JPWO2007145333A1 - 免疫力評価方法、免疫力評価装置、免疫力評価プログラム、及び免疫力評価プログラムを記録した情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
Description
上記した方法により、リンパ球の亜集団の構成やそれらの機能が、加齢により変動あるいは低下することを、本願の発明者らは明らかにしている(非特許文献1、2参照)
(Utsuyama M, Hirokawa K, Kurashima C, Fukayama M, Inamatsu T,Suzuki K, Hashimoto W and Sato K.共著,「Differential age-change in the number of CD4+CD45RA+ and CD4+CD29+ T cell subsets in the human peripheral blood.」,Mechanism of Ageing and Development.,1992年3月15日63巻1号p.57-68 廣川勝▲いく▼,「老化と免疫」,日本老年医学会誌,2003年11月40巻6号p.543‐552
健常者の末梢血液中には、白血球が4000〜8000/μl存在する。白血球は、(I)分葉した核をもち、細胞内に顆粒をもつ顆粒細胞、(II)円形の核をもつ単核細胞からなる。単核細胞の大部分はリンパ球からなり、一部貪食機能を主とする単球(マクロファージ)もこの中に含まれる。この単核細胞のリンパ球が免疫細胞の主役になる。
T細胞はさらに2つの大きな集団、CD4T細胞とCD8T細胞に分かれる。
そして、T細胞、B細胞のそれぞれは、感染など抗原刺激を受けたことのあるメモリー細胞とまだそうした経験のないナイーブ細胞とからなる。
ここに示したのは極めて大まかな大きな集団の区別であるが、これらの集団はそれぞれ異なる機能をもっている。つまり、人間の免疫力はこうした異なる機能を持つ、いろいろな亜集団の機能の総合能力からなっている。
従って、一つの機能を代表する亜集団をみても、個体全体を代表することにはならない。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る免疫力評価装置Aは、入力部10、コンピュータ本体20、記憶部である外部記憶装置30及び表示部40等を含むデジタルコンピュータから主として構成されている。
「免疫力の評価を受ける者の関連情報」とは、免疫力の評価を受ける者の氏名、住所、性別、実年齢、既往症、及び現症等である。
「健常者」とは、一般的な健康診断において特別な異常を認められなかった者であり、「健常者の関連情報」とは、健常者の氏名、住所、性別、実年齢、体重や身長等の身体値、及び免疫細胞マーカーの値等である。
本実施形態においては、予め選択した2つ以上の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行い、点数化した結果を合算してなるスコアに基づき、免疫力を段階的に評価している。
本実施形態においては、末梢血液内のリンパ球に含まれる免疫細胞に対応する10種類の免疫細胞マーカーを採用している。
10種類の免疫細胞免疫細胞マーカーは、図3に示すように、μl当たりのT細胞数(a)、T細胞増殖係数(b)、CD4T細胞/CD8T細胞比率(c)、μl当たりのナイーブT細胞数(d)、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率(e)、μl当たりのB細胞数(f)、μl当たりのNK(ナチュラルキラー)細胞数(g)、IL‐2サイトカイン産生能(h)、IFN‐γサイトカイン産生能(i)、IL‐4サイトカイン産生能(j)からなるが、これらに限るものではなく、他の免疫細胞マーカーを採用することができる。
なお、本実施形態においてはμl当たりのT細胞数等について説明しているが、これに限らず、単位液量当たりの数であればよいことは勿論である。
2種類の免疫細胞マーカーを組み合わせる場合には、T細胞数又はT細胞増殖係数の少なくともいずれか一方を含むようにする。好ましくはT細胞数/μl(a)とT細胞増殖係数(b)とを選択するとよい。
また、3種類以上の免疫細胞マーカーを組み合わせるときにも同様であるが、T細胞数/μl(a)とT細胞増殖係数(b)とを含むようにする。このような組み合わせにすることにより、免疫力の変動が反映されやすく、また、免疫力(免疫機能)を総合的,包括的に評価しやすい。
T細胞増殖係数=OD(490nm)値×(μl当たりのT細胞数/1000)
なお、μl当たりのT細胞数を1000で除しているが、これは、図3に示す他の値と桁数を揃えるためであり、必ずしも1000で除する必要はない。
OD(Optical Density)値はT細胞の増殖能力を反映した吸光度のことであり、本実施形態においてはアイソトープを使用しないMTS法に基づいて算出している。なお、カッコ内の490(nm)は光の波長である。
CellTiter 96(登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assayは、細胞増殖や細胞毒性試験における生細胞数を測定する比色定量分析用試薬である。
試薬には新しいテトラゾリウム化合物[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-5-(3-carboxymethoxyphenyl)-2-(4-sulfophenyl)-2H-tetrazolium, inner salt (MTS)]と電子捕獲剤phenazine ethosulfate(PES)が含まれる。MTSとの共存下でPESがより安定化するため、便利な単一溶液にすることができる。
他のMTTやINTのようなテトラゾリウム化合物と比較し、CellTiter 96(R) AQueous One Solution Assayは作業行程を短縮することができる。これは、本製品が安定な単一溶液として供給される上に、MTSホルマザン産物の可溶化が不要なためである。アッセイ操作では、培養ウエルに少量のCellTiter 96 AQueous One Solution Reagentを直接添加して、1〜4時間のインキュベーションを行いう。MTS (Owen's Reagent)が生細胞によって還元され、培地に可溶な有色のホルマザン産物に変換される。96ウェルプレートリーダーを用いて490(nm)で測定すれば、容易に測定できる。490(nm)のホルマザン定量値が、培地中の生細胞数に比例する。本製品は、[3H]-thymidine取り込み法の代わりに使用できる。
以上のとおり、アイソトープを使用することなくT細胞増殖係数を算出することができるので、核医学検査を実施するための高価な設備を有しない診療所等においても本発明を容易に実施することができる。
本実施形態においては、予め選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行う点数化機能と、各点数を合算してなるスコアに基づき、免疫力を段階的に評価する免疫力評価機能とをデジタルコンピュータによって実現させている。
ここで、「デジタルコンピュータ」は、本実施形態においては免疫力評価装置Aと同義である。
免疫力評価プログラムの情報記録媒体への記録は、実行可能形式で記録しておくことに限らず、圧縮、暗号化したものを含んでいる。
(1)選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた点数化を行う機能(点数化手段60)。
本実施形態においては、前記した10種類の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行っている。
「所定の基準値」は、健常者の免疫細胞マーカーの値であり、具体的には、図3に示す値となっている。
換言すると、累積度数10(%)の値と、累積度数40(%)の値を基準として、累積度数10(%)以下であれば1(点)、累積度数10(%)の値と累積度数40(%)の値との間であれば2(点)、累積度数40(%)の値を超えていれば3(点)を割り当てている。
要するに、免疫力が高いレベルには対応する高い点数を、また、低いレベルには対応する低い点数を割り当てている。
なお、上記した累積度数10(%)、累積度数40(%)は、データベース50に蓄積される健常者の数が増加するのに従ってやや変動する。
図4に示すように、累積度数10(%)に相当する末梢血液中のT細胞数が717個であるので、採取した末梢血液中のT細胞数が717個未満であれば1(点)を付与する。
また、累積度数40(%)に相当する末梢血液中のT細胞数が1177個であるので、T細胞数が717個以上1177個未満であれば2(点)を付与し、同様にしてT細胞数が1177個以上であれば3(点)を付与する。
図5に示すように、累積度数10(%)に相当するCD4T細胞/CD8T細胞比率が1.0、累積度数40(%)に相当するCD4T細胞/CD8T細胞比率が1.3、累積度数80(%)に相当するCD4T細胞/CD8T細胞比率が2.6である。
そこで、累積度数10(%)未満の範囲を1(点)とし、累積度数10(%)以上40(%)未満の範囲を2(点)、累積度数40(%)以上80(%)未満の範囲を3(点)、累積度数80(%)以上90(%)未満の範囲を2(点)、累積度数90(%)以上を1(点)としている。
なお、累積度数80(%)以上90(%)未満のものに2(点)、90(%)以上のものに1(点)を付与するのは、CD4T細胞/CD8T細胞比率は、加齢とともに増加する傾向にあるからである。
図6は、免疫力の評価を点数に応じて段階的に区分した評価表であり、この評価表をテーブル化した評価テーブル80が外部記憶装置30に記憶されている。
具体的には、免疫力の評価を点数に応じて段階的に区分した評価表(ア)に対応する評価テーブル80を参照し、いずれの区分にスコアが含まれるかを判定することにより、免疫力を段階的に評価している。
前記した10種類の免疫細胞マーカーについての点数を合算(加算)すると、30〜10(点)の間に分布する。
そこで、本実施形態においては、免疫力の評価を点数に応じた5段階に区分している。
各評価段階(以下、「グレード」という)は、次のように区分している。
グレード5:充分に高い免疫力を有していることを示しており、30〜29(点)の範囲が対応している。
グレード4:高い免疫力を有していることを示しており、28〜26(点)の範囲が対応している。
グレード3:普通若しくは初期低下の免疫力を有していることを示しており、22〜25(点)の範囲が対応している。
グレード2:軽度低下の免疫力を有していることを示しており、21〜17(点)の範囲が対応している。
グレード1:高度低下の免疫力を有していることを示しており、16〜10(点)の範囲が対応している。
グレードが低くなるのに従って点の範囲を広くしているのは、健常者がグレード2.1に低下することは稀である一方、免疫力の変動が激しい癌患者等の疾患を有する者が含まれることになるからである。
健常者の多くはグレード5〜3に分布する。一方、疾患を有する患者は多くの場合グレード4〜2に分布し、グレード1はかなり危険な状態と判断評価する。
図7から明らかなように、健常者ではグレード3以上であるが、癌患者ではグレード3以下が多く、また、グレード2にピークがある。即ち、疾病によりグレードの低下が明瞭であり、グレード2以下の場合には感染に対しての注意が必要なことが分かる。
(3)2種類以上の免疫細胞マーカーを選択する機能(マーカー選択手段63)。
具体的には、表示部40に前記した10種類の免疫細胞マーカーを選択可能に表示しておき、入力部10を操作することにより表示されている任意の免疫細胞マーカーを選択し、例えばエンターキーを操作することにより決定する。
これら免疫細胞マーカーの選択は、疾病に対応した組み合わせにしてもよく、また、実年齢(加齢)に応じた組み合わせにしてもよい。
このようなマーカー選択手段62を設けた場合には、点数化手段は、選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行えばよい。
(4)免疫力の評価段階の段階数を増減設定する機能(評価段階設定手段64)。
前述した実施形態においては、免疫力の評価段階の段階数を5段階にした例について説明したが、次のように段階数を増減してもよい。
<癌患者等の疾病を有している場合>
グレード2とグレード1を、細分化することにより免疫力の評価段階の段階数を増加させる。例えばグレード2とグレード1をそれぞれ3段階に分化して9段階にする等である。
段階数の増減は、前述した5段階にしたグレードの評価テーブルと、9段階にした評価テーブルとを予め作成しておき、例えば入力部10から血液採取者の既往症が入力されたときに、それらの評価テーブルを自動的に切り替えるようにすることができる。これにより、疾病に対応した細やかな対応をすることができる。
例えば実年齢が50歳未満であれば、例えば3種類の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行う一方、50歳以上であれば、10種類の免疫細胞マーカー毎に、所定の基準値に基づいて各免疫細胞マーカーの値に応じた複数段階の点数化を行う。
3種類の免疫細胞マーカーを組とした評価テーブルと、10種類の免疫細胞マーカーを組とした評価テーブルとを作成しておき、例えば入力部10から供血者の実年齢が入力部10から入力されたときに、それらの参照テーブルを入力された実年齢が50歳以上であるか否かを判定することにより切り替えることができる。
例えば実年齢が50歳未満であれば、前述した3段階の点数化を行い、また、50歳以上であれば5段階の点数化を行う等である。
このような点数化の段階設定は、例えば入力部10から実年齢が入力されたときに、入力された実年齢が50歳以上であるか否かを判定することにより、段階数を切り替えることができる。
また、癌患者等の特定の既往症が入力部10から入力されたときに、前述した3段階の点数化から5段階の点数化に切り替えるようにすることもできる。このような判定は、特定の既往症が入力されたか否かを判定することにより行うとよい。
例えば表示部40に抽出しようとする実年齢等の入力を促す画面を表示させるようにし、その表示に従って入力部10から特定の実年齢を入力する。
これにより、健常者の免疫細胞マーカーを実年齢毎に抽出した値を、所定の基準値とすることができるので、図10において説明しているように、加齢とともに低下する免疫力を考慮した評価を行うことができる。
なお、健常者の免疫細胞マーカーを、性別のみ又は実年齢と性別との組み合わせに基づいて抽出するようにしてもよい。
同図に示すように、採取した血液から単核細胞を回収し、回収した単核細胞を元に、フローサイトメトリ解析、MTS法によるT細胞増殖能解析、培養上清内サイトカインのELISA解析を行うことにより、免疫細胞マーカー若しくは免疫細胞マーカーを算出するためのデータを取得し、これらのデータを入力部10から入力する。
血液に含まれる単核細胞を回収するが、その回収工程は次のとおりである。
1.CPT単核球分離用真空採血管(BD社:8362761)に8(ml)に採血する。
2.室温において、3000(rpm)、20分間の遠心分離をする。
3.遠心分離によって得られたリンパ球層を回収する。
4.回収したリンパ球層に生理食塩水を加える。
5.室温において、1500(rpm)、10分間の遠心分離を行う。
6.上清を捨て、再度生理食塩水を加える。
7.室温において、1200(rpm)、5分間の遠心分離を行う。
8.上清を捨て、細胞培養液(RPMI‐1640)を加えて細胞浮遊液とする。
9.細胞濃度を測定する(0.2%Trypanblue液使用)。
10.細胞濃度を1×106/mlに細胞培養液にて調整する。
回収された単核細胞に基づいて、フローサイトメトリ解析を行う。
1.1×106/ml細胞浮遊液300(μl)を、0.83%NH4Cl溶液3(ml)中に添加して攪拌した後、3分間放置して赤血球を溶血させる。
2.2%FBS‐PBS溶液を加えて、1500(rpm)で5分間の遠心分離を行う。
3.上清を吸引除去する。
4.2%FBS‐PBS溶液を300(μl)加えて、細胞を再浮遊させることによって細胞浮遊液を調整する。
5.細胞浮遊液50(μl)を4本の染色用試験管(BD;352002)に分注する。
6.蛍光標識抗体溶液を試験管に添加する。
a)FITC-CD20/PE-CD3
b)FITC-CD4/PE-CD8
c)FITC-CD4/PE-CD8/ECD-CD45RA
d)FITC-CD16/PE-CD56
7.30分間、暗所にて放置する。
8.2%FBS‐PBS溶液を400(μl)加えて、フローサイトメトリ解析用細胞を調整する。
9.フローサイトメーターにて蛍光標識抗体陽性細胞率を機器専用ソフトによって算出する。
このフローサイトメトリ解析により、T細胞数、CD4T細胞/CD8T細胞比率、ナイーブT細胞数、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率、B細胞数、及びNK細胞数の6種類の免疫細胞マーカーを得ることができる。
抗CD3抗体の96穴及び24穴プレートへのコーティングを行う。
1.Orthoclone OKT3 溶液 (ORTHO BIOTECH: 672993402) 30(μl)を、生理食塩水10(ml)の割合で希釈する。
2.OKT3希釈溶液を96穴プレートには100(μl/well)、24穴プレートには400(μl/well)を入れる。
3.室温にて2時間の静置を行う。
4. OKT3希釈溶液を吸引廃棄、生理食塩水を96穴プレートには200(μl/well)、24穴プレートには1000(μl/well)を入れる。
5.生理食塩水を吸引廃棄、再度、生理食塩水を96穴プレートには200(μl/well)、24穴プレートには1000(μl/well)を入れる。
6.この操作を計5回繰返す。
7.生理食塩水を96穴プレートには200(μl/well)、24穴プレートには2000(μl/well)を入れ使用時まで冷蔵保管する。
1.準備した上記抗CD3抗体コーティングした69穴プレートに10%FBS‐RPMl100(μl/well)、1×106/ml、細胞浮遊液100(μl/well)を入れる。各サンプルにつき3穴使用する。
2.5%炭酸ガス−37℃条件の細胞培養器にて培養する。
3.培養68時間の時点で、MTS溶液を40(μl/well)添加する。
4.培養72時間の時点で、比色計(490nm)で測定する。
これにより、上記したT細胞増殖係数を算出することができるようになる。
ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)とは、酵素免疫測定法のことであり、抗原抗体反応を利用し、定量的に抗体やペプチド等を測定する方法である。上記のように、抗原(測定したい物質)に対する特異抗体を予め測定用プレートに塗布しておいたところに(固層化)、抗原(測定したい抗原が含まれる液性のサンプル、血清等。)を加え、さらに発色用酵素を標識した特異抗体を加えて抗原抗体反応を起こさせる。反応を起こさなかった余分な抗体を除いた後、酵素を基質により発色させ、その色素濃度を抗原量として検出することを内容としている。これにより、IL‐2サイトカイン産生能、INFγサイトカイン産生能、IL‐4サイトカイン産生能を測定することができる。
図9は、入力部10に入力された免疫細胞マーカーの値に基づいて、コンピュータ本体20が行う免疫力の評価処理の例を説明するフローチャートである。
ステップS1:免疫力の評価を受ける者の住所、氏名、実年齢、性別、既往症、現症、等の関連情報、上記の解析により求めた10種類の免疫細胞マーカーの値、及び健常者の関連情報等を入力部10から入力し、エンターキーを押下操作すると、ステップS2に進む。
ステップS3:入力部10から入力された免疫細胞マーカーがCD4T細胞/CD8T細胞比率であるか否かを判定し、そうであると判定されればステップS10に進み、そうでなければステップS4に進む。
ステップS4:入力部10から入力された免疫細胞マーカーが累積度数10(%)未満であればステップS5に進んで、その免疫細胞マーカーに「1点」を付与した後にステップS9に進み、また、累積度数10(%)未満でなければ、ステップS6に進む。
ステップS7:その免疫細胞マーカーに「2点」を付与した後にステップS9に進む。
ステップS8:当該免疫細胞マーカーに「3点」を付与した後にステップS9に進む。
ステップS9:各免疫細胞マーカー毎に付与された点数を合算して、ステップS17に進む。
ステップS11:その免疫細胞マーカーに「1点」を付与した後にステップS9に進む。
ステップS13:その免疫細胞マーカーに「2点」を付与した後にステップS9に進む。
ステップS15:その免疫細胞マーカーに「1点」を付与した後にステップS9に進む。
ステップS16:当該免疫細胞マーカーに「2点」を付与した後にステップS9に進む。
同図に示すように、例えばT細胞数(a)=3、T細胞増殖係数(b)=1、CD4T細胞/CD8T細胞比率(c)=2、ナイーブT細胞数(d)=3、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率(e)=2、B細胞数(f)=3、NK細胞数(g)=2、IL‐2サイトカイン産生能(h)=2、IFN‐γサイトカイン産生能(i)=3、及びIL‐4サイトカイン産生能(j)=2とすると、これらを合算したスコアは「23」となる。
ステップS17:スコアがグレード5に含まれるかを判定し、グレード5に含まれていると判定すればその旨を記憶した状態でステップS21に進み、そうでなければステップS18に進む。
ステップS18:スコアがグレード4に含まれるかを判定し、グレード4に含まれていると判定すればその旨を記憶した状態でステップS21に進み、そうでなければステップS19に進む。
ステップS19:スコアがグレード3に含まれるかを判定し、グレード3に含まれていると判定すればその旨を記憶した状態でステップS21に進み、そうでなければステップS20に進む。
図10に示す場合には、スコアが「23」であるので、グレード3であると評価される。
ステップS20:スコアがグレード2に含まれるかを判定し、グレード2に含まれていると判定すればその旨を記憶した状態でステップS21に進み、そうでなければグレード1に含まれると判定してその旨を記憶した状態でステップS21に進む。
これらの文言は、グレード1〜5にそれぞれ対応づけられて外部記憶装置30に記憶される。
なお、必要であれば、レーダーグラフ等を作成して表示部40に表示し、また、印刷を実行することによりプリントアウトする。
さらに、上記のレーダーグラフや既往症,現症,他の採血者の値等を考慮した上で、免疫力に関するコメントを個々にプリント用紙に記述することになる。
同図からも明らかなように、免疫細胞の能力は、加齢や老化ともに低下する。10種類の免疫細胞の数と機能を測定しスコア化し、総合能力をいろいろな実年齢の健常者でみると、加齢や老化と共に確実に低下することが明らかである。
また、癌患者についてみると、健常者とは違った分布をし、健常者より明らかに総合能力のスコアが低い者が多く、本願発明がヒトの健康状態を知る上で極めて有用である。
度重なる治療の結果、免疫力の回復が起こらなくなると、患者には感染の危険が及ぶことになる。しかしながら、本発明により免疫力を逐次測定評価していれば、免疫力の低下を容易に知ることができ、感染を予防することが可能となる。
前述した実施形態においては、免疫力が高いレベルから低いレベルに向けて少ない点数を付与している例について説明したが、免疫力が高いレベルから低いレベルに向けて高くなるような点数化をしても良い。要するに、免疫力の高低を判別できるような点数化を行えば良い。
免疫力の評価方法として、免疫細胞マーカーの値に応じて点数化を行い、点数化して得た各点数を合算してなるスコアにより総合的な免疫機能を評価した実施形態について説明してきたが、免疫力年齢によっても総合的な免疫機能を評価することも可能である。以下、免疫力年齢に基づいて免疫力の評価を行う場合にT細胞増殖係数を用いた実施形態について説明する。
図12はこのようにして求められた、健常人約300名のT細胞増殖係数と年齢との相関関係を表す相関図である。T細胞増殖係数は加齢変化が明瞭であり、統計的に優位な相関を有している。従って、この相関関係より回帰直線を求めると、
y=−0.0174x+2.5348
となる。ただし、yは各年齢における予測値、xは実年齢である。
計算値年齢 = (2.5348−検査値)/0.0174
(A)40才においては、予測値+1SDは、1.839+0.5=2.339で11.253歳となり、
(B)50才においては、予測値+1SDは、1.665+0.5=2.165で21.253歳となり、
(C)60才においては、予測値+1SDは、1.491+0.5=1.991で31.253歳となる。
免疫年齢は実際上の年齢の値に対応するよう、およそ17〜99歳の範囲で評価できるように設定するため、この範囲に対応できるよう、以上のようにして得られた計算値年齢と実年齢との差を20%とし表現形年齢とする。即ち、表現形年齢を、次式から求める。
表現形年齢 = 実年齢+(計算値年齢−実年齢)×0.2
ただし、入力部10は、免疫力の評価を受ける者(血液を採取された者)の関連情報、特にT細胞増殖係数を含む免疫細胞マーカーの値、健常者の特に実年齢を含む関連情報等を入力できるキーボードやマウス等からなる。
コンピュータ本体20、従って、免疫力評価装置Aは、上記の免疫力評価プログラムを実行することにより、次の機能を発揮する。
(1)入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰直線に代入してT細胞増殖係数の予測値を算出する機能(T細胞増殖係数の予測値算出手段67)。
(2)入力されたT細胞増殖係数の検査値とステップS32で求めた予測値とからT細胞増殖係数の残差を算出する機能(T細胞増殖係数の残差算出手段68)。
(3)得られた残差から、ランク判定及び免疫力年齢を算出する機能(ランク判定及び免疫年齢算出手段69)。
ステップS32:入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰直線に代入してT細胞増殖係数の予測値を算出する。
ステップS33:入力されたT細胞増殖係数の検査値とステップS32で求めた予測値とから残差を算出する。
y=−0.9782x+287.39
となり、再発現するCD3量は加齢と共に低下することが分かる。ただし、yは各年齢における予測値、xは実年齢である。
計算値年齢 = (287.39−検査値)/0.9782
表現形年齢 = 実年齢+(計算値年齢−実年齢)×0.2
ただし、入力部10は、免疫力の評価を受ける者(血液を採取された者)の関連情報、特にCD3再発現量を含む免疫細胞マーカーの値、健常者の特に実年齢を含む関連情報等を入力できるキーボードやマウス等からなる。
(1)入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰直線に代入してCD3再発現量の予測値を算出する機能(CD3再発現量の予測値算出手段70)。
(2)入力されたCD3再発現量の検査値とステップS32で求めた予測値とからCD3再発現量の残差を算出する機能(CD3再発現量の残差算出手段71)。
(3)得られた残差から、ランク判定及び免疫力年齢を算出する機能(ランク判定及び免疫年齢算出手段72)。
ステップS43:入力されたCD3再発現量の検査値とステップS32で求めた予測値とからCD3再発現量の残差を算出する。
なお、本実施形態は、CD3再発現量の検査値に基づいて求めた免疫力年齢によって総合的な免疫機能を評価するものであるが、免疫細胞マーカーの値に応じて点数化を行い、点数化して得た各点数を合算してなるスコアにより総合的な免疫機能を評価する先の実施形態の機能を本実施形態においても、さらに有するように構成しても良いことはもちろんである。
Claims (23)
- 採取した血液に含まれる免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーを用いて免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、前記採取した血液に含まれる各免疫細胞マーカーに基づく評価値を求めるステップと、
前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーに関する前記求めた評価値を合算するステップと、
該合算した結果から免疫力を評価するステップとを備えたことを特徴とする免疫力評価方法。 - 前記評価値を求めるステップが前記各免疫細胞マーカーの値に応じた点数化を所定の基準値に基づいて行う点数化ステップであり、前記合算するステップが前記点数化して得た点数を合算してスコアを求める合算ステップであることを特徴とする請求項1に記載の免疫力評価方法。
- 前記評価するステップが、免疫力の評価を点数に応じた複数の段階に区分しておき、いずれの区分に前記スコアが含まれるかを判定することにより免疫力を段階的に評価する評価ステップであることを特徴とする請求項2に記載の免疫力評価方法。
- 前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーが、T細胞数、T細胞増殖係数、CD4T細胞/CD8T細胞比率、ナイーブT細胞数、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率、IL‐2サイトカイン産生能、IFN‐γサイトカイン産生能、IL‐4サイトカイン産生能、B細胞数、及びNK細胞数のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする請求項1に記載の免疫力評価方法。
- 前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーが、T細胞数又はT細胞増殖係数の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の免疫力評価方法。
- 採取した血液から検出したT細胞増殖係数を用いて免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
T細胞増殖係数と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておくステップと、
入力された実年齢を回帰直線に代入してT細胞増殖係数の予測値を求めるステップと、
該求めた予測値と前記検出したT細胞増殖係数とから免疫力年齢の推定範囲を求めるステップとを備えたことを特徴とする免疫力評価方法。 - 採取した血液から検出したCD3再発現量を用いて免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
CD3再発現量と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておくステップと、
入力された実年齢を回帰直線に代入してCD3再発現量の予測値を求めるステップと、
該求めた予測値と前記検出したCD3再発現量とから免疫力年齢の推定範囲を求めるステップとを備えたことを特徴とする免疫力評価方法。 - 採取した血液に含まれる免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーを用いて免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、前記採取した血液に含まれる各免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める手段と、
前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーに関する前記求めた評価値を合算する手段と、
該合算した結果から免疫力を評価する手段とを備えたことを特徴とする免疫力評価装置。 - 前記評価値を求める手段が前記各免疫細胞マーカーの値に応じた点数化を所定の基準値に基づいて行う点数化手段であり、前記合算する手段が前記点数化して得た点数を合算してスコアを求める合算手段であることを特徴とする請求項8に記載の免疫力評価装置。
- 免疫力の評価を点数に応じて段階的に区分した評価テーブルを記憶した記憶部が設けられており、前記評価する手段が、該評価テーブルのいずれの区分にスコアが含まれるかを判定することにより免疫力を段階的に評価する評価手段であることを特徴とする請求項9に記載の免疫力評価装置。
- 複数の免疫細胞に対応する所定の基準値となる健常者の免疫細胞マーカーの値を、健常者の関連情報に対応させたデータベースを記憶した記憶部を有していることを特徴とする請求項8に記載の免疫力評価装置。
- 前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーが、T細胞数、T細胞増殖係数、CD4T細胞/CD8T細胞比率、ナイーブT細胞数、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率、IL‐2サイトカイン産生能、IFN‐γサイトカイン産生能、IL‐4サイトカイン産生能、B細胞数、及びNK細胞数のうちの少なくとも2つを含むことを特徴とする請求項8に記載の免疫力評価装置。
- 前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーが、T細胞数又はT細胞増殖係数の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項8に記載の免疫力評価装置。
- 採取した血液から検出したT細胞増殖係数を用いて免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
T細胞増殖係数と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておく手段と、
入力された実年齢を回帰直線に代入してT細胞増殖係数の予測値を求める手段と、
該求めた予測値と前記検出したT細胞増殖係数とから免疫力年齢の推定範囲を求める手段とを備えたことを特徴とする免疫力評価装置。 - 採取した血液から検出したCD3再発現量を用いて免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
CD3再発現量と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておく手段と、
入力された実年齢を回帰直線に代入してCD3再発現量の予測値を求める手段と、
該求めた予測値と前記検出したCD3再発現量とから免疫力年齢の推定範囲を求める手段とを備えたことを特徴とする免疫力評価装置。 - 採取した血液に含まれる免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーを用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、
選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、入力部に入力された各免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める機能と、
前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーに関する前記求めた評価値を合算する機能と、
該合算した結果から免疫力を評価する機能とを実現することを特徴とする免疫力評価プログラム。 - 前記評価値を求める機能が前記各免疫細胞マーカーの値に応じた点数化を所定の基準値に基づいて行う点数化機能であり、前記合算する機能が前記点数化して得た点数を合算してスコアを求める合算機能であることを特徴とする請求項16に記載の免疫力評価プログラム。
- 前記評価する機能が、免疫力の評価を点数に応じた複数の段階に区分した評価テーブルのいずれの区分に前記スコアが含まれるかを判定することにより免疫力を段階的に評価する評価機能であることを特徴とする請求項17に記載の免疫力評価プログラム。
- 採取した血液から検出したT細胞増殖係数を用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、
T細胞増殖係数と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておく機能と、
入力された実年齢を回帰直線に代入してT細胞増殖係数の予測値を求める機能と、
該求めた予測値と前記検出したT細胞増殖係数とから免疫力年齢の推定範囲を求める機能とを実現することを特徴とする免疫力評価プログラム。 - 採取した血液から検出したCD3再発現量を用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、
CD3再発現量と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておく機能と、
入力された実年齢を回帰直線に代入してCD3再発現量の予測値を求める機能と、
該求めた予測値と前記検出したCD3再発現量とから免疫力年齢の推定範囲を求める機能とを実現することを特徴とする免疫力評価プログラム。 - 採取した血液に含まれる免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーを用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、選択した2種類以上の免疫細胞マーカー毎に、入力部に入力された各免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める機能と、前記選択した2種類以上の免疫細胞マーカーに関する前記求めた評価値を合算する機能と、該合算した結果から免疫力を評価する機能とを実現する免疫力評価プログラムを記録していることを特徴とするコンピュータにより読み取り可能な情報記録媒体。
- 採取した血液から検出したT細胞増殖係数を用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、T細胞増殖係数と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておき、前記検出したT細胞増殖係数を該回帰直線に代入して免疫力年齢の予測値を求める機能と、該求めた予測値と前記検出したT細胞増殖係数とから免疫力年齢の推定範囲を求める機能とを実現する免疫力評価プログラムを記録していることを特徴とするコンピュータにより読み取り可能な情報記録媒体。
- 採取した血液から検出したCD3再発現量を用いて免疫力を評価する機能をコンピュータに実現するための免疫力評価プログラムであって、CD3再発現量と年齢との相関関係に基づいた回帰直線を予め求めておき、前記検出したCD3再発現量を該回帰直線に代入して免疫力年齢の予測値を求める機能と、該求めた予測値と前記検出したCD3再発現量とから免疫力年齢の推定範囲を求める機能とを実現する免疫力評価プログラムを記録していることを特徴とするコンピュータにより読み取り可能な情報記録媒体。
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