JPWO2005116194A1 - 試験管内筋繊維形成のための筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞培養法 - Google Patents
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Abstract
本願発明は、筋芽細胞を分化させ、収縮可能な筋繊維を効率的に調製することを課題としている。分化誘導の前に、小胞体特異的な小胞体(ER)ストレスに曝し、その後分化誘導することにより、筋芽細胞を効率的に筋繊維に分化させること。
Description
本願発明は、動物細胞の分化、培養、特に筋細胞の分化及び培養の技術分野に属する。
筋芽細胞(接着細胞)を栄養度の高い増殖培地で培養して細胞密度を高くし、その後、栄養の少ない分化培地に代えることにより、細胞の増殖が停止し筋分化が開始すると報告されている。分化培地に移した直後は一部の細胞に細胞死(アポトーシス)が起きるが、大多数の生き残った細胞が筋管、さらには筋繊維を形成することが知られている(非特許文献1,2)。
骨格筋の筋芽細胞の増殖と分化は排他的で、増殖中は分化せず、一度分化した細胞は再び増殖する事はないと言われている。骨格筋形成は培地から血清を除去して筋芽細胞を培養することで誘発され、不可逆的に細胞分裂を停止した多核の筋管細胞を形成する。筋肉に特異的な遺伝子産物の協調的誘導は、これらの形態学的な変化と同時に起こる。筋肉に特異的な転写制御因子(MyoD、ミオジェニン(myogenin)、Myf−5、MRF4)のMyoDファミリーメンバーがこれらのプロセスを制御している。
一方、種々の非筋肉細胞でMyoDファミリーメンバーを異所的に発現させると筋形成を誘導することができる。MyoDの試験管内での強制発現は分化とは独立して細胞周期進行を阻害することができる。
細胞増殖と分化の間の拮抗の基礎は不明暸なままだったが最近、筋形成の間に細胞周期抑制因子p21が誘導されると報告され、細胞周期停止が筋分化とリンクしている仕組みの一端が解明された。筋分化と細胞周期の制御に関して、増殖している筋芽細胞がミオサイト(myocyte)へ移行するステップの時間的な前後関係が明らかになっている。筋芽細胞が分化経路へ進む際にはまずミオジェニンの合成が誘導され、ミオジェニン発現の後、p21の誘導とそれによる細胞周期の停止、次に筋収縮にかかわるタンパク質が発現され、続いてミオサイトが細胞融合を起こして多核の筋管細胞(myotube)を形成するに至る過程が非常に秩序ある順序で進行する(非特許文献3)。
Exp.Cell Res.Vol.24,508−512.(1961). Cell Vol.15,855−864.(1978). J.Cell Biol.Vol.132,657−666.(1996)
骨格筋の筋芽細胞の増殖と分化は排他的で、増殖中は分化せず、一度分化した細胞は再び増殖する事はないと言われている。骨格筋形成は培地から血清を除去して筋芽細胞を培養することで誘発され、不可逆的に細胞分裂を停止した多核の筋管細胞を形成する。筋肉に特異的な遺伝子産物の協調的誘導は、これらの形態学的な変化と同時に起こる。筋肉に特異的な転写制御因子(MyoD、ミオジェニン(myogenin)、Myf−5、MRF4)のMyoDファミリーメンバーがこれらのプロセスを制御している。
一方、種々の非筋肉細胞でMyoDファミリーメンバーを異所的に発現させると筋形成を誘導することができる。MyoDの試験管内での強制発現は分化とは独立して細胞周期進行を阻害することができる。
細胞増殖と分化の間の拮抗の基礎は不明暸なままだったが最近、筋形成の間に細胞周期抑制因子p21が誘導されると報告され、細胞周期停止が筋分化とリンクしている仕組みの一端が解明された。筋分化と細胞周期の制御に関して、増殖している筋芽細胞がミオサイト(myocyte)へ移行するステップの時間的な前後関係が明らかになっている。筋芽細胞が分化経路へ進む際にはまずミオジェニンの合成が誘導され、ミオジェニン発現の後、p21の誘導とそれによる細胞周期の停止、次に筋収縮にかかわるタンパク質が発現され、続いてミオサイトが細胞融合を起こして多核の筋管細胞(myotube)を形成するに至る過程が非常に秩序ある順序で進行する(非特許文献3)。
Exp.Cell Res.Vol.24,508−512.(1961). Cell Vol.15,855−864.(1978). J.Cell Biol.Vol.132,657−666.(1996)
従来法により筋収縮が可能な筋繊維を形成させるためには、生体の筋組織を材料とし、組織をばらばらにし、筋芽細胞(初代培養細胞)を取り出して用いる事が多い。しかしながら、良質の初代培養細胞を安定に採取する事は容易ではなく、分化効率が必ずしも十分ではない場合がある。更に、材料取得のたびに個体から筋組織を取り出すことが必要であった。
他方、株化した筋芽細胞は大量に入手可能であるが、株化した筋芽細胞を従来法で分化させると、筋繊維の形成能が初代培養細胞に劣るという欠点がある。株化筋芽細胞から筋管を形成させることは比較的容易だが筋繊維まで分化する効率は低く、筋収縮を示す細胞の形成は稀である。また、形成される繊維は生体内の筋繊維、あるいは初代培養細胞によってin vitroで作られる筋繊維に比べてはるかに小さい。
そこで、本願発明は、筋芽細胞を分化させ、収縮可能な筋繊維を効率的に調製することを課題としている。
本願発明者は、分化誘導の前に小胞体(ER)ストレスに曝すことにより、筋芽細胞の分化初期のアポトーシスを昂進させ、その後の分化過程を促進する事に成功した。筋芽細胞は細胞融合を起こして多核の筋管を形成し、さらに効率良く筋繊維にまで分化して筋収縮現象を起こすことを見出した。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−154813号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
他方、株化した筋芽細胞は大量に入手可能であるが、株化した筋芽細胞を従来法で分化させると、筋繊維の形成能が初代培養細胞に劣るという欠点がある。株化筋芽細胞から筋管を形成させることは比較的容易だが筋繊維まで分化する効率は低く、筋収縮を示す細胞の形成は稀である。また、形成される繊維は生体内の筋繊維、あるいは初代培養細胞によってin vitroで作られる筋繊維に比べてはるかに小さい。
そこで、本願発明は、筋芽細胞を分化させ、収縮可能な筋繊維を効率的に調製することを課題としている。
本願発明者は、分化誘導の前に小胞体(ER)ストレスに曝すことにより、筋芽細胞の分化初期のアポトーシスを昂進させ、その後の分化過程を促進する事に成功した。筋芽細胞は細胞融合を起こして多核の筋管を形成し、さらに効率良く筋繊維にまで分化して筋収縮現象を起こすことを見出した。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004−154813号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
図1は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤によるC2C12細胞のアポトーシスの昂進(分化誘導1日目)。 Proliferatingは増殖細胞;UTは前処理なし後の分化;TUNはツニカマイシン前処理後の分化、TGはタプシガルジン前処理後の分化をそれぞれ意味する。
図2は、C2C12細胞の分化培養中のカスパーゼ12の活性化。 GMは増殖培地、D1は分化一日目の試料、D2は分化2日目の試料、Lは生細胞、Dは死細胞、UTは未処理、TUN/DMはツニカマイシンによる前処理、TG/DMはタプシガルジンによる前処理、TGはタプシガルジン前処理を意味する。矢印はプロカスパーゼ12を、矢頭はカスパーゼ12の活性型を示す。
図3は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤による前処理の有無での筋繊維のサイズ比較。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理を意味する。スケールバーは200μmである。前処理細胞の分化培養では多くの筋繊維が自発的に収縮した。
図4は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤前処理後のアポトーシス及び生存のオートクリン因子による制御。 馴化培地中でのIGF−IIは抗IGF−II抗体を用いたイムノブロッティングにより検出された。UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理、DMは未使用の分化誘導培地、1−8は分化誘導培地に代えて第1日目から8日目をそれぞれ意味する。
図5は、分化誘導培地に1μg/mlのIGF−IIを添加することによる分化初期のアポトーシスの抑制(分化1日目)。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理をそれぞれ意味する。スケールバーは200μmである。
図6は、分化誘導培地中に分泌されたプロカテプシンBのイムノブロッティングによる検出。 カテプシンのグリコシル型及び非グリコシル形はそれぞれ矢印及び矢頭で示されている。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理、1−3は分化誘導培地に代えて第1日目から3日目、DMは未使用分化誘導培地をそれぞれ意味する。
図7は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤による前処理されたC2C12細胞を用いて調製された馴化培地(Conditioned Medium)によるアポトーシスの促進及び大型筋繊維の効率的形成。 増殖中のC2C12細胞を馴化培地に移して24時間培養し、その後分化誘導培地で12日間培養した。TUNCMはツニカマイシン前処理をした細胞を用いて調製した馴化培地、TGCMはタプシガルジン前処理をした細胞を用いて調製した馴化培地、CCMはコントロール細胞(前処理無し)の分化培養から調製される馴化培地を意味する。スケールバーは200μmである。
図8は、分化過程にあるC2C12細胞のアポトーシスに対する抵抗性。 増殖中のC2C12細胞(GM)、ツニカマイシンで前処理した分化中のC2C12細胞(TUN)、タプシガルジンで前処理した分化中のC2C12細胞(TG)及び前処理していない分化中のC2C12細胞(DM)に2μg/mlツニカマイシン、1μMタプシガルジン、100μg/mlエトポシド、0.2μMスタウロスポリンのいずれかのアポトーシス誘導剤を作用させた。分化中の細胞はいずれも分化開始から3日目のものである。スケールバーは200μmである。
図9は、分化過程にあるC2C12細胞中のBcl−xLのレベル。 Lは生細胞、Dは死細胞、GMは増殖細胞、UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理をそれぞれ意味する。分化開始1日目から7日目までの細胞を解析した。
図10は、分化培地におけるミオジェニンの誘導。 分化開始後、1日目から10日日のC2C12細胞内におけるミオジェニンをイムノブロッティングで検出した。UT,前処理なし;TUN,ツニカマイシン前処理;TG,タプシガルジン前処理。
図2は、C2C12細胞の分化培養中のカスパーゼ12の活性化。 GMは増殖培地、D1は分化一日目の試料、D2は分化2日目の試料、Lは生細胞、Dは死細胞、UTは未処理、TUN/DMはツニカマイシンによる前処理、TG/DMはタプシガルジンによる前処理、TGはタプシガルジン前処理を意味する。矢印はプロカスパーゼ12を、矢頭はカスパーゼ12の活性型を示す。
図3は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤による前処理の有無での筋繊維のサイズ比較。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理を意味する。スケールバーは200μmである。前処理細胞の分化培養では多くの筋繊維が自発的に収縮した。
図4は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤前処理後のアポトーシス及び生存のオートクリン因子による制御。 馴化培地中でのIGF−IIは抗IGF−II抗体を用いたイムノブロッティングにより検出された。UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理、DMは未使用の分化誘導培地、1−8は分化誘導培地に代えて第1日目から8日目をそれぞれ意味する。
図5は、分化誘導培地に1μg/mlのIGF−IIを添加することによる分化初期のアポトーシスの抑制(分化1日目)。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理をそれぞれ意味する。スケールバーは200μmである。
図6は、分化誘導培地中に分泌されたプロカテプシンBのイムノブロッティングによる検出。 カテプシンのグリコシル型及び非グリコシル形はそれぞれ矢印及び矢頭で示されている。 UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理、1−3は分化誘導培地に代えて第1日目から3日目、DMは未使用分化誘導培地をそれぞれ意味する。
図7は、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤による前処理されたC2C12細胞を用いて調製された馴化培地(Conditioned Medium)によるアポトーシスの促進及び大型筋繊維の効率的形成。 増殖中のC2C12細胞を馴化培地に移して24時間培養し、その後分化誘導培地で12日間培養した。TUNCMはツニカマイシン前処理をした細胞を用いて調製した馴化培地、TGCMはタプシガルジン前処理をした細胞を用いて調製した馴化培地、CCMはコントロール細胞(前処理無し)の分化培養から調製される馴化培地を意味する。スケールバーは200μmである。
図8は、分化過程にあるC2C12細胞のアポトーシスに対する抵抗性。 増殖中のC2C12細胞(GM)、ツニカマイシンで前処理した分化中のC2C12細胞(TUN)、タプシガルジンで前処理した分化中のC2C12細胞(TG)及び前処理していない分化中のC2C12細胞(DM)に2μg/mlツニカマイシン、1μMタプシガルジン、100μg/mlエトポシド、0.2μMスタウロスポリンのいずれかのアポトーシス誘導剤を作用させた。分化中の細胞はいずれも分化開始から3日目のものである。スケールバーは200μmである。
図9は、分化過程にあるC2C12細胞中のBcl−xLのレベル。 Lは生細胞、Dは死細胞、GMは増殖細胞、UTは未処理、TUNはツニカマイシン前処理、TGはタプシガルジン前処理をそれぞれ意味する。分化開始1日目から7日目までの細胞を解析した。
図10は、分化培地におけるミオジェニンの誘導。 分化開始後、1日目から10日日のC2C12細胞内におけるミオジェニンをイムノブロッティングで検出した。UT,前処理なし;TUN,ツニカマイシン前処理;TG,タプシガルジン前処理。
本願発明は、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を筋繊維に分化させる方法を提供する。
本願発明者は、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を、分化誘導培地で培養前又は培養開始直後に、小胞体(ER)ストレスに曝すことにより、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が細胞融合を起こし多核体の筋繊維を形成し筋収縮現象を起こすことを見出して本願発明を完成させたものである。本願発明者は試験管内の筋芽細胞培養系及びマウス胎児の筋組織における筋分化過程においてERストレスの発生を検出し、そのストレスによって分化の初期にはアポトーシスが誘起される事を見い出した。培養系の筋分化においては従来、培地の血清濃度を下げることによって分化を誘導していたが、その操作に加えてERストレスを細胞に与える事で筋繊維形成を上昇させる可能性に着目し、本願発明を完成させるに至った。
本願発明には、筋芽細胞を分化誘導培地で分化処理をする前又は培養開始直後に、筋芽細胞を小胞体ストレスに曝す前処理をした後、分化誘導培地で培養することにより筋繊維に分化させる方法及び得られた筋繊維を包含する。
小胞体(ER)では、リボソームで合成された蛋白質が、例えば、糖鎖修飾、ジスルフィド結合形成などを経て、正しく折り畳まれた立体構造をとり、その後、ゴルジ体へと移送される。しかしながら、タンパク質の突然変異や修飾異常によって正しい折り込みがなされない蛋白質は、小胞体内に蓄積し、この蓄積が過度な場合は、小胞体にストレスを起こし、カスパーゼ12が関与するアポトーシス(細胞死)が引き起こされると言われている。
従来法による株化筋芽細胞からの分化においては、ミオサイトまでは分化しても、ミオサイトからの細胞融合による筋管細胞の形成及びそれに続く筋繊維の形成が十分ではないために、筋収縮を起こすことができなかった。
本発明者は、細胞死を起こすような小胞体ストレスを一過的に分化誘導前又は分化誘導培養開始直後の筋芽細胞に与えることにより、分化過程初期のアポトーシスを昂進させてストレスに弱い細胞を人工的に除去し、より強い優れた細胞を選抜することで、筋芽細胞の分化を非常に効率的に行えることをはじめて見出したものである。小胞体ストレスを一過的に分化誘導前又は分化誘導開始時の筋芽細胞に与えることが筋芽細胞から分化して生じるミオサイトが細胞融合を起こし筋管細胞、さらには筋繊維を形成する段階に非常に大きな影響を与えていると考えられる。
1.[筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞]
本願発明で用いる筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞としては、種々の動物、例えば鳥類又は哺乳動物由来の初代培養筋芽細胞及び樹立化された筋芽細胞を用いることができる。例えば、ニワトリ、ヒト、サル、ラット、マウス、ブタ、又はウシ等に由来する初代培養筋芽細胞及び樹立化された筋芽細胞または筋芽細胞様細胞を用いることができる。樹立された株化筋芽細胞または株化筋芽細胞様細胞としては、正常筋肉組織から樹立されたものもあれば、横紋筋肉腫などの腫瘍細胞から樹立されたものも用いることができ、具体的には、マウスから樹立化されたC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5,ラットF−12、ラットL6、ヒトRD(株化筋芽細胞様細胞の例。例えば、ATCCのカタログ記載の細胞CCL−136)等が挙げられ、これらは理化学研究所バイオリソースセンター、米国 American Type Culture Collection(ATCC)等より入手できる。
又、任意には、筋芽細胞を実験動物又は患者より摘出し培養した細胞を用いることもできる。例えば、生検で摘出した筋肉をトリプシン−EDTA処理し、初代培養物を作成し、10% FBS、2mM L−グルタミン、及び抗生物質を添加したDMEM(ダルベッコ変法のイーグル培地)増殖培地で培養し、抗ミオシン重鎖モノクローナル抗体と抗5.1.H11抗体両者を用い、フローサイトメトリーで筋芽細胞を分離することができる(Ann.Transplant(1999);4:103−108)。又、例えば、The Journal of Cell Biology(1994);125:1275−1287に記載の方法、又はCirculation(2000);102(19 Suppl.3):III210−215.に記載の方法などを利用することもできる。
2.[小胞体ストレス]
小胞体ストレスを与える手段としては、公知の種々の手段、例えば、熱ショック、または、例えば、小胞体ストレス誘導剤に筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を曝すことにより可能である。好適には、小胞体特異的にストレスを与える手段、具体的には、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いることができる。更に、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された増殖培地又は分化培地で短時間培養した後、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化誘導培地中に置き、その分化誘導培地から分離した上清(馴化培地)を用いて、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した場合と同等のアポトーシス促進効果、筋繊維形成促進効果を得る事ができる。
3.[小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤]
本願発明で用いる小胞体ストレス誘導剤としては、種々の小胞体にストレスを与える薬剤が含まれる。好適には、小胞体に特異的にストレスを与える小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いることができる。例えば、小胞体に特異的に発現している酵素の阻害剤、小胞体に特異的な機構の阻害剤も含まれる。例えば、小胞体におけるN−グリコシル化を阻害する薬剤、具体的には、ツニカマイシン若しくはコリネトキシン、グリコシダーゼの阻害剤、具体的にはカスタノスペルミン、マンノシダーゼの阻害剤、具体的にはキフネンシン(kifunensine)若しくはデオキシマンノジリマイシン,小胞体特異的Ca++ATPaseの阻害剤、具体的には、タプシガルジン(thapsigargin)、又はリアノジン受容体の阻害剤、具体的にはダントロレンを挙げることができる。以下小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤について説明するが、他の小胞体ストレス誘導剤についても、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化を促進できる限り、同様にして用いることができる。
小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いて、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレスに曝す手段としては、上記小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を培地に加える、又は小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を加えた培地で前処理した後の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を分化培地中で培養して得られる培養上清を馴化培地として用いることができる。小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を培地に加える場合の濃度は、例えば、24時間後に約半数の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞がアポトーシスを起こして死滅する程度の濃度を基準として濃度設定することができる。例えば、ツニカマイシンの場合は最終濃度が0.01〜1、000μg/ml、好適には、0.5〜10μg/ml、タプシガルジンの場合は最終濃度が0.01〜1、000μM、好適には、0.5〜10μMとなるように添加することができる。
筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレスに曝す時間としては、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に小胞体にストレスが生じて種々の細胞防衛反応(小胞体ストレス応答)は起こるが、しかしアポトーシスを開始するには至らない程度で十分である。例えば、上記薬剤を増殖培地に添加した場合は、上記濃度で0.5〜48時間程度、好適には、1〜6時間程度筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤添加培地で培養することにより達成することができる。
小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を増殖培地に添加して用いた場合は、小胞体ストレスに曝した後、培地を除き、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化誘導培地を添加する。小胞体特異的小胞体ストレス前処理は増殖培地を用いなくともよく、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を通常の増殖培地から分化培地に移す際に、分化培地に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を添加して、0.1〜24時間、好適には、0.5〜3時間程度培養する事も可能である。分化誘導培地としては、従来から知られる標準的な筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞用分化誘導培地を用いることができる。哺乳動物の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化であれば、例えば、DMEMに2%ウマ血清(インビトロジェン)を添加した培地を用いることができる。この時、例えば1μg/mlのインスリン(シグマアルドリッチ)をさらに添加してもよい。
4.[分化誘導]
小胞体特異的小胞体ストレスに曝した後、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞は分化誘導培地で4又は5日間以上、好適には、1週間以上培養を続けることで筋管から筋繊維に分化させることができる。任意には、分化誘導培地での培養を更に3週間以上続けることができる。分化誘導培地としては、例えば、例えば、DMEM(50単位/mlのペニシリン(インビトロジェン)及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を添加したもの)にウマ血清(インビトロジェン)を0〜5%または牛血清(インビトロジェン)(または牛胎児血清(インビトロジェン))を0〜2%添加した培地など、増殖因子の濃度が標準的な増殖培地より低いものを用いることができる。この時、例えば0.1〜10μg/mlのインスリン(インビトロジェン)または0.055〜5.5μg/mlのトランスフェリン(インビトロジェン)を加えてもよい。
5.[馴化培地(条件培地:調整培地)]
上記小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された培地で短時間前処理した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化培地で培養した培地又は培養物から分離した上清を馴化培地として用いて小胞体特異的に小胞体ストレスを筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に与えることができる。
又は、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を分化培地に移した後に同培地中で小胞体特異的小胞体ストレスを短時間与え、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含む分化培地、及びその後の培養に用いる小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化培地によって生成される馴化培地を用いてもよい。
より具体的には、例えば、増殖培地中で増殖中の細胞に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を加えた増殖培地中で筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を1〜6時間前処理し、その後、分化誘導培地(誘導剤を含まない)に代えて6〜48時間、好適には12時間〜36時間、更に好適には24時間培養を継続させて分化させた分化誘導培地の培地又はその上清を、馴化培地として用いることができる。好適には、使用した培地を回収し、低速で遠心して(2,000rpm,20分間)大きな不純物等を除いて調製することができる。
馴化培地を用いた筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の前処理は、例えば、0.5〜48時間、好適には、12〜36時間処理することができる。馴化培地での前処理後、通常の分化培地に代えて培養を続けることで、筋繊維への分化を誘導することができる。
なお、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的ストレス誘導剤による前処理後、最初に分化誘導培地に交換し24時間培養して得られた馴化培地を用いて小胞体特異的ストレスを与えることが好適であるが、前処理後分化誘導培地に2回目の交換後の分化誘導培地での培養により得られた馴化培地、それ以降の培地交換により得られた馴化培地を上記と同様に利用することも可能である。
6.[培養キット]
本願発明には、次の筋繊維培養キットを包含している。
(1)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化キット
(イ)株化した筋芽細胞若しくは筋芽細胞様細胞又は筋芽細胞の初代培養、(ロ)小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤、及び(ハ)分化誘導培地からなる、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞から筋繊維を分化できるキット。
なお、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤及び分化誘導培地は、上述した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞、誘導剤及び培地を用いる。
具体的には、株化した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞としては、マウスC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5、ラットF−12、ラットL6、ラットH9C2、等、又はヒト横紋筋肉腫由来細胞RD等が挙げられ、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤としては、例えば、ツニカマイシン又はタプシガルジンが挙げられる。
(2)筋繊維培養キット
(イ)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体ストレスに曝すことにより分化して発生した筋繊維細胞、及び(ロ)分化誘導培地からなるキット。
7.[スクリーニング方法]
本願発明のキットは、筋繊維に作用する薬剤のスクリーニング及び筋繊維を利用した遺伝子発現に用いることができる。
本願発明のキット及びスクリーニング方法は、1)筋再生モデルとして、運動負荷や加齢による筋壊死、筋破壊に対する予防、治療法開発に利用することができる。又さらに、2)筋組織が体内での主要な糖消費組織であることから、形成された筋繊維を糖尿病の病態研究や予防薬、治療薬のスクリーニング、試験に用いることができる。
(1)運動負荷や加齢による筋壊死、筋破壊の予防、治療剤候補のスクリーニング。
(1−1)試験する化合物又は試薬を筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に投与し、本発明の方法で筋繊維を形成させ、(イ)筋繊維形成のスピードを速める化合物又は試薬、若しくは(ロ)形成効率をさらに上げる化合物又は試薬、又は(ハ)本発明の方法によって形成された筋繊維に対し試験する化合物又は試薬を筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に投与し、筋繊維を長もち(長生き)させる化合物又は試薬を、筋壊死又は筋破壊に対する予防又は治療のための薬剤候補としてスクリーニングをすることができる。探索された予防又は治療薬候補薬剤は、実際に運動負荷や筋破壊に対して予防、治療効果があるかどうかは実験動物やヒトの治験によって確かめることができる。本発明のスクリーニング方法によれば、筋繊維に直接影響を及ぼす薬剤候補に絞って探索が可能である。
(1−2) 本願発明の方法で形成された筋繊維にたとえば乳酸を注入することで運動負荷の一側面を再現する事ができる。そこで、本願発明の筋繊維に乳酸を注入した後、筋繊維に対し筋壊死又は筋破壊の予防又は治療剤候補のスクリーニング対象となる試薬又は化合物を投与し、筋繊維に対し筋壊死を防止する薬剤を、筋壊死又は筋破壊の予防又は治療剤候補として選択することができる。
(2)筋組織は生体内で最も糖の取り込み量が多く、糖の利用、貯蔵の場として重要で、血中の糖濃度を左右している。そこで、形成された筋繊維は、筋細胞による糖の取り込みと代謝をコントロールする仕組みを研究する材料として、さらに糖取り込み、代謝を人為的にコントロールできる薬剤のスクリーニングの試験系として用いることができる。
具体的には、本発明の方法で形成された筋繊維に対してスクリーニング対象となる試薬又は化合物を投与し、筋繊維における糖の取り込み又は糖の代謝を測定し、筋細胞への糖取り込み、代謝を阻害又は活性化する薬剤候補を選抜することができる。
8.[形質転換筋繊維]
外来遺伝子を導入した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞から試験管内で分化誘導し筋繊維を形成させることができる。形質転換筋繊維は、生体内に移植して筋組織に同化させる事により、安定な遺伝子発現、遺伝子治療のベクターとして利用する事ができる。
より具体的には、目的とする遺伝子をコードしたcDNA又は該cDNAで組み換えた組み換え発現ベクターを筋芽培養細胞に導入し、本発明の方法で筋繊維を形成させ、これを生体内に移植して筋組織に同化させる事によって任意の遺伝子発現を継続的に筋組織で行わせる事が、形質転換筋芽細胞と同様に可能である(Vandenburgh,H.et al.,1996,Tissue−engineered skeletal muscle organoids for reversible gene therapy.Hum.Gen.Ther.7,2195−2200)。従来のように形質転換した筋芽細胞を用いて移植すると、腫瘍を形成する危険性が高まるが、本発明のように、既に分化させた形質転換筋繊維を用いることにより、このような危険性を避けることができる。
筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に導入する遺伝子の種類としては筋組織において機能するタンパク質をコードするものでもよいし、他の組織で機能するタンパク質をコードする遺伝子でもよい。例えば、筋組織では血管系が発達しているので、分泌性のタンパク質を発現させると、血流によって全身性の効果が得ることができる。
以下の実施例で用いる試薬・抗体について:ツニカマイシン、タプシガルジン、スタウロスポリンとエトポシドは、Calbiochemから購入した。組換え型のIGF−IIは、GroPepから入手した。抗カスパーゼ−12は(Nakagawa,et al.(2000)Nature 403,98−103)による。抗IGF−IIはR&D Systemsから、抗カテプシンBはUpstate Biotechnologyから、抗Bcl−xLはTransduction Laboratoriesから入手した。
本願発明者は、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を、分化誘導培地で培養前又は培養開始直後に、小胞体(ER)ストレスに曝すことにより、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が細胞融合を起こし多核体の筋繊維を形成し筋収縮現象を起こすことを見出して本願発明を完成させたものである。本願発明者は試験管内の筋芽細胞培養系及びマウス胎児の筋組織における筋分化過程においてERストレスの発生を検出し、そのストレスによって分化の初期にはアポトーシスが誘起される事を見い出した。培養系の筋分化においては従来、培地の血清濃度を下げることによって分化を誘導していたが、その操作に加えてERストレスを細胞に与える事で筋繊維形成を上昇させる可能性に着目し、本願発明を完成させるに至った。
本願発明には、筋芽細胞を分化誘導培地で分化処理をする前又は培養開始直後に、筋芽細胞を小胞体ストレスに曝す前処理をした後、分化誘導培地で培養することにより筋繊維に分化させる方法及び得られた筋繊維を包含する。
小胞体(ER)では、リボソームで合成された蛋白質が、例えば、糖鎖修飾、ジスルフィド結合形成などを経て、正しく折り畳まれた立体構造をとり、その後、ゴルジ体へと移送される。しかしながら、タンパク質の突然変異や修飾異常によって正しい折り込みがなされない蛋白質は、小胞体内に蓄積し、この蓄積が過度な場合は、小胞体にストレスを起こし、カスパーゼ12が関与するアポトーシス(細胞死)が引き起こされると言われている。
従来法による株化筋芽細胞からの分化においては、ミオサイトまでは分化しても、ミオサイトからの細胞融合による筋管細胞の形成及びそれに続く筋繊維の形成が十分ではないために、筋収縮を起こすことができなかった。
本発明者は、細胞死を起こすような小胞体ストレスを一過的に分化誘導前又は分化誘導培養開始直後の筋芽細胞に与えることにより、分化過程初期のアポトーシスを昂進させてストレスに弱い細胞を人工的に除去し、より強い優れた細胞を選抜することで、筋芽細胞の分化を非常に効率的に行えることをはじめて見出したものである。小胞体ストレスを一過的に分化誘導前又は分化誘導開始時の筋芽細胞に与えることが筋芽細胞から分化して生じるミオサイトが細胞融合を起こし筋管細胞、さらには筋繊維を形成する段階に非常に大きな影響を与えていると考えられる。
1.[筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞]
本願発明で用いる筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞としては、種々の動物、例えば鳥類又は哺乳動物由来の初代培養筋芽細胞及び樹立化された筋芽細胞を用いることができる。例えば、ニワトリ、ヒト、サル、ラット、マウス、ブタ、又はウシ等に由来する初代培養筋芽細胞及び樹立化された筋芽細胞または筋芽細胞様細胞を用いることができる。樹立された株化筋芽細胞または株化筋芽細胞様細胞としては、正常筋肉組織から樹立されたものもあれば、横紋筋肉腫などの腫瘍細胞から樹立されたものも用いることができ、具体的には、マウスから樹立化されたC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5,ラットF−12、ラットL6、ヒトRD(株化筋芽細胞様細胞の例。例えば、ATCCのカタログ記載の細胞CCL−136)等が挙げられ、これらは理化学研究所バイオリソースセンター、米国 American Type Culture Collection(ATCC)等より入手できる。
又、任意には、筋芽細胞を実験動物又は患者より摘出し培養した細胞を用いることもできる。例えば、生検で摘出した筋肉をトリプシン−EDTA処理し、初代培養物を作成し、10% FBS、2mM L−グルタミン、及び抗生物質を添加したDMEM(ダルベッコ変法のイーグル培地)増殖培地で培養し、抗ミオシン重鎖モノクローナル抗体と抗5.1.H11抗体両者を用い、フローサイトメトリーで筋芽細胞を分離することができる(Ann.Transplant(1999);4:103−108)。又、例えば、The Journal of Cell Biology(1994);125:1275−1287に記載の方法、又はCirculation(2000);102(19 Suppl.3):III210−215.に記載の方法などを利用することもできる。
2.[小胞体ストレス]
小胞体ストレスを与える手段としては、公知の種々の手段、例えば、熱ショック、または、例えば、小胞体ストレス誘導剤に筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を曝すことにより可能である。好適には、小胞体特異的にストレスを与える手段、具体的には、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いることができる。更に、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された増殖培地又は分化培地で短時間培養した後、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化誘導培地中に置き、その分化誘導培地から分離した上清(馴化培地)を用いて、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した場合と同等のアポトーシス促進効果、筋繊維形成促進効果を得る事ができる。
3.[小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤]
本願発明で用いる小胞体ストレス誘導剤としては、種々の小胞体にストレスを与える薬剤が含まれる。好適には、小胞体に特異的にストレスを与える小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いることができる。例えば、小胞体に特異的に発現している酵素の阻害剤、小胞体に特異的な機構の阻害剤も含まれる。例えば、小胞体におけるN−グリコシル化を阻害する薬剤、具体的には、ツニカマイシン若しくはコリネトキシン、グリコシダーゼの阻害剤、具体的にはカスタノスペルミン、マンノシダーゼの阻害剤、具体的にはキフネンシン(kifunensine)若しくはデオキシマンノジリマイシン,小胞体特異的Ca++ATPaseの阻害剤、具体的には、タプシガルジン(thapsigargin)、又はリアノジン受容体の阻害剤、具体的にはダントロレンを挙げることができる。以下小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤について説明するが、他の小胞体ストレス誘導剤についても、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化を促進できる限り、同様にして用いることができる。
小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を用いて、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレスに曝す手段としては、上記小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を培地に加える、又は小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を加えた培地で前処理した後の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を分化培地中で培養して得られる培養上清を馴化培地として用いることができる。小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を培地に加える場合の濃度は、例えば、24時間後に約半数の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞がアポトーシスを起こして死滅する程度の濃度を基準として濃度設定することができる。例えば、ツニカマイシンの場合は最終濃度が0.01〜1、000μg/ml、好適には、0.5〜10μg/ml、タプシガルジンの場合は最終濃度が0.01〜1、000μM、好適には、0.5〜10μMとなるように添加することができる。
筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレスに曝す時間としては、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に小胞体にストレスが生じて種々の細胞防衛反応(小胞体ストレス応答)は起こるが、しかしアポトーシスを開始するには至らない程度で十分である。例えば、上記薬剤を増殖培地に添加した場合は、上記濃度で0.5〜48時間程度、好適には、1〜6時間程度筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤添加培地で培養することにより達成することができる。
小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を増殖培地に添加して用いた場合は、小胞体ストレスに曝した後、培地を除き、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化誘導培地を添加する。小胞体特異的小胞体ストレス前処理は増殖培地を用いなくともよく、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を通常の増殖培地から分化培地に移す際に、分化培地に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を添加して、0.1〜24時間、好適には、0.5〜3時間程度培養する事も可能である。分化誘導培地としては、従来から知られる標準的な筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞用分化誘導培地を用いることができる。哺乳動物の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化であれば、例えば、DMEMに2%ウマ血清(インビトロジェン)を添加した培地を用いることができる。この時、例えば1μg/mlのインスリン(シグマアルドリッチ)をさらに添加してもよい。
4.[分化誘導]
小胞体特異的小胞体ストレスに曝した後、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞は分化誘導培地で4又は5日間以上、好適には、1週間以上培養を続けることで筋管から筋繊維に分化させることができる。任意には、分化誘導培地での培養を更に3週間以上続けることができる。分化誘導培地としては、例えば、例えば、DMEM(50単位/mlのペニシリン(インビトロジェン)及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を添加したもの)にウマ血清(インビトロジェン)を0〜5%または牛血清(インビトロジェン)(または牛胎児血清(インビトロジェン))を0〜2%添加した培地など、増殖因子の濃度が標準的な増殖培地より低いものを用いることができる。この時、例えば0.1〜10μg/mlのインスリン(インビトロジェン)または0.055〜5.5μg/mlのトランスフェリン(インビトロジェン)を加えてもよい。
5.[馴化培地(条件培地:調整培地)]
上記小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された培地で短時間前処理した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化培地で培養した培地又は培養物から分離した上清を馴化培地として用いて小胞体特異的に小胞体ストレスを筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に与えることができる。
又は、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を分化培地に移した後に同培地中で小胞体特異的小胞体ストレスを短時間与え、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含む分化培地、及びその後の培養に用いる小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含まない分化培地によって生成される馴化培地を用いてもよい。
より具体的には、例えば、増殖培地中で増殖中の細胞に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を加えた増殖培地中で筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を1〜6時間前処理し、その後、分化誘導培地(誘導剤を含まない)に代えて6〜48時間、好適には12時間〜36時間、更に好適には24時間培養を継続させて分化させた分化誘導培地の培地又はその上清を、馴化培地として用いることができる。好適には、使用した培地を回収し、低速で遠心して(2,000rpm,20分間)大きな不純物等を除いて調製することができる。
馴化培地を用いた筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の前処理は、例えば、0.5〜48時間、好適には、12〜36時間処理することができる。馴化培地での前処理後、通常の分化培地に代えて培養を続けることで、筋繊維への分化を誘導することができる。
なお、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的ストレス誘導剤による前処理後、最初に分化誘導培地に交換し24時間培養して得られた馴化培地を用いて小胞体特異的ストレスを与えることが好適であるが、前処理後分化誘導培地に2回目の交換後の分化誘導培地での培養により得られた馴化培地、それ以降の培地交換により得られた馴化培地を上記と同様に利用することも可能である。
6.[培養キット]
本願発明には、次の筋繊維培養キットを包含している。
(1)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化キット
(イ)株化した筋芽細胞若しくは筋芽細胞様細胞又は筋芽細胞の初代培養、(ロ)小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤、及び(ハ)分化誘導培地からなる、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞から筋繊維を分化できるキット。
なお、筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤及び分化誘導培地は、上述した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞、誘導剤及び培地を用いる。
具体的には、株化した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞としては、マウスC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5、ラットF−12、ラットL6、ラットH9C2、等、又はヒト横紋筋肉腫由来細胞RD等が挙げられ、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤としては、例えば、ツニカマイシン又はタプシガルジンが挙げられる。
(2)筋繊維培養キット
(イ)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体ストレスに曝すことにより分化して発生した筋繊維細胞、及び(ロ)分化誘導培地からなるキット。
7.[スクリーニング方法]
本願発明のキットは、筋繊維に作用する薬剤のスクリーニング及び筋繊維を利用した遺伝子発現に用いることができる。
本願発明のキット及びスクリーニング方法は、1)筋再生モデルとして、運動負荷や加齢による筋壊死、筋破壊に対する予防、治療法開発に利用することができる。又さらに、2)筋組織が体内での主要な糖消費組織であることから、形成された筋繊維を糖尿病の病態研究や予防薬、治療薬のスクリーニング、試験に用いることができる。
(1)運動負荷や加齢による筋壊死、筋破壊の予防、治療剤候補のスクリーニング。
(1−1)試験する化合物又は試薬を筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に投与し、本発明の方法で筋繊維を形成させ、(イ)筋繊維形成のスピードを速める化合物又は試薬、若しくは(ロ)形成効率をさらに上げる化合物又は試薬、又は(ハ)本発明の方法によって形成された筋繊維に対し試験する化合物又は試薬を筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に投与し、筋繊維を長もち(長生き)させる化合物又は試薬を、筋壊死又は筋破壊に対する予防又は治療のための薬剤候補としてスクリーニングをすることができる。探索された予防又は治療薬候補薬剤は、実際に運動負荷や筋破壊に対して予防、治療効果があるかどうかは実験動物やヒトの治験によって確かめることができる。本発明のスクリーニング方法によれば、筋繊維に直接影響を及ぼす薬剤候補に絞って探索が可能である。
(1−2) 本願発明の方法で形成された筋繊維にたとえば乳酸を注入することで運動負荷の一側面を再現する事ができる。そこで、本願発明の筋繊維に乳酸を注入した後、筋繊維に対し筋壊死又は筋破壊の予防又は治療剤候補のスクリーニング対象となる試薬又は化合物を投与し、筋繊維に対し筋壊死を防止する薬剤を、筋壊死又は筋破壊の予防又は治療剤候補として選択することができる。
(2)筋組織は生体内で最も糖の取り込み量が多く、糖の利用、貯蔵の場として重要で、血中の糖濃度を左右している。そこで、形成された筋繊維は、筋細胞による糖の取り込みと代謝をコントロールする仕組みを研究する材料として、さらに糖取り込み、代謝を人為的にコントロールできる薬剤のスクリーニングの試験系として用いることができる。
具体的には、本発明の方法で形成された筋繊維に対してスクリーニング対象となる試薬又は化合物を投与し、筋繊維における糖の取り込み又は糖の代謝を測定し、筋細胞への糖取り込み、代謝を阻害又は活性化する薬剤候補を選抜することができる。
8.[形質転換筋繊維]
外来遺伝子を導入した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞から試験管内で分化誘導し筋繊維を形成させることができる。形質転換筋繊維は、生体内に移植して筋組織に同化させる事により、安定な遺伝子発現、遺伝子治療のベクターとして利用する事ができる。
より具体的には、目的とする遺伝子をコードしたcDNA又は該cDNAで組み換えた組み換え発現ベクターを筋芽培養細胞に導入し、本発明の方法で筋繊維を形成させ、これを生体内に移植して筋組織に同化させる事によって任意の遺伝子発現を継続的に筋組織で行わせる事が、形質転換筋芽細胞と同様に可能である(Vandenburgh,H.et al.,1996,Tissue−engineered skeletal muscle organoids for reversible gene therapy.Hum.Gen.Ther.7,2195−2200)。従来のように形質転換した筋芽細胞を用いて移植すると、腫瘍を形成する危険性が高まるが、本発明のように、既に分化させた形質転換筋繊維を用いることにより、このような危険性を避けることができる。
筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞に導入する遺伝子の種類としては筋組織において機能するタンパク質をコードするものでもよいし、他の組織で機能するタンパク質をコードする遺伝子でもよい。例えば、筋組織では血管系が発達しているので、分泌性のタンパク質を発現させると、血流によって全身性の効果が得ることができる。
以下の実施例で用いる試薬・抗体について:ツニカマイシン、タプシガルジン、スタウロスポリンとエトポシドは、Calbiochemから購入した。組換え型のIGF−IIは、GroPepから入手した。抗カスパーゼ−12は(Nakagawa,et al.(2000)Nature 403,98−103)による。抗IGF−IIはR&D Systemsから、抗カテプシンBはUpstate Biotechnologyから、抗Bcl−xLはTransduction Laboratoriesから入手した。
小胞体ストレス誘導剤によるC2C12の前処理の影響
C2C12細胞(RIKEN Cell Bank)はゼラチン・コートのプレートに播いた。10%(v/v)ウシ胎児血清(シグマアルドリッチ)、50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を添加したDMEM(インビトロゲン)を用い、5%のCO2存在下、37℃で培養を行った。C2C12細胞がほぼコンフレントまで増殖した時点で、培地をフレッシュなDMEMに交換した。そして、培地に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシン(Calbiochemより購入)又はタプシガルジン(Calbiochemより購入)をそれぞれ最終濃度がツニカマイシン(2μg/ml)又はタプシガルジン(1μM)となるように加えた。なおコントロールの培地には、いずれの小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤も添加しなかった。小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤添加培地で、1時間培養後、培地を、分化誘導培地に交換した。分化誘導培地は2%のウマ血清(インビトロゲン)及び1μg/mlのインスリン(シグマアルドリッチ)が添加されたDMEM(50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を含む)からなる。分化誘導培地は、24時間の間隔で新しい培地と交換した。
なお、以下の実施例2−3でも上記と同じ前処理をしている。
(1) ツニカマイシン又はタプシガルジン前処理後、培地を分化誘導培地に代えて1日後、2日後、3日後のアポトーシス率は次の通りである。
図1に見られるように、アポトーシスを起こした細胞は細胞体積が大幅に減少し、丸く小さい細胞になり、培養プレートへの接着が悪くなる。丸く接着性の低い細胞は増殖培地中でも少数見られるがこれらは分裂期にある細胞であり、アポトーシス細胞ではない。上記に示されるように、ツニカマイシン又はタプシガルジン前処理後、分化誘導培地に代えて第1日目と第2日目にそれぞれ、培養プレート中のC2C12細胞の約40パーセントと20パーセントがアポトーシスを起こした。このアポトーシス誘導の割合は、分化培地中のコントロール細胞に見られるアポトーシス(1日目、15%、2日目、10%未満)より2−3倍高い。
(2) また、分化誘導培地で、約2週間培養したところ、筋繊維の長さ及び幅、並びに収縮している筋繊維数(3.5cmディッシュあたり)は以下の通りである。
更にその写真を図3に示す。
前処理された筋管のサイズは約2週間増加した。その間細胞融合が起こっており、最終的に長さ1−3mmと幅0.2−0.5mm程度までになる。これは生体内の筋繊維と同程度の大きさであり、一方、コントロール細胞に比べて10倍以上の大きさである。これら前処理を行った筋管細胞は分化誘導培地に代えて第7日目に(約1−2サイクル/秒)で自発的に収縮し始めた。このことから、これらの細胞が筋原繊維を含み、機能的な筋繊維(myofiber)であったことが分かる。3.5cmのディッシュで50以上の筋繊維が再現性よく形成された、そして、それらのほとんどは分化培地中で25日間、収縮を続けた。一方、コントロール細胞はディッシュ1枚当たり2、3の筋繊維を形成し、分化誘導培地に代えて第9日目頃収縮を始めた。しかし、それは分化誘導培地に代えて第15日目には収縮を停止した。
(3)インスリン様成長因子II(IGF−II)の発現
C2C12筋芽細胞を分化誘導培地へ移し替えた後、1時間以内にインスリン様成長因子II(IGF−II)の誘導が検出されている。インスリン様成長因子II(IGF−II)は、IGF−Iレセプターに結合するオートクライン生存因子として作用し、増殖から分化への移行期間に、Aktに依存する抗アポトーシスの経路を間接的に活性化させている(Stewart及びRotwein J.Biol.Chem.Vol.271,pp.11330−11338;Lawlor及び、Rotwein J.Cell Biol.Vol.151,pp.1131−1141)。
細胞から培地中に分泌されるIGF−IIの量的変動について調べるため、細胞を分化誘導培地へ移してから毎日、コントロールの分化培養から調製される馴化培地(conditioned medium、以下CCMと略す。)及びツニカマイシン前処理をした後、分化誘導培地に移した培養物からの上清である馴化培地(以下TUNCMと略す。)又はタプシガルジン前処理をした後、分化誘導培地に移した培養物からの上清である馴化培地(以下TGCMと略す。)を採取し、一定量ずつ分取してSDS−PAGEサンプルバッファーによって処理した。処理済みの培地をSDS−PAGE及びウエスタンブロット法により分析し、培地に含まれるIGF−IIを検出した。常法により作製したウエスタンブロットは抗IGF−II抗体(R & D Systems)、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートし、IGF−IIのシグナルをECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
コントロールの分化培養物から調製される馴化培地(CCM)中のIGF−IIが分化誘導培地に代えて第2日目でウエスタンブロット法で検出可能なレベルに達したにもかかわらず、ツニカマイシン前処理をした培養物からの馴化培地(TUNCM)又はタプシガルジン前処理をした培養物からの馴化培地(TGCM)のIGF−IIは前処理後、分化誘導培地に代えて第4日目以降に検出された(図4)。この結果は、ツニカマイシン、又はタプシガルジン前処理の影響で分化初期におけるオートクリン生存因子が低下し、アポトーシスが促進された事を示唆している。これは以下の観察によって支持されている。図5に示されるように、組換え型のIGF−IIを培地に添加して生存因子の濃度を高めることで、小胞体ストレス誘導前処理の有無に関わらず、ほぼ完全に、分化中のC2C12細胞のアポトーシスを抑制する事ができた。
IGF−IIは生存因子として作用するのみならずオートクリン分化因子としても作用するので(Floriniその他、J.Biol.Chem.Vol.266,pp.15917−15923)、後で示すようにIGF−IIの低下は筋肉に特異的なタンパク質の誘導の遅れにもつながる。(実施例2参照。)
(4) 小胞体ストレス前処理による細胞外IGF−IIのレベル変動の機構:プロカテプシンBの量
細胞外のIGF−IIのレベルは、IGF−II/Man−6P(マンノース−6−リン酸)レセプターによって、細胞内に取り込まれ分解されることで調節される。IGF−II/Man−6Pの本来のリガンドはMan−6−P修飾を受けた、例えばプロカテプシンB(Hanewinkelその他、J.Biol.Chem.Vol.262,pp.12351−12355)である。Man−6−P修飾タンパク質の量的変動がIGF−IIの分解効率に影響する事が予想された。
細胞を分化誘導培地へ移してから毎日、コントロールの培養物から調製される馴化培地(CCM)及びツニカマイシン前処理をした後、分化誘導培地に移された培養物からの上清である馴化培地(TUNCM)又はタプシガルジン前処理をした後、分化誘導培地に移された培養物からの上清である馴化培地(TGCM)を採取し、プロカテプシンBの量的変動について検討した。各々一定量の馴化培地をSDS−PAGEとウエスタンブロット法により解析した。ウエスタンブロットは抗カテプシンB抗体(Upstate Biotechnology)、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。プロカテプシンのシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
結果、コントロールの馴化培地(CCM)中では第1日目から第3日目まで一定のレベルでMan−6P修飾プロカテプシンBが検出されたにもかかわらず、前処理された培養ではMan−6P修飾型が分化誘導培地に代えて第1日目において非常に減少していることがわかった(図6)。TGCMの場合はプロカテプシンBがほとんど検出されず、TUNCMではMan−6−P修飾されていない非グリコシル化型プロカテプシンBだけが検出された。
この結果はプロカテプシンBをはじめとする細胞外のMan−6P修飾タンパク質が小胞体ストレス前処理の影響で減少している事を示唆し、Man−6−Pタンパク質の代わりにIGF−IIがIGF−II/Man−6Pレセプターにより結合しやすくなり、分解されやすくなっている事が考えられる。
(5)馴化培地(conditioned medium)の利用
アポトーシス及び筋繊維形成促進効果は小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を細胞に対して直接用いなくても得る事が可能である。C2C12筋芽細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で1時間、前処理した後、分化誘導培地に移して培養を続けた。分化誘導培地は24時間ごとに回収して新しい分化誘導培地と交換した。回収した培地は20分間、2000rpmで遠心し、細胞隗や死細胞、及び沈殿物を除き、上清を得てこれを馴化培地とした(上に記載のTUNCM及びTGCM)。これとは別に用意したC2C12細胞をサブコンフルエントまで増殖させ、TUNCMまたはTGCMで24時間前処理した。その後、フレッシュな分化誘導培地に移して培養を続けた。このように小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した細胞を用いて調製した馴化培地による前処理を加える事により、増殖培地から直接、分化培地に移す通常の分化誘導法に比べて、アポトーシス及び筋繊維形成の促進が見られた。その程度は小胞体待異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した細胞の場合と同様のレベルに達した(図7)。TUNCMやTGCMの代わりにCCMで前処理した場合にはこのような促進効果は見られなかった。
C2C12細胞(RIKEN Cell Bank)はゼラチン・コートのプレートに播いた。10%(v/v)ウシ胎児血清(シグマアルドリッチ)、50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を添加したDMEM(インビトロゲン)を用い、5%のCO2存在下、37℃で培養を行った。C2C12細胞がほぼコンフレントまで増殖した時点で、培地をフレッシュなDMEMに交換した。そして、培地に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤であるツニカマイシン(Calbiochemより購入)又はタプシガルジン(Calbiochemより購入)をそれぞれ最終濃度がツニカマイシン(2μg/ml)又はタプシガルジン(1μM)となるように加えた。なおコントロールの培地には、いずれの小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤も添加しなかった。小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤添加培地で、1時間培養後、培地を、分化誘導培地に交換した。分化誘導培地は2%のウマ血清(インビトロゲン)及び1μg/mlのインスリン(シグマアルドリッチ)が添加されたDMEM(50単位/mlのペニシリン及び50μg/mlのストレプトマイシン(インビトロジェン)を含む)からなる。分化誘導培地は、24時間の間隔で新しい培地と交換した。
なお、以下の実施例2−3でも上記と同じ前処理をしている。
(1) ツニカマイシン又はタプシガルジン前処理後、培地を分化誘導培地に代えて1日後、2日後、3日後のアポトーシス率は次の通りである。
(2) また、分化誘導培地で、約2週間培養したところ、筋繊維の長さ及び幅、並びに収縮している筋繊維数(3.5cmディッシュあたり)は以下の通りである。
前処理された筋管のサイズは約2週間増加した。その間細胞融合が起こっており、最終的に長さ1−3mmと幅0.2−0.5mm程度までになる。これは生体内の筋繊維と同程度の大きさであり、一方、コントロール細胞に比べて10倍以上の大きさである。これら前処理を行った筋管細胞は分化誘導培地に代えて第7日目に(約1−2サイクル/秒)で自発的に収縮し始めた。このことから、これらの細胞が筋原繊維を含み、機能的な筋繊維(myofiber)であったことが分かる。3.5cmのディッシュで50以上の筋繊維が再現性よく形成された、そして、それらのほとんどは分化培地中で25日間、収縮を続けた。一方、コントロール細胞はディッシュ1枚当たり2、3の筋繊維を形成し、分化誘導培地に代えて第9日目頃収縮を始めた。しかし、それは分化誘導培地に代えて第15日目には収縮を停止した。
(3)インスリン様成長因子II(IGF−II)の発現
C2C12筋芽細胞を分化誘導培地へ移し替えた後、1時間以内にインスリン様成長因子II(IGF−II)の誘導が検出されている。インスリン様成長因子II(IGF−II)は、IGF−Iレセプターに結合するオートクライン生存因子として作用し、増殖から分化への移行期間に、Aktに依存する抗アポトーシスの経路を間接的に活性化させている(Stewart及びRotwein J.Biol.Chem.Vol.271,pp.11330−11338;Lawlor及び、Rotwein J.Cell Biol.Vol.151,pp.1131−1141)。
細胞から培地中に分泌されるIGF−IIの量的変動について調べるため、細胞を分化誘導培地へ移してから毎日、コントロールの分化培養から調製される馴化培地(conditioned medium、以下CCMと略す。)及びツニカマイシン前処理をした後、分化誘導培地に移した培養物からの上清である馴化培地(以下TUNCMと略す。)又はタプシガルジン前処理をした後、分化誘導培地に移した培養物からの上清である馴化培地(以下TGCMと略す。)を採取し、一定量ずつ分取してSDS−PAGEサンプルバッファーによって処理した。処理済みの培地をSDS−PAGE及びウエスタンブロット法により分析し、培地に含まれるIGF−IIを検出した。常法により作製したウエスタンブロットは抗IGF−II抗体(R & D Systems)、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートし、IGF−IIのシグナルをECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
コントロールの分化培養物から調製される馴化培地(CCM)中のIGF−IIが分化誘導培地に代えて第2日目でウエスタンブロット法で検出可能なレベルに達したにもかかわらず、ツニカマイシン前処理をした培養物からの馴化培地(TUNCM)又はタプシガルジン前処理をした培養物からの馴化培地(TGCM)のIGF−IIは前処理後、分化誘導培地に代えて第4日目以降に検出された(図4)。この結果は、ツニカマイシン、又はタプシガルジン前処理の影響で分化初期におけるオートクリン生存因子が低下し、アポトーシスが促進された事を示唆している。これは以下の観察によって支持されている。図5に示されるように、組換え型のIGF−IIを培地に添加して生存因子の濃度を高めることで、小胞体ストレス誘導前処理の有無に関わらず、ほぼ完全に、分化中のC2C12細胞のアポトーシスを抑制する事ができた。
IGF−IIは生存因子として作用するのみならずオートクリン分化因子としても作用するので(Floriniその他、J.Biol.Chem.Vol.266,pp.15917−15923)、後で示すようにIGF−IIの低下は筋肉に特異的なタンパク質の誘導の遅れにもつながる。(実施例2参照。)
(4) 小胞体ストレス前処理による細胞外IGF−IIのレベル変動の機構:プロカテプシンBの量
細胞外のIGF−IIのレベルは、IGF−II/Man−6P(マンノース−6−リン酸)レセプターによって、細胞内に取り込まれ分解されることで調節される。IGF−II/Man−6Pの本来のリガンドはMan−6−P修飾を受けた、例えばプロカテプシンB(Hanewinkelその他、J.Biol.Chem.Vol.262,pp.12351−12355)である。Man−6−P修飾タンパク質の量的変動がIGF−IIの分解効率に影響する事が予想された。
細胞を分化誘導培地へ移してから毎日、コントロールの培養物から調製される馴化培地(CCM)及びツニカマイシン前処理をした後、分化誘導培地に移された培養物からの上清である馴化培地(TUNCM)又はタプシガルジン前処理をした後、分化誘導培地に移された培養物からの上清である馴化培地(TGCM)を採取し、プロカテプシンBの量的変動について検討した。各々一定量の馴化培地をSDS−PAGEとウエスタンブロット法により解析した。ウエスタンブロットは抗カテプシンB抗体(Upstate Biotechnology)、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。プロカテプシンのシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
結果、コントロールの馴化培地(CCM)中では第1日目から第3日目まで一定のレベルでMan−6P修飾プロカテプシンBが検出されたにもかかわらず、前処理された培養ではMan−6P修飾型が分化誘導培地に代えて第1日目において非常に減少していることがわかった(図6)。TGCMの場合はプロカテプシンBがほとんど検出されず、TUNCMではMan−6−P修飾されていない非グリコシル化型プロカテプシンBだけが検出された。
この結果はプロカテプシンBをはじめとする細胞外のMan−6P修飾タンパク質が小胞体ストレス前処理の影響で減少している事を示唆し、Man−6−Pタンパク質の代わりにIGF−IIがIGF−II/Man−6Pレセプターにより結合しやすくなり、分解されやすくなっている事が考えられる。
(5)馴化培地(conditioned medium)の利用
アポトーシス及び筋繊維形成促進効果は小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を細胞に対して直接用いなくても得る事が可能である。C2C12筋芽細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で1時間、前処理した後、分化誘導培地に移して培養を続けた。分化誘導培地は24時間ごとに回収して新しい分化誘導培地と交換した。回収した培地は20分間、2000rpmで遠心し、細胞隗や死細胞、及び沈殿物を除き、上清を得てこれを馴化培地とした(上に記載のTUNCM及びTGCM)。これとは別に用意したC2C12細胞をサブコンフルエントまで増殖させ、TUNCMまたはTGCMで24時間前処理した。その後、フレッシュな分化誘導培地に移して培養を続けた。このように小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した細胞を用いて調製した馴化培地による前処理を加える事により、増殖培地から直接、分化培地に移す通常の分化誘導法に比べて、アポトーシス及び筋繊維形成の促進が見られた。その程度は小胞体待異的小胞体ストレス誘導剤で前処理した細胞の場合と同様のレベルに達した(図7)。TUNCMやTGCMの代わりにCCMで前処理した場合にはこのような促進効果は見られなかった。
小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤によるカスパーゼ−12活性化の確認及びミオジェニンの発現確認
(1) ウェスタンブロット分析
実施例1と同様に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理後、分化誘導培地に代えて第1日目又は第2日目に、生きている又はアポトーシスを起こしたC2C12細胞をそれぞれ回収し、SDS−PAGEサンプル・バッファに溶解して細胞抽出液を作った。抽出液中のタンパク質は、SDS−PAGE(14%のアクリルアミド)で分離し、イモビロン−P膜(ミリポア、ベッドフォード、MA)に転写した。
ブロッキングの後、上記の膜を抗カスパーゼ−12抗体(Nakagawa,et al.(2000)Nature 403,98−103)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。カスパーゼ−12のシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
図2に示されるように、小胞体ストレス特異的アポトーシスを誘導するプロテアーゼであるカスパース12がアポトーシス細胞中で活性化しており、小胞体ストレスが生じた事を示している。
(2) ミオジェニンの発現
ミオジェニンは、筋肉特異的蛋白質である。
実施例1と同様に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理後、分化誘導培地に代えて第1日目から1日ごとに第10日目まで培養したC2C12細胞を調製し、上記(1)にあるようにしてウエスタンブロットを作製した(図10)。
ブロッキングの後、上記の膜を抗ミオジェニン抗体(Santa Cruz)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。ミオジェニンのシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
コントロール細胞では、第2日目からミオジェニンの発現が確認されたが、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理された細胞では第4日目ではじめてミオジェニンの発現が確認された。小胞体ストレス前処理によって分化誘導因子、IGF−IIの量が減少しており、分化過程の進行が遅くなる事と矛盾しない。
(1) ウェスタンブロット分析
実施例1と同様に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理後、分化誘導培地に代えて第1日目又は第2日目に、生きている又はアポトーシスを起こしたC2C12細胞をそれぞれ回収し、SDS−PAGEサンプル・バッファに溶解して細胞抽出液を作った。抽出液中のタンパク質は、SDS−PAGE(14%のアクリルアミド)で分離し、イモビロン−P膜(ミリポア、ベッドフォード、MA)に転写した。
ブロッキングの後、上記の膜を抗カスパーゼ−12抗体(Nakagawa,et al.(2000)Nature 403,98−103)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。カスパーゼ−12のシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
図2に示されるように、小胞体ストレス特異的アポトーシスを誘導するプロテアーゼであるカスパース12がアポトーシス細胞中で活性化しており、小胞体ストレスが生じた事を示している。
(2) ミオジェニンの発現
ミオジェニンは、筋肉特異的蛋白質である。
実施例1と同様に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理後、分化誘導培地に代えて第1日目から1日ごとに第10日目まで培養したC2C12細胞を調製し、上記(1)にあるようにしてウエスタンブロットを作製した(図10)。
ブロッキングの後、上記の膜を抗ミオジェニン抗体(Santa Cruz)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(ジャクソン ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。ミオジェニンのシグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
コントロール細胞では、第2日目からミオジェニンの発現が確認されたが、小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤で前処理された細胞では第4日目ではじめてミオジェニンの発現が確認された。小胞体ストレス前処理によって分化誘導因子、IGF−IIの量が減少しており、分化過程の進行が遅くなる事と矛盾しない。
分化したC2C12細胞の抵抗性
C2C12細胞をツニカマイシンまたはタプシガルジンで前処理後、分化を開始させ、第3日目にその抵抗性を調べ、増殖中のC2C12細胞と比べた(図8)。
(1)増殖中のC2C12細胞、ツニカマイシンで前処理した分化中のC2C12細胞及び、タプシガルジンで前処理した分化中のC2C12細胞、前処理していない分化中のC2C12細胞に2μg/mlツニカマイシン、1μMタプシガルジン、100μg/mlエトポシド、0.2μMスタウロスポリンのいずれかのアポトーシス誘導剤を作用させた。分化中の細胞はいずれも分化開始から3日目のものである。スタウロスポリンの場合は薬剤添加の3時間後、他のアポトーシス誘導剤の場合は24時間後に細胞を顕微鏡で観察した。
これらのアポトーシス誘導剤は増殖中のC2C12細胞に対しては効果が高く、約半数の細胞にアポトーシスを誘導する。一方、前処理された分化誘導培地中の細胞は小胞体ストレス誘導剤(ツイニカマイシン、タプシガルジン)並びにエトポシド及びスタウロスポリンに対してほぼ完全に耐性を示した。この結果は、小胞体ストレスを経験し、アポトーシスを起こさずに生き伸びた細胞はアポトーシス刺激に対してより耐性になったことを示している。
分化誘導培地中でのコントロール細胞(前処理無し)は増殖中の細胞よりわずかに高い抵抗性を示した。これらの結果は、細胞が受けたストレス及びアポトーシスの程度と細胞の薬剤抵抗性との間に正の相関がある(前処理した分化している細胞>>前処理なしの分化している細胞>増殖中の細胞の順に強い)ことを示している。
(2)Bcl−xLの発現レベル
増殖中のC2C12細胞、ツニカマイシン前処理した分化中のC2C12細胞、タプシガルジン前処理した分化中のC2C12細胞及び前処理していない分化中のC2C12細胞中のBcl−xLの量をウエスタンブロット法によって調べた(図9)。細胞抽出液(実施例2、(1))を電気泳動し、イモビロン−P膜(ミリポア、ベッドフォード、MA)に転写して作製したウエスタンブロットをブロッキングの後、抗Bcl−xL抗体(transduction Laboratories)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(Jaokson ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。シグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
(結果)
Bcl−xLは強力な抗アポトーシス活性を持つアポトーシス抑制タンパク質である。生細胞(増殖中、分化培地中)におけるBcl−xLの量は3者の間で大きな違いは見られない。しかし、アポトーシスを起こした細胞中のBcl−xLのレベルは生細胞中に比べて顕著に低かった。従ってアポトーシス細胞の示す低い抵抗性は、少なくとも部分的にはBcl−xLのレベルが低い事で説明される。
C2C12細胞の培養物から複数の単一クローンを分離し、増殖培地で細胞数を増やしてから分化培地に移してアポトーシスについて検討した。その結果、たとえ単一クローンから出発しても細胞集団はアポトーシス細胞と生き残って分化する細胞に分かれた。これは、当初脆弱性とBcl−xL発現において均一であったC2C12培養物が死滅する細胞と生存する細胞に分けられたことを示している。そのような選別を行う正確な機構は現在不明だが、ここにおけるアポトーシスはストレスに弱い細胞の除去に貢献し、大きな筋繊維を形成でき、筋収縮のストレスに耐える細胞を選別する働きがあるのかもしれない。
以上の選別は小胞体ストレスに特異的な現象である可能性が高く、例えば他のアポトーシス誘導刺激(例えばエトポシド)を筋芽細胞に与えたところ、分化過程におけるアポトーシスは昂進するものの効率的な筋繊維形成は見られなかった。
C2C12細胞をツニカマイシンまたはタプシガルジンで前処理後、分化を開始させ、第3日目にその抵抗性を調べ、増殖中のC2C12細胞と比べた(図8)。
(1)増殖中のC2C12細胞、ツニカマイシンで前処理した分化中のC2C12細胞及び、タプシガルジンで前処理した分化中のC2C12細胞、前処理していない分化中のC2C12細胞に2μg/mlツニカマイシン、1μMタプシガルジン、100μg/mlエトポシド、0.2μMスタウロスポリンのいずれかのアポトーシス誘導剤を作用させた。分化中の細胞はいずれも分化開始から3日目のものである。スタウロスポリンの場合は薬剤添加の3時間後、他のアポトーシス誘導剤の場合は24時間後に細胞を顕微鏡で観察した。
これらのアポトーシス誘導剤は増殖中のC2C12細胞に対しては効果が高く、約半数の細胞にアポトーシスを誘導する。一方、前処理された分化誘導培地中の細胞は小胞体ストレス誘導剤(ツイニカマイシン、タプシガルジン)並びにエトポシド及びスタウロスポリンに対してほぼ完全に耐性を示した。この結果は、小胞体ストレスを経験し、アポトーシスを起こさずに生き伸びた細胞はアポトーシス刺激に対してより耐性になったことを示している。
分化誘導培地中でのコントロール細胞(前処理無し)は増殖中の細胞よりわずかに高い抵抗性を示した。これらの結果は、細胞が受けたストレス及びアポトーシスの程度と細胞の薬剤抵抗性との間に正の相関がある(前処理した分化している細胞>>前処理なしの分化している細胞>増殖中の細胞の順に強い)ことを示している。
(2)Bcl−xLの発現レベル
増殖中のC2C12細胞、ツニカマイシン前処理した分化中のC2C12細胞、タプシガルジン前処理した分化中のC2C12細胞及び前処理していない分化中のC2C12細胞中のBcl−xLの量をウエスタンブロット法によって調べた(図9)。細胞抽出液(実施例2、(1))を電気泳動し、イモビロン−P膜(ミリポア、ベッドフォード、MA)に転写して作製したウエスタンブロットをブロッキングの後、抗Bcl−xL抗体(transduction Laboratories)で、次に西洋わさびペルオキシダーゼ標識抗IgG抗体(Jaokson ImmunoResearch Laboratories)でインキュベートした。シグナルは、ECLプラス試薬(アマシャム−ファルマシア)を使用して検出した。
(結果)
Bcl−xLは強力な抗アポトーシス活性を持つアポトーシス抑制タンパク質である。生細胞(増殖中、分化培地中)におけるBcl−xLの量は3者の間で大きな違いは見られない。しかし、アポトーシスを起こした細胞中のBcl−xLのレベルは生細胞中に比べて顕著に低かった。従ってアポトーシス細胞の示す低い抵抗性は、少なくとも部分的にはBcl−xLのレベルが低い事で説明される。
C2C12細胞の培養物から複数の単一クローンを分離し、増殖培地で細胞数を増やしてから分化培地に移してアポトーシスについて検討した。その結果、たとえ単一クローンから出発しても細胞集団はアポトーシス細胞と生き残って分化する細胞に分かれた。これは、当初脆弱性とBcl−xL発現において均一であったC2C12培養物が死滅する細胞と生存する細胞に分けられたことを示している。そのような選別を行う正確な機構は現在不明だが、ここにおけるアポトーシスはストレスに弱い細胞の除去に貢献し、大きな筋繊維を形成でき、筋収縮のストレスに耐える細胞を選別する働きがあるのかもしれない。
以上の選別は小胞体ストレスに特異的な現象である可能性が高く、例えば他のアポトーシス誘導刺激(例えばエトポシド)を筋芽細胞に与えたところ、分化過程におけるアポトーシスは昂進するものの効率的な筋繊維形成は見られなかった。
本願発明の方法により、(1)従来法より筋繊維の形成効率を飛躍的に高めることができ、同数の細胞を出発材料とした場合、約10倍以上形成率を上げることができる。(2)更に、形成される筋繊維の大きさも、従来法に比べ、平均して、長さ及び幅が10倍の筋繊維を形成できる。(3)又、筋繊維の寿命も、従来法のものは、約2週間であったが、本発明により調製した筋繊維は、3週間以上も生き延びるものである。
本願発明の筋繊維は、筋の再生技術の開発、筋肉に影響を与える試薬のスクリーニング、筋繊維を利用した遺伝子治療に有効である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本願発明の筋繊維は、筋の再生技術の開発、筋肉に影響を与える試薬のスクリーニング、筋繊維を利用した遺伝子治療に有効である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (21)
- 次の工程を含む筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化方法。
(1)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体ストレスに曝す工程、及び
(2)小胞体ストレスに曝された筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を更に分化誘導培地で培養する工程。 - 次の工程を含む筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化方法。
(1)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された増殖培地で培養する工程、又は筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を増殖培地から分化誘導培地に移した直後に分化誘導培地に小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を添加して培養する工程及び
(2)(1)の工程で培養された筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を更に分化誘導培地で培養する工程。 - 小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が小胞体特異的N−グリコシル化トランスフェラーゼ阻害剤、小胞体特異的マンノシダーゼ阻害剤又は小胞体特異的Ca++ATPaseの阻害剤から選ばれる小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤である請求項2記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化方法。
- 小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤としてツニカマイシンを最終濃度が0.01〜1000μg/ml、又はタプシガルジンを最終濃度が0.01〜1000μMとなるように添加する請求項2又は3記載の方法。
- 筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が、株化筋芽細胞、株化ヒト筋肉腫由来細胞、又は哺乳類若しくは鳥類の生体組織から調製した初代培養筋芽細胞である請求項1〜4いずれか1項記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化方法。
- 株化筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が、マウスC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5、ラットF−12、ラットL6、H9C2、RDから選ばれる請求項5記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化方法。
- 次の工程を含む筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化方法。
(1)(イ)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された増殖培地で培養した後、分化培地に交換して培養を継続した時に得られる培地から上清を分離する工程、又は(ロ)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤を含む分化培地を用いて培養することにより得られる培地より上清を分離する工程、
(2)筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を(1)で分離された上清を馴化培地として用いて培養する工程、及び
(3)分化誘導培地で培養する工程。 - 小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が小胞体特異的N−グリコシル化トランスフェラーゼ阻害剤、小胞体特異的マンノシダーゼ阻害剤又は小胞体特異的Ca++ATPaseの阻害剤から選ばれる小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤である請求項7記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞の分化方法。
- 小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤としてツニカマイシンを最終濃度が0.01〜1000μg/ml、又はタプシガルジンを最終濃度が0.01〜1000μMを添加する請求項7又は8記載の方法。
- 小胞体特異的ストレス前処理をした筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を用いて調製した馴化培地で培養を0.5〜48時間行う請求項7〜9いずれか1項記載の方法。
- 筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が、株化筋芽細胞、株化ヒト筋肉腫由来細胞、又は哺乳類若しくは鳥類等の生体組織から調製した初代培養筋芽細胞である請求項7〜10いずれか1項記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化方法。
- 株化筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞が、マウスC2C12、マウスF−6、マウスC2BP5、ラットF−12、ラットL6、H9C2又はRDから選ばれる請求項11記載の筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化方法。
- 請求項1〜12いずれか1項記載の方法で筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を分化させて得られた筋繊維。
- (イ)株化した筋芽細胞若しくは筋芽細胞様細胞、又は筋芽細胞の初代培養、(ロ)小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤、及び(ハ)分化誘導培地、からなるキット。
- (イ)小胞体ストレスに曝した筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞から分化した筋繊維細胞、及び(ロ)分化誘導培地からなるキット。
- 請求項13項記載の筋繊維に筋壊死又は筋破壊に対する予防剤候補を投与し、筋繊維に筋壊死又は筋破壊を生ずる条件下で培養し、筋壊死又は筋破壊に対する予防剤候補をスクリーニングする方法。
- 請求項13項記載の筋繊維に糖代謝を改善する治療剤候補を投与し、糖尿病等の糖代謝異常に対する治療剤候補をスクリーニングする方法。
- 小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤又は小胞体特異的ストレス前処理後の細胞が培地に分泌するアポトーシス誘導成分を有効成分として含有する筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞分化誘導剤。
- 筋芽細胞又は筋芽細胞様細胞を小胞体特異的小胞体ストレス誘導剤が添加された増殖培地で培養した後、分化培地に交換して培養を続行した時に得られる馴化培地又は該馴化培地より得られる遠心上清。
- 請求項13記載の筋繊維に目的遺伝子を導入した形質転換筋繊維。
- 請求項20記載の形質転換筋繊維からなる遺伝子治療剤。
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