JPWO2005068621A1 - アパタイト粒子及びその作製方法、遺伝子複合体、並びに遺伝子導入方法 - Google Patents

アパタイト粒子及びその作製方法、遺伝子複合体、並びに遺伝子導入方法 Download PDF

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Abstract

無機リン酸を含む溶液にカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを加えた混合溶液を所定時間インキュベートすると、マグネシウムイオン濃度に応じて得られるアパタイト粒子のサイズが小さくなる。マグネシウムイオン濃度やインキュベーション時間を適切に制御したアパタイト粒子を用いることで、細胞への遺伝子導入効率及び細胞内での遺伝子発現効率を上昇させることができる。

Description

本発明は、例えば細胞への遺伝子導入に用いて好適なアパタイト粒子及びその作製方法、遺伝子複合体、並びに遺伝子導入方法に関する。
本出願は、米国において2003年12月26日に出願された米国仮出願第60/532,845号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照することにより、本出願に援用される。
細胞への遺伝子導入は、遺伝子の構造、機能或いは制御機構を解析する際に不可欠な技術である。また、この技術は、医療分野で重要となるタンパク質の産業ベースでの生産、遺伝子治療、或いはDNAワクチンにおいても極めて重要である。
従来、細胞に遺伝子を導入する方法としては、例えばウイルスDNAに目的の遺伝子を組み込み、感染性ウイルスを生成して遺伝子導入を行うものが知られている。この方法は導入効率が極めて高いため、各種遺伝性疾患や後天性疾患に対する遺伝子治療のための画期的な方法として注目されている。しかしながら、このようなウイルスDNAを用いた遺伝子導入では、ウイルスが広範囲の細胞に非特異的に感染するため、目的の細胞以外にも遺伝子が導入されてしまうという重大な問題がある。また、ウイルスゲノム本体が染色体に組み込まれ、将来予期せぬ副作用を引き起こす可能性がある。そこで、このようなウイルスベクタを用いたウイルス系システムに代わる非ウイルス系システムの構築が望まれている。
既存の非ウイルス系システムとしては、リポソーム等の合成脂質、ポリ−L−リジン等のペプチド、ポリアミドアミン等のデンドリマ、ポリエチレンイミン等の他のポリマ、或いはリン酸カルシウムを用いる方法等が知られている。その中でもリン酸カルシウムを用いる方法は、無機リン酸とカルシウムイオンとによって形成されたアパタイト粒子がDNAと複合体を形成して共沈し、その複合体がエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる現象に基づいており、遺伝子治療など、細胞への遺伝子導入に際して一般的に用いられている(例えば、文献1「Fasbender, A. et al, 1998,“Incorporation of Adenovirus in calcium phosphate precipitates enhances gene transfer to airway epithelia in vitro and in vivo.”, J. Clin. Invest., 102, p.184-193」、文献2「Toyoda, K. et al, 2000,“Calcium phosphate precipitates augmennt adenovirus-mediated gene transfer to blood vessels in vitro and in vivo.”, Gene Ther., 7, p.1284-1291」、文献3「Urabe, M. et al, 2000,“DNA/calcium phosphate mixed with media are stable and maintain high transfection efficiency.”, Anal. Biochem., 278, p.91-92」を参照。)。
ところで、このリン酸カルシウムを用いた遺伝子導入方法は現在一般的となっているが、遺伝子導入効率が低いことがin vitro 及びin vivo の両方において遺伝子発現の障壁となっている。これは、無機リン酸とカルシウムイオンとのインキュベーション時間が長くなるに従ってアパタイト粒子のサイズが大きくなり、細胞への取り込みが低下するためであると考えられている。そこで、文献4「Jordan, M. et al, 1996,“Transfecting mammalian cells: optimization of crytical parameters affecting calcium-phosphate precipitate formation.”, Nucleic Acids Res., 24, p.596-601」では、インキュベーション時間を短くすることでアパタイト粒子のサイズを制御する技術が提案されている。しかしながら、この技術は、例えば多量のプラスミドDNAを一度に細胞に導入するために多量のアパタイト粒子が必要な場合に適用することは困難であるという問題があった。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、粒子サイズがナノサイズに抑えられ、細胞に対して高効率に遺伝子を導入し、発現させることが可能なアパタイト粒子及びその作製方法、そのアパタイト粒子と遺伝子とが結合した遺伝子複合体、並びにそのアパタイト粒子を用いた遺伝子導入方法を提供することを目的とする。
本件発明者等は、上述した目的を達成するために、様々な観点から鋭意研究を重ねてきた。その結果、無機リン酸とカルシウムイオンとによってアパタイト粒子を形成する際に、さらにマグネシウムイオンを加えると粒子サイズがナノサイズに抑えられ、そのアパタイト粒子を遺伝子導入に用いることで、細胞への遺伝子導入効率と細胞内での遺伝子発現効率とが上昇することを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係るアパタイト粒子は、分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)、又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであることを特徴とする。
また、本発明に係るアパタイト粒子の作製方法は、無機リン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含む混合溶液を所定時間インキュベートし、分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)、又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子を作製することを特徴とする。
また、本発明に係る遺伝子複合体は、分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)、又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子に所定の遺伝子が結合していることを特徴とする。
また、本発明に係る遺伝子導入方法は、分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子と所定の遺伝子との複合体を特定細胞とインキュベートすることにより、上記所定の遺伝子を上記特定細胞に導入することを特徴とする。
このように、マグネシウムイオンを加えることでアパタイト粒子のサイズをナノサイズに抑えることができ、その結果、細胞への遺伝子導入効率と細胞内での遺伝子発現効率とが上昇する点については、これまで全く報告されたことがなく、本件発明者等によって初めて見出されたものである。
本発明のさらに他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施例の説明から一層明らかにされるであろう。
図1は、マグネシウムイオンを含まない従来のアパタイト粒子のフーリエ変換赤外線スペクトルを示す図である。 図2は、マグネシウムイオンを含まない従来のアパタイト粒子のX線回折パターンを示す図である。 図3は、粒子分散液の濁度変化を複数のマグネシウムイオン濃度の場合で比較する図である。 図4は、アパタイト粒子のサイズ変化を複数のマグネシウムイオン濃度の場合で比較する図である。 図5は、アパタイト粒子を用いてPIラベルされたDNAをHeLa細胞に導入した際の細胞の蛍光観察結果を示す写真である。 図6は、アパタイト粒子を用いてルシフェラーゼ遺伝子をHeLa細胞に導入した際の遺伝子発現状況を示す図である。 図7は、アパタイト粒子を用いてルシフェラーゼ遺伝子をNIH3T3細胞に導入した際の遺伝子発現状況を示す図である。
以下、本発明を適用した実施の形態について、具体的な実験結果を参照しながら詳細に説明する。
アパタイト粒子の作製
先ず、参考のため、マグネシウムイオンを含まない従来のアパタイト粒子を作製した。具体的には、0.75mM NaHPO・2HOを含むHBS(HEPES Buffered Saline)溶液(140mM NaCl、5mM KCl、25mM HEPES、pH7.05)に塩化カルシウムを最終濃度が125mMとなるように加え、室温でインキュベートすることによりアパタイト粒子を作製した。その後、アパタイト粒子の沈殿物を遠心分離によって回収し、脱イオン水で繰り返し洗浄して凍結乾燥した。
このアパタイト粒子のフーリエ変換赤外線スペクトル(Fourier transform-infrated spectrum;FT−IR)を図1に示し、X線回折パターンを図2に示す。フーリエ変換赤外線スペクトルはFT/IR-230(JASCO社製)を用いて測定し、X線回折パターンはM18XHF-SRA(Mac Sci.社製)を用いて測定した。図1に示す赤外線スペクトルは、ヒドロキシアパタイトが形成されていることを示している。なお、1000〜1100cm−1及び550〜650cm−1のピークは、リン酸に由来するものである。また、図2に示すX線回折パターンも、典型的なアパタイトの特徴を示している。
次に、マグネシウムイオンを含むアパタイト粒子を作製した。具体的には、最終濃度が0,20,40,60,80,100,120,140mMとなるようにHBS溶液に塩化マグネシウムを加えた他は、上述と同様にしてアパタイト粒子を作製した。0,20,40,60,80,100,120,140mMの塩化マグネシウムを加えて得られたアパタイト粒子をそれぞれサンプル1,2,3,4,5,6,7,8とする。 各サンプルの元素分析結果を以下の表1,2に示す。なお、表1は各サンプル中におけるMg、Ca、Pの質量比を示したものであり、表2は同じくモル比を示したものである。Mg、Ca、Pの量はSeiko SPS 1500VR 原子吸収分光測定器(Seiko社製)を用いて測定した。
Figure 2005068621

Figure 2005068621

表1に示すように、加えたマグネシウムイオンの濃度が増加するに従って、アパタイト粒子中のMgの量が最大で約3%まで増加し、同時にCaの量が減少した。しかしながら、Pの量はほぼ一定であり、サンプル1〜3では約12%、サンプル4〜8では約16%であった。このことは、作製されたアパタイト粒子が2つのタイプからなることを示している。さらに、表2を参照することで、サンプル1〜3は分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)の構造をとるアパタイト粒子の集合であり、サンプル4〜8は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)のOCP(OctaCalcium Phosphate)型構造をとるアパタイト粒子の集合であることが判明した。すなわち、高濃度のマグネシウムイオンの存在により、OCP型のアパタイト粒子の形成が促進されることが示された。
粒子の成長速度及びサイズの制御
続いて、マグネシウムイオンを加えることによるアパタイト粒子の成長速度の制御について検討した。ここで、粒子分散液の濁度を測定することで、過飽和溶液中におけるアパタイト核形成と時間依存的な粒子成長とを解析することができるため(上記文献4参照)、粒子分散液の濁度を測定した。具体的には、1.5mM NaHPO・2HOを含む300μlの2倍濃度HBS溶液(pH7.05)と250mM 塩化カルシウム及び0〜280mM 塩化マグネシウムを含む300μlの純水とを混合して粒子分散液を生成し、この粒子分散液の320nmにおける濁度変化を1〜30分間に亘って測定した。測定にはSmartSpecTM 3000(Bio-Rad社製)を用いた。
粒子分散液の濁度変化を図3に示す。図3に示すように、混合してから1分後の粒子分散液では、マグネシウムイオン濃度が増加するに従って濁度が低下した。これは、マグネシウムイオンの存在により粒子の成長が抑制されることを示している。さらに、5〜30分間インキュベーションを続けると、マグネシウムイオン濃度の増加に従って濁度が上昇し、そして低下する様相を呈した。これは、マグネシウムイオン濃度を20〜60mMと増加させることで、インキュベーション時間に依存して沈澱反応がより促進され、その結果、粒子数の増加によって濁度の上昇が引き起こされ、マグネシウムイオン濃度を80〜140mMとさらに増加させることで、粒子の成長が阻害されたためと説明できる。
続いて、マグネシウムイオンを加えることで粒子の成長が抑制され、粒子サイズの増大も抑制されるということをより明確に理解するため、粒子の成長段階におけるサイズ変化を観察した。具体的には、粒子の成長段階(1〜30分間)における平均粒子直径を動的光散乱分光光度計(Photal, Otsuka Electronics社製)を用いて75mW Arレーザで見積もった。
アパタイト粒子のサイズ変化を図4に示す。図4に示すように、粒子形成開始から1〜30分間の範囲では、マグネシウムイオン濃度を増加させることで、マイクロサイズからナノサイズへと粒子直径が小さくなることが分かる。
この図3,4から、粒子の成長速度に関する明確且つ信頼できる予測を行うことができる、すなわち、より高濃度のマグネシウムイオンが粒子に取り込まれることにより、粒子の成長がよりゆっくりとしたものに変化し、さらに粒子サイズがナノサイズに抑えられると予測できる。マグネシウムイオンによる粒子成長抑制効果は、アパタイト粒子中のカルシウムイオンがマグネシウムイオンに置き換わることによってヒドロキシアパタイトの分子構造に歪みが生じた結果と説明できる。
アパタイト粒子を用いて送達されたDNAの細胞への取り込み
粒子の直径は、細胞への遺伝子導入において非常に重要な因子である。サイズの小さい粒子では遺伝子が効率的に送達されるが、急速に成長し、サイズが増大した粒子では(図4参照)、細胞への遺伝子送達と細胞内での遺伝子発現とが大きく阻害される。ここで、本実施の形態におけるアパタイト粒子では、粒子の成長と粒子サイズとを望ましいレベルでコントロールできるため、このアパタイト粒子を用いた細胞へのDNA送達を検討した。
具体的には、先ず、HeLa細胞を75cmのボトルフラスコ内の培地中で5% CO、37℃の条件下で培養した。培地としては、10% FBS(Fetal Bovine Serum)、50μg/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン、及び100μg/ml ネオマイシンを含むDMEM(Dulbecco Modified Eagle Medium)培地(Gibco社製)を用いた。そして、DNAを導入する前日に、増殖過程に同調させた細胞を24ウェルのシャーレ中に50000個/ウェルとなるように播種し、50%コンフルエントの状態で培養した。
続いて、1.5mM NaHPO・2HOを含む300μlの2倍濃度HBS溶液(pH7.05)と、6μgのPI(蛍光プローブ)をインターカレータとした6μgのDNA(PIとDNAとの重量比=1:1)、250mM 塩化カルシウム及び0〜280mM 塩化マグネシウムを含む300μlの純水とを混合し、1〜30分間のインキュベーションの後、各100μlをサンプリングした。そして、サンプリングした粒子溶液を10%の血清を含有した培地1ml中に添加し、37℃で4時間インキュベーションした後、細胞を5mM EDTAを含有したPBS(Phosphate Buffered Saline)溶液で洗浄し、蛍光観察を行った。
蛍光観察結果を図5に示す。図5中のスケールバーは50μmである。図5に示すように、マグネシウムイオンを加えていないアパタイト粒子を用いた場合、細胞へのDNAの取り込みは非効率的であり、さらに、粒子の成長により、時間経過に従って取り込みが最低レベルまで減少した。一方、粒子の成長を十分に抑制することが可能な濃度(図4参照)のマグネシウムイオンを加えたアパタイト粒子を用いた場合、細胞の内部でPIラベルされたDNAの強い蛍光が観察された。すなわち、マグネシウムイオンの存在により粒子の成長が抑制された結果、DNAとアパタイト粒子との複合体が効率的にエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれることが明らかになった。なお、より高濃度のマグネシウムイオンを加えて作製したアパタイト粒子を用いた場合に、細胞へのDNAの取り込みが低下したのは、マグネシウムイオンが多くなることで、沈澱反応が発生するレベルのアパタイト粒子が形成されなくなったことに起因すると考えられる。
アパタイト粒子を用いて送達された遺伝子の細胞内での発現
最後に、本実施の形態におけるアパタイト粒子を用いてルシフェラーゼ遺伝子を細胞に導入した場合における細胞内での遺伝子発現状況について検討した。
具体的には、先ず、HeLa細胞及びNIH3T3細胞のそれぞれを75cmのボトルフラスコ内の培地中で5% CO、37℃の条件下で培養した。培地としては、10% FBS、50μg/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン、及び100μg/ml ネオマイシンを含むDMEM培地(Gibco社製)を用いた。そして、DNAを導入する前日に、増殖過程に同調させた細胞を24ウェルのシャーレ中に50000個/ウェルとなるように播種し、50%コンフルエントの状態で培養した。
続いて、1.5mM NaHPO・2HOを含む300μlの2倍濃度HBS溶液(pH7.05)と、6μgのPIをインターカレータとしたルシフェラーゼ遺伝子(pGL3, Promega社製)を含む6μgのプラスミドDNA(PIとDNAとの重量比=1:1)、250mM 塩化カルシウム及び0〜280mM 塩化マグネシウムを含む300μlの純水とを混合し、1〜30分間のインキュベーションの後、各100μlをサンプリングした。そして、サンプリングした粒子溶液を10%の血清を含有した培地1ml中に添加し、37℃で4時間インキュベーションした後、新鮮な培地に交換して、さらに1日培養を継続した。その後、HeLa細胞及びNIH3T3細胞における遺伝子発現状況をコマーシャルキット(Promega社製)と光量子カウンタ(TD-20/20 Luminometer, Promega社製)とを用いて確認した。
HeLa細胞及びNIH3T3細胞における遺伝子発現状況をそれぞれ図6,7に示す。この図6,7は、遺伝子導入実験を3回行い、遺伝子発現効率を細胞タンパク質1mg当たりの平均発光量で表したものである。図6,7に示すように、マグネシウムイオンを加えたアパタイト粒子を用いた場合には、マグネシウムイオンを加えていないアパタイト粒子を用いた場合と比較して、マグネシウムイオンの濃度、インキュベーション時間、細胞の種類に依存して、少なくとも10〜100倍高い遺伝子発現が観察された。このように、遺伝子導入効率が高いのは、適切な濃度のマグネシウムイオンを加えることでアパタイト粒子の成長を効果的に抑制し、粒子サイズをナノサイズに抑えることができるためである。
なお、マグネシウムイオン濃度はインキュベーション時間、細胞の種類に応じて設定することが望ましい。例えばNIH3T3細胞の場合、図7から分かるように、インキュベーション時間が1分間、5分間、10分間、30分間の場合には、それぞれマグネシウムイオン濃度を40mM、60mM、100mM、120mMとすることが望ましい。図4から分かるように、マグネシウムイオン濃度が40mMでインキュベーション時間が1分間の場合には粒子直径が約250nmのアパタイト粒子が得られ、マグネシウムイオン濃度が60mM、100mM、120mMでインキュベーション時間が5分間、10分間、30分間の場合には粒子直径がそれぞれ約400nmのアパタイト粒子が得られる。粒子直径としては30nm乃至2500nmとすることが遺伝子導入効率及び遺伝子発現効率の観点から好ましく、より好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmである。
以上、具体的な実験結果を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施例に限定されるものではなく、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な変更、置換又はその同等のものを行うことができることは当業者にとって明らかである。
上述した本発明によれば、粒子サイズがナノサイズに抑えられたアパタイト粒子を得ることができるため、このアパタイト粒子を遺伝子と結合させることで、細胞に高効率に遺伝子を導入し、発現させることができる。

Claims (4)

  1. 1.分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであることを特徴とするアパタイト粒子。
  2. 2.無機リン酸、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンを含む混合溶液を所定時間インキュベートし、分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子を作製することを特徴とするアパタイト粒子の作製方法。
  3. 3.分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子に所定の遺伝子が結合していることを特徴とする遺伝子複合体。
  4. 4.分子式Ca10−xMg(PO)(OH)(x=1,2,・・・,9)又は分子式Ca8−xMg(PO)(x=1,2,・・・,7)で表され、粒子直径が30nm乃至2500nm、好ましくは50nm乃至1000nm、さらに好ましくは50nm乃至300nmであるアパタイト粒子と所定の遺伝子との複合体を特定細胞とインキュベートすることにより、上記所定の遺伝子を上記特定細胞に導入することを特徴とする遺伝子導入方法。
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