実現することができる。また、電磁誘導を利用して加熱することを誘導加熱または電磁誘導加熱という。原理は、導線に交流電流を流すと周りに磁力線が発生する。導線をコイル状に巻き中心線に沿って置かれた金属などの導電性材料に渦電流が流れ、導電性材料の電気抵抗によってジュール熱が発生し、その金属自体を加熱する。この原理を採用して導電性材料からなる熱分解加熱部を形成し、その内部において可燃物を無酸素状態で熱分解反応させる方法もある。
【0004】
都市ごみ、産業廃棄物、特に医療廃棄物などは有機材料を含有しており、焼却炉などによる燃焼によって塩素ガスや許容以上のダイオキシンを発生させることにもなる。1994年の焼却飛灰の特別管理廃棄物指定や1997年の第2次のダイオキシン類の抑制ガイドラインなどの環境・公害に関する規制の強化にともなって、例えば、医療機関においては自前の焼却炉を閉鎖ないし廃棄し、医療廃棄物処理業者に医療廃棄物が入ったプラスチック容器毎引き取らせて処理をしているのが現状である。そのため、プラスチック容器を細かく裁断し高周波加熱などによる滅菌処理を施し、圧縮梱包後の埋め立てや加熱分解処理する技術および/またはシステムなどが実用化され、公知技術化している。
【0005】
従来技術についてみると、特開平7−323270号公報には、開口部が熱分解物によってマテリアルシーリングされ、それに続く気密状の熱分解菅に沿う加熱外被にガスバーナーによって250〜500℃に熱分解菅を加熱し、その内部で廃棄物を熱分解する装置が記載されている。同じく特許3377359号公報に記載の装置は、横向き加熱ドラムの下流側に設けた燃焼溶融炉内の空気加熱器で生成された熱風を加熱ドラムの外周に供給し、加熱ドラム内で被燃焼物を熱分解させるものであって、空気に代わる不活性ガスの注入により加熱ドラム内を低酸素状態のまま大気圧近くに維持するようにした特徴を有する。次に、電磁誘導加熱による廃棄物の熱分解方法および装置についてみると、特開平10−43714号公報には、密閉容器に廃棄物を充填し、その容器毎に電磁誘導加熱源に挿入して、外気を完全に遮断して廃棄物を蒸し焼き状態にすることで廃棄物中の塩素成分を効果的に抽出できるようにしたものが記載されている。特開2003−14216号公報には、電磁誘導加熱による熱分解反応のための電磁誘導加熱ドラムに関するドラム内雰囲気が発生した熱分解ガスを抜気ポンプの吸引によって抜気し、ほぼ真空状態(無酸素状態の雰囲気)にし、ジュール熱で加熱したドラム内で廃棄物を熱分解反応させるものが記載されている。具体的には、加熱ドラムは、廃棄物の取入口および排出口、熱分解ガスの排気孔の各々に密閉自在シャッターを設け、ドラム外からの大気の流入を阻止する。ドラム内は気密状態に維持され、投入された廃棄物がスクリューコンベアで移送されながら無酸素状態で熱分解反応することができるように、取入口および排出口のいずれか一方を交互に開閉自在とする2重シャッター装置と、内部の気圧を低くするための抜気口とが別途設けられている。同系列の特許文献としては、特開2005−127680号公報、特開2005−127682号公報、特開2004−209339号公報を挙げることができる。これらの特許文献に開示された電磁誘導加熱装置は、粉砕・乾燥部、加熱部および冷却部を1つの横向きドラム状燃焼室の前後に乾燥部および冷却部を配する構造か、または各部に取入口および排出口を有する複数段の横向きドラム状燃焼室を設け、前段燃焼室の排出口と後段燃焼室の取入口とを着脱可能とした構造かのいずれかである。後者の場合、被燃焼物の誘導加熱部への搬入および排出を前処理乾燥工程および後処理冷却工程とする構造であれば、いずれの構造のものも可能である。少なくとも電磁誘導加熱部は、外壁を断熱材および/またはウォータ・ジャケットで覆い、その周壁を交流電流が流れる導線をコイル状に巻き、2重シャッターを有する取入口および排出口を両端部に少なくとも設けた導電性材料からなる横向きドラム状燃焼室構造であり、必要に応じて軸線の周りに回転自在とすることもできる。さらに燃焼室内の被燃焼物の攪拌機能を高めるべくスクリューコンベアを採用し回転軸上に攪拌バトルを配するかドラム内壁にコルクスクリュー状羽などを配することもできる。
【0006】
次に、特開2005−83718号公報に記載された加熱ドラム内における不活性ガス(又は流体)の置換および気密性の維持方法および装置についてみると、上記した特開平10−43713号公報に記載された、完全に大気を遮断した開閉自在の密閉蓋を有する密閉室に配した加熱筒に被燃焼物を投入し、加熱筒の電磁誘導加熱により被燃焼物を蒸し焼き状態にして被燃焼物に含まれる塩素成分をガス化させることなく塩素または塩素化合物として処理できるようにした被燃焼物の処理方法と同様に、大気を遮断しつつ被燃焼物の電磁誘導加熱によるバッチ処理をより効率的な処理できるように、開閉自在な密閉蓋に代えて上蓋と底蓋を交互に開閉自在にした2重シャッターを有する被燃焼物の投入ホッパーを設け、かつ被燃焼物の燃焼にともなう可燃性ガスの燃焼または燃焼爆発させないように、投入ホッパーと密閉室との内部を不活性ガス雰囲気に置換する方法が開示されている。開示された装置は、投入ホッパーと密閉室と密閉室に配した加熱筒が縦型に配されており、それらの外部に設けた不活性ガス貯蔵タンクから配管によってそれぞれに連通させバルブを介し不活性ガス流量を調整できるようにしたものである。具体的には、不活性ガス貯蔵タンクからバルブを介し不活性ガスを投入ホッパーおよび密閉室に連通させる。投入ホッパーおよび密閉室において被燃焼物から発生したガスをそれぞれのバルブを介し排ガス処理施設に連通させ排出する。その際に、可燃性ガスが発生するので、事前に投入ホッパーおよび密閉室に酸素濃度センサーを配し、酸素(大気)と窒素(N)などの不活性ガスとの置換状態を常に監視できるようにしている。さらにまた、同文献においては被燃焼物の燃焼温度の上昇にともない発生ガス量が増加するが、密閉室内への大気の流入を抑えるべく密閉室内を大気圧より若干高い圧力に保たせるように不活性ガスの流量を初期段階で多くし、発生ガス量の増加にともない僅かな流量で間に合うようにすることも開示されている。但し、こうした密閉室内の処理は一回毎に解除と設定とを繰返さなければならない。
【0007】
ところで、不活性ガスによる廃棄物の燃焼環境の形成は、これ以外にも様々な方法および装置が提案されている。例えば特開平6−281362号公報に記載されているように、半導体製造におけるリフローのような熱処理は、本来不活性ガス雰囲気炉内での処理であり、被処理物の出入口に不活性ガスを含むガス膜を形成し炉内雰囲気と炉外雰囲気とを完全遮断する方法が採用されている。その中には、出入口のそれぞれに一定の距離をおいて不活性ガス膜を形成する2重ゲートなども含まれるものとして特許2635459号公報に記載のものが挙げられる。この他にも、爆発性または引火性処理対象物の焼却処理装置において不活性ガスで常時封入させる装置に関する提案として、上記した特許3377359号公報および特開2005−207684号公報を挙げることができる。特に後者は、例えば廃棄物を大気に曝さないような、または、作業者が接触する恐れがないような取扱の大変難しい医療系廃棄物の処理を含むものでもある。
【0008】
さらに、医療廃棄物処理方法および装置として開示された被燃焼物の前処理方法および装置に関する提案として特表2002−516720号公報には、減菌処理など事前の粉砕および/または加熱処理であっても出入口を複数のエアロックを用いて完全に大気と遮断した予備的処理室で行う医療廃棄物処理である。また。同文献では、加熱処理により発生する汚染空気を漏洩および/または逆流させないように処理室内を負圧状態に保つエアフィルタを装備した大型ファン装置も開示されている。
【0009】
(特許文献1) 特開平7−323270号公報
(特許文献2) 特許3377359号公報
(特許文献3) 特開平10−43714号公報
(特許文献4) 特開2003−14216号公報
(特許文献5) 特開2005−127680号公報
(特許文献6) 特開2005−127682号公報
(特許文献7) 特開2004−209339号公報
(特許文献8) 特開2005−83718号公報
(特許文献9) 特開平6−281362号公報
(特許文献10) 特許2635459号公報
(特許文献11) 特開2005−207684号公報
(特許文献12) 特表2002−516720号公報
【0010】
有機物含有廃棄物を焼却炉などで燃焼加熱をすると、発生する汚染物質やダイオキシンなどの有毒ガスの発生は避けられない。汚染物質の除去および有毒ガス排出を抑制するための解決手段の一つが無酸素状態での加熱分解を可能にする方法および装置の開発である。そのことにより、一酸化炭素、ダイオキシンなどを含む有毒ガスの発生を抑制するとともに、併せてウイルスおよび病原菌などの汚染物質を除去することもできる。ところが無酸素状態の形成は容易ではない。有機物含有廃棄物の熱分解室を抜気による真空またはほぼ真空状態に形成するか、形成された真空またはほぼ真空状態に不活性ガスなどを導入させることなどが提案されている。有機含有廃棄物の熱分解室を真空またはほぼ真空状態に形成する技術的課題は、処理室内を負圧状態にすると外気流入環境となるため、廃棄物の投入口、排出口および排気孔などの大気との接点に完全な遮蔽手段を採用しなければならない。
【0011】
これまでに提示されている機械的シャッター、エアロックまたはエアシャッター、マテリアルシーリング、窒素(N)などの不活性ガスによる置換方法などの手段によって加熱装置の内部を大気と完全遮断することは極めて難しく、より完全なものを求める場合には手段も高価なものにならざるを得ない。そこで次善の策として、機械的およびエア手段における2重シャッター構造や内部を大気圧より高い不活性ガスの圧力勾配を形成するようにした点を含まない単なる不活性ガス雰囲気形成方法などを挙げることができる。
【0012】
さらなる技術的課題は、熱分解により発生した熱分解ガスの漏洩および/または逆流を防止することである。有機物含有廃棄物の熱分解反応により発生する熱分解ガスの処理室からの漏洩および/または逆流防止は、有機物含有廃棄物の処理方法における汚染または有毒ガスの処理室からの漏洩という観点から重要な技術的課題の一つである。そのため、従来技術の多くは、通常は出入口および排気孔の密閉性を保ちつつ室内の負圧状態を形成することによって、この技術的課題を克服してきた。ところが、こうした室内を負圧状態に形成することは、上記したように有機物含有廃棄物の熱分解室内を負圧状態にすることによって大気の流入を完全に遮断することが困難になるという問題に直面することにもなる。トレードオフ関係にあるこの2つの課題を同時に解決することが求められる。
【0013】
次なる技術課題は、高分子材料を含む有機物含有廃棄物の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止することである。例えば、医療廃棄物処理など、有機物含有廃棄物が充填されたプラスチック容器毎破砕する前工程を含む熱分解または燃焼処理の場合に、高分子材料が大量に含まれる被燃焼物は、高温に曝され溶融された粘性の高い高分子材料を含んだ状態で横向きのドラム状加熱室内を排出口へと搬送されるため、搬送手段として通常採用されているスクリューコンベアに溶融した粘性のある高分子材料が付着蓄積することは避けられない。このことによる装置機能の低下を回避しようとすると、かなりの頻度で装置全体を止め、燃焼室内およびスクリューコンベア自体を分解してクリーニングするしかない。
【0014】
問題は、有機物含有廃棄物の熱分解反応の連続性をどう維持するかである。特に不活性ガス雰囲気を形成し大量の有機物含有廃棄物の処理をする場合、始動時を除き通常運転時は連続処理を前提としなければならない。ところが、上記したような技術的課題を解決しつつ通常運転時の連続処理を実現する手段はこれまでに提案されておらず、そうした提案が待たれるところでもあった。
【発明の開示】
【0015】
上述したような課題の解決は、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、且つ残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込み、密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するようにした有機物含有廃棄物を連続的に熱分解するという以下の特徴を有する本発明によって達成することができる。
【0016】
請求の範囲1に記載の発明は、有機物含有廃棄物連続的熱分解方法であって、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成し、前記密閉室の前記投入口から前記不活性ガス溜まりに前記有機物含有廃棄物を順次投入し、前記不活性ガス溜まりを維持しながら前記有機物含有廃棄物を下流側に順次送込み、且つ密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし外気を遮断することによって前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求の範囲2に記載の発明は、請求の範囲1に記載の発明の特徴に加えて、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法であって、a)上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口とを有し、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室に、不活性ガス注入手段が不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成し、b)密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入し、c)密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動手段によって、不活性ガスが往復動する前記プッシャー板の前後を移動できる連通手段を介して不活性ガス溜まりを維持しながら有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に順次送込み、d)密閉室に送込まれた不活性ガスによって熱分解加熱部の有機物含有廃棄物を無酸素状態で熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解し、e)密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力が常に熱分解ガスのガス圧力を上回るように密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室の排気孔から熱分解ガスを回収し、f)排出手段によって密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する工程を含み、g)前記a)からf)の一連の工程による有機物含有廃棄物の連続的熱分解は、不活性ガス注入手段によって密閉室内に送込まれた不活性ガスのガス圧力Pが常に大気圧Pを上回る、
P>P・・・・(1)
すなわち、密閉室に不活性ガスによる正圧状態が形成されており、そのことにより、密閉室への大気の流入を遮断して無酸素状態でなされるとともに、密閉室の不活性ガスのガス圧力が熱分解によって発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回る、
>P≧P>P・・・・(2)
すなわち、密閉室の上流側の不活性ガスのガス圧力Pと熱分解加熱部の不活性ガスと熱分解ガスとの混合ガス圧力Pと下流側の主に熱分解ガスのガス圧力Pとが、大気圧Pを上回る不活性ガスの圧力勾配を形成し、そのことにより、密閉室において熱分解ガスの下流側から上流側への逆流を阻止するようになされることを特徴とする。
【0018】
請求の範囲3に記載の発明は、請求の範囲2に記載の発明の特徴に加えて、上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口と有し、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする。
【0019】
請求の範囲4に記載の発明は、請求の範囲3に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の熱分解加熱部が導電性材料からなり、熱分解加熱部の外壁が電磁誘導加熱コイルで巻回されており、電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする。
【0020】
請求の範囲5に記載の発明は、請求の範囲2から4に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入する工程が、有機物含有廃棄物を密閉室の投入口に連続する密閉搬送路を経由して投入口に順次搬送する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
請求の範囲6に記載の発明は、請求の範囲5に記載の発明の特徴に加えて、有機物含有廃棄物を投入口へ順次搬送する工程が、有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
請求の範囲7に記載の発明は、請求の範囲2から6のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口に少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入手段によって、有機物含有廃棄物を一時的に搬送室に滞留させながら、密閉室に順次投入するようにしたことを特徴とする。
【0023】
請求の範囲8に記載の発明は、請求の範囲7に記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口の密閉自在な搬送室および/または密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を有する不活性ガス注入手段によって、搬送室および/または密閉室に不活性ガスを送込み、少なくとも密閉室の不活性ガスのガス圧力が大気圧を上回るように制御することを特徴とする。
【0024】
請求の範囲9に記載の発明は、請求の範囲8に記載の発明の特徴に加えて、少なくとも密閉室の投入口の密閉自在な搬送室、密閉室の最上流側の不活性ガス注入口の近傍、密閉室の熱分解加熱部の上流側、および密閉室の熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサーを適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、往復動手段のプッシャー板の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、不活性ガスの送込量を制御して密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする。
【0025】
請求の範囲10に記載の発明は、請求の範囲2から9のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、連通手段は、往復動手段のプッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガスが、往復動手段のプッシャー板の前進ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動手段のプッシャー板の後退ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の前方に流入するようにして不活性ガスの形成された圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする。
【0026】
請求の範囲11に記載の発明は、請求の範囲2から10のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力が常に熱分解ガスのガス圧力を上回るように密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室の排気孔から熱分解ガスを回収する工程は、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0027】
請求の範囲12に記載の発明は、請求の範囲11に記載の発明の特徴に加えて、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する工程は、ミスト分離手段を経由させ、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0028】
請求の範囲13に記載の発明は、請求の範囲2から12のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に順次送込まれる有機物含有廃棄物を往復動手段のプッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、密閉室の排出口から残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする。
【0029】
請求の範囲14に記載の発明は、請求の範囲2から13にいずれかに記載の発明の特徴に加えて、排出手段によって密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する工程は、排出口に接続された上流側の投入口および回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させ、回収容器に残渣の炭化物を回収する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0030】
請求の範囲15に記載の発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解装置であって、a)上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室と、b)密閉室に不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成する密閉室に連通する不活性ガス注入装置と、c)密閉室の投入口から不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入し、密閉室の熱分解加熱部に順次送込む密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動装置と、d)往復動装置と連動し、往復動するプッシャー板の前後を移動する不活性ガスによって不活性ガス溜まりを維持しながら、有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に順次送込むようにする不活性ガスの連通装置と、e)密閉室の熱分解加熱部の有機物含有廃棄物を熱分解ガスと残渣の炭化物とに連続的に熱分解する熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置と、f)密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力を常に熱分解ガスのガス圧力より上回らせて密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成する熱分解ガスの回収装置と、g)密閉室の排出口から残渣の炭化物を回収する排出装置とを含み、h)通常の運転中には、不活性ガス注入装置を用いて送込まれた不活性ガスのガス圧力が少なくとも大気圧を上回るようにし、外気を遮断して密閉室を無酸素状態にするとともに、熱分解加熱装置の熱分解によって発生し徐々に増大する熱分解ガスのガス圧力と密閉室の上流側から送込まれる不活性ガスのガス圧力とが、少なくとも密閉室の下流側で均衡するような密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するように密閉室内への不活性ガスの送込量を制御するようにしたことを特徴する。
【0031】
請求の範囲16に記載の発明は、請求の範囲15に記載の発明の特徴に加えて、上流側から有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、上流側と下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする。
【0032】
請求の範囲17に記載の発明は、請求の範囲15または16に記載の発明の特徴に加えて、熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置が電磁誘導加熱装置であり、導電性材料からなる熱分解加熱部に巻回された電磁誘導コイルに交流電流を流すことによって熱分解加熱部を加熱するとともに、熱分解加熱部の外壁を断熱構造にする、および/または、冷媒が循環するウォータ・ジャケットで覆うようにしたことを特徴とする。
【0033】
請求の範囲18に記載の発明は、請求の範囲17に記載の発明の特徴に加えて、電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする。
【0034】
請求の範囲19に記載の発明は、請求の範囲15または18に記載の発明の特徴に加えて、有機物含有廃棄物を順次投入する密閉室の投入口に接続する密閉搬送路をさらに含むことを特徴とする。
【0035】
請求の範囲20に記載の発明は、請求の範囲19に記載の発明の特徴に加えて、密閉搬送路が有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する装置をさらに含むことを特徴とする。
【0036】
請求の範囲21に記載の発明は請求の範囲15から20のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の投入口に有機物含有廃棄物を一時的に滞留させながら密閉室に順次投入する、少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入装置をさらに含むことを特徴とする。
【0037】
請求の範囲22に記載の発明は、請求の範囲15から21のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に不活性ガスを送込む不活性ガス注入装置が、密閉室の投入口の密閉自在な搬送室および/または密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を設けるようにしたことを特徴とする。
【0038】
請求の範囲23に記載の発明は、請求の範囲15から22のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、少なくとも密閉室の投入口の密閉自在な搬送室、密閉室の最上流側に不活性ガス注入口の近傍、密閉室の熱分解加熱部の上流側、および密閉室の熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサー適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、往復動装置のプッシャー板の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、ガス圧力センサーと連動させた不活性ガス注入装置が、不活性ガスの送込量を制御し、密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする。
【0039】
請求の範囲24に記載の発明は、請求の範囲15から23のいずれかの記載の発明の特徴に加えて、連通装置は、往復動装置のプッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、有機物含有廃棄物を投入した不活性ガス溜まりの不活性ガスが、往復動装置のプッシャー板の前進ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動装置のプッシャー板の後退ストロークにともないプッシャー板の複数孔を通じて徐々にプッシャー板の前方に流入するようにして不活性ガスの形成された圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする。
【0040】
請求の範囲25に記載の発明は、請求の範囲15から24のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に送込まれた不活性ガスのガス圧力を常に熱分解ガスのガス圧力より上回らせて密閉室に上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成する熱分解ガスの回収装置は、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する油水分離装置をさらに含むことを特徴とする。
【0041】
請求の範囲26に記載の発明は、請求の範囲25に記載の発明の特徴に加えて、回収される熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する油水分離装置は、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気するミスト分離装置をさらに含むことを特徴とする。
【0042】
請求の範囲27に記載の発明は、請求の範囲15から26のいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室に順次送込まれる有機物含有廃棄物を往復動装置のプッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、密閉室の排出口から残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする。
【0043】
請求の範囲28に記載の発明は、請求の範囲15から27にいずれかに記載の発明の特徴に加えて、密閉室の排出口から炭化物を回収する排出装置は、排出口に接続された上流側の投入口と回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させて回収容器に前記炭化物を回収するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
上記したような特徴を有する本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)例えば医療廃棄物などの有機物含有廃棄物の連続的熱分解を可能にする方法および装置並びに熱分解ガス化システムにおいて、熱分解加熱部を有する密閉室を抜気するのではなく大気圧より常に高い圧力で不活性ガスを送込み、且つ密閉室の上流から下流に向かって不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、密閉室内の無酸素状態を容易に形成できるようにしたことである。
(2)このことにより、熱分解加熱部を有する密閉室に外気が流入し燃焼または燃焼爆発を誘発することがないようにするとともに、不活性ガスの圧力勾配を利用して熱分解によって発生した熱分解ガスを逆流させことなく下流側の排気孔から確実に排気できるようにしたことである。
(3)さらに密閉室の断面形状にほぼ一致する形状のプッシャー板によって有機物含有廃棄物を密閉室の熱分解加熱部に送込むようにしたことにより、高分子材料を含む有機物含有廃棄物の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止できるようにしたことである。
(4)さらに密閉室内の不活性ガス圧力を監視しながら不活性ガスの送込量を制御するようにしたことにより、大量の有機物含有廃棄物の連続的熱分解処理を可能にした。
(5)さらにまた、有機物含有廃棄物の連続的熱分解によって発生する熱分解ガスおよび残渣の炭化物を回収し、公害化させることなく再資源化できるようにしたことなどである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムの実施例を図面に基づいて説明する。実施例の全体構成を図1に示し、図2のフロチャートにより動作手順を示した。本発明の実施例は、電磁誘導による熱分解手段または装置を示す。しかしながら、本発明における熱分解は電磁誘導手段または装置に限定されるものではなく、図示されてはいないが加熱空気またはガス、或いは熱分解装置自体をガスバーナーなどで直接加熱する手段をも含むことができる。
【0046】
図1は全体構成図であるとともに概念図である。医療廃棄物などの有機物含有廃棄物1は、外部から搬送コンベアなどにより破砕装置に送込まれ裁断されて、例えばドラム式の乾燥装置を経由させて固化成型装置において成型され、密閉搬送路2に順次送込まれる。ここに示される破砕装置、乾燥装置および固化成型装置は、有機物含有廃棄物1が汚染物質を含むかまたは爆発性や引火性などの危険物質を含むこともあり、有機物含有廃棄物1の熱分解の前処理工程として全体装置の一部とすることもできる。図1から明らかなように、密閉搬送路2は、後述する密閉室3の投入装置4の投入口41に通じている。
【0047】
密閉搬送路2の終端は投入装置4の上流側に続く。投入装置4の下流側は密閉室3への投入口41を含む。投入装置4には、搬送されてきた有機物含有廃棄物1を密閉室3に順次投入する際に、一時的に滞留させるための搬送室42を設けることができる。搬送室42は、上下2段のシャッター装置43を含むことができる。上段のシャッター装置431および下段のシャッター装置432は、アクチュエータなどにより交互に開閉するシャッターを有する。密閉搬送路2を経由してきた有機物含有廃棄物1は、開状態の上段シャッターと閉状態の下段シャッターとで構成される搬送室42に一時的に滞留する。次に上段シャッター431を閉状態とし、下段シャッター432を開状態とすることにより、有機物含有廃棄物1を投入口41から密閉室3に投入することができる。
密閉搬送路2と密閉室3とを接続する投入装置4に交互に開閉自在な上下2段シャッター装置431および432を設けることにより、密閉室3を密閉搬送路2との間を密閉自在に維持することができる。
【0048】
密閉室3の全体構成は図1に示される。図3は、密閉室の一部を構成する電磁誘導の熱分解加熱部31の断面図および側面図である。図1から明らかなように、密閉室3の上流側には、上記した有機物含有廃棄物1の投入口41と、アクチュエータなどにより密閉室3の内部を往復動する往復動装置5のプッシャー板51の裏面の最上流側に後述する不活性ガス注入装置6からバルブを有する配管により密閉室3に連通する不活性ガス注入口61とが設けられる。プッシャー板51の引込位置すなわち最後退位置は、投入口41とプッシャー板51との間になるように構成される。往復動装置5のプッシャー板51は密閉室3の断面形状にほぼ一致する外周を有し、密閉室3に送込まれた不活性ガスの流出入を可能にする表裏を貫通する1つまたは複数の連通孔511からなる不活性ガスの連通装置52を設けることができる。具体的には、図4の模式図に示すように、密閉室3に不活性ガス注入装置6によって送込まれた不活性ガスが、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークにともないプッシャー板の連通孔511からなる連通装置52を通じて徐々にプッシャー板の後方に流入し、且つ往復動装置5のプッシャー板51の後退ストロークにともないプッシャー板51の連通孔511からなる連通装置52を通じて徐々にプッシャー板51の前方に流入するようにすることができる。図4の模式図に示した連通装置52は、プッシャー板51の表裏を貫通する1つまたは複数の連通孔511からなるが、こうした構成に限定されることなく、プッシャー板51の前進ストロークにともないプッシャー板51の後方に流入し、且つプッシャー板51の後退ストロークにともないプッシャー板51の前方に流入するようにして密閉室3に送込まれた不活性ガスによって形成された圧力勾配を維持することができる構成にあればよく、例えば往復動装置5のプッシャー板51の前進および後退ストロークの前進位置および後退位置の内壁に連通孔を有するガス連通路を密閉室の外壁に併設し、そのガス連通路を介して不活性ガスの流出入を可能にする連通装置52とすることもできる。
【0049】
また、高分子材料を含む有機物含有廃棄物1の加熱処理工程中に一時的に発生する溶融および/または粘性付着にともなう装置機能の低下を防止することは、有機物含有廃棄物1の熱分解反応の連続性をどう維持するか、すなわち、始動時を除き通常運転時は連続処理を前提としなければならないという点で重要な技術的課題である。そのため必要に応じ密閉室3の内壁への付着物を掻き落す着脱自在な掻き落し爪512を装着することもできる。
【0050】
上記した不活性ガス注入装置6は、窒素(N)またはアルゴン(Ar)などのガスを貯蔵するタンクである。バルブを有する配管によって密閉室3の最上流側の不活性ガス注入口61を介して不活性ガスを送込むとともに、上記した搬送室42にもバルブを有する配管によって同じく不活性ガス注入口62を介して不活性ガスを送込むようにすることもできる。不活性ガスが密閉室3に送込まれることによって、プッシャー板51の往復動によってもプッシャー板51に設けた連通孔511からなる連通装置52を介して不活性ガスが流出入でき、密閉室3に不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気63を形成し、維持させることができる。密閉室3の内部に形成されるNまたはArなどの不活性ガス雰囲気63を監視するために、少なくとも密閉室3の投入口41の密閉自在な搬送室42、密閉室3の最上流側の不活性ガス注入口61の近傍、密閉室3の熱分解加熱部31の上流側、および密閉室3の熱分解加熱部31の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサー641、642、643、644(まとめて64)を適宜設ける必要がある。これらのガス圧力センサー641から644によって、後述するように熱分解が開始される上流側の有機物含有廃棄物1を投入した不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気63の不活性ガス圧力と、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークにともない発生する熱分解ガスおよび不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する下流側の主に熱分解ガスのガス圧力とを監視することができる。さらに、不活性ガス注入装置6は、これらのガス圧力センサー641から644と連動させて搬送室42および密閉室3への不活性ガスの送込量を制御することができる。
【0051】
密閉室3の下流側には、有機物含有廃棄物1の熱分解反応により発生する熱分解ガスを排気回収する装置7に接続される排気孔71と、有機物含有廃棄物1の熱分解反応の残渣である炭化物を回収する排出装置8に接続される排出口81とが設けられる。熱分解ガス回収装置7および残渣の炭化物排出装置8に関する詳細は後述する。通常は、排気孔71および排出口81の近傍には外気の流入を阻止するためのシャッター装置が適宜設けられるが、後述するように本発明の特徴の1つは、こうした装置を必ずしも必要としないことにある。
【0052】
電磁誘導による熱分解加熱部31は、密閉室3の上流側と下流側との間に形成される。図3にみるように熱分解加熱部31は電磁誘導加熱により発熱する導電性材料の円筒形容器311からなり、その外周を断熱材312が覆う。円筒形容器311の外周両端に設けたコイル支持部材314により、断熱材312の外周に巻回された電磁誘導加熱コイル313を支持することができる。さらに電磁誘導加熱コイル313上を冷却水などの冷媒が循環する冷却パイプ(「ウォータ・ジャケット」という。)315を巻回し、巻回された冷却パイプ315を円筒形容器311の長手方向に支持する支持部材316を設ける。図示しないが、冷却水を冷却パイプ315に供給するポンプ装置および電磁誘導コイル313に電流を供給する高周波電源を設けることはいうまでもない。図3に示す高周波電源接続端子位置317は、電磁誘導コイル313との端子位置である。また、図3から明らかなようにコイル支持部材314および316を解除することによって、密閉室3内のクリーニングのために円筒形容器311を電磁誘導コイル313と一体的に2分割できるように設計することも可能である。取付けボルト位置318は円筒容器311と密閉室3の上流側との接合部であり、取付けボルト位置319は円筒容器311と密閉室3の下流側との接合部であるが、これらは密閉室3として一体的に形成するようにしてもよい。電磁誘導加熱による円筒形容器311の温度を計測し、電磁誘導コイル313の高周波電源への電圧を制御することによって円筒形容器311の内部温度を調整するために、断熱材312を貫通する熱電対の温度センサー320を円筒形容器311に適宜設けることができる。熱分解加熱部31を円筒形容器311と断熱材312とウォータ・ジャケット315から構成したことにより、円筒容器311が電磁誘導による500から1000℃に熱した場合であっても熱分解加熱部31の外周温度は約40℃程度に保たせることができるので、円筒形容器内部への外気流入にともなう燃焼または燃焼爆発さえ制御できれば、作業上の安全性や火災の危険は一切生じない。
【0053】
密閉室3を上記のように構成することにより、不活性ガス注入装置6を用いて送込まれた不活性ガスのガス圧力が少なくとも大気圧を上回るようにし、外気を遮断して密閉室3を無酸素状態にすることができる。さらに密閉室3における熱分解によって発生し徐々に増大する熱分解ガスのガス圧力と密閉室3の上流側から送込まれる不活性ガスのガス圧力とが少なくとも密閉室3の下流側で均衡するような、密閉室3の上流側から下流側への不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室3から排気するように密閉室3内への不活性ガスの送込量を制御するようにすることもできる。より具体的には、密閉室3に投入され熱分解加熱部31に順次送込まれた有機物含有廃棄物1の連続的熱分解は、不活性ガス注入装置6によって密閉室3の内部に送込まれた不活性ガスのガス圧力Pが常に大気圧Pを上回る、
P>P・・・・(1)
すなわち、密閉室3に不活性ガスによる正圧状態が形成され、そのことにより、密閉室への大気の流入を遮断して無酸素状態にすることができるとともに、密閉室の不活性ガスのガス圧力が熱分解によって発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回る、
>P≧P>P・・・・(2)
すなわち、密閉室3の上流側の不活性ガスのガス圧力Pと熱分解加熱部31の不活性ガスと熱分解ガスとの混合ガス圧力Pと下流側の主に熱分解ガスのガス圧力Pとが、大気圧Pを上回る不活性ガスの圧力勾配を形成し、そのことにより、密閉室において熱分解ガスの下流側から上流側への逆流を阻止し、熱分解ガスを排気孔71を経由させて排気回収することができる。
【0054】
次に、発生した熱分解ガスは、排気孔71を経由させて排気回収装置7によって回収される。より具体的には、大気を上回る密閉室3の不活性ガスのガス圧力によって、発生した熱分解ガスは排気孔71およびガス誘導管72を通り外周を冷却水で冷やされる冷却装置73を経由して油水分離装置74に送られる。ここで油化物と水に分離され、次に排気ファン76によって、残渣の熱分解ガスは油水分離装置74からミスト分離装置75に吸引され、ここで洗浄された後に外部に排気される。油水分離装置74によって分離され、回収装置によって回収された油化物は、重油並みの発熱量を有しており、例えば上記した乾燥装置の燃料として再利用することができる。
【0055】
熱分解反応による残渣の炭化物は、排出口81を経由させて排出装置8によって回収される。排出装置8は横設された円筒形冷却装置82と容器型回収装置83とからなる。円筒形冷却装置82は、上流側に密閉室3の排出口81に接続する投入口821から投入された残渣の炭化物が搬送スクリューによって送られ、ここで冷却された後に、下流側に設けた排出口822から容器型回収装置83に排出されるようにしたものである。残渣の炭化物は飛散し粉塵状態になりやすいので、そうした飛散を防ぐために排出口822または容器型回収装置83の入口に機密性シャッターを設けるようにすることが好ましい。ところで、回収された炭化物は固形燃料とすることによって石炭並みの発熱量を有し、固形燃料として再資源化できることも指摘しておく。
【0056】
図2からは、本発明に係る有機物含有廃棄物1の熱分解方法および装置並びに熱分解ガス化システムの始動時から通常運転に至る動作手順が明らかになる。破砕、乾燥および固化成型された有機物含有廃棄物1の処理物量が準備され、不活性ガス注入装置6の作動確認、密閉室3の熱分解加熱部31の冷却水循環の確認、その他の各部の設定と動作を確認した後に、主電源をオン状態にする。熱分解加熱部31の温度は850℃に設定し、図2にみるように、密閉搬送路2の搬送装置を駆動する。搬送されてきた有機物含有廃棄物1は、上段シャッターが開状態で下段シャッターが閉状態の搬送室42に至り一時的に滞留される。その搬送室42に連通された不活性ガス注入口62を介して不活性ガスが送込まれる。送込まれた不活性ガスは開状態の上段シャッターを通り密閉搬送路2に流れ込む。
【0057】
同様に不活性ガス注入口61を介して密閉室3に不活性ガスが送込まれ、連通孔511からなる連通装置52により、送込まれた不活性ガスは密閉室3の下流側に流れ込み密閉室の空気を追い出すとともに、密閉室3の内部には不活性ガス雰囲気が形成される。次に、搬送室42の上段シャッターが閉じられ下段シャッターが開かれることよって、不活性ガス注入口62から送込まれた不活性ガスは、不活性ガス雰囲気の密閉室3に流れ込み、不活性ガス溜まりが形成される。滞留された有機物含有廃棄物1は、こうして形成された不活性ガス溜まりに投入される。その投入された有機物含有廃棄物1は、往復動装置5のプッシャー板51の前進ストロークによって、少なくとも熱分解加熱部31まで送込まれる。
【0058】
密閉室3の熱分解加熱部31に送込まれた有機物含有廃棄物1は、850℃の熱分解加熱部において熱分解反応が生じる。ここで有機物含有廃棄物1に含まれるプラスチックなどが熱分解ガスになり、紙や繊維などが炭化物になる。こうした熱分解反応が生じるまでの密閉室3の不活性ガス溜まりまたは不活性ガス雰囲気において、図2からも明らかなように、搬送室42の上段シャッターが閉じられ下段シャッターが開かれた際には、搬送室42の不活性ガスのガス圧力は、不活性ガス注入口62を介して送込まれる不活性ガスによって、不活性ガス注入口61を介して送込まれる不活性ガスによって形成される不活性ガス雰囲気の密閉室3のガス圧力を上回る。熱分解加熱部31において熱分解反応が始まり、それにともない発生する熱分解ガスのガス圧力を常に上回るように、ガス圧力センサー641から644を用いて密閉室3のガス圧力を監視しながら、それらと連動させて、不活性ガス注入装置6から密閉室3への不活性ガスの送込量を制御する。このことにより、密閉室3の内部のガス圧力が常に大気圧を上回るようにすることが可能となり、同時に密閉室の上流側から下流側に向かって不活性ガスの圧力勾配を形成することも可能となる。
【0059】
密閉搬送路2を経由して送られてくる有機物含有廃棄物1は、2段シャッター装置43で区画される搬送室42おいて一時的に滞留しながら順次密閉室3に投入され、順次投入された有機物含有廃棄物1は、往復動装置5のプッシャー板51の往復動により密閉室3の熱分解加熱部31に順次送込まれる。発生した熱分解ガスは、密閉室3の内部に形成された不活性ガスの圧力勾配によって、排気孔71に確実に送込まれることになる。また残渣の炭化物は、例えばプッシャー板52の前進ストロークを排出口81近傍にまで伸ばすことによって排出することもできる。これ以外に排出装置を別途設けることも可能である。
【0060】
本発明は、実施例およびフロチャートで示した動作手順からも明らかなように、上記したような効果を奏するものである。さらに、大気汚染物質をほとんど発生させることなく有機物含有廃棄物を連続的に熱分解可能にし、加熱温度設定を処理物の性状、種類に応じて調整することも可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】 本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置を表す全体構成図である。
【図2】 本発明に係る有機物含有廃棄物の熱分解方法および装置における動作手順を表すフロチャートである。
【図3】 密閉室の熱分解加熱部の縦断面図(a)および左側面図(b)である。
【図4】 往復動装置のプッシャー板の往復動動作による密閉室内の不活性ガス流れを示す模式図である。
本発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法および装置に関し、より具体的には、熱分解加熱部を形成した密閉室に、常に大気圧を上回るように不活性ガスを送込み、不活性ガス溜まりを形成し、その密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動手段によって、不活性ガスが往復動するプッシャー板の前後を移動できる連通手段を介して不活性ガス溜まりを維持しながら、不活性ガス溜まりに有機物含有廃棄物を順次投入および送込み、外気を遮断して、いわゆる限界酸素濃度以下の無酸素状態で有機物含有廃棄物を熱分解する方法および装置に関する。
請求の範囲1に記載の発明は、有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法であって、上流側から投入された有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を上流側と下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成し、前記密閉室の投入口から前記不活性ガス溜まりに前記有機物含有廃棄物を順次投入し、前記密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動手段によって、前記不活性ガスが往復動する前記プッシャー板の前後を移動できる連通手段を介して前記不活性ガス溜まりを維持しながら前記有機物含有廃棄物を下流側に順次送込み、且つ密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにして外気を遮断することによって前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する熱分解ガスのガス圧力をも上回るように密閉室の上流側から下流側に不活性ガスの圧力勾配を形成し、熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく密閉室から排気するようにしたことを特徴とする。

Claims (31)

  1. 有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法であって、上流側から投入された前記有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが排気され、且つ残渣の炭化物が排出される熱分解加熱部を前記上流側と前記下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入手段を用いて不活性ガスを送込み、前記密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する前記熱分解ガスのガス圧力をも上回るように前記密閉室の上流側から下流側に前記不活性ガスの圧力勾配を形成し、前記熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく前記密閉室から排気するようにしたことを特徴とする方法。
  2. 有機物含有廃棄物の連続的熱分解方法であって、
    a) 上流側から前記有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から前記有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口とを有し、前記上流側と前記下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室に、不活性ガス注入手段が不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成し、
    b) 前記密閉室の前記投入口から前記不活性ガス溜まりに前記有機物含有廃棄物を順次投入し、
    c) 前記密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動手段によって、前記不活性ガスが往復動する前記プッシャー板の前後を移動できる連通手段を介して前記不活性ガス溜まりを維持しながら前記有機物含有廃棄物を前記密閉室の前記熱分解加熱部に順次送込み、
    d) 前記密閉室に送込まれた不活性ガスによって前記熱分解加熱部の前記有機物含有廃棄物を無酸素状態で前記熱分解ガスと前記残渣の炭化物とに連続的に熱分解し、
    e) 前記密閉室に送込まれた前記不活性ガスのガス圧力が常に前記熱分解ガスのガス圧力を上回るように前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、前記密閉室の前記排気孔から前記熱分解ガスを回収し、
    f) 排出手段によって前記密閉室の前記排出口から前記残渣の炭化物を回収する、
    工程を含み、
    g) 前記a)からf)の一連の工程による前記有機物含有廃棄物の連続的熱分解は、前記不活性ガス注入手段によって前記密閉室内に送込まれた前記不活性ガスのガス圧力Pが常に大気圧Pを上回る、
    P>P・・・・(1)
    すなわち、前記密閉室に前記不活性ガスによる正圧状態が形成されており、そのことにより、前記密閉室への大気の流入を遮断して無酸素状態でなされるとともに、前記密閉室の前記不活性ガスのガス圧力が前記熱分解によって発生する前記熱分解ガスのガス圧力を常に上回る、
    >P≧P>P・・・・(2)
    すなわち、前記密閉室の上流側の不活性ガスのガス圧力Pと熱分解加熱部の不活性ガスと熱分解ガスとの混合ガス圧力Pと下流側の主に熱分解ガスのガス圧力Pとが、大気圧Pを上回る前記不活性ガスの圧力勾配を形成し、そのことにより、前記密閉室において前記熱分解ガスの下流側から上流側への逆流を阻止するようになされる、
    ことを特徴とする方法。
  3. 上流側から前記有機物含有廃棄物を受入れる投入口と、下流側から前記有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔および残渣の炭化物を排出する排出口とを有し、前記上流側と前記下流側との間に熱分解加熱部を形成する前記密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする請求の範囲2に記載の方法。
  4. 前記熱分解加熱部が導電性材料からなり、前記熱分解加熱部の外壁が電磁誘導加熱コイルで巻回されており、前記電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって前記熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする請求の範囲3に記載の方法。
  5. 前記密閉室の前記投入口から前記不活性ガス溜まりに前記有機物含有廃棄物を順次投入する前記工程が、前記有機物含有廃棄物を前記密閉室の前記投入口に連続する密閉搬送路を経由して前記投入口に順次搬送する工程をさらに含む請求の範囲2から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記有機物含有廃棄物を前記投入口へ順次搬送する前記工程が、前記有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する工程をさらに含む請求の範囲5に記載の方法。
  7. 前記密閉室の前記投入口に少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入手段によって、前記有機物含有廃棄物を一時的に前記搬送室に滞留させながら、前記密閉室に順次投入するようにしたことを特徴とする請求の範囲2から6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記密閉室の前記投入口の密閉自在な前記搬送室および/または前記密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を有する前記不活性ガス注入手段によって、前記搬送室および/または前記密閉室に前記不活性ガスを送込み、少なくとも前記密閉室の不活性ガスのガス圧力が大気圧を上回るように制御することを特徴とする請求の範囲7に記載の方法。
  9. 少なくとも前記密閉室の前記投入口の密閉自在な前記搬送室、前記密閉室の最上流側の不活性ガス注入口の近傍、前記密閉室の前記熱分解加熱部の上流側、および前記密閉室の前記熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサーを適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される前記上流側の前記有機物含有廃棄物を投入した前記不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、前記往復動手段の前記プッシャー板の前進ストロークにともない発生する前記熱分解ガスおよび前記不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する前記下流側の主に前記熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、前記不活性ガスの送込量を制御して前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする請求の範囲8に記載の方法。
  10. 前記連通手段は、前記往復動手段の前記プッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、前記有機物含有廃棄物を投入した前記不活性ガス溜まりの前記不活性ガスが、前記往復動手段の前記プッシャー板の前進ストロークにともない前記プッシャー板の前記複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の後方に流入し、且つ前記往復動手段の前記プッシャー板の後退ストロークにともない前記プッシャー板の前記複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の前方に流入するようにして前記不活性ガスの形成された前記圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする請求の範囲2から9のいずれかの記載の方法。
  11. 前記密閉室に送込まれた前記不活性ガスのガス圧力が常に前記熱分解ガスのガス圧力を上回るように前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成することによって、前記密閉室の前記排気孔から前記熱分解ガスを回収する前記工程は、回収される前記熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する工程をさらに含む請求の範囲2から10のいずれかに記載の方法。
  12. 回収される前記熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却手段を経由させ、油水分離手段によって油成分として回収する前記工程は、ミスト分離手段を経由させ、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気する工程をさらに含む請求の範囲11に記載の方法。
  13. 前記密閉室に順次送込まれる前記有機物含有廃棄物を前記往復動手段の前記プッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、前記密閉室の前記排出口から前記残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする請求の範囲2から12のいずれかに記載の方法。
  14. 排出手段によって前記密閉室の前記排出口から前記残渣の炭化物を回収する前記工程は、前記排出口に接続された上流側の投入口および回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させ、前記回収容器に前記残渣の炭化物を回収する工程をさらに含む請求の範囲2から13にいずれかに記載の方法。
  15. 有機物含有廃棄物の連続的熱分解装置であって、
    a) 上流側から前記有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から前記有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、前記上流側と前記下流側との間に熱分解加熱部を形成する密閉室と、
    b) 前記密閉室に不活性ガスを送込むことによって不活性ガス溜まりを形成する前記密閉室に連通する不活性ガス注入装置と、
    c) 前記密閉室の前記投入口から前記不活性ガス溜まりに前記有機物含有廃棄物を順次投入し、前記密閉室の前記熱分解加熱部に順次送込む前記密閉室の断面形状にほぼ一致するプッシャー板を有する往復動装置と、
    d) 前記往復動装置と連動し、往復動する前記プッシャー板の前後を移動する前記不活性ガスによって前記不活性ガス溜まりを維持しながら、前記有機物含有廃棄物を前記密閉室の前記熱分解加熱部に順次送込むようにする不活性ガスの連通装置と、
    e) 前記熱分解加熱部の前記有機物含有廃棄物を前記熱分解ガスと前記残渣の炭化物とに連続的に熱分解する前記熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置と、
    f) 前記密閉室に送込まれた前記不活性ガスのガス圧力を常に前記熱分解ガスのガス圧力より上回らせて前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成する前記熱分解ガスの回収装置と、
    g) 前記密閉室の前記排出口から前記残渣の炭化物を回収する排出装置と、
    を含み、
    h) 通常の運転中には、前記不活性ガス注入装置を用いて送込まれた前記不活性ガスのガス圧力が少なくとも大気圧を上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、前記熱分解加熱装置の熱分解によって発生し徐々に増大する前記熱分解ガスのガス圧力と前記密閉室の上流側から送込まれる前記不活性ガスのガス圧力とが、少なくとも前記密閉室の下流側で均衡するような前記密閉室の上流側から下流側に前記不活性ガスの圧力勾配を形成し、前記熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく前記密閉室から排気するように前記密閉室内への前記不活性ガスの送込量を制御するようにした、
    ことを特徴する装置。
  16. 上流側から前記有機物含有廃棄物を受入れる投入口、および、下流側から前記有機物含有廃棄物の熱分解によって発生する熱分解ガスを排気する排気孔と残渣の炭化物を排出する排出口を有する、前記上流側と前記下流側との間に熱分解加熱部を形成する前記密閉室が、横設された密閉室であることを特徴とする請求の範囲15に記載の装置。
  17. 前記熱分解加熱部に配した熱分解加熱装置が電磁誘導加熱装置であり、導電性材料からなる前記熱分解加熱部に巻回された電磁誘導コイルに交流電流を流すことによって前記熱分解加熱部を加熱するとともに、前記熱分解加熱部の外壁を断熱構造にする、および/または、冷媒が循環するウォータ・ジャケットで覆うようにしたことを特徴とする請求の範囲15または16に記載の装置。
  18. 前記電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって前記熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする請求の範囲17に記載の装置。
  19. 前記有機含有廃棄物を順次投入する前記密閉室の前記投入口に接続する密閉搬送路をさらに含む請求の範囲15または18に記載の装置。
  20. 前記密閉搬送路が前記有機物含有廃棄物を破砕し、乾燥した後に固化整形する装置をさらに含む請求の範囲19に記載の装置。
  21. 前記密閉室の前記投入口に、前記有機物含有廃棄物を一時的に滞留させながら前記密閉室に順次投入する、少なくとも交互に開閉する上下2段のシャッターで形成される密閉自在な搬送室を有する投入装置をさらに含む請求の範囲15から20のいずれかに記載の装置。
  22. 前記密閉室に不活性ガスを送込む前記不活性ガス注入装置が、前記密閉室の前記投入口の密閉自在な前記搬送室および/または前記密閉室の最上流側に不活性ガス注入口を設けるようにしたことを特徴とする請求の範囲15から21のいずれかに記載の装置。
  23. 少なくとも前記密閉室の前記投入口の密閉自在な前記搬送室、前記密閉室の最上流側に不活性ガス注入口の近傍、前記密閉室の前記熱分解加熱部の上流側、および前記密閉室の前記熱分解加熱部の下流側のいずれかの位置にガス圧力センサー適宜設け、そのことにより、熱分解が開始される前記上流側の前記有機物含有廃棄物を投入した前記不活性ガス溜まりの不活性ガス圧力と、前記往復動装置の前記プッシャー板の前進ストロークにともない発生する前記熱分解ガスおよび前記不活性ガスの混合ガス圧力と、熱分解が完了する前記下流側の主に前記熱分解ガスのガス圧力とを監視しながら、前記ガス圧力センサーと連動させた前記不活性ガス注入装置が、前記不活性ガスの送込量を制御し、前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成するようにしたことを特徴とする請求の範囲15から22のいずれかに記載の装置。
  24. 前記連通装置は、前記往復動装置の前記プッシャー板に穿設された1つまたは複数の孔であり、前記有機物含有廃棄物を投入した前記不活性ガス溜まりの前記不活性ガスが、前記往復動装置のプッシャー板の前記前進ストロークにともない前記プッシャー板の前記複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の後方に流入し、且つ前記往復動装置の前記プッシャー板の後退ストロークにともない前記プッシャー板の前記複数孔を通じて徐々に前記プッシャー板の前方に流入するようにして前記不活性ガスの形成された前記圧力勾配を維持するようにしたことを特徴とする請求の範囲15から23のいずれかの記載の装置。
  25. 前記密閉室に送込まれた前記不活性ガスのガス圧力を常に前記熱分解ガスのガス圧力より上回らせて前記密閉室に上流側から下流側への前記不活性ガスの圧力勾配を形成する前記熱分解ガスの回収装置は、回収される前記熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する油水分離装置をさらに含む請求の範囲15から24のいずれかに記載の装置。
  26. 回収される前記熱分解ガスをガス洗浄および/または冷却装置を介して油成分として回収する前記油水分離装置は、排気ファンによって残渣の熱分解ガスを排気するミスト分離装置をさらに含む請求の範囲25に記載の装置。
  27. 前記密閉室に順次送込まれる前記有機物含有廃棄物を前記往復動装置の前記プッシャー板の前進ストロークによる押込動作によって、前記密閉室の前記排出口から前記残渣の炭化物を排出するようにしたことを特徴とする請求の範囲15から26のいずれかに記載の装置。
  28. 前記密閉室の前記排出口から前記炭化物を回収する排出装置は、前記排出口に接続された上流側の投入口と回収容器に接続された下流側の排出口を有する炭化物冷却室を経由させて前記回収容器に前記炭化物を回収するようにしたことを特徴とする請求の範囲15から27にいずれかに記載の装置。
  29. 有機物含有廃棄物の連続的熱分解ガス化システムであって、上流側から投入された前記有機物含有廃棄物が熱分解され、下流側から発生した熱分解ガスが回収される熱分解加熱部を前記上流側と前記下流側との間に形成する密閉室に、不活性ガス注入システムを用いて不活性ガスを送込み、前記密閉室の不活性ガス圧力が大気圧を常に上回るようにし、外気を遮断して前記密閉室を無酸素状態にするとともに、発生する前記熱分解ガスのガス圧力をも上回るように前記密閉室の上流側から下流側に前記不活性ガスの圧力勾配を形成し、前記熱分解ガスを下流側から上流側に逆流させることなく前記密閉室から回収するようにしたことを特徴とするシステム。
  30. 前記熱分解加熱部が、電磁誘導コイルで巻回された導電性材料からなり、外壁を断熱構造にする、および/または、冷媒が循環するウォータ・ジャケットで覆うようにしたことを特徴とする請求の範囲29に記載のシステム。
  31. 前記電磁誘導加熱コイルへの電圧制御によって前記熱分解加熱部の内部温度を調整するようにしたことを特徴とする請求の範囲30に記載のシステム。
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