JPWO2004110405A1 - 薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤の製造装置 - Google Patents

薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤の製造装置 Download PDF

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Abstract

薬物粉末の成形体2にレーザー光3を照射することにより薬物を微細化成分として放出せしめて得た薬物ナノ粒子7であり、この薬物ナノ粒子7の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする薬物ナノ粒子7である。上記構成によれば、医薬物、農薬、化成肥料等に用いた場合に、生物学的利用能および純度が高く、取扱い性も良好であり、かつ簡単な工程により効率よく製造できる薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤製造装置を提供することができる。

Description

本発明は薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤製造装置に係り、特に医薬物、農薬、化成肥料等に用いた場合に、生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)および純度が高く、取扱い性も良好であり、かつ簡単な工程により効率よく製造できる薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤製造装置に関する。
従来から、医薬品,農薬,化成肥料等においては、薬物原体(薬物自体)がそのまま使用されることは極めて少なく、使用目的に応じて粒径が調整されたり、他の添加剤と複合化されたりして製剤化して初めて生体等に投与される。特に、医薬物の製剤分野においては、薬物原体の生体内での生物学的利用能を高めて治療効果を増強し、生体への投与量を低減して副作用を抑制することが要求されている。
また、医薬物分野においては、薬物原体の薬理活性作用を損なわないように、その安定性,溶解性,溶出速度,濡れ性,分散性,流動性,充填性,圧縮成形性等の物理化学的特性を調整するために、薬物粉末等を他の賦形剤や担体と複合化して製剤化することも従来から広く実施されている。
このように製剤分野において、薬物原体の生物学的利用能を向上させるために、大きな衝撃圧縮力や剪断応力を薬物原体に作用させる機械衝撃式微粉砕装置や摩砕装置を使用して、薬物原体を長時間にわたり粉砕してその粒子径を低減したり、粒子組織の結晶性を低下せしめたりする方法が採用されている。
しかしながら、上記従来の機械的な微粉砕装置や摩砕装置を長時間使用して得られる薬物粉末の平均粒径は最小でも0.3μm(300nm)程度で限界があった。そのため、特に微細な薬物粉末での投与を必要とする生体内の疾病箇所での生物学的利用能が未だに低いという問題点があった。例えば、ぜんそく治療用の飲み薬は肺に直接投与できず、錠剤の形で血液を通して投与する必要があるために吸収割合が小さく投与量が増大化する欠点があった。
また、薬物粉末(薬物粒子)の物理的な大きさを低減して微細化し、その溶解速度を高めた場合においても、生物学的利用能の飛躍的な向上のためには溶解速度の増加以外に細胞膜透過性が重要な要因となる。薬物の細胞膜透過性を向上させるためには単純に薬物の物理的サイズを低減するのみならず、薬物と細胞膜表面とにおける化学的相互作用を必要とするが、薬物単体の場合では生物学的利用能を飛躍的向上に直結するような、細胞膜表面との化学的相互作用は期待できないという問題点もあった。
また、大きな衝撃圧縮力や剪断応力を薬物原体に作用させる機械衝撃式微粉砕装置や摩砕装置を長時間使用して薬物原体を粉砕しているために、微粉砕時に生じる熱エネルギーが過大になり、薬物原体そのものが熱変性し類縁物質に変化してしまう結果、純度が低下し薬物原体の薬理作用が低下する上に、場合によっては副生する類縁物質による副作用等の悪影響が増大する恐れもある。特に、薬物原体が、熱変性し易い有機物である場合には、長時間の粉砕処理は不可能であり、ナノサイズの有機物薬物原体は得られにくい問題点があった。
さらに、長時間の粉砕・摩砕処理により、粉砕容器からのコンタミネーション(不純物汚染)も問題となり、薬物の純度が低下しやすくなるために解決すべき技術上の課題となっている。また、薬物原体の粒子径を、その平均粒径が100nm以下であるようにナノサイズに極微細化することによって粒子が飛散し易くなって充填性が低下したり、また周囲の分子を再び引き寄せて凝集し易くなって取扱い性も低下したりしてハンドリング上の問題も新たに提起される恐れがある。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、特に医薬品、農薬、化成肥料等に用いた場合に、生物学的な利用能および純度が高く、取扱い性も良好であり、かつ簡単な工程により効率よく製造できる薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者は種々の微粉砕方法を検討し、各粉砕方法およびその操作条件が粉体特性に及ぼす影響を比較検討した。その結果、薬物原体を固形化したターゲットに紫外線パルスレーザーを照射し薬物成分の分子間結合を切るパルスレーザー蒸着法(PLD法:Pulsed Laser Deposition法)を採用することにより、温度上昇を抑制しつつ熱変性し易い有機物の薬物であっても、平均粒径が10nmから100nmとなるように超微細な粒子を生成することが可能になり、生物学的利用能が飛躍的に高められた薬物ナノ粒子が効率的に得られるという知見を得た。
また、得られた薬物ナノ粒子をその場で直接的に他の賦形剤粒子(担体粒子)表面に連続的に付着させることにより、複合化した薬剤粒子を一段階の処理で効率的に製造することが可能になり、また薬物ナノ粒子を安定的に取り扱うことも可能になるという知見も得られた。
さらに、薬物と蛋白質とから成る成形体にレーザー光を照射し、薬物−蛋白質複合体粒子を形成したときに、蛋白質を介した細胞膜への化学的相互作用により薬物の細胞膜における透過性を大幅に改善することができ、薬物の生物学的利用能を飛躍的に高めることができるという知見も得られた。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明に係る薬物ナノ粒子は、薬物粉末の成形体にレーザー光を照射することにより薬物を分子、クラスターレベルの微細化成分として放出せしめて得た薬物ナノ粒子であり、この薬物ナノ粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする。
本発明に係る薬物−蛋白質ナノ複合体は、薬物粉末と蛋白質との混合物成形体にレーザー光を照射することにより、両者を微細化成分として放出せしめて得た薬物−蛋白質ナノ複合体であり、該複合体を構成する薬物および蛋白質ナノ粒子の平均粒径がそれぞれ100nm以下であることを特徴とする。
本発明では薬物原体、蛋白質等の微細化手段としてPLD法(パルスレーザー蒸着法)を用いているため、従来の機械的な粉砕装置では到底得られない100nm以下、好ましくは30nm以下の平均粒径を有するナノ粒子が実現し、薬物の生物学的利用能を飛躍的に向上させることができる。
また、PLD法によれば、処理時の温度上昇を抑制することができるために、特に薬物が有機物である場合においても熱変性や分解が生じることが少なく、製品純度が高い薬物ナノ粒子が得られる。
さらに医薬品分野において、薬物をナノサイズにすることによって病変部位のみに選択的に薬物を投与できるため、薬物の効果の向上や副作用の抑制など、薬物伝送(ドラッグデリバリー)における新たな改善効果も期待できる。例えば、生体の正常細胞と癌細胞とにおいては、細胞膜での薬物の浸透性および透過性が薬物の粒径に対応して異なることが知られている。そこで癌細胞のみに浸透する微細粒径の薬物を投与することにより、当該薬物を癌細胞のみに集中的に供給でき、生物学的利用能を飛躍的に向上させることが可能になると共に、薬物の投与量(服用量)を大幅に低減できるため、副作用を効果的に抑制することができる。
上記薬物ナノ粒子において、前記成形体が薬物粉末に加えて蛋白質を含有することが好ましい。この場合、薬物と蛋白質とから成る成形体にレーザー光を照射し、薬物−蛋白質複合体粒子を形成することが可能である。この薬物−蛋白質複合体粒子によれば、薬物単体では発現が困難である細胞膜表面との化学的相互作用が、蛋白質を介して期待することができるため、薬物の細胞膜における透過性を大幅に改善することができ、薬物の生物学的利用能を飛躍的に高めることができる。
なお、上記薬物と蛋白質との化学的相互作用の有無は、次のような方法で確認できる。すなわち、パルスレーザー蒸着前における成形体と蒸着後に生成した薬物−蛋白質複合体粒子とについて、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)法により分析を行い、各波数に対する吸収度を表す波形ピークが蒸着前後において変化が少ない場合には、薬物と蛋白質との化学的相互作用はないと判断できる。
ここで、本発明における薬物ナノ粒子の平均粒径は、以下のような方法で測定される。すなわち、銅メッシュにコロジオン膜を付着させたマイクログリッド上にPLD法によって蒸着された粒子群の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を画像解析し、任意の10個の粒子について、その各粒子に外接する正円の直径を測定し、それらの直径の平均値を薬物ナノ粒子の平均粒径とした。
また、上記本発明の薬物ナノ粒子において、前記レーザー光を照射されることにより変質し、薬物の類縁物質に変化した薬物の全薬物重量に対する割合は少なければ少ないほど好ましい。
上記類縁物質に変化した薬物の割合が大きくなるほど製剤の純度が低下する上に、類縁物質による副作用等の弊害が顕著になる場合があり、好ましくない。
そもそも前記のように、PLD法によれば、従来の機械衝撃式粉砕法と比較して処理時の温度上昇を抑制することができるために、薬物が有機物である場合においても熱変性や分解が生じることが極めて少なく、純度が高い薬物ナノ粒子が得られる。
上記類縁物質に変化した薬物ナノ粒子の有無は、例えば原料薬物粉末およびPLD法によってガラス基板上に蒸着堆積させた薬物薄膜をアセトンに溶解させたそれぞれの試料について核磁気共鳴(NMR)スペクトルを求め、上記PLD法による処理前後における両スペクトルを対比し、処理後のスペクトルにおいて薬物の分解によって生じた類縁物質に相当する新たなピークが観察されるか否かによって判断することができる。
また、上記類縁物質に変化した薬物ナノ粒子の有無および変化量は、別法として以下に示すような高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって分析することも可能である。すなわち、パルスレーザー蒸着前における成形体と蒸着後に生成した薬物−蛋白質複合体粒子とを、それぞれ移動相としての溶媒中に溶解せしめ、分離媒体を充填したカラム内に各溶液を流し込み、分離媒体に対する各成分の吸着速度の相違に起因して生じる移動相の突出が、パルスレーザー蒸着前後においてないか、または検出限界以下である場合には、類縁物質はほぼ生成していないものと判断できる。
なお本発明において、薬物とは所定の薬理効果を有する物質を示し、薬剤とはその薬物を賦形剤などと複合化した製品を示すものとする。
本発明に係る薬剤の製造方法は、減圧不活性ガス雰囲気において、薬物成分から成るターゲットにレーザー光を照射することにより該薬物成分の分子間結合を切断して、微細化成分として放出する工程と、放出された該微細化成分から生成した平均粒径100nm以下のナノ粒子を賦形剤粒子表面に付着堆積させる工程とを備えることを特徴とする。
また、成形体が薬物粉末に加えて蛋白質を含有し、薬物と蛋白質とから成る成形体にレーザー光を照射し、賦形剤粒子表面に薬物−蛋白質ナノ複合体粒子を付着させて薬剤を形成する本発明に係る薬剤の製造方法は、減圧不活性ガス雰囲気において、固形薬物成分および蛋白質から成るターゲットにレーザー光を照射することにより該薬物成分および蛋白質の分子間結合を切断して薬物および蛋白質を微細化成分として放出する工程と、放出された該微細化成分から生成した各々平均粒径100nm以下のナノ粒子(薬物粒子と蛋白質粒子)を複合体として賦形剤粒子表面に付着させる工程とを備えることを特徴とする。
上記薬物成分および蛋白質を微細化成分として放出する工程と微細化成分からナノ粒子を生成する工程においては、該粒子の平均粒子径を制御するために、雰囲気圧が1〜1000Pa程度の減圧不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。不活性雰囲気ガスとしては窒素,アルゴン,キセノン,ヘリウムガス等が用いられる。
上記賦形剤粒子としては、生体に対して無害性・不活性(薬理活性がないこと)であり、化学的、物理的に安定であれば、特に限定されないが、例えば乳糖,グルコース,デキストリン,コーンスターチ,馬鈴薯澱粉などの賦形剤が好適に使用できる。
特に上記賦形剤として蛋白質を使用し、薬物と蛋白質とから成る成形体にレーザー光を照射し、蛋白質から成る微細粒子と薬物の微細粒子とを放出せしめ複合化させて、薬物−蛋白質複合体粒子を形成したときに、薬物の細胞膜における透過性を大幅に改善することができ、薬物の生物学的利用能を飛躍的に高めることができる。
また上記薬剤の製造方法によれば、調製した薬物ナノ粒子や薬物−蛋白質ナノ複合体粒子を直接賦形剤にコーティングすることによって複合化した薬剤としているため、ナノ粒子の飛散や再凝集が効果的に阻止でき、ナノ粒子のハンドリング性の問題を解決することができる。
さらに上記薬剤の製造方法において、前記薬物粉末を成形して固形状のターゲットを調製するには、金型成形法のように金型に充填した薬物粉末に単に加圧力のみを作用させて成形体を調製することも可能である。しかしながら、ある種の薬物粉末では加圧成形しただけでは充分な構造強度が得られず、成形体を金型から取り出す際に割れ(キャッピング)を発生することもある。
このような割れを防止するためには、薬物粉末をその融点未満の温度に加熱すると同時に加圧するというホットプレス法を使用して固形状のターゲットを調製することも効果的である。または、薬物粉末をその融点直下の温度に加熱すると同時に加圧して薬物粉末を部分的に溶融せしめた後に急冷凝固せしめて固形状のターゲットを調製するという溶融急冷法を使用して成形することも効果的である。
上記薬剤の製造方法によれば、薬物や蛋白質の微細化成分がターゲットから放出され、その微細化成分から生成した薬物ナノ粒子または薬物−蛋白質ナノ複合体が賦形剤粒子表面に直接的に付着堆積され、該ナノ粒子またはナノ複合体粒子と賦形剤粒子とが複合化した薬剤が1段階の処理操作によって効率的に製造できる。
また、本発明に係る薬剤製造装置は、薬物粉末の成形体から成るターゲットと、このターゲットにレーザー光を照射することにより薬物成分の分子間結合を切断し、薬物の微細化成分として放出するレーザー発信装置と、放出された該微細化成分から生成した平均粒径100nm以下のナノ粒子を賦形剤粒子表面に付着させる薬剤容器と、上記ターゲットおよび薬剤容器を収容する真空容器とを備えることを特徴とする。
ターゲットに照射するレーザー光としては、エネルギー密度が高い紫外線パルスレーザー光が好適である。レーザー照射条件として、レーザー光の波長は短波長ほど照射エネルギーが大であり、単位時間あたりに放出する微細化成分を増加させることができるが、266nm〜1064nmの範囲が好適である。また、レーザー出力は大きい方がより効率的に微細化成分を放出できるが、過度に出力を高めると、類縁物質が発生して、薬剤の純度が低下する可能性がある。しかしながら、このレーザー出力が5〜20J/cmの範囲内である場合においては、類縁物質が発生しないことが確認されている。
この紫外線パルスレーザー光を固体ターゲットに照射することにより、ターゲットを構成する薬物成分や蛋白質の分子間結合が切断されて分子、クラスターレベルの大きさ(粒子)に微細化され、光化学的に励起され放出されたこの微細化薬物成分等は、ターゲットに対向して配置された賦形剤粒子または基板の表面に到達するまでの間に、雰囲気ガスの分子や他の薬物微細化成分と衝突して、また該賦形剤粒子または基板の表面に衝突して、(薬物微細化成分同士が凝集して)平均粒径が100nm以下のナノ粒子となって該表面に付着・堆積し、薬物ナノ粒子が賦形剤粒子に複合化した薬剤が調製される。
前記のように、薬物ナノ粒子の平均粒径を100nm以下に調整するために、真空容器(真空チャンバー)中の雰囲気圧は1〜1000Pa程度の減圧不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。雰囲気ガスとしては特に窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。
上記雰囲気圧が高いほど薬物ナノ粒子の粒径が大きくなる傾向があり、このように雰囲気圧を適宜調整することにより、PLD法によって生成する薬物ナノ粒子の平均粒径を的確に制御することができる。
上記薬剤の製造装置によれば、PLD処理を真空容器内で実施しているために、従来の粉砕容器を使用した機械的粉砕装置と比較してコンタミネーション(不純物汚染)の問題が解消できる。
また、特にPLD法では、薬物の成形体、または薬物および蛋白質から成る成形体である固体ターゲットに紫外線または赤外線レーザーを照射し、ターゲットを構成する薬物成分や蛋白質の分子間結合を切る方式を採用し、光化学的に励起された微細化薬物成分を放出させているため、温度上昇が抑制され熱変性しやすい有機薬物の微細化も可能であり、品質が安定した有機材料から成る薬物ナノ粒子をも容易に生成することができる。
また粒子状の賦形剤粒子の表面全体に薬物ナノ粒子または薬物−蛋白質ナノ複合体が付着するようにして複合化物としての薬剤粒子を製造する場合において、賦形剤粒子群を静置した状態でターゲットに対向配置してPLD操作を実施しても、薬物ナノ粒子または薬物−蛋白質ナノ複合体は賦形剤粒子のターゲット側表面を中心に付着形成されるだけであり、賦形剤粒子群の全表面に均一に成膜することが困難である。
そこで、例えば顆粒状の乳糖,グルコース,デキストリンやコーンスターチなどを賦形剤として、その表面に薬物ナノ粒子または薬物−蛋白質ナノ複合体を付着せしめ、密集した皮膜状の薄層を形成して複合粒子を製造する場合においては、賦形剤粒子群等に連続的または間歇的に振動を負荷し流動化させる振動装置をさらに装備した薬剤製造装置とすることが望ましい。
上記振動装置により賦形剤粒子群に連続的または間歇的に振動を付与することにより、基材粒子が流動化して向きが変わるため、各賦形剤粒子表面全体に薬物ナノ粒子の薄層を均一に付着形成することが可能になる。
上記の薬剤製造装置によれば、PLD処理を真空容器内で実施しているために、従来の粉砕容器を使用した機械的粉砕装置と比較してコンタミネーションの問題が解消できる。
また、従来の微細化粒子と賦形剤粒子との複合化処理では、粒子の微細化工程と、賦形剤粒子への複合化工程とが別工程として分離されており、各工程間の原料や処理物の移送途中でコンタミネーションが生じたり、製造工程が煩雑になる問題があった。
しかるに、上記の薬剤製造装置によれば、真空容器内において所定の薬物成分、または薬物および蛋白質成分から成るターゲットにレーザー光を照射することにより薬物成分等を微細化し、引き続いてこの微細化成分から生成したナノ粒子を直接的に賦形剤粒子表面上に付着させているため、微細なナノ粒子の薄層が賦形剤粒子表面上に付着形成した複合材としての薬剤を1段階のみのPLD操作によって極めて容易に製造することができる。
また、上記の薬剤製造装置においてターゲットとして薬物と蛋白質とから成る成形体を使用し、この成形体にレーザー光を照射し、賦形剤粒子の表面に薬物−蛋白質ナノ複合体粒子を付着させた場合には、蛋白質を介して薬物と細胞膜表面間の化学的相互作用が強まり、細胞膜における薬物の透過性を大幅に改善することができ、薬物の生物学的利用能を飛躍的に高めることができる。
本発明に係る薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤の製造装置によれば、PLD法により、薬物の成形体である固体ターゲットに紫外線レーザーを照射し、ターゲットを構成する薬物成分の分子間結合を切る方式を採用し、光化学的に励起された微細化薬物成分を放出させて該成分からナノ粒子を生成しているため、生物学的利用能が飛躍的に向上したナノサイズの薬物粒子を調製することが可能になる。また、PLD法によれば、レーザー光を照射しても、温度上昇が抑制され、熱変性しやすい有機物の微細化も可能であり、品質が安定した有機材料から成る薬物ナノ粒子をも容易に生成することができる。
第1図は、本発明に係る薬物ナノ粒子を使用した薬剤を製造するための方法および装置の一実施例の構成を示す断面図である。
第2図(A),(B)は、実施例1で調製した薬物(PT)ナノ粒子の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。
第3図(A),(B)は、実施例2で調製した薬物(IM)ナノ粒子の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。
第4図(A),(B)は、実施例1に係る薬物(PT)ナノ粒子について、それぞれPLD処理前後におけるNMRスペクトルを示すグラフである。
第5図(A),(B)は、実施例2に係る薬物(IM)ナノ粒子について、それぞれPLD処理前後におけるNMRスペクトルを示すグラフである。
第6図(A),(B)は、実施例3に係る薬物(EZ)ナノ粒子について、それぞれPLD処理前後におけるNMRスペクトルを示すグラフである。
第7図は、賦形剤としての乳糖粒子の表面に薬物(PT)ナノ粒子が密集した皮膜状の薄層が付着形成された複合粒子の構造を示すTEM写真である。
第8図(A),(B)は、実施例5で調製した薬物(IM)ナノ複合粒子の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。
第9図は、実施例5で調製した薬物(IM)ナノ複合粒子について、それぞれPLD処理前後における赤外線吸収スペクトルを示すグラフである。
次に、本発明に係る薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤製造装置の実施形態について、以下の実施例を参照してより具体的に説明する。
[出発原料]
まず各実施例で使用する薬品原料(出発原料)を下記の通り用意した。
すなわち、抗てんかん薬としてのフェニトイン(以下「PT」と略記する;和光純薬工業製)粉末と、解熱鎮痛薬・抗炎症薬としてのγ−インドメタシン(以下「IM」と略記する;Sigma Chemical社製)粉末と、解熱鎮痛薬としてのエテンズアミド(以下「EZ」と略記する;Aldrich社製)粉末と、解熱鎮痛薬・抗炎症薬としてのイブプロフェン(以下「IB」と略記する;東京化成工業製)粉末との4種類の薬物粉末を実施例1〜4用の出発原料として用意して実験を行った。
[パルスレーザー蒸着(PLD)用ターゲットの調製]
上記4種類の各薬物粉末を2gずつ秤量し、内径が30mmである成形用ダイスにそれぞれ充填した。次に、油圧プレス(森試験機製作所製)を用いて55.5MPaの加圧力で3分間加圧し成形体とした。ここで加圧力のみを作用させて形成した実施例1および2用のPT成形体およびIM成形体については、成形型から抜き出す際に、いわゆるキャッピングという全面割れが発生しターゲットとしての構造強度が不十分であることが判明した。そこで、成形性を改善するために、表1に示すように、成形時に加圧力を作用させると同時に、薬物の融点未満の温度に加熱するホットプレス法を採用し構造強度を高めたターゲットを調製した。各実施例における薬物粉末のプレスの条件と融点とを下記の表1に示す。
Figure 2004110405
上記表1に示す結果から明らかなように、融点が比較的に高く緻密化しにくい薬物粉末の場合には、薬物粉末をその融点未満の温度に加熱すると同時に加圧するというホットプレス法を採用することにより、充分緻密で構造強度が高い固形状のターゲットを調製することが可能であった。
[パルスレーザー蒸着(PLD)]
▲1▼ 薬物ナノ粒子の生成
上記のように調製した各実施例用のターゲットを第1図に示すような薬剤製造装置1内に装填してPLD操作を実施することにより、マイクログリッドに薬物ナノ粒子を付着させた。上記マイクログリッドは、銅メッシュ材にコロジオン膜を付着させたものである。
第1図に示す本実施例に係る薬剤製造装置(パルスレーザー蒸着装置)1は、薬物粉末の成形体から成るターゲット2と、このターゲット2にパルスレーザー光3を照射することにより薬物成分の分子間結合を切断し、薬物の微細化成分として放出するレーザー発信装置4と、放出された該微細化成分から生成した平均粒径100nm以下の薬物ナノ粒子7を賦形剤粒子10表面に付着させる薬剤容器5と、上記ターゲット2および薬剤容器5を収容する真空容器6とを備えて構成される。さらに、この薬剤製造装置1には、前記薬物ナノ粒子7を付着させる賦形剤粒子10に振動を付加して流動化させる振動装置8がさらに装備されている。
上記薬剤製造装置1に付設したレーザー発振装置(H−114005)4を使用してPLD操作を実施した。照射するレーザー光としてNd:YAGレーザーの第四高調波(波長266nm,パルス周波数10Hz,パルス幅6−8ns)を使用した。レーザー出力は5〜20J/cmまでの範囲で変化させた。レーザーの照射時間(処理時間)は1時間として実験を行った。
また、真空容器(真空チャンバー)6内に封入した雰囲気ガスは窒素とし、その雰囲気圧は1Paから1000Paまで変化させた。
こうしてマイクログリッドに付着させた薬物ナノ粒子の状態を、透過型電子顕微鏡(TEM:TECNAL F20;PHILLIPS社製)を用いて観察し、生成した各薬剤ナノ粒子の平均粒径を測定した。その結果、実施例1〜4における各薬剤ナノ粒子の平均粒径は15〜20nmの範囲であった。
第2図(A),(B)は実施例1で調製したPTナノ粒子の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。第2図(A),(B)に示すように、実施例1ではマイクログリッド表面に連鎖状に付着した平均粒径が15nmの超微細なPTナノ粒子が得られており、薬物ナノ粒子を効率的に製造できることが判明した。
第3図(A),(B)は実施例2で調製したIMナノ粒子の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。第3図(A),(B)に示すように、実施例2ではマイクログリッド表面に連鎖状に付着した平均粒径が18nmの超微細なIMナノ粒子が得られており、薬物ナノ粒子を効率的に製造できることが判明した。
また、各実施例1〜4においてPLD処理によって調製した各薬物ナノ粒子について、レーザー光照射による熱変性や分解の有無を調査するために、別途ガラス基盤上に付着堆積させた薬物ナノ粒子をアセトン(Acetone−d6;Aldrich社製)に溶解した試料を核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析装置(H−NMR:Varian NMR Spectrometer System;300MHz)にて測定した。同様にPLD処理前の出発材料段階の薬物原料粉末についても、同様にNMRスペクトル分析を実施し、PLD処理後において分解や熱変性による新たなピークが形成されているか否かを比較観察した。
その結果、各実施例1〜4に係る各薬物ナノ粒子について、PLD処理後において分解や熱変性による新たなピークは観察されなかった。
第4図(A),(B)〜第6図(A),(B)はそれぞれ実施例1〜3に係る各薬物ナノ粒子について、PLD処理前後におけるNMRスペクトルを示すグラフである。第5図(A),(B)に示す実施例2のIMナノ粒子および第6図(A),(B)に示す実施例3のEZナノ粒子では、PLD処理前後のNMRスペクトルが同一であった。
一方、第4図(A),(B)に示す実施例1のPTナノ粒子においては、ピークの位置がやや変移しているが、類縁物質に起因する新たなピークがないことから、NMR装置の精度と勘案して、レーザー照射に伴って類縁物質が生じたとしても、その生成量はいずれも本装置の規定検出限界以下であることが判明した。
▲2▼ 複合粒子の調製
上記のように調製した各実施例用のターゲットを第1図に示すような薬剤製造装置1内に充填してPLD操作を実施することにより、賦形剤粒子の表面に直接薬物ナノ粒子を付着させた。
具体的には、薬物のターゲット2としてPT製ターゲットを用いる一方、賦形剤粒子として平均粒径5μmの乳糖を用いた。照射するレーザー光としてNd:YAGレーザーの第四高調波を使用し、レーザー出力は10J/cm、レーザーの照射時間(処理時間)は1時間として実験を行った。
実験中、レーザー照射を1分50秒間実施した後に10秒間振動装置8を稼動せしめるという時間配分で、賦形剤粒子10に間歇的に振動を付加して流動化させた。また、真空容器(真空チャンバー)6内に封入した雰囲気ガスは窒素とし、その雰囲気圧は1000Paで行ったところ、第7図に示すように、乳糖粒子の表面にPTナノ粒子が密集した厚さ0.1〜0.4μmの皮膜状の薄層が付着形成された複合粒子が得られた。
次に、ターゲットとして薬物と蛋白質とから成る成形体を使用し、この成形体にレーザー光を照射し、蛋白質から成る微細粒子と薬物の微細粒子とを放出せしめ複合化して、薬物−蛋白質ナノ複合体粒子を形成した実施例5について説明する。
[出発原料]
実施例5で使用する薬品材料(出発原料)として、実施例2で使用した薬物であるγ−インドメタシン(以下「IM」と略記する)粉末と、蛋白質としての牛血清アルブミン粉末(以下「BSA」と略記する;Sigma−Aldrich社製)とを用意した。
[PLD用ターゲットの調製]
上記薬物としてのIM粉末と、蛋白質としてのBSA粉末とを、その配合比(薬物:タンパク質の重量比)がそれぞれ1:9、5:5、9:1の3通りとなるように配合した後に、振動ボールミルを用いて1時間混合粉砕を実施し、3種類の混合粉末を調製した。
上記3種類の各混合粉末を2gずつ秤量し、内径が25mmである成形用ダイスにそれぞれ充填した。次に、温度50℃で油圧プレス(森試験機製作所製)を用いて20MPaの加圧力で5分間加圧し成形体とした。
[パルスレーザー蒸着(PLD)]
上記のように調製した実施例5用の3種のターゲットを第1図に示すような薬剤製造装置1内に装填してPLD操作を実施することにより、薬物粒子と蛋白質粒子との複合粒子(BSA−IM複合粒子)をマイクログリッドに付着させた。上記マイクログリッドは、銅メッシュ材にコロジオン膜を付着させたものである。
上記薬剤製造装置1に付設したレーザー発振装置4は、Nd:YAGレーザー装置(New Wave Research社製)であり、波長1064nmを基本波とし、パルス周波数10Hz,パルス幅5nsとした。また、レーザー出力は5J/cmとした。レーザーの照射時間(処理時間)は1時間として実験を行った。また、真空容器(真空チャンバー)6内に封入した雰囲気ガスはヘリウム(He)とし、その雰囲気圧は100Paとした。
こうしてマイクログリッドに付着させた実施例5に係る薬物−蛋白質ナノ複合粒子の状態を、透過型電子顕微鏡(TEM:TECNAL F20;PHILLIPS社製)を用いて観察し、生成した各薬剤ナノ複合粒子の平均粒径を測定した。その結果、実施例5に係る各薬剤ナノ複合粒子における薬物粒子および蛋白質粒子の平均粒径はいずれも100nm以下の範囲であった。
第8図(A),(B)は実施例5でBSA:IMの重量比を9:1として調製したBSA−IM複合粒子(薬剤ナノ複合粒子)の構造を示すTEM写真であり、観察対象位置と観察倍率を変えて示す組織構造図である。第8図(A),(B)に示すように、実施例5ではマイクログリッド表面に連鎖状に付着した平均粒径が100nm以下の超微細なIM薬物粒子とBSA蛋白質粒子とが得られており、薬剤ナノ複合粒子を効率的に製造できることが判明した。
また、上記のように調製したBSA−IM複合粒子(薬剤ナノ複合粒子)における薬物と蛋白質との化学的相互作用の有無を確認するために、PLD操作前後における原料混合体と複合粒子とについて、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT−IR)装置(FTS−175;BIO−RAD社製)を使用して下記要領で赤外線吸収度を測定した。すなわち、透過型KBr法に準拠して、KBr50mgでバックグランドを引いた後に、KBr50mgにサンプルを0.5mg添加して混合した試料について、積算回数256、分解能1cm−1で測定した。このPLD操作前後における原料混合体と複合粒子とについて測定したフーリエ変換赤外吸収スペクトルを第9図に示す。
第9図に示す結果から明らかなように、PLD操作前後においても、ほぼ同様の波形ピークを示していることから、薬物と蛋白質との相互作用は化学シフトとしては検出されていないので、薬物と蛋白質との間の相互作用は単に物理的なもののみであり、化学的な相互作用は生じていないと考えられる。
なお第9図はBSA:IMの重量比を9:1として調製したBSA−IM複合粒子(薬剤ナノ複合粒子)のPLD前後における赤外吸収スペクトルを示しているが、BSA:IMの重量比が1:9の場合においても、ほぼ同様の波形ピークが得られており、薬物含有率に関係なく薬物とタンパク質との相互作用が小さいことが確認できた。
また、実施例5においてPLD処理によって調製した各薬剤ナノ複合粒子について、レーザー光照射による熱変性や分解によって類縁物質の発生の有無を調査するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置(HP−1500;Hewlett Packard社製)を使用して下記要領で分析した。すなわち、移動相としてのメタノールと濃度1mMolのリン酸水溶液とを体積比で7:3で混合したものを使用し、流量は1mL/minとし、カラムはL−column ODS,Size=4.6×150mmを使用し、UV検出波長は254nmとした。また、試料2mgを、移動相と同じ2mLの溶媒に溶解した試料をカラムに1μL注入した。
上記高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置による分析の結果、類縁物質は全く生成していないか、もしくは検出限界以内であった。したがって、本実施例5に係る各薬剤ナノ複合粒子によれば、薬物の純度が高く副作用が少ない薬剤が効率的に得られる。
このように、実施例5に係る薬剤ナノ複合粒子によれば、薬物と蛋白質との混合粉末の成形体にレーザー光を照射することにより薬物および蛋白質を微細化成分として放出することにより、レーザー光照射による熱変性や分解による類縁物質の発生が無く純度が高い薬物−蛋白質ナノ複合体(薬剤粒子)を効率的に得ることができた。この複合粒子においては、薬物とタンパク質との間に化学的な相互作用を生じることが無く、物理的な相互作用のみによって複合化されており、類縁物質の発生も無く、細胞膜に対する薬物の透過性を向上させることが可能になる。
以上説明のとおり、本発明に係る薬物ナノ粒子、その粒子を使用した薬剤の製造方法および薬剤の製造装置によれば、PLD法により、薬物の成形体である固体ターゲットに紫外線レーザーを照射し、ターゲットを構成する薬物成分の分子間結合を切る方式を採用し、光化学的に励起された微細化薬物成分を放出させて該成分からナノ粒子を生成しているため、生物学的利用能が飛躍的に向上したナノサイズの薬物粒子を調製することが可能になる。また、PLD法によれば、レーザー光を照射しても、温度上昇が抑制され熱変性しやすい有機物の微細化も可能であり、品質が安定した有機材料から成る薬物ナノ粒子をも容易に生成することができる。

Claims (12)

  1. 薬物粉末の成形体にレーザー光を照射することにより薬物を微細化成分として放出せしめて得た薬物ナノ粒子であり、この薬物ナノ粒子の平均粒径が100nm以下であることを特徴とする薬物ナノ粒子。
  2. 前記薬物が有機物であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の薬物ナノ粒子。
  3. 薬物粉末と蛋白質との混合物成形体にレーザー光を照射することにより、両者を微細化成分として放出せしめて得た薬物−蛋白質ナノ複合体であり、該複合体を構成する薬物および蛋白質ナノ粒子の平均粒径がそれぞれ100nm以下であることを特徴とする薬物−蛋白質ナノ複合体。
  4. 前記薬物が有機物であることを特徴とする請求の範囲第3項記載の薬物−蛋白質ナノ複合体。
  5. 減圧不活性ガス雰囲気において、固形薬物成分から成るターゲットにレーザー光を照射することにより該薬物成分の分子間結合を切断して薬物を微細化成分として放出する工程と、放出された該微細化成分から生成した平均粒径100nm以下のナノ粒子を賦形剤粒子表面に付着させる工程とを備えることを特徴とする薬剤の製造方法。
  6. 減圧不活性ガス雰囲気において、固形薬物成分および蛋白質から成るターゲットにレーザー光を照射することにより該薬物成分および蛋白質の分子間結合をそれぞれ切断して薬物および蛋白質を微細化成分として放出する工程と、放出された該微細化成分から生成した各々平均粒径100nm以下のナノ粒子を複合体として賦形剤粒子の表面に付着させる工程とを備えることを特徴とする薬剤の製造方法。
  7. 不活性雰囲気ガスの種類と圧力とを調整することにより、生成する薬物ナノ粒子の平均粒径を制御することを特徴とする請求の範囲第5項または第6項記載の薬剤の製造方法。
  8. 薬物粉末をその融点未満の温度に加熱すると同時に加圧して固形状のターゲットを調製することを特徴とする請求の範囲第5項記載の薬剤の製造方法。
  9. 薬物粉末をその融点直下の温度に加熱すると同時に加圧して薬物粉末を部分的に溶融せしめた後に急冷凝固せしめて固形状のターゲットを調製することを特徴とする請求の範囲第5項記載の薬剤の製造方法。
  10. 薬物粉末の成形体から成るターゲットと、このターゲットにレーザー光を照射することにより薬物成分の分子間結合を切断し、薬物を微細化成分として放出するレーザー発信装置と、放出された該微細化成分から生成した平均粒径100nm以下のナノ粒子を賦形剤粒子表面に付着させる薬剤容器と、上記ターゲットおよび薬剤容器を収容する真空容器とを備えることを特徴とする薬剤製造装置。
  11. 前記微細化成分から生成したナノ粒子を付着させる賦形剤粒子に振動を付加して流動化させる振動装置をさらに装備したことを特徴とする請求の範囲第10項記載の薬剤製造装置。
  12. 前記成形体が蛋白質を含有することを特徴とする請求の範囲第10項記載の薬剤製造装置。
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