JPWO2005123904A1 - 霊長類動物胚性幹細胞からの血管内皮細胞の製造方法 - Google Patents

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Abstract

霊長類動物胚性幹細胞から血管内皮細胞への分化方法及びそれを用いる技術を提供すること。霊長類動物胚性幹細胞を、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させる、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法、該発生初期血管内皮細胞、その製造方法及びその増幅方法、該発生初期血管内皮細胞を有効成分として含有した血管損傷治療剤、該発生初期血管内皮細胞を供給する血管再生方法、該発生初期血管内皮細胞を移植する移植方法、並びに該発生初期血管内皮細胞を、治療有効量投与する治療方法。

Description

本発明は、霊長類動物胚性幹細胞から、血管内皮細胞への分化方法及びそれを用いる技術に関する。さらに詳しくは、本発明は、霊長類動物胚性幹細胞から、血管内皮細胞(例えば、発生初期血管内皮細胞等)への分化方法、該血管内皮細胞(例えば、発生初期血管内皮細胞等)の製造方法、該発生初期血管内皮細胞の増幅方法、該製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞、血管損傷治療剤、血管再生方法、該発生初期血管内皮細胞の使用、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患の治療方法、血管構造の構築方法等に関する。
近年、各種臓器の分化・再生に関する研究が進み、臨床医学の現場での再生治療も現実的な研究テーマとして視野に入ってきている。したがって、再生医療に対する期待は、日に日に高まってきている。なかでも、生体のあらゆる細胞・臓器に分化する能力を有する胚性幹細胞を用いた研究は、発生・分化機構の解明や再生医療における大きな柱の1つである。
これまで、マウス胚性幹細胞についての研究は進んでいる。また、ヒトやサルなどの霊長類動物胚性幹細胞が樹立されている。しかしながら、霊長類動物胚性幹細胞は、例えば、コロニーの形態・細胞表面抗原の発現様式・増殖分裂速度・白血病阻害因子(LIF)への依存性等の点で、マウス胚性幹細胞とは大きく異なることがわかってきている(非特許文献1)。
一方、血管再生療法においては、例えば、虚血性疾患に対して、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、肝臓成長因子(HGF)等の単独の血管新生因子を用いる血管新生療法に関する臨床試験が行われている。しかしながら、前記のように、血管新生因子を用いる血管新生療法は、例えば、冠動脈疾患に対して、血管新生因子として、bFGFを用いる方法の場合、ランダムな二重盲検対照臨床試験により、長期にわたる症状改善ではなく、短期での症状改善の傾向が示され、安定性に欠ける場合があるという欠点がある。
ペラ(Pera)ら,Journal of Cell Science,113,5−10(2000)
本発明は、霊長類動物胚性幹細胞から、血管内皮細胞若しくは発生初期血管内皮細胞への分化手段又はそれを用いる技術を提供することに関する。
本発明は、第1の側面では、長期培養を行なうこと、継代すること、インビトロで増殖させること、高い効率で生着させること、個体への高い適合性を得ること、個体において、血管内皮細胞を発生させること、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること等のいずれかを少なくとも達成する発生初期血管内皮細胞を提供すること;該発生初期血管内皮細胞を大量に供給すること;局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患の治療のための材料を提供すること;霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化過程において機能を発揮する因子を評価すること等のいずれかを少なくとも達成することができる、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法を提供することに関する。
本発明は、第2の側面では、長期培養を行なうこと、継代すること、インビトロで増殖させること、高い効率で生着させること、個体への高い適合性を得ること、個体において、血管内皮細胞を発生させること、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること等のいずれかを少なくとも可能にするという優れた性質を有する発生初期血管内皮細胞を提供すること;該発生初期血管内皮細胞を大量に供給すること;局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供すること等のいずれかを少なくとも達成することができる、発生初期血管内皮細胞の製造方法を提供することに関する。
また、本発明は、第3の側面では、発生初期血管内皮細胞を大量に供給すること、実質的に均一な品質の発生初期血管内皮細胞を得ること等のいずれかを少なくとも達成する、発生初期血管内皮細胞の増幅方法を提供することに関する。
さらに、本発明は、第4の側面では、血管損傷を効率よく治療すること、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること等のいずれかを少なくとも達成することができる、血管損傷治療剤を提供することに関する。
本発明は、第5の側面では、長期培養を行なうこと、継代すること、インビトロで増殖させること、高い効率で生着させること、個体への高い適合性を得ること、個体において、血管内皮細胞を発生させること、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること等のいずれかを少なくとも達成する、発生初期血管内皮細胞を提供することに関する。
また、本発明は、第6の側面では、血管の損傷部位を治療すること、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること、血管の再生を必要とする箇所において血管を再生すること等のいずれかを少なくとも達成する、血管再生方法を提供することに関する。
本発明は、第7の側面では、高い生着効率を得ること、個体への高い適合性を得ること、個体において、移植した発生初期血管内皮細胞から個体自体の血管との交通をもつ機能的な血管を発生させること等のいずれかを少なくとも達成する、移植方法を提供することにある。
本発明は、第8の側面では、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患、例えば、潰瘍、虚血性疾患等の治療を可能にする、血管損傷の治療方法を提供することに関する。
本発明は、第9の側面では、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療すること等を可能にする医薬の製造のための、前記製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞の使用を提供することに関する。
本発明は、第10の側面では、血管構造を構築すること、個体への高い適合性を呈する血管構造を得ること、高い効率で生着しうる血管構造を得ること等のいずれかを少なくとも達成しうる、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供すること等のいずれかを少なくとも達成することができる、血管構造の構築方法を提供することに関する。
なお、本発明のさらなる課題は、本明細書の記載から明らかである。
本発明の要旨は、
(1)霊長類動物胚性幹細胞を、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることを特徴とする、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法、
(2)(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、
を含む、前記(1)記載の分化方法、
(3)(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、
を含む、発生初期血管内皮細胞の製造方法、
(4)(III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップをさらに含む、前記(3)記載の製造方法、
(5)(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップ、
を含む、発生初期血管内皮細胞の増幅方法、
(6)前記(3)又は(4)記載の製造方法により得られる、発生初期血管内皮細胞、
(7)霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を有効成分として含有してなる、血管損傷治療剤、
(8)霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管の再生を必要とする部位に供給することを特徴とする、血管再生方法、
(9)前記(3)又は(4)記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、血管の再生を必要とする部位に供給することを特徴とする、血管再生方法、
(10)前記(3)又は(4)記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、生体内へ移植することを特徴とする、移植方法、
(11)局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患を有する哺乳動物被験体に、前記(3)又は(4)記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、治療有効量投与することを特徴とする、哺乳動物被験体における局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患の治療方法、
(12)局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患を有する哺乳動物被験体における血管の再生を必要とする部位に供給して、血管再生することにより哺乳動物被験体を治療するための医薬の製造のための、霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞の使用、
(13)霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管形成に適した環境下に培養することを特徴とする、血管構造の構築方法、
(14)(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、及び
(III’)前記血管内皮細胞マーカー陽性細胞を、血管形成に適した環境又は血管環境下に培養するステップ
を含む、前記(13)記載の構築方法、並びに
(15)ステップ(III’)に先立ち、
(III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップ、
をさらに行なう、前記(14)記載の構築方法、
に関する。
本発明の霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法によれば、長期培養、継代、インビトロでの増殖が可能であり、高い生着効率や個体への高い適合性を示し、個体において、血管内皮細胞を発生させ得、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することを可能にするという優れた性質を有する発生初期血管内皮細胞を大量に供給することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の分化方法によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の分化方法によれば、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化過程において機能を発揮する因子を評価することができるという優れた効果を奏する。
また、本発明の発生初期血管内皮細胞の製造方法によれば、前記の性質を有する発生初期血管内皮細胞を大量に供給することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の製造方法によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を安定的に、大量に提供することができるという優れた効果を奏する。
さらに、本発明の発生初期血管内皮細胞の増幅方法によれば、実質的に均一な品質の発生初期血管内皮細胞を大量に得ることができるという優れた効果を奏する。
本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、長期培養及び継代することができ、インビトロで増殖できるという優れた効果を奏する。また、本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、高い効率で生体に生着させることができるという優れた効果を奏する。本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、高い適合性で個体に用いることができ、個体において、血管内皮細胞を発生させ得、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することを可能にするという優れた効果を奏する。
また、本発明の血管損傷治療剤によれば、血管損傷を効率よく治療することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の血管損傷治療剤によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することができるという優れた効果を奏する。
本発明の血管再生方法によれば、血管の損傷部位を治療し、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することができ、血管の再生を必要とする箇所において血管を再生することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の移植方法によれば、高い生着効率、かつ個体への高い適合性で、個体において、移植した発生初期血管内皮細胞から、個体自体の血管との交通をもつ機能的な血管を発生させることができ、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療が可能になるという優れた効果を奏する。
本発明の発生初期血管内皮細胞の使用によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患を治療すること等を可能にする医薬を製造することができるという優れた効果を奏する。
本発明の血管損傷の治療方法によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患、例えば、潰瘍、虚血性疾患、閉塞性動脈硬化等の治療が可能になるという優れた効果を奏する。
本発明の血管構造の構築方法によれば、高い効率での生着性を示し、個体への高い適合性を呈する血管構造を構築することができるという優れた効果を奏する。本発明の血管構造の構築方法によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供することができるという優れた効果を奏する。
図1は、皮膚潰瘍モデルマウスにおける皮膚潰瘍部位の外観変化を示す図である。パネル(A)は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)の移植後3日目の外観変化を示し、パネル(B)は、6日目の肉眼所見を示す。各パネル中、左側の皮膚潰瘍部位は、VEカドヘリン陽性細胞(発生初期血管内皮細胞)を移植した部位であり、右側の皮膚潰瘍部位は、VEカドヘリン陽性細胞を移植せず、リン酸緩衝化生理食塩水を注入した(無処置)部位である。
図2は、皮膚潰瘍モデルマウスにおけるVEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)を移植した後の皮膚潰瘍面積を示す図である。パネル(A)は、移植3日後の皮膚潰瘍面積の比較を示し、パネル(B)は、移植6日後の皮膚潰瘍面積の比較を示す。図中、「VPC」は、VEカドヘリン陽性細胞の移植側の皮膚潰瘍面積を示し、「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を注入した(無処置)側の皮膚潰瘍面積を示す。なお、パネル(B)においては、p<0.05である。また、かかる図により示される結果は、11症例について調べた結果である。
図3は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)を移植された皮膚潰瘍モデルマウスにおける細胞移植部位の皮膚の組織切片を示す。図中、赤色は、DiI標識された移植細胞(VEカドヘリン陽性細胞)を示し、緑色は、ISOLECTIN B4(商品名)で標識(染色)されたKSNヌードマウスの血管内に存在する血管内皮細胞を示す。図中、黄色は、移植されたVEカドヘリン陽性細胞(赤色)がKSNヌードマウスの血管と交通がある(緑色)と判断される箇所である。スケールバーは、100μmである。
図4は、KSNヌードマウスの大腿動脈へのVEカドヘリン陽性細胞の移植の概要を示す図である。パネル(A)は、KSNヌードマウスの右大腿部を縦に切開し、大腿動静脈を露出させた箇所を示し、パネル(B)及び(C)は、前記パネル(A)に示される箇所において、大腿動脈を露出させる過程を示し、パネル(D)は、大腿動脈に細胞を注射する過程を示す。
図5は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)の移植による血流改善効果をレーザードップラー血流計で計測した結果を示す図である。図5中、1)は、p<0.05、2)は、p<0.01、3)は、p<0.001である。
図6は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)の移植後7日目における虚血側下腿筋での移植細胞の生着を調べた結果を示す図である。図中、赤色は、DiI標識された移植細胞(VEカドヘリン陽性細胞)を示し、緑色は、ISOLECTIN B4(商品名)で標識(染色)されたKSNヌードマウスの血管内に存在する血管内皮細胞を示す。図中、黄色は、移植されたVEカドヘリン陽性細胞(赤色)がKSNヌードマウスの血管(緑色)に取り込まれたものと判断される箇所である。パネル(A)中、囲み部分の横の辺は、1mmである。また、パネル(B)は、パネル(A)の囲み部分全体の拡大図である。
図7は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)の移植後42日目における虚血側下腿筋の免疫組織学的解析の結果を示す図である。パネル(A)は、VEカドヘリン陽性細胞を移植せず、リン酸緩衝化生理食塩水を注入した(無処置)KSNヌードマウスの組織(対照群)を示し、パネル(B)は、VEカドヘリン陽性細胞を移植したKSNヌードマウスの組織を示す。図中、緑色は、マウスPECAM1を示し、赤色は、ヒトPECAM1を示す。スケールバーは、100μmである。
図8は、VEカドヘリン陽性細胞(ヒト発生初期血管内皮細胞)の移植後7日目における虚血側下腿筋でのVEカドヘリン陽性細胞の血管内への取り込みを調べた結果を示す図である。図中、青色は、ヒトPECAM1を示し、緑色は、ISOLECTIN B4(商品名)で標識(染色)された部位を示す。スケールバーは、100μmである。
本発明は、霊長類動物胚性幹細胞からVEカドヘリン陽性細胞を分化させることにより得られた細胞が、発生初期血管内皮細胞として、生体へ移植すると良好に生着し、機能的な血管が構築されるという本発明者等の知見に基づく。
本発明の1つの側面は、霊長類動物胚性幹細胞を、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることを特徴とする、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法に関する。
本発明の分化方法により得られる発生初期血管内皮細胞は、長期培養及び継代が可能であり、インビトロで増殖させることができるという優れた性質を有する。また、本発明の分化方法により得られる発生初期血管内皮細胞は、所望の動物種、例えば、ヒト、サル等の胚性幹細胞からの分化により得られるものであるため、生体への高い生着効率を示し、個体への高い適合性を示すという優れた性質を有する。さらに、本発明の分化方法により得られる発生初期血管内皮細胞は、個体において、血管内皮細胞を発生させることができるという優れた性質を有する。したがって、本発明の分化方法により得られた細胞によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することが可能になる。
本発明の分化方法では、自己複製によって無制限に増幅可能な霊長類動物胚性幹細胞、特に、ヒト胚性幹細胞が用いられているため、本発明の分化方法によれば、実質的に均一な品質の発生初期血管内皮細胞を、大量に得ることができる。したがって、本発明の分化方法によれば、再生医療分野での利用に適した血管構築材、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料等を大量に効率よく安定的に供給することができる。
さらに、本発明の分化方法によれば、霊長類動物胚性幹細胞が用いられているため、霊長類動物、例えば、ヒト及びサル、好ましくは、ヒトの生体に対し、高い効率で生着させることができ、高い適合性を得ることができる発生初期血管内皮細胞を得ることができる。
本明細書において、前記「局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患」としては、例えば、潰瘍、閉塞性動脈硬化症、虚血性心疾患、脳血管障害、バージア病、皮膚潰瘍等が挙げられる。
本明細書において、「血管内皮細胞」とは、特に断りのない限り、発生初期血管内皮細胞と成熟血管内皮細胞とを包含する概念を意味する。
本明細書において、前記「発生初期血管内皮細胞」は、霊長類動物胚性幹細胞から分化したVEカドヘリン(Vascular Endothelial−cadherin)陽性かつCD34陽性かつVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)−R2陽性かつPECAM(Platelet and Endothelial Cell Adhesion Molecule)1陽性細胞をいう。また、前記「発生初期血管内皮細胞」は、成人の完全に成熟した血管内皮細胞とは異なり、生体に移植すると機能的な血管を構築し血流を改善する等の性質を有する。
本明細書において、前記「成熟血管内皮細胞」は、成人の完全に成熟した血管内皮細胞と同等の性質を示す細胞をいう。
本明細書において、「霊長類動物」とは、ヒト、サル等をいう。前記サルとしては、特に限定されないが、例えば、カニクイザル、アカゲザル、ニホンザル、マーモセット等が挙げられる。
また、本明細書において、「霊長類動物胚性幹細胞」とは、多分化能と自己複製能とを有する未分化細胞をいう。前記霊長類動物胚性幹細胞とは、より具体的には、アルカリホスファターゼ(ALP)活性陽性、SSEA(Stage Specific Embryonic Antigen)−3陽性、SSEA−4陽性、TRA(Tumor Rejection Antigen)1−60陽性、TRA1−81陽性の性質を示す細胞をいう。なお、前記性質は、慣用の抗体、例えば、抗SSEA−1抗体、抗SSEA−3抗体、抗SSEA−4抗体、抗TRA1−60抗体、抗TRA1−81抗体等を用いた免疫染色、アルカリホスファターゼ活性測定手段{例えば、市販のALP検定キット(シグマ社製)等}を用いるアルカリホスファターゼの検出方法等の方法により確認されうる。
なお、前記免疫染色は、慣用の手順{例えば、ヒラシマ(Hirashima)ら、Blood,93,1253−1263(1999)を参照のこと}により行なわれうる。
また、本明細書において、「未分化霊長類動物胚性幹細胞マーカー」としては、例えば、ALP、SSEA−3、SSEA−4、TRA1−60、TRA1−81等が挙げられる。
本発明に用いられる血管内皮マーカーとしては、通常、当該技術分野で用いられるものが挙げられる。具体的には、血管内皮マーカーとしては、例えば、VEカドヘリン、CD34及びPECAM1が挙げられる。なかでも、好ましくは、VEカドヘリンである。
本発明に用いられる霊長類動物胚性幹細胞としては、具体的には、例えば、CMK−6細胞株{末盛博文ら、Developmental Dynamics,222,273−279(2001)}、HES−3細胞株{ベンジャミン イー.ロイビノフ(Benjamin E.Reubinof)ら,Nature Biotechnology,18,399−404(2000)}等が挙げられる。前記霊長類動物胚性幹細胞は、例えば、前記末盛博文らの文献、ベンジャミン イー.ロイビノフらの文献等に従って、未分化状態を維持することができる。
なお、前記霊長類動物胚性幹細胞は、適切なフィーダー細胞を用い、胚性幹細胞用培地で培養することにより維持、増殖又は供給されうる。
前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のために用いられるフィーダー細胞としては、胚性幹細胞の培養で慣用の細胞であればよい。前記フィーダー細胞としては、例えば、妊娠12日〜16日目のマウス胎児の線維芽細胞の初代培養細胞、マウスの胎児線維芽細胞株であるSTO細胞等をマイトマイシンCやX線処理して得られた細胞等が挙げられる。
また、前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のために用いられるフィーダー細胞は、細胞の種類により異なるが、例えば、マウス胎仔由来線維芽細胞をフィーダー細胞として用いる場合、0.1重量% ゼラチン水溶液{ウシ皮膚由来、例えば、シグマ(SIGMA)社製のゼラチン等}でコートした10cmディッシュ上で、該マウス胎仔由来線維芽細胞をマイトマイシンC処理又はX線照射し、コンフルエントになるまで培養し、フィーダー層として得られうる。
前記フィーダー細胞の培養条件は、細胞の種類により異なるが、例えば、5体積%COの気相で、36〜38℃、好ましくは、37℃で維持すること等が挙げられる。
また、前記胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のために用いられる培地としては、特に限定されないが、例えば、使用する胚性幹細胞の供給源となる動物種に応じた慣用の培地成分を用いればよい。培地成分は、胚性幹細胞の種類により異なるが、サル胚性幹細胞に用いる場合、β−メルカプトエタノールと非必須アミノ酸と血清又は血清代替物(例えば、20重量% KNOCKOUT−TM Serum Replacement){インビトロジェン(Invitrogen)社製}とを含むダルベッコ改変イーグル培地/F12培地等が挙げられる。ヒトの胚性幹細胞に用いる場合、前記培地成分としては、例えば、β−メルカプトエタノールと非必須アミノ酸と血清又は血清代替物{例えば、インビトロジェン(Invitrogen)社製、20重量% KNOCKOUT−TM Serum Replacement}とを含むダルベッコ改変イーグル培地等が挙げられる。
前記霊長類動物胚性幹細胞の未分化状態の維持及び増殖のための培養条件としては、胚性幹細胞の種類により異なるが、例えば、サル胚性幹細胞の場合、好ましくは、5体積% COの気相で、36〜38℃、より好ましくは、37℃、ヒト胚性幹細胞の場合、好ましくは、5体積% COの気相で、36〜38℃、より好ましくは、37℃で維持すること等が挙げられる。なお、前記培養条件は、細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
前記霊長類動物胚性幹細胞は、サル胚性幹細胞の場合、適切な手段、例えば、細胞同士の解離に適した試薬{例えば、ギブコ(GIBCO)社製、商品名:ディソシエーションバッファー、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン等}により処理され、細胞同士を解離された細胞であることが望ましい。また、ヒト胚性幹細胞の場合、単細胞に分離すると生育率が著しく低下する場合は、適切な手段、例えば、細胞同士の解離に適した試薬{例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ等}により処理され、得られた小塊を代用してもよい。
前記フィーダー細胞は、血管内皮細胞への分化誘導能を有し、細胞の生着を確保する観点から、胚性幹細胞から血管・血球系の細胞への分化を促進し、種々の生理活性物質や接着因子を発現する細胞であればよい。前記フィーダー細胞としては、頭蓋冠線維芽細胞等のストローマ細胞が挙げられる。具体的には、OP9細胞株等が挙げられる。
本発明の分化方法においては、例えば、分化誘導に適した条件下に、霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養することにより、霊長類動物胚性幹細胞を、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることができる。
本発明の分化方法の1つの実施態様としては、
(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群Aへ分化させるステップ、及び
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、
を含む方法が挙げられる。
前記ステップ(I)において、霊長類動物胚性幹細胞と、フィーダー細胞との共培養は、例えば、前記フィーダー層上に霊長類動物胚性幹細胞を播種し、分化誘導に適した条件下に培養することにより行われうる。
前記ステップ(I)において、播種される霊長類動物胚性幹細胞の量は、例えば、サル胚性幹細胞の場合、10cm径細胞組織培養ディッシュに対し、好ましくは、2×10細胞〜5×10細胞であることが望ましい。ヒト胚性幹細胞の場合、細胞を小塊として播種する場合、細胞数をカウントすることができず、正確に把握することが困難である場合があるが、通常の胚性幹細胞の継代と同等の細胞密度で播種することが望ましい。
分化誘導の際の培養条件としては、胚性幹細胞の種類により異なるが、例えば、サル胚性幹細胞又はヒト胚性幹細胞の場合、好ましくは、5体積% COの気相で、36〜38℃、より好ましくは、37℃で、好ましくは、8〜10日間、より好ましくは、10日間維持すること等が挙げられる。
共培養に用いられる培地としては、胚性幹細胞の種類により適宜選択され得、該胚性幹細胞の分化に適した培地であればよく、例えば、5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清とを含むαMEM等の分化培養液が挙げられる。
共培養の際に用いられる培養容器としては、細胞培養に適したものであればよく、例えば、6cm径組織培養ディッシュ、10cm径組織培養ディッシュ等が挙げられる。
ステップ(I)において、前記培地中における血清の濃度は、適宜設定することができるが、10重量%前後であることが望ましい。なお、前記血清の代わりに、機能的に同等の物質、例えば、血清代替物等を用いてもよい。
前記ステップ(I)において、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群Aは、例えば、前記血管内皮マーカーに対する抗体を用いた手段、例えば、免疫染色、フローサイトメトリー等により、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含むことを指標として確認されうる。
前記抗体は、市販の抗体、慣用の手法により作製された抗体及びそれらの抗体断片のいずれであってもよい。
ついで、前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離する{ステップ(II)}。
前記ステップ(II)において、前記血管内皮細胞マーカー陽性細胞の分離は、適切なセルソーティング手段、例えば、慣用のフローサイトメトリー{FACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)}によるセルソーティング;MACS(Magnetic Activated Cell Sorter)によるセルソーティング等により行なわれる。前記FACSでは、ソーティングに適した標識抗体の標識を指標として用いて、目的とする細胞をソーティングすればよい。また、前記MACSでは、ソーティングに適した抗体を保持した磁気ビーズと目的とする細胞とを結合させ、磁気ビーズを回収することにより、目的とする細胞をソーティングすればよい。
前記セルソーティングの際に用いられる抗体としては、血管内皮細胞マーカーに対する少なくとも1種の抗体が挙げられる。
例えば、フローサイトメトリーを用いる場合、細胞群を、適切な溶液に懸濁して、適切な細胞濃度の細胞懸濁液を得、得られた細胞懸濁液をフローサイトメーターに供して、セルソーティングすることにより、目的とする細胞を分取することができる。
前記細胞の懸濁に用いられる「適切な溶液」としては、フローサイトメトリー及びセルソーティングを行なうに適した溶液であればよく、例えば、リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)、ハンクス緩衝液(HBSS)等が挙げられる。
また、前記細胞懸濁液における細胞濃度は、フローサイトメトリー及びセルソーティングに際し、複数の細胞を電気的に十分に識別できる濃度であればよく、用いるセルソーティング機器に応じて適宜設定することができる。前記細胞懸濁液における細胞濃度は、例えば、好ましくは、1×10細胞/ml〜1×10細胞/mlであることが望ましい。
フローサイトメトリー及びセルソーティングの条件は、用いられるフローサイトメーターにおけるソーティングの方式(例えば、水滴荷電方式、セルキャプチャー方式)に応じて、適宜設定されうる。
前記条件としては、例えば、目的とする細胞を高純度で得るに適したソート滴数、ソート細胞数及び流速であればよい。
なお、FACSにより分離を行なう場合、標識抗体に用いられる標識物質としては、蛍光色素が挙げられ、用いられるフローサイトメーターのレーザー光及びフィルターの種類により適宜選択されうる。前記蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン イソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、テキサスレッド(TR)、Cy3、Cy5、PerCO(登録商標)(BDバイオサイエンシーズ社製)、Red613(登録商標)(ギブコ社製)、Red670(登録商標)(ギブコ社製)、Alexa647(モレキュラーシーブス社製)、Alexa488(モレキュラーシーブス社製)等が挙げられる。
なお、セルソーティングの際、2種以上の抗体を用いる場合には、前記抗体のそれぞれは、互いに異なる標識物質で標識すればよい。
本発明の分化方法によれば、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化過程において機能を発揮する因子を評価することも可能になる。したがって、本発明の分化方法は、当該分化方法に基づく霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化過程の進行が、評価対象物質により促進されること又は阻害されることを指標として、発生初期血管内皮細胞への分化の誘導剤又は阻害剤をスクリーニングする、スクリーニング方法に応用されうる。なお、かかるスクリーニング方法は、薬物の評価にも適用されうる。
前記評価対象物質としては、低分子化合物、ポリペプチド、糖、その他の高分子化合物等が挙げられる。前記誘導剤又は阻害剤をスクリーニングする場合、評価対象物質の物質を、前記分化方法のステップ(I)の際に用いられる培地に添加し、ステップ(I)を行なえばよい。分化過程の進行の促進又は阻害は、例えば、一定の時間あたりの分化した細胞数、分化した細胞の形態、分化した細胞の性質(例えば、マーカーの発現)等を指標として用いて評価される。前記誘導剤は、例えば、前記局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療手段の開発に有用である。また、前記阻害剤は、例えば、腫瘍の増殖、転移等における血管新生を阻害することに基づく治療手段の開発に有用である。
さらに、本発明の分化方法によれば、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞に分化させることができるため、本発明の分化方法は、発生初期血管内皮細胞の製造に応用されうる。
したがって、本発明の他の側面は、(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群Aへ分化させるステップ、及び(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ
を含む、発生初期血管内皮細胞の製造方法に関する。
本発明の製造方法では、本発明の分化方法に基づくステップが行なわれているため、本発明の製造方法によれば、長期培養及び継代が可能であり、インビトロで増殖させることができ、霊長類動物、例えば、ヒト及びサル、好ましくは、ヒトの生体に対し、高い効率で生着させることができ、高い適合性を得ることができる発生初期血管内皮細胞を製造することができる。
本発明の製造方法では、本発明の分化方法に基づくステップが行なわれているため、自己複製によって無制限に増幅可能な霊長類動物胚性幹細胞、例えば、ヒト胚性幹細胞が用いられている。したがって、本発明の製造方法によれば、実質的に均一な品質の前記発生初期血管内皮細胞を大量に供給することができる。また、本発明の製造方法によれば、霊長類動物胚性幹細胞、特に、ヒト胚性幹細胞が用いられているため、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供することができ、再生医療分野での臨床応用に結びつく血管構築材を大量に効率よく製造することができる。
本発明の製造方法において、ステップ(I)及び(II)は、前記分化方法の場合と同様である。
本発明の製造方法においては、前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅する{ステップ(III)}をさらに行なってもよい。本発明の製造方法によれば、かかるステップ(III)を行なうことにより、前記発生初期血管内皮細胞を、より大量に得ることができる。
前記ステップ(III)において、前記ステップ(II)で得られた細胞の増幅は、例えば、前記ステップ(II)で得られた細胞を、細胞外マトリクスでコートした培養容器中において、適切な成長因子、血清又は血清代替物等を含有した培地上、分化誘導に適した条件下に、コンフルエントになるまで培養することにより行なわれうる。
前記細胞外マトリクスとしては、例えば、コラーゲンIV、フィブロネクチン等が挙げられる。前記細胞外マトリクス等による培養容器のコーティングは、慣用の方法により行なわれうる。
前記成長因子としては、VEGF(血管内皮成長因子)等が挙げられる。
前記ステップ(III)に用いられうる培地としては、細胞の増幅に適した培地であればよく、例えば、5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清と成長因子とを含むαMEM等の培地が挙げられる。具体的には、例えば、5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清とを含むαMEM等が挙げられる。
なお、前記培地中における前記成長因子の含有量は、適宜設定され得、細胞の増殖効果を十分に発揮させる観点から、例えば、VEGFの場合、前記培地中におけるVEGFの含有量は、発生初期血管内皮細胞の増殖効果を十分に得る観点から、10ng/ml以上、好ましくは、50ng/ml以上であり、100ng/ml以下であることが望ましい。かかる範囲内において、適宜、濃度を設定することができる。
前記培地中における血清若しくは血清代替物の濃度は、適宜設定することができ、好ましくは、2重量%以上であり、20重量%以下、好ましくは、10重量%以下であることが望ましい。かかる範囲内において、適宜、濃度を設定することができる。
前記ステップ(III)における培養条件としては、5体積% COの気相で、36〜38℃、より好ましくは、37℃前後(例えば、37℃)で、0〜30日間培養すること等が挙げられる。
なお、前記ステップ(III)において、血管内皮細胞マーカー陽性細胞がコンフルエントになった段階で、
− 該血管内皮細胞マーカー陽性細胞が生育している培養容器に、細胞を解離するに適した溶液、例えば、0.25重量% トリプシン溶液等を添加し、
− 該培養容器から、該血管内皮細胞マーカー陽性細胞をはがし、
− 得られた血管内皮細胞マーカー陽性細胞を、1×10細胞/cm〜1.5×10細胞/cmとなるように、前記と同様の培地成分を含有したプレートに播種し、同様に、培養すること
により継代し、該血管内皮細胞マーカー陽性細胞を増幅させることができる。かかる継代は、適宜繰り返して行なわれうる。本発明の製造方法においては、霊長類胚性幹細胞が用いられているため、マウス胚性幹細胞等とは異なり、予想外にも、上記のような継代により、目的の血管内皮細胞マーカー陽性細胞をさらに増幅することが可能になる。
また、本発明の別の側面は、
(I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群Aへ分化させるステップ、
(II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、及び
(III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップ
を含む、発生初期血管内皮細胞の増幅方法に関する。
本発明の増幅方法によれば、前記分化方法及び製造方法と同様のステップにより、発生初期血管内皮細胞を増幅させることができる。また、本発明の増幅方法は、自己複製によって無制限に増幅可能な霊長類動物胚性幹細胞、例えば、ヒト胚性幹細胞が用いられているため、実質的に均一な品質の前記発生初期血管内皮細胞を大量に供給することができる。
本発明の分化方法、製造方法及び増幅方法により得られた発生初期血管内皮細胞は、実質的に均一な品質を有し、また、大量に供給されうるため、本発明の分化方法、製造方法及び増幅方法によれば、血管再生(例えば、血管の損傷部位の治療等)等の材料を安定して供給することができる。本発明により得られる発生初期血管内皮細胞は、血管の再生等を行なうことができ、また、高い効率で生着させることができ、霊長類動物、具体的には、ヒト及びサル、特に、ヒトの生体に対し、特に高い適合性を示すという優れた性質を発現する。
したがって、本発明の別の側面は、霊長類動物胚性幹細胞を血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞に関する。
本発明の発生初期血管内皮細胞は、霊長類動物胚性幹細胞から製造されているため、高い効率で生体に生着させることができ、高い適合性で個体に用いることができる。
本発明の発生初期血管内皮細胞は、霊長類動物の血管内皮細胞への分化能を有し、かつ高い生着効率及び個体への高い適合性を示す。したがって、本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、個体において、血管内皮細胞を発生させ得、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することを可能になる。
前記生着効率及び適合性は、例えば、被験対象の細胞を、ヌードマウスの皮膚潰瘍部位に注射し、皮膚潰瘍部位における前記被験対象の細胞に特異的なマーカーの存在を介して、さらに、個体の血流を介して、血管内皮を特異的に染色することにより、個体の血流と交通を有する機能的な血管が構築されていることを確認することにより評価されうる。
血管再生による治療効果は、例えば、被験対象の細胞を、ヌードマウスの皮膚潰瘍部位に注射し、皮膚潰瘍部位を経時的に観察し、該細胞の注射により、皮膚潰瘍部位の大きさの変化を観察することにより評価されうる。
本発明の発生初期血管内皮細胞は、ソーティングに用いた抗体の抗原とは異なる血管内皮細胞マーカーに対する抗体を用いた免疫染色等により、陽性を示すこと、すなわち、VEカドヘリン、CD34、PECAM1及びVEGF−R2のいずれもが陽性であること等を指標として目的の発生初期血管内皮細胞であることが評価されうる。
本発明の発生初期血管内皮細胞は、例えば、10重量% ジメチルスルホキシドと90重量% 血清との存在下、液体窒素中での凍結保存により安定に保存されうる。
また、本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、血管損傷治療剤が提供されうる。
したがって、本発明のさらに別の側面は、霊長類動物胚性幹細胞を血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を有効成分として含有してなる、血管損傷治療剤に関する。
本発明の血管損傷治療剤は、虚血性疾患、例えば、閉塞性動脈硬化症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、心不全等)、脳血管障害、皮膚潰瘍、虚血性腸炎、腎硬化症等の疾患の治療、創傷部位における血管の再生等に用いることもできる。
本明細書において、前記「血管の再生を必要とする部位」としては、例えば、血管損傷部位等が挙げられる。前記「血管の再生を必要とする部位」としては、より具体的には、例えば、下肢虚血部、心筋虚血部、脳虚血部等の虚血部位、皮膚潰瘍部位、創傷部位における血管切断又は破壊箇所等が挙げられる。
本発明の血管損傷治療剤は、本発明により得られる発生初期血管内皮細胞を維持するに適した溶液(例えば、薬学上許容され得る緩衝液等)、薬学上許容されうる助剤、血管形成を促進しうる物質若しくは該物質を含有した徐放性担体等を適宜含有してもよい。前記血管形成を促進しうる物質としては、bFGF、VEGF、HGF、これらと同等の機能を発揮する物質等が挙げられる。また、前記徐放性担体としては、ゼラチン粒子、該ゼラチン粒子と同等の機能を発揮する担体等が挙げられる。
本発明の血管損傷治療剤中における発生初期血管内皮細胞の含有量は、該発生初期血管内皮細胞の生存及び機能の維持、該発生初期血管内皮細胞から他の血管内皮細胞への分化能の維持等に適した範囲であればよい。
本発明の血管損傷治療剤は、適用対象となる疾患、該疾患の重篤度、投与対象となる個体の年齢、該個体の体力、疾患部位等に応じて、血管の再生を必要とする部位等に直接又は間接的に投与されうる。本発明の血管損傷治療剤の投与法としては、具体的には、例えば、局所注射、血管内投与、カテーテルを介した送達等が挙げられる。また、本発明の血管損傷治療剤の投与に際し、必要により、外科的手術等を行なってもよい。
本発明の血管損傷治療剤の投与量は、適用対象となる疾患、該疾患の重篤度、投与対象となる個体の年齢、該個体の体力、疾患部位等に応じた「治療上有効量」、すなわち、適用対象となる部位への生着を行なうに適した量であり、血管の再生効果(例えば、血管損傷の治療効果等)を十分に発揮しうる量であればよい。
本発明の血管損傷治療剤の効果の判定は、例えば、血管造影、組織切片の血管組織の免疫染色等により、血管の再生を必要とする部位を観察すること、レーザードップラー法による血流量の測定、心筋梗塞・脳梗塞巣の定量、脳血流シンチグラフィー、エコーによる心筋運動の観察等により、本発明の血管損傷治療剤の投与により、投与前に比べ、血管構造の再生、血流の改善、虚血部位の機能改善、局所血圧の改善、皮膚温度の正常化、血管の再生を必要とする部位(例えば、血管損傷部位等)における毛細血管の増加等を血管が再生されたことの指標として用いて行なわれうる。
本発明の発生初期血管内皮細胞によれば、血管再生を行なうことができる。
したがって、本発明の他の側面は、霊長類動物胚性幹細胞を血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管の再生を必要とする部位、例えば、血管損傷部位等に供給することを特徴とする、血管再生方法に関する。
本発明の血管再生方法においては、1つの実施態様では、本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞が用いられる。
本発明の血管再生方法では、前記発生初期血管内皮細胞が用いられているため、本発明の血管再生方法によれば、血管の損傷部位を治療することができ、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等を治療することができる。また、本発明の血管再生方法では、前記発生初期血管内皮細胞が用いられているため、本発明の血管再生方法によれば、血管の再生を必要とする部位において血管を再生することができる。
本発明の血管再生方法は、本発明の血管損傷治療剤の投与法と同様に、前記発生初期血管内皮細胞を、対象となる部位に直接又は間接的に投与されうることにより行なわれうる。対象となる部位への前記発生初期血管内皮細胞の投与法としては、具体的には、例えば、局所注射、血管内投与、カテーテルを介した送達等が挙げられる。なお、対象となる部位への前記発生初期血管内皮細胞の投与に際して、必要に応じ、外科的手術等を行なってもよい。
本発明の発生初期血管内皮細胞の投与量は、前記血管損傷治療剤の場合と同様に設定され得、適用対象となる部位への生着を行なうに適した量であり、血管の再生効果を十分に発揮しうる量であればよい。
また、本発明の血管再生方法による再生効果は、前記血管損傷治療剤の効果の評価と同様の手法及び指標により評価されうる。前記再生効果は、具体的には、例えば、血管造影、組織切片の血管組織の免疫染色等により、対象となる部位を観察すること、レーザードップラー法により、血流量を測定すること等により、前記発生初期血管内皮細胞の投与により、投与前に比べ、血管構造の再生、血流の改善、対象となる部位の機能改善、局所血圧の改善、皮膚温度の正常化、対象となる部位における毛細血管の増加等を、血管が再生されたことの指標として用いて評価されうる。
本発明の血管再生方法においては、前記発生初期血管内皮細胞の投与後、血管形成を促進しうる物質若しくは該物質を含有した徐放性担体等をさらに投与してもよい。
また、本発明の血管再生方法においては、前記発生初期血管内皮細胞と、壁細胞又はその分化系譜上の前駆体となる細胞とを共存させて用いてもよい。
また、本発明は、1つの側面では、本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、生体内へ移植することを特徴とする、移植方法に関する。
本発明の移植方法は、本発明の血管再生方法と同様に行なわれうる。本発明の移植方法では、本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞が用いられているため、本発明の移植方法によれば、生体への高い生着効率及び個体への高い適合性を得ることができる。また、本発明の移植方法では、本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞が用いられているため、本発明の移植方法によれば、個体における移植対象部位において、血管を再生させることができる。したがって、本発明の移植方法によれば、血管を再生させることにより治療効果が期待できる疾患、例えば、前記虚血性疾患等の治療、創傷における血管の回復等が可能になる。
本発明の移植方法は、例えば、
1)本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞の移植を必要とする個体において、疾患部位、移植を必要とする部位、移植により治療効果が期待できる部位等を特定するステップ、
2)前記ステップ1)で特定された部位(移植対象部位)へ、本発明の製造方法により得られた発生初期血管内皮細胞を移植するに適した処理を行なうステップ、及び
3)前記ステップ2)の後の個体における移植対象部位に、本発明の製造方法により得られた発生初期血管内皮細胞を移植するステップ、
を含むプロセスにより行なわれうる。また、前記ステップ3)の後、移植後の個体について、血管形成を促進させうる薬剤等を適宜投与してもよい。
前記ステップ1)における「移植対象部位」の同定は、例えば、血管造影、X線照射による診断、CT(computed tomography)スキャン、MRI(magnetic resonance imaging)、各種診断マーカーの発現、血管エコー検査、シンチグラフィー、ABI測定、経皮的酵素局在測定等により、病因を同定し、疾患部位を特定すること等により行なわれうる。
前記移植対象部位としては、例えば、前記「血管の再生を必要とする部位」と同様の部位が挙げられる。
前記ステップ2)における「発生初期血管内皮細胞を移植するに適した処理」としては、前記移植対象部位への発生初期血管内皮細胞の送達を容易にするための外科的手術による前記移植対象部位の露出、前記移植対象部位への発生初期血管内皮細胞の送達を容易にするためのカテーテルの挿入、前記移植対象部位へ発生初期血管内皮細胞を安定した状態で送達するための発生初期血管内皮細胞の処理等が挙げられる。
前記ステップ3)において、発生初期血管内皮細胞の移植は、局所注射、血管内投与、カテーテルを介した送達等により行なわれうる。
前記ステップ3)における移植時に用いられる発生初期血管内皮細胞の量は、前記血管損傷治療剤の場合と同様に設定され得、移植対象部位への生着を行なうに適した量であり、血管の再生効果等を十分に発揮しうる量であればよい。
本発明の移植方法は、霊長類動物、例えば、ヒト、サル等に適用されうる。
また、本発明の移植方法は、虚血性疾患、例えば、閉塞性動脈硬化症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、心不全等)、脳血管障害、皮膚潰瘍等の疾患の治療、創傷部位における血管の再生等に適用されうる。
本発明のさらに別の側面は、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患を有する哺乳動物被験体に、本発明の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、治療有効量投与することを特徴とする、哺乳動物被験体における局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患の治療方法に関する。本発明の治療方法は、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患、例えば、潰瘍、虚血性疾患等に有効である。
本発明の治療方法は、上記のように、本発明の血管損傷治療剤を用いること、本発明の移植方法を行なうこと等により実施されうる。
さらに、本発明の発生初期血管内皮細胞は、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患を有する哺乳動物被験体の血管の再生を必要とする部位、例えば、血管損傷部位等に供給して、血管再生することにより哺乳動物被験体を治療するための医薬の製造のために使用されうる。
したがって、本発明の別の側面は、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患を有する哺乳動物被験体の血管の再生を必要とする部位に供給して、血管再生することにより哺乳動物被験体を治療するための医薬の製造のための、霊長類動物胚性幹細胞を血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞の使用に関する。
本発明の発生初期血管内皮細胞は、血管内皮細胞の前駆細胞に比べ、供給性に優れ、かつより高い生着性を示す。
また、本発明の発生初期血管内皮細胞を、血管形成に適した環境下に培養することにより、成熟血管内皮細胞を含む血管構造を生じさせることができる。
したがって、本発明のさらに別の側面は、霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管形成に適した環境下に培養することを特徴とする、血管構造の構築方法である。
本発明の血管構造の構築方法としては、前記発生初期血管内皮細胞の製造方法におけるステップ(I)及び(II)、所望により、ステップ(III)に加え、
(III’)前記血管内皮細胞マーカー陽性細胞を、血管形成に適した環境又は血管環境下に培養するステップ
を含む方法が挙げられる。
本発明の血管構造の構築方法によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態及び/又は疾患等の治療のための材料を安定的に提供することが可能になる。また、本発明の血管構造の構築方法では、霊長類動物胚性幹細胞を分化させて得られた発生初期血管内皮細胞(血管内皮細胞マーカー陽性細胞群)が用いられているため、本発明の血管構造の構築方法によれば、高い効率で生着し、血管構造を構築することができ、個体への高い適合性を得ることができる前記状態及び/又は疾患等の治療のための材料を提供することができる。
前記「血管形成に適した環境又は血管環境」としては、生体外における条件の場合、例えば、VEGFとホルボール 12−ミリスタート 13−アセタートとを含む適切な培地{例えば、5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清とを含むαMEM}において、例えば、コラーゲンゲル(例えば、コラーゲンIAゲル等)、マトリゲル等の担体内で、37℃、5体積% COで、前記発生初期血管内皮細胞の3次元培養を行なう条件等が挙げられる。培地中におけるVEGFの濃度は、前記と同様である。また、培地中におけるホルボール 12−ミリスタート 13−アセタートの濃度は、適切な管腔構造形成を得る観点から、10μM〜100μM、より好ましくは、100μMであることが望ましい。また、前記「血管形成に適した環境又は血管環境」としては、生体内における条件の場合、血管内又は血管周辺に、前記発生初期血管内皮細胞を維持する条件等が挙げられる。
本発明の血管構造の構築方法によれば、血管構造を構築することができる。
したがって、本発明の血管構造の構築方法においては、前記ステップ(III’)において、発生初期血管内皮細胞に加えて、壁細胞等の他の血管系細胞を共存させて用いてもよい。
以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例等により、何ら限定されるものではない。
(1)サル胚性幹細胞からの分化誘導
サル胚性幹細胞として、カニクイザル胚性幹細胞であるCMK−6細胞株{末盛博文ら、Developmental Dynamics,222,273−279(2001)}を用いた。
未分化維持用培地{200mlあたりの組成:ダルベッコ改変最小必須培地(DMEM)/F12 163ml、ウシ胎仔血清 30ml(最終濃度15重量%)、L−グルタミン 2ml(最終濃度2mM)、ペニシリン(100U/ml)−ストレプトマイシン(100μg/ml)2ml、MEM非必須アミノ酸溶液(ギブコ(GIBCO)社製)2ml、2−メルカプトエタノール 1ml(最終濃度0.1mM)}を含むディッシュ上で維持されたサル胚性幹細胞に、セルディソシエーションバッファー{ギブコ(GIBCO社製)}を添加し、37℃10分間インキュベーションした。その後、ディッシュをタッピングして、胚性幹細胞を、単細胞の状態で、ピペッティングにより前記ディッシュから剥がし、回収した。
なお、0.1重量% ゼラチン水溶液{ウシ皮膚由来、シグマ(SIGMA)社製}でコートした10cmディッシュ上で、OP9細胞株をコンフルエントになるまで、培養し、OP9フィーダー層を得た。
回収された前記胚性幹細胞5×10細胞を、前記OP9細胞株上に、播種した。その後、分化培養液{組成:5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清とを含むαMEM培養液(ギブコ(GIBCO)社製)}20mlを添加し、37℃、5体積%COで8〜10日間、胚性幹細胞を、OP9細胞と共培養した。
得られた培養物から、培養上清を除去し、ディッシュをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。ついで、洗浄後のディッシュに、セルディソシエーションバッファー2mlを添加し、37℃10分間インキュベーションした。その結果、OP9細胞は、シート上の構造のまま残り、胚性幹細胞由来細胞は、単細胞の状態で剥がれた。そこで、前記インキュベーション後に得られたディッシュ上の溶液を、セルストレイナー(70μm径のフィルター){BDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)社製}に通して、それにより、胚性幹細胞由来細胞群のみを回収した。
ついで、得られた細胞群について、1重量% ウシ血清アルブミン(BSA){シグマ(SIGMA)社製}含有HBSS液{ギブコ(GIBCO)社製}100μlあたり1×10細胞を浮遊させた。得られた細胞浮遊液に、抗VEカドヘリン抗体{BDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)社製}を添加し、室温20分間インキュベーションした。その後、得られた産物を、1重量% BSA含有HBSS液で2回洗浄した。洗浄後の産物を、フローサイトメトリー解析に供した。前記フローサイトメトリー解析には、商品名:FACSVantage{BDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)社製}を用いた。
その結果、得られた胚性幹細胞由来細胞群において、血管内皮細胞マーカーであるVEカドヘリンを発現している細胞群が見出された。
また、前記VEカドヘリン陽性細胞は、フローサイトメトリー解析により、CD34陽性かつPECAM1陽性かつVEGF−R2陽性であったため、血管内皮細胞であることが示唆された。
ついで、前記抗VEカドヘリン抗体を用い、商品名:FACSVantage{BDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)社製}によるセルソーティングにより、前記胚性幹細胞由来細胞群からVEカドヘリン陽性細胞を分離した。
(2)ヒト胚性幹細胞からの分化誘導
ヒト胚性幹細胞として、オーストラリア モナッシュ大学にて樹立されたHES−3細胞株{ベンジャミン イー.ロイビノフ(Benjamin E.Reubinof)ら,Nature Biotechnology,18,399−404(2000)}を用いた。
0.1重量% コラゲナーゼ(和光純薬株式会社製)を用いて、ヒト胚性幹細胞を37℃で10分間処理し、タッピング及びピペッティングにより、未分化の該ヒト胚性幹細胞を小塊のまま回収した。ついで、得られたヒト胚性幹細胞を、実施例1のサル胚性幹細胞の場合と同様に、ゼラチンコートディッシュのOP9フィーダー層上に播種した。ヒト胚性幹細胞は、小塊のまま、OP9細胞との共培養を行なった。
その後、共培養開始から8〜10日目、VEカドヘリン陽性細胞が出現した。
ついで、VEカドヘリン細胞について、前記(1)の場合と同様に、血管内皮細胞マーカーを用い、フローサイトメトリー解析を行なった。
その結果、前記VEカドヘリン陽性細胞は、CD34陽性かつVEGF−R2陽性かつPECAM1陽性であった。したがって、得られた細胞は、血管内皮細胞であることが示唆された。
前記実施例1の(2)で得られたVEカドヘリン陽性細胞群(5×10個)を、コラーゲンIV又はフィブロネクチンでコートした6ウェルディッシュ{BDバイオサイエンシーズ社製}の各ウェルに播種し、商品名:human recombinant VEGF{ペプロテック(PEPROTECH)社製}50ng/mlの存在下、培養液{組成:5×10−5Mの2−メルカプトエタノールと10重量% 血清とを含むαMEM培養液(ギブコ(GIBCO)社製)}20mlを添加し、37℃、5体積% COで培養した。なお、前記培養液を、2日に1回交換した。
VEカドヘリン陽性細胞がコンフルエントになった段階で、0.25重量% トリプシン溶液{ギブコ(GIBCO)社製}にて、該VEカドヘリン陽性細胞をディッシュより剥がした。得られた細胞を、前記培養液で1:2〜1:3の希釈率となるように希釈し、得られた細胞を、さらに、前記と同様に、コラーゲンIV又はフィブロネクチンでコートした6ウェルディッシュ{BDバイオサイエンシーズ社製}の各ウェルに播種し、商品名:human recombinant VEGF{ペプロテック(PEPROTECH)社製}50ng/mlの存在下、新しい培養液を用いて継代し、培養を行なった。
得られた細胞について、前記実施例1と同様に、フローサイトメトリー解析を行なった。
その結果、得られた細胞は、継代6代目においても、約35%の細胞が、VEカドヘリンようせい、CD34陽性、VEGF−R2陽性、PECAM1陽性を示した。したがって、得られた細胞のうち約35%の細胞は、培養前の細胞と同じ性質を示すVEカドヘリン陽性細胞であり、発生初期血管内皮細胞であることが示唆された。
比較例1
マウス胚性幹細胞を用い、前記実施例1及び2と同様の手法を行なった。
その結果、マウス胚性幹細胞を用いた場合では、前記実施例2と同様の手法では、継代過程を経ると死滅するため、VEカドヘリン陽性細胞を増幅させることはできなかった。
皮膚潰瘍モデルへの血管内皮マーカー陽性細胞の移植
8〜11週齢のKSNヌードマウス(日本エスエルシー株式会社)の背部皮膚両側に、商品名:KAI STERILE DERMAL BIOPSY PUNCH(カイインダストリーズ株式会社製、サイズ:4.00mm、商品番号:BP−40F)にて皮膚潰瘍を形成させた。
また、実施例2で得られた継代増幅したVEカドヘリン陽性細胞(5×10細胞/50μlリン酸緩衝食塩水)を、商品名:Vybrant CM−DiI cell−labeling solution{モレキュラープローブス(Molecular Probes)社製}を用いて、製品添付のMolecular Probesマニュアルに従って、標識した。
標識されたVEカドヘリン陽性細胞を、前記KSNヌードマウスの一方の皮膚潰瘍に、皮下注射した。また、対照として、VEカドヘリン陽性細胞を注射した皮膚潰瘍の反対側に、リン酸緩衝食塩水{ギブコ(GIBCO)社製}50μlのみを皮下注射することにより、細胞を移植し、皮膚潰瘍の治癒過程を観察した。
その結果、図1のパネル(A)及び図2のパネル(A)に示されるように、細胞注入3日後では、両側で皮膚潰瘍の面積に差が見られなかったが、図1のパネル(B)及び図2のパネル(B)に示されるように、6日後には、増幅したVEカドヘリン陽性細胞を皮下注射した側で有意に皮膚潰瘍の面積が小さくなることがわかる。
また、細胞移植後7日目に、前記KSNヌードマウスに、体重1gあたり10μlの16% ネンブタール(登録商標、大日本製薬株式会社製)を腹腔内注射して、該KSNヌードマウスを麻酔した。
ついで、門脈より、商品名:FLUORESCEIN GRIFFONIA SIMPLICIFOLIA LECTIN I,ISOLECTIN B4{ベクター(VECTOR)社製}100μlを静脈注射し、その後、4重量% パラホルムアルデヒド(武藤科学社製)を門脈から点滴で30分間静脈注射し、還流固定した。その後、皮膚組織を切除し、凍結固定して組織切片を作製した。
得られた組織切片を、蛍光顕微鏡(カールツァイス社製、商品名:LSM−5 PASCAL)で観察した。図3に結果を示す。
その結果、図3に示されるように、VEカドヘリン陽性細胞を皮下注射した側の皮下に、ISOLECTIN B4陽性でかつDiI陽性の細胞が認められ、皮下注射したVEカドヘリン陽性細胞がKSNヌードマウスの血管内に取り込まれていることが示された。
下肢虚血モデルへの血管内皮マーカー陽性細胞の移植
8週齢雄のKSNヌードマウス(日本エスエルシー株式会社)に、ペントバルビタール(大日本製薬株式会社製)80mg/kgを腹腔内投与して、該KSNヌードマウスを麻酔した。
その後、右大腿部の皮膚を縦に切開し、大腿動静脈を露出させた。動脈と静脈とを剥離後、大腿静脈を結紮した。得られたマウスを、下肢虚血モデルマウスとした。
また、実施例2で得られたVEカドヘリン陽性細胞(1×10細胞)を、商品名:Vybrant CM−DiI cell−labeling solution{モレキュラープローブス(Molecular Probes)社製}にて標識し、前記と同様に、リン酸緩衝食塩水100μlで細胞浮遊液に調製した。
29G針付きインスリンシリンジ(テルモ株式会社)を用いて、前記細胞浮遊液を、前記KSNヌードマウスの右大腿動脈から動脈注射し、直後に同動脈を結紮切除した。これらの操作の概略を図4に示す。なお、対照群として、細胞を含まないリン酸緩衝水溶液のみを、前記細胞浮遊液の場合と同様に、動脈注射した。
VEカドヘリン陽性細胞の移植後、0、14、28及び42日目のそれぞれで、虚血側下腿の皮膚表面の血流を、レーザードップラー血流計{ムーア(Moor)社製}を用いて、経時的に観察した。結果を、図5に示す。
その結果、細胞移植群において、虚血側下腿筋に対照群と比べて有意な血流回復が認められた。また、図5に示されるように、虚血側下腿の皮膚表面の血流を経時的に観察したところ、対照群と比べ細胞移植群において、虚血側下腿筋に有意な血流回復が認められた。
前記と同様に、前記細胞浮遊液を、KSNヌードマウスの右大腿動脈から動脈注射し、直後に同動脈を結紮切除した。なお、得られたマウスを、下肢虚血モデルマウスとした。
細胞群移植後7日目の前記下肢虚血モデルマウスに、ペントバルビタール80mg/kgを腹腔内投与して、KSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)を麻酔した。
ついで、麻酔したKSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)の胸腔を切開した。左心室に23G注射針(テルモ株式会社)を挿入し、右心室を解放した。その後、生理的食塩水にて15分間灌流を行ない、さらに、4重量% パラホルムアルデヒドのリン酸緩衝食塩水溶液で15分間灌流を行ない、固定した。その後、虚血側下腿筋を採取し、組織標本を得た。
得られた組織標本を蛍光実体顕微鏡{ライカ社製}で観察した結果を図6に示す。
その結果、図6に示されるように、VEカドヘリン陽性細胞の移植後7日目における虚血側下腿筋の組織標本において、標識した移植細胞が広範囲に脈管に沿った形で生着していること示された。したがって、移植されたVEカドヘリン陽性細胞が、KSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)の血管に取りこまれたことがわかる。
また、VEカドヘリン陽性細胞の移植後42日目において、麻酔したKSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)を、前記と同様に、パラホルムアルデヒドリン酸緩衝化食塩水で固定後、虚血側下腿筋を採取した。固定後の組織中の溶液成分を、30重量% スクロース含有リン酸緩衝液(pH7.2)に置き換えた。その後、前記組織を、商品名:OCTコンパウンド(サクラ精機株式会社製)に包埋、凍結させ、クリオスタット(ライカ社製)を用いて、組織切片を作製した。対照群として、VEカドヘリン陽性細胞を移植せず、リン酸緩衝化生理食塩水を注入したKSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)について、同様に、組織切片を作製した。
得られた組織切片について、抗マウスPECAM1抗体と抗ヒトPECAM1抗体とを用いて免疫染色を行なった。結果を図7に示す。
その結果、図7のパネル(B)に示されるように、VEカドヘリン陽性細胞の移植後42日目における虚血側下腿筋の細胞移植部位において、抗ヒトPECAM1抗体陽性細胞が検出された。したがって、移植されたVEカドヘリン陽性細胞に由来するヒト血管内皮細胞が存在することがわかる。
また、前記VEカドヘリン陽性細胞の移植後のKSNヌードマウス(下肢虚血モデルマウス)について、安楽殺直前に、門脈より、商品名:GRIFFONIA SIMPLIFOLIA LECTIN I,ISOLECTIN B4{ベクター(VECTOR)社製}100μlを注射した。15分後、前記と同様に、還流固定を行ない、凍結包埋後、組織切片を作製した。
得られた組織切片について、抗ヒトPECAM1抗体を用いて免疫染色を行なった。結果を図8に示す。
その結果、図8に示されるように、ISOLECTIN B4陽性かつヒト血管内皮マーカー陽性細胞が検出された。したがって、移植されたVEカドヘリン陽性細胞が、KSNヌードマウスの血管内に取り込まれていることがわかる。
本発明によれば、局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患等の治療への応用が可能になる。

Claims (15)

  1. 霊長類動物胚性幹細胞を、血管内皮細胞マーカー陽性細胞群へ分化させることを特徴とする、霊長類動物胚性幹細胞から発生初期血管内皮細胞への分化方法。
  2. (I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、及び
    (II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、
    を含む、請求項1記載の分化方法。
  3. (I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、及び
    (II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、
    を含む、発生初期血管内皮細胞の製造方法。
  4. (III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップをさらに含む、請求項3記載の製造方法。
  5. (I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、
    (II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、及び
    (III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップ、
    を含む、発生初期血管内皮細胞の増幅方法。
  6. 請求項3又は4記載の製造方法により得られる、発生初期血管内皮細胞。
  7. 霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を有効成分として含有してなる、血管損傷治療剤。
  8. 霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管の再生を必要とする部位に供給することを特徴とする、血管再生方法。
  9. 請求項3又は4記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、血管の再生を必要とする部位に供給することを特徴とする、血管再生方法。
  10. 請求項3又は4記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、生体内へ移植することを特徴とする、移植方法。
  11. 局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患を有する哺乳動物被験体に、請求項3又は4記載の製造方法により得られる発生初期血管内皮細胞を、治療有効量投与することを特徴とする、哺乳動物被験体における局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患の治療方法。
  12. 局所の血流を改善することにより治療効果が期待できる状態又は疾患を有する哺乳動物被験体における血管の再生を必要とする部位に供給して、血管再生することにより哺乳動物被験体を治療するための医薬の製造のための、霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞の使用。
  13. 霊長類動物胚性幹細胞を分化させることにより得られる発生初期血管内皮細胞を、血管形成に適した環境下に培養することを特徴とする、血管構造の構築方法。
  14. (I)霊長類動物胚性幹細胞を、フィーダー細胞と共培養して、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を含む細胞群Aへ分化させるステップ、
    (II)前記ステップ(I)で得られた細胞群Aから、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を実質的に分離するステップ、及び
    (III’)前記血管内皮細胞マーカー陽性細胞を、血管形成に適した環境又は血管環境下に培養するステップ
    を含む、請求項13記載の構築方法。
  15. ステップ(III’)に先立ち、
    (III)前記ステップ(II)で得られた細胞を増幅するステップ、
    をさらに行なう、請求項14記載の構築方法。
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