JPWO2004042371A1 - IgA腎症の迅速診断法 - Google Patents

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Abstract

要約書なし。

Description

本発明は、腎症患者、特にIgA腎症患者の血液中に存在するIgAタンパク質について、光散乱法を用いて物理量を評価し、健常者のIgAタンパク質の場合と比較することにより、IgA腎症特有の現象を非破壊的に迅速且つ無苦痛で精密診断できるシステムに関する。
IgA腎症は腎臓糸球体メサンギウム領域にIgAが選択的に沈着することによって引き起こされる腎臓疾患である。2000年の統計資料によると、全国での人工透析患者の約半数の10万人が慢性腎炎であり、さらにその半数が、IgA腎症であると推定されている。本疾患の確定診断の方法は腎生検による糸球体の観察によりメサンギウム領域にIgAが沈着していることを蛍光抗体染色で確認することが唯一の方法であった。このように、本疾患の診断方法は、腎生検による組識観察しか知られておらず、患者にとって大きな負担となっていた。そのため病理実態すら明確になっていない。
また、IgAの光散乱の測定例は、中性子散乱及びX線小角散乱によりIgA分子自体の形を見たもの、あるいはIgA単量体のサイズを測定したものが二文献(非特許文献1および2参照)あるが、サンプルがヒト由来ではない、あるいはヒト由来でも健常者サンプルしか扱っておらず、しかもIgAの分子間相互作用の検討を行っていない。更に最も重要な、健常者と患者の血液由来IgA分子の各種物理量を比較検討することによるIgA腎症診断の可能性に言及したものはない。また、中性子散乱は大規模施設を必要とし実験機会も極めて限定されているため、一般の臨床診断に手軽に応用できるものではない。
上記のように、IgA腎症を迅速かつ無苦痛で診断できるシステムはこれまでのところ知られていなかった。
Gilmour,Sら著、Small−angle neutron scattering studies of the conformation of myeloma protein MOPC315 and its Fab fragment,and the interaction with a monovalent dinitrophenyl hapten、Proceedings of the Royal Society of London.Series B.Biological Sciences,Volume 211、Issue 1185、March 27、1981年、433−453頁 Boehm,M Kら著、The Fab and Fc fragments of IgA1 exhibit adifferent arrangement from that in IgG:a study by X−ray and neutron solution scattering and homology modeling、Journal of Molecular Biology、Volume 286、Issue 5、March 12、1999年、1421−1447頁
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、IgA腎症を迅速かつ無苦痛で診断できるシステムを提供することにある。より具体的には、腎症患者の血液等の検査試料中に存在するIgAタンパク質について、光散乱法を用いて物理量を評価し、健常者のIgAタンパク質の場合と比較を行い、IgA腎症を迅速かつ無苦痛で診断できるシステムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。まず本発明者らは、健常者およびIgA腎症患者より血液を採取し、親和性カラムを用いてIgAを粗精製した。得られた試料を光散乱法を用いて解析した。IgA単量体および会合体の大きさや分布、分子間相互作用などの違いを検出することにより、IgA腎症か否かを判定できるかどうかについて検討した。
二次自己相関関数における減衰速度の比較では、患者検体は減衰時間が著しく速かった。また、指数関数的減衰を仮定して、二粒子成分分析を行い健常者サンプルと患者サンプルを比較した場合、健常者検体では緩和時間と散乱角度の関係が散逸する傾向にあり、直線性が非常に悪く、小さな粒子の半径は13−20nm程度と判定されたが、患者検体では、小さな粒子に関して、緩和時間と散乱角度の関係が極めて良い直線関係を示し、粒子半径は7−8nmに収束する結果になった。さらに、同一IgA濃度の溶液を用いて、IgA単量体あるいはIgA会合体がもたらす相対散乱光強度に関して健常者と患者検体を比較した結果、患者検体では散乱光強度が小さく、健常者との差は2−50倍に及んだ。これらのことから本発明者らは、被検者由来の試料におけるIgAを光散乱法を利用して解析することにより、IgA腎症の診断が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明者らによって開発された診断法を用いることにより、IgA腎症患者の組識生検を行うことなく、血液を採取するだけで、簡便且つ迅速にIgA腎症を診断することが可能になる。また、本発明の診断法により、IgA腎症の進行度検査や、将来的なIgA腎症発病への危険度判定も可能である。
本発明は、IgA腎症の迅速診断方法に関し、より具体的には、
〔1〕 以下の工程(A)〜(C)を含む、腎症の診断方法、
(A)被検者由来の検査試料に存在するIgAタンパク質、またはIgAタンパク質を含む会合体粒子へ照射された入射光の散乱光について、その絶対値、時間変化、および散乱角度依存性を計測する工程、
(B)工程(A)により計測された値を基に、下記(a)〜(f)のいずれかの物理量を評価する工程、
(a)任意の散乱角度における散乱光強度
(b)任意の散乱角度における自己相関関数
(c)前記(a)の解析に基づく分子量、慣性半径、フラクタル次元、または粒子形状
(d)前記(b)の解析に基づく拡散係数、および流体力学的半径
(e)緩和時間、および散乱角度
(f)前記(d)または前記(e)より算出した拡散係数と流体力学的半径のIgAタンパク質濃度を関数とした依存性
(C)工程(B)の物理量を、健常者のIgAタンパク質の場合と比較する工程
〔2〕 入射光が偏光もしくは非偏光の通常光、X線、放射光、または中性子である、〔1〕に記載の診断方法、
〔3〕 散乱が動的光散乱または静的光散乱である、〔1〕に記載の診断方法、
〔4〕 検査試料が血液試料である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の診断方法、
〔5〕 腎症がIgA腎症である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の診断方法、を提供するものである。
本発明は、光散乱法を利用した腎症の診断方法を提供する。一般に光散乱法とは、溶液中でブラウン運動している粒子の拡散係数、分子間相互作用、分子量、構造等を評価するための方法である。ブラウン運動により粒子からの散乱光強度は、時間と共に変化する。この散乱光強度の時間変化を測定することにより、粒子の拡散係数が判明する。拡散係数と粒子のサイズは反比例することから、粒子サイズが分かり、さらに、拡散係数の粒子濃度依存性を測定することにより、粒子間相互作用を求めることができる。より詳しくは、溶液中でブラウン運動している粒子に照射された光(入射光)の散乱光について、その絶対値、時間変化、散乱角度依存性を計測することにより、対象粒子の分子量、(並進及び回転)拡散係数、流体力学的半径、慣性半径、フラクタル次元、粒子形状の物理量を評価する手法を言う。さらに、光散乱法によって、散乱光強度の時間変化を、粒子の濃度の関数として測定することにより、粒子間相互作用を評価することが可能である。
本発明はIgA腎症患者の血液中に存在するIgAタンパク質について、光散乱法を用いて上記物理量を評価し、健常者のIgAタンパク質の場合と比較検討することにより、IgA腎症特有の現象を迅速且つ無苦痛で診断できる方法に関する。本発明は即ち、光散乱法を用いることによって、IgA患者と健常者との間のIgA分子のサイズ、もしくはIgA分子間の相互作用の相違を検出することが可能であるという、発明者らによって見出された知見を基に、被検者について腎症か否かの診断を行う方法に関する。
本発明によって診断される腎症とは、通常、IgA腎症を指すが、必ずしもこれに限定されず、例えば、糖尿病由来の腎症の診断を行うことも可能である。
光散乱法としては、一般的に、動的光散乱法、静的光散乱法、X線小角散乱法、中性子散乱法等を挙げることができる。本発明においては、これらいずれの散乱法を用いても本発明の診断方法を実施することができる。
以下に最も普遍的に使用される動的光散乱法(Dynamic Light Scattering、別名Quasi−elastic Light Scattering)に関して、その測定原理の説明を行う。
散乱光強度をIとした場合、散乱光強度の時間変化に関して以下の自己相関関数を定義する。
Figure 2004042371
数式1において、g(q,t)は二次自己相関関数であり、I(q,t)は時間t、散乱角度(正確には散乱ベクトル)qにおける散乱光強度、I(q,0)は測定開始時間における散乱角度qでの散乱光強度を、I(q)は全測定時間内における散乱光強度の平均値を意味する。<>内はアンサンブル平均を表す。二次自己相関関数は粒子の緩和時間τ、と数式2の関係がある。
Figure 2004042371
最も単純な系は、粒子間相互作用が弱く粒子形態の異方性がない、単分散(平均粒径が1種類)の系でn=1、β=1となる。ポリマーのように粒子間相互作用が顕著になるような系では、βは必ずしも1とはならず、1以下の値も取りうる。一方、溶液中に平均サイズの異なる粒子群が存在した場合、二次自己相関関数は各々の粒子の緩和時間を足し併せたものとなる。すなわち、n=1、2、・・・である。粒子が大きくゆっくりと動く場合には、緩和時間も長くなり、逆に小さな粒子で激しくブラウン運動しているような場合には、緩和時間は短くなる。図1に両者の例を模式的に示す。
実際の測定では溶液中にどのような粒子群が存在するかを仮定し、二次自己相関関数を解析して、散乱角度qにおける各粒子の緩和時間を求める。緩和時間と粒子の拡散係数、散乱角度の間には数式3の関係がある。
Figure 2004042371
ここで、散乱角度を変化させ、それぞれのq値で緩和時間を求め、1/τとqを両軸としてプロットしたとき、原点を通過する直線で近似できれば、測定している粒子の運動は、並進拡散であると結論できる。一方、上記プロセスにより求められた並進拡散係数は、粒子間の相互作用による粒子周囲の水和領域の構造化等のファクターを含む。従って真の拡散係数を求めたい場合は、上記測定を、粒子濃度を関数として行い、無限希釈時の並進拡散係数を求める。このような手順で求められた並進拡散係数と粒子のサイズ(流体力学的半径:rと呼ぶ)には以下の関係が成り立つ(Stokcs−Einsteinの式)。
Figure 2004042371
kはボルツマン(Boltzman)定数、Tは溶液の絶対温度、ηは溶媒の粘性である。
本発明の診断方法は、まず、被検者由来の検査試料に存在するIgAタンパク質、またはIgAタンパク質を含む会合体粒子へ照射された入射光の散乱光について、その絶対値、時間変化、および散乱角度依存性を計測する(工程(A))。本工程の計測時の温度としては、例えば、25℃を好適に示すことができるが、特にこの温度に限定されるものではない。
上記工程(A)の好ましい態様においては、被検者由来の検査試料に存在するIgAタンパク質、またはIgAタンパク質を含む会合体粒子へ照射された入射光の散乱光について、その絶対値、時間変化に基づく自己相関関数、自己相関関数の散乱角度依存性、自己相関関数から算出される拡散係数のIgA濃度依存性の計測を行う。
本発明の診断方法においては、例えば、被検者の腎症が著しく進行している場合には、上記工程(A)において散乱光強度のみを測定することによって、腎症の診断を行うことも可能である。通常、上記工程(A)において散乱光の「絶対値」、「時間変化」、「散乱角度依存性」の全てを測定することにより、腎症診断の確度が向上することから、本発明の方法においては、これらについて全てを測定することが好ましい。
本発明においてIgAタンパク質へ照射する上記「入射光」としては、その種類等、特に制限されるものではないが、例えば、偏光(消光も含む)および非偏光の通常光(例えば、紫外、可視、赤外)、X線、放射光、中性子等を挙げることができる。本発明においては、通常光を好適に利用することができる。
また、本発明における「散乱」は、レイリー散乱またはミー散乱を基本とする。散乱方式は動的/静的散乱、小角散乱、単一粒子散乱、エバネッセント波を利用した散乱が含まれるが、一般施設での利用における簡易性や測定の迅速度を考慮すると、好ましくは動的散乱または静的散乱、更に好ましくは動的散乱である。
本発明の診断方法へ供する検査試料としては、例えば、体液から調製された試料を挙げることができるが、通常、血液もしくは唾液由来の試料であり、好ましくは、被検者の血液から調製された試料である。また、本発明においては、対照として健常者由来の試料を調製することが望ましい。その際好ましくは、健常者および被検者の試料中に含まれるIgA濃度が同一となるように調製を行う。
血液からの検査試料の調製は、IgAを精製可能な方法であれば任意の方法によって行うことができる。例えば、当業者において一般的に行われる方法であるカラムクロマトグラフィー、電気泳動等により調製を行うことができるが、好ましくはジャッカリンアガロースカラムもしくは該カラムに加えて抗IgAカラムを用いて調製を行う。以下に本発明の被検試料の調製方法の一例を示すが、この方法に特に制限されるものではない。
100mM Tris−HCl,1% NaN(J−バッファー)で平衡化したジャッカリンアガロースカラム(カラムボリューム(CV)=2mL)に血清(あるいは血漿)3〜5mLをアプライする。10CVのJ−バッファーで素通り画分を溶出後、0.8Mのガラクトースを含むJ−バッファーで溶出する。溶出画分をジャッカリン精製IgAとする。得られた画分を分子量カット10kの限外濾過装置で濃縮、脱塩し、50mM トリス塩酸緩衝液pH7.4で平衡化(3回の脱塩処理)する。試料のタンパク質濃度はローリー法で行う。被検試料の調製において使用される試薬・器具類は、特に上記のものに限定されず、例えば、平衡化バッファーは、中性付近で数十〜数百mMのものであれば任意のバッファーを使用することができる。
また被検試料の調製の際は必要に応じて、ダスト除去のために、フィルタリングを行うことが好ましい。
本発明における光散乱法を利用した上記工程(A)における計測は、当業者においては、通常、市販の機器を用いて簡便に行うことができる。例えば、DLS−700(大塚電子株式会社)等を使用することができる。
本方法においては、次いで、工程(A)により計測された値を基に、下記(a)〜(f)のいずれかの物理量を評価し(工程(B))、工程(B)の物理量を、健常者のIgAタンパク質の場合と比較する(工程(C))。
(a)任意の散乱角度における散乱光強度
(b)任意の散乱角度における自己相関関数
(c)前記(a)の解析に基づく分子量、慣性半径、フラクタル次元、または粒子形状
(d)前記(b)の解析に基づく拡散係数、および流体力学的半径
(e)緩和時間、および散乱角度
(f)前記(d)または前記(e)より算出した拡散係数と流体力学的半径のIgAタンパク質濃度を関数とした依存性
上記工程(C)における、健常者のIgAタンパク質の場合との比較は、被検者の検査試料を光散乱法によって測定する際に、対照として健常者由来の試料も併せて測定することにより、上記(a)〜(f)のいずれかの物理量について健常者の場合と比較を行うことができる。あるいは、予め算出された健常者の場合の上記(a)〜(f)のいずれかの物理量と比較を行ってもよい。
一般に小さな散乱角度ほど試料中のダストの影響や測定容器からの迷光の影響を受けやすく、且つ大きな粒子が観察されやすい。逆に高角度での測定ほどダストの影響は少なく、且つ今回の測定対象である小さな粒子が検出されやすい。本発明の散乱角度は、当業者においては、上記の知見を基に最適な散乱角度を適宜選択することが可能である。通常、散乱角度90度が最もダストおよび迷光の影響が小さいとされる。本発明における散乱角度は、通常、10〜150度の範囲であり、実際的には20〜90度であり、さらに試料中のダストの影響を可能な限り除き、且つ簡便測定を行いたい場合は、例えば90度がよい。
上記(a)においては、被検者由来の検査試料について光散乱法によって測定された散乱光強度を、健常者の場合の散乱光強度と比較する。被検者における散乱光強度の絶対値を基に、腎症の診断を行うことが可能であるが、通常は、健常者と判断される試料を対照として行うことが好ましい。即ち、健常者における散乱光強度に対して相対的に散乱光強度の比較(相対散乱光強度の比較)を行う。例えば、健常者における散乱光強度を「1」とした際の、被検者における散乱光強度の値を基に、腎症の診断を行うことができる。
一例を示せば、ダストの影響が最も少ないと考えられる散乱角度が90度である場合には、後述の実施例の図4で示すように、健常者とIgA腎症患者との間で明らかな相対散乱光強度の相違が見られる。被検者における相対散乱光強度が、通常、0.25以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは、0.15以下である場合に、被検者は腎症であるものと判定される。本発明において「被検者が腎症である」とは、通常、生理学的見地から見て「被検者が腎症に罹患している」ことを意味する。
上記の比較において、より好ましくは、値を確定させるために、生理学的および本光散乱測定両者から確実に健常者と断定できるサンプル群について、統計的に散乱光強度の平均を算出した後、十分な数の患者由来のサンプルについて散乱光強度の測定を行い、比較するのがよい。
また、腎症であっても疾病の進行度が軽いものから重症のものまで様々である。通常、散乱光強度の値が低いほど、腎症が進んでいる(進行度が高い)、あるいは将来的な腎症発病の危険性が高いものと判定される。
また、生理学的に健常者である場合であっても、腎症の予備軍であることも考えられる。本発明の一つの態様においては、腎症の症状を呈さない健常者を被検者として本発明の診断方法を実施することができる。即ち、このような被検者について本発明の方法を実施して、腎症であるものと判定される場合には、被検者が将来腎症になる可能性がある(高い)ものと考えられる。
上記(b)においては、被検者由来の検査試料について光散乱法によって測定された散乱光強度および時間変化を基に、上記の数式1により、自己相関関数を算出することができる。この自己相関関数について、健常者の場合の自己相関関数と比較する。
任意の散乱角度において、時間(対数)および自己相関関数を軸とするグラフを描画することができる。本発明においては、健常者および被検者について描画されたグラフの形状の相違に基づいて、腎症の判定を行うことができる。一例を示せば、散乱角度が90度である場合には、健常者およびIgA患者については後述の図2で示すようなグラフが描画される。散乱角度が90度における自己相関関数は、図2に示すように、時間(対数)および自己相関関数を軸として描かれるグラフにおいて、明らかな相違が見られる。従って、被検者において描画されたグラフが、図2で示すIgA患者におけるグラフの形状を示す場合、即ち後述のように、自己相関関数が時間と共に急激に減衰するような場合、被検者は腎症であるものと判定される。
定量的には自己相関関数の減衰速度に着目して腎症の判定を行うことが可能である。例えば、図2において、健常者では緩やかな減衰を示す。これに対して患者では減衰時間が健常者と比べて著しく速い。従って、被検者について、健常者と比較した際に速い減衰速度を示す場合には、被検者は腎症である、あるいは腎症を発症する可能性があるものと判定することができる。
また、ある特定の「時間」における自己相関関数の値を比較することによっても、腎症の判定を行うことが可能である。本発明においては、通常、被検者および健常者由来の試料におけるIgA濃度は上述のように同一となるようにし、且つ測定時において容器からの迷光等のアーティファクトを可能な限り除去するように調整されることから、時間ゼロにおける自己相関関数の値は、健常者および被検者ともに同一となる。
例えば、時間ゼロにおける自己相関関数の値が、0.45〜0.5であった場合、患者についての時間0.1ミリ秒における自己相関関数の値は、健常者の場合と比較して約1/1.5〜1/30である。従って、一例を示せば、被検者についての時間0.1ミリ秒における自己相関関数を算出し、その値が、通常0〜0.1好ましくは0〜0.05、より好ましくは0〜0.01である場合に、被検者は腎症であるものと判定される。当業者においては、自己相関関数の値について最も差異を示す「時間」を適宜選択して、健常者および被検者について自己相関関数の値の比較を行うことができる。
また、通常、ある特定の時間(例えば、0.1ミリ秒)における自己相関関数の値が低いほど、腎症が進んでいる(進行度が高い)、あるいは将来的な腎症発病の危険性が高いものと判定される。例えば、時間0.1ミリ秒における自己相関関数値が0.2を下回った場合、将来的に発症の危険性があるものと判定することができる。
上記(d)、(e)においては、被検者における上記の自己相関関数を基に、上記の数式2によって緩和時間(τ)を算出し、緩和時間と散乱角度との関係を求める。その際、緩和時間と散乱角度の直線性、偏差、および算出された拡散係数と流体力学的半径の値を基準とする。例えば、緩和時間および散乱角度を軸としてグラフを描画すると、通常、図3のような直線関係を示す。この関係から(並進)拡散係数および流体力学的半径が算出される。一例を示せば、緩和時間と散乱角度が図3で描かれるような関係を示す場合、健常者におけるIgAの拡散係数は12〜19×10−12/sで、対応する流体力学的半径は、13〜20nm程度であると判定される。また、患者におけるIgAの拡散係数は30.5〜35×10−12/sで、これに対応する流体力学的半径は、7〜8nm程度であるものと判定される。このように健常者と患者におけるIgAの拡散係数及び流体力学的半径の相違に基づいて、被検者について腎症の診断を行うことができる。例えば、被検者におけるIgAの拡散係数及び流体力学的半径がそれぞれ、通常28.8〜35×10−12/s及び7〜8.5nm、好ましくは30.5〜35×10−12/s及び7〜8nm、より好ましくは32.6〜35×10−12/s及び7〜7.5nmである場合に、被検者は腎症であるものと判定される。
上記(f)においては、被検者における上記の拡散係数および流体力学的半径についてIgAタンパク質濃度との関係を求める。即ち、拡散係数のIgAタンパク質(粒子)濃度を関数とした依存性を求めることにより、粒子間相互作用を評価することができる。例えば、粒子濃度を横軸に、拡散係数を縦軸としたグラフにおいて、描画した線の形状が「右上がり」である場合、斥力相互作用を有するものと判定される。一方、線の形状が「右下がり」である場合には、引力相互作用を有するものと判定される(図5)。本発明者らによって、健常者と患者におけるIgA分子間の相互作用は異なることが明らかとなった。従って、IgA分子間相互作用の相違に基づいて、腎症の診断を行うことができる。例えば、健常者および被検者について上記のように描画されたグラフの形状の相違に基づいて、腎症の判定を行うことができる。
図1は、相関関数の模式図である。縦軸は自己相関関数g(q,t)、横軸は時間(対数)を表わす。
図2は、健常者およびIgA患者(各5献体)の自己相関関数比較の図である。Aが健常者、BがIgA患者である。
図3は、健常者および患者の代表献体、各1に対する緩和時間と散乱角度の関係図である。Aが健常者、Bが患者である。
図4は、散乱角度90度における全検体の散乱光強度比較図である。縦軸は相対散乱光強度、横軸はサンプルナンバーを表わす。
図5は、引力または斥力相互作用を示す場合の、粒子濃度と拡散係数との関係を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
健常者及びIgA腎症患者、各5検体の血液に対して、光散乱法を用いて物理量を評価し、比較検討を行った。すべての検体で、測定溶液中のIgAタンパク質の濃度が等しくなるように調整した。
図2Aは健常者5検体の散乱角度90度における二次自己相関関数である。比較した点は減衰速度である。健常者では、5検体とも緩やかな減衰を示し、約1ミリ秒で0に収束した。5検体中4検体はほとんど同一であったが、残り1検体は他の4者に比べて若干速く減衰が見られた。これに対して患者検体では減衰時間が健常者に比べて著しく速かった。最も速いものでは約0.1ミリ秒で相関関数が0に収束した。最も遅いものでも、例えば時間0.1ミリ秒の相関関数の値を健常者と比較してみると、50%小さかった。
現実には生理学的に健常者と判定されてもIgA腎症の予備軍が存在し、一方IgA腎症であっても疾病の進行度は軽いものから重症のものまで様々である。この視点で図2を見ると、健常者のうち、相関関数の減少が速い検体は、将来IgAになる可能性があると考えられる。患者検体中の差は、IgA腎症の進行度に対応していると解釈できる。
[実施例2]緩和時間と散乱角度の比較
健常者及び患者各代表1検体について、緩和時間と散乱角度の関係を求めた(図3)。前述のように、この関係から(並進)拡散係数及び粒子半径を算出した。
まず、健常者では溶液中には大きな粒子と小さな粒子の二種類が存在するとして相関関数を解析するのが適当と判断された。ただし、両粒子とも緩和時間と散乱角度の関係は散逸する傾向があり、あまりはっきりとした直線関係を示さなかった。この傾向はすべての健常者サンプルに共通であった。ここで、大きな粒子はIgA以外の不純物の可能性も否定できないため、以後詳細な検討は行わなかった。小さな粒子(図3中ファーストモード:fast modeと書かれたもの)の半径は約13nmであるが、検体によってかなり分布に広がりがあり、今回の測定結果では13−20nm程度と判定された。
一方、患者サンプルは明らかに様相が異なった。患者サンプルでも溶液中には大きな粒子と小さな粒子があるとして相関関数を解析できるが、大きな粒子の割合は極めて少なかった。この結果、大きな粒子に関しては緩和時間と散乱角度の関係が直線から大きく散逸した。一方、患者サンプルで支配的になる小さな粒子(ファーストモード:fast mode)は、緩和時間と散乱角度の関係に関して極めて明確な直線性を示し、粒子半径はすべてのサンプルで7−8nmの範囲に収束した。これらの結果から、健常者サンプルと患者サンプルでは、以下の大きな相違が認められた。
1)二種類の粒子が溶液中に存在し、指数関数的減衰を示すとして相関関数を解析した場合、健常者検体では緩和時間と散乱角度の関係が散逸する傾向にあり、直線性が非常に悪かった。この場合小さな粒子の半径は13−20nm程度と判定された。一方、患者検体では、小さな粒子に関して、緩和時間と散乱角度の関係が極めて良い直線関係を示し、粒子半径は7−8nmに収束した。この値はIgAタンパク質の単量体に相当していると思われる。
2)ファーストモードに相当する粒子径の相違から、健常者被検体と患者検体とでは同一散乱角度における散乱光強度の差が明確に現れた。
[実施例3]相対散乱光強度の比較
図4に散乱角度90度における健常者、患者全サンプルの相対散乱光強度を示した。健常者の1番検体の散乱光強度を1として規格化した図である。明らかに患者検体では散乱光強度が小さかった。健常者との差は2−50倍に及んだ。
産業上の利用の可能性
本発明により光散乱法を用いた腎症の診断方法が提供された。本方法により、腎症患者の組識生検を行うことなく、血液を採取するだけで、簡便且つ迅速に、加えて非破壊的に腎症を精密診断することができる。また、本発明の診断法により、腎症の進行度検査や、将来的な腎症発病への危険度判定も可能である。

Claims (5)

  1. 以下の工程(A)〜(C)を含む、腎症の診断方法。
    (A)被検者由来の検査試料に存在するIgAタンパク質、またはIgAタンパク質を含む会合体粒子へ照射された入射光の散乱光について、その絶対値、時間変化、および散乱角度依存性を計測する工程、
    (B)工程(A)により計測された値を基に、下記(a)〜(f)のいずれかの物理量を評価する工程、
    (a)任意の散乱角度における散乱光強度
    (b)任意の散乱角度における自己相関関数
    (c)前記(a)の解析に基づく分子量、慣性半径、フラクタル次元、または粒子形状
    (d)前記(b)の解析に基づく拡散係数、および流体力学的半径
    (e)緩和時間、および散乱角度
    (f)前記(d)または前記(e)より算出した拡散係数と流体力学的半径のIgAタンパク質濃度を関数とした依存性
    (C)工程(B)の物理量を、健常者のIgAタンパク質の場合と比較する工程
  2. 入射光が偏光もしくは非偏光の通常光、X線、放射光、または中性子である、請求項1に記載の診断方法。
  3. 散乱が動的光散乱または静的光散乱である、請求項1に記載の診断方法。
  4. 検査試料が血液試料である、請求項1〜3のいずれかに記載の診断方法。
  5. 腎症がIgA腎症である、請求項1〜4のいずれかに記載の診断方法。
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