JPWO2005001495A1 - 磁化観察方法および磁化観察装置 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、この明細書および請求の範囲では、磁界強度には規定の方向に従って正の値と負の値とが特定されるものとする。同様に、磁界強度には「0(ゼロ)」値が含まれるものとする。
磁性体の表面状態は偏光状態や反射率に影響する。磁性体の表面状態が悪ければ、磁気カー効果とは関連なしに偏光面の回転や反射率の増減は引き起こされてしまう。こういった偏光状態の変化量は、しばしば、磁気カー効果で生成される偏光状態の変化量を上回る。こういった場合には、磁性体で確立される磁区構造は明瞭に観察されることはできない。表面状態の良し悪しに拘わらず明瞭に磁性体の磁区構造を検出する術が模索される。
上記目的を達成するために、第1発明によれば、所定の方向に沿って磁性体に指定の磁界強度H0で磁界を印加する工程と、磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、磁化の第1検出値を特定する工程と、指定の磁界強度H0よりも小さな第1磁界強度H1の磁界内で磁性体の磁化を検出し、磁化の第2検出値を特定する工程と、指定の磁界強度H0よりも大きな第2磁界強度H2の磁界内で磁性体の磁化を検出し、磁化の第3検出値を特定する工程と、2:−1:−1の重み付けに基づき第1、第2および第3検出値を加算する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法が提供される。
第1磁界強度H1で磁界が磁性体に作用すると、磁性体では磁界の減少に伴い磁壁は移動する。第2磁界強度H2で磁界が磁性体に作用すると、磁性体では磁界の減少に伴い磁壁は移動する。こういった磁壁の移動は個々の測定点(観察点)で磁化の回転を生み出す。前述の重み付けで第1、第2および第3検出値が加算されると、磁壁の移動範囲では磁化ベクトルは残存する。第1、第2および第3検出値には均等にノイズが含まれることが想定されることから、重み付けに基づきノイズは相殺される。純粋な磁化ベクトルは特定される。その一方で、磁壁の移動範囲から外れた領域では検出値で磁化は打ち消される。こうして磁壁のみが際立たせられる。したがって、磁性体の表面状態に拘わらず明瞭な磁区構造は視覚化されることができる。
しかも、磁壁を挟んで磁区同士の間では磁化の向きは区別される。こうした磁化の向きが視覚化されれば、磁区内で磁化の向きは比較的に簡単に特定されることができる。視覚化にあたって、前述の加算の結果に基づき画素は色分けされればよい。重み付けの実現にあたって、出力値t(H0)、第1検出値s(H0)、第2検出値s(H1)および第3検出値s(H2)の間には、
が成立すればよい。
磁性体の観察にあたって磁性体内で磁化の飽和は回避されることが望まれる。磁性体内で磁化が飽和してしまうと、磁区の構造は破壊されてしまう。磁壁同士の接続関係が変化してしまうことが予想される。第1磁界強度H1は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に大きな値に設定されればよい。第2磁界強度H2は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に小さな値に設定されればよい。こうして第1磁界強度H1や第2磁界強度H2が設定されれば、磁性体内に確立される磁壁同士の接続関係は確実に維持されることが予想される。ただし、第1磁界強度H1は、第1検出値と第2検出値との間に相違を生み出す大きさに設定される。同様に、第2磁界強度H2は、第1検出値と第3検出値との間に相違を生み出す大きさに設定される。こうして磁壁の移動が生み出されれば、磁壁は確実に検出されることができる。
以上のような磁化観察方法の実現にあたって、カー顕微鏡といった磁化観察装置は、例えば、指定の磁界強度、指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度、並びに、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度で磁界を発生する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、指定の磁界強度並びに第1および第2磁界強度の磁界の印加時に磁性体の磁気光学効果に基づき対応の第1、第2および第3検出値を特定する検出信号を出力する受光素子と、受光素子に接続されて、2:−1:−1の重み付けに基づき第1、第2および第3検出値を加算するプロセッサとを備えればよい。
その他、前述の磁化観察方法は例えばソフトウェアプログラムで実現されてもよい。こういったソフトウェアプログラムは、例えば、指定の磁界強度H0の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第1検出信号を取得する工程と、指定の磁界強度H0よりも小さな第1磁界強度H1の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第2検出信号を取得する工程と、指定の磁界強度H0よりも大きな第2磁界強度H2の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第3検出信号を取得する工程と、2:−1:−1の重み付けに基づき、第1、第2および第3検出信号でそれぞれ特定される磁化の検出値を加算する工程とをプロセッサに実行させればよい。ソフトウェアプログラムは、特定の記憶装置内に格納されてもよく、コンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)といった可搬性の記録媒体に格納されてもよい。
第2発明によれば、指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、第1磁界強度範囲内の磁界の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出する工程と、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、第2磁界強度範囲内の磁界の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法が提供される。
一般に、磁界の磁界強度が変化すると、磁性体では磁区の拡大や縮小が引き起こされる。その結果、磁壁は移動する。磁界の変化中に特定の測定点が磁壁に横切られると、その測定点で磁化の向きは回転する。したがって、磁界の変化に伴って磁化の変化が検出されれば、磁壁の位置は特定されることができる。
いま、特定の磁区の内側で測定点を想定する。磁区が縮小すると、その測定点は磁壁に横切られる。磁化の回転は検出される。その一方で、磁区が拡大しても、測定点では磁化の回転は検出されない。言い換えれば、第1磁界強度範囲で磁化の変化が検出される場合と、第2磁界強度範囲で磁化の変化が検出される場合とでは磁壁の移動と磁界の増減との関係は区別されることができる。こうして個々の磁区内で磁化の向きに関する情報は得られることができる。
変化の有無の検出にあたって、第1および第2磁界強度範囲で磁界強度は増大すればよい。この場合には、磁化の変化に相当する磁化の増大が検出されればよい。磁化の増大の検出にあたって磁化の変化に基づき微分値は特定されればよい。微分値の特定にあたって、磁化観察方法は、例えば、第1および第2磁界強度範囲で離散的に磁界強度を増大させる工程と、個々の磁界強度ごとに磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、個々の磁界強度ごとに磁化の検出値を特定する工程と、今回の検出値から前回の検出値を差し引き、磁化の変化値を算出する工程とを備えればよい。
その他、変化の有無の検出にあたって、第1および第2磁界強度範囲で磁界強度は減少してもよい。この場合には、磁化の変化に相当する磁化の減少は検出されればよい。磁化の減少の検出にあたって磁化の変化に基づき微分値は特定されればよい。微分値の特定にあたって、この種の磁化観察方法は、第1および第2磁界強度範囲で離散的に磁界強度を減少させる工程と、個々の磁界強度ごとに磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、個々の磁界強度ごとに磁化の検出値を特定する工程と、今回の検出値から前回の検出値を差し引き、磁化の変化値を算出する工程とを備えればよい。
以上のような磁化観察方法の実現にあたって、カー顕微鏡といった磁化観察装置は、例えば、指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲、並びに、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界を発生する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、磁性体から帰還する光を受光する受光素子と、受光素子に接続されて、第1磁界強度範囲の変化中および第2磁界強度範囲の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出するプロセッサとを備えればよい。
その他、前述の磁化観察方法は例えばソフトウェアプログラムで実現されてもよい。こういったソフトウェアプログラムは、例えば、指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲で変化する磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第1検出信号を取得する工程と、第1検出信号に基づき磁化の変化の有無を検出する工程と、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第2検出信号を取得する工程と、第2検出信号に基づき磁化の変化の有無を検出する工程とをプロセッサに実行させればよい。ソフトウェアプログラムは、特定の記憶装置内に格納されてもよく、コンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)といった可搬性の記録媒体に格納されてもよい。
第3発明によれば、波形信号に基づき特定の周期で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、磁化の検出値を特定する工程と、特定された検出値に、波形信号に特定の位相関係で同期しつつ波形信号の2倍の周波数で周期的に変化する数値を掛け合わせる工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法が提供される。
一般に、磁界の磁界強度が変化すると、磁性体では磁区の拡大や縮小が引き起こされる。その結果、磁壁は移動する。磁界の変化中に特定の測定点が磁壁に横切られると、その測定点で磁化の向きは急に回転する。したがって、磁界の変化に伴って磁化の急変が検出されれば、磁壁の位置は特定されることができる。
このとき、磁化の検出値と前述の数値との積では磁化の変化は強調されることができる。しかも、波形信号の2倍の周波数で周期的に数値が変化する場合には、磁壁の移動方向と磁界の増減との関係に応じて積では異なる符号(+、−)が特定されることができる。こうして算出結果に基づき磁化の検出値が視覚化されれば、磁壁の位置は特定されることができる。しかも、磁区内で磁化の向きは比較的に簡単に推測されることができる。
こうした磁化観察方法は、検出値と数値との乗算結果に積分処理を施す工程をさらに備えてもよい。こういった積分処理によれば、磁化の変化は確実に検出されることができる。波形信号の極大値および極小値を示す位相は、数値の極大値および極小値のいずれかを示す位相に一致すればよい。こういった位相差によれば、磁化の変化は確実に特定されることができる。
検出値には、前述の数値との掛け合わせに先立って微分処理が施されてもよい。こういった微分処理によれば、磁化の変化は一層確実に検出されることができる。ただし、この場合には、波形信号の極大値および極小値を示す位相は、数値で極大値および極小値の中間値を示す位相と一致することが望まれる。
以上のような磁化観察方法の実現にあたって、カー顕微鏡といった磁化観察装置は、例えば、波形信号に基づき特定の周期で変化する磁界を生成する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、磁性体から帰還する光に基づき検出値を特定する検出信号を出力する受光素子と、受光素子に接続されて、波形信号に特定の位相関係で同期しつつ波形信号の2倍の周波数で周期的に変化する周期信号を検出信号に掛け合わせる掛け算器とを備えればよい。積分処理の実現にあたって、掛け算器にはローパスフィルタが接続されればよい。微分処理の実現にあたって、掛け算器および受光素子の間にはハイパスフィルタが配置されればよい。
図2は、偏光分布制御機構の構造を概略的に示す拡大平面図である。
図3は、磁性体の磁区の構造を概略的に示す概念図である。
図4は、磁化の観察にあたってプロセッサ(CPU)の処理動作を示すフローチャートである。
図5A〜図5Fは、右回り還流磁区の観察にあたって処理動作の原理を概略的に示す概念図である。
図6A〜図6Fは、左回り還流磁区の観察にあたって処理動作の原理を概略的に示す概念図である。
図7A〜図7Fは、右回り還流磁区の観察にあたって比較例に係る処理動作を概略的に示す概念図である。
図8A〜図8Fは、左回り還流磁区の観察にあたって比較例に係る処理動作を概略的に示す概念図である。
図9は、磁化の観察にあたって他の具体例に係る処理動作を示すフローチャートである。
図10A〜図10Cは、処理動作の原理を概略的に示す概念図である。
図11Aおよび図11Bは、磁界強度の増大中に特定の測定点で観察される磁化の変化を示すグラフである。
図12Aおよび図12Bは、磁界強度の増大と検出値の差分との関係を示すグラフである。
図13Aおよび図13Bは、磁界強度の減少中に特定の測定点で観察される磁化の変化を示すグラフである。
図14Aおよび図14Bは、磁界強度の減少と検出値の差分との関係を示すグラフである。
図15Aおよび図15Bは、磁界強度の増減中に特定の測定点で検出される検出値の変化を示すグラフである。
図16は、本発明の第2実施形態に係るカー顕微鏡の構造を概略的に示すブロック図である。
図17Aおよび図17Bは、第1周波数に基づき変化する磁界と磁化との関係を示すグラフである。
図18Aおよび図18Bは、第1周波数に基づき変化する磁化と第2周波数の波形信号との関係を示すグラフである。
図19は、本発明の第3実施形態に係るカー顕微鏡の構造を概略的に示すブロック図である。
図20Aおよび図20Bは、微分処理後の磁化の検出値と、90°の位相差で変化する第1周波数の信号波形との関係を示すグラフである。
図21Aおよび図21Bは、微分処理後の磁化の検出値と、90°の位相差で変化する第2周波数の信号波形との関係を示すグラフである。
図1は本発明の第1実施形態に係るカー顕微鏡の構造を概略的に示す。このカー顕微鏡11は可動ステージ12を備える。可動ステージ12には例えば1水平面に沿って広がる支持面13が規定される。支持面13に測定対象物すなわち磁性体14は受け止められる。可動ステージ12は少なくとも1水平面内で移動することができる。可動ステージ12の移動はステージドライバ15から供給される電気信号に基づき制御される。
可動ステージ12には磁界生成機構16が関連付けられる。この磁界生成機構16は例えば1対の電磁石17、17で構成されればよい。電磁石17、17は、電磁石ドライバ18から供給される電流の大きさや向きに応じて所望の磁界強度で磁界19を生成する。こうした磁界19の働きで支持面13上の磁性体14には規定の方向に沿って磁束が流通する。
カー顕微鏡11は光源21をさらに備える。光源21には例えば波長400nmのレーザビームを出力するレーザダイオードが用いられればよい。レーザビームは可動ステージ12の支持面13に向かって出力される。レーザビームでは例えば直線偏光が確立される。
光源21および可動ステージ12の間には光学系22が配置される。この光学系22は、例えば可動ステージ12に向き合わせられる対物レンズ23を備える。光源21および対物レンズ23の間には例えばビームスプリッタ24が配置される。光源21から出力されるレーザビームはビームスプリッタ24を通過する。その後、レーザビームは対物レンズ23から磁性体14に照射される。対物レンズ23は磁性体14の表面に微小なビームスポットを形成する。こうしてレーザビームは指定の偏光面で磁性体14まで誘導される。レーザビームは磁性体14の表面で反射する。レーザビームは再び対物レンズ23からビームスプリッタ24に導かれる。このとき、前述の磁界生成機構16は対物レンズ23に関連付けられてもよい。
ビームスプリッタ24には偏光ビームスプリッタ25が向き合わせられる。磁性体14から帰還するレーザビームはビームスプリッタ24で反射する。レーザビームはビームスプリッタ24から偏光ビームスプリッタ25に導かれる。偏光ビームスプリッタ25は相互に直交する偏光面でレーザビームを分解する。
偏光ビームスプリッタ25の背後には受光素子すなわちフォトディテクタ26、26が配置される。偏光ビームスプリッタ25で分解されたレーザビームは、集光された後に、偏光面ごとにフォトディテクタ26で検出される。こうして偏光面ごとにレーザビームは電気信号に変換される。
フォトディテクタ26、26には差動アンプ27が接続される。差動アンプ27は2つの電気信号の差分を導き出す。こうした差分に基づき偏光面の回転は検出される。
差動アンプ27にはアナログデジタルコンバータ(A/Dコンバータ)28が接続される。A/Dコンバータ28は差動アンプ27から出力されるアナログの電気信号からデジタル信号を生成する。A/Dコンバータ28にはコンピュータ装置29が接続される。コンピュータ装置29は、A/Dコンバータ28から供給されるデジタル信号すなわち検出信号を取得するプロセッサ(CPU)31を備える。CPU31の動作は例えば記憶装置32に格納されるソフトウェアプログラムに基づき実現される。所定のソフトウェアプログラムが実行されると、CPU31はステージドライバ15や電磁石ドライバ18に所定の指令信号を供給する。記憶装置32には、FDD(フレキシブルディスク駆動装置)やHDD(ハードディスク駆動装置)、CD(コンパクトディスク)駆動装置、DVD(デジタルビデオディスク)駆動装置、メモリといったものが用いられればよい。
コンピュータ装置29にはディスプレイ装置33が接続される。ディスプレイ装置33の画面上にはイメージやテキストが表示されることができる。CPU31は前述の検出信号に基づきディスプレイ装置33の画面上に磁区のイメージを描画することができる。
このカー顕微鏡11では、ビームスプリッタ24および偏光ビームスプリッタ25の間に偏光分布制御機構34が組み込まれる。この偏光分布制御機構34には、図2に示されるように、例えば4枚の半波長板35a〜35dで構成される分割半波長板35が用いられればよい。この分割半波長板35は、1水平面で相互に接合される第1および第2半波長板35a、35bと、1垂直面で相互に接合される第3および第4半波長板35c、35dとを備える。第1および第3半波長板35a、35cでは中性軸方位角は−22.5°に設定される。その一方で、第2および第4半波長板35b、35dでは中性軸方位角は+22.5°に設定される。
こういった分割半波長板35では、磁気カー効果の働きで+δ°に回転した偏光が通過すると、第1および第3半波長板35a、35cで(−45−δ°)の偏光が確立される。同様に、第2および第4半波長板35b、35dでは(45−δ°)の偏光が確立される。その結果、第1および第3半波長板35a、35cと第2および第4半波長板35b、35dとの間には90°のずれが生み出されることができる。したがって、このカー顕微鏡11によれば、例えば第1および第2半波長板35a、35bの境界に沿ってレーザビーム36が透過すると、極カー効果は相互に打ち消される。こうして面内磁化x成分は検出される。第3および第4半波長板35c、35dの境界に沿ってレーザビーム37が透過すると、極カー効果は相互に打ち消される。こうして面内磁化y成分は検出される。レーザビーム38が境界に触れずに第2半波長板35bのみを透過すれば、垂直磁化成分は検出されることができる。
いま、薄膜の磁性体14で面内磁化x成分の検出に基づき磁区の構造を観察する場面を想定する。磁性体14では、例えば図3に示されるように、隣接する磁区41a、41b、41同士の間に磁壁42a、42が確立される。
観察にあたって、まず、CPU31は磁性体14の表面に複数の測定点を設定する。図3から明らかなように、測定点は例えば行列L×Mの格子状に配置される。測定点は、例えば、支持面13に予め設定される平面座標(X,Y)に従って特定されればよい。測定点の位置(X,Y)にビームスポットの中心は位置合わせされる。隣接する測定点同士の間隔は均一に設定されればよい。隣接する測定点同士でビームスポットは重なり合ってもよく相互に離隔してもよい。
CPU31は所定のソフトウェアプログラムに従って処理動作を実現する。図4に示されるように、観察が開始されると、CPU31はステップS1で初期化を実施する。ステップS2では、CPU31の処理動作に基づき磁性体14に指定の磁界強度H0で磁界19は印加される。磁界の印加にあたってCPU31は所定の指令信号を生成する。生成される指令信号では電流の電流値や向きが特定される。こうした指令信号に基づき電磁石ドライバ18は電磁石17、17に電流を供給する。電磁石17、17の働きで磁界強度H0の磁界19は生成される。生成された磁界19はステージ12上の磁性体14に作用する。
ここで、磁界強度H0には、規定の方向に沿って正の値および負の値が規定されることができる。言い換えれば、磁界強度H0が負の値(H0<0)に設定されると、磁界19の向きは反転する。負の値が減少すると、反転後の磁界は増大する。しかも、磁界強度H0には「0(ゼロ)」値が含まれる。磁界強度H0に「0」値が設定されると、電磁石17、17から磁界は発生されない。ただし、本明細書中ではいずれも磁界強度H0の「磁界」と表現される。磁界強度H0は適宜の値に設定されればよい。
ステップS3でCPU31は第1検出値sk(H0)を取得する。第1検出値sk(H0)の取得にあたってビームスポットは位置(Xi,Yj)に位置決めされる。レーザビームは磁性体14の表面から反射する。レーザビームでは磁性体14の磁気カー効果の働きで偏光面の回転が引き起こされる。偏光面の回転は差動アンプ27で定量化される。こうしてA/Dコンバータ28は偏光面の回転量に応じた大きさで第1検出値sk(H0)を出力する。CPU31は例えば記憶装置32に第1検出値sk(H0)を記録する。
ステップS4では、CPU31の処理動作に基づき磁界強度H0よりも小さな磁界強度H1(<H0)で磁性体14に磁界19は印加される。前述と同様に、磁界の印加にあたってCPU31は所定の指令信号を生成する。こうした指令信号に基づき電磁石ドライバ18は電磁石17、17に電流を供給する。電磁石17、17の働きで磁界強度H1の磁界19は生成される。生成された磁界19はステージ12上の磁性体14に作用する。前述と同様に、磁界強度H1には、負の値(H1<0)や「0(ゼロ)」値が設定されてもよい。
続くステップS5でCPU31は第2検出値sk(H1)を取得する。第2検出値sk(H1)の取得にあたってビームスポットは位置(Xi,Yj)に保持される。A/Dコンバータ28は偏光面の回転量に応じた大きさで第2検出値sk(H1)を出力する。CPU31は例えば記憶装置32に第2検出値sk(H1)を記録する。レーザスポット内で磁化の向きが変化しなければ、第2検出値sk(H1)は第1検出値sk(H0)に一致する。
ステップS6では、CPU31の処理動作に基づき磁界強度H0よりも大きな磁界強度H2(>H0)で磁性体14に磁界19は印加される。前述と同様に、磁界の印加にあたってCPU31は所定の指令信号を生成する。こうした指令信号に基づき電磁石ドライバ18は電磁石17、17に電流を供給する。電磁石17、17の働きで磁界強度H1の磁界19は生成される。生成された磁界19はステージ12上の磁性体14に作用する。前述と同様に、磁界強度H2には、負の値(H2<0)や「0(ゼロ)」値が設定されてもよい。
続くステップS7でCPU31は第3検出値sk(H2)を取得する。第3検出値sk(H2)の取得にあたってビームスポットは位置(Xi,Yj)に保持される。A/Dコンバータ28は偏光面の回転量に応じた大きさで第3検出値sk(H2)を出力する。CPU31は例えば記憶装置32に第3検出値sk(H2)を記録する。レーザスポット内で磁化の向きが変化しなければ、第3検出値sk(H2)は第1検出値sk(H0)や第2検出値sk(H1)に一致する。
第1検出値sk(H0)、第2検出値sk(H1)および第3検出値sk(H2)の測定は規定の回数Nで繰り返される。規定の回数Nの完了がステップS8で確認されるまで、記憶装置32にはN個の第1検出値sk(H0)やN個の第2検出値sk(H1)、N個の第3検出値sk(H2)が記録される。こうして第1検出値sk(H0)、第2検出値sk(H1)および第3検出値sk(H2)の測定が完了すると、CPU31の処理動作はステップS9に移行する。
ステップS9で、CPU31は、取得したN個の第1検出値sk(H0)、N個の第2検出値sk(H1)およびN個の第3検出値sk(H2)に基づき出力値t(H0)を算出する。2:−1:−1の重み付けに基づき第1検出値sk(H0)、第2検出値sk(H1)および第3検出値sk(H2)は加算される。算出にあたって例えば次式が用いられればよい。
ただし、次式が用いられても同様な結果は得られる。
ここで、係数αにはいかなる数値がはめ込まれてもよい。算出の原理は後述される。
その後、CPU31は、ステップS10で、出力値t(H0)に基づき表示処理を実施する。CPU31は出力値t(H0)に基づき画素の種類を決定する。画素は出力値t(H0)の大きさに基づき例えば色分けされればよい。こうして位置(Xi,Yj)で測定される磁化は視覚化される。
続くステップS11では、y列の全ての位置(Xi,Yj)で画素が決定されたか否かが判断される。未決定の画素が残存する場合には、CPU31の処理動作はステップS2に戻る。ステップS2〜S10の処理動作が繰り返されるたびにx座標値は加算されていく。こうしてy列中の全ての位置(Xi,Yj)で画素は決定されていく。y列で全ての画素が決定されると、処理動作はステップS12に移行する。
ステップS12では、ステップS2〜S11の処理動作が全てのy列に対して実施されたか否かが判断される。未処理のy列が残存する場合には、CPU31の処理動作はステップS2に戻る。ステップS2〜S11の処理動作が繰り返されるたびにy座標値は加算されていく。こうして行列L×Mの全ての位置(Xi,Yj)で画素は決定される。ディスプレイ装置33の画面上には磁壁42a、42が描き出される。
ここで、[数2]の原理を簡単に説明する。図5Aに示されるように、指定の磁界強度H0で磁界19が磁性体14に作用すると、磁性体14では磁区41a、41b、41が確立される。次に、磁界強度H0よりも小さい磁界強度H1で磁界19が磁性体14に作用すると、図5Bに示されるように、磁性体14では磁界19の減少に伴い磁区41bは拡大する。磁区41aは縮小する。磁壁42a、42の移動は引き起こされる。特に、磁区41a、41bで規定の方向(x軸)に平行な磁化や反平行な磁化が確立される場合には、規定の方向に平行な磁壁42aは、ほぼその平行な姿勢を維持しつつ、規定の方向に直交するy軸に平行に移動する。ここで、磁界19の減少には規定の方向に反対向きの磁界の増大が含まれる。反対に、磁界強度H0よりも大きい磁界強度H2で磁界19が磁性体14に作用すると、図5Cに示されるように、磁性体14では磁界19の増加に伴い磁区41aは拡大する。磁区41bは縮小する。こうして磁壁42a、42の移動は引き起こされる。磁壁42aは、ほぼその平行な姿勢を維持しつつ、規定の方向に直交するy軸に平行に移動する。ここで、磁界19の増加には規定の方向に反対向きの磁界の減少が含まれる。
第2検出値sk(H1)および第3検出値sk(H2)が加算されると、例えば図5Dに示されるように、磁壁42、42aの移動範囲では個々の位置(Xi,Yj)ごとに異なる向きの磁化ベクトルは加算される。特に、磁壁42aの移動範囲では個々の位置(Xi,Yj)ごとに反平行の磁化同士が仮想的に打ち消される(Mg=0)。磁壁42、42aの移動範囲から外れた領域では個々の位置(Xi,Yi)ごとに同じ向きの磁化ベクトルは加算される。
磁界強度H1、H2の強弱に関わりなく磁化Mgの向きが変化しない場合には、第2検出値sk(H1)と第3検出値sk(H2)とは等しい。第2および第3検出値sk(H1)、sk(H2)の平均値に変化は生じない。同一の磁化が保持される。その一方で、磁壁42の周辺では個々の位置(Xi,Yj)ごとに異なる向きの磁化Mg同士が足し合わせられる。磁化Mgは回転する。第2および第3検出値sk(H1)、sk(H2)の平均値は規定の方向から測定される角度に応じて増減する。
例えば[数2]のように、第1検出値sk(H0)の2倍値から第2および第3検出値sk(H1)、sk(H2)の加算値が差し引かれると、図5Eに示されるように、磁壁42、42aの周辺では個々の位置(Xi,Yj)ごとに磁化ベクトルは残存する。第1、第2および第3検出値sk(H0)、sk(H1)、sk(H2)には均等にノイズが含まれると想定されることから、差し引きに基づきノイズは相殺される。純粋な磁化ベクトルは特定される。その一方で、磁壁42、42aの移動範囲から外れた領域では仮想的に磁化Mgは打ち消される(Mg=0)。こうして磁壁42a、42のみが際立たせられる。したがって、磁性体14の表面状態に拘わらず明瞭な磁区構造は視覚化されることができる。
しかも、図5Eから明らかなように、磁壁42、42aを挟んで磁区41a、41b、41同士の間では磁化Mgの向きは区別される。こうした磁化Mgの向きが視覚化されれば、磁区41a、41b、41内で磁化Mgの向きは比較的に簡単に特定されることができる。例えば図5Fに示されるように、面内磁化x成分のみが検出される場合でも、[数式2]のような計算処理によれば、磁区41a、41b、41内で磁化Mgの向きは十分に推測されることができる。なお、[数式2]のように、出力値t(H0)の算出にあたってN回の測定結果から平均値が求められる必要は必ずしもない。言い換えれば、出力値t(H0)の算出にあたってN=1が設定されてもよい。その他、以上の原理に基づく限り、いかなる計算処理が実行されてもよい。
ここで、図6Aに示されるように、前述のような右回り還流磁区に代えて磁性体14で左回り還流磁区が確立される場面を想定する。磁界強度H0よりも小さい磁界強度H1で磁界19が磁性体14に作用すると、図6Bに示されるように、磁性体14では磁界19の減少に伴い磁区41aは拡大する。磁区41bは縮小する。磁壁42a、42の移動は引き起こされる。このとき、前述の右回り還流磁区とは反対向きに磁壁41a、42は移動する(図5B参照)。反対に、磁界強度H0よりも大きい磁界強度H2で磁界19が磁性体14に作用すると、図6Cに示されるように、磁性体14では磁界19の増加に伴い磁区41bは拡大する。磁区41aは縮小する。磁壁42a、42の移動は引き起こされる。磁壁42a、42は前述の右回り還流磁区とは反対向きに移動する。
前述と同様に、第2検出値sk(H1)および第3検出値sk(H2)が加算されると、例えば図6Dに示されるように、磁壁42aの移動範囲では個々の位置(Xi,Yj)ごとに異なる向きの磁化ベクトルは加算される。特に、磁壁4242aの移動範囲では個々の位置(Xi,Yj)ごとに反平行の磁化同士が仮想的に打ち消される(Mg=0)。磁壁42、42aの移動範囲から外れた領域では個々の位置(Xi,Yj)ごとに同じ向きの磁化ベクトルは加算される。例えば[数2]のように、第1検出値sk(H0)の2倍値から第2および第3検出値sk(H1)、sk(H2)の加算値が差し引かれると、図6Eに示されるように、磁壁42、42aの周辺では個々の位置(Xi,Yj)ごとに磁化ベクトルは残存する。図5Eとの比較から明らかなように、出力値t(H0)では右回り還流磁区とは反対向きに磁化は特定されることができる。例えば図6Fに示されるように、[数式2]のような計算処理によれば、たとえ面内磁化x成分のみが検出される場合でも磁区41a、41b、41内で磁化Mgの向きは十分に推測されることができる。右回り還流磁区と左回り還流磁区とは確実に区別されることができる。
以上のようなカー顕微鏡11では、磁性体14の観察にあたって磁化の飽和は回避されることが望まれる。磁性体14内で磁化が飽和してしまうと、それ以前の磁区の構造は完全に破壊されてしまう。磁壁42a、42同士の接続関係が変化してしまうことが予想される。第1磁界強度H1は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に大きな値に設定されればよい。第2磁界強度H2は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に小さな値に設定されればよい。こうして第1磁界強度H1や第2磁界強度H2が設定されれば、磁性体14内に確立される磁壁同士の接続関係は確実に維持されることが予想される。ただし、第1磁界強度H1は、第1検出値sk(H0)と第2検出値sk(H1)との間に相違を生み出す大きさに設定されなければならない。同様に、第2磁界強度H2は、第1検出値sk(H0)と第3検出値sk(H2)との間に相違を生み出す大きさに設定されなければならない。
一般に、磁性体14では、固有の性質に基づき第1および第2磁界強度H1、H2の大きさと磁壁42a、42の移動量とは相関付けられる。したがって、カー顕微鏡11では、使用者の操作に基づき比較的に簡単に第1磁界強度H1や第2磁界強度H2の大きさは変更されることができることが望まれる。使用者は、ディスプレイ装置33の画面に映し出される磁区の画像に基づき第1磁界強度H1や第2磁界強度H2の大きさを調整すればよい。
本発明者は比較例を検証した。この比較例では、例えば図7A〜図7Cに示されるように、前述と同様に指定の磁界強度H0、第1磁界強度H1および第2磁界強度H2で磁界が磁性体14に印加される。ただし、この比較例では、磁壁42a、42の検出にあたって第3検出値sk(H2)から第2検出値sk(H1)は差し引かれる。この場合には、図7Dに示されるように、磁区41a、41b、42内で磁化Mgの検出値は打ち消される。磁壁42a、42は明瞭に描き出されることができる。
その一方で、図8A〜図8Cに示されるように、この比較例で、右回り還流磁区に代えて磁性体14で左回り還流磁区が確立される場面を検証する。この比較例では、磁壁42a、42の検出にあたって第3検出値sk(H2)から第2検出値sk(H1)は差し引かれると、図8Dに示されるように、磁壁42a、42は明瞭に描き出されることができる。しかしながら、図7Eおよび図8Eの比較から明らかなように、面内磁化x成分に基づき磁化の向きは全く区別されることはできない。図7Fおよび図8Fの比較から明らかなように、面内磁化y成分に基づき磁化の向きは全く区別されることはできない。以上のように、比較例では、磁壁42a、42は特定されるものの、磁区41a、41b、41内の磁化の向きは全く特定されることはできない。
前述の第1実施形態に係るカー顕微鏡11では、例えば図9に示されるように、磁区の観察にあたって他の処理動作が用いられてもよい。CPU31は所定のソフトウェアプログラムに従って処理動作を実現する。観察が開始されると、CPU31はステップT1で初期化を実施する。ステップT2では、CPU31の処理動作に基づき初期磁界強度H1で磁性体14に磁界は印加される。磁界の印加にあたってCPU31は所定の指令信号を生成する。こうした指令信号に基づき電磁石ドライバ18は電磁石17、17に電流を供給する。
初期磁界強度H1は指定の磁界強度H0よりも小さい磁界強度に設定される。前述と同様に、任意の磁界強度Hkが負の値(Hk<0)に設定されると、磁界19の向きは反転する。負の値が減少すると、反転後の磁界は増大する。磁界強度Hkには「0(ゼロ)」値が含まれることができる。例えば指定の磁界強度H0に「0」が設定される場合には、初期磁界強度H1には負の値が設定される。
ステップT3でCPU31は位置(Xi,Yj)の検出値s(Hk)を取得する。検出値s(Hk)は、前述と同様に、A/Dコンバータ28から出力される検出信号から特定される。CPU31は例えば記憶装置32に検出値s(Hk)を記録する。
ステップT4では、CPU31は磁界強度Hkを設定し直す。従前の磁界強度Hkに増加分の磁界強度Hincは加算される。ステップT5でCPU31は代数kを更新する。続くステップT6ではCPU31の処理動作に基づき磁界強度Hkで磁性体14に磁界19は印加される。すなわち、磁界19の磁界強度Hkは増大する。ステップT7でCPU31は位置(Xi,Yj)の検出値s(Hk)を取得する。
ステップT8で、CPU31は磁界強度Hkの出力値t(Hk)を算出する。CPU31は、例えば奇関数f(H)および偶関数g(s)に基づき次式に従って出力値t(Hk)を算出する。
ただし、
算出の原理は後述される。算出された出力値t(Hk)はステップT9で累積されていく。ステップT10では、磁界強度Hkが最大磁界強度HNに到達したか否かが判断される。到達していなければ、CPU31の処理動作は再びステップT4に戻る。こうして磁界強度の増大に伴い個々の磁界強度Hkで出力値t(Hk)は取得されていく。ここで、最大磁界強度HNは指定の磁界強度H0よりも大きい磁界強度に設定される。この場合には、初期磁界強度H1から指定の磁界強度H0までの範囲は磁界強度H0よりも小さな第1磁界強度範囲に相当する。その一方で、指定の磁界強度H0から最大磁界強度HNまでの範囲は磁界強度H0よりも大きな第2磁界強度範囲に相当する。
個々の磁界強度Hkで取得される出力値t(Hk)が累積される結果、出力値t(H0)は特定される。この出力値t(H0)では、磁界19の増大に伴い引き起こされる磁化の増大の有無が特定される。こうした増大の有無に応じて、規定の磁界強度H0の磁界に曝される磁性体14では磁壁の位置が特定されることができる。しかも、磁区内では磁化の向きは比較的に簡単に推測されることができる。例えば第1磁界強度範囲内の変化中に磁化の増大が検出されると、出力値t(H0)は「0(ゼロ)」値よりも大きな値を示す。このとき、位置(Xi,Yj)の磁化ベクトルでは例えば規定の向き(x軸)に正向きに磁化成分は特定されることができる。その一方で、第2磁界強度範囲内の変化中に磁化の増大が検出されると、出力値t(H0)は「0(ゼロ)」値よりも小さい値を示す。このとき、磁化ベクトルでは、反対向きすなわちx軸の負向きに磁化成分は特定されることができる。
ステップT10で出力値t(H0)の算出の完了が確認されると、CPU31はステップT11で出力値t(H0)に基づき表示処理を実施する。こうして位置(Xi,Yj)で測定される磁化は視覚化される。その後、行列L×Mの全ての位置(Xi,Yj)で画素は決定されていく。こうしてディスプレイ装置33の画面上には磁壁42a、42が描き出される。
前述のステップT2〜T10に基づけば次式の計算処理は実現される。
ここで、この[数式6]の原理を簡単に説明する。図10Aに示されるように、指定の磁界強度H0で磁界19が磁性体14に作用すると、磁性体14では磁区41a、41b、41が確立される。次に、初期磁界強度H1で磁界19が磁性体14に作用すると、図10Bに示されるように、磁性体14では磁界19の減少に伴い磁区41bは拡大する。磁区41aは縮小する。磁壁42a、42の移動は引き起こされる。反対に、磁界強度H0よりも大きい最大磁界強度HNで磁界19が磁性体14に作用すると、図10Cに示されるように、磁性体14では磁界19の増加に伴い磁区41aは拡大する。磁区41bは縮小する。磁壁42a、42の移動は引き起こされる。したがって、初期磁界強度H1から最大磁界強度HNまで磁界強度Hkが増大していくと、磁壁42aは所定の測定点43a、43bを横切っていく。こうして磁壁42aが横切る際に個々の測定点43a、43bでは磁化Mgは変化する。すなわち、磁化Mgは回転する。
このとき、測定点43aでは、初期磁界強度H1から磁界強度H0に至るまでに磁化は回転する。すなわち、指定の磁界強度H0よりも小さい第1磁界強度範囲で磁化は回転する。磁化の回転に伴い、図11Aに示されるように、測定点43aでは磁化Mgは急激に増加する。前述の[数式6]によれば、図12Aから明らかなように、検出値の差分sは磁化の回転時に所定の値を示すものの、磁化の回転前や磁化の回転後には「0(ゼロ)」値が維持される。ここで、検出値の差分sは磁化の変化すなわち増大の微分値に相当する。
その一方で、測定点43bでは、磁界強度H0から最大磁界強度HNに至るまでに磁化は回転する。すなわち、指定の磁界強度H0よりも大きい第2磁界強度範囲で磁化は回転する。磁化の回転に伴い、図11Bに示されるように、測定点43bでは磁化Mgは急激に増加する。前述の[数式6]によれば、図12Bから明らかなように、検出値の差分sは磁化の回転時に所定の値を示すものの、磁化の回転前や磁化の回転後には「0(ゼロ)」値が維持される。
偶関数g(s)に奇関数f(H)が掛け合わせられると、図12Aから明らかなように、測定点43aでは差分sに負の値は掛け合わせられる。その一方で、図12Bに示されるように、測定点43bでは差分sに正の値は掛け合わせられる。したがって、測定点43aと測定点43bとは確実に区別されることができる。すなわち、指定の磁界強度H0の磁界に曝される磁性体14では磁区41a、41b内の磁化の向きは確実に区別される。しかも、同一の位置(Xi,Yj)が維持される限り検出値s(Hk)には均等にノイズが含まれることが想定されることから、検出にあたってノイズの影響は確実に排除されることができる。
奇関数f(H)には例えば次式のようなステップ関数が用いられればよい。
その他、次式のような奇関数f(H)が用いられてもよい。
こういった奇関数f(H)によれば、出力値t(H0)では、磁化の回転が引き起こされる磁界強度Hkと指定の磁界強度H0との差分に比例した値は特定されることができる。磁区41a、41bの構造はさらに詳細に観察されることができる。
その一方で、偶関数g(s)には次式のような関数が用いられてもよい。こういった偶関数によれば、磁化の変化に対して感度は高められることができる。
その他、偶関数g(s)には次式のようなステップ関数が用いられてもよい。ここでは、閾値sTHはノイズの大きさなどに基づき適宜に設定されればよい。
なお、前述と同様に、初期磁界強度H1は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に大きな値に設定されればよい。最大磁界強度HNは、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に小さな値に設定されればよい。こうして初期磁界強度H1や最大磁界強度HNが設定されれば、磁性体14内に確立される磁壁同士の接続関係は維持されることが予想される。ただし、初期磁界強度H1や最大磁界強度HNは、出力値t(H0)で磁化の増大を判別することができる大きさに設定されなければならない。前述の原理では、磁壁42a、42の移動が生み出されなければ、磁区41a、41b、41内で磁化の向きは検出されることはできない。しかも、前述と同様に、カー顕微鏡11では、使用者の操作に基づき比較的に簡単に初期磁界強度H1や最大磁界強度HNの大きさは変更されることができることが望まれる。使用者は、ディスプレイ装置33の画面に映し出される磁区の画像に基づき初期磁界強度H1や最大磁界強度HNの大きさを調整すればよい。
図9に示される処理動作では、磁界強度の減少に伴い引き起こされる磁化の減少の有無が出力値t(H0)で特定されてもよい。この場合には、初期磁界強度H1に規定の磁界強度H0よりも大きな最大磁界強度が設定されればよい。磁界強度Hkは、この初期磁界強度H1から、指定の磁界強度H0よりも小さな最小磁界強度HNまで減少していけばよい。ここでは、初期磁界強度H1から磁界強度H0までの範囲は第2磁界強度範囲に相当する。磁界強度H0から最小磁界強度HNまでの範囲は第1磁界強度範囲に相当する。
図13Aに示されるように、測定点43aでは磁界強度H0から最小磁界強度HNに至るまでに磁化は回転する。磁化の回転に伴い、測定点43bでは磁化Mgは急激に減少する。前述の[数式6]によれば、図14Aから明らかなように、検出値の差分sは磁化の回転時に所定の値を示すものの、磁化の回転前や磁化の回転後には「0(ゼロ)」値が維持される。その一方で、測定点43bでは、初期磁界強度H1から磁界強度H0に至るまでに磁化は回転する。図13Bに示されるように、磁化の回転に伴い磁化Mgは急激に減少する。前述の[数式6]によれば、図14Bから明らかなように、検出値の差分sは磁化の回転時に所定の値を示すものの、磁化の回転前や磁化の回転後には「0(ゼロ)」値が維持される。こうして前述と同様に、測定点43aと測定点43bとは確実に区別されることができる。ここで、検出値の差分sは磁化の変化すなわち減少の微分値に相当する。
この場合でも、前述と同様に、初期磁界強度H1は、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に小さな値に設定されればよい。最小磁界強度HNは、磁化の飽和を誘引する磁界強度よりも十分に大きな値に設定されればよい。こうして初期磁界強度H1や最小磁界強度HNが設定されれば、磁性体14内に確立される磁壁同士の接続関係は維持されることが予想される。ただし、初期磁界強度H1や最小磁界強度HNは、出力値t(H0)で磁化の増大を判別することができる大きさに設定されなければならない。前述と同様に、使用者の操作に基づき比較的に簡単に初期磁界強度H1や最小磁界強度HNの大きさは変更されることができることが望まれる。
さらにまた、前述の処理動作では出力値t(H0)の算出にあたって[数式6]に代えて次式が用いられてもよい。次式では前述の偶関数g(s)に代えて任意の奇関数h(s)が用いられる。
ただし、
ここで、sgn(T)は次式のようにTの符号を示す。
T=0の場合には、sgn(T)は「0(ゼロ)」値や「1」値、「−1」値のいずれでもよい。
こうした奇関数h(s)の採用によれば、図15Aに示されるように、磁界19が増大する場合でも、反対に磁界19が減少する場合でも、磁壁42aが横切る際に個々の測定点43aで奇関数h(s)およびsgn(T)の積は正の値を示す。同様に、図15Bに示されるように、磁界19が増大する場合でも、反対に磁界19が減少する場合でも、磁壁42aが横切る際に個々の測定点43bで奇関数h(s)およびsgn(T)の積は正の値を示す。その他の場合には、差分sに含まれるノイズの符号(+、−)に基づきノイズは相互に打ち消されることができる。奇関数h(s)には例えば次式のような関数が用いられればよい。
その他、奇関数h(s)には次式のようなステップ関数が用いられてもよい。閾値sTHは適宜に設定されればよい。
図16は本発明の第2実施形態に係るカー顕微鏡の構造を概略的に示す。このカー顕微鏡11aには波形発生器45が組み込まれる。この波形発生器45は、例えば第1周波数のコサイン波といった第1波形信号と、同様に第2周波数のコサイン波といった第2波形信号とを生成する。第2周波数は例えば第1周波数の2倍の周波数に設定される。第1波形信号と第2波形信号との位相差は「0(ゼロ)」値に設定される。すなわち、両者の位相は一致する。第1波形信号は電磁石ドライバ18に供給される。電磁石ドライバ18は、第1波形信号に基づき変化する磁界を生成することができる。磁性体14は、第1波形信号に基づき特定の周期で変化する磁界に曝される。
差動アンプ27には掛け算器46が接続される。この掛け算器46は、差動アンプ27から出力される電気信号すなわち検出信号に、波形発生器45から供給される第2波形信号を掛け合わせる。こうして掛け算器46では、検出信号で特定される検出値と、第2波形信号で特定される数値との積が算出される。
掛け算器46にはローパスフィルタ47が接続される。このローパスフィルタ47では掛け算器46の出力に積分処理が施される。ローパスフィルタ47の出力はA/Dコンバータ28でデジタル信号に変換される。こうしたデジタル信号がコンピュータ装置29のCPU31に取り込まれる。図中、前述の第1実施形態と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
こういったカー顕微鏡11aによれば、磁性体14に作用する磁界19の変化に応じて検出信号で磁化の回転は特定されることができる。検出値と数値との積では磁化の回転は強調されることができる。しかも、この強調にあたって磁化の向きに応じて検出信号では異なる極性(符号)が特定されることができる。こうしてカー顕微鏡11aは、ディスプレイ装置33の画面上に磁壁42a、42の位置は映し出されることができる。磁区41a、41b、41内の磁化の向きは比較的に簡単に特定されることができる。
ここで、第2実施形態に係るカー顕微鏡11aの原理を簡単に説明する。例えば、図6Aや図8Aに示されるような左回り還流磁区の磁性体14上で測定点43a、43bが設定される場面を想定する。第1波形信号に基づき磁界19が生成されると、磁界19は特定の周期で増減を繰り返す。このとき、例えば図17Aに示されるように、測定点43bでは磁界19の増減に伴い磁化が変化する。磁化は磁界19の増減に応じて反転を繰り返す。図17Bに示されるように、測定点43aでは磁界19の増減に応じて同様に磁化は反転を繰り返す。このとき、磁化M(t)は次式のようなステップ関数で表現されることができる。
ここで、測定点43bのu値およびv値は次式で表現されることができる。
同様に、測定点43aのu値およびv値は次式で表現されることができる。
ただし、c1やc2は磁壁42aからの位置に関連するパラメータとみなされる。d1やd2は磁壁42aの移動の遅れに関連するパラメータとみなされる。特に、測定点43bと測定点43aとが磁壁42aに対して線対称に配置され、かつ、相互に近接する場合には近似的に次式が成立する。
M(t)は次式に基づきフーリエ級数展開されることができる。
その結果、次式が得られる。
ここで、a1(1)、b1(1)、a2(1)およびb2(1)は測定点43bで得られる係数を示す。a1(2)、b1(2)、a2(2)およびb2(2)は測定点43aで得られる係数を示す。したがって、次式から明らかなように、第1波形信号の周波数と第2波形信号の周波数とが一致すると、検出信号で測定点43bと測定点43aとは区別されることはできない。測定点43bと測定点43aとで極性(符号)は一致してしまう。
その一方で、第1波形信号に比べて第2波形信号で2倍の周波数が設定されると、測定点43bと測定点43aとは完全に区別されることができる。図18Aや図18Bを併せて参照すると明らかなように、測定点43bと測定点43aとで信号の極性は異なる。磁壁42aの位置だけでなく磁区41a、41b、41内の磁化の向きは特定されることができる。
ただし、次式から明らかなように、2倍周波数成分のパワーは測定点43bと測定点43aとで一致してしまう。したがって、スペクトラムアナライザで2倍周波数成分が検出されても、磁区41a、41b、41内の磁化の向きが特定されることはできない。
なお、磁壁42aの移動の遅れが小さい場合には、d=0が設定されてもよい。その結果、例えばフーリエ級数展開によれば次式が得られる。
したがって、検出値で、第2波形信号との間でピークの位相が一致する成分が検出されれば、磁壁42aの移動の遅れが小さくても良好に磁区41a、41b、41内の磁化の向きは特定されることができる。
その他、第1および第2波形信号の位相差は例えば180°や−180°に設定されてもよい。コサイン波やその他の三角関数波に代えて三角波が用いられてもよい。掛け算器46およびローパスフィルタ47の組み合わせはいわゆるロックインアンプに置き換えられてもよい。さらに、掛け算器46やローパスフィルタ47すなわち積分器の働きは例えばソフトウェアプログラムで実現されてもよい。こういったソフトウェアプログラムの処理動作は例えば差動アンプ27の出力に対して実施されればよい。このとき、差動アンプ27の出力は例えばアナログデジタル(A/D)コンバータでデジタル信号に変換された後にソフトウェアプログラムに受け渡されればよい。
図19は本発明の第3実施形態に係るカー顕微鏡の構造を概略的に示す。このカー顕微鏡11bでは、差動アンプ27と掛け算器46との間にハイパスフィルタ48が配置される。このハイパスフィルタ48では、差動アンプ27から出力される検出値に微分処理が施される。したがって、微分処理後の検出値が掛け算器46に入力される。その他、前述の第2実施形態と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
このカー顕微鏡11bでは、波形発生器45は、第1波形信号と第2波形信号との位相差は+90°や−90°に設定される。すなわち、第1波形信号に例えば第1周波数のコサイン波が用いられる場合には、第2波形信号には第2周波数のサイン波が用いられればよい。前述と同様に、第2周波数は第1周波数の2倍の周波数に設定される。
こういったカー顕微鏡11bによれば、磁性体14に作用する磁界19の変化に応じて検出信号で磁化の回転は特定されることができる。検出値と微分処理後の検出値との積では磁化の回転は強調されることができる。しかも、この強調にあたって磁化の向きに応じて検出信号では異なる極性(符号)が特定されることができる。こうしてカー顕微鏡11aは、ディスプレイ装置33の画面上に磁壁42a、42の位置を映し出すことができる。磁区41a、41b、41内の磁化の向きは比較的に簡単に特定されることができる。
いま、図6Aや図8Aに示されるような左回り還流磁区の磁性体14上で測定点43a、43bが設定される場面を想定する。第1波形信号に基づき磁界19が生成されると、磁界19は特定の周期で増減を繰り返す。このとき、例えば図17Aに示されるように、測定点43bでは磁界19の増減に伴い磁化が変化する。磁化は磁界19の増減に応じて回転を繰り返す。図17Bに示されるように、測定点43aでは磁界19の増減に応じて同様に磁化は回転を繰り返す。
図20Aおよび図20Bから明らかなように、第1波形信号の周波数と第2波形信号の周波数とが一致すると、検出信号で測定点43bと測定点43aとは区別されることはできない。測定点43bと測定点43aとで極性(符号)は一致してしまう。その一方で、第1波形信号に比べて第2波形信号で2倍の周波数が設定されると、図21Aおよび図21Bに示されるように、測定点43bと測定点43aとで信号の極性は異なる。測定点43bと測定点43aとは完全に区別されることができる。その結果、磁壁42aの位置だけでなく磁区41a、41b、41内の磁化の向きに関する情報は得られることができる。
なお、以上のようなカー顕微鏡11、11a、11bでは、いわゆるCCDに基づき検出信号は生成されてもよい。光源21には、間欠的に発光するパルス光源が用いられてもよい。その他、前述の磁界生成機構16は複数の方向に沿って磁界19、19を発生する複数組の電磁石17を備えてもよい。こうした磁界生成機構16によれば、様々な方向から面内磁化x成分や面内磁化y成分は検出されることができる。可動ステージ12は、水平面に直交する回転軸回りで回転してもよい。
Claims (25)
- 所定の方向に沿って磁性体に指定の磁界強度H0で磁界を印加する工程と、磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、磁化の第1検出値を特定する工程と、指定の磁界強度H0よりも小さな第1磁界強度H1の磁界内で磁性体の磁化を検出し、磁化の第2検出値を特定する工程と、指定の磁界強度H0よりも大きな第2磁界強度H2の磁界内で磁性体の磁化を検出し、磁化の第3検出値を特定する工程と、2:−1:−1の重み付けに基づき第1、第2および第3検出値を加算する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第1項または第2項に記載の磁化観察方法において、前記第1磁界強度は、磁性体内に確立される磁壁同士の接続関係を維持する大きさに設定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の磁化観察方法において、前記第2磁界強度は、磁性体内に確立される磁壁同士の接続関係を維持する大きさに設定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の磁化観察方法において、前記第1磁界強度は、第1検出値と第2検出値との間に相違を生み出す大きさに設定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の磁化観察方法において、前記第2磁界強度は、第1検出値と第3検出値との間に相違を生み出す大きさに設定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 指定の磁界強度、指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度、並びに、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度で磁界を発生する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、指定の磁界強度並びに第1および第2磁界強度の磁界の印加時に磁性体の磁気光学効果に基づき対応の第1、第2および第3検出値を特定する検出信号を出力する受光素子と、受光素子に接続されて、2:−1:−1の重み付けに基づき第1、第2および第3検出値を加算するプロセッサとを備えることを特徴とする磁化観察装置。
- 指定の磁界強度H0の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第1検出信号を取得する工程と、指定の磁界強度H0よりも小さな第1磁界強度H1の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第2検出信号を取得する工程と、指定の磁界強度H0よりも大きな第2磁界強度H2の磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第3検出信号を取得する工程と、2:−1:−1の重み付けに基づき、第1、第2および第3検出信号でそれぞれ特定される磁化の検出値を加算する工程とをプロセッサに実行させることを特徴とする磁化観察ソフトウェアプログラム。
- 指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、第1磁界強度範囲内の磁界の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出する工程と、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、第2磁界強度範囲内の磁界の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第9項に記載の磁化観察方法において、変化の有無の検出にあたって、第1および第2磁界強度範囲で磁界強度を増大させ、磁化の変化に相当する磁化の増大を検出することを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第10項に記載の磁化観察方法において、前記磁化の増大の検出にあたって、磁化の変化に基づき微分値が特定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第11項に記載の磁化観察方法において、前記微分値の特定にあたって、前記第1および第2磁界強度範囲で離散的に磁界強度を増大させる工程と、個々の磁界強度ごとに磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、個々の磁界強度ごとに磁化の検出値を特定する工程と、今回の検出値から前回の検出値を差し引き、磁化の変化値を算出する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第9項〜第12項のいずれかに記載の磁化観察方法において、変化の有無の検出にあたって、第1および第2磁界強度範囲で磁界強度を減少させ、磁化の変化に相当する磁化の減少を検出することを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第13項に記載の磁化観察方法において、前記磁化の減少の検出にあたって、磁化の変化に基づき微分値が特定されることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第14項に記載の磁化観察方法において、前記微分値の特定にあたって、前記第1および第2磁界強度範囲で離散的に磁界強度を減少させる工程と、個々の磁界強度ごとに磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、個々の磁界強度ごとに磁化の検出値を特定する工程と、今回の検出値から前回の検出値を差し引き、磁化の変化値を算出する工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲、並びに、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界を発生する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、磁性体から帰還する光を受光する受光素子と、受光素子に接続されて、第1磁界強度範囲の変化中および第2磁界強度範囲の変化中に磁性体の磁気光学効果に基づき磁化の変化の有無を検出するプロセッサとを備えることを特徴とする磁化観察装置。
- 指定の磁界強度よりも小さな第1磁界強度範囲で変化する磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第1検出信号を取得する工程と、第1検出信号に基づき磁化の変化の有無を検出する工程と、指定の磁界強度よりも大きな第2磁界強度範囲で変化する磁界内に配置される磁性体の磁化に基づき生成される第2検出信号を取得する工程と、第2検出信号に基づき磁化の変化の有無を検出する工程とをプロセッサに実行させることを特徴とする磁化観察ソフトウェアプログラム。
- 波形信号に基づき特定の周期で変化する磁界を磁性体に作用させる工程と、磁気光学効果に基づき磁性体の磁化を検出し、磁化の検出値を特定する工程と、特定された検出値に、波形信号に一定の位相関係で同期しつつ波形信号の2倍の周波数で周期的に変化する数値を掛け合わせる工程とを備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第18項に記載の磁化観察方法において、検出値と数値との乗算結果に積分処理を施す工程をさらに備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第18項または第19項に記載の磁化観察方法において、前記波形信号の極大値および極小値を示す位相は、前記数値の極大値および極小値のいずれかを示す位相に一致することを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第18項または第19項に記載の磁化観察方法において、前記数値との掛け合わせに先立って、前記検出値に微分処理を施す工程をさらに備えることを特徴とする磁化観察方法。
- 請求の範囲第21項に記載の磁化観察方法において、前記波形信号の極大値および極小値を示す位相は、前記数値で極大値および極小値の中間値を示す位相に一致することを特徴とする磁化観察方法。
- 波形信号に基づき特定の周期で変化する磁界を生成する磁界生成機構と、磁界生成機構で生成される磁界に曝される磁性体まで光を誘導する光学系と、磁性体から帰還する光に基づき磁気光学効果の検出値を特定する検出信号を出力する受光素子と、受光素子に接続されて、波形信号に一定の位相関係で同期しつつ波形信号の2倍の周波数で周期的に変化する周期信号を検出信号に掛け合わせる掛け算器とを備えることを特徴とする磁化観察装置。
- 請求の範囲第23項に記載の磁化観察装置において、前記掛け算器にはローパスフィルタが接続されることを特徴とする磁化観察装置。
- 請求の範囲第23項または第24項に記載の磁化観察装置において、前記掛け算器および受光素子の間にはハイパスフィルタが配置されることを特徴とする磁化観察装置。
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