JPWO2004042196A1 - ロータリ式シリンダ装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は、シリンダ室内における流体の気密性あるいは液密性を確保し、併せて回転シリンダ部材のラジアル方向への傾きを抑えて回転時の抵抗による損失を低減させることを目的とするもので、空洞部(22)を挟んで対向するシリンダ室(23a〜23d)と、シリンダ室(23a〜23d)を径方向外側から塞ぐ側壁(25)を有する回転シリンダ部材(2)と、該回転シリンダ部材(2)の回転軸心(o)から偏心した回転中心位置(X)を中心として回転するピストン保持部材(5)と、回転中心位置(X)から偏心した自転中心位置(X1,X2)に回転可能に保持されるピストン(3,4)と、シリンダ室(23a〜23d)に連通する流体の流入口および排出口等を備える。
Description
本発明は、ロータリ式シリンダ装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、回転運動によりピストンがシリンダ室内に出入りするように構成され、流体の圧送装置や流体モータ等として利用可能なロータリ式シリンダ装置の構造の改良に関する。
流体の圧送装置や流体モータ等として種々のロータリ式シリンダ装置が利用されている。その中には、図31に示すような回転シリンダ部材201、すなわち、ピストン(図32において符号204で示す)が摺動するための十字状の溝からなるシリンダ室202が円筒体に設けられることによって形成された回転シリンダ部材201を備えたものがある(例えば、国際公開第00/79101号パンフレット参照)。回転シリンダ部材201は、例えば図32に示すようにケーシング206に固定されたシリンダ支持軸205によって回転自在に支持され、さらにベアリング203によってラジアル方向荷重の一部と軸方向荷重が支持されている。この回転シリンダ部材201のシリンダ室202は、シリンダ支持軸205を中心として形成された空洞部202aとこの空洞部202aを挟んで十字状に対向する4つの室202bとからなり、図示するように円筒体の外周面201aにおいて外周側端部が開放した構造となっているが、回転シリンダ部材201が収容されるケーシング206の内周面によって当該外周側が塞がれ、さらに、この回転シリンダ部材201を挟み込むような形でケーシング206に取り付けられるケースカバー207によって上面側も塞がれ、密閉された閉鎖空間が構成されるようになっている(図32参照)。この十字状シリンダ室202内に設けられている1組のピストン204はこのシリンダ室202内をガイド溝201bに案内されながら交互にピストン運動することになり、このピストン運動と回転シリンダ部材201の回転運動とを組み合わせることによってピストン保持部材208に所定の回転運動をさせ、ピストン保持部材208に取り付けられている出力軸209を通じて回転力を得ることができる。このような構造の場合、気圧変動にかかわらずシリンダ室202内の気密性が保たれるようにした機構、例えばケーシング206とケースカバー207との間のシールリング210等が必要となる。
また、図33、図34に示すように、軸方向に貫通する十字状のシリンダ室302が設けられた円筒形の回転シリンダ部材301を、その外周に転がり接触するニードル303等で回転自在に支持するようにしたロータリ式シリンダ装置も利用されている。符号304はシリンダ室302内を往復動するピストン、符号304aはピストン304の中心部分に設けられた孔、符号305はピストン304の支持軸、符号306はロータリ式シリンダ装置のケーシング、符号307は流体の流入口、符号308は流体の排出口、符号309は駆動軸、符号310は支軸、符号311はピストン保持部材、符号311a,311bは円盤状部材、符号312はケースカバー、符号313はケーシング306とケースカバー312の間に設けられているシールリングをそれぞれ表している。シリンダ室302は、ディスク状の回転シリンダ部材301の中央を駆動軸309の軸方向に貫通する十字状の孔によって構成されており、この回転シリンダ部材301と、ケーシング306およびケースカバー312とで囲繞されて閉鎖空間となり密閉された室となる(図34参照)。
しかしながら、従来の回転シリンダ部材201は、図31に示したようにシリンダ室202の外周側端部が開放した構造である場合、この回転シリンダ部材201の外周面とケーシング206の内周面とを極めて僅かな隙間をもって対向させるように加工して気密性を確保する必要がある。このため、高い加工精度が要求される。
また、回転シリンダ部材201の外周面201aの一部がシリンダ室202の開口端となっている結果、外周面201aが円周面とそうでない開放部分とで不連続に構成されていると、この不連続な領域にベアリング203を転がり接触させることができず、不連続面を除いた外周の一部あるいはその他の部分で回転シリンダ部材201を支持するしかない。特に、回転シリンダ部材201の中央部でシリンダ室202が十字状に交差する構造の場合(図31参照)、交差域が形成される分だけ回転シリンダ部材201の中心部分の厚みを十分に確保することができず、回転シリンダ部材201の中心軸(例えば図32に示したシリンダ支持軸205)をこれ以上長くすることが難しくなり、その分だけ回転シリンダ部材201がラジアル方向へぶれやすくなるのでこれを防止する意味でベアリング203の重要度が増すにもかかわらず、不連続面を避けるようにベアリング203を軸方向へずらして設置せざるを得ない。このような場合には、ラジアル方向への力が強く作用するシリンダ室202の外周部分でこの力を受け止めることができないことになり、大きなラジアル方向の力に対して回転シリンダ部材201が傾き、ケーシング206の内周面と接触して抵抗となるおそれがある。また、このような接触を回避するために回転シリンダ部材201とケーシング206の内周面との隙間を大きくすると今度は気密性が劣るという別の問題が生じてしまう。
また、回転シリンダ部材201の外周面201aにおいてシリンダ室202の端部が開放された構造の場合(図31、図32参照)、流体を外周面201aから吸入し、外周面201aの別の口から排出すると、回転シリンダ部材201に対しラジアル方向の力が作用しやすくなる。この場合、このような力を受けた回転シリンダ部材201が傾き、ケーシング206の内周面と接触し、抵抗を受けて回転の損失が発生するという問題も生じる。
同様に、従来の回転シリンダ部材301は、図33、34に示したようにシリンダ室302が駆動軸309の軸方向へ貫通した構造である場合、この回転シリンダ部材301の表裏両面(図34)とケーシング306の内面およびケースカバー312の内面とを極めて僅かな隙間をもって対向させるようにして気密性を確保する必要がある。このため、上述したロータリ式シリンダ装置と同様、高い加工精度が要求されることがある。
そこで、本発明は、シリンダ室内における流体の気密性あるいは液密性を確保できるロータリ式シリンダ装置を提供することを目的とし、併せて、回転シリンダ部材のラジアル方向への傾きを抑えて回転時の抵抗による損失を低減させたロータリ式シリンダ装置を提供することを目的とする。
また、図33、図34に示すように、軸方向に貫通する十字状のシリンダ室302が設けられた円筒形の回転シリンダ部材301を、その外周に転がり接触するニードル303等で回転自在に支持するようにしたロータリ式シリンダ装置も利用されている。符号304はシリンダ室302内を往復動するピストン、符号304aはピストン304の中心部分に設けられた孔、符号305はピストン304の支持軸、符号306はロータリ式シリンダ装置のケーシング、符号307は流体の流入口、符号308は流体の排出口、符号309は駆動軸、符号310は支軸、符号311はピストン保持部材、符号311a,311bは円盤状部材、符号312はケースカバー、符号313はケーシング306とケースカバー312の間に設けられているシールリングをそれぞれ表している。シリンダ室302は、ディスク状の回転シリンダ部材301の中央を駆動軸309の軸方向に貫通する十字状の孔によって構成されており、この回転シリンダ部材301と、ケーシング306およびケースカバー312とで囲繞されて閉鎖空間となり密閉された室となる(図34参照)。
しかしながら、従来の回転シリンダ部材201は、図31に示したようにシリンダ室202の外周側端部が開放した構造である場合、この回転シリンダ部材201の外周面とケーシング206の内周面とを極めて僅かな隙間をもって対向させるように加工して気密性を確保する必要がある。このため、高い加工精度が要求される。
また、回転シリンダ部材201の外周面201aの一部がシリンダ室202の開口端となっている結果、外周面201aが円周面とそうでない開放部分とで不連続に構成されていると、この不連続な領域にベアリング203を転がり接触させることができず、不連続面を除いた外周の一部あるいはその他の部分で回転シリンダ部材201を支持するしかない。特に、回転シリンダ部材201の中央部でシリンダ室202が十字状に交差する構造の場合(図31参照)、交差域が形成される分だけ回転シリンダ部材201の中心部分の厚みを十分に確保することができず、回転シリンダ部材201の中心軸(例えば図32に示したシリンダ支持軸205)をこれ以上長くすることが難しくなり、その分だけ回転シリンダ部材201がラジアル方向へぶれやすくなるのでこれを防止する意味でベアリング203の重要度が増すにもかかわらず、不連続面を避けるようにベアリング203を軸方向へずらして設置せざるを得ない。このような場合には、ラジアル方向への力が強く作用するシリンダ室202の外周部分でこの力を受け止めることができないことになり、大きなラジアル方向の力に対して回転シリンダ部材201が傾き、ケーシング206の内周面と接触して抵抗となるおそれがある。また、このような接触を回避するために回転シリンダ部材201とケーシング206の内周面との隙間を大きくすると今度は気密性が劣るという別の問題が生じてしまう。
また、回転シリンダ部材201の外周面201aにおいてシリンダ室202の端部が開放された構造の場合(図31、図32参照)、流体を外周面201aから吸入し、外周面201aの別の口から排出すると、回転シリンダ部材201に対しラジアル方向の力が作用しやすくなる。この場合、このような力を受けた回転シリンダ部材201が傾き、ケーシング206の内周面と接触し、抵抗を受けて回転の損失が発生するという問題も生じる。
同様に、従来の回転シリンダ部材301は、図33、34に示したようにシリンダ室302が駆動軸309の軸方向へ貫通した構造である場合、この回転シリンダ部材301の表裏両面(図34)とケーシング306の内面およびケースカバー312の内面とを極めて僅かな隙間をもって対向させるようにして気密性を確保する必要がある。このため、上述したロータリ式シリンダ装置と同様、高い加工精度が要求されることがある。
そこで、本発明は、シリンダ室内における流体の気密性あるいは液密性を確保できるロータリ式シリンダ装置を提供することを目的とし、併せて、回転シリンダ部材のラジアル方向への傾きを抑えて回転時の抵抗による損失を低減させたロータリ式シリンダ装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明のロータリ式シリンダ装置は、回転軸心を中心として形成された空洞部に連通し該空洞部を挟んで対向する少なくとも一対のシリンダ室からなる凹部を有するとともに、シリンダ室を径方向外側から塞ぐ側壁を有する回転シリンダ部材と、該回転シリンダ部材の回転軸心から偏心した回転中心位置を中心として回転するピストン保持部材と、回転シリンダ部材を回転自在に支持する第1の支持部材と、ピストン保持部材を回転自在に支持する第2の支持部材と、ピストン保持部材の回転中心位置から偏心した自転中心位置にその位置を中心として回転可能に保持されたピストンと、シリンダ室に連通する流体の流入口および排出口とを備え、回転シリンダ部材とピストン保持部材との相対回転によりピストン自体が自転中心位置を中心として回転しながらかつ回転中心位置を中心として回転することによって一対のシリンダ室の双方に出入りするようにしている。
このロータリ式シリンダ装置によると、シリンダ室を側壁によって径方向外側から塞ぎ、回転シリンダ部材の外周を開口部の存在しない連続した曲面で構成していることから、回転シリンダ部材の外周面と第1の支持部材たるケーシングとの隙間からの流体漏れを防ぐことが可能となる。このため、シリンダ室内の流体の気密性あるいは液密性が確保しやすくなり、ポンプやコンプレッサ等に応用した場合の仕事の効率が向上する。
しかも、この場合、ベアリングで回転シリンダ部材を支持するにあたり不連続な外周面を避ける必要がなく、外周面の任意の箇所にベアリングを転がり接触させて回転シリンダ部材を支持することが可能である。したがって、回転シリンダ部材の外周面のうちラジアル方向への力が強く作用する箇所、具体的には回転シリンダ部材の外周面のうちシリンダ室の外側またはその周辺の箇所を支持することができる。したがって、回転シリンダ部材に対し大きなラジアル方向の力が作用した場合にも回転シリンダ部材が傾くのを十分に防止することができ、これにより、回転シリンダ部材とケーシングの内周面との接触抵抗を抑えることが可能となる。
加えて、回転シリンダ部材の外周面を開口部の存在しない連続面とし、この外周面と第1の支持部材たるケーシングの間にローラを配置することにより、大きなスペースを取らないラジアル軸受構造にすることができ、装置の小型化を図れる。換言すれば、回転シリンダ部材外周面とケーシングの間にローラを配置し、シリンダ外周面を内輪軌道面、ローラを転動体、ケーシング内周面を外輪軌道面としたベアリング構造を構成することにより、ラジアル軸受のない場合に比べてローラ径2個分だけ大きくスペースをとるだけでベアリングを構成できるので、ロータリ式シリンダ装置が大型化するのを回避することができる。
また本発明のロータリ式シリンダ装置は、回転軸心を中心として形成された空洞部に連通し該空洞部を挟んで対向する少なくとも一対のシリンダ室からなる凹部を有する回転シリンダ部材と、該回転シリンダ部材の回転軸心から偏心した回転中心位置を中心として回転するピストン保持部材と、回転シリンダ部材を回転自在に支持する第1の支持部材と、ピストン保持部材を回転自在に支持する第2の支持部材と、ピストン保持部材の回転中心位置から偏心した自転中心位置にその位置を中心として回転可能に保持されるとともに一対のシリンダ室および空洞部内を往復動するピストンと、第2の支持部材に形成され、回転シリンダ部材の軸方向に位置してシリンダ室に軸方向から連通する流体の流入口及び排出口とを備え、回転シリンダ部材とピストン保持部材との相対回転によりピストン自体が自転中心位置を中心として回転しながらかつ回転中心位置を中心として回転することによって一対のシリンダ室の双方に出入りするようにしている。
このロータリ式シリンダ装置では、流体の流入口と排出口とが回転シリンダ部材の軸方向に位置しており、流体がシリンダ室に対し軸方向から流れ込み軸方向に流れ出るようになっている。このため、流体の流入時あるいは排出時において回転シリンダ部材に対し大きなラジアル方向の力が作用しなくなり、回転シリンダ部材の傾きが抑えられる結果、ケース内周面との接触による抵抗が低減できる。
上述のロータリ式シリンダ装置においては、回転シリンダ部材の底部と第1の支持部材との隙間、回転シリンダ部材の側部と第1の支持部材との隙間、ピストン保持部材の底部と第2の支持部材との隙間、あるいはピストン保持部材の側部と第2の支持部材との隙間のうちのいずれか1の隙間にベアリングが介在していることが好ましい。このロータリ式シリンダ装置によると、少なくとも1の隙間にベアリングを介在させて隙間を精度よく保つようにしているので流体の漏れを減少できる。また、ベアリングが介在している部分における接触態様がベアリングによる転がり接触となるため回転抵抗を減少させることが可能となる。
さらにロータリ式シリンダ装置においては、回転シリンダ部材のピストン保持部材と対向する側の周縁に、径方向外側に広がり第2の支持部材と対向するフランジ部が形成されていることが好ましい。こうした場合、このフランジ部と第1の支持部材との間にベアリングを介在させ、回転シリンダ部材をラジアル方向に支持することが可能となる。また、回転シリンダ部材のうち第2の支持部材と対向する部分を幅広とすることにより、回転シリンダ部材と第2の支持部材の隙間からの流体漏れを防ぎやすくなる。
また、ロータリ式シリンダ装置における回転シリンダ部材の側壁は、円筒状部材がこの回転シリンダ部材の底板部分に後付けされることによって構成されていることも好ましい。こうした場合には、シリンダ室および空洞部からなる回転シリンダ部材の溝の成形が行いやすくなるという利点がある。
このロータリ式シリンダ装置によると、シリンダ室を側壁によって径方向外側から塞ぎ、回転シリンダ部材の外周を開口部の存在しない連続した曲面で構成していることから、回転シリンダ部材の外周面と第1の支持部材たるケーシングとの隙間からの流体漏れを防ぐことが可能となる。このため、シリンダ室内の流体の気密性あるいは液密性が確保しやすくなり、ポンプやコンプレッサ等に応用した場合の仕事の効率が向上する。
しかも、この場合、ベアリングで回転シリンダ部材を支持するにあたり不連続な外周面を避ける必要がなく、外周面の任意の箇所にベアリングを転がり接触させて回転シリンダ部材を支持することが可能である。したがって、回転シリンダ部材の外周面のうちラジアル方向への力が強く作用する箇所、具体的には回転シリンダ部材の外周面のうちシリンダ室の外側またはその周辺の箇所を支持することができる。したがって、回転シリンダ部材に対し大きなラジアル方向の力が作用した場合にも回転シリンダ部材が傾くのを十分に防止することができ、これにより、回転シリンダ部材とケーシングの内周面との接触抵抗を抑えることが可能となる。
加えて、回転シリンダ部材の外周面を開口部の存在しない連続面とし、この外周面と第1の支持部材たるケーシングの間にローラを配置することにより、大きなスペースを取らないラジアル軸受構造にすることができ、装置の小型化を図れる。換言すれば、回転シリンダ部材外周面とケーシングの間にローラを配置し、シリンダ外周面を内輪軌道面、ローラを転動体、ケーシング内周面を外輪軌道面としたベアリング構造を構成することにより、ラジアル軸受のない場合に比べてローラ径2個分だけ大きくスペースをとるだけでベアリングを構成できるので、ロータリ式シリンダ装置が大型化するのを回避することができる。
また本発明のロータリ式シリンダ装置は、回転軸心を中心として形成された空洞部に連通し該空洞部を挟んで対向する少なくとも一対のシリンダ室からなる凹部を有する回転シリンダ部材と、該回転シリンダ部材の回転軸心から偏心した回転中心位置を中心として回転するピストン保持部材と、回転シリンダ部材を回転自在に支持する第1の支持部材と、ピストン保持部材を回転自在に支持する第2の支持部材と、ピストン保持部材の回転中心位置から偏心した自転中心位置にその位置を中心として回転可能に保持されるとともに一対のシリンダ室および空洞部内を往復動するピストンと、第2の支持部材に形成され、回転シリンダ部材の軸方向に位置してシリンダ室に軸方向から連通する流体の流入口及び排出口とを備え、回転シリンダ部材とピストン保持部材との相対回転によりピストン自体が自転中心位置を中心として回転しながらかつ回転中心位置を中心として回転することによって一対のシリンダ室の双方に出入りするようにしている。
このロータリ式シリンダ装置では、流体の流入口と排出口とが回転シリンダ部材の軸方向に位置しており、流体がシリンダ室に対し軸方向から流れ込み軸方向に流れ出るようになっている。このため、流体の流入時あるいは排出時において回転シリンダ部材に対し大きなラジアル方向の力が作用しなくなり、回転シリンダ部材の傾きが抑えられる結果、ケース内周面との接触による抵抗が低減できる。
上述のロータリ式シリンダ装置においては、回転シリンダ部材の底部と第1の支持部材との隙間、回転シリンダ部材の側部と第1の支持部材との隙間、ピストン保持部材の底部と第2の支持部材との隙間、あるいはピストン保持部材の側部と第2の支持部材との隙間のうちのいずれか1の隙間にベアリングが介在していることが好ましい。このロータリ式シリンダ装置によると、少なくとも1の隙間にベアリングを介在させて隙間を精度よく保つようにしているので流体の漏れを減少できる。また、ベアリングが介在している部分における接触態様がベアリングによる転がり接触となるため回転抵抗を減少させることが可能となる。
さらにロータリ式シリンダ装置においては、回転シリンダ部材のピストン保持部材と対向する側の周縁に、径方向外側に広がり第2の支持部材と対向するフランジ部が形成されていることが好ましい。こうした場合、このフランジ部と第1の支持部材との間にベアリングを介在させ、回転シリンダ部材をラジアル方向に支持することが可能となる。また、回転シリンダ部材のうち第2の支持部材と対向する部分を幅広とすることにより、回転シリンダ部材と第2の支持部材の隙間からの流体漏れを防ぎやすくなる。
また、ロータリ式シリンダ装置における回転シリンダ部材の側壁は、円筒状部材がこの回転シリンダ部材の底板部分に後付けされることによって構成されていることも好ましい。こうした場合には、シリンダ室および空洞部からなる回転シリンダ部材の溝の成形が行いやすくなるという利点がある。
図1は本発明の一実施形態を示すロータリ式シリンダ装置の縦断面図である。図2は図1に示したロータリ式シリンダ装置の底面図である。図3は回転シリンダ部材の構造を示す斜視図である。図4は回転シリンダ部材のフランジ部とケーシングとの間に設けられるリテーナの一例を示す斜視図である。図5は回転シリンダ部材のフランジ部とケーシングとの間に設けられるリテーナの別の例を示す斜視図である。図6は回転シリンダ部材とケーシングの間のベアリングを構成するリテーナの構造例を示す斜視図である。図7はケースに組み込まれたベアリングを構成するリテーナの構造例を示す斜視図である。図8はケースカバーの構造を示す斜視図である。図9は回転シリンダ部材、ケーシング、およびこれらの間に設けられるローラベアリングやプレートを示す分解斜視図である。図10は本発明の第1の実施形態におけるロータリ式シリンダ装置の動作を(a)〜(h)の順に示した図である。図11は液体を搬送または圧送するポンプとして用いられた場合のロータリ式シリンダ装置の動作を(a)〜(h)の順に示した図である。図12は本発明の第2の実施形態を示す回転式洗浄機の部分縦断面図である。図13は回転式洗浄機(回転ブラシを除く)を流入管側から見た部分縦断面図である。図14は図13に示した回転式洗浄機(回転ブラシを除く)の底面図である。図15は回転式洗浄機を構成するロータリ式シリンダ装置を流入管側から見た図である。図16はロータリ式シリンダ装置の流入管側からの縦断面図である。図17は図15に示したロータリ式シリンダ装置の底面図である。図18はケースカバーの平面図である。図19は図18のXIX−XIX線におけるロータリ式シリンダ装置の縦断面図である。図20はケーシングの底面図である。図21は図20のXXI−XXI線におけるケーシングの背面側からの縦断面図である。図22は回転式洗浄機の分解組立図(ケーシング〜ケースカバーまで)である。図23は回転式洗浄機の分解組立図(カバー回転ブラシまで)である。図24は第2の実施形態の回転式洗浄機におけるロータリ式シリンダ装置の動作を(A)〜(G)の順に示した図である。図25はシリンダ室の数を6つ(3対)、ピストンの数を3つとしたロータリ式シリンダ装置の回転シリンダ部材とピストンとの関係を示す平面図である。図26はシリンダ室の数を6つ(3対)、ピストンの数を3つとした別の構成のロータリ式シリンダ装置の回転シリンダ部材とピストンとの関係を示す平面図である。図27は本発明の他の実施形態を示す図で、回転シリンダ部材に設けられた一体的な回転軸をケーシングで支持するようにしたロータリ式シリンダ装置の内部構成を示すものである。図28は回転シリンダ部材をラジアル方向に支持するラジアルベアリングが用いられたロータリ式シリンダ装置の内部構成を示す縦断面図である。図29は回転シリンダ部材とケーシングとの間にスラスト荷重とラジアル荷重を同時に支持する軸受が設けられたロータリ式シリンダ装置の内部構成を示す縦断面図である。図30はラジアルベアリングの内輪に嵌め込むことによって側壁が形成される構造の回転シリンダ部材の一例を示す斜視図である。図31は十字状の溝からなるシリンダ室が設けられた従来の回転シリンダ部材の構造を示す斜視図である。図32は従来のロータリ式シリンダ装置の構造例を示す縦断面図である。図33は従来のロータリ式シリンダ装置の内部構造の一例を示すケースを外した状態での平面図である。図34は図33に示したロータリ式シリンダ装置の縦断面図である。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図11に本発明の実施形態を示す。本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1は、例えば十字状とされた溝からなるシリンダ室を備えた回転シリンダ部材2と、この十字状シリンダ室の中でタイミングをずらしながら互いに直交する方向へ往復する一対のピストン3,4と、これらピストン3,4を回転可能に支持しつつ自身も回転するピストン保持部材5等を備え、回転シリンダ部材2の回転運動、ピストン3,4の相対的な往復運動、装置全体におけるピストン3,4の回転運動、そしてピストン保持部材5の回転運動の各運動を関連づけることによって所定の動作を行うようにしたものであり、例えば、外部から回転力を与えることによって流体を圧縮して送り出すようにした圧送装置、あるいは外部から流体を流入させた際の流れを利用して流体を排出すると同時に回転力を得るようにした流体モータなどとしての適用が可能である。これら回転シリンダ部材2、ピストン3,4、ピストン保持部材5等の部品はロータリ式シリンダ装置1の筐体を構成する第1の支持部材6および第2の支持部材7内の所定の箇所に組み込まれており、この場合、溝からなるシリンダ室は回転シリンダ部材2とピストン保持部材5と第2の支持部材7とで囲繞され、ピストン3,4の移動に伴い内部圧力が変動する密閉された気密なあるいは水密な空間が構成されるようになっている(図1等参照)。
本実施形態にかかるロータリ式シリンダ装置1は、回転シリンダ部材2と、該回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した回転中心位置Xを中心として回転するピストン保持部材5と、回転シリンダ部材2を回転自在に支持する第1の支持部材6と、ピストン保持部材5を回転自在に支持する第2の支持部材7と、ピストン保持部材5の回転中心位置Xから偏心した自転中心位置X1,X2に回転可能に保持されたピストン3,4と、シリンダ室23a〜23dに連通する流体の流入口71および排出口72とを備えたシリンダ装置である。このロータリ式シリンダ装置1の駆動モータ113を駆動することにより出力軸51を通じてピストン保持部材5が回転し、この回転がピストン3,4を介して回転シリンダ部材2にまで伝達される結果、当該回転シリンダ部材2も回転することになる。その際、ピストン3,4は回転シリンダ部材2に設けられた凹部、つまり空洞部22およびシリンダ室23a〜23dによって形成される十字状の空間内を相対的に往復直線運動しその動きに応じて流体の吸入と吐出を行う。
以下においては、本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1を流体(気体または液体)を圧縮して送り出す圧送装置に適用した実施形態を示す。以下ではまずロータリ式シリンダ装置1の構成を説明し、次いでロータリ式シリンダ装置1をコンプレッサとして用いた場合、さらには液体用のポンプ流体モータとして用いた場合について説明する。
回転シリンダ部材2は、第1の支持部材6と第2の支持部材7との間に形成される空間内に収容され、これら支持部材6,7さらにはピストン保持部材5等で囲繞されることによってピストン3,4が往復動可能な仕切られたシリンダ室23a〜23dおよび空洞部22を形成するもので、その表面には例えば十字状とされた溝が形成されている。また、回転シリンダ部材2はピストン3,4の往復動やピストン保持部材5の回転運動に伴って自身も回転運動するように設けられている。第1の支持部材6(以下、本発明の実施形態の説明中において「ケーシング6」という)に回転自在に収容される本実施形態の回転シリンダ部材2は、側壁25を備えた厚い円板状の底部2cであってピストン保持部材5側の面に十字状の溝によって形成されるピストン移動空間を備えた形状、別の表現をすれば、底部2cを形成する1枚の円板に側壁25が取り付けられかつ円板に十字状の溝が設けられてピストン3,4がストロークするための空間が形成された形状とされている(図3参照)。この十字状の溝により、直交する溝の交差部分(本明細書ではこの交差部分を「空洞部」といい、図10(b)及び図11(b)において符号22で示す)及びこの空洞部22を挟んで対向する4つのシリンダ室23a〜23dが形成されている。これらシリンダ室23a〜23dはピストン保持部材5側が開放され、他の3方の面が全て平面(または曲面)で閉ざされた構造となっており、ピストン保持部材5によって保持されたピストン3,4が開放された側から嵌め込まれるようになっている。このような形状の空洞部22およびシリンダ室23a〜23dに対し、ピストン3,4はその移動方向の長さが空洞部22の幅よりも長くなるように縦長の略直方体形状とされている(図10等参照)。これらピストン3,4は、ピストン保持部材5が回転するとシリンダ室23a〜23d内を往復直線運動する。シリンダ室23a〜23dの底には、これらピストン3,4の底面に設けられた突起3b,4b(例えば図22参照)が嵌る直線状のガイド溝24a,24bが設けられている。また、回転シリンダ部材2はケーシング6に固定されたシリンダ軸21に回転自在に支持されている(図1参照)。
回転シリンダ部材2の周縁には外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図1等参照)。また、側壁25の外周であってこのフランジ部2aよりも底部2c寄りの部分とケーシング6との間にはラジアルベアリングが設けられている。ラジアルベアリングは、通常、アウターレースとインナーレース、ローラ並びにこのローラ間隔を保持するリテーナからなる。本実施形態の場合は、ローラ108とこのローラ108を円周方向に位置決めするリテーナ109とを設けており、ケーシング6をアウターレースとして、回転シリンダ部材2のフランジ部2aの周面部分をインナーレースとしてそれぞれ機能させるようにしている(図1、図9参照)。リテーナ109は、例えばローラ108を軸方向に出し入れできるように保持部109bが軸方向に開口した形状(図4参照)、あるいはローラ108を径方向に出し入れできるように保持部109bの内周側または外周側が広く開口した形状(図5参照)等とされ、ローラ108を全周にわたって等間隔で保持できるように形成されている。なお、図4等では特に図示していないが、このリテーナ109には、回転シリンダ部材2とケーシング6との間に圧力の高い流体が入り込んだ結果この回転シリンダ部材2に対し外側から作用する背圧を逃がすことができるように切欠き部が設けられていることが好ましい。
回転シリンダ部材2の底部2cの裏面には冷却用空気を循環させるため例えばシロッコファンなどのファン2bが一体的に形成され(図3参照)、さらにケーシング6にはこのファン2bの配置に合わせ、このファン2bに向けて外気を導入する空気導入口28と、ファン2bを通過した空気をケーシング6の外へ排出する空気排出口29とが設けられている(図1、図2参照)。また、このファン2bとケーシング6との間にはプレート110、ローラ102およびリテーナ103が設けられている。プレート110はファン2bの軸方向端面と接触する板状の部材で、空気導入用の複数の孔110aを有している(図2、図9参照)。また、このプレート110とケーシング6との間に設けられているローラ102は例えば図9に示すように放射状に配置され、リテーナ103(図6参照)によって等間隔に保持されている。これらローラ102及びリテーナ103は、ピストン保持部材5を軸方向に支持するスラストベアリングを構成している。
第2の支持部材7(以下、本発明の実施形態の説明中において「ケースカバー7」という)はケーシング6と組み合わされることによって筐体、より具体的にはポンプケーシングを形成し、尚かつピストン保持部材5を回転自在に支持する部材で、例えば本実施形態の場合には図8に示すような直方体形状をしており、ケーシング6とケース11の間に配置されている。このケースカバー7のほぼ中央部分には、ピストン保持部材5が収容される孔部7aが形成されている(図8参照)。
ピストン保持部材5はピストン3,4を回転可能に支持しながら自らも回転中心位置Xを中心に回転する部材で、ケースカバー7の孔部7a内に回転自在な状態で収容されている。ピストン保持部材5の回転中心位置Xには駆動モータ113の出力軸51が例えば圧入されることによって一体となるように固着されている(図1参照)。本実施形態のピストン保持部材5は、ラジアル方向に作用する荷重についてはこの出力軸51によって支持されているとともに、出力軸51の軸方向に作用する荷重についてはケース11に組み込まれたプレート116とローラ117とによって支持されている(図1参照)。ローラ117は例えば図7に示す形状のリテーナ118によって等間隔に保持され、ピストン保持部材5を軸方向に支持するスラストベアリングを構成している。また、ピストン保持部材5のうち出力軸51が取り付けられている側の面には冷却用の空気を循環させるための例えばシロッコファンなどのファン5bが一体的に形成され(図1参照)、これに合わせてケース11にはこのファン5bに向けて外気を導入する空気導入口111と、ファン5bを通過した空気をケース11の外へ排出する空気排出口112とが設けられている(図3参照)。さらにピストン保持部材5のうち出力軸51やファン5bとは反対側の面には、このピストン保持部材5から突出するように2本の平行なピストン軸52,53が固定されている。ピストン軸52はピストン3を、ピストン軸53はピストン4をそれぞれ回転自在に支持している。
ピストン3,4は、回転シリンダ部材2に設けられた空洞部22およびシリンダ室23a〜23d(図3参照)に摺動自在にはめ込まれている。回転シリンダ部材2とピストン保持部材5とが相対的な回転運動をした場合、これらピストン3,4が、自転中心位置X1,X2を中心として自転しながらかつ回転中心位置Xを中心として公転することによって一対のシリンダ室23a,23b(あるいは23c,23d)の双方に出入りする。
ケース11には、ロータリ式シリンダ装置1を駆動するための駆動モータ113が取り付けられている(図1参照)。本実施形態の場合、この駆動モータ113の出力軸51をピストン保持部材5の中心孔5aに圧入などして取り付け、この出力軸51がピストン保持部材5の回転中心軸として機能するようにしている(図1参照)。また本実施形態の場合、この出力軸51および中心孔5aのそれぞれに軸方向に長いキー溝を設けるとともに両キー溝の間にキー115を介在させ(図1参照)、駆動モータ113の出力軸51に対してピストン保持部材5が軸方向には一定ストローク移動可能だが回転方向には相対回転できない状態となるようにしている。
また、ケースカバー7には外部からその内部へと流体を取り込むための吸入管79と、吸入管79からシリンダ室23a〜23dへ流体を導く流入口71および流入ポート73とが設けられ、更には流体をケースカバー7の内部から外部へと送り出すための吐出管80と、シリンダ室23a〜23dからこの吐出管80に流体を導く排出ポート74および排出口72とが設けられている(図8参照)。流入ポート73および排出ポート74は、シリンダ室23a〜23dに流体が回転シリンダ部材2の軸方向に流れ込みあるいはシリンダ室23a〜23dから流体が軸方向に流れ出すようにするため、これら流入ポート73あるいは排出ポート74と重なった状態のシリンダ室23a〜23dに対し軸方向に連通するように配置されている。
続いて、上述した構成のロータリ式シリンダ装置1を気体を圧縮するコンプレッサとして用いる場合について説明する(図1、図10等参照)。
ロータリ式シリンダ装置1がコンプレッサとして用いられる場合、ケースカバー7の流入ポート73は、気体を吸入する過程にあるシリンダ室23a(図10参照)と連通するように、より具体的には、ピストン3がシリンダ室23aの外周側端部に到達した位置から当該シリンダ室23a内を空洞部22側へと引き返して気体を吸入している吸入過程におけるシリンダ室23aと連通するように配置されている(図10参照)。一方、排出ポート74はこれとは逆に気体を排出する過程にあるシリンダ室23a〜23dと連通するように、より具体的には、例えば吸入過程にあったシリンダ室23aと流入ポート73との連通が途切れた後で(図10(c)参照)今度は気体の圧縮ならびに排出を開始するピストン3の先端が空洞部22からシリンダ室23bへと差し掛かった位置から(図10(c)参照)、ピストン3がこのシリンダ室23bの外周側端部に到達して流体の圧縮ならびに排出が終了するまでの間の当該シリンダ室23bと連通するように配置されている(図10(c)〜図10(f)参照)。
また、例えば図10(a)〜図10(b)に示すように吸入過程にあるシリンダ室23aは、図10(c)に示すように流入ポート73との連通が途切れることによって吸入過程を終了してから、図10(h)に示すようにピストン3が再度このシリンダ室23aに入り込んだ後に排出ポート74と連通するまでの間(図10(c)〜図10(h)参照)、各シリンダ室23b〜23dと順次連通するが流入ポート73および排出ポート74のいずれとも連通しないいわば中間室を形成する。この場合、中間室は、2つのピストン3,4のいずれか及び当該シリンダ室23a場合によっては更にその他のシリンダ室23b〜23dの周壁で囲まれた状態にあり、これに対してそれぞれのピストン3,4のシリンダ室23a〜23dに対する相対的移動速度は異なることから、中間室内の容積の増減ならびにこれに伴う内圧変化が起こるが、流入流出する流体が気体である場合には液体である場合に比較して圧縮性があるためにピストン3,4や回転シリンダ部材2などの動作を妨げるような抵抗とはならない。
また、回転シリンダ部材2は、流体の吸入あるいは排出に伴い回転軸心oと直角方向つまりラジアル方向の力を受けるが、この回転シリンダ部材2の外周面とケーシング6の内周面との間に配置され転がり接触するローラ108によって支持されることにより傾きが抑えられる。この場合、回転シリンダ部材2は、流体の流入流出に伴いラジアル方向への力が生じることになるシリンダ室23a〜23dの外側の周面で支持されているため、この回転シリンダ部材2に対し大きなラジアル方向の力が作用した場合にも傾くのが十分に防止される。したがって、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においては回転シリンダ部材2とケーシング6の内周面との接触抵抗を十分に抑えることができる。しかも、回転シリンダ部材2は、その外周面をケーシング6の内周面に対し転がり接触するローラ108を介在させた状態で回転するため、回転時にケーシング6等から受ける摩擦抵抗による損失が少ない。さらに、回転シリンダ部材2は、シリンダ室23a〜23dの内部で流体を加圧して圧縮することに伴い生じる内圧によって軸方向の力も受けるが、この回転シリンダ部材2の底部2cとケーシング6の内部底面との間に配置されて転がり接触するローラ102によって支持される。このため、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においてはこのようなスラスト荷重に起因する摩擦抵抗による回転時の損失が少ない。
また、ピストン保持部材5は、出力軸51や、ベアリングを構成する転がり接触するローラ117によって傾かないように支持されている。さらに、ピストン保持部材5は、このように転がり接触するローラ117によって軸方向から支持されていることから、シリンダ室23a〜23dの内部圧力に起因する軸方向の力を受けた場合にも当該ピストン保持部材5が受ける摩擦抵抗による損失が少ない。
また、回転シリンダ部材2にファン2b、ピストン保持部材5にファン5bをそれぞれ設け、さらにケーシング6とケースカバー7に空気導入口28、空気排出口29、空気導入口111および空気排出口112を設けた本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においては、空気導入口28,111から外部の空気を内部へと取り込むとともに空気排出口29,112から排気することによって空気を循環させる。これにより、このロータリ式シリンダ装置1においては装置内部で発生した余計な熱を流体とともに外部に速やかに排熱して冷却することが可能となっている。
さらに、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1の場合、回転シリンダ部材2のケースカバー7と対向する側の周縁には径方向外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図1、図3等参照)。このフランジ部2aは、少なくともケースカバー7との間におけるシール性、つまり気密性あるいは液密性を確保できる程度のクリアランスをもってこのケースカバー7に対向する部分の径方向の幅つまり厚みがフランジ部2a以外の部分よりも厚くなっている。したがって、回転シリンダ部材2とケースカバー7とが対向する領域がその厚みの分だけ広がっていることから、これら回転シリンダ部材2とケースカバー7の気密性が向上し、その隙間からの流体漏れが少なくなっている。なお、回転シリンダ部材2とケースカバー7とは、摺動負荷とならない程度に摺接していてもよい。要は、ロータリ式シリンダ装置1として必要な最低限の気密性あるいは液密性が確保されてさえいれば、回転シリンダ部材2とケースカバー7とはある程度のクリアランスを有した状態で対向していてもよいし摺接する程度にクリアランスがない状態となっていてもよい。
次に、上述したロータリ式シリンダ装置1を液体を搬送または圧送するポンプとして用いる場合について説明する(図11参照)。
ロータリ式シリンダ装置1を液体ポンプとして用いる場合、ケースカバー7の流入ポート73、排出ポート74を上述したコンプレッサの場合と同様に配置すると、回転シリンダ部材2の回転に伴い上述した中間室、つまり2つのピストン3,4のいずれか及び連通した各シリンダ室23a〜23dの周壁で囲まれていいて尚かつ流入ポート73や排出ポート74とは連通していない閉鎖されたスペース内の容積が増減することから、その中に非圧縮性つまり気体よりも圧縮率の少ない液体が入っているとその液体を圧縮するタイミングが生じ、駆動モータ113の回転力では回転させることができず回転が止まってしまう。そこで本実施形態では、ケースカバー7の流入ポート73を、例えばピストン3がシリンダ室23aの外周側端部にほぼ到達した位置(図11(a)に示す状態よりも僅かに前の状態)から、回転シリンダ部材2がここから更にほぼ135度回転した位置(図11(e)参照)までの間、吸入過程にある当該シリンダ室23aと連通するように設けている。また、排出ポート74は、流入ポート73とシリンダ室23aの連通が途切れるとほぼ同時に排出側にあるシリンダ室、例えば図11(e)でいえばシリンダ室23cと連通するように設けられている。さらに排出ポート74は、ピストン、例えば図11(e)〜図11(h)でいえばピストン4がシリンダ室、この場合ならシリンダ室23cのほぼ外周側端部に到達するまで当該シリンダ室23cとの連通が継続するように設けられている。なお、ここでは4つのシリンダ室23a〜23dのうちシリンダ室23aやシリンダ室23cを例示して説明したがこれは代表例を説明したに過ぎず、他のシリンダ室23b,23dとの関係に関しても流入ポート73や排出ポート74の配置は変わるところがない。
このように流入ポート73および排出ポート74を配置したロータリ式シリンダ装置1の場合、図11(a)〜図11(b)に示すように流入ポート73と連通しているシリンダ室23a内をピストン3が移動することにより流入ポート73からこのシリンダ室23aへと液体が取り込まれる。また、ピストン3がシリンダ室23aから完全に抜け出ることによってシリンダ室23aが両隣のシリンダ室23b,23cと連通した後も(図11(d)参照)、2つのピストン3,4の各シリンダ室23a〜23dに対する相対速度の違いで連通したシリンダ室、(この場合、23aと23cと23b)の容積は増加するため液体は引き続きシリンダ室23aへと流入する(図11(c)〜図11(e)参照)。
また、図11(e)に示す位置で流入ポート73とシリンダ室23aの連通は途切れ、これとほぼ同時にシリンダ室23cと排出ポート74が連通し始める。この位置を過ぎてさらに回転シリンダ部材2が回転すると2つのピストン3,4のシリンダ室23a〜23dに対する相対速度が逆転して今度はピストン4の相対速度の方が速くなることから、図11(e)に示す状態から図11(f)に示す状態に至るまで互いに連通しているシリンダ室23a,23b,23cの容積は、シリンダ室23cに向かって移動するピストン4の動きに従い減少し始める。このとき、排出側にあるシリンダ室23cと排出ポート74が連通することから、シリンダ室23a,23b,23c内の液体は排出ポート74を通じて外部へと排出される(図11(e)参照)。ここからさらに図11(f)の状態になると、ピストン4がシリンダ室23cに差し掛かり、引き続きシリンダ室23c内の液体が外部へと排出され続ける。以上のような動作により、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1によれば非圧縮性の液体を対象とした場合でもロックすることなくポンプ作用を継続して行うことができる。また、このような構成とした結果、流体が途切れることがなくなるので、回転シリンダ部材2がスムーズに回転し、振動が抑えられて効率が向上するという副次的な効果も得られる。
なお、上述した実施形態では流体を加圧または圧縮して送り出すポンプあるいはコンプレッサの動作例を説明したが、このロータリ式シリンダ装置1は、外部から流体に圧力を加えて送り込みその圧力を変換して回転力として取出す流体モータとして用いることも可能である。以下では本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1の第2の実施形態として回転式洗浄機に適用した場合を説明する。
図12〜図24に、ロータリ式シリンダ装置1を回転式洗浄機10に適用した実施形態を示す。回転式洗浄機10は水圧を利用して回転ブラシ9を回転動作させることによりこの回転ブラシ9を利用した効率的な洗浄を行うもので、本実施形態の場合は、ロータリ式シリンダ装置1、歯車輪列8、回転ブラシ9、カバー90、柄91等によって構成されている(図12、図13参照)。なお、本実施形態にかかる回転式洗浄機10の分解組立図である図22と図23においては、各部品形状をより解り易く示すため、主要な部品については側面のみならず底面から見た図を併せて示している。
ロータリ式シリンダ装置1は、回転軸心oを中心として形成された空洞部22(図24(C)参照)に連通し該空洞部22を挟んで対向する2対のシリンダ室23a〜23dを有する円形の回転シリンダ部材2と、回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した回転中心位置X(図24(A)参照)を中心として回転するピストン保持部材5と、該ピストン保持部材5上の自転中心位置X1,X2にこのピストン保持部材5に対して相対回転可能に設けられシリンダ室23a〜23d内を往復運動するピストン3,4と、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5を回転可能に支持する支持部材として機能するケーシング6およびケースカバー7と、これらケーシング6およびケースカバー7に設けられシリンダ室23a〜23dに連なり水が流入及び排出される流入口71及び排出口72と、ピストン保持部材5の背面側と排出口72とを連通しピストン保持部材5の背圧を逃がす第1の背圧逃がし流路75と、回転シリンダ部材2の背面側と排出口72とを連通し回転シリンダ部材2の背圧を逃がす第2の背圧逃がし流路62,76とを備えている。回転ブラシ9はロータリ式シリンダ装置1の出力側に取り付けられており回転伝達されることによって回転する。さらにケースカバー7には排出口72から流出した水を回転ブラシ9に流出させるための流路70が形成されている。
ピストン保持部材5を回転可能に支持する支持部材は、上述したようにケーシング6及びケースカバー7によって構成されている。例えば本実施形態の場合、ケースカバー7に設けられた収容凹部78内にピストン保持部材5が回転可能な状態で収容されている。
カバー90はロータリ式シリンダ装置1のケースカバー7にねじ93で固定されている。このカバー90は、ロータリ式シリンダ装置1から噴出した水が噴出孔83bを通って回転ブラシ9から流れ出るようにブラシ歯車83を覆うような笠形状とされている(図12等参照)。
柄91は中空とされ、基端側に導入路92を備えるとともに先端側をロータリ式シリンダ装置1の流入管79に溶着等によって固着されている。導入路92が設けられている基端部は、例えばホースなどの水道95の先端部が接続可能な構造となっている。
回転シリンダ部材2は所定の厚みを有する円板形状に形成されており、ケーシング6内に回転自在に配置されている。ケーシング6の中央の孔63には回転シリンダ部材2の回転軸となるシリンダ軸21が例えば圧入される等して固定されており、回転シリンダ部材2はこのシリンダ軸21に回転自在に支持された状態でケーシング6の収容凹部61内に収容されている。
回転シリンダ部材2は、ケーシング6とケースカバー7との間に形成される空間内に収容され、これら支持部材6,7さらにはピストン保持部材5等で囲繞されることによってピストン3,4が往復動可能な仕切られたシリンダ室23a〜23dおよび空洞部22を形成するもので、その表面には十字状の溝が形成されている。また、回転シリンダ部材2はピストン3,4の往復動やピストン保持部材5の回転運動に伴って自身も回転運動するように設けられている。さらに本実施形態の回転シリンダ部材2は、側壁25を備えた円板状の底部2cであってピストン保持部材5側の面に十字状の溝によって形成されるピストン移動空間を備えた形状、別の表現をすれば、1枚の円板状の底部2cに側壁25が取り付けられかつ当該底部2cに十字状の溝が設けられてピストン3,4がストロークするための空間が形成された形状とされている。この十字状の空間により、溝の交差部分(本実施形態においてもこの交差部分を「空洞部」といい図22及び図24(C)において符号22で示す)及びこの空洞部22を中心として対向するように4つのシリンダ室23a〜23dが形成されている。これらシリンダ室23a〜23dはピストン保持部材5側の面が開放され、他の3方の面が全て平面、曲面で閉じられた構造となっている。また、これら各シリンダ室23a〜23dには、ピストン保持部材5によって保持されたピストン3,4が摺動可能な状態で嵌め込まれる。ピストン3,4はその移動方向長さが空洞部22の幅よりも長くなるように縦長の略直方体形状とされている(図24(A)等参照)。これらピストン3,4は、ピストン保持部材5が回転するとシリンダ室23a〜23d内を往復直線運動する。シリンダ室23a〜23dの底には、これらピストン3,4の突起が嵌る直線状のガイド溝24a,24bが設けられている。
また、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にはこの回転シリンダ部材2を軸方向に支持する支持プレート101が設けられている(図16、図22参照)。支持プレート101は回転シリンダ部材2に作用する軸方向の荷重を受けるベアリングを構成しており、ローラ102とこのローラ102を円周方向に等間隔に配置するリテーナ103とで回転シリンダ部材2に加わる軸方向の荷重を支持するスラストベアリングが構成されている。なお、ローラ102の代わりにニードルを用いることができる。
回転シリンダ部材2の周縁には外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図16、図19参照)。また、側壁25の外周であってこのフランジ部2aよりも底部2c寄りの部分とケーシング6との間にはラジアルベアリングが設けられている。ラジアルベアリングは、通常、アウターレースとインナーレース、ローラ並びにこのローラ間隔を保持するリテーナからなる。本実施形態の場合は、ローラ108とこのローラ108を円周方向に位置決めするリテーナ109とを設けており、ケーシング6をアウターレースとして、回転シリンダ部材2のフランジ部2aの周面部分をインナーレースとしてそれぞれ機能させるようにしている。リテーナ109には、回転シリンダ部材2とケーシング6との間に圧力の高い流体が入り込んだ結果この回転シリンダ部材2に対し外側から作用する背圧を逃がすことができるように切欠き部109aが設けられている(図22参照)。
ピストン保持部材5は回転シリンダ部材2より小径の円形形状に形成されてケースカバー7の収容凹部78内に収容されており、回転中心位置Xを中心として回転可能である(図13、図16等参照)。この場合、ピストン保持部材5の回転中心位置Xは、上述の回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した位置とされている(図24参照)。また、このピストン保持部材5とケースカバー7との間には支持プレート104が設けられている(図16、図19参照)。支持プレート104はピストン保持部材5に作用する軸方向の荷重を受けるベアリングを構成しており、例えば本実施形態の場合には、ローラ105及びこのローラ105を円周方向に等間隔に配置するリテーナ106とで構成されている。
このピストン保持部材5の回転中心位置Xには、ロータリ式シリンダ装置1の出力部に相当する出力軸51が圧入により一体的に固定されて下方側つまり回転ブラシ9のある側に突出している(図15、図16参照)。本実施形態におけるこの出力軸51は、その先端で支持する出力歯車81(図13、図14参照)を回り止めした状態で支持できるようにその先端部分が例えば小判形状とされ(図17参照)、さらに出力歯車81をねじ止めして先端部分に固定するための雌ねじ51aを備えている(図15、図16参照)。また、出力軸51はケースカバー7に設けられた出力軸貫通孔77を貫通している。この場合、出力軸貫通孔77がラジアル軸受としても機能するので、ピストン保持部材5は出力軸51を介してラジアル方向に支持されている。この出力軸51の下端には出力歯車81が取り付けられている(図13、図14参照)。また、ピストン保持部材5の出力軸51が固定された面と反対側には、ピストン3を自転可能に保持するピストン軸52とピストン4を自転可能に保持するピストン軸53とが固定されている(図16参照)。これらピストン軸52,53には、ピストン3,4が回転自在に嵌め込まれている。
ピストン3,4はシリンダ室23a〜23d内、より具体的には、本実施形態の場合ピストン3はシリンダ室23aと23b内、ピストン4はシリンダ室23cと23d内を互いに直交する方向に往復運動するように設けられている。本実施形態のピストン3,4は往復動するときの前後の面が若干丸みを有するように形成され、その他の4面が平面となるように形成されている(図17、図24(A)等参照)。ピストン3,4の中心部分には、ピストン軸52,53に回転自在に嵌められるための孔3a,4aが設けられている。また、ピストン3,4の底面にはガイド溝24a,24bに嵌合する凸部3b,4bが設けられている。
また、ケースカバー7にはアイドラ軸84とブラシ軸85とが出力軸51と平行となるようにそれぞれ固定されている(図15、図16参照)。アイドラ軸84はその先端部でねじ89を用いてアイドラ歯車82を回転可能な状態で支持している(図13参照)。このアイドラ歯車82は出力歯車81と噛み合っており、出力歯車81の回転をブラシ歯車83に伝達する。ブラシ歯車83は上述のブラシ軸85に回転可能な状態で嵌め込まれ、ブラシ軸85の先端のワッシャ87及びねじ86によって抜け止めされている。このブラシ歯車83の歯は符号83aで示すように歯数が出力歯車81の歯数より多い内歯であり、アイドラ歯車82と噛み合っている(図13、図14参照)。また、ブラシ歯車83とケースカバー7との間には、ブラシ歯車83がスラスト荷重を受けた場合にも滑りやすくして円滑な回転を確保するワッシャ107が嵌め込まれている。本実施形態の回転式洗浄機10では、上述した出力歯車81、アイドラ歯車82、ブラシ歯車83によって減速機構として機能する歯車輪列8が構成されている。また、上述した出力歯車81、アイドラ歯車82、ワッシャ107等の各構造部品は耐水性の材料で形成されている。
ブラシ歯車83には、回転ブラシ9が取り付けられるとともに、この回転ブラシ9に水を噴き出すための噴出孔83bが設けられている。この噴出孔83bの形状・大きさ・配置などは特に限定されるものではないが、例えば本実施形態では等しい大きさの8個の丸孔を周状に等間隔で配置するようにしている(図14参照)。また、ブラシ歯車83に取り付けられる回転ブラシ9は着脱容易であることが望ましい。こうした場合、ブラシ歯車83を取り外さなくても回転ブラシ9のみを容易に交換することが可能となり、例えば洗浄する対象物の大きさや形状等、さらには洗浄対象物のある場所等に応じて形状、材質、大きさ等が適したブラシに取り換えたり、あるいは古くなって傷んだブラシを交換したりすることが簡単に行えるようになる。
ケースカバー7には、水を外部からロータリ式シリンダ装置1の内部へと流入させるための流入口71及びロータリ式シリンダ装置1から外部へと排出するための排出口72が設けられている。ケースカバー7はシール材(図示省略)を間に挟むようにしてケーシング6に取り付けられ、ねじ94で固定されている。また、流入口71、排出口72のうちシリンダ室23a〜23dと対向する側には回転シリンダ部材2の回転に応じて水が流入、排出するようそれぞれ流入ポート73、排出ポート74が設けられている(図12参照)。
流入ポート73は流入口71から流れ込んだ水をシリンダ室23a〜23dに導くための導入用ポートであり、例えば本実施形態の場合は、収容凹部78の外側にこの凹部の外周に沿うように設けられ、図24において時計回りに進むにつれて徐々に溝幅が広くなり更に時計回りに進むと途中で途切れる形状の溝によって構成されている。流入口71は、流入ポート73の最も幅広の部分の近傍でこの流入ポート73と連通している。この流入ポート73は、上面側あるいは底面側から見た場合にこの流入ポート73とオーバーラップしている、つまり重なり合っているシリンダ室23a〜23dと連通し水がシリンダ室23a〜23d内へ流れ込むのを可能とする(図24参照)。
一方、排出ポート74はシリンダ室23a〜23dの水を排出口72に導くための導出用ポートであり、例えば本実施形態の場合は上述した流入ポート73と線対称な形状の溝、すなわち収容凹部78の外側にこの凹部の外周に沿うように設けられ、図24において時計回りに進むにつれて徐々に溝幅が狭くなる形状の溝によって構成されている。排出口72は、排出ポート74の最も幅広の部分の近傍でこの排出ポート74と連通している。この排出ポート74は、上面側あるいは底面側から見た場合にこの排出ポート74とオーバーラップしているシリンダ室23a〜23dと連通し水がシリンダ室23a〜23dから流れ出すのを可能とする(図24参照)。
また、ピストン保持部材5の背圧を逃がすため、ピストン保持部材5の背面側、すなわちここではピストン保持部材5およびケースカバー7の間、と排出口72とを連通する第1の背圧逃がし流路75がケースカバー7の収容凹部78の内周面に設けられている(図18、図19参照)。したがって本実施形態の回転式洗浄機10によれば、シリンダ室23a〜23dから漏れ出てピストン保持部材5の側部を通り背面側に回り込んだ圧力の高い水により発生する背圧を、この背圧逃がし流路75を通じて排出ポート74→排出口72というように逃がすことによりピストン保持部材5への影響、例えば軸方向への圧力等といった影響が無いようにすることができる。
さらに、回転シリンダ部材2の背圧を逃がすために、回転シリンダ部材2の背面側、すなわちここでは回転シリンダ部材2とケーシング6との間、と排出口72とを連通し回転シリンダ部材2の背圧を逃がすための第2の背圧逃がし流路も設けられていることが好ましい。例えば本実施形態では、ケースカバー7上における排出ポート74の周囲の部分であってケーシング6に面合わせされる部分に4個の放射状の切欠き背圧流路76を設けて背圧逃がし流路としている(図18、図19参照)。これら切欠き背圧流路76は、回転シリンダ部材2の背圧を排出ポート74に逃がすことができるように少なくともフランジ部2aの幅を超える程度の長さとされている。また、ケーシング6の内周面であってフランジ部2aと対向する部分には、ケースカバー7と組み合わされた時にケースカバー7側の切欠き背圧流路76と連通する切欠き背圧流路62が設けられている(図20、図21参照)。本実施形態の場合、これら切欠き背圧流路62,76によって回転シリンダ部材2の背圧を逃がす第2の背圧逃がし流路が構成されている。このような本実施形態の回転式洗浄機10によれば、回転シリンダ部材2の背面側に回り込んだ圧力の高い水により発生する背圧を切欠き背圧流路62と切欠き背圧流路76を通じて排出ポート74に逃がすことにより回転シリンダ部材2に対し軸方向への力が生じるといった影響が無いようにすることができる。なお、回転シリンダ部材2の側壁25とケーシング6の内周面との間には僅かなクリアランスCが形成されている(図19参照)。このクリアランスCは、回転シリンダ部材2に作用する背圧を上述の切欠き背圧流路76へと逃がすための背面側からの流路として機能する。
図12に示すように、水はケースカバー7側から流入口71を通過し回転シリンダ部材2に流入する。また、回転式洗浄機10の回転動作で押し出される水は、ケースカバー7側の排出口72を通過し外部へと流出する。この際、ピストン保持部材5および回転シリンダ部材2は、これら両部材5,2が互いに離れる方向への圧力を受けながらケースカバー7あるいはケーシング6側に押されるようにして回転する。このように水の流入流出方向を軸方向に一致させる構造とした本実施形態の回転式洗浄機10によれば、例えば従来であれば回転シリンダ部材2の側面方向から水が流入し排出されていたために水圧が回転シリンダ部材2にラジアル方向に作用する側圧となってこの回転シリンダ部材2等のスムーズな回転を阻害していたのに対し、水の流入流出の際に軸方向に作用するスラスト荷重をローラ105やローラ102といったスラストベアリングで受けることができるためにより安定したスムーズな回転を実現できる。
続いて、回転式洗浄機10におけるロータリ式シリンダ装置1の動作を図24を用いて説明する。なお、図24(A)〜(G)は、ケーシング6内における回転シリンダ部材2やピストン3,4の動きを回転シリンダ部材2の回転角にして15度おきに示したものである。
まず、図24(A)に示す状態において、シリンダ室23a,23b内を往復動するピストン3は回転シリンダ部材2の空洞部22に位置し、シリンダ室23a,23bのそれぞれに先端部あるいは後端部の一部が入り込んだ状態となっている。一方、シリンダ室23c,23d内を往復動するピストン4は、回転シリンダ部材2のシリンダ室23d内の最奥部まで移動した状態となっている。また、この図24(A)の状態においてシリンダ室23aは流入ポート73と重なり合って流入口71と連通しており、シリンダ室23bは排出ポート74と重なり合って排出口72と連通している。一方、シリンダ室23c,23dは流入ポート73及び排出ポート74のいずれとも重なり合っていないため流入口71あるいは排出口72と連通していない。
この状態で、水が流入口71から流入ポート73を通ってシリンダ室23aへと流入すると、流入した水の圧力によってピストン3がシリンダ室23bに向けて押し進められ、シリンダ室23b内にある水を排出ポート74を通じて排出口72から排出する(図24(B)参照)。ここで、ピストン3の自転中心位置X1が回転中心位置Xに対してずれていることから、ピストン3が進む力はピストン3を保持するピストン保持部材5を回転させる力としても作用し、ピストン保持部材5を回転中心位置Xまわりに回転させる。これに伴い、ピストン3は自転中心位置X1を中心として自転しながら回転中心位置Xまわりに公転し、回転シリンダ部材2は回転軸心oまわりに回転する。
一方、ピストン4は、ピストン保持部材5が回転中心位置Xまわりに回転するのに伴い図24(B)に示すように空洞部22に向けて引き戻され、シリンダ室23d内の水をシリンダ室23aあるいはシリンダ室23cの側へと押し出す。また、図24(B)の状態となるとシリンダ室23dが流入ポート73と連通することから、流入口71から流入した水はこれまで流入していたシリンダ室23aに加え新たにシリンダ室23dにも流入することとなる。したがって、この時点において回転シリンダ部材2内における水圧はピストン4を大きく推進させる力としては作用していない。この状態ではシリンダ室23aとシリンダ室23dが流入ポート73にオーバーラップして流入口71と連通しているが、ピストン保持部材5及び回転シリンダ部材2が更に回転して図24(D)の状態になるとシリンダ室23aと流入ポート73との連通が途切れ、これ以降、水はシリンダ室23dにのみ流入してピストン4を空洞部22側へ押すようになる(図24(D)、図24(E)参照)。押されたピストン4は空洞部22やシリンダ室23c等の水を押し出しながら移動する。以上のように、回転シリンダ部材2が回転するのに伴い水圧が作用する対象がピストン3からピストン4へと徐々に移行し、ピストン保持部材5及び回転シリンダ部材2を回転させるための力を持続させる。
また、図24(A)〜図24(D)までの間、排出ポート74にオーバーラップしているのはシリンダ室23bのみであったが、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が更に回転することによってシリンダ室23cが排出ポート74にオーバーラップすると(図24(E)参照)、シリンダ室23b内の水に加えてシリンダ室23c内の水も排出口72から排出されるようになる。なお、シリンダ室23bから排出される水量は、ピストン3がシリンダ室23bの最奥部に接近するに従い徐々に減少する(図24(E)、図24(F)参照)。
図24(F)の状態から回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が更に回転すると、シリンダ室23bと排出ポート74との連通状態が途切れ、シリンダ室23c内の水のみが排出口72から排出されるようになる(図24(G)参照)。この図24(G)に示す状態は図24(A)に示した状態からピストン3,4が入れ替わっているだけで状態としては等価であり、これ以降、上述した図24(A)〜図24(G)の動作が繰り返される。そして、以降、流入ポート73とオーバーラップするシリンダ室はシリンダ室23d→シリンダ室23b→シリンダ室23c→シリンダ室23a→シリンダ室23dと入れ替わり、また、水圧力を主に受けるピストンはピストン3→ピストン4→ピストン3へと交互に入れ替わり、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が回転し続ける。
以上のように、本実施形態の回転式洗浄機10におけるシリンダ室23a〜23dは、ピストン3,4がシリンダ室23a〜23d内の外周側位置から空洞部22に向けて引き戻されて室内容積が増加する過程にある間は流入ポート73とオーバーラップするように設けられ、シリンダ室23a〜23d内に水が流入するようになっている。またシリンダ室23a〜23dは、ピストン3,4が外周側に向けて押し出され室内容積が減少する過程にある間は排出ポート74とオーバーラップするように設けられ、シリンダ室23a〜23d内の水が排出されるようになっている。また、上述したように流入口71と排出口72はシリンダ室23a〜23dと対向する位置に形成されており、しかも流入ポート73、排出ポート74が液圧縮を生じないよう広い範囲に形成され、且つ流入口71と排出口72は通路面積が大きく形成されているので水の流れ抵抗は小さい。これらの結果、回転シリンダ部材2の各シリンダ室23a〜23dにおける水圧が効率よく出力軸51の回転力に変換される。
また、この回転式洗浄機10においては、回転中心位置Xを中心としたピストン保持部材5の回転運動の角速度、別の表現をすればピストン3,4の公転運動の角速度は、回転シリンダ部材2の回転軸心oを中心とする回転角速度の2倍となっている。これは、ピストン3,4の回転半径が回転シリンダ部材2のピッチ円の半径の1/2となっており、ピストン3,4の運動が、回転シリンダ部材2の回転運動に対して円サイクロイド運動となっているためである。なお、ピストン3,4の自転、すなわちピストン軸52,53を各々回転中心とする回転も、回転シリンダ部材2と同じ角速度回転運動となる。
また、ピストン3は、回転シリンダ部材2が1回転する間にシリンダ室23a,23b間を1往復するようになっており、ピストン3の往復動作数と回転シリンダ部材2の回転数とが1:1の関係になっている。また、ピストン4も同様に、回転シリンダ部材2が1回転する間にシリンダ室23c,23d間を1往復するようになっており、ピストン4の往復動作数と回転シリンダ部材2の回転数とが1:1の関係になっている。すなわち、回転シリンダ部材2の回転数と、ピストン保持部材5の回転数と、ピストン3,4のシリンダ室23a〜23d及び空洞部22を往復する動作数との比が、1:2:1となっている。
また、上述したように、ピストン3,4の横断面形状とシリンダ室23a〜23dの横断面形状を一致させているので、シリンダ室23a〜23dに対してピストン3,4の上面,両側面,底面はピストン3,4の全長に亘って面接触することになり、シリンダ室23a〜23dとピストン3,4の間の水密性が確保されている。このため、シリンダ室23a〜23dとピストン3,4の隙間からの液体漏れをより確実に防止することができ、その分だけ効率の良い回転式洗浄機10を構成することができる。
ここで本実施形態の回転式洗浄機10における全体の動作について簡単に説明しておくと、まず導入路92から流入した水は柄91内を通り流入口71よりロータリ式シリンダ装置1の回転シリンダ部材2の中に入り、ピストン3,4を押し、ピストン保持部材5、回転シリンダ部材2を回転させる。ピストン保持部材5の回転に伴い、回転力は出力歯車81、アイドラ歯車82、ブラシ歯車83に伝わり回転ブラシ9を回転させる。水は排出ポート74及び流路70を通って流出し、ブラシ歯車83の噴出孔83b及びブラシ歯車83の外周側から回転ブラシ9に放出される。この場合、回転ブラシ9の回転スピードは流入する水量に応じて変化する。回転ブラシ9が水を噴出させながら回転することによって洗浄対象物を効率よく洗浄することができる。
本実施形態の回転式洗浄機10の具体的な用途例としては以下のようなものがある。すなわち、
1)風呂洗浄機:シャワー用のホースを長めにしてこの回転式洗浄機10を接続したもの。
2)食器洗浄機A:蛇口を2つに分岐し、片側を通常の水道とし、もう一方に短いホースと開閉できる蛇口を付け、ここに小型の回転式洗浄機10を接続したもの。
3)食器洗浄機B:上記食器洗浄機Aをシステムキッチンの一部に固定し、食器を押し付けることにより洗浄するもの。
4)洗車機:散水用ホースの先端にバルブ付開閉機を付け、その先端に回転式洗浄機10を接続したもの。
以上説明したように、本実施形態の回転式洗浄機10におけるロータリ式シリンダ装置1では、水道95側から圧力の高い水流が供給されている場合に、シリンダ室23a〜23dを有する回転シリンダ部材2と、ピストン3,4を有するピストン保持部材5とがそれぞれケーシング6とケースカバー7とに支持された状態で回転し続ける。しかも、出力軸51の回転は出力歯車81→アイドラ歯車82→ブラシ歯車83というように減速機構として機能する歯車輪列8を介して最終的に回転ブラシ9を回転させる力として伝達され、大きな回転トルクを発揮させる。したがって、この回転式洗浄機10によれば減速機を別途採用せずとも水流のみによって十分な回転力を得、水を供給しながら回転ブラシ9を回転させ続けることができる。
加えて、本実施形態の回転式洗浄機10においては、ブラシ軸85がケースカバー7に埋め込まれることによって固定されており、回転ブラシ9の回転台として機能するブラシ歯車83はこのブラシ軸85によって回転可能な状態で支持されているため、回転ブラシ9が洗浄対象物に押し付けられる等してブラシ軸85に軸方向の力が作用してもこの力をケースカバー7によって受け止めることができる。したがってこの回転式洗浄機10によれば、回転ブラシ9が本実施形態でいえば出力軸51に相当するような回転出力軸に直接取り付けられており軸方向の力がロータリ式シリンダ装置1の回転を鈍化させる力として直接作用してしまうような構造の洗浄機に比べ、回転力が確保されやすい。
また、流体の圧力によって発生する回転シリンダ部材2に対するラジアル方向荷重、回転シリンダ部材2に対するスラスト荷重、ピストン保持部材5に対するスラスト荷重等は、これら回転シリンダ部材2やピストン保持部材5とケーシング6あるいはケースカバー7との間に設けられたローラ102,105,108で受けることができる。このため、本実施形態の回転式洗浄機10によればお互いに接触し合う各部材の摩擦抵抗を少なくすることができる。
なお、上述した第2の実施形態では特に水の流量調節手段については説明しなかったがこのような流量調節手段を設けてもよい。具体的には、例えば柄91などの入水側に流量制御弁を付加すれば流量さらには回転ブラシ9の回転速度を手元で調整できて便利である。
また、本実施形態では柄91を通ってロータリ式シリンダ装置1に流入した水は全て回転ブラシ9及びこの回転ブラシ9とカバー90との間から流出するようにしたが、流路のいずれかの部分に流路切替手段を組み込み、回転ブラシ9側から流出する流路とそれ以外の部分から流出する流路とに切り替える、あるいは流量比を変えることができるようにしてもよい。
また、流路のいずれかの部分に水抜き栓を付加するようにすれば、回転式洗浄機10の使用後において流路内とくにロータリ式シリンダ装置1の内部に水が残らないように水切りしやすくなる。
また、本実施形態では単に水を流す場合のみ説明したが、例えば柄91など流路の途中に洗剤タンクやバルブを設け、流量調整ノズルで流量調整しながら洗剤を水に混合するようにすれば洗剤を含んだ水で洗浄することが可能となる。
また、本実施形態では洗浄部材としてブラシを用いた例を示してあるが、他に洗浄部材として、各種材質のスポンジ、布等、洗浄対象物に適した洗浄用部材を用いても良い。
また、第2の実施形態のロータリ式シリンダ装置1では、シリンダ室の数を4つ(つまり2対)、ピストンの数を2つとしたが、図25及び図26に示すようにシリンダ室の数を6つ(つまり3対)、ピストンの数を3つとしてもよい。図25に示すロータリ式シリンダ装置1においては、6つのシリンダ室23a,23b,23c,23d,23e,23fと6つの扇状の台部30を備えた回転シリンダ部材2がケーシング6内に回転自在に配置されており、シリンダ室23aと23b、シリンダ室23cと23d、シリンダ室23eと23fがそれぞれ空洞部22を挟んで対向するように配置されて対をなしている。また、回転シリンダ部材2の回転軸心から偏心した位置には、ピストン保持部材(図示省略)が回転自在に配置され、このピストン保持部材には3つのピストン3,4,3’が回転自在に保持されている。なお、上述の実施形態のロータリ式シリンダ装置1と同様、このロータリ式シリンダ装置1のケーシング6内に配置された回転シリンダ部材2およびピストン保持部材の両部材の回転数の比率は、ピストン保持部材の回転数2に対して回転シリンダ部材2の回転数1である。このように構成されたロータリ式シリンダ装置1は、ピストン保持部材の回転により各ピストン3,4,3’が図中A’方向に回転すると、この動作に伴い回転シリンダ部材2がB’方向に回転するようになっている。これにより、ピストン3がシリンダ室23a,23bを、ピストン4がシリンダ室23c,23dを、ピストン3’がシリンダ室23e,23fを、それぞれ空洞部22を通過しながら往復運動をするようになっている。なお、各ピストン3,4,3’の移動方向の寸法は、空洞部22を通過する際、この空洞部22を中心として対向するシリンダ室のいずれにも当該ピストンの一部を入り込ませることが可能な寸法、換言すればこの空洞部22よりも移動方向に長い寸法となっている。したがって、各ピストン3,4,3’は、空洞部22を通過する際には対向する対のシリンダ室の両壁に同時に接触することとなる。なお、各ピストン3,4,3’は、空洞部22を通過する際に互いに他のピストン3,4,3’にぶつかり合わないように設計されているのは勿論である。これにより、各ピストン3,4,3’は、常時いずれかのシリンダ室にガイドされながら移動し、各シリンダ室23a〜23f内を出入りし、流体の吸引、加圧または圧縮、搬送を行う。図25に示したような6つのシリンダ室23a〜23f及び3つのピストン3,4,3’を有するタイプのロータリ式シリンダ装置1は、吸排のバランスが取れトルク変動が少ないという利点がある。
さらに、図26に示したロータリ式シリンダ装置1においては、6つのシリンダ室23a,23b,23c,23d,23e,23fと6つの扇形の台部30を備えた回転シリンダ部材2がケーシング6内に回転自在に配置されており、回転シリンダ部材2の回転軸心から偏心した位置には、ピストン保持部材(図示省略)が回転自在に配置されている。このピストン保持部材には、3つのピストン3,4,3’が回転自在に保持されている。また、空洞部とピストン3,4,3’の通路とを兼ねる空洞部兼通路22’の両側には、ケーシング6に立設された断面三日月状のガイド柱26と、断面略半円状のガイド柱27とが配置されている。これらガイド柱26,27は、空洞部兼通路22’内を通過する各ピストン3,4,3’の案内をしている。この図26に示したロータリ式シリンダ装置1では、各ピストン3,4,3’は略立方体のブロックで構成されており、空洞部兼通路22’を通過する際には、いずれのシリンダ室23a〜23fからも離れた状態となる。そのため、各ピストン3,4,3’は、空洞部兼通路22’を通過する際にはガイド柱26,27によって所定の姿勢を保ちながら通過するようになっている。なお、このロータリ式シリンダ装置1のケーシング6内に配置された回転シリンダ部材2およびピストン保持部材の両部材の回転数の比率は、ピストン保持部材の回転数2に対し、回転シリンダ部材2の回転数及びピストン3,4のピストン軸52,53に対する回転数1である。このように構成されたロータリ式シリンダ装置1は、ピストン保持部材の回転により各ピストン3,4,3’が図中A”方向に回転すると、この動作に伴い回転シリンダ部材2がB”方向に回転するようになっている。これにより、ピストン3がシリンダ室23a,23bを、ピストン4がシリンダ室23c,23dを、ピストン3’がシリンダ室23e,23fを、それぞれ空洞部兼通路22’を通過しながら往復運動するようになっている。図26に示したような6つのシリンダ室23a〜23f及び3つのピストン3,4,3’を有するタイプのロータリ式シリンダ装置1は、吸排のバランスが取れトルク変動が少ないものとなる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した第2の実施形態ではケーシング6の孔63に圧入等で固定したシリンダ軸21によって回転シリンダ部材2を回転自在に支持したが(図16参照)、この代わりに、回転シリンダ部材2の中央部分に図27に符号2dで示すような一体的な回転軸を形成し、この回転軸2dをケーシング6で支持するようにしてもよい(図27参照)。このように回転シリンダ部材2の一部をケーシング6で支持する場合、それらの間に図27に示すようなラジアルベアリング119を介してもよい。
また、上述した第1の実施形態では、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にこの回転シリンダ部材2を軸方向に支持するローラ108とリテーナ109を設けたが(図1参照)、これらの代わりに、内輪、外輪及び転動体からなる、回転シリンダ部材2をラジアル方向に支持するラジアルベアリング120を用いてもよい(図28参照)。あるいは、転動体としてのボール以外に、ローラを用いてもよく、さらには、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にアンギュラベアリングのようにスラスト荷重とラジアル荷重を同時に支持する軸受121を設け、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方を受けるようにしてもよい(図29参照)。
また、本実施形態では側壁25を有する回転シリンダ部材2を用いているが、この場合における側壁25は回転シリンダ部材2の一部としてこの回転シリンダ部材2ごと一体的に成形されるものでもよいし、あるいは側壁25のない回転シリンダ部材2の成形後にこの回転シリンダ部材2に後付けされて一体化されるものでもよい。後者の一例を挙げれば、シリンダ室23a〜23dおよび空洞部22からなる回転シリンダ部材2の溝を従来と同様に外周面側に開放させ、この回転シリンダ部材2をラジアルベアリング122の内輸に嵌め込んで側壁25を形成するようにしてもよい(図30参照)。要すれば、少なくともロータリ式シリンダ装置1の構成部品として用いられる時点において側壁25が回転シリンダ部材2と一体化されていればよい。
また、上述した実施形態においては、例えば図9等に示したローラ102,108、リテーナ103,109、プレート110等、ロータリ式シリンダ装置1内の各所に配置したローラやプレートについても言及したが、これらローラ等は相対速度の異なる部材間に介在するものであるため摩擦抵抗を少なくするような処理が施されていることが回転等する部材に対する摩擦力を軽減できるという点で好ましい。このような処理としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)による表面処理が好ましい。このような処理が施されたローラ等を例えば上述したコンプレッサとしてのロータリ式シリンダ装置1に適用した場合、円滑な動作を確保しつつ特に金属部材どうしの焼き付きを防止しうる点で効果的である。
また上述した実施形態では、各シリンダ室23a〜23dに対して流入口71及び排出口72が回転シリンダ部材2の軸方向に位置しており、これにより、流体の流入時あるいは排出時において回転シリンダ部材2に対し大きなラジアル方向の力が作用しなくなるようにしたロータリ式シリンダ装置1を説明した。この場合、流入口71及び排出口72は、各シリンダ室23a〜23dに軸方向真上あるいは真下から流体を流入させ軸方向真上あるいは真下から流体を排出するよう、シリンダ室23a〜23dに対して垂直に配置されていることが好ましいが必ずしもこれに限られるわけではない。例えば、流入口71、流出口72あるいはこれらに連通する流入ポート73、排出ポート74がシリンダ室23a〜23dに対して斜めに連通しているような場合であっても、流体の流入排出の際に回転シリンダ部材2に作用するラジアル方向の力を低減させうるものであれば、上述した実施形態の場合と同様、動作中における回転シリンダ部材2の傾きを従来よりも抑えることが可能となる。
図1〜図11に本発明の実施形態を示す。本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1は、例えば十字状とされた溝からなるシリンダ室を備えた回転シリンダ部材2と、この十字状シリンダ室の中でタイミングをずらしながら互いに直交する方向へ往復する一対のピストン3,4と、これらピストン3,4を回転可能に支持しつつ自身も回転するピストン保持部材5等を備え、回転シリンダ部材2の回転運動、ピストン3,4の相対的な往復運動、装置全体におけるピストン3,4の回転運動、そしてピストン保持部材5の回転運動の各運動を関連づけることによって所定の動作を行うようにしたものであり、例えば、外部から回転力を与えることによって流体を圧縮して送り出すようにした圧送装置、あるいは外部から流体を流入させた際の流れを利用して流体を排出すると同時に回転力を得るようにした流体モータなどとしての適用が可能である。これら回転シリンダ部材2、ピストン3,4、ピストン保持部材5等の部品はロータリ式シリンダ装置1の筐体を構成する第1の支持部材6および第2の支持部材7内の所定の箇所に組み込まれており、この場合、溝からなるシリンダ室は回転シリンダ部材2とピストン保持部材5と第2の支持部材7とで囲繞され、ピストン3,4の移動に伴い内部圧力が変動する密閉された気密なあるいは水密な空間が構成されるようになっている(図1等参照)。
本実施形態にかかるロータリ式シリンダ装置1は、回転シリンダ部材2と、該回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した回転中心位置Xを中心として回転するピストン保持部材5と、回転シリンダ部材2を回転自在に支持する第1の支持部材6と、ピストン保持部材5を回転自在に支持する第2の支持部材7と、ピストン保持部材5の回転中心位置Xから偏心した自転中心位置X1,X2に回転可能に保持されたピストン3,4と、シリンダ室23a〜23dに連通する流体の流入口71および排出口72とを備えたシリンダ装置である。このロータリ式シリンダ装置1の駆動モータ113を駆動することにより出力軸51を通じてピストン保持部材5が回転し、この回転がピストン3,4を介して回転シリンダ部材2にまで伝達される結果、当該回転シリンダ部材2も回転することになる。その際、ピストン3,4は回転シリンダ部材2に設けられた凹部、つまり空洞部22およびシリンダ室23a〜23dによって形成される十字状の空間内を相対的に往復直線運動しその動きに応じて流体の吸入と吐出を行う。
以下においては、本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1を流体(気体または液体)を圧縮して送り出す圧送装置に適用した実施形態を示す。以下ではまずロータリ式シリンダ装置1の構成を説明し、次いでロータリ式シリンダ装置1をコンプレッサとして用いた場合、さらには液体用のポンプ流体モータとして用いた場合について説明する。
回転シリンダ部材2は、第1の支持部材6と第2の支持部材7との間に形成される空間内に収容され、これら支持部材6,7さらにはピストン保持部材5等で囲繞されることによってピストン3,4が往復動可能な仕切られたシリンダ室23a〜23dおよび空洞部22を形成するもので、その表面には例えば十字状とされた溝が形成されている。また、回転シリンダ部材2はピストン3,4の往復動やピストン保持部材5の回転運動に伴って自身も回転運動するように設けられている。第1の支持部材6(以下、本発明の実施形態の説明中において「ケーシング6」という)に回転自在に収容される本実施形態の回転シリンダ部材2は、側壁25を備えた厚い円板状の底部2cであってピストン保持部材5側の面に十字状の溝によって形成されるピストン移動空間を備えた形状、別の表現をすれば、底部2cを形成する1枚の円板に側壁25が取り付けられかつ円板に十字状の溝が設けられてピストン3,4がストロークするための空間が形成された形状とされている(図3参照)。この十字状の溝により、直交する溝の交差部分(本明細書ではこの交差部分を「空洞部」といい、図10(b)及び図11(b)において符号22で示す)及びこの空洞部22を挟んで対向する4つのシリンダ室23a〜23dが形成されている。これらシリンダ室23a〜23dはピストン保持部材5側が開放され、他の3方の面が全て平面(または曲面)で閉ざされた構造となっており、ピストン保持部材5によって保持されたピストン3,4が開放された側から嵌め込まれるようになっている。このような形状の空洞部22およびシリンダ室23a〜23dに対し、ピストン3,4はその移動方向の長さが空洞部22の幅よりも長くなるように縦長の略直方体形状とされている(図10等参照)。これらピストン3,4は、ピストン保持部材5が回転するとシリンダ室23a〜23d内を往復直線運動する。シリンダ室23a〜23dの底には、これらピストン3,4の底面に設けられた突起3b,4b(例えば図22参照)が嵌る直線状のガイド溝24a,24bが設けられている。また、回転シリンダ部材2はケーシング6に固定されたシリンダ軸21に回転自在に支持されている(図1参照)。
回転シリンダ部材2の周縁には外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図1等参照)。また、側壁25の外周であってこのフランジ部2aよりも底部2c寄りの部分とケーシング6との間にはラジアルベアリングが設けられている。ラジアルベアリングは、通常、アウターレースとインナーレース、ローラ並びにこのローラ間隔を保持するリテーナからなる。本実施形態の場合は、ローラ108とこのローラ108を円周方向に位置決めするリテーナ109とを設けており、ケーシング6をアウターレースとして、回転シリンダ部材2のフランジ部2aの周面部分をインナーレースとしてそれぞれ機能させるようにしている(図1、図9参照)。リテーナ109は、例えばローラ108を軸方向に出し入れできるように保持部109bが軸方向に開口した形状(図4参照)、あるいはローラ108を径方向に出し入れできるように保持部109bの内周側または外周側が広く開口した形状(図5参照)等とされ、ローラ108を全周にわたって等間隔で保持できるように形成されている。なお、図4等では特に図示していないが、このリテーナ109には、回転シリンダ部材2とケーシング6との間に圧力の高い流体が入り込んだ結果この回転シリンダ部材2に対し外側から作用する背圧を逃がすことができるように切欠き部が設けられていることが好ましい。
回転シリンダ部材2の底部2cの裏面には冷却用空気を循環させるため例えばシロッコファンなどのファン2bが一体的に形成され(図3参照)、さらにケーシング6にはこのファン2bの配置に合わせ、このファン2bに向けて外気を導入する空気導入口28と、ファン2bを通過した空気をケーシング6の外へ排出する空気排出口29とが設けられている(図1、図2参照)。また、このファン2bとケーシング6との間にはプレート110、ローラ102およびリテーナ103が設けられている。プレート110はファン2bの軸方向端面と接触する板状の部材で、空気導入用の複数の孔110aを有している(図2、図9参照)。また、このプレート110とケーシング6との間に設けられているローラ102は例えば図9に示すように放射状に配置され、リテーナ103(図6参照)によって等間隔に保持されている。これらローラ102及びリテーナ103は、ピストン保持部材5を軸方向に支持するスラストベアリングを構成している。
第2の支持部材7(以下、本発明の実施形態の説明中において「ケースカバー7」という)はケーシング6と組み合わされることによって筐体、より具体的にはポンプケーシングを形成し、尚かつピストン保持部材5を回転自在に支持する部材で、例えば本実施形態の場合には図8に示すような直方体形状をしており、ケーシング6とケース11の間に配置されている。このケースカバー7のほぼ中央部分には、ピストン保持部材5が収容される孔部7aが形成されている(図8参照)。
ピストン保持部材5はピストン3,4を回転可能に支持しながら自らも回転中心位置Xを中心に回転する部材で、ケースカバー7の孔部7a内に回転自在な状態で収容されている。ピストン保持部材5の回転中心位置Xには駆動モータ113の出力軸51が例えば圧入されることによって一体となるように固着されている(図1参照)。本実施形態のピストン保持部材5は、ラジアル方向に作用する荷重についてはこの出力軸51によって支持されているとともに、出力軸51の軸方向に作用する荷重についてはケース11に組み込まれたプレート116とローラ117とによって支持されている(図1参照)。ローラ117は例えば図7に示す形状のリテーナ118によって等間隔に保持され、ピストン保持部材5を軸方向に支持するスラストベアリングを構成している。また、ピストン保持部材5のうち出力軸51が取り付けられている側の面には冷却用の空気を循環させるための例えばシロッコファンなどのファン5bが一体的に形成され(図1参照)、これに合わせてケース11にはこのファン5bに向けて外気を導入する空気導入口111と、ファン5bを通過した空気をケース11の外へ排出する空気排出口112とが設けられている(図3参照)。さらにピストン保持部材5のうち出力軸51やファン5bとは反対側の面には、このピストン保持部材5から突出するように2本の平行なピストン軸52,53が固定されている。ピストン軸52はピストン3を、ピストン軸53はピストン4をそれぞれ回転自在に支持している。
ピストン3,4は、回転シリンダ部材2に設けられた空洞部22およびシリンダ室23a〜23d(図3参照)に摺動自在にはめ込まれている。回転シリンダ部材2とピストン保持部材5とが相対的な回転運動をした場合、これらピストン3,4が、自転中心位置X1,X2を中心として自転しながらかつ回転中心位置Xを中心として公転することによって一対のシリンダ室23a,23b(あるいは23c,23d)の双方に出入りする。
ケース11には、ロータリ式シリンダ装置1を駆動するための駆動モータ113が取り付けられている(図1参照)。本実施形態の場合、この駆動モータ113の出力軸51をピストン保持部材5の中心孔5aに圧入などして取り付け、この出力軸51がピストン保持部材5の回転中心軸として機能するようにしている(図1参照)。また本実施形態の場合、この出力軸51および中心孔5aのそれぞれに軸方向に長いキー溝を設けるとともに両キー溝の間にキー115を介在させ(図1参照)、駆動モータ113の出力軸51に対してピストン保持部材5が軸方向には一定ストローク移動可能だが回転方向には相対回転できない状態となるようにしている。
また、ケースカバー7には外部からその内部へと流体を取り込むための吸入管79と、吸入管79からシリンダ室23a〜23dへ流体を導く流入口71および流入ポート73とが設けられ、更には流体をケースカバー7の内部から外部へと送り出すための吐出管80と、シリンダ室23a〜23dからこの吐出管80に流体を導く排出ポート74および排出口72とが設けられている(図8参照)。流入ポート73および排出ポート74は、シリンダ室23a〜23dに流体が回転シリンダ部材2の軸方向に流れ込みあるいはシリンダ室23a〜23dから流体が軸方向に流れ出すようにするため、これら流入ポート73あるいは排出ポート74と重なった状態のシリンダ室23a〜23dに対し軸方向に連通するように配置されている。
続いて、上述した構成のロータリ式シリンダ装置1を気体を圧縮するコンプレッサとして用いる場合について説明する(図1、図10等参照)。
ロータリ式シリンダ装置1がコンプレッサとして用いられる場合、ケースカバー7の流入ポート73は、気体を吸入する過程にあるシリンダ室23a(図10参照)と連通するように、より具体的には、ピストン3がシリンダ室23aの外周側端部に到達した位置から当該シリンダ室23a内を空洞部22側へと引き返して気体を吸入している吸入過程におけるシリンダ室23aと連通するように配置されている(図10参照)。一方、排出ポート74はこれとは逆に気体を排出する過程にあるシリンダ室23a〜23dと連通するように、より具体的には、例えば吸入過程にあったシリンダ室23aと流入ポート73との連通が途切れた後で(図10(c)参照)今度は気体の圧縮ならびに排出を開始するピストン3の先端が空洞部22からシリンダ室23bへと差し掛かった位置から(図10(c)参照)、ピストン3がこのシリンダ室23bの外周側端部に到達して流体の圧縮ならびに排出が終了するまでの間の当該シリンダ室23bと連通するように配置されている(図10(c)〜図10(f)参照)。
また、例えば図10(a)〜図10(b)に示すように吸入過程にあるシリンダ室23aは、図10(c)に示すように流入ポート73との連通が途切れることによって吸入過程を終了してから、図10(h)に示すようにピストン3が再度このシリンダ室23aに入り込んだ後に排出ポート74と連通するまでの間(図10(c)〜図10(h)参照)、各シリンダ室23b〜23dと順次連通するが流入ポート73および排出ポート74のいずれとも連通しないいわば中間室を形成する。この場合、中間室は、2つのピストン3,4のいずれか及び当該シリンダ室23a場合によっては更にその他のシリンダ室23b〜23dの周壁で囲まれた状態にあり、これに対してそれぞれのピストン3,4のシリンダ室23a〜23dに対する相対的移動速度は異なることから、中間室内の容積の増減ならびにこれに伴う内圧変化が起こるが、流入流出する流体が気体である場合には液体である場合に比較して圧縮性があるためにピストン3,4や回転シリンダ部材2などの動作を妨げるような抵抗とはならない。
また、回転シリンダ部材2は、流体の吸入あるいは排出に伴い回転軸心oと直角方向つまりラジアル方向の力を受けるが、この回転シリンダ部材2の外周面とケーシング6の内周面との間に配置され転がり接触するローラ108によって支持されることにより傾きが抑えられる。この場合、回転シリンダ部材2は、流体の流入流出に伴いラジアル方向への力が生じることになるシリンダ室23a〜23dの外側の周面で支持されているため、この回転シリンダ部材2に対し大きなラジアル方向の力が作用した場合にも傾くのが十分に防止される。したがって、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においては回転シリンダ部材2とケーシング6の内周面との接触抵抗を十分に抑えることができる。しかも、回転シリンダ部材2は、その外周面をケーシング6の内周面に対し転がり接触するローラ108を介在させた状態で回転するため、回転時にケーシング6等から受ける摩擦抵抗による損失が少ない。さらに、回転シリンダ部材2は、シリンダ室23a〜23dの内部で流体を加圧して圧縮することに伴い生じる内圧によって軸方向の力も受けるが、この回転シリンダ部材2の底部2cとケーシング6の内部底面との間に配置されて転がり接触するローラ102によって支持される。このため、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においてはこのようなスラスト荷重に起因する摩擦抵抗による回転時の損失が少ない。
また、ピストン保持部材5は、出力軸51や、ベアリングを構成する転がり接触するローラ117によって傾かないように支持されている。さらに、ピストン保持部材5は、このように転がり接触するローラ117によって軸方向から支持されていることから、シリンダ室23a〜23dの内部圧力に起因する軸方向の力を受けた場合にも当該ピストン保持部材5が受ける摩擦抵抗による損失が少ない。
また、回転シリンダ部材2にファン2b、ピストン保持部材5にファン5bをそれぞれ設け、さらにケーシング6とケースカバー7に空気導入口28、空気排出口29、空気導入口111および空気排出口112を設けた本実施形態のロータリ式シリンダ装置1においては、空気導入口28,111から外部の空気を内部へと取り込むとともに空気排出口29,112から排気することによって空気を循環させる。これにより、このロータリ式シリンダ装置1においては装置内部で発生した余計な熱を流体とともに外部に速やかに排熱して冷却することが可能となっている。
さらに、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1の場合、回転シリンダ部材2のケースカバー7と対向する側の周縁には径方向外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図1、図3等参照)。このフランジ部2aは、少なくともケースカバー7との間におけるシール性、つまり気密性あるいは液密性を確保できる程度のクリアランスをもってこのケースカバー7に対向する部分の径方向の幅つまり厚みがフランジ部2a以外の部分よりも厚くなっている。したがって、回転シリンダ部材2とケースカバー7とが対向する領域がその厚みの分だけ広がっていることから、これら回転シリンダ部材2とケースカバー7の気密性が向上し、その隙間からの流体漏れが少なくなっている。なお、回転シリンダ部材2とケースカバー7とは、摺動負荷とならない程度に摺接していてもよい。要は、ロータリ式シリンダ装置1として必要な最低限の気密性あるいは液密性が確保されてさえいれば、回転シリンダ部材2とケースカバー7とはある程度のクリアランスを有した状態で対向していてもよいし摺接する程度にクリアランスがない状態となっていてもよい。
次に、上述したロータリ式シリンダ装置1を液体を搬送または圧送するポンプとして用いる場合について説明する(図11参照)。
ロータリ式シリンダ装置1を液体ポンプとして用いる場合、ケースカバー7の流入ポート73、排出ポート74を上述したコンプレッサの場合と同様に配置すると、回転シリンダ部材2の回転に伴い上述した中間室、つまり2つのピストン3,4のいずれか及び連通した各シリンダ室23a〜23dの周壁で囲まれていいて尚かつ流入ポート73や排出ポート74とは連通していない閉鎖されたスペース内の容積が増減することから、その中に非圧縮性つまり気体よりも圧縮率の少ない液体が入っているとその液体を圧縮するタイミングが生じ、駆動モータ113の回転力では回転させることができず回転が止まってしまう。そこで本実施形態では、ケースカバー7の流入ポート73を、例えばピストン3がシリンダ室23aの外周側端部にほぼ到達した位置(図11(a)に示す状態よりも僅かに前の状態)から、回転シリンダ部材2がここから更にほぼ135度回転した位置(図11(e)参照)までの間、吸入過程にある当該シリンダ室23aと連通するように設けている。また、排出ポート74は、流入ポート73とシリンダ室23aの連通が途切れるとほぼ同時に排出側にあるシリンダ室、例えば図11(e)でいえばシリンダ室23cと連通するように設けられている。さらに排出ポート74は、ピストン、例えば図11(e)〜図11(h)でいえばピストン4がシリンダ室、この場合ならシリンダ室23cのほぼ外周側端部に到達するまで当該シリンダ室23cとの連通が継続するように設けられている。なお、ここでは4つのシリンダ室23a〜23dのうちシリンダ室23aやシリンダ室23cを例示して説明したがこれは代表例を説明したに過ぎず、他のシリンダ室23b,23dとの関係に関しても流入ポート73や排出ポート74の配置は変わるところがない。
このように流入ポート73および排出ポート74を配置したロータリ式シリンダ装置1の場合、図11(a)〜図11(b)に示すように流入ポート73と連通しているシリンダ室23a内をピストン3が移動することにより流入ポート73からこのシリンダ室23aへと液体が取り込まれる。また、ピストン3がシリンダ室23aから完全に抜け出ることによってシリンダ室23aが両隣のシリンダ室23b,23cと連通した後も(図11(d)参照)、2つのピストン3,4の各シリンダ室23a〜23dに対する相対速度の違いで連通したシリンダ室、(この場合、23aと23cと23b)の容積は増加するため液体は引き続きシリンダ室23aへと流入する(図11(c)〜図11(e)参照)。
また、図11(e)に示す位置で流入ポート73とシリンダ室23aの連通は途切れ、これとほぼ同時にシリンダ室23cと排出ポート74が連通し始める。この位置を過ぎてさらに回転シリンダ部材2が回転すると2つのピストン3,4のシリンダ室23a〜23dに対する相対速度が逆転して今度はピストン4の相対速度の方が速くなることから、図11(e)に示す状態から図11(f)に示す状態に至るまで互いに連通しているシリンダ室23a,23b,23cの容積は、シリンダ室23cに向かって移動するピストン4の動きに従い減少し始める。このとき、排出側にあるシリンダ室23cと排出ポート74が連通することから、シリンダ室23a,23b,23c内の液体は排出ポート74を通じて外部へと排出される(図11(e)参照)。ここからさらに図11(f)の状態になると、ピストン4がシリンダ室23cに差し掛かり、引き続きシリンダ室23c内の液体が外部へと排出され続ける。以上のような動作により、本実施形態のロータリ式シリンダ装置1によれば非圧縮性の液体を対象とした場合でもロックすることなくポンプ作用を継続して行うことができる。また、このような構成とした結果、流体が途切れることがなくなるので、回転シリンダ部材2がスムーズに回転し、振動が抑えられて効率が向上するという副次的な効果も得られる。
なお、上述した実施形態では流体を加圧または圧縮して送り出すポンプあるいはコンプレッサの動作例を説明したが、このロータリ式シリンダ装置1は、外部から流体に圧力を加えて送り込みその圧力を変換して回転力として取出す流体モータとして用いることも可能である。以下では本発明にかかるロータリ式シリンダ装置1の第2の実施形態として回転式洗浄機に適用した場合を説明する。
図12〜図24に、ロータリ式シリンダ装置1を回転式洗浄機10に適用した実施形態を示す。回転式洗浄機10は水圧を利用して回転ブラシ9を回転動作させることによりこの回転ブラシ9を利用した効率的な洗浄を行うもので、本実施形態の場合は、ロータリ式シリンダ装置1、歯車輪列8、回転ブラシ9、カバー90、柄91等によって構成されている(図12、図13参照)。なお、本実施形態にかかる回転式洗浄機10の分解組立図である図22と図23においては、各部品形状をより解り易く示すため、主要な部品については側面のみならず底面から見た図を併せて示している。
ロータリ式シリンダ装置1は、回転軸心oを中心として形成された空洞部22(図24(C)参照)に連通し該空洞部22を挟んで対向する2対のシリンダ室23a〜23dを有する円形の回転シリンダ部材2と、回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した回転中心位置X(図24(A)参照)を中心として回転するピストン保持部材5と、該ピストン保持部材5上の自転中心位置X1,X2にこのピストン保持部材5に対して相対回転可能に設けられシリンダ室23a〜23d内を往復運動するピストン3,4と、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5を回転可能に支持する支持部材として機能するケーシング6およびケースカバー7と、これらケーシング6およびケースカバー7に設けられシリンダ室23a〜23dに連なり水が流入及び排出される流入口71及び排出口72と、ピストン保持部材5の背面側と排出口72とを連通しピストン保持部材5の背圧を逃がす第1の背圧逃がし流路75と、回転シリンダ部材2の背面側と排出口72とを連通し回転シリンダ部材2の背圧を逃がす第2の背圧逃がし流路62,76とを備えている。回転ブラシ9はロータリ式シリンダ装置1の出力側に取り付けられており回転伝達されることによって回転する。さらにケースカバー7には排出口72から流出した水を回転ブラシ9に流出させるための流路70が形成されている。
ピストン保持部材5を回転可能に支持する支持部材は、上述したようにケーシング6及びケースカバー7によって構成されている。例えば本実施形態の場合、ケースカバー7に設けられた収容凹部78内にピストン保持部材5が回転可能な状態で収容されている。
カバー90はロータリ式シリンダ装置1のケースカバー7にねじ93で固定されている。このカバー90は、ロータリ式シリンダ装置1から噴出した水が噴出孔83bを通って回転ブラシ9から流れ出るようにブラシ歯車83を覆うような笠形状とされている(図12等参照)。
柄91は中空とされ、基端側に導入路92を備えるとともに先端側をロータリ式シリンダ装置1の流入管79に溶着等によって固着されている。導入路92が設けられている基端部は、例えばホースなどの水道95の先端部が接続可能な構造となっている。
回転シリンダ部材2は所定の厚みを有する円板形状に形成されており、ケーシング6内に回転自在に配置されている。ケーシング6の中央の孔63には回転シリンダ部材2の回転軸となるシリンダ軸21が例えば圧入される等して固定されており、回転シリンダ部材2はこのシリンダ軸21に回転自在に支持された状態でケーシング6の収容凹部61内に収容されている。
回転シリンダ部材2は、ケーシング6とケースカバー7との間に形成される空間内に収容され、これら支持部材6,7さらにはピストン保持部材5等で囲繞されることによってピストン3,4が往復動可能な仕切られたシリンダ室23a〜23dおよび空洞部22を形成するもので、その表面には十字状の溝が形成されている。また、回転シリンダ部材2はピストン3,4の往復動やピストン保持部材5の回転運動に伴って自身も回転運動するように設けられている。さらに本実施形態の回転シリンダ部材2は、側壁25を備えた円板状の底部2cであってピストン保持部材5側の面に十字状の溝によって形成されるピストン移動空間を備えた形状、別の表現をすれば、1枚の円板状の底部2cに側壁25が取り付けられかつ当該底部2cに十字状の溝が設けられてピストン3,4がストロークするための空間が形成された形状とされている。この十字状の空間により、溝の交差部分(本実施形態においてもこの交差部分を「空洞部」といい図22及び図24(C)において符号22で示す)及びこの空洞部22を中心として対向するように4つのシリンダ室23a〜23dが形成されている。これらシリンダ室23a〜23dはピストン保持部材5側の面が開放され、他の3方の面が全て平面、曲面で閉じられた構造となっている。また、これら各シリンダ室23a〜23dには、ピストン保持部材5によって保持されたピストン3,4が摺動可能な状態で嵌め込まれる。ピストン3,4はその移動方向長さが空洞部22の幅よりも長くなるように縦長の略直方体形状とされている(図24(A)等参照)。これらピストン3,4は、ピストン保持部材5が回転するとシリンダ室23a〜23d内を往復直線運動する。シリンダ室23a〜23dの底には、これらピストン3,4の突起が嵌る直線状のガイド溝24a,24bが設けられている。
また、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にはこの回転シリンダ部材2を軸方向に支持する支持プレート101が設けられている(図16、図22参照)。支持プレート101は回転シリンダ部材2に作用する軸方向の荷重を受けるベアリングを構成しており、ローラ102とこのローラ102を円周方向に等間隔に配置するリテーナ103とで回転シリンダ部材2に加わる軸方向の荷重を支持するスラストベアリングが構成されている。なお、ローラ102の代わりにニードルを用いることができる。
回転シリンダ部材2の周縁には外側に広がるフランジ部2aが設けられている(図16、図19参照)。また、側壁25の外周であってこのフランジ部2aよりも底部2c寄りの部分とケーシング6との間にはラジアルベアリングが設けられている。ラジアルベアリングは、通常、アウターレースとインナーレース、ローラ並びにこのローラ間隔を保持するリテーナからなる。本実施形態の場合は、ローラ108とこのローラ108を円周方向に位置決めするリテーナ109とを設けており、ケーシング6をアウターレースとして、回転シリンダ部材2のフランジ部2aの周面部分をインナーレースとしてそれぞれ機能させるようにしている。リテーナ109には、回転シリンダ部材2とケーシング6との間に圧力の高い流体が入り込んだ結果この回転シリンダ部材2に対し外側から作用する背圧を逃がすことができるように切欠き部109aが設けられている(図22参照)。
ピストン保持部材5は回転シリンダ部材2より小径の円形形状に形成されてケースカバー7の収容凹部78内に収容されており、回転中心位置Xを中心として回転可能である(図13、図16等参照)。この場合、ピストン保持部材5の回転中心位置Xは、上述の回転シリンダ部材2の回転軸心oから偏心した位置とされている(図24参照)。また、このピストン保持部材5とケースカバー7との間には支持プレート104が設けられている(図16、図19参照)。支持プレート104はピストン保持部材5に作用する軸方向の荷重を受けるベアリングを構成しており、例えば本実施形態の場合には、ローラ105及びこのローラ105を円周方向に等間隔に配置するリテーナ106とで構成されている。
このピストン保持部材5の回転中心位置Xには、ロータリ式シリンダ装置1の出力部に相当する出力軸51が圧入により一体的に固定されて下方側つまり回転ブラシ9のある側に突出している(図15、図16参照)。本実施形態におけるこの出力軸51は、その先端で支持する出力歯車81(図13、図14参照)を回り止めした状態で支持できるようにその先端部分が例えば小判形状とされ(図17参照)、さらに出力歯車81をねじ止めして先端部分に固定するための雌ねじ51aを備えている(図15、図16参照)。また、出力軸51はケースカバー7に設けられた出力軸貫通孔77を貫通している。この場合、出力軸貫通孔77がラジアル軸受としても機能するので、ピストン保持部材5は出力軸51を介してラジアル方向に支持されている。この出力軸51の下端には出力歯車81が取り付けられている(図13、図14参照)。また、ピストン保持部材5の出力軸51が固定された面と反対側には、ピストン3を自転可能に保持するピストン軸52とピストン4を自転可能に保持するピストン軸53とが固定されている(図16参照)。これらピストン軸52,53には、ピストン3,4が回転自在に嵌め込まれている。
ピストン3,4はシリンダ室23a〜23d内、より具体的には、本実施形態の場合ピストン3はシリンダ室23aと23b内、ピストン4はシリンダ室23cと23d内を互いに直交する方向に往復運動するように設けられている。本実施形態のピストン3,4は往復動するときの前後の面が若干丸みを有するように形成され、その他の4面が平面となるように形成されている(図17、図24(A)等参照)。ピストン3,4の中心部分には、ピストン軸52,53に回転自在に嵌められるための孔3a,4aが設けられている。また、ピストン3,4の底面にはガイド溝24a,24bに嵌合する凸部3b,4bが設けられている。
また、ケースカバー7にはアイドラ軸84とブラシ軸85とが出力軸51と平行となるようにそれぞれ固定されている(図15、図16参照)。アイドラ軸84はその先端部でねじ89を用いてアイドラ歯車82を回転可能な状態で支持している(図13参照)。このアイドラ歯車82は出力歯車81と噛み合っており、出力歯車81の回転をブラシ歯車83に伝達する。ブラシ歯車83は上述のブラシ軸85に回転可能な状態で嵌め込まれ、ブラシ軸85の先端のワッシャ87及びねじ86によって抜け止めされている。このブラシ歯車83の歯は符号83aで示すように歯数が出力歯車81の歯数より多い内歯であり、アイドラ歯車82と噛み合っている(図13、図14参照)。また、ブラシ歯車83とケースカバー7との間には、ブラシ歯車83がスラスト荷重を受けた場合にも滑りやすくして円滑な回転を確保するワッシャ107が嵌め込まれている。本実施形態の回転式洗浄機10では、上述した出力歯車81、アイドラ歯車82、ブラシ歯車83によって減速機構として機能する歯車輪列8が構成されている。また、上述した出力歯車81、アイドラ歯車82、ワッシャ107等の各構造部品は耐水性の材料で形成されている。
ブラシ歯車83には、回転ブラシ9が取り付けられるとともに、この回転ブラシ9に水を噴き出すための噴出孔83bが設けられている。この噴出孔83bの形状・大きさ・配置などは特に限定されるものではないが、例えば本実施形態では等しい大きさの8個の丸孔を周状に等間隔で配置するようにしている(図14参照)。また、ブラシ歯車83に取り付けられる回転ブラシ9は着脱容易であることが望ましい。こうした場合、ブラシ歯車83を取り外さなくても回転ブラシ9のみを容易に交換することが可能となり、例えば洗浄する対象物の大きさや形状等、さらには洗浄対象物のある場所等に応じて形状、材質、大きさ等が適したブラシに取り換えたり、あるいは古くなって傷んだブラシを交換したりすることが簡単に行えるようになる。
ケースカバー7には、水を外部からロータリ式シリンダ装置1の内部へと流入させるための流入口71及びロータリ式シリンダ装置1から外部へと排出するための排出口72が設けられている。ケースカバー7はシール材(図示省略)を間に挟むようにしてケーシング6に取り付けられ、ねじ94で固定されている。また、流入口71、排出口72のうちシリンダ室23a〜23dと対向する側には回転シリンダ部材2の回転に応じて水が流入、排出するようそれぞれ流入ポート73、排出ポート74が設けられている(図12参照)。
流入ポート73は流入口71から流れ込んだ水をシリンダ室23a〜23dに導くための導入用ポートであり、例えば本実施形態の場合は、収容凹部78の外側にこの凹部の外周に沿うように設けられ、図24において時計回りに進むにつれて徐々に溝幅が広くなり更に時計回りに進むと途中で途切れる形状の溝によって構成されている。流入口71は、流入ポート73の最も幅広の部分の近傍でこの流入ポート73と連通している。この流入ポート73は、上面側あるいは底面側から見た場合にこの流入ポート73とオーバーラップしている、つまり重なり合っているシリンダ室23a〜23dと連通し水がシリンダ室23a〜23d内へ流れ込むのを可能とする(図24参照)。
一方、排出ポート74はシリンダ室23a〜23dの水を排出口72に導くための導出用ポートであり、例えば本実施形態の場合は上述した流入ポート73と線対称な形状の溝、すなわち収容凹部78の外側にこの凹部の外周に沿うように設けられ、図24において時計回りに進むにつれて徐々に溝幅が狭くなる形状の溝によって構成されている。排出口72は、排出ポート74の最も幅広の部分の近傍でこの排出ポート74と連通している。この排出ポート74は、上面側あるいは底面側から見た場合にこの排出ポート74とオーバーラップしているシリンダ室23a〜23dと連通し水がシリンダ室23a〜23dから流れ出すのを可能とする(図24参照)。
また、ピストン保持部材5の背圧を逃がすため、ピストン保持部材5の背面側、すなわちここではピストン保持部材5およびケースカバー7の間、と排出口72とを連通する第1の背圧逃がし流路75がケースカバー7の収容凹部78の内周面に設けられている(図18、図19参照)。したがって本実施形態の回転式洗浄機10によれば、シリンダ室23a〜23dから漏れ出てピストン保持部材5の側部を通り背面側に回り込んだ圧力の高い水により発生する背圧を、この背圧逃がし流路75を通じて排出ポート74→排出口72というように逃がすことによりピストン保持部材5への影響、例えば軸方向への圧力等といった影響が無いようにすることができる。
さらに、回転シリンダ部材2の背圧を逃がすために、回転シリンダ部材2の背面側、すなわちここでは回転シリンダ部材2とケーシング6との間、と排出口72とを連通し回転シリンダ部材2の背圧を逃がすための第2の背圧逃がし流路も設けられていることが好ましい。例えば本実施形態では、ケースカバー7上における排出ポート74の周囲の部分であってケーシング6に面合わせされる部分に4個の放射状の切欠き背圧流路76を設けて背圧逃がし流路としている(図18、図19参照)。これら切欠き背圧流路76は、回転シリンダ部材2の背圧を排出ポート74に逃がすことができるように少なくともフランジ部2aの幅を超える程度の長さとされている。また、ケーシング6の内周面であってフランジ部2aと対向する部分には、ケースカバー7と組み合わされた時にケースカバー7側の切欠き背圧流路76と連通する切欠き背圧流路62が設けられている(図20、図21参照)。本実施形態の場合、これら切欠き背圧流路62,76によって回転シリンダ部材2の背圧を逃がす第2の背圧逃がし流路が構成されている。このような本実施形態の回転式洗浄機10によれば、回転シリンダ部材2の背面側に回り込んだ圧力の高い水により発生する背圧を切欠き背圧流路62と切欠き背圧流路76を通じて排出ポート74に逃がすことにより回転シリンダ部材2に対し軸方向への力が生じるといった影響が無いようにすることができる。なお、回転シリンダ部材2の側壁25とケーシング6の内周面との間には僅かなクリアランスCが形成されている(図19参照)。このクリアランスCは、回転シリンダ部材2に作用する背圧を上述の切欠き背圧流路76へと逃がすための背面側からの流路として機能する。
図12に示すように、水はケースカバー7側から流入口71を通過し回転シリンダ部材2に流入する。また、回転式洗浄機10の回転動作で押し出される水は、ケースカバー7側の排出口72を通過し外部へと流出する。この際、ピストン保持部材5および回転シリンダ部材2は、これら両部材5,2が互いに離れる方向への圧力を受けながらケースカバー7あるいはケーシング6側に押されるようにして回転する。このように水の流入流出方向を軸方向に一致させる構造とした本実施形態の回転式洗浄機10によれば、例えば従来であれば回転シリンダ部材2の側面方向から水が流入し排出されていたために水圧が回転シリンダ部材2にラジアル方向に作用する側圧となってこの回転シリンダ部材2等のスムーズな回転を阻害していたのに対し、水の流入流出の際に軸方向に作用するスラスト荷重をローラ105やローラ102といったスラストベアリングで受けることができるためにより安定したスムーズな回転を実現できる。
続いて、回転式洗浄機10におけるロータリ式シリンダ装置1の動作を図24を用いて説明する。なお、図24(A)〜(G)は、ケーシング6内における回転シリンダ部材2やピストン3,4の動きを回転シリンダ部材2の回転角にして15度おきに示したものである。
まず、図24(A)に示す状態において、シリンダ室23a,23b内を往復動するピストン3は回転シリンダ部材2の空洞部22に位置し、シリンダ室23a,23bのそれぞれに先端部あるいは後端部の一部が入り込んだ状態となっている。一方、シリンダ室23c,23d内を往復動するピストン4は、回転シリンダ部材2のシリンダ室23d内の最奥部まで移動した状態となっている。また、この図24(A)の状態においてシリンダ室23aは流入ポート73と重なり合って流入口71と連通しており、シリンダ室23bは排出ポート74と重なり合って排出口72と連通している。一方、シリンダ室23c,23dは流入ポート73及び排出ポート74のいずれとも重なり合っていないため流入口71あるいは排出口72と連通していない。
この状態で、水が流入口71から流入ポート73を通ってシリンダ室23aへと流入すると、流入した水の圧力によってピストン3がシリンダ室23bに向けて押し進められ、シリンダ室23b内にある水を排出ポート74を通じて排出口72から排出する(図24(B)参照)。ここで、ピストン3の自転中心位置X1が回転中心位置Xに対してずれていることから、ピストン3が進む力はピストン3を保持するピストン保持部材5を回転させる力としても作用し、ピストン保持部材5を回転中心位置Xまわりに回転させる。これに伴い、ピストン3は自転中心位置X1を中心として自転しながら回転中心位置Xまわりに公転し、回転シリンダ部材2は回転軸心oまわりに回転する。
一方、ピストン4は、ピストン保持部材5が回転中心位置Xまわりに回転するのに伴い図24(B)に示すように空洞部22に向けて引き戻され、シリンダ室23d内の水をシリンダ室23aあるいはシリンダ室23cの側へと押し出す。また、図24(B)の状態となるとシリンダ室23dが流入ポート73と連通することから、流入口71から流入した水はこれまで流入していたシリンダ室23aに加え新たにシリンダ室23dにも流入することとなる。したがって、この時点において回転シリンダ部材2内における水圧はピストン4を大きく推進させる力としては作用していない。この状態ではシリンダ室23aとシリンダ室23dが流入ポート73にオーバーラップして流入口71と連通しているが、ピストン保持部材5及び回転シリンダ部材2が更に回転して図24(D)の状態になるとシリンダ室23aと流入ポート73との連通が途切れ、これ以降、水はシリンダ室23dにのみ流入してピストン4を空洞部22側へ押すようになる(図24(D)、図24(E)参照)。押されたピストン4は空洞部22やシリンダ室23c等の水を押し出しながら移動する。以上のように、回転シリンダ部材2が回転するのに伴い水圧が作用する対象がピストン3からピストン4へと徐々に移行し、ピストン保持部材5及び回転シリンダ部材2を回転させるための力を持続させる。
また、図24(A)〜図24(D)までの間、排出ポート74にオーバーラップしているのはシリンダ室23bのみであったが、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が更に回転することによってシリンダ室23cが排出ポート74にオーバーラップすると(図24(E)参照)、シリンダ室23b内の水に加えてシリンダ室23c内の水も排出口72から排出されるようになる。なお、シリンダ室23bから排出される水量は、ピストン3がシリンダ室23bの最奥部に接近するに従い徐々に減少する(図24(E)、図24(F)参照)。
図24(F)の状態から回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が更に回転すると、シリンダ室23bと排出ポート74との連通状態が途切れ、シリンダ室23c内の水のみが排出口72から排出されるようになる(図24(G)参照)。この図24(G)に示す状態は図24(A)に示した状態からピストン3,4が入れ替わっているだけで状態としては等価であり、これ以降、上述した図24(A)〜図24(G)の動作が繰り返される。そして、以降、流入ポート73とオーバーラップするシリンダ室はシリンダ室23d→シリンダ室23b→シリンダ室23c→シリンダ室23a→シリンダ室23dと入れ替わり、また、水圧力を主に受けるピストンはピストン3→ピストン4→ピストン3へと交互に入れ替わり、回転シリンダ部材2及びピストン保持部材5が回転し続ける。
以上のように、本実施形態の回転式洗浄機10におけるシリンダ室23a〜23dは、ピストン3,4がシリンダ室23a〜23d内の外周側位置から空洞部22に向けて引き戻されて室内容積が増加する過程にある間は流入ポート73とオーバーラップするように設けられ、シリンダ室23a〜23d内に水が流入するようになっている。またシリンダ室23a〜23dは、ピストン3,4が外周側に向けて押し出され室内容積が減少する過程にある間は排出ポート74とオーバーラップするように設けられ、シリンダ室23a〜23d内の水が排出されるようになっている。また、上述したように流入口71と排出口72はシリンダ室23a〜23dと対向する位置に形成されており、しかも流入ポート73、排出ポート74が液圧縮を生じないよう広い範囲に形成され、且つ流入口71と排出口72は通路面積が大きく形成されているので水の流れ抵抗は小さい。これらの結果、回転シリンダ部材2の各シリンダ室23a〜23dにおける水圧が効率よく出力軸51の回転力に変換される。
また、この回転式洗浄機10においては、回転中心位置Xを中心としたピストン保持部材5の回転運動の角速度、別の表現をすればピストン3,4の公転運動の角速度は、回転シリンダ部材2の回転軸心oを中心とする回転角速度の2倍となっている。これは、ピストン3,4の回転半径が回転シリンダ部材2のピッチ円の半径の1/2となっており、ピストン3,4の運動が、回転シリンダ部材2の回転運動に対して円サイクロイド運動となっているためである。なお、ピストン3,4の自転、すなわちピストン軸52,53を各々回転中心とする回転も、回転シリンダ部材2と同じ角速度回転運動となる。
また、ピストン3は、回転シリンダ部材2が1回転する間にシリンダ室23a,23b間を1往復するようになっており、ピストン3の往復動作数と回転シリンダ部材2の回転数とが1:1の関係になっている。また、ピストン4も同様に、回転シリンダ部材2が1回転する間にシリンダ室23c,23d間を1往復するようになっており、ピストン4の往復動作数と回転シリンダ部材2の回転数とが1:1の関係になっている。すなわち、回転シリンダ部材2の回転数と、ピストン保持部材5の回転数と、ピストン3,4のシリンダ室23a〜23d及び空洞部22を往復する動作数との比が、1:2:1となっている。
また、上述したように、ピストン3,4の横断面形状とシリンダ室23a〜23dの横断面形状を一致させているので、シリンダ室23a〜23dに対してピストン3,4の上面,両側面,底面はピストン3,4の全長に亘って面接触することになり、シリンダ室23a〜23dとピストン3,4の間の水密性が確保されている。このため、シリンダ室23a〜23dとピストン3,4の隙間からの液体漏れをより確実に防止することができ、その分だけ効率の良い回転式洗浄機10を構成することができる。
ここで本実施形態の回転式洗浄機10における全体の動作について簡単に説明しておくと、まず導入路92から流入した水は柄91内を通り流入口71よりロータリ式シリンダ装置1の回転シリンダ部材2の中に入り、ピストン3,4を押し、ピストン保持部材5、回転シリンダ部材2を回転させる。ピストン保持部材5の回転に伴い、回転力は出力歯車81、アイドラ歯車82、ブラシ歯車83に伝わり回転ブラシ9を回転させる。水は排出ポート74及び流路70を通って流出し、ブラシ歯車83の噴出孔83b及びブラシ歯車83の外周側から回転ブラシ9に放出される。この場合、回転ブラシ9の回転スピードは流入する水量に応じて変化する。回転ブラシ9が水を噴出させながら回転することによって洗浄対象物を効率よく洗浄することができる。
本実施形態の回転式洗浄機10の具体的な用途例としては以下のようなものがある。すなわち、
1)風呂洗浄機:シャワー用のホースを長めにしてこの回転式洗浄機10を接続したもの。
2)食器洗浄機A:蛇口を2つに分岐し、片側を通常の水道とし、もう一方に短いホースと開閉できる蛇口を付け、ここに小型の回転式洗浄機10を接続したもの。
3)食器洗浄機B:上記食器洗浄機Aをシステムキッチンの一部に固定し、食器を押し付けることにより洗浄するもの。
4)洗車機:散水用ホースの先端にバルブ付開閉機を付け、その先端に回転式洗浄機10を接続したもの。
以上説明したように、本実施形態の回転式洗浄機10におけるロータリ式シリンダ装置1では、水道95側から圧力の高い水流が供給されている場合に、シリンダ室23a〜23dを有する回転シリンダ部材2と、ピストン3,4を有するピストン保持部材5とがそれぞれケーシング6とケースカバー7とに支持された状態で回転し続ける。しかも、出力軸51の回転は出力歯車81→アイドラ歯車82→ブラシ歯車83というように減速機構として機能する歯車輪列8を介して最終的に回転ブラシ9を回転させる力として伝達され、大きな回転トルクを発揮させる。したがって、この回転式洗浄機10によれば減速機を別途採用せずとも水流のみによって十分な回転力を得、水を供給しながら回転ブラシ9を回転させ続けることができる。
加えて、本実施形態の回転式洗浄機10においては、ブラシ軸85がケースカバー7に埋め込まれることによって固定されており、回転ブラシ9の回転台として機能するブラシ歯車83はこのブラシ軸85によって回転可能な状態で支持されているため、回転ブラシ9が洗浄対象物に押し付けられる等してブラシ軸85に軸方向の力が作用してもこの力をケースカバー7によって受け止めることができる。したがってこの回転式洗浄機10によれば、回転ブラシ9が本実施形態でいえば出力軸51に相当するような回転出力軸に直接取り付けられており軸方向の力がロータリ式シリンダ装置1の回転を鈍化させる力として直接作用してしまうような構造の洗浄機に比べ、回転力が確保されやすい。
また、流体の圧力によって発生する回転シリンダ部材2に対するラジアル方向荷重、回転シリンダ部材2に対するスラスト荷重、ピストン保持部材5に対するスラスト荷重等は、これら回転シリンダ部材2やピストン保持部材5とケーシング6あるいはケースカバー7との間に設けられたローラ102,105,108で受けることができる。このため、本実施形態の回転式洗浄機10によればお互いに接触し合う各部材の摩擦抵抗を少なくすることができる。
なお、上述した第2の実施形態では特に水の流量調節手段については説明しなかったがこのような流量調節手段を設けてもよい。具体的には、例えば柄91などの入水側に流量制御弁を付加すれば流量さらには回転ブラシ9の回転速度を手元で調整できて便利である。
また、本実施形態では柄91を通ってロータリ式シリンダ装置1に流入した水は全て回転ブラシ9及びこの回転ブラシ9とカバー90との間から流出するようにしたが、流路のいずれかの部分に流路切替手段を組み込み、回転ブラシ9側から流出する流路とそれ以外の部分から流出する流路とに切り替える、あるいは流量比を変えることができるようにしてもよい。
また、流路のいずれかの部分に水抜き栓を付加するようにすれば、回転式洗浄機10の使用後において流路内とくにロータリ式シリンダ装置1の内部に水が残らないように水切りしやすくなる。
また、本実施形態では単に水を流す場合のみ説明したが、例えば柄91など流路の途中に洗剤タンクやバルブを設け、流量調整ノズルで流量調整しながら洗剤を水に混合するようにすれば洗剤を含んだ水で洗浄することが可能となる。
また、本実施形態では洗浄部材としてブラシを用いた例を示してあるが、他に洗浄部材として、各種材質のスポンジ、布等、洗浄対象物に適した洗浄用部材を用いても良い。
また、第2の実施形態のロータリ式シリンダ装置1では、シリンダ室の数を4つ(つまり2対)、ピストンの数を2つとしたが、図25及び図26に示すようにシリンダ室の数を6つ(つまり3対)、ピストンの数を3つとしてもよい。図25に示すロータリ式シリンダ装置1においては、6つのシリンダ室23a,23b,23c,23d,23e,23fと6つの扇状の台部30を備えた回転シリンダ部材2がケーシング6内に回転自在に配置されており、シリンダ室23aと23b、シリンダ室23cと23d、シリンダ室23eと23fがそれぞれ空洞部22を挟んで対向するように配置されて対をなしている。また、回転シリンダ部材2の回転軸心から偏心した位置には、ピストン保持部材(図示省略)が回転自在に配置され、このピストン保持部材には3つのピストン3,4,3’が回転自在に保持されている。なお、上述の実施形態のロータリ式シリンダ装置1と同様、このロータリ式シリンダ装置1のケーシング6内に配置された回転シリンダ部材2およびピストン保持部材の両部材の回転数の比率は、ピストン保持部材の回転数2に対して回転シリンダ部材2の回転数1である。このように構成されたロータリ式シリンダ装置1は、ピストン保持部材の回転により各ピストン3,4,3’が図中A’方向に回転すると、この動作に伴い回転シリンダ部材2がB’方向に回転するようになっている。これにより、ピストン3がシリンダ室23a,23bを、ピストン4がシリンダ室23c,23dを、ピストン3’がシリンダ室23e,23fを、それぞれ空洞部22を通過しながら往復運動をするようになっている。なお、各ピストン3,4,3’の移動方向の寸法は、空洞部22を通過する際、この空洞部22を中心として対向するシリンダ室のいずれにも当該ピストンの一部を入り込ませることが可能な寸法、換言すればこの空洞部22よりも移動方向に長い寸法となっている。したがって、各ピストン3,4,3’は、空洞部22を通過する際には対向する対のシリンダ室の両壁に同時に接触することとなる。なお、各ピストン3,4,3’は、空洞部22を通過する際に互いに他のピストン3,4,3’にぶつかり合わないように設計されているのは勿論である。これにより、各ピストン3,4,3’は、常時いずれかのシリンダ室にガイドされながら移動し、各シリンダ室23a〜23f内を出入りし、流体の吸引、加圧または圧縮、搬送を行う。図25に示したような6つのシリンダ室23a〜23f及び3つのピストン3,4,3’を有するタイプのロータリ式シリンダ装置1は、吸排のバランスが取れトルク変動が少ないという利点がある。
さらに、図26に示したロータリ式シリンダ装置1においては、6つのシリンダ室23a,23b,23c,23d,23e,23fと6つの扇形の台部30を備えた回転シリンダ部材2がケーシング6内に回転自在に配置されており、回転シリンダ部材2の回転軸心から偏心した位置には、ピストン保持部材(図示省略)が回転自在に配置されている。このピストン保持部材には、3つのピストン3,4,3’が回転自在に保持されている。また、空洞部とピストン3,4,3’の通路とを兼ねる空洞部兼通路22’の両側には、ケーシング6に立設された断面三日月状のガイド柱26と、断面略半円状のガイド柱27とが配置されている。これらガイド柱26,27は、空洞部兼通路22’内を通過する各ピストン3,4,3’の案内をしている。この図26に示したロータリ式シリンダ装置1では、各ピストン3,4,3’は略立方体のブロックで構成されており、空洞部兼通路22’を通過する際には、いずれのシリンダ室23a〜23fからも離れた状態となる。そのため、各ピストン3,4,3’は、空洞部兼通路22’を通過する際にはガイド柱26,27によって所定の姿勢を保ちながら通過するようになっている。なお、このロータリ式シリンダ装置1のケーシング6内に配置された回転シリンダ部材2およびピストン保持部材の両部材の回転数の比率は、ピストン保持部材の回転数2に対し、回転シリンダ部材2の回転数及びピストン3,4のピストン軸52,53に対する回転数1である。このように構成されたロータリ式シリンダ装置1は、ピストン保持部材の回転により各ピストン3,4,3’が図中A”方向に回転すると、この動作に伴い回転シリンダ部材2がB”方向に回転するようになっている。これにより、ピストン3がシリンダ室23a,23bを、ピストン4がシリンダ室23c,23dを、ピストン3’がシリンダ室23e,23fを、それぞれ空洞部兼通路22’を通過しながら往復運動するようになっている。図26に示したような6つのシリンダ室23a〜23f及び3つのピストン3,4,3’を有するタイプのロータリ式シリンダ装置1は、吸排のバランスが取れトルク変動が少ないものとなる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した第2の実施形態ではケーシング6の孔63に圧入等で固定したシリンダ軸21によって回転シリンダ部材2を回転自在に支持したが(図16参照)、この代わりに、回転シリンダ部材2の中央部分に図27に符号2dで示すような一体的な回転軸を形成し、この回転軸2dをケーシング6で支持するようにしてもよい(図27参照)。このように回転シリンダ部材2の一部をケーシング6で支持する場合、それらの間に図27に示すようなラジアルベアリング119を介してもよい。
また、上述した第1の実施形態では、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にこの回転シリンダ部材2を軸方向に支持するローラ108とリテーナ109を設けたが(図1参照)、これらの代わりに、内輪、外輪及び転動体からなる、回転シリンダ部材2をラジアル方向に支持するラジアルベアリング120を用いてもよい(図28参照)。あるいは、転動体としてのボール以外に、ローラを用いてもよく、さらには、回転シリンダ部材2とケーシング6との間にアンギュラベアリングのようにスラスト荷重とラジアル荷重を同時に支持する軸受121を設け、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方を受けるようにしてもよい(図29参照)。
また、本実施形態では側壁25を有する回転シリンダ部材2を用いているが、この場合における側壁25は回転シリンダ部材2の一部としてこの回転シリンダ部材2ごと一体的に成形されるものでもよいし、あるいは側壁25のない回転シリンダ部材2の成形後にこの回転シリンダ部材2に後付けされて一体化されるものでもよい。後者の一例を挙げれば、シリンダ室23a〜23dおよび空洞部22からなる回転シリンダ部材2の溝を従来と同様に外周面側に開放させ、この回転シリンダ部材2をラジアルベアリング122の内輸に嵌め込んで側壁25を形成するようにしてもよい(図30参照)。要すれば、少なくともロータリ式シリンダ装置1の構成部品として用いられる時点において側壁25が回転シリンダ部材2と一体化されていればよい。
また、上述した実施形態においては、例えば図9等に示したローラ102,108、リテーナ103,109、プレート110等、ロータリ式シリンダ装置1内の各所に配置したローラやプレートについても言及したが、これらローラ等は相対速度の異なる部材間に介在するものであるため摩擦抵抗を少なくするような処理が施されていることが回転等する部材に対する摩擦力を軽減できるという点で好ましい。このような処理としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)による表面処理が好ましい。このような処理が施されたローラ等を例えば上述したコンプレッサとしてのロータリ式シリンダ装置1に適用した場合、円滑な動作を確保しつつ特に金属部材どうしの焼き付きを防止しうる点で効果的である。
また上述した実施形態では、各シリンダ室23a〜23dに対して流入口71及び排出口72が回転シリンダ部材2の軸方向に位置しており、これにより、流体の流入時あるいは排出時において回転シリンダ部材2に対し大きなラジアル方向の力が作用しなくなるようにしたロータリ式シリンダ装置1を説明した。この場合、流入口71及び排出口72は、各シリンダ室23a〜23dに軸方向真上あるいは真下から流体を流入させ軸方向真上あるいは真下から流体を排出するよう、シリンダ室23a〜23dに対して垂直に配置されていることが好ましいが必ずしもこれに限られるわけではない。例えば、流入口71、流出口72あるいはこれらに連通する流入ポート73、排出ポート74がシリンダ室23a〜23dに対して斜めに連通しているような場合であっても、流体の流入排出の際に回転シリンダ部材2に作用するラジアル方向の力を低減させうるものであれば、上述した実施形態の場合と同様、動作中における回転シリンダ部材2の傾きを従来よりも抑えることが可能となる。
Claims (5)
- 回転軸心を中心として形成された空洞部に連通し該空洞部を挟んで対向する少なくとも一対のシリンダ室からなる凹部を有するとともに、前記シリンダ室を径方向外側から塞ぐ側壁を有する回転シリンダ部材と、該回転シリンダ部材の回転軸心から偏心した回転中心位置を中心として回転するピストン保持部材と、前記回転シリンダ部材を回転自在に支持する第1の支持部材と、前記ピストン保持部材を回転自在に支持する第2の支持部材と、前記ピストン保持部材の前記回転中心位置から偏心した自転中心位置にその位置を中心として回転可能に保持されるとともに前記一対のシリンダ室および前記空洞部内を往復動するピストンと、前記シリンダ室に連通する流体の流入口および排出口とを備え、前記回転シリンダ部材と前記ピストン保持部材との相対回転により前記ピストン自体が前記自転中心位置を中心として回転しながらかつ前記回転中心位置を中心として回転することによって前記一対のシリンダ室の双方に出入りすることを特徴とするロータリ式シリンダ装置。
- 回転軸心を中心として形成された空洞部に連通し該空洞部を挟んで対向する少なくとも一対のシリンダ室からなる凹部を有する回転シリンダ部材と、該回転シリンダ部材の回転軸心から偏心した回転中心位置を中心として回転するピストン保持部材と、前記回転シリンダ部材を回転自在に支持する第1の支持部材と、前記ピストン保持部材を回転自在に支持する第2の支持部材と、前記ピストン保持部材の前記回転中心位置から偏心した自転中心位置にその位置を中心として回転可能に保持されるとともに前記一対のシリンダ室および前記空洞部内を往復動するピストンと、前記第2の支持部材に形成され、前記回転シリンダ部材の軸方向に位置して前記シリンダ室に軸方向から連通する流体の流入口及び排出口とを備え、前記回転シリンダ部材と前記ピストン保持部材との相対回転により前記ピストン自体が前記自転中心位置を中心として回転しながらかつ前記回転中心位置を中心として回転することによって前記一対のシリンダ室の双方に出入りすることを特徴とするロータリ式シリンダ装置。
- 前記回転シリンダ部材の底部と前記第1の支持部材との隙間、前記回転シリンダ部材の側部と前記第1の支持部材との隙間、前記ピストン保持部材の底部と前記第2の支持部材との隙間、あるいは前記ピストン保持部材の側部と前記第2の支持部材との隙間のうちのいずれか1の隙間にベアリングが介在していることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のロータリ式シリンダ装置。
- 前記回転シリンダ部材の前記ピストン保持部材と対向する側の周縁に、径方向外側に広がり前記第2の支持部材と対向するフランジ部が形成されていることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のロータリ式シリンダ装置。
- 前記回転シリンダ部材の側壁は、円筒状部材がこの回転シリンダ部材の底板部分に後付けされることによって構成されるものであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のロータリ式シリンダ装置。
Applications Claiming Priority (5)
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JP2002321739 | 2002-11-05 | ||
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JP2003272255 | 2003-07-09 | ||
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Also Published As
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