JPWO2008010478A1 - フラジェリン変異体ワクチン - Google Patents

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Abstract

ワクチン、特に、有鞭毛病原体(例えば、緑膿菌)に対して効果的に感染防御能を誘導するワクチンを提供する。野生型フラジェリンのToll様受容体5活性化領域における少なくとも1つの部位に変異が導入され、Toll様受容体5活性化能が減弱したフラジェリン変異体。前記フラジェリン変異体を標的とするワクチン。

Description

本発明は、フラジェリン変異体ワクチンに関する。
緑膿菌は、慢性疾患に伴う日和見感染症の原因菌として、薬剤耐性株の出現などから臨床上非常に問題となっている。様々なワクチンが検討されてきたが、臨床応用に至っているものは未だ開発されていない(非特許文献1)。
Holder IA. Pseudomonas immunotherapy: a histrical overview. Vaccine 2004;22(7):831-9
本発明は、ワクチン、特に、有鞭毛病原体(例えば、緑膿菌)に対して効果的に感染防御能を誘導するワクチンを提供することを目的とする。
フラジェリンは、細菌の運動に必須の器官である鞭毛の構成成分であり、宿主のToll様受容体5(TLR5)を介した自然免疫機構を活性化することが明らかにされている。野生型フラジェリンを免疫すると、これに対する中和抗体が誘導され、細菌のフラジェリンによるTLR5を介した宿主自然免疫活性化が抑制され、菌に対する感染防御は著しく抑制されることを明らかにした。そこで、フラジェリンのTLR5活性化領域に部位特異的変異を導入し、TLR5活性化能が著しく減弱した変異体FliC R90Aを作製した。これを標的にしたDNAワクチンを作製し、免疫すると、強力に同型フラジェリン発現株の感染防御能を賦与し、しかも異型のフラジェリンを発現している緑膿菌株に対しても感染防御能を示した。このことから、FliC R90Aを抗原として用いることで、異なるフラジェリンを発現する異種の緑膿菌に対して強力に感染防御能を賦与できるワクチンの開発が可能となった。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 野生型フラジェリンのToll様受容体5活性化領域における少なくとも1つの部位に変異が導入され、Toll様受容体5活性化能が減弱したフラジェリン変異体。
(2) 野生型フラジェリンが有鞭毛病原体由来である(1)記載のフラジェリン変異体。
(3) 有鞭毛病原体が緑膿菌である(2)記載のフラジェリン変異体。
(4) 野生型フラジェリンがフラジェリンFlaA又はFliCである(1)〜(3)のいずれかに記載のフラジェリン変異体。
(5) 野生型フラジェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCであり、Toll様受容体5活性化領域が配列番号2のアミノ酸配列中の71番目のアミノ酸〜97番目のアミノ酸の領域を含む(4)記載のフラジェリン変異体。
(6) 配列番号2のアミノ酸配列における90番目のアルギニンが他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有する(5)記載のフラジェリン変異体。
(7) 他のアミノ酸がアラニン又はグリシンである(6)記載のフラジェリン変異体。
(8) 以下の(a)、(b)若しくは(c)のタンパク質である(1)記載のフラジェリン変異体。
(a)配列番号2のアミノ酸配列において、90番目のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体タンパク質
(b)(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、90番目のアラニン以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
(c)(a)のタンパク質をコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
(9) (a)のタンパク質をコードするDNAが配列番号3の塩基配列を有する(8)記載のフラジェリン変異体。
(10) (1)〜(9)のいずれかに記載のフラジェリン変異体をコードするDNA。
(11) (10)記載のDNAを含有するベクター。
(12) (11)記載のベクターを含む形質転換体。
(13) (12)記載の形質転換体を培養することを含む、フラジェリン変異体の製造方法。
(14) (1)〜(9)のいずれかに記載のフラジェリン変異体、(10)記載のDNA又は(11)記載のベクターを含むワクチン。
(15) 有鞭毛病原体に対するワクチンである(14)記載のワクチン。
(16) 有鞭毛病原体が緑膿菌である(15)記載のワクチン。
(17) のう胞性繊維症感染予防及び/又は易感染性患者への感染予防のために用いられる(14)〜(16)のいずれかに記載のワクチン。
(18) (1)〜(9)のいずれかに記載のフラジェリン変異体に対して誘導された抗体。
(19) (18)記載の抗体を含む医薬組成物。
本発明のフラジェリン変異体を標的としたワクチンは、鞭毛を有する細菌、特に、緑膿菌に対して強力に感染防御能を賦与できる。
また、本発明のフラジェリン変異体に対して誘導された抗体は、鞭毛を有する細菌、特に、緑膿菌を効果的に排除することができる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2006‐199361及び特願2007‐017446の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
フラジェリン変異体の特性決定。 (A)緑膿菌 FliCのアミノ酸配列。この配列において、α-ヘリックスを形成する領域を赤で網掛けしてあり、これらドメインで形成される立体構造が、FliC内のTLR5活性化ドメインを構成すると考えられる。 フラジェリン変異体の特性決定。 HEK293細胞に、マウスTLR5発現プラスミド+NF-κB依存性ルシフェラーゼ発現プラスミドで一過的にトランスフェクトした。次に、細胞を10〜500 ng/mlの濃度のFliC WTまたは変異体(L88A、R90A、Q97A、V404AまたはF425A)で刺激し、ルシフェラーゼ活性を測定した。グラフは、平均±SD値を示す。、スチューデントt検定によりp<0.01。2〜3回の独立した実験において同様の結果が得られた。 フラジェリン変異体の特性決定。 HEK293細胞に、ヒトTLR5発現プラスミド+NF-κB依存性ルシフェラーゼ発現プラスミドで一過的にトランスフェクトした。次に、細胞を10〜500 ng/mlの濃度のFliC WTまたは変異体(L88A、R90A、Q97A、V404AまたはF425A)で刺激し、ルシフェラーゼ活性を測定した。グラフは、平均±SD値を示す。、スチューデントt検定によりp<0.01。2〜3回の独立した実験において同様の結果が得られた。 フラジェリン変異体の特性決定。 PBS単独(対照)、1 μgのFliC WT又は変異体(L88A、R90A、Q97A、V404AまたはF425A)の組み換えタンパク質をマウスに経鼻投与した。接種後4時間で、気管支肺胞洗浄液を回収し、TNF-α濃度をELISAで測定した。データは、平均±SD値を示す。n=マウス6匹/群。、スチューデントt検定によりp<0.05。2〜3回の独立した実験において同様の結果が得られた。 フラジェリン変異体の特性決定。 BALB/cマウスに生成した抗FliC WT IgGとFliC WT、L88A、R90AまたはFlaAの組換えタンパク質との反応性をELISAにより調べた。2〜3回の独立した実験において同様の結果が得られた。 フラジェリンDNAワクチンの免疫原性 それぞれ、FliC又はFlaAを内因的に発現するPAO1又はPAKから調製した鞭毛を用いたイムノブロット分析により、FliC WT、R90A、又はFlaAにより生成したIgGの交差反応性を調べた。PAO1ブロットについては、近位のバンドがアミノ酸配列から推定されるサイズに相当し、遠位のバンドは分解産物であると推定された。 フラジェリンDNAワクチンの免疫原性 BALB/cマウスを、筋肉内エレクトロポレーションにより50μgのpGACAG(ベクター)、pGACAG-FliC WT、pGACAG-FliC R90AまたはpGACAG-FlaAで2回(0週目および3週目)に免疫した。初回免疫の3週後に血液を採取した。PAO1から精製したFliC(B型鞭毛)に対する血清IgG力価をELISAにより測定した。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス8匹/群、、スチューデントt検定によりp<0.05。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。 フラジェリンDNAワクチンの免疫原性 BALB/cマウスを、筋肉内エレクトロポレーションにより50μgのpGACAG(ベクター)、pGACAG-FliC WT、pGACAG-FliC R90AまたはpGACAG-FlaAで2回(0週目および3週目)に免疫した。初回免疫の6週後に血液を採取した。PAO1から精製したFliC(B型鞭毛)に対する血清IgG力価をELISAにより測定した。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス8匹/群、、スチューデントt検定によりp<0.05。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。 フラジェリンDNAワクチンの免疫原性 BALB/cマウスを、筋肉内エレクトロポレーションにより50μgのpGACAG(ベクター)、pGACAG-FliC WT、pGACAG-FliC R90AまたはpGACAG-FlaAで2回(0週目および3週目)に免疫した。初回免疫の3週後に血液を採取した。PAKから精製したFlaA(A型鞭毛)に対する血清IgG力価をELISAにより測定した。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス8匹/群、、スチューデントt検定によりp<0.05。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。 フラジェリンDNAワクチンの免疫原性 BALB/cマウスを、筋肉内エレクトロポレーションにより50μgのpGACAG(ベクター)、pGACAG-FliC WT、pGACAG-FliC R90AまたはpGACAG-FlaAで2回(0週目および3週目)に免疫した。初回免疫の6週後に血液を採取した。PAKから精製したFlaA(A型鞭毛)に対する血清IgG力価をELISAにより測定した。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス8匹/群、、スチューデントt検定によりp<0.05。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。 フラジェリンDNAワクチンの感染防御能 マウスを図2の説明に記載のように免疫した。2LD50量のPAO1を経鼻投与した後、生存率をモニターした。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。、マンテル・コックス(Mantel-Cox )ログランク検定によりp<0.05。 フラジェリンDNAワクチンの感染防御能 マウスを図2の説明に記載のように免疫した。2LD50量のPAKを経鼻投与した後、生存率をモニターした。3回の独立した実験から、同様の結果が得られた。、マンテル・コックス(Mantel-Cox )ログランク検定によりp<0.05。 フラジェリンDNAワクチンの感染防御能 マウスを図2の説明に記載のように免疫した。最終免疫の2週間後、マウスに5×105 CFUのPAO1を経鼻投与した。感染の24時間後、マウスを屠殺し、肺を摘出した。肺ホモジネート中の生細菌数を数えた。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス5匹/群。3回の独立した実験で同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.0001。 フラジェリンDNAワクチンの感染防御能 マウスを図2の説明に記載のように免疫した。最終免疫の2週間後、マウスに5×105 CFUのPAKを経鼻投与した。感染の24時間後、マウスを屠殺し、肺を摘出した。肺ホモジネート中の生細菌数を数えた。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス5匹/群。3回の独立した実験で同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.0001。 フラジェリンDNAワクチンの感染防御能 マウスを図2の説明に記載のように免疫した。最終免疫の2週間後、マウスに5×105 CFUのPAO1を経鼻投与した。感染の24時間後、マウスを屠殺し、肺を摘出した。肺ホモジネート中のMPO活性を求めた。グラフは、平均±SD値を示す。n=マウス5匹/群。、スチューデントt検定によりp<0.05。3回の独立した実験において同様の結果が得られた。 型特異的抗フラジェリン抗体は、同型のフラジェリンによるTLR5活性化を阻害するが、異型のフラジェリンによるTLR5活性化は阻害しない。 HEK293細胞を、図1で説明したようにして一過的にトランスフェクトした。細胞を、10μg/mlの対照、抗FliC WT、FliC R90AまたはFlaA IgGの存在下で、各種濃度の組換えFliCで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。3回の独立した実験により、同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.01。 型特異的抗フラジェリン抗体は、同型のフラジェリンによるTLR5活性化を阻害するが、異型のフラジェリンによるTLR5活性化は阻害しない。 HEK293細胞を、図1で説明したようにして一過的にトランスフェクトした。細胞を、10μg/mlの対照、抗FliC WT、FliC R90AまたはFlaA IgGの存在下で、各種濃度の組換えFliCで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。3回の独立した実験により、同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.01。 型特異的抗フラジェリン抗体は、同型のフラジェリンによるTLR5活性化を阻害するが、異型のフラジェリンによるTLR5活性化は阻害しない。 HEK293細胞を、図1で説明したようにして一過的にトランスフェクトした。細胞を、10μg/mlの対照、抗FliC WT、FliC R90AまたはFlaA IgGの存在下で、各種濃度の組換えFlaAで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。3回の独立した実験により、同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.01。 型特異的抗フラジェリン抗体は、同型のフラジェリンによるTLR5活性化を阻害するが、異型のフラジェリンによるTLR5活性化は阻害しない。 HEK293細胞を、図1で説明したようにして一過的にトランスフェクトした。細胞を、10μg/mlの対照、抗FliC WT、FliC R90AまたはFlaA IgGの存在下で、各種濃度の組換えFlaAで刺激し、ルシフェラーゼアッセイを行った。3回の独立した実験により、同様の結果が得られた。、スチューデントt検定によりp<0.01。 型特異的抗フラジェリン抗体は、同型のフラジェリンによるTLR5活性化を阻害するが、異型のフラジェリンによるTLR5活性化は阻害しない。 抗FliC WT又はR90A IgG(20 μg)とともにrFliC(1 μg)を37℃で30分間反応させた。BALB/cマウスにこの混合物を経鼻投与した。投与後4時間で、マウスを 2LD50量のPAO1を経鼻感染させ、その後10日間にわたって、生存率をモニターした。n=マウス10匹/群。、マンテル・コックス・ログランク検定によりp<0.01。3回の独立した実験により、同様の結果が得られた。 緑膿菌などの有鞭毛病原体が宿主の抗体応答を促進して宿主の自然殺菌活性から逃れる1つの機構を示す。TLR5は抗原性補強作用を媒介して、フラジェリンの免疫原性を増強させるが、TLR5活性化ドメインに対する抗体応答は、緑膿菌などの有鞭毛病原体に対する宿主の防御的自然免疫応答を阻害する。したがって、野生型フラジェリンをワクチン接種しても、同型のフラジェリンを発現する細菌の排除には無効である。FliC R90AはTLR5に対する中和IgGの産生を最小レベルにしか誘導せず、緑膿菌フラジェリン間の抗原相同性があるため、FliC R90Aのワクチン接種は、同型のフラジェリンを発現する株に対しても、異型のフラジェリンを発現する株に対しても、防御能力を有する。
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
1.フラジェリン変異体
本発明は、野生型フラジェリンのToll様受容体5活性化領域における少なくとも1つの部位に変異が導入され、Toll様受容体5活性化能が減弱したフラジェリン変異体を提供する。本発明のフラジェリン変異体は、Toll様受容体5に対して不活性であるが、フラジェリンの抗原特性を保持しているものであるとよい。
鞭毛は細菌の運動に必須の器官であり、多くの細菌が持っている。病原菌に関しては、緑膿菌、サルモネラ菌(チフス菌)、コレラ菌、リステリアなどの鞭毛がよく研究されている。細菌の鞭毛は、フラジェリンというタンパクが重合して構成される。緑膿菌属において発現しているA型の鞭毛はフラジェリンFlaAにより構成され、B型の鞭毛はフラジェリンFliCにより構成されている。FlaAとFliCでは約60%の相同性を有し、抗原性も一部重複しており、一方のフラジェリンを免疫した際に誘導される特異的免疫応答は、他方のフラジェリンに対しても反応する。緑膿菌においてはフラジェリンFlaAとFliCのみが知られているが、他の細菌は固有のフラジェリンを発現している。
Toll様受容体は哺乳動物が保有しているToll様受容体ファミリーの一つであり、主として細胞膜上に発現しているI型膜タンパクである。細胞外領域はロイシンリッチリピートはフラジェリンとの相互作用に重要で、細胞内領域に存在するToll/IL-1Rドメインはシグナル伝達に重要な役割を果たしていると考えられている。Toll様受容体5欠損マウスはフラジェリンに対する応答が減弱することから、Toll様受容体5はフラジェリンの受容体であることが判明した。
フラジェリンは、その立体構造からD1〜3領域が存在していることが判明している。D1領域はNH2末端およびCOOH末端近傍に存在するαへリックス構造から構成され、Toll様受容体5の活性化に重要であると考えられている。変異体を用いた実験から、緑膿菌FliCにおいては71〜97アミノ酸領域がToll様受容体活性化領域の構造に重要な領域と考えられた。
Toll様受容体5にそのリガンドであるフラジェリンが作用し、活性化すると、細胞内アダプター分子MyD88、IRAK1、TRAF6を介してNF-κBを活性化することが知られている。ヒト腎由来線維芽細胞株HEK293にToll様受容体5発現プラスミドとNF-kB依存的ルシフェラーゼ発現プラスミドをトランスフェクションし、フラジェリンで刺激すると、フラジェリン濃度依存的に細胞内ルシフェラーゼ活性が増強する。この実験系を用いることでToll様受容体5活性化能を測定することができる。
野生型フラジェリンは、有鞭毛病原体由来であるとよく、好ましくは緑膿菌由来であり、緑膿菌由来のフラジェリンFlaA及びFliCがより好ましく、緑膿菌由来のフラジェリンFliCがさらにより好ましい。
緑膿菌(PAO1)由来の野生型フラジェリンFliCの塩基配列及びアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1及び2に示す。
一般に、タンパク質は様々な高次構造をとっているので、フラジェリンのToll様受容体5活性化領域は一義的に決定できるものではないが、例えば、配列番号2のアミノ酸配列中の71番目のアミノ酸〜97番目のアミノ酸の領域は野生型フラジェリンFliCのToll様受容体5活性化領域と考えられる。
本発明のフラジェリン変異体は、配列番号2のアミノ酸配列における90番目のアルギニンが他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有するものであるとよい。他のアミノ酸は、フラジェリンの立体構造を破壊しないものであるとよく、アラニン又はグリシンを例示することができる。
本発明のフラジェリン変異体の例としては、以下の(a)、(b)若しくは(c)のタンパク質を挙げることができる。
(a)配列番号2のアミノ酸配列において、90番目のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体タンパク質
(b)(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、90番目のアラニン以外の1若しくは数個(好ましくは、2個以上20個以下、より好ましくは2個以上10個以下)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
(c)(a)のタンパク質をコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
(c)のタンパク質について、(a)のタンパク質をコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、(a)のタンパク質をコードするDNAに相補的なDNAの全部又は一部と少なくとも80%(好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%)の同一性があるとよい。ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。核酸二本鎖又はハイブリッドの安定性は、融解温度Tm(プローブが標的DNAから解離する温度)で表される。この融解温度はストリンジェントな条件を定義するために用いられる。1%のミスマッチによりTmが1℃低下すると仮定すると、ハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度を低くしなければならない。例えば、プローブと95%以上の同一性を有する配列を求める場合には、最終洗浄温度を5℃低くしなければならない。実際、1%のミスマッチにつき、0.5〜1.5℃の間でTmが変わることになる。ストリンジェントな条件の例としては、5x SSC/5x デンハルト溶液/1.0% SDS中68℃でハイブリダイズさせ、0.2x SSC/0.1%SDS中室温で洗浄することである。中程度にストリンジェントな条件の例としては、3x SSC中42℃で洗浄することである。塩濃度や温度は、プローブと標的核酸との同一性の最適なレベルを達成するために変更されうる。このような条件に関するさらなる指針として、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y.; and Ausubel et al. (eds.), 1995, Current Protocols in Molecular Biology, (John Wiley & Sons. N.Y.) at Unit 2.10を参照されたい。
(a)のタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。(a)のタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号3の塩基配列を有するDNAを例示することができる。
本発明のフラジェリン変異体は、公知の方法によって製造することができる。例えば、後述の2に記載のようにしてフラジェリン変異体をコードするDNAを得、得られたDNAを適当な発現ベクターに組み込んだ後、適当な宿主に導入し、組換え蛋白質として生産させることにより、フラジェリン変異体を製造することができる(例えば、西郷薫、佐野弓子共訳、CURRENT PROTOCOLSコンパクト版、分子生物学実験プロトコール、I、II、III、丸善株式会社:原著、Ausubel,F.M.等, Short Protocols in Molecular Biology, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。
あるいはまた、本発明のフラジェリン変異体は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
2.フラジェリン変異体をコードする単離されたDNA
本発明のフラジェリン変異体をコードする単離されたDNAは、本発明のフラジェリン変異体をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。本発明のフラジェリン変異体をコードするDNAとしては、配列番号3の塩基配列を有するDNA、配列番号4のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸配列において、90番目のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列)を有するフラジェリン変異体をコードするDNA(例えば、配列番号3の塩基配列を有するDNA)に相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質をコードするDNAなどを例示することができる。
配列番号4のアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体をコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、配列番号4のアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体をコードするDNAに相補的なDNAの全部又は一部と少なくとも80%(好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%)の同一性があるとよい。ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。核酸二本鎖又はハイブリッドの安定性は、融解温度Tm(プローブが標的DNAから解離する温度)で表される。この融解温度はストリンジェントな条件を定義するために用いられる。1%のミスマッチによりTmが1℃低下すると仮定すると、ハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度を低くしなければならない。例えば、プローブと95%以上の同一性を有する配列を求める場合には、最終洗浄温度を5℃低くしなければならない。実際、1%のミスマッチにつき、0.5〜1.5℃の間でTmが変わることになる。ストリンジェントな条件の例としては、5x SSC/5x デンハルト溶液/1.0% SDS中68℃でハイブリダイズさせ、0.2x SSC/0.1%SDS中室温で洗浄することである。中程度にストリンジェントな条件の例としては、3x SSC中42℃で洗浄することである。塩濃度や温度は、プローブと標的核酸との同一性の最適なレベルを達成するために変更されうる。このような条件に関するさらなる指針として、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y.; and Ausubel et al. (eds.), 1995, Current Protocols in Molecular Biology, (John Wiley & Sons. N.Y.) at Unit 2.10を参照されたい。
配列番号4のアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体をコードするDNAとしては、配列番号3の塩基配列を有するDNAを例示することができる。
本発明のフラジェリン変異体をコードする単離されたDNAは、例えば、以下のようにして製造することができる。
緑膿菌からゲノムDNAを抽出し、フラジェリンのコード領域(487残基)をPCRによって増幅する。得られたPCR産物が野生型フラジェリンをコードするDNAである。野生型フラジェリンFliCのアミノ酸配列及びそれをコードするDNAの塩基配列の一例をそれぞれ配列番号2および1に示す。
フラジェリン変異体をコードするDNAは、フラジェリンのコード領域(487残基)の所望の部位を点突然変異誘発法により変異させることにより作製することができる。変異させたフラジェリンのコード領域(487残基)をPCRによって増幅する。得られたPCR産物がフラジェリン変異体をコードするDNAである。
配列番号2のアミノ酸配列において、90番目のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列からなるフラジェリン変異体をコードするDNAの塩基配列の一例を配列番号3に示す。
配列番号5及び6は、それぞれ、緑膿菌(PAK)由来の野生型フラジェリンFlaAの塩基配列及びアミノ酸配列を示す。野生型フラジェリンFliCとFlaAのアミノ酸配列の相同性は約60%である。配列番号2のアミノ酸配列の90番目のアルギニンは、配列番号6のアミノ酸配列の90番目のアルギニンに相当すると考えられる。従って、配列番号6のアミノ酸配列の90番目のアルギニンが他のアミノ酸(例えば、アラニン、グリシンなど)に置換されているアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体も本発明に含まれる。
3.組換えベクター
本発明のフラジェリン変異体をコードするDNAを含有する組換えベクターは、公知の方法(例えば、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法)により、本発明のフラジェリン変異体をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入することにより得られる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13, pGACAG)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,アデノウイルス、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫病原ウイルスなどを用いることができる。
発現ベクターには、プロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジンなどを付加してもよい。
また、発現ベクターは、融合タンパク質発現ベクターであってもよい。種々の融合タンパク質発現ベクターが市販されており、pGEXシリーズ(アマシャムファルマシアバイオテク社)、pET CBD Fusion System 34b-38b(Novagen社)、pET Dsb Fusion Systems 39b and 40b(Novagen社)、pET GST Fusion System 41 and 42(Novagen社)などを例示することができる。
組換えベクターを遺伝子ワクチン(プラスミドワクチン・ウイルスベクターワクチン)として使用する場合には、すでに遺伝子ワクチン用に開発したpGACAGプラスミドベクターに標的遺伝子を導入しプラスミドワクチンを作製するとよい。
4.形質転換体
本発明のフラジェリン変異体をコードするDNAを含有する組換えベクターを宿主に導入することにより、形質転換体を得ることができる。
宿主としては、細菌細胞(例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、枯草菌など)、真菌細胞(例えば、酵母、アスペルギルスなど)、昆虫細胞(例えば、S2細胞、Sf細胞など)、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞など)、植物細胞などを例示することができる。
組換えベクターを宿主に導入するには、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法(例えば、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、トランスフェクション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、エレクロトポレーション法、形質導入法、スクレープローディング法、ショットガン法など)または感染により行うことができる。
形質転換体を培地で培養し、培養物からフラジェリン変異体を採取することができる。フラジェリン変異体が培地に分泌される場合には、培地を回収し、その培地からフラジェリン変異体を分離し、精製すればよい。フラジェリン変異体が形質転換された細胞内に産生される場合には、その細胞を溶解し、その溶解物からフラジェリン変異体を分離し、精製すればよい。
フラジェリン変異体が別のタンパク質(タグとして機能する)との融合タンパク質の形態で発現される場合には、融合タンパク質を分離及び精製した後に、FactorXaや酵素(エンテロキナーゼ)処理をすることにより、別のタンパク質を切断し、目的とするフラジェリン変異体を得ることができる。
フラジェリン変異体の分離及び精製は、公知の方法により行うことができる。公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
5.ワクチン
本発明は、フラジェリン変異体、前記フラジェリン変異体をコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターを含むワクチンも提供する。本発明のワクチンは、有鞭毛病原体に対するワクチン、特に緑膿菌に対して有効である。例えば、緑膿菌が特に問題となる、のう胞性繊維症感染予防、易感染性患者への感染予防のために用いるとよい。
フラジェリン変異体、前記フラジェリン変異体をコードするDNA及び前記DNAを含有するベクターは前述の通りである。
フラジェリン変異体、前記フラジェリン変異体をコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターは、例えば、PBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルターなどで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与されるとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、不活化剤、保存剤、アジュバント、乳化剤など)などを添加してもよい。フラジェリン変異体は、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内などに投与することができ、また、経鼻、経口投与してもよい。
フラジェリン変異体、前記フラジェリン変異体をコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターの投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成人一人当たり0.01〜1mg/kg体重、好ましくは、0.01〜0.1mg/kg体重のフラジェリン変異体を、少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。フラジェリン変異体をコードするDNA又は前記DNAを含有するベクターを投与する場合には、例えば、通常、成人一人当たり1〜100mg、好ましくは、1〜10mgの投与量で少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。ベクターがウイルスの場合には、成人一人当たり10〜1012ウイルス粒子、好ましくは1011〜1012ウイルス粒子の投与量で少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
プラスミドワクチンはエンドトキシン除去した後投与するとよい。
筋肉内投与後エレクトロポレーション法で細胞内に導入する方法やリポソームなどトランスフェクション増強剤との複合体を作製後投与する方法によりワクチン効果を高める方法も併用するとよい。
6.抗体
本発明は、本発明のフラジェリン変異体に対して誘導された抗体も提供する。本発明の抗体は多種多様の緑膿菌に対して効果的に反応することができる。
本発明の抗体は、慣用のプロトコ-ルを用いて、抗原若しくは抗原エピト-プ又はそれらをコードするDNAを動物に投与することにより得られる。
本発明の抗体は、ポリクロ-ナル抗体、モノクロ-ナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体のいずれであってもよい。
ポリクロ-ナル抗体を作製するには、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原またはこれを発現するプラスミドDNA)を動物に投与(免疫)し、該免疫動物からタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約2〜10回程度行なわれる。ポリクロ-ナル抗体は、免疫動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。ポリクロ-ナル抗体の分離精製は、免疫グロブリンの分離精製法(例えば、塩析法、アルコ-ル沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法)に従って行なうことができる。ポリクローナル抗体としては、血清から精製したIgG画分が好ましい。
モノクロ-ナル抗体は、Nature (1975) 256: 495、Science (1980) 208: 692-に記載されている、G. Koehler及びC. Milsteinのハイブリド-マ法により作製することができる。すなわち、動物を免疫した後、免疫動物の脾臓から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞と融合させることによりモノクロ-ナル抗体産生細胞を調製する。多様な緑膿菌株由来のフラジェリンに反応し、これら緑膿菌株に対し広いスペクトラムで感染防御的に作用するモノクローナル抗体を産生する細胞系を単離するとよい。この細胞系を培養し、培養物から所望のモノクロ-ナル抗体を取得することができる。モノクロ-ナル抗体の精製は、上記の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
一本鎖抗体を作製する技法は、米国特許第4,946,778号に記載されている。
ヒト化抗体を作製する技法は、Biotechnology 10, 1121-, 1992; Biotechnology 10, 169-, 1992に記載されている。
本発明の抗体は、鞭毛を有する細菌、特に、緑膿菌に対する感染症の治療に利用することができる。この医薬の利点は、宿主の免疫系が活性化され、十分に高い防御レベルに達するまで待つ必要がなく、即座に効果が期待できることである。特に、感染が成立している場合や疾患が成立している場合に、抗体を投与すると、病原体や病原体が生産する毒素から患者を即座に回復させることができる。例えば、本発明の抗体をPBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルタ-などで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与するとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、等張化剤など)などを添加してもよい。投与経路としては、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内投与などが可能であり、また、経鼻、経口投与してもよい。
本発明の抗体の投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成人一人当たり1,000〜10,000 mg/kg体重、好ましくは、 2,000〜5,000 mg/kg体重の抗体を、少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕新規フラジェリン変異体を標的とするDNAワクチンは、 Toll様受容体5(TLR5)を介した自然免疫応答を抑制する抗体を誘導することなく緑膿菌に対する感染防御能を賦与する。
要約
フラジェリンは、多くの病原体の鞭毛成分であり、TLR5を介して特徴的な宿主免疫応答を活性化する。種々の株の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(P. aeruginosa))が発現する2つの主要な型のフラジェリン(FliC及びFlaA)を標的とするDNAワクチンを作製した。予想とは異なり、各DNAワクチンは、ワクチンに組み込まれたものと同型のフラジェリンでなく異型のフラジェリンを発現する緑膿菌に対してより強い感染防御能を誘導した。この現象は、同型のフラジェリンに対して産生された抗体がTLR5を介した自然免疫活性化を抑制することにより、菌に対する感染防御能を減少させることと関連があるようであった。この制約を逃れ、広い交差反応性のDNAワクチンを作製するために、部位特異的フラジェリン変異体を作製した。そのような変異体の一つであるFliC R90Aは、TLR5活性化について1/100倍未満の能力しか示さなかったが、フラジェリン抗原としてのエピトープは保存されていた。FliC R90Aワクチンを接種すると、FliC発現緑膿菌とFlaA発現緑膿菌の両者に対して効果的な感染防御能を誘導した。したがって、これらの結果から、フラジェリンのTLR5活性化ドメインに対する中和抗体は、有鞭毛病原体に対するワクチン構築において重要な要因となる可能性があることが示唆された。また、これらの知見から、有鞭毛細菌が、宿主の自然殺菌活性から逃れるために、宿主の自己成分に対する抗体応答を亢進させるように進化してきた可能性が示唆された。
緒言
鞭毛は、緑膿菌を含む多様な細菌に運動能を賦与する保存された小器官である(1)。鞭毛活性が減少すると運動能力が制限され、ひいては、生物体が宿主に侵入し、コロニー形成する能力が制限される(2)。細菌に対する宿主の免疫応答という観点からは、鞭毛は免疫原性が高く、無鞭毛細菌はある条件においては生体から排除するのが難しい(2)。抗鞭毛抗体が、緑膿菌感染マウスの生存率を改善することが報告されている(3)。さらに、鞭毛の構成タンパク質であるフラジェリンは、Toll様受容体(TLR)5と相互作用することにより自然免疫を活性化する(4)。上皮細胞、マクロファージ、又は樹状細胞においてTLR5が活性化すると、ミエロイド分化因子88アダプター分子、IL-1R結合キナーゼ、TNFR結合因子6、及びIκBキナーゼを介するシグナルカスケードを活性化して、TNF-α、IL-6、IL-10、IL-12、及びIFN-γを含むサイトカインが産生され、ビブリオバルニフィカスのような病原体による感染に対してワクチン効果が増強されることが報告されている(5-12)。このような報告から、フラジェリンワクチンは、宿主の自然免疫と獲得免疫の両方を刺激することによって、強力な感染防御的免疫応答を誘導する可能性が示唆される。
フラジェリンワクチンの効果を検討するために、異なる血清型の緑膿菌(PAK及びPA01)(13)由来の‘A’(FlaA)及び‘B’(FliC)型フラジェリンを発現する一連のDNAワクチンを作製し、マウス緑膿菌急性肺炎モデルにおいて感染防御能力を試験した。その結果、各フラジェリンDNAワクチンは、同型のフラジェリンを発現する緑膿菌に対する防御的免疫応答を誘導することができなかったが、異型を発現する緑膿菌感染に対しては、強力に防御効果を示した。各フラジェリンワクチンにより、異型のフラジェリンと交差反応する抗体が産生されただけでなく、型特異的にTLR5活性化ドメインを中和するIgG分画が産生された。新規フラジェリン変異体の一つであるFliC R90Aは、TLR5を活性化する能力は野生型より減弱しているが、抗原エピトープは保存されており、異なるフラジェリンを発現する複数の緑膿菌株による感染を防御する十分な免疫応答を賦与することが示された。
結果および考察
各種フラジェリンFliC変異体のTLR5活性化能の検討
TLR5活性化がフラジェリンの免疫原性およびワクチン効果に与える影響を検討するために、TLR5活性化が減弱した変異体を設計した。先の研究は、ネズミチフス菌(Salmonella typhimarinum)のFliC又は緑膿菌のFlaAによるTLR5活性化が、数個のα-ヘリックスを形成しているNH2末端およびCOOH末端領域から構成されるドメインにより誘導されることを示した(14, 15)。この情報に基づき、各α-ヘリックス領域において1個のアミノ酸をアラニンで置換した5種類の緑膿菌FliC変異体を作製した(図1A)。各組み換えタンパク質を内毒素が存在しない条件下で精製した後、マウスもしくはヒトTLR5発現プラスミド+NF-κB依存性ルシフェラーゼレポータープラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞を用いて、組換えタンパク質のTLR5活性化能について検討した。この系において、LPS、ペプチドグリカンまたは組換えGST(FliC組換え体と同様にして調製したもの)のいずれで処理した場合でも、ルシフェラーゼ活性は増大しなかった(データは示さず)。図1BおよびCに示すように、L88AおよびR90A変異体によるTLR5を介したNF-κB活性化は、野生型FliC(FliC WT)と比較して1/100以下に減弱していた(p<0.01)。次に、これらの鞭毛タンパク質の生物学的活性を調べた。組み換えFliC WT、FliC Q97A、FliC V404A、FliC F425、又はFlaA WTを経鼻投与すると、肺におけるTNF-αの産生が誘導された(図1D)。比較したところ、FliC L88A又はFliC R90Aで処理したマウス由来の気管支肺胞洗浄液におけるTNF-αのレベルは有意に減弱していた(p<0.05、図1D)。これらの変異体に抗原エピトープが保存されているか否かを調べるために、FliCに対して産生されたIgG抗体が各タンパク質に結合する能力をELISAで検討した。抗フラジェリン抗体はFliC WTとR90Aには同等に結合したが、L88Aとは結合しなかった。抗FliC血清は組み換えFlaA(A型フラジェリン)と低い親和性で交差反応した(図1E)。これらの知見は、FliC R90Aはフラジェリンの抗原エピトープを保存していたが、FliC L88Aは保存されていなかったことを示唆している。結果としてわれわれは、フラジェリンとしての抗原性を有するが、野生型と比べTLR5活性化能力が有意に減弱した変異体FliC R90Aを作製することに成功した。
FliC WT、R90A又はFlaAを発現するDNAワクチンの免疫原性
FliC WT、FliC R90AまたはFlaAを発現するDNAワクチンでマウスを免疫した。これらの動物の血清と緑膿菌のPAO1及びPAK株(それぞれ、FliC及びFlaAを発現する)由来の鞭毛タンパク質との反応性を検討した。ワクチン接種をしなかったマウスの血清はどちらのタンパク質とも反応しなかった(データは示さず)。免疫したマウスのすべての血清は両方の型の鞭毛と反応した。このことは、各ワクチンが両方の型のフラジェリンと交差反応できる抗体を誘導したことを示唆している(図2A)。各血清中の抗体価をELISAで定量した(図2B-E)。追加免疫した後、空ベクターを接種したものを除いてすべてのワクチン接種群において、有意な抗PAO1(FliC)及び抗PAK鞭毛(FlaA)IgGの産生が認められた(図2C及びE)。FliC R90A DNAワクチンにより誘導される抗体価は、FliC WTワクチンによるものと比較して低かった(p<0.05、図2C及びE)。この結果は、FliC R90Aに導入された変異がその免疫原性に影響を及ぼしたのか、TLR5を介した自然免疫活性化がFliC WTワクチンの免疫原性に寄与したことを示唆している。
フラジェリンを標的とするDNAワクチンの感染防御活性
各DNAワクチンの緑膿菌感染に対する防御能力を評価した(図3A及びB)。予想とは異なり、FlaAを接種したマウスにおいては、PAK(FlaAを発現する)よりもPAO1(FliCを発現する)に対して強力な防御能が誘導されたが、FliC DNAワクチンを接種したマウスは、PAO1よりもPAKに対してより強力な防御能が誘導された。これらの知見は、各フラジェリンワクチンが、異型のフラジェリンを発現する菌に対してより強い防御能を誘導したことを示している。注目すべきことは、FliC R90A DNAワクチンが、両株に対して同等に強い防御能を誘導したことである(図3A及びB)。
さらに、致死量以下の緑膿菌を経鼻感染させた後の生菌数と肺への好中球遊走活性を調べることにより、細菌感染に対する各DNAワクチンの効果を評価した。感染防御実験で得られたデータと一致して、FlaAまたはFliC R90AをコードするDNAワクチンで免疫したマウスはPAO1を効率的に排除したが、FliC WTまたはR90Aワクチンで免疫したマウスはPAKを効率的に排除した(図3CおよびD)。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性をモニターすることによって、好中球遊走活性を評価したところ、PAO1でチャレンジした後、FliC R90A及びFlaAの両ワクチンは、FliC WTよりも強いMPO活性を誘発した(図3E)。これらの知見から、フラジェリンをベースとするワクチンにおいて、TLR5活性化ドメインに対する中和抗体を誘導することにより、同型のフラジェリンを発現する菌に対する感染防御能が阻害されるが、異型を発現する菌に対する防御能は阻害されないという興味深い現象があきらかとなった。また、これらのデータは、FliC R90A DNAワクチンが多種多様な緑膿菌株に対する防御能を賦与でき得る可能性を示している。
フラジェリン抗原で誘導された抗フラジェリン抗体はフラジェリンのTLR5活性化ドメインを中和する
フラジェリンワクチンで誘導されるIgG分画に、フラジェリンによるTLR5活性化を中和するIgGが存在するか否か検討した。組換えフラジェリンは、対照IgGの存在下で、マウスTLR5およびヒトTLR5の両者を投与量依存的に刺激した(図4A〜D)。FliC WT、FliC R90AまたはFlaAにより生じたIgGは、低濃度のrFliCによりマウスTLR5活性化を抑制したが(100 ng/ml、p<0.001)、抗FliC WTは、より高濃度のrFliCによりその活性化を有意に抑制した(1000 ng/ml、p<0.001)が、FliC R90AまたはFlaAのIgGは抑制しなかった(図4A)。ヒトTLR5活性化を調べたところ、同様の結果が見られた(図4B)。抗FlaA IgGは、rFlaAによりマウスTLR5活性化を特異的に抑制した(p<0.01)。抗FliC WT IgGおよび抗FlaA IgGは共に、低濃度のrFlaAによりヒトTLR5活性化を抑制したが(100 ng/ml、p<0.01)、抗FlaA IgGは、より高濃度のrFlaAによりヒトTLR5活性化を特異的に抑制した(1000 ng/ml、p<0.01)(図4C及びD)。感染防御実験の結果と合わせて考察すると、これらの結果は、TLR5活性化ドメインと相互作用するIgG分画は、緑膿菌による宿主自然免疫活性化を阻害し、それによって感染に対する感受性が増加することを示唆している。FliC DNAワクチンで免疫したマウスの血清IgGは弱いものの、有意にマウスTLR5を刺激することも認められた。これは、以前の研究(16)で報告されたように、FliCとイディオタイプの抗FliC抗体と間でのエピトープの模倣を反映しているのかもしれない。
抗フラジェリン抗体は緑膿菌感染に対する宿主自然免疫活性化を阻害する
緑膿菌に対する宿主防御機構における抗FliC抗体反応の寄与を評価するために、抗FliC WT又はFliC R90A IgGの存在下で、rFliCを経鼻接種した後、PAO1株を感染させた(図4E)。1 μgのrFliCを経鼻投与すると、4時間後に2 LD50量の菌を経鼻投与しても感染防御することを認めた(データは示さず)。rFliCを抗FliC WT IgGとともに反応させた場合には、この感染防御応答は抑制された。しかしながら、抗FliC R90A IgGは、rFliCによる感染防御効果を抑制する作用は認められなかった(p<0.01、図4E)。この観察結果は、FliC R90AワクチンはフラジェリンによるTLR5活性化を抑制する抗体分画を誘導せず、菌の感染の際に自然免疫応答が効率よく誘導され、菌の排除が効果的に行われることを示唆している。
これらを総合すると、フラジェリンはTLR5を介した自然免疫活性化を経て自身の免疫原性を増強させる(5, 12)が、誘導されるTLR5活性化ドメインに対する抗体は、緑膿菌などの有鞭毛病原体に対する宿主の防御的自然免疫応答を妨害する。実際に、野生型フラジェリンをワクチン接種しても、同型のフラジェリンを発現する細菌の排除には無効である。FliC R90AはTLR5活性化を抑制するIgGをほとんど誘導せず、各フラジェリン間の抗原相同性のために、同型のフラジェリンを発現する株に対しても、異型のフラジェリンを発現する株に対しても、防御的免疫応答を効率よく誘導することが示された。この発見は、緑膿菌以外の有鞭毛病原体に対するワクチン開発に重要な影響を及ぼし、また、細菌が宿主の抗体反応を促進して宿主の自然殺菌活性から逃れる1つの機構を示すものともなり得ると考えられる(図5)。
材料および方法
ワクチン接種用の哺乳動物発現プラスミドの構築
PAO1のfliC遺伝子およびPAKのflaA遺伝子は、PCR増幅させ、pFLAG CMV5b(Sigma, St. Louis, MO)またはpGACAG(17)に連結した。いくつかの場合、部位特異的突然変異誘発を行って、標的アミノ酸をアラニンで置換した(L88A、R90A、Q97A、V404AおよびF425A)。挿入したDNA断片の配列は、Genetic Analyzer 310(PE Applied Biosystems, Foster City, CA)で確認した。
組換えタンパク質の精製
組換えタンパク質は、大腸菌DH5α内で発現させ、記載のようにして精製した(17)。Detoxi-Gel(PIERCE, Rockford, IL)を用いて、混入した内毒素を除去した。最終的に、混入した内毒素の量は0.003 ng/mg(タンパク質)未満であった。
免疫スケジュール
8週齢の雌性BALB/cマウスを、特定の病原体が存在しない条件下で、動物舎に収容した。マウスは、50μgのpGACAG-FliC WT、pGACAG-FliC R90AまたはpGACAG-FlaAで、筋肉内エレクトロポレーション法によりCUY21EDIT(NepaGene, Tokyo, Japan)を用いて免疫した(18)。この初回免疫の3週間後に、追加免疫した。動物実験は、動物実験委員会(the institutional animal care and welfare committee)により承認されたものであった。
イムノブロッティング分析
マウス血清のIgGは、プロテインGセファロースカラム(HiTrap Protein G HF, GE Healthcare Bio-Science AB)を用いて精製した。IgGの特異性は、PAO1およびPAKから調製した鞭毛のイムノブロットにより、記載されているようにして分析した(19)。
ELISA
血清抗体力価は、先に記載されているようにしてELISAにより測定した(20)。気管支肺胞液中のTNF-αレベルは、ELISAにより、製造元のプロトコール(eBioscience, San Diego, CA)に従って測定した。
ルシフェラーゼアッセイ
ルシフェラーゼアッセイは記載のようにして実施した(21)。簡単に述べると、HEK293細胞(4×104個)を、40 ngのマウスまたはヒトTLR5+5ngのpNF-κB-Luc(Stratagene, La Jolla, CA)およびpTK-RL(Promega, Madison, WI)で一過的にトランスフェクトした。トランスフェクトの42時間後、対照又はワクチン接種したマウスから精製したIgG(10 μg/ml)の存在下又は非存在下で、細胞を各種濃度の各組換えフラジェリンで6時間にわたり刺激した。ルシフェラーゼアッセイは、Dual-Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて行った。ホタル・ルシフェラーゼ活性をウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ活性に正規化し、相対的ルシフェラーゼ活性として表した。
感染防御試験
マウスを麻酔し、2LD50量のPAO1またはPAKを経鼻投与した。いくつかの場合、免疫したマウスの血清から精製した抗FliC WT又はR90A IgG(20 μg)とともにrFliC(1 μg)を37℃で30分間反応させ、この混合物を経鼻感染の4時間前にマウスに接種した。その後の10日間にわたって、チャレンジしたマウスの死亡率をモニターした。
肺における緑膿菌の定量およびMPO活性
最終免疫の2週間後、マウスを麻酔し、5×105 CFUのPAO1またはPAK(30μlのPBS中)を経鼻投与した。感染の24時間後、先に記載されているようにして、肺内の生細菌数またはMPO活性を測定した(22)。
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18. Takeshita, F., T. Tanaka, T. Matsuda, M. Tozuka, K. Kobiyama, S. Saha, K. Matsui, K.J. Ishii, C. Coban, S. Akira, N. Ishii, K. Suzuki, D.M. Klinman, K. Okuda, and S. Sasaki. 2006. Toll-like receptor adaptor molecules enhance DNA-raised adaptive immune responses against influenza and tumors through activation of innate immunity. J. Virol. 80:6218-6224.
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本発明は、ワクチン、特に、有鞭毛病原体に対するワクチンの開発に利用できる。本発明のワクチンは、院内感染の原因菌である緑膿菌に有効である。
また、本発明のフラジェリン変異体に対して誘導された抗体は、鞭毛を有する細菌、特に、緑膿菌に対する感染症の治療に利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
<配列番号1>
配列番号1は、緑膿菌(PA01)由来の野生型フラジェリンFliCの塩基配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、緑膿菌(PA01)由来の野生型フラジェリンFliCのアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、変異型フラジェリンFliC R90Aの塩基配列を示す。
<配列番号4>
配列番号4は、変異型フラジェリンFliC R90Aのアミノ酸配列を示す。
<配列番号5>
配列番号5は、緑膿菌(PAK)由来の野生型フラジェリンFlaAの塩基配列を示す。
<配列番号6>
配列番号6は、緑膿菌(PAK)由来の野生型フラジェリンFlaAのアミノ酸配列を示す。

Claims (19)

  1. 野生型フラジェリンのToll様受容体5活性化領域における少なくとも1つの部位に変異が導入され、Toll様受容体5活性化能が減弱したフラジェリン変異体。
  2. 野生型フラジェリンが有鞭毛病原体由来である請求項1記載のフラジェリン変異体。
  3. 有鞭毛病原体が緑膿菌である請求項2記載のフラジェリン変異体。
  4. 野生型フラジェリンがフラジェリンFlaA又はFliCである請求項1〜3のいずれかに記載のフラジェリン変異体。
  5. 野生型フラジェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCであり、Toll様受容体5活性化領域が配列番号2のアミノ酸配列中の71番目のアミノ酸〜97番目のアミノ酸の領域を含む請求項4記載のフラジェリン変異体。
  6. 配列番号2のアミノ酸配列における90番目のアルギニンが他のアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を有する請求項5記載のフラジェリン変異体。
  7. 他のアミノ酸がアラニン又はグリシンである請求項6記載のフラジェリン変異体。
  8. 以下の(a)、(b)若しくは(c)のタンパク質である請求項1記載のフラジェリン変異体。
    (a)配列番号2のアミノ酸配列において、90番目のアルギニンがアラニンに置換されているアミノ酸配列を有するフラジェリン変異体タンパク質
    (b)(a)のタンパク質のアミノ酸配列において、90番目のアラニン以外の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
    (c)(a)のタンパク質をコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされ、かつToll様受容体5活性化能が配列番号2のアミノ酸配列を有する野生型フラジェリンFliCよりも減弱したフラジェリン変異体タンパク質
  9. (a)のタンパク質をコードするDNAが配列番号3の塩基配列を有する請求項8記載のフラジェリン変異体。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のフラジェリン変異体をコードするDNA。
  11. 請求項10記載のDNAを含有するベクター。
  12. 請求項11記載のベクターを含む形質転換体。
  13. 請求項12記載の形質転換体を培養することを含む、フラジェリン変異体の製造方法。
  14. 請求項1〜9のいずれかに記載のフラジェリン変異体、請求項10記載のDNA又は請求項11記載のベクターを含むワクチン。
  15. 有鞭毛病原体に対するワクチンである請求項14記載のワクチン。
  16. 有鞭毛病原体が緑膿菌である請求項15記載のワクチン。
  17. のう胞性繊維症感染予防及び/又は易感染性患者への感染予防のために用いられる請求項14〜16のいずれかに記載のワクチン。
  18. 請求項1〜9のいずれかに記載のフラジェリン変異体に対して誘導された抗体。
  19. 請求項18記載の抗体を含む医薬組成物。
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