JPWO2004037272A1 - デング熱ウィルス感染阻害剤 - Google Patents
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Abstract
デング熱ウィルスの感染を効果的に阻害する薬剤として、少なくとも、次式(I)Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1−(I)(ただし、Hex1およびHex2はヘキソースを表す)で表されるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
Description
この出願の発明は、デング熱ウィルス感染阻害剤に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、少なくともパラグロボシド糖鎖等のオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有するデング熱ウィルス感染阻害剤に関するものである。
デング熱(dengue fever)は、デングウィルス(dengue virus)の急性感染症で、その臨床的特徴から、予後良好な古典的デング熱(classical dengue fever:CDF)、出血傾向を示すデング出血熱(dengue hemorrhagic syndrome:DHF)、最も重篤でショックを特徴とするデングショック症候群(dengue shock syndrome:DSS)に分類される(平林義弘,「感染症症候群 I 領域別症候群シリーズNo.23」,1999年,p.145−149)。
CDEは、3〜9日の潜伏期間の後、40℃前後の発熱、頭痛、腰背部痛、顔面紅潮、結膜充血などを突然発症し、全身の激しい関節痛と筋肉痛を伴う疾患である(Sabin,A.B.,American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,1952,Vol.2,p.30−50)。また、やや遅れて、消化器症状や上気道炎症も出現する。しかし、これらの症状は、自己限定的であり、自然経過で治癒・回復する。一方、DHF/DSSもCDEとほぼ同様に発症するが、2〜6日で出血傾向もしくはショック様症状が著明となり、虚脱感や全身衰弱が激しく、状態が急速に悪化する点で異なる(Cohen,S.N.et al.,Journal of Pediatrics,1966,Vol.68,p.448−456;Nimmannitya,S.et al.,American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,1969,p.954−971)。
デング熱の病原体であるデングウィルスは、直径約40〜60nmでエンベロープを有し、約11kbのプラス極性の1本鎖RNAを有し、ウィルス学的には黄熱ウィルスや日本脳炎ウィルスなどとともにフラビウィルス科(Flaviviridae)に属する。また、デングウィルスは、感染中和抗体の交叉性に基づいて1〜4型の4種の血清型に分類されることが知られている(Westaway,E.G.et al.,Intervirology,1985,Vol.24,p.183−192;Chambers,T.J.et al.Annual Reviews Microbiology,1990,Vol.44,p.649−688)。
自然界におけるデングウィルスベクターは、シマカ類の蚊であり、中でも熱帯地方に広く生息するネッタイシマカ(Aedesaegypti)が主要な媒介蚊となっている(Bancroft,T.L.,Australasian Medical Gazette,1906,Vol.25,p.17−18)。都市部では、ウィルス保有蚊の刺咬によってヒトが感染し、逆にウィルス血症を呈している患者を刺咬して蚊がウィルスを獲得するという蚊−ヒト−蚊の生活環が成立しており、人口のまばらな森林地帯では、蚊とサル類によってサイクルが成立していると考えられている(Gubler,D.J.,The Arboviruses:Ecology and Epidemiology Vol.2,1988,CRC Press,p.223−260)。
デング熱は、世界各地の熱帯地方に広く分布しており、感染力が極めて強く、流行時には人口の約80%が感染することが知られている。地球上の患者は2000万人/年(WHO)にもおよび、流行地域も患者数も年毎に拡大の一途をたどっている(Rigau−Perez et al.,The Lancet,1998,Vol.352,p.971−977)。また、かつては見られなかったDHF/DSSが、近年各地で多発しており、出血熱の致死率が40%以上と高いことからも、この症状は、再興感染症として位置付けられ、その対策は公衆衛生上極めて重要な問題となっている。
しかし、感染における標的組織、感染初期過程の宿主・ウィルス相互作用に関する分子、遺伝子の情報は極めて少なく、デング熱、デング出血熱に有効な薬は未だ知られていないのが実情である。デング熱ワクチンについても、弱毒性ワクチンを始め、不活性ワクチン、サブユニットワクチン、組み換えワクチン、DNAワクチンなどの開発が進められてはいるものの、有効性や副反応の問題により実用化には達していない(Chambers,T.J.et al.,Vaccine,1997,Vol.15,p.1494−1502)。
一方、ヒトゲノム計画等により、ゲノムの解析によって膨大な遺伝子情報が明らかにされている。そして、遺伝子の機能を解析、解明していくことがこの分野の新たな課題となっている。そして、遺伝子の機能解明のために、遺伝子発現の研究がますます注目されている。
例えば、これまでに、リバビリン(Ribavirin)が毒性RNAウィルス感染に対して効能を示すことが報告され、デング熱ウィルスに対する有効な薬剤として作用することが期待された(非特許文献11)。しかし、アカゲザルを用いたデングウィルス感染において、リバビリンは予防効果を示さず、反対に貧血や血小板増加症を誘発したことが報告されている(Canonico,P.G,,Antiviral Research,1985,Suppl.1,p.75−81)。また、これまでに細胞表面にあるヘパリン様グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸がデング熱ウィルスの受容体として、その外皮蛋白質と結合することが明らかにされ、この結合を阻害する物質がデング熱ウィルスの感染の治療薬として有望視されている(Marks,R.M.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,2001,Vol.44,No.13,p.2178−2187)。しかし、この分子のみではデング熱ウィルスの宿主特異性を説明することができないことから、他のレセプター構成分子が存在することが予想されている。
さらに、デング熱は、ウィルス抗体により感染が助長される例が多く報告されており、抗原・抗体複合体、Fcレセプターの関与なども考えられているが、詳細な機構については不明である(Schlesinger,J.J.et al.,Virology,1999,Vol.260,p.84−88;Wang,S.et al.,Virology,1995,Vol.213,p.254−257)。デング熱ウィルスの受容体研究の多くは、宿主固体、細胞レベルで行われているが、未だ分子、遺伝子レベルでは解明されていない。デング熱ウィルスのヒトにおける標的細胞は、血球系に存在していると予想されているが(例えばChen,Y.C et al.,Journal of Virology,1999,Vol.73,p.2650−2657)、受容体分子は未同定である。
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、デング熱ウィルスの感染を効果的に阻害する薬剤を提供することを課題としている。
CDEは、3〜9日の潜伏期間の後、40℃前後の発熱、頭痛、腰背部痛、顔面紅潮、結膜充血などを突然発症し、全身の激しい関節痛と筋肉痛を伴う疾患である(Sabin,A.B.,American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,1952,Vol.2,p.30−50)。また、やや遅れて、消化器症状や上気道炎症も出現する。しかし、これらの症状は、自己限定的であり、自然経過で治癒・回復する。一方、DHF/DSSもCDEとほぼ同様に発症するが、2〜6日で出血傾向もしくはショック様症状が著明となり、虚脱感や全身衰弱が激しく、状態が急速に悪化する点で異なる(Cohen,S.N.et al.,Journal of Pediatrics,1966,Vol.68,p.448−456;Nimmannitya,S.et al.,American Journal of Tropical Medicine and Hygiene,1969,p.954−971)。
デング熱の病原体であるデングウィルスは、直径約40〜60nmでエンベロープを有し、約11kbのプラス極性の1本鎖RNAを有し、ウィルス学的には黄熱ウィルスや日本脳炎ウィルスなどとともにフラビウィルス科(Flaviviridae)に属する。また、デングウィルスは、感染中和抗体の交叉性に基づいて1〜4型の4種の血清型に分類されることが知られている(Westaway,E.G.et al.,Intervirology,1985,Vol.24,p.183−192;Chambers,T.J.et al.Annual Reviews Microbiology,1990,Vol.44,p.649−688)。
自然界におけるデングウィルスベクターは、シマカ類の蚊であり、中でも熱帯地方に広く生息するネッタイシマカ(Aedesaegypti)が主要な媒介蚊となっている(Bancroft,T.L.,Australasian Medical Gazette,1906,Vol.25,p.17−18)。都市部では、ウィルス保有蚊の刺咬によってヒトが感染し、逆にウィルス血症を呈している患者を刺咬して蚊がウィルスを獲得するという蚊−ヒト−蚊の生活環が成立しており、人口のまばらな森林地帯では、蚊とサル類によってサイクルが成立していると考えられている(Gubler,D.J.,The Arboviruses:Ecology and Epidemiology Vol.2,1988,CRC Press,p.223−260)。
デング熱は、世界各地の熱帯地方に広く分布しており、感染力が極めて強く、流行時には人口の約80%が感染することが知られている。地球上の患者は2000万人/年(WHO)にもおよび、流行地域も患者数も年毎に拡大の一途をたどっている(Rigau−Perez et al.,The Lancet,1998,Vol.352,p.971−977)。また、かつては見られなかったDHF/DSSが、近年各地で多発しており、出血熱の致死率が40%以上と高いことからも、この症状は、再興感染症として位置付けられ、その対策は公衆衛生上極めて重要な問題となっている。
しかし、感染における標的組織、感染初期過程の宿主・ウィルス相互作用に関する分子、遺伝子の情報は極めて少なく、デング熱、デング出血熱に有効な薬は未だ知られていないのが実情である。デング熱ワクチンについても、弱毒性ワクチンを始め、不活性ワクチン、サブユニットワクチン、組み換えワクチン、DNAワクチンなどの開発が進められてはいるものの、有効性や副反応の問題により実用化には達していない(Chambers,T.J.et al.,Vaccine,1997,Vol.15,p.1494−1502)。
一方、ヒトゲノム計画等により、ゲノムの解析によって膨大な遺伝子情報が明らかにされている。そして、遺伝子の機能を解析、解明していくことがこの分野の新たな課題となっている。そして、遺伝子の機能解明のために、遺伝子発現の研究がますます注目されている。
例えば、これまでに、リバビリン(Ribavirin)が毒性RNAウィルス感染に対して効能を示すことが報告され、デング熱ウィルスに対する有効な薬剤として作用することが期待された(非特許文献11)。しかし、アカゲザルを用いたデングウィルス感染において、リバビリンは予防効果を示さず、反対に貧血や血小板増加症を誘発したことが報告されている(Canonico,P.G,,Antiviral Research,1985,Suppl.1,p.75−81)。また、これまでに細胞表面にあるヘパリン様グリコサミノグリカン、ヘパラン硫酸がデング熱ウィルスの受容体として、その外皮蛋白質と結合することが明らかにされ、この結合を阻害する物質がデング熱ウィルスの感染の治療薬として有望視されている(Marks,R.M.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,2001,Vol.44,No.13,p.2178−2187)。しかし、この分子のみではデング熱ウィルスの宿主特異性を説明することができないことから、他のレセプター構成分子が存在することが予想されている。
さらに、デング熱は、ウィルス抗体により感染が助長される例が多く報告されており、抗原・抗体複合体、Fcレセプターの関与なども考えられているが、詳細な機構については不明である(Schlesinger,J.J.et al.,Virology,1999,Vol.260,p.84−88;Wang,S.et al.,Virology,1995,Vol.213,p.254−257)。デング熱ウィルスの受容体研究の多くは、宿主固体、細胞レベルで行われているが、未だ分子、遺伝子レベルでは解明されていない。デング熱ウィルスのヒトにおける標的細胞は、血球系に存在していると予想されているが(例えばChen,Y.C et al.,Journal of Virology,1999,Vol.73,p.2650−2657)、受容体分子は未同定である。
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、デング熱ウィルスの感染を効果的に阻害する薬剤を提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、少なくとも、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(ただし、Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第2には、少なくとも、次式(II)
(X)n−R (II)
(ただし、Xは、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を表し;Rは水素原子、S、N、O、P原子を有する置換基、炭化水素基、脂質、タンパク質、および合成高分子からなる群より選択される基質であり、いずれの場合にも置換基を有していてよく;nはRに結合するオリゴ糖鎖の数を表す1以上の数である)
で表される分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
さらに、第3には、この出願の発明は、式(I)で表されるオリゴ糖鎖の非還元末端に、Hex3で表されるヘキソースまたはHex3NAcで表されるアミノヘキソースのいずれかがβ1−4結合している前記いずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第4には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1がグルコース(Glc)であり、Hex2がガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)である前記いずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
また、この出願の発明は、第5には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1がグルコース(Glc)であり、Hex2がガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)であり、Hex3がガラクトース(Gal)またはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)であるデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
さらに、この出願の発明は、第6には、式(I)で表されるオリゴ糖鎮が
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドであるデング熱ウィルス感染阻害剤を、第7には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖が
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
であるデング熱ウィルス感染阻害剤を、そして第8には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖が
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
であるデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第9には、次式(Ia)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドに対するモノクローナル抗体を、第10には、次式(1b)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を、そして第11には、次式(Ic)
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を提供する。
そして、この出願の発明は、第12には、少なくとも前記いずれかのモノクローナル抗体を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(ただし、Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第2には、少なくとも、次式(II)
(X)n−R (II)
(ただし、Xは、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を表し;Rは水素原子、S、N、O、P原子を有する置換基、炭化水素基、脂質、タンパク質、および合成高分子からなる群より選択される基質であり、いずれの場合にも置換基を有していてよく;nはRに結合するオリゴ糖鎖の数を表す1以上の数である)
で表される分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
さらに、第3には、この出願の発明は、式(I)で表されるオリゴ糖鎖の非還元末端に、Hex3で表されるヘキソースまたはHex3NAcで表されるアミノヘキソースのいずれかがβ1−4結合している前記いずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第4には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1がグルコース(Glc)であり、Hex2がガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)である前記いずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
また、この出願の発明は、第5には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1がグルコース(Glc)であり、Hex2がガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)であり、Hex3がガラクトース(Gal)またはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)であるデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
さらに、この出願の発明は、第6には、式(I)で表されるオリゴ糖鎮が
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドであるデング熱ウィルス感染阻害剤を、第7には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖が
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
であるデング熱ウィルス感染阻害剤を、そして第8には、式(I)で表されるオリゴ糖鎖が
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
であるデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
この出願の発明は、第9には、次式(Ia)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドに対するモノクローナル抗体を、第10には、次式(1b)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を、そして第11には、次式(Ic)
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を提供する。
そして、この出願の発明は、第12には、少なくとも前記いずれかのモノクローナル抗体を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤を提供する。
図1は、この出願の発明の実施例において、phospholipase C処理後のK562細胞の中性等脂質画分のTLC分析およびvirus結合性の結果を示した写真である。(a:Dittmer試薬噴霧、b:Orcinol試薬噴霧、c:virus−binding assay;1:中性糖脂質画分(未処理)、2:中性糖脂質画分(phospholipase C(+))、3:中性糖脂質画分(phospholipase C(−))、4:phosphatidylcholine(phospholipase C(+))、5:phosphatidylcholine(phospholipase C(−));展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)。
図2は、この出願の発明の実施例において、K562細胞の中性糖脂質画分I〜IVに対するvirus結合性の結果を示した写真である。(a:Orcinol試薬噴霧、b:virus(−)、c:virus(+);1:中性糖脂質画分I、2:中性糖脂質画分II、3:中性糖脂質画分III、4:中性糖脂質画分IV、5:LacCer、6:CTH、7:paragloboside、8:GA1、9:globoside;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図3は、この出願の発明の実施例において、K562細胞の中性糖脂質画分II−2に対するvirus結合性の結果を示した写真である。(a:Orcinol試薬噴霧、b:virus(+);1:中性糖脂質画分II−2、2:phosphatidylinositol、3:paragloboside、4:globoside;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図4は、この出願の発明の実施例において、抗PGモノクローナル抗体(H11)によるK562細胞精製糖脂質画分の免疫化学的検出の結果を示した写真である。(1:paragloboside、2:中性糖脂質画分II−2;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図5は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシドによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害効果の解析結果を示した図である。(a:virus(+)、b:virus(−)、c:paragloboside100μM、d:paragloboside200μM、e:paragloboside500μM、f:GA1500μM)
図6は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシドによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害効果の解析結果を示した写真である。(a:virus(+)、b:virus(−)、c:paragloboside100μM、d:paragloboside200μM、e:paragloboside500μM、f:GA1500μM)
図7は、この出願の発明の実施例において、蚊由来C6/36細胞から得られた中性糖脂質画分からデングウィルス結合脂質を単離する際の溶出パターンをTLCで分析した結果を示した写真である。
図8は、この出願の発明の実施例において、蚊由来C6/36細胞から得られた糖脂質とデングウィルスとの結合性の解析結果を示した図である。(1:C6/36細胞から抽出した中性糖脂質画分、2:1より精製したFraction13および14、3:1より精製したFraction15)
図9は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスのK562細胞への感染阻害を解析した結果を示した図である。
図2は、この出願の発明の実施例において、K562細胞の中性糖脂質画分I〜IVに対するvirus結合性の結果を示した写真である。(a:Orcinol試薬噴霧、b:virus(−)、c:virus(+);1:中性糖脂質画分I、2:中性糖脂質画分II、3:中性糖脂質画分III、4:中性糖脂質画分IV、5:LacCer、6:CTH、7:paragloboside、8:GA1、9:globoside;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図3は、この出願の発明の実施例において、K562細胞の中性糖脂質画分II−2に対するvirus結合性の結果を示した写真である。(a:Orcinol試薬噴霧、b:virus(+);1:中性糖脂質画分II−2、2:phosphatidylinositol、3:paragloboside、4:globoside;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図4は、この出願の発明の実施例において、抗PGモノクローナル抗体(H11)によるK562細胞精製糖脂質画分の免疫化学的検出の結果を示した写真である。(1:paragloboside、2:中性糖脂質画分II−2;展開溶媒:CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.);使用プレート:Polygram Sil G)
図5は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシドによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害効果の解析結果を示した図である。(a:virus(+)、b:virus(−)、c:paragloboside100μM、d:paragloboside200μM、e:paragloboside500μM、f:GA1500μM)
図6は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシドによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害効果の解析結果を示した写真である。(a:virus(+)、b:virus(−)、c:paragloboside100μM、d:paragloboside200μM、e:paragloboside500μM、f:GA1500μM)
図7は、この出願の発明の実施例において、蚊由来C6/36細胞から得られた中性糖脂質画分からデングウィルス結合脂質を単離する際の溶出パターンをTLCで分析した結果を示した写真である。
図8は、この出願の発明の実施例において、蚊由来C6/36細胞から得られた糖脂質とデングウィルスとの結合性の解析結果を示した図である。(1:C6/36細胞から抽出した中性糖脂質画分、2:1より精製したFraction13および14、3:1より精製したFraction15)
図9は、この出願の発明の実施例において、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスのK562細胞への感染阻害を解析した結果を示した図である。
この出願の発明者らは、デング熱を引き起こすデング熱ウィルスの宿主がヒトと蚊に限定されているという点に注目し、この2種の生物が共通して有する受容体分子を突き止めるべく鋭意研究を進めた。そして、ウィルスが感染・増殖できる培養細胞(K562細胞:ヒト骨髄性白血病細胞株、およびC6/36細胞:Aedesalbopictus由来)を用いて、受容体が脂質である可能性、タンパク質である可能性、これらの糖鎖付加体である可能性について、生化学的、免疫学的、細胞生物学的手法により検討したところ、デング熱ウィルスのレセプターの検索と同定に成功し、本願発明に至ったものである。
すなわち、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
で表されるオリゴ糖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有するものである。このような糖質分子は、多糖類に限定されず、糖脂質や糖タンパクであってもよい。
また、このような糖質分子において、Hex1およびHex2はヘキソースを表し、具体的には、グルコース(Glc)、フルクトース(Fru)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)が例示される。中でも、Hex1としては、Glcが好ましく、Hex2としては、GalまたはManが好ましい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、また、有効成分として、上記のオリゴ糖部位が、例えば炭化水素基、合成高分子、脂質、タンパク質等の合成化合物や天然化合物に結合した物質、すなわち、
(X)n−R (II)
(ただし、Xは、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を表し;Rは水素原子、S、N、O、P原子を有する置換基、炭化水素基、脂質、タンパク質、および合成高分子からなる群より選択される基質であり、いずれの場合にも置換基を有していてよく;nはRに結合するオリゴ糖の数を表す1以上の整数である)で表される物質を有効成分として含有するものであってもよい。
このとき、Hex1およびHex2としては、前記のとおりのヘキソースが例示される。また、Rとしては、H、置換基を有していてもよいC1−20アシル基、置換基を有していてもよいC1−20アルキル基、ラクチル基、アミノ基、ヒドロキシル基、硫酸基、リン酸基等の置換基や、ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸等の高分子鎖、デンドリマー、ポリペプチド、あるいはグリセリン、セラミド等の脂質、アルブミン、フェツイン、トランスフェリン等の血清糖タンパク質、DNAなどが好ましく例示される。中でも、ヒトに対する毒性が低いグリセリン、セラミド等の脂質、あるいは血清糖タンパク質をRとして用いることにより、安定で扱いの容易なデング熱ウィルス感染阻害剤の有効成分を得ることができる。なお、RはβGluのC1位に結合していればよく、Rのどの位置で、どのような形態でβGluのC1炭素と結合していてもよい。
上記式(II)の物質は、例えば、Kitov et al.やNishikawa et al.の報告にあるような、一つのRに対して複数(n個)のオリゴ糖鎖が結合した構造を有するものであってもよい(Kitov,P.I.et al.,Nature 2000,Vol.403,p.669−672;Nishikawa K.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.1999,p.7669−7674)。
さらに、本発明者らの研究によれば、式(I)で表されるオリゴ糖鎖の非還元末端に、Hex3で表されるヘキソースまたはHex3NAcで表されるアミノヘキソースのいずれかがβ1−4結合しているとき、オリゴ糖鎖がとくに高いデングウィルス結合性を示し、デング熱ウィルス感染阻害剤の効果が高まることが明らかになっている。したがって、式(I)で表されるオリゴ糖鎖は
であることが好ましい。このとき、Hex3としては、グルコース(Glc)、フルクトース(Fru)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)等が例示される。また、Hex3NAcとしては、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルマンノサミシ(ManNAc)等が例示される。中でも、Hex3としては、Galが、また、Hex3NAcとしては、GalNAcが好ましい。
以上のとおりのデング熱ウィルス感染阻害剤において、式(I)で表されるオリゴ糖鎖としてとくに好ましいものを挙げるならば、
で表されるパラグロボシド、
および
で表されるオリゴ糖鎖が例示される。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、発明者らにより明らかにされた、デングウィルスが前記の式で表される特定のオリゴ糖鎖を特異的に認識・結合するという性質を利用するものである。したがって、これらのオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を公知の生物学的手法により製造すれば、このようなモノクローナル抗体もまた、デング熱ウィルス感染阻害剤の有効成分として作用する。
また、以上のとおりのデング熱ウィルス感染阻害剤において、有効成分として用いられるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖に対するモノクローナル抗体以外の成分の組成や、医薬品としての形態はとくに限定されない。オリゴ糖へのデングウィルスの結合を阻害しない限り、各種の成分を含有していてもよく、その投与形態もとくに限定されない。具体的には、錠剤、粒・散剤、シロップ剤等の形態での経口投与、注射剤等の形態での非経口投与、座薬等の形態での直腸投与など患者の症状や状態に応じた投与方法を選択することができる。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤を経口投与する場合には、錠剤、トローチ、カプセル、霊薬、粉末、顆粒、懸濁液、乳液、およびシロップ等の形態とすることができる。また、被覆粒子、多層錠剤あるいは微小顆粒等として、緩慢放出または遅延放出される形態としてもよい。これらの形態においては、デング熱ウィルス感染阻害剤は、オリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体とともに、薬学認容性の結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、人工香味料、被覆剤、保存剤、潤滑剤および/または効果遅延剤等を含有していてもよい。
非経口投与では、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体は、毒性を有さず、非経口的に認容される希釈剤や溶媒、具体的には、無菌の水溶液、または油性溶液、あるいは懸濁液中で調製してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤では、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子、オリゴ糖鎖部位を有する物質、およびオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体は、座薬等の形態で直腸投与されるものであってもよい。好適な座薬は、活性物質を常温では固体で直腸では融解する非刺激性の賦形剤と混合することによって調製してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、さらに、あまり一般的ではないものの、吸入スプレーや軟膏等の経皮投与用形態を有するものであってもよい。例えば、吸入スプレーは、溶液、懸濁液または乳状液とし、二酸化炭素や一酸化二窒素等の低毒性の吸入可能な噴霧剤を含んでもよい。一方、経皮投与用としては、クリーム、軟膏、ジェル、ゼリー、チンキ、懸濁液または乳状液の形態が好ましく挙げられる。これらは、薬学認容性の結合剤、希釈剤、崩壊剤、保存剤、潤滑剤、分散剤、懸濁剤および/または乳化剤を含有してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、一般的に知られる各種の方法によって製造されてもよい。例えば、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子あるいはオリゴ糖鎖部位を有する分子、さらには、オリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を1種以上の好適なキャリア、補助剤、希釈剤または賦形剤と共にすりつぶす、粉砕する、ブレンドする、分散する、溶解する、懸濁する、混合する、混和する、組合せる、乳化する、またはホモジネートすることによって調製される。またこれらのステップを1以上組合せて製造されるものであってもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤において、有効成分の含有量はとくに限定されない。例えば、有効成分としてのオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する分子、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体の濃度が500〜1000mg/人/日となるように配合することができる。もちろん、患者への投与量は、患者の年齢、性別、体重などを考慮して主治医の診断により患者の症状、状態に応じて決定されるべきものである。好ましくは、患者の体重に応じて10〜100mg/kgの範囲で投与することが望ましい。
以上のとおりのこの出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、デング熱症状の発症を抑制する目的で、デング熱ウィルスに感染した恐れのある患者に対して、感染初期の段階で投与できる。また、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤を、デング熱症状を示す患者に投与すれば、デング熱の治療も可能となる。さらに、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、デング熱流行地域の住民や流行地域への渡航者に対して投与することにより、デング熱ウィルスへの感染予防剤としても効果的に作用する。
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
すなわち、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
で表されるオリゴ糖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有するものである。このような糖質分子は、多糖類に限定されず、糖脂質や糖タンパクであってもよい。
また、このような糖質分子において、Hex1およびHex2はヘキソースを表し、具体的には、グルコース(Glc)、フルクトース(Fru)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)が例示される。中でも、Hex1としては、Glcが好ましく、Hex2としては、GalまたはManが好ましい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、また、有効成分として、上記のオリゴ糖部位が、例えば炭化水素基、合成高分子、脂質、タンパク質等の合成化合物や天然化合物に結合した物質、すなわち、
(X)n−R (II)
(ただし、Xは、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を表し;Rは水素原子、S、N、O、P原子を有する置換基、炭化水素基、脂質、タンパク質、および合成高分子からなる群より選択される基質であり、いずれの場合にも置換基を有していてよく;nはRに結合するオリゴ糖の数を表す1以上の整数である)で表される物質を有効成分として含有するものであってもよい。
このとき、Hex1およびHex2としては、前記のとおりのヘキソースが例示される。また、Rとしては、H、置換基を有していてもよいC1−20アシル基、置換基を有していてもよいC1−20アルキル基、ラクチル基、アミノ基、ヒドロキシル基、硫酸基、リン酸基等の置換基や、ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸等の高分子鎖、デンドリマー、ポリペプチド、あるいはグリセリン、セラミド等の脂質、アルブミン、フェツイン、トランスフェリン等の血清糖タンパク質、DNAなどが好ましく例示される。中でも、ヒトに対する毒性が低いグリセリン、セラミド等の脂質、あるいは血清糖タンパク質をRとして用いることにより、安定で扱いの容易なデング熱ウィルス感染阻害剤の有効成分を得ることができる。なお、RはβGluのC1位に結合していればよく、Rのどの位置で、どのような形態でβGluのC1炭素と結合していてもよい。
上記式(II)の物質は、例えば、Kitov et al.やNishikawa et al.の報告にあるような、一つのRに対して複数(n個)のオリゴ糖鎖が結合した構造を有するものであってもよい(Kitov,P.I.et al.,Nature 2000,Vol.403,p.669−672;Nishikawa K.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.1999,p.7669−7674)。
さらに、本発明者らの研究によれば、式(I)で表されるオリゴ糖鎖の非還元末端に、Hex3で表されるヘキソースまたはHex3NAcで表されるアミノヘキソースのいずれかがβ1−4結合しているとき、オリゴ糖鎖がとくに高いデングウィルス結合性を示し、デング熱ウィルス感染阻害剤の効果が高まることが明らかになっている。したがって、式(I)で表されるオリゴ糖鎖は
であることが好ましい。このとき、Hex3としては、グルコース(Glc)、フルクトース(Fru)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)等が例示される。また、Hex3NAcとしては、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルマンノサミシ(ManNAc)等が例示される。中でも、Hex3としては、Galが、また、Hex3NAcとしては、GalNAcが好ましい。
以上のとおりのデング熱ウィルス感染阻害剤において、式(I)で表されるオリゴ糖鎖としてとくに好ましいものを挙げるならば、
で表されるパラグロボシド、
および
で表されるオリゴ糖鎖が例示される。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、発明者らにより明らかにされた、デングウィルスが前記の式で表される特定のオリゴ糖鎖を特異的に認識・結合するという性質を利用するものである。したがって、これらのオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を公知の生物学的手法により製造すれば、このようなモノクローナル抗体もまた、デング熱ウィルス感染阻害剤の有効成分として作用する。
また、以上のとおりのデング熱ウィルス感染阻害剤において、有効成分として用いられるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖に対するモノクローナル抗体以外の成分の組成や、医薬品としての形態はとくに限定されない。オリゴ糖へのデングウィルスの結合を阻害しない限り、各種の成分を含有していてもよく、その投与形態もとくに限定されない。具体的には、錠剤、粒・散剤、シロップ剤等の形態での経口投与、注射剤等の形態での非経口投与、座薬等の形態での直腸投与など患者の症状や状態に応じた投与方法を選択することができる。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤を経口投与する場合には、錠剤、トローチ、カプセル、霊薬、粉末、顆粒、懸濁液、乳液、およびシロップ等の形態とすることができる。また、被覆粒子、多層錠剤あるいは微小顆粒等として、緩慢放出または遅延放出される形態としてもよい。これらの形態においては、デング熱ウィルス感染阻害剤は、オリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体とともに、薬学認容性の結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、人工香味料、被覆剤、保存剤、潤滑剤および/または効果遅延剤等を含有していてもよい。
非経口投与では、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する物質、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体は、毒性を有さず、非経口的に認容される希釈剤や溶媒、具体的には、無菌の水溶液、または油性溶液、あるいは懸濁液中で調製してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤では、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子、オリゴ糖鎖部位を有する物質、およびオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体は、座薬等の形態で直腸投与されるものであってもよい。好適な座薬は、活性物質を常温では固体で直腸では融解する非刺激性の賦形剤と混合することによって調製してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、さらに、あまり一般的ではないものの、吸入スプレーや軟膏等の経皮投与用形態を有するものであってもよい。例えば、吸入スプレーは、溶液、懸濁液または乳状液とし、二酸化炭素や一酸化二窒素等の低毒性の吸入可能な噴霧剤を含んでもよい。一方、経皮投与用としては、クリーム、軟膏、ジェル、ゼリー、チンキ、懸濁液または乳状液の形態が好ましく挙げられる。これらは、薬学認容性の結合剤、希釈剤、崩壊剤、保存剤、潤滑剤、分散剤、懸濁剤および/または乳化剤を含有してもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、一般的に知られる各種の方法によって製造されてもよい。例えば、有効成分であるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子あるいはオリゴ糖鎖部位を有する分子、さらには、オリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体を1種以上の好適なキャリア、補助剤、希釈剤または賦形剤と共にすりつぶす、粉砕する、ブレンドする、分散する、溶解する、懸濁する、混合する、混和する、組合せる、乳化する、またはホモジネートすることによって調製される。またこれらのステップを1以上組合せて製造されるものであってもよい。
この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤において、有効成分の含有量はとくに限定されない。例えば、有効成分としてのオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子やオリゴ糖鎖部位を有する分子、あるいはオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体の濃度が500〜1000mg/人/日となるように配合することができる。もちろん、患者への投与量は、患者の年齢、性別、体重などを考慮して主治医の診断により患者の症状、状態に応じて決定されるべきものである。好ましくは、患者の体重に応じて10〜100mg/kgの範囲で投与することが望ましい。
以上のとおりのこの出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、デング熱症状の発症を抑制する目的で、デング熱ウィルスに感染した恐れのある患者に対して、感染初期の段階で投与できる。また、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤を、デング熱症状を示す患者に投与すれば、デング熱の治療も可能となる。さらに、この出願の発明のデング熱ウィルス感染阻害剤は、デング熱流行地域の住民や流行地域への渡航者に対して投与することにより、デング熱ウィルスへの感染予防剤としても効果的に作用する。
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
<実施例1> K562細胞(ヒト骨髄性白血病細胞株)からのDengue virus結合性脂質の単離・精製
(1)中性糖脂質の単離・精製
K562細胞(T−225フラスコ26本分)に冷PBS(−)0.5mlを加え懸濁し、4℃で遠心した。得られたペレットに5mlの精製水を加えてよく懸濁し、次にCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を100ml加え、攪拌しながら1時間、総脂質の抽出を行った。抽出液をろ過し、残渣に対して同じ処理を再度行い、得られたろ液をあわせてナス型フラスコに移し、溶媒を除去した。乾固した総脂質画分にMeOH30mlを加え、超音波処理を5分間行った後、10N NaOH300μlを加え37℃で一晩インキュベートした。
反応終了後、1N AcOH3mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。乾固した総脂質画分に精製水5mlを加えてよく懸濁し、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、あわせた懸濁液を4℃で一晩透析した。凍結乾燥を行い、これを総脂質画分とした。
得られた総脂質画分をCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)5mlに溶かし、よく懸濁した後、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、あわせた懸濁液を予め同じ溶媒で平衡化したDEAE−Sephadex A−25(酢酸型、ゲル容積100ml)カラムにアプライした。ゲル容積の10倍量のCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を流し、この画分を集めて中性糖脂質画分とし、溶媒を除去した。
中性糖脂質画分に2mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加え、よく懸濁した。
(a)中性糖脂質画分のTLC分析
得られた中性糖脂質画分(5μl)、phosphatidylethanolamine(PE)(1μl)、LacCer(Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(1μl)、Ceramide monohexioside(CMH:Glcβ1−1’Cer)(2μl)、Ceramide trihexoside(CTH:Galα1−3Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、phosphatidylcholine(PC)(2μl)、phosphatidylserine(PS)(2μl)、phosphatidylinositol(PI,ウシ肝臓由来,SIGMA社)(2μl)をHPTLC上にスポットし、一度アセトンで展開し、風乾した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(60/35/8,by vol.)で展開し、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、1枚はDittmer試薬を噴霧し発色を行った。
(b)中性糖脂質画分の再アルカリ加水分解
中性糖脂質画分の溶媒を除去し、MeOH5mlを加えてよく懸濁した後、超音波処理を5分間行った。10N NaOH50μlを加え、37℃、3時間インキュベートした。反応終了後、0.1N AcOH5mlを加えて、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。これに精製水5mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、合わせた懸濁液を4℃で一晩透析し、凍結乾燥した。
(c)phospholipase C処理
中性糖脂質画分にはリン脂質が含まれていると考えられるため、PCが完全に加水分解される条件でphospholipase C処理を行った。
まず、中性糖脂質画分(50μl)とpositive controlとしてPC(5μl)をそれぞれ2本の試験管に取り、窒素気流下で蒸発固化し、ether/ethanol(98/2,by vol.)を100μlずつ加えた。1分間の超音波処理を行い、各試料の1本の試験管にはCaCl2含有0.1M Tris buffer(Tris(hydroxylmethyl)aminomethane)(pH7.2)で溶解したphopholipase C(Clostridium perfingens由来,SIGMA社)(0.1mg/100μl)溶液を、残りの1本には、CaCl2含有0.1M Tris buffer(pH7.2)のみを100μlずつ加え、よく懸濁した後、25℃の水浴にて3時間反応させた。
反応終了後、溶媒を窒素気流下で除去し、生成物を逆相カラムで脱塩した。脱塩画分を窒素気流下で蒸発固化し、CHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を、中性糖脂質画分には30μl、PCには15μl加え、よく懸濁した後、TLCプレート(Polygram Sil G)上にスポットした。TLCプレートを一度アセトンで展開し、風乾した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、1枚はDittmer試薬を噴霧し発色を行った。
また、virus−binding assayを行った。
図1に結果を示した。Phospholipase C処理によるvirus結合性の変化は認められなかった。Phospholipase C処理後においても、まだPC以外のリン脂質のバンドがいくつか観察されたことから、イアトロビーズカラムを用いて中性糖脂質画分をさらに4つの画分に精製した。
中性糖脂質画分全量をphopholipase C処理し、反応液全量を4℃で一晩透析することで脱塩を行った。乾燥標品に対し、CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)を1ml加え、懸濁し、超音波処理を5分間行った後、これをイアトロビーズカラムにかけ、▲1▼CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)、▲2▼CHCl3/MeOH/H2O(65/25/4,by vol.)、▲3▼CHCl3/MeOH/H2O(60/35/8,by vol.)、▲4▼CHCl3/MeOH/H2O(50/40/10,by vol.)の4種の溶媒で連続して溶出し、中性糖脂質画分をさらに4つの画分に分けた。(各々、中性糖脂質画分I〜IVとした。)
これらを窒素気流下で蒸発固化し、それぞれに1mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加え、うち5μlずつをTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットした。プレートをアセトンでもう一度展開し、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬、Dittmer試薬を噴霧し発色した。
(d)中性糖脂質画分I〜IVの化学分析およびvirus結合性の検討
前記(c)で得られた中性糖脂質画分I〜IV(10μlずつ)、対照標品として、LacCer(1μl)、CTH(2μl)、paragloboside(PG:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、GA1(Galβ1−3GalNAcβ1−4Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、globoside(GalNAcβ1−3Galα1−4Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色した。中性糖脂質画分I〜IVについて、前記の方法によりTLC/virus−binding assayを行った。
結果を図2に示した。
図2より、中性糖脂質画分I〜IVのうち、中性糖脂質画分IIはvirusと強い結合性を示し、CTH、PG及びglobosideと呼ばれる中性糖脂質と非常に近い分子構造を有していることが示唆された。
(e)TLCプレートからの目的糖脂質のかきとり・抽出
そこで、virusとの結合性を示す部分をTLCプレートからかきとり、抽出を行い、目的物質を含む中性糖脂質画分を得た。
TLCプレート(Polygram Sil G)を前処理としてCHCl3/MeOH/H2O(50/40/10,by vol.)で展開、風乾しておいた。中性糖脂質画分IIを窒素気流下で蒸発固化し、CHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を0.1ml加え、その全量を1μl/mm laneとなるようにプレート上にスポットし、アセトンで一度展開後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開した。
TLCの両端を切り取り、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色させた後、目的糖脂質のバンドを確認した。
残ったプレート上のバンドに対応する部分をはさみで切り取り、切り取ったTLCプレートからシリカゲルをかきとり、これにCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を25ml加え、1時間攪拌し、抽出を行った。抽出液を綿栓ろ過し、ろ液から溶媒を除去した。これにCHCl3/MeOH(8/2,by vol.)1mlを加え、超音波処理を行い、パスツールピペットに詰めたイアトロビーズカラム(ゲル容量1ml)にアプライした。
CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)を15mlカラムに流し、この画分を集めた。(中性糖脂質画分II−1)
次に、溶出溶媒をCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)に変え、20mlカラムに流した。(中性糖脂質画分II−2)
それぞれの画分から溶媒を除去した後、0.5mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加えた。5μlずつTLCプレートにスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱発色した。このとき対照標品として、PG、globoside、CTHも2μlずつTLC上にスポットした。
(2)中性糖脂質画分に対するvirus結合性の解析
前記(1)の方法により得られた中性糖脂質画分II−2(10μl)、PI(10μl)、PG(2μl)、globoside(1μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色させた。TLC/virus−binding assayを前記の方法により行った。
結果を図3に示した。
図3より、中性糖脂質画分II−2には、TLC上でPGと非常に近い位置に展開される糖脂質が含まれていること、さらにはこの糖脂質がDengue virusと強い結合性を示すことが確認された。また、対照標品であるPGに対しても、同様のvirus結合性が観察された。
(3)中性糖脂質画分に含まれる結合性脂質の構造解析
以上より、Dengue virusと結合性を示す糖鎖分子がPGと非常に近い糖鎖構造をしていることが示唆された。そこで、抗PGモノクローナル抗体を用いて免疫化学分析を行った。
(a)免疫化学的分析
中性糖脂質画分II−2(10μl)およびPG(2μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトン、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で連続的に展開した。TLCプレートを1%BSA−PBS(bovine serum albumin−phosphate buffered saline)溶液中にて4℃で一晩ブロッキングした。1%BSA含有PBSで5000倍希釈した抗PGモノクローナル抗体(クローンH11)(5ml)と1時間反応させた後、0.05%Tween20を含むPBS(10ml)で3分間洗浄し、これを5回繰り返した。洗浄終了後、1%BSA含有PBSで5000倍希釈したHRP(horseradish perosidase)標識ヤギ抗マウスIgG+IgM(5ml)(American Qualex Antibodies社)と1時間反応させた。プレートをPBS(−)で3分間洗浄し、これを5回繰り返し行った。最後に発色基質溶液〔0.1M citrate buffer pH6.0(5ml),0.11M 4−chloro−1−naphthol in CH3CN(100μl),0.06M DEPDA in CH3CN(100μl),30%H2O2(10μl)〕と反応させ、スポットを検出した。
結果を図4に示した。
図4より、中性糖脂質画分II−2には、PGと同一の糖脂質が含まれていることが判明した。
以上より、K562細胞中のデングウィルス結合性脂質は、次式
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−1Ceramide
(ただしGal:Galactose、GlcNAc:N−acetylglucosamine、Glc:glucose)で表されるパラグロボシド(PG)糖鎖構造を有する中性糖脂質であることが確認された。
<実施例2> Flow cytometerを用いたPGによるDengue virusのK562細胞表面への結合阻害効果の解析
K562細胞をコンフルエントまで培養した後、2×105cells/0.1mlになるようにマイクロチューブに分取した。これを4℃、10,000rpmで2分間遠心後、得られた細胞のペレットを0.1%BSA含有PBS1mlで1回洗浄した。Dengue virus液(2000units/ml)とPG(0,100,200,500μM)あるいは対照糖脂質であるGA1(500μM)を0.1%BSA含有PBS中で4℃、1時間プレインキュベーションした後、それぞれK562細胞に100μlずつ加え、4℃で1時間、細胞へ結合させた。なお、virus(−)として、0.1%BSA含有PBSのみを同量加えた。反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、一次抗体としてヒト抗flavivirus抗血清(ロット#1)を200倍希釈して100μlずつ加え、よく懸濁した後4℃で30分間反応させた。冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、二次抗体としてFITC標識ヤギ抗ヒトIgG(Zymed社)を50倍希釈して、100μlずつ加え、遮光した後、4℃で30分間反応させた。反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、得られたペレットに対して0.5mlの冷PBS(−)を加え、よく懸濁し、フローサイトメーター(Epics,U.S.A.)で測定した。
PGによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害を調べ、PG濃度依存性を図5に示した。
図5より、PGの濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への結合が阻害されることが明らかになった。対照糖脂質であるGA1は中性の4糖である点、さらに分子内の非還元末端にガラクトース残基を有する点から、PGと非常に類似した物性であった。しかし、GA1は500μMの濃度においてもデングウィルスのK562細胞への結合を阻害できなかった。
以上より、PGは、デングウィルスと特異的に結合し、この特異的結合によりウィルスの宿主細胞表面への吸着が阻害されていることが明らかになった。
<実施例3> パラグロボシドによるDengue virusのK562細胞表面への結合阻害活性の検討
(1)Dengue virus濃度
K562細胞をコンフルエントまで培養した後、4×105cells/0.1mlになるようにマイクロチューブに分取した。これを4℃、3,500rpmで3分間遠心後、得られた細胞のペレットを0.1%BSA含有PBS1mlで1回洗浄した。さらに、4℃、3,500rpmで3分遠心した後、Dengue virus原液を、それぞれ0.1%BSA含有PBSで希釈して5000units/ml,2000units/ml,1000units/ml,500units/mlとした後、各々をK562細胞に100μlずつ加え、4℃で1時間反応させた。
なお、virus(−)として、0.1%BSA含有PBSのみを同量加えたものを用いた。
反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、一次抗体としてヒト抗flavivirus抗血清(ロット#1)を200倍希釈して100μlずつ加え、よく懸濁した後4℃で30分間反応させた。冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、二次抗体としてFITC標準ヤギ抗ヒトIgG(Zymed社)を50倍希釈して、100μlずつ加え、遮光した後4℃で30分間反応させた。
反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、得られたペレットに対して0.5mlの冷PBS(−)を加え、よく懸濁し、フローサイトメター(Epics,U.S.A.)で測定した。
以後、virusの濃度は、2000units/mlとした。
PGによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害を調べ、PG濃度依存性を図6に示した。
(2)一次抗体希釈濃度の検討
(1)より、Dengue virus濃度を1000units/mlに設定し、binding assayを行った。ここでは冷PBS(−)で希釈し、一次抗体の濃度を200倍、400倍、800倍、1600倍とした。なお、virus(−)には200倍希釈した一次抗体を用いた。実験方法は(1)に準じた。
以後、一次抗体は、200倍希釈とした。
(3)パラグロボシドによるvirus結合性に与える影響
K562細胞(1×105 cell)を24well培養用プレートに播種し、RPMI培地で全量1mlにした。パラグロボシドの最終濃度が0μM、100μM、200μM、500μMになるように希釈して加え、37℃で1時間反応させた。これを低速遠心し、得られたペレットに0.1%BSA含有冷PBSを1ml加えた。マイクロチューブに移し替え、(1)の方法によりvirus結合性を評価した。
図6より、デングウィルスとパラグロボシドを予めインキュベートしておくと、パラグロボシドの濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への結合阻害が起きることが明確に観察された。
また、4糖構造の糖鎖を有する構造類似中性糖脂質であるGA1(アシアロGM1)(Galβ1−3GalNAcβ1−4Galβ1−4Glcβ1−1Cer)を陰性対照として同様の実験を行ったところ、デングウィルスの細胞表面の結合には全く影響しなかった。
したがって、デングウィルス結合阻害性がパラグロボシド糖鎖構造に特異的な特性であることが確認された。
以上より、K562細胞表面に存在するパラグロボシドは、デング熱ウィルスのレセプターそのもの、あるいはその一部として機能していることが示された。
<実施例4> 蚊由来培養細胞株からのDengue virus結合性脂質の単離・精製および同定
(1)C6/36細胞の培養
Dengue virusの標的細胞として、このウィルスに対して感受性を示し、さらに高いウィルス産生能を有するAedes albopictus由来C6/36細胞株を用いた。C6/36細胞は、10%非働化ウシ胎児血清、および1%非必須アミノ酸含有MEM培地中、28℃で培養した。
細胞株の継代は1/10の前培養液に対して、新鮮MEM培地を加え、全量20mlとし、T−75フラスコ中に播種した。
(2)総脂質の抽出
15L培養液からC6/36細胞をハーベストした。得られた細胞のペレットにCHCl3/MeOH/H2O(10/10/1,by vol.)を1L加え、よく懸濁した後、24時間抽出を行った。
これをろ過し、残渣に対して同じ処理を再度行い、得られた上清を合わせてナス型フラスコに移し、溶媒除去した。さらにMeOHを100ml加え、よく懸濁した後、超音波処理を10分間行い、10N NaOH1mlを加えて37℃で15時間インキュベートした。
反応後、10N AcOH1mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。これに蒸留水20mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を30分間行った。同様の処理を再度行い、合わせた懸濁液を4℃で46時間透析し、凍結乾燥し、これを総脂質画分とした。
(3)イオン交換カラムクロマトグラフィー
得られた総脂質画分にCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)100mlを加え、よく懸濁した後、超音波処理を10分間行った。これを予め同じ溶媒で平衡化したDEAE−Sephadex A−25(酢酸型、ゲル容積400ml)カラムにアプライした。ゲル容積の47.5倍量のCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を流し、この画分を集めて中性糖脂質画分とした。
(4)中性糖脂質画分の精製
中性糖脂質画分を3mlのCHCl3/MeOH(8/2,by vol.)に溶解した。この画分1mlを同じ溶媒で予め平衡かしたSenshu Pak AQUASIL−SS−3251カラム(8φ×250mm)を装着したHPLCシステム(PU−2080Plus、日本分光)にインジョクションした。同溶媒(100%)から同溶媒:CHCl3/MeOH/H2O(60/35/8,by vol.)(30/70,by vol.)への直線濃度勾配にて総溶媒量100mlを流し、カラム溶出液を2mlずつ分取した。各各文をHPTLCに2μlずつスポットし、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(60/35/8,by vol.)でプレートを展開し、Orcinol試薬を噴霧した110℃に加熱し発色を行い、糖脂質の溶出を確認した。
(5)中性脂質画分とDengue virusとの反応性
3枚のTLCプレート(Polygram Sil G,Marchery Nagel)上に、中性糖脂質画分を1μlずつスポットし、風乾した後、nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、風乾させ、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し発色させた。残り2枚には、PBSを加え、ゆっくり浸透させた後、吸引し、Solution A(1%卵白アルブミン、1%polyvinylpyrrolidone含有PBS)で室温にて1時間ブロッキングした。
反応後、virus(+)にはSolution Aを用いて1000units/mlに調製したDengue virus(D2Th7株)懸濁液を3ml加え、virus(−)にはSolution Aのみを同量加えて4℃に一晩静置した。プレートをPBS(−)で3分間、3回洗浄した。
次にSolution Aで1000倍に希釈したヒト抗flavivirus抗血清を2.5ml加えて室温で1時間反応させた。プレートをPBS(−)で3分間、3回洗浄した。最後に2.5mlの発色基質溶液(0.1M citrate buffer pH6.0(2.5ml),0.11M 4−chloro−1−naphthol in CH3CN(50μl),0.06M DEPDA in CH3CN(50μl),30%H2O2(5μl))と反応させ、結合したウィルス粒子を検出した。なお、Dengue virus(D2Th7株)およびヒト抗flavivirus抗血清は、長崎大学熱帯医学研究所、五十嵐章教授、森田公一教授よりご恵与いただいた。
(6)精製糖脂質のTLC分析
単離された中性糖脂質1.5〜2μlずつをHPTLC上にスポットした。nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色を行った。
また、各画分を0.5〜1μlずつ3枚のTLCプレート(Polygram Sil G,)にスポットし、一度アセトンで展開して風乾した後、nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、風乾させた。1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し発色した。残り2枚は、(5)の方法でvirus binding assayを行った。
次に、デングウィルス高感受性細胞株である蚊由来C6/36細胞より、デングウィルス結合脂質の探索を行った。
デングウィルス結合脂質は、K562細胞の場合と同様に陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる分画で中性糖脂質画分に溶出された。
この画分から結合性脂質を単離するためにシリカカラムを装着したHPLCを行った。その溶出パターンをTLCで分析した結果を図7に示した。図中矢印で示した2種類の糖脂質が結合性を有していた。今回行ったHPLCの条件でこれら2種類の糖脂質が完全に単離された。
そこで、精製糖脂質とデングウィルスとの結合性を解析した結果を図8に示した。Fraction13、14および15に含まれていた精製糖脂質が非常に強力にウィルスと結合することが示された。昆虫由来の標準糖脂質との構造比較から、Fraction13、14に含まれている糖脂質の構造がGlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1−1Cer(ただし、Man:mannose;Cer:ceramide)であり、一方、Fraction15に含まれている糖脂質の構造は、全く新規であり、Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1−1Cerと推定された。
K562細胞から結合性脂質として単離されたパラグロボシドと、以上の実施例より単離された糖脂質の構造をまとめると、
となった。
したがって、これらの構造から、デングウィルスと結合するために必要な最小糖鎖構造は、GlcNAcβ1−3Man(またはGal)β1−4Glcβ1−であり、さらに、非還元末端にGalがβ1−4結合することによりその結合性が高められるものと示唆された。
<実施例5> パラグロボシド糖鎖によるDengue virusのK562細胞への感染阻害活性の検討
以上の実施例において使用されたパラグロボシド糖鎖は、いずれもセラミドに結合した物質であった。
そこで、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスの結合阻害性が、パラグロボシドに対する結合基質に依存せず、セラミド以外の結合基質でも同様の効果が得られることを確認するために、末端に基質を有さないパラグロボシド糖鎖のみについて、そのウィルス結合阻害性を試験した。
(1)パラグロボシド糖鎖分子および他のオリゴ糖の調製
以下のオリゴ糖を用いた。
いずれも、滅菌PBS(−)で1mMのストック溶液として調製した。これを適宜希釈して感染阻害実験に使用した。
(2)デングウィルス溶液の調製
最終ウィルス量が3×105 FFU(focus forming unit)/sampleとなるように0.2%BSA含有血清非添加RPMI培地(SF−RPMI)で希釈し、よく攪拌した後、氷上においた。
(3)オリゴ糖によるデングウィルスの前処理
前記(2)で調製したデングウィルス溶液630μl(1サンプルあたりのウィルス容量)に対して等量の希釈したオリゴ糖含有溶液を加え、よく攪拌した後、28℃で30分間インキュベートした。これを前処理済みウィルス溶液とした。
また、陰性対照としてPBS(−)をウィルス溶液と混合したものを用いた。
(4)ウィルス感染実験
K562細胞をSF−RPMIで1回洗浄した後、0.1%BSA−SF−RPMIで1×106cells/mlに調製した。この細胞懸濁液を100μlずつチューブに入れた。これに前処理済みウィルス溶液を加え、軽く攪拌した後、37℃で2時間細胞への感染を行った。この間、20分毎にチューブを軽く攪拌した。3,400rpmで3分間遠心した後、ウィルス溶液を除去し、細胞を0.1%BSA−SF−RPMIで3回洗浄した。細胞のペレットに2%血清含有RPMI培地(2%FCS−RPMI)を2ml加え、懸濁し、35mm dishに移して37℃で培養した。
一定時間培養後に細胞を回収し、ウィルス抗原の検出を行った。
(5)ウィルス抗原の検出(ウィルス感染価の測定)
回収した細胞を新しいチューブに移し、PBS(−)で1回洗浄した。細胞のペレットに4%paraformaldehyde/PBS(固定液)を200〜600μl加え、4℃で10分間固定操作を行った。
PBS(−)を加えて全量1mlとした後、2000rpmで5分間遠心した。同様の操作をもう1度行った後、細胞をPBS(−)1mlに懸濁して4℃で保存した(固定化)。
固定化細胞にperm solution(IC PermTM Cell Permeabilization buffer,BIOSOURCE International)を700μl加え、ボルテックスした後、室温に4分間置いた。2500rpmで3分間遠心した後、perm solutionをチューブに40μl残して上清を除去した。さらに2500rpmで3分間遠心した後、完全にperm solutionを除去した。細胞のペレットにAlexa標識マウス抗フラビウィルスモノクローナル抗体(クローン6B6C−1)を加え、よく懸濁した後、氷上にて遮光して30分間インキュベートした。2500rpmで3分間遠心した後、上清を除去し、PBS(−)1mlに細胞を懸濁し、氷上に5分間置いた(洗浄)。
同様の操作をさらに2回行い、最後に細胞のペレットに500〜1000mlのPBS(−)を加え、よく懸濁した後、フローサイトメーターで抗原陽性細胞の検出を行った。
結果を図9に示した。結合阻害と同様に、パラグロボシド糖鎖はその濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への感染を阻害した。したがって、パラグロボシド糖鎖や昆虫由来の類似糖鎖は、強力なデングウィルス感染阻害剤として効果的であることが示された。さらに、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスの結合阻害性が結合基質に依存しないことも確認された。
(1)中性糖脂質の単離・精製
K562細胞(T−225フラスコ26本分)に冷PBS(−)0.5mlを加え懸濁し、4℃で遠心した。得られたペレットに5mlの精製水を加えてよく懸濁し、次にCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を100ml加え、攪拌しながら1時間、総脂質の抽出を行った。抽出液をろ過し、残渣に対して同じ処理を再度行い、得られたろ液をあわせてナス型フラスコに移し、溶媒を除去した。乾固した総脂質画分にMeOH30mlを加え、超音波処理を5分間行った後、10N NaOH300μlを加え37℃で一晩インキュベートした。
反応終了後、1N AcOH3mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。乾固した総脂質画分に精製水5mlを加えてよく懸濁し、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、あわせた懸濁液を4℃で一晩透析した。凍結乾燥を行い、これを総脂質画分とした。
得られた総脂質画分をCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)5mlに溶かし、よく懸濁した後、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、あわせた懸濁液を予め同じ溶媒で平衡化したDEAE−Sephadex A−25(酢酸型、ゲル容積100ml)カラムにアプライした。ゲル容積の10倍量のCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を流し、この画分を集めて中性糖脂質画分とし、溶媒を除去した。
中性糖脂質画分に2mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加え、よく懸濁した。
(a)中性糖脂質画分のTLC分析
得られた中性糖脂質画分(5μl)、phosphatidylethanolamine(PE)(1μl)、LacCer(Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(1μl)、Ceramide monohexioside(CMH:Glcβ1−1’Cer)(2μl)、Ceramide trihexoside(CTH:Galα1−3Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、phosphatidylcholine(PC)(2μl)、phosphatidylserine(PS)(2μl)、phosphatidylinositol(PI,ウシ肝臓由来,SIGMA社)(2μl)をHPTLC上にスポットし、一度アセトンで展開し、風乾した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(60/35/8,by vol.)で展開し、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、1枚はDittmer試薬を噴霧し発色を行った。
(b)中性糖脂質画分の再アルカリ加水分解
中性糖脂質画分の溶媒を除去し、MeOH5mlを加えてよく懸濁した後、超音波処理を5分間行った。10N NaOH50μlを加え、37℃、3時間インキュベートした。反応終了後、0.1N AcOH5mlを加えて、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。これに精製水5mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行った。同じ処理を再度行い、合わせた懸濁液を4℃で一晩透析し、凍結乾燥した。
(c)phospholipase C処理
中性糖脂質画分にはリン脂質が含まれていると考えられるため、PCが完全に加水分解される条件でphospholipase C処理を行った。
まず、中性糖脂質画分(50μl)とpositive controlとしてPC(5μl)をそれぞれ2本の試験管に取り、窒素気流下で蒸発固化し、ether/ethanol(98/2,by vol.)を100μlずつ加えた。1分間の超音波処理を行い、各試料の1本の試験管にはCaCl2含有0.1M Tris buffer(Tris(hydroxylmethyl)aminomethane)(pH7.2)で溶解したphopholipase C(Clostridium perfingens由来,SIGMA社)(0.1mg/100μl)溶液を、残りの1本には、CaCl2含有0.1M Tris buffer(pH7.2)のみを100μlずつ加え、よく懸濁した後、25℃の水浴にて3時間反応させた。
反応終了後、溶媒を窒素気流下で除去し、生成物を逆相カラムで脱塩した。脱塩画分を窒素気流下で蒸発固化し、CHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を、中性糖脂質画分には30μl、PCには15μl加え、よく懸濁した後、TLCプレート(Polygram Sil G)上にスポットした。TLCプレートを一度アセトンで展開し、風乾した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、1枚はDittmer試薬を噴霧し発色を行った。
また、virus−binding assayを行った。
図1に結果を示した。Phospholipase C処理によるvirus結合性の変化は認められなかった。Phospholipase C処理後においても、まだPC以外のリン脂質のバンドがいくつか観察されたことから、イアトロビーズカラムを用いて中性糖脂質画分をさらに4つの画分に精製した。
中性糖脂質画分全量をphopholipase C処理し、反応液全量を4℃で一晩透析することで脱塩を行った。乾燥標品に対し、CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)を1ml加え、懸濁し、超音波処理を5分間行った後、これをイアトロビーズカラムにかけ、▲1▼CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)、▲2▼CHCl3/MeOH/H2O(65/25/4,by vol.)、▲3▼CHCl3/MeOH/H2O(60/35/8,by vol.)、▲4▼CHCl3/MeOH/H2O(50/40/10,by vol.)の4種の溶媒で連続して溶出し、中性糖脂質画分をさらに4つの画分に分けた。(各々、中性糖脂質画分I〜IVとした。)
これらを窒素気流下で蒸発固化し、それぞれに1mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加え、うち5μlずつをTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットした。プレートをアセトンでもう一度展開し、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬、Dittmer試薬を噴霧し発色した。
(d)中性糖脂質画分I〜IVの化学分析およびvirus結合性の検討
前記(c)で得られた中性糖脂質画分I〜IV(10μlずつ)、対照標品として、LacCer(1μl)、CTH(2μl)、paragloboside(PG:Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、GA1(Galβ1−3GalNAcβ1−4Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)、globoside(GalNAcβ1−3Galα1−4Galβ1−4Glcβ1−1’Cer)(2μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色した。中性糖脂質画分I〜IVについて、前記の方法によりTLC/virus−binding assayを行った。
結果を図2に示した。
図2より、中性糖脂質画分I〜IVのうち、中性糖脂質画分IIはvirusと強い結合性を示し、CTH、PG及びglobosideと呼ばれる中性糖脂質と非常に近い分子構造を有していることが示唆された。
(e)TLCプレートからの目的糖脂質のかきとり・抽出
そこで、virusとの結合性を示す部分をTLCプレートからかきとり、抽出を行い、目的物質を含む中性糖脂質画分を得た。
TLCプレート(Polygram Sil G)を前処理としてCHCl3/MeOH/H2O(50/40/10,by vol.)で展開、風乾しておいた。中性糖脂質画分IIを窒素気流下で蒸発固化し、CHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を0.1ml加え、その全量を1μl/mm laneとなるようにプレート上にスポットし、アセトンで一度展開後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開した。
TLCの両端を切り取り、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色させた後、目的糖脂質のバンドを確認した。
残ったプレート上のバンドに対応する部分をはさみで切り取り、切り取ったTLCプレートからシリカゲルをかきとり、これにCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を25ml加え、1時間攪拌し、抽出を行った。抽出液を綿栓ろ過し、ろ液から溶媒を除去した。これにCHCl3/MeOH(8/2,by vol.)1mlを加え、超音波処理を行い、パスツールピペットに詰めたイアトロビーズカラム(ゲル容量1ml)にアプライした。
CHCl3/MeOH(8/2,by vol.)を15mlカラムに流し、この画分を集めた。(中性糖脂質画分II−1)
次に、溶出溶媒をCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)に変え、20mlカラムに流した。(中性糖脂質画分II−2)
それぞれの画分から溶媒を除去した後、0.5mlのCHCl3/MeOH(1/1,by vol.)を加えた。5μlずつTLCプレートにスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱発色した。このとき対照標品として、PG、globoside、CTHも2μlずつTLC上にスポットした。
(2)中性糖脂質画分に対するvirus結合性の解析
前記(1)の方法により得られた中性糖脂質画分II−2(10μl)、PI(10μl)、PG(2μl)、globoside(1μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトンで一度展開した後、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色させた。TLC/virus−binding assayを前記の方法により行った。
結果を図3に示した。
図3より、中性糖脂質画分II−2には、TLC上でPGと非常に近い位置に展開される糖脂質が含まれていること、さらにはこの糖脂質がDengue virusと強い結合性を示すことが確認された。また、対照標品であるPGに対しても、同様のvirus結合性が観察された。
(3)中性糖脂質画分に含まれる結合性脂質の構造解析
以上より、Dengue virusと結合性を示す糖鎖分子がPGと非常に近い糖鎖構造をしていることが示唆された。そこで、抗PGモノクローナル抗体を用いて免疫化学分析を行った。
(a)免疫化学的分析
中性糖脂質画分II−2(10μl)およびPG(2μl)をTLCプレート(Polygram Sil G)にスポットし、アセトン、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(50/40/10,by vol.)で連続的に展開した。TLCプレートを1%BSA−PBS(bovine serum albumin−phosphate buffered saline)溶液中にて4℃で一晩ブロッキングした。1%BSA含有PBSで5000倍希釈した抗PGモノクローナル抗体(クローンH11)(5ml)と1時間反応させた後、0.05%Tween20を含むPBS(10ml)で3分間洗浄し、これを5回繰り返した。洗浄終了後、1%BSA含有PBSで5000倍希釈したHRP(horseradish perosidase)標識ヤギ抗マウスIgG+IgM(5ml)(American Qualex Antibodies社)と1時間反応させた。プレートをPBS(−)で3分間洗浄し、これを5回繰り返し行った。最後に発色基質溶液〔0.1M citrate buffer pH6.0(5ml),0.11M 4−chloro−1−naphthol in CH3CN(100μl),0.06M DEPDA in CH3CN(100μl),30%H2O2(10μl)〕と反応させ、スポットを検出した。
結果を図4に示した。
図4より、中性糖脂質画分II−2には、PGと同一の糖脂質が含まれていることが判明した。
以上より、K562細胞中のデングウィルス結合性脂質は、次式
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−1Ceramide
(ただしGal:Galactose、GlcNAc:N−acetylglucosamine、Glc:glucose)で表されるパラグロボシド(PG)糖鎖構造を有する中性糖脂質であることが確認された。
<実施例2> Flow cytometerを用いたPGによるDengue virusのK562細胞表面への結合阻害効果の解析
K562細胞をコンフルエントまで培養した後、2×105cells/0.1mlになるようにマイクロチューブに分取した。これを4℃、10,000rpmで2分間遠心後、得られた細胞のペレットを0.1%BSA含有PBS1mlで1回洗浄した。Dengue virus液(2000units/ml)とPG(0,100,200,500μM)あるいは対照糖脂質であるGA1(500μM)を0.1%BSA含有PBS中で4℃、1時間プレインキュベーションした後、それぞれK562細胞に100μlずつ加え、4℃で1時間、細胞へ結合させた。なお、virus(−)として、0.1%BSA含有PBSのみを同量加えた。反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、一次抗体としてヒト抗flavivirus抗血清(ロット#1)を200倍希釈して100μlずつ加え、よく懸濁した後4℃で30分間反応させた。冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、二次抗体としてFITC標識ヤギ抗ヒトIgG(Zymed社)を50倍希釈して、100μlずつ加え、遮光した後、4℃で30分間反応させた。反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、得られたペレットに対して0.5mlの冷PBS(−)を加え、よく懸濁し、フローサイトメーター(Epics,U.S.A.)で測定した。
PGによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害を調べ、PG濃度依存性を図5に示した。
図5より、PGの濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への結合が阻害されることが明らかになった。対照糖脂質であるGA1は中性の4糖である点、さらに分子内の非還元末端にガラクトース残基を有する点から、PGと非常に類似した物性であった。しかし、GA1は500μMの濃度においてもデングウィルスのK562細胞への結合を阻害できなかった。
以上より、PGは、デングウィルスと特異的に結合し、この特異的結合によりウィルスの宿主細胞表面への吸着が阻害されていることが明らかになった。
<実施例3> パラグロボシドによるDengue virusのK562細胞表面への結合阻害活性の検討
(1)Dengue virus濃度
K562細胞をコンフルエントまで培養した後、4×105cells/0.1mlになるようにマイクロチューブに分取した。これを4℃、3,500rpmで3分間遠心後、得られた細胞のペレットを0.1%BSA含有PBS1mlで1回洗浄した。さらに、4℃、3,500rpmで3分遠心した後、Dengue virus原液を、それぞれ0.1%BSA含有PBSで希釈して5000units/ml,2000units/ml,1000units/ml,500units/mlとした後、各々をK562細胞に100μlずつ加え、4℃で1時間反応させた。
なお、virus(−)として、0.1%BSA含有PBSのみを同量加えたものを用いた。
反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、一次抗体としてヒト抗flavivirus抗血清(ロット#1)を200倍希釈して100μlずつ加え、よく懸濁した後4℃で30分間反応させた。冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、二次抗体としてFITC標準ヤギ抗ヒトIgG(Zymed社)を50倍希釈して、100μlずつ加え、遮光した後4℃で30分間反応させた。
反応終了後、冷PBS(−)1mlで細胞を3回洗浄し、得られたペレットに対して0.5mlの冷PBS(−)を加え、よく懸濁し、フローサイトメター(Epics,U.S.A.)で測定した。
以後、virusの濃度は、2000units/mlとした。
PGによるデングウィルスのK562細胞への結合阻害を調べ、PG濃度依存性を図6に示した。
(2)一次抗体希釈濃度の検討
(1)より、Dengue virus濃度を1000units/mlに設定し、binding assayを行った。ここでは冷PBS(−)で希釈し、一次抗体の濃度を200倍、400倍、800倍、1600倍とした。なお、virus(−)には200倍希釈した一次抗体を用いた。実験方法は(1)に準じた。
以後、一次抗体は、200倍希釈とした。
(3)パラグロボシドによるvirus結合性に与える影響
K562細胞(1×105 cell)を24well培養用プレートに播種し、RPMI培地で全量1mlにした。パラグロボシドの最終濃度が0μM、100μM、200μM、500μMになるように希釈して加え、37℃で1時間反応させた。これを低速遠心し、得られたペレットに0.1%BSA含有冷PBSを1ml加えた。マイクロチューブに移し替え、(1)の方法によりvirus結合性を評価した。
図6より、デングウィルスとパラグロボシドを予めインキュベートしておくと、パラグロボシドの濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への結合阻害が起きることが明確に観察された。
また、4糖構造の糖鎖を有する構造類似中性糖脂質であるGA1(アシアロGM1)(Galβ1−3GalNAcβ1−4Galβ1−4Glcβ1−1Cer)を陰性対照として同様の実験を行ったところ、デングウィルスの細胞表面の結合には全く影響しなかった。
したがって、デングウィルス結合阻害性がパラグロボシド糖鎖構造に特異的な特性であることが確認された。
以上より、K562細胞表面に存在するパラグロボシドは、デング熱ウィルスのレセプターそのもの、あるいはその一部として機能していることが示された。
<実施例4> 蚊由来培養細胞株からのDengue virus結合性脂質の単離・精製および同定
(1)C6/36細胞の培養
Dengue virusの標的細胞として、このウィルスに対して感受性を示し、さらに高いウィルス産生能を有するAedes albopictus由来C6/36細胞株を用いた。C6/36細胞は、10%非働化ウシ胎児血清、および1%非必須アミノ酸含有MEM培地中、28℃で培養した。
細胞株の継代は1/10の前培養液に対して、新鮮MEM培地を加え、全量20mlとし、T−75フラスコ中に播種した。
(2)総脂質の抽出
15L培養液からC6/36細胞をハーベストした。得られた細胞のペレットにCHCl3/MeOH/H2O(10/10/1,by vol.)を1L加え、よく懸濁した後、24時間抽出を行った。
これをろ過し、残渣に対して同じ処理を再度行い、得られた上清を合わせてナス型フラスコに移し、溶媒除去した。さらにMeOHを100ml加え、よく懸濁した後、超音波処理を10分間行い、10N NaOH1mlを加えて37℃で15時間インキュベートした。
反応後、10N AcOH1mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を5分間行い、再び溶媒を除去した。これに蒸留水20mlを加え、よく懸濁し、超音波処理を30分間行った。同様の処理を再度行い、合わせた懸濁液を4℃で46時間透析し、凍結乾燥し、これを総脂質画分とした。
(3)イオン交換カラムクロマトグラフィー
得られた総脂質画分にCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)100mlを加え、よく懸濁した後、超音波処理を10分間行った。これを予め同じ溶媒で平衡化したDEAE−Sephadex A−25(酢酸型、ゲル容積400ml)カラムにアプライした。ゲル容積の47.5倍量のCHCl3/MeOH/H2O(30/60/8,by vol.)を流し、この画分を集めて中性糖脂質画分とした。
(4)中性糖脂質画分の精製
中性糖脂質画分を3mlのCHCl3/MeOH(8/2,by vol.)に溶解した。この画分1mlを同じ溶媒で予め平衡かしたSenshu Pak AQUASIL−SS−3251カラム(8φ×250mm)を装着したHPLCシステム(PU−2080Plus、日本分光)にインジョクションした。同溶媒(100%)から同溶媒:CHCl3/MeOH/H2O(60/35/8,by vol.)(30/70,by vol.)への直線濃度勾配にて総溶媒量100mlを流し、カラム溶出液を2mlずつ分取した。各各文をHPTLCに2μlずつスポットし、CHCl3/MeOH/12mM MgCl2(60/35/8,by vol.)でプレートを展開し、Orcinol試薬を噴霧した110℃に加熱し発色を行い、糖脂質の溶出を確認した。
(5)中性脂質画分とDengue virusとの反応性
3枚のTLCプレート(Polygram Sil G,Marchery Nagel)上に、中性糖脂質画分を1μlずつスポットし、風乾した後、nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、風乾させ、1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し発色させた。残り2枚には、PBSを加え、ゆっくり浸透させた後、吸引し、Solution A(1%卵白アルブミン、1%polyvinylpyrrolidone含有PBS)で室温にて1時間ブロッキングした。
反応後、virus(+)にはSolution Aを用いて1000units/mlに調製したDengue virus(D2Th7株)懸濁液を3ml加え、virus(−)にはSolution Aのみを同量加えて4℃に一晩静置した。プレートをPBS(−)で3分間、3回洗浄した。
次にSolution Aで1000倍に希釈したヒト抗flavivirus抗血清を2.5ml加えて室温で1時間反応させた。プレートをPBS(−)で3分間、3回洗浄した。最後に2.5mlの発色基質溶液(0.1M citrate buffer pH6.0(2.5ml),0.11M 4−chloro−1−naphthol in CH3CN(50μl),0.06M DEPDA in CH3CN(50μl),30%H2O2(5μl))と反応させ、結合したウィルス粒子を検出した。なお、Dengue virus(D2Th7株)およびヒト抗flavivirus抗血清は、長崎大学熱帯医学研究所、五十嵐章教授、森田公一教授よりご恵与いただいた。
(6)精製糖脂質のTLC分析
単離された中性糖脂質1.5〜2μlずつをHPTLC上にスポットした。nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、Orcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し、発色を行った。
また、各画分を0.5〜1μlずつ3枚のTLCプレート(Polygram Sil G,)にスポットし、一度アセトンで展開して風乾した後、nPrOH/H2O/NH4OH(75/25/5,by vol.)で展開し、風乾させた。1枚はOrcinol試薬を噴霧して110℃に加熱し発色した。残り2枚は、(5)の方法でvirus binding assayを行った。
次に、デングウィルス高感受性細胞株である蚊由来C6/36細胞より、デングウィルス結合脂質の探索を行った。
デングウィルス結合脂質は、K562細胞の場合と同様に陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによる分画で中性糖脂質画分に溶出された。
この画分から結合性脂質を単離するためにシリカカラムを装着したHPLCを行った。その溶出パターンをTLCで分析した結果を図7に示した。図中矢印で示した2種類の糖脂質が結合性を有していた。今回行ったHPLCの条件でこれら2種類の糖脂質が完全に単離された。
そこで、精製糖脂質とデングウィルスとの結合性を解析した結果を図8に示した。Fraction13、14および15に含まれていた精製糖脂質が非常に強力にウィルスと結合することが示された。昆虫由来の標準糖脂質との構造比較から、Fraction13、14に含まれている糖脂質の構造がGlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1−1Cer(ただし、Man:mannose;Cer:ceramide)であり、一方、Fraction15に含まれている糖脂質の構造は、全く新規であり、Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1−1Cerと推定された。
K562細胞から結合性脂質として単離されたパラグロボシドと、以上の実施例より単離された糖脂質の構造をまとめると、
となった。
したがって、これらの構造から、デングウィルスと結合するために必要な最小糖鎖構造は、GlcNAcβ1−3Man(またはGal)β1−4Glcβ1−であり、さらに、非還元末端にGalがβ1−4結合することによりその結合性が高められるものと示唆された。
<実施例5> パラグロボシド糖鎖によるDengue virusのK562細胞への感染阻害活性の検討
以上の実施例において使用されたパラグロボシド糖鎖は、いずれもセラミドに結合した物質であった。
そこで、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスの結合阻害性が、パラグロボシドに対する結合基質に依存せず、セラミド以外の結合基質でも同様の効果が得られることを確認するために、末端に基質を有さないパラグロボシド糖鎖のみについて、そのウィルス結合阻害性を試験した。
(1)パラグロボシド糖鎖分子および他のオリゴ糖の調製
以下のオリゴ糖を用いた。
いずれも、滅菌PBS(−)で1mMのストック溶液として調製した。これを適宜希釈して感染阻害実験に使用した。
(2)デングウィルス溶液の調製
最終ウィルス量が3×105 FFU(focus forming unit)/sampleとなるように0.2%BSA含有血清非添加RPMI培地(SF−RPMI)で希釈し、よく攪拌した後、氷上においた。
(3)オリゴ糖によるデングウィルスの前処理
前記(2)で調製したデングウィルス溶液630μl(1サンプルあたりのウィルス容量)に対して等量の希釈したオリゴ糖含有溶液を加え、よく攪拌した後、28℃で30分間インキュベートした。これを前処理済みウィルス溶液とした。
また、陰性対照としてPBS(−)をウィルス溶液と混合したものを用いた。
(4)ウィルス感染実験
K562細胞をSF−RPMIで1回洗浄した後、0.1%BSA−SF−RPMIで1×106cells/mlに調製した。この細胞懸濁液を100μlずつチューブに入れた。これに前処理済みウィルス溶液を加え、軽く攪拌した後、37℃で2時間細胞への感染を行った。この間、20分毎にチューブを軽く攪拌した。3,400rpmで3分間遠心した後、ウィルス溶液を除去し、細胞を0.1%BSA−SF−RPMIで3回洗浄した。細胞のペレットに2%血清含有RPMI培地(2%FCS−RPMI)を2ml加え、懸濁し、35mm dishに移して37℃で培養した。
一定時間培養後に細胞を回収し、ウィルス抗原の検出を行った。
(5)ウィルス抗原の検出(ウィルス感染価の測定)
回収した細胞を新しいチューブに移し、PBS(−)で1回洗浄した。細胞のペレットに4%paraformaldehyde/PBS(固定液)を200〜600μl加え、4℃で10分間固定操作を行った。
PBS(−)を加えて全量1mlとした後、2000rpmで5分間遠心した。同様の操作をもう1度行った後、細胞をPBS(−)1mlに懸濁して4℃で保存した(固定化)。
固定化細胞にperm solution(IC PermTM Cell Permeabilization buffer,BIOSOURCE International)を700μl加え、ボルテックスした後、室温に4分間置いた。2500rpmで3分間遠心した後、perm solutionをチューブに40μl残して上清を除去した。さらに2500rpmで3分間遠心した後、完全にperm solutionを除去した。細胞のペレットにAlexa標識マウス抗フラビウィルスモノクローナル抗体(クローン6B6C−1)を加え、よく懸濁した後、氷上にて遮光して30分間インキュベートした。2500rpmで3分間遠心した後、上清を除去し、PBS(−)1mlに細胞を懸濁し、氷上に5分間置いた(洗浄)。
同様の操作をさらに2回行い、最後に細胞のペレットに500〜1000mlのPBS(−)を加え、よく懸濁した後、フローサイトメーターで抗原陽性細胞の検出を行った。
結果を図9に示した。結合阻害と同様に、パラグロボシド糖鎖はその濃度に依存してデングウィルスのK562細胞への感染を阻害した。したがって、パラグロボシド糖鎖や昆虫由来の類似糖鎖は、強力なデングウィルス感染阻害剤として効果的であることが示された。さらに、パラグロボシド糖鎖によるデングウィルスの結合阻害性が結合基質に依存しないことも確認された。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、デング熱ウィルスへの感染を効果的に防止できるデング熱ウィルス感染阻害剤が提供される。
デング熱は第4類感染症に指定されているにも関わらず、これまでその効果的な治療法が確立されておらず、原因微生物であるデングウィルスの宿主への感染機構についても不明な点が多かった。
この出願の発明により、初めてデング熱ウィルス感染阻害剤が実現したが、これは同時に、デング熱ウィルスへの感染による細胞応答の分子機構の解明や、より効果の高い抗デング熱剤の開発など、さらなる展開への足がかりとしての有用性が高い。
デング熱は第4類感染症に指定されているにも関わらず、これまでその効果的な治療法が確立されておらず、原因微生物であるデングウィルスの宿主への感染機構についても不明な点が多かった。
この出願の発明により、初めてデング熱ウィルス感染阻害剤が実現したが、これは同時に、デング熱ウィルスへの感染による細胞応答の分子機構の解明や、より効果の高い抗デング熱剤の開発など、さらなる展開への足がかりとしての有用性が高い。
Claims (12)
- 少なくとも、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(ただし、Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を必須構成要素として有する糖質分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤。 - 少なくとも、次式(II)
(X)n−R (II)
(ただし、Xは、次式(I)
Hex1NAcβ1−3Hex2β1−4Hex1β1− (I)
(Hex1およびHex2はヘキソースを表す)
で表されるオリゴ糖鎖を表し;Rは水素原子、S、N、O、P原子を有する置換基、炭化水素基、脂質、タンパク質、および合成高分子からなる群より選択される基質であり、いずれの場合にも置換基を有していてよく;nはRに結合するオリゴ糖鎖の数を表す1以上の数である)
で表される分子を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤。 - 式(I)で表されるオリゴ糖鎖の非還元末端には、Hex3で表されるヘキソースまたはHex3NAcで表されるアミノヘキソースのいずれかがβ1−4結合している請求項1または2のいずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤。
- 式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1はグルコース(Glc)であり、Hex2は、ガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)である請求項1または2のいずれかのデング熱ウィルス感染阻害剤。
- 式(I)で表されるオリゴ糖鎖におけるHex1はグルコース(Glc)であり、Hex2は、ガラクトース(Gal)またはマンノース(Man)であり、Hex3は、ガラクトース(Gal)またはN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)である請求項3のデング熱ウィルス感染阻害剤。
- 式(I)で表されるオリゴ糖鎖は、
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドである請求項3のデング熱ウィルス感染阻害剤。 - 式(I)で表されるオリゴ糖鎖は、
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
である請求項3のデング熱ウィルス感染阻害剤。 - 式(I)で表されるオリゴ糖鎖は、
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
である請求項3のデング熱ウィルス感染阻害剤。 - 次式(Ia)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ia)
で表されるパラグロボシドに対するモノクローナル抗体。 - 次式(Ib)
Galβ1−4GlcNAcβ1−3Manβ1−4Glcβ1− (Ib)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体。 - 次式(Ic)
GalNAcβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1− (Ic)
で表されるオリゴ糖鎖に対するモノクローナル抗体。 - 少なくとも請求項9ないし11のいずれかのモノクローナル抗体を有効成分として含有することを特徴とするデング熱ウィルス感染阻害剤。
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