JPWO2003103721A1 - 脳血管障害遺伝子治療剤 - Google Patents

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Abstract

本発明により、HGF遺伝子の導入によるHGFの過剰発現という、新しい脳血管障害の治療法が提供された。本発明のHGF遺伝子を使用した方法により、脳梗塞等の脳血管障害に対して積極的な遺伝子導入による治療を行うことができ、従来、適切な治療法のなかった患者において神経機能の維持、梗塞巣の抑制が可能となる。

Description

技術分野
本発明は、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor;HGF)遺伝子を用いた脳血管障害の治療または予防に関する。より詳細には、HGF遺伝子を有効成分として含有する治療剤または予防剤、及び該治療剤または予防剤を標的部位へ投与することを特徴とする方法に関する。
背景技術
肝細胞増殖因子(HGF)は、肝実質細胞をin vitroにおいて増殖させる因子として見出されたサイトカインである(Biochem.Biophys.Res.Commun.122:1450(1984);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:6489(1986);FEBS Letters 22:231(1987);Nature 342:440−443(1989);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3200(1991))。HGFはプラスミノーゲン関連及び間充織由来多面的成長因子であり、多様な細胞において細胞成長と細胞運動性を調節することが知られている(Nature 342:440−443(1989);Biochem.Biophys.Res.Commun.239:639−644(1997);J.Biochem.Tokyo 119:591−600(1996))。さらに、胚新生及び幾つかの器官においては再生における形態形成工程を調節する重要な因子であることも知られている(Exp.Cell Res.196:114−120(1991);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1937−1941(1993);Gene Therapy 7:417−427(2000))。さらに、HGFはin vivoにおいて肝再生因子として障害肝の修復・再生に寄与するだけでなく、血管新生作用を有し、虚血性疾患や動脈疾患の治療または予防に大きな役割を果たし得ることが明らかにされている(Symp.Soc.Exp.Biol.47 cell behavior 227−234(1993);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1937−1941(1993);Circulation 97:381−390(1998))。
以上のように、HGFは血管新生因子の機能をはじめとし、種々の機能を示すことから、医薬品として活用するための様々な試みがなされてきた(実験医学(増刊)10(3):330−339(1992))。HGFには、たとえば、次に示すような用途が報告されている。
抗ガン剤(特開平6−25010号公報)、
肺傷害治療剤(特開平6−172207号公報)、
ガン治療副作用軽減剤(特開平6−340546号公報)、
上皮細胞増殖促進剤(特開平7−179356号公報)、
免疫抑制剤副作用軽減剤(特開平7−258111号公報)、
劇症肝炎治療剤(特開平10−167982号公報)、
心筋梗塞治療剤(特開平11−246433号公報)、
動脈疾患治療剤(特開平8−295634号公報)、
肥満症治療剤(特開平10−279500号公報)、
拡張型心筋症治療剤(特開平11−1439号公報)、
筋萎縮性側索硬化症治療剤(特開2002−87983号公報)、
肺線維症予防剤(特開平8−268906号公報)、
軟骨障害治療剤(特開平8−59502号公報)、
コラーゲン分解促進剤(特開平7−300426号公報)、
胃・十二指腸疾患治療剤(特開平7−138183号公報)、
脳神経障害治療剤(特開平7−89869号公報)、
急性腎不全治療剤(特表2001−516358号公報)、
虚血性疾患/動脈疾患治療剤(WO00/07615号)、
糖尿病治療剤(WO98/32458号)、
毛髪用外用剤(特開平5−213721号公報)、
皮膚化粧料(特開平5−213733号公報)、
育毛促進剤(特開平5−279230号公報)、
巨核球増加剤(特開平7−101876号公報)、
分化誘導剤(特開2002−78482号公報)、
腎糸球体疾患治療剤(特開平9−87199号公報)、
悪液質治療剤(特開平10−316584号公報)、
多臓器不全治療剤(特開平10−310535号公報)、
虚血性疾患治療剤(WO96/32960号)、
細胞増殖・分化剤(特表平10−503923号公報)、
造血細胞増殖分化剤(特表平10−509951号公報)、
神経障害改善薬(特開平7−41429号公報)、および
低血糖症・グリコーゲン病治療剤(特開平10−7586号公報)
タンパク性製剤を用いる場合、静脈内への投与が一般的である。虚血性疾患モデルに対するHGFの投与では静脈や動脈内への投与が例示されている(Circulation 97:381−390(1998))。このような動物モデルでの静脈または動脈内投与によるHGFの有効性は明らかにされているものの、具体的な疾患におけるHGFの有効な投与方法及び投与量等については未だ結論が得られていない。特に、HGFタンパク質の医薬品としての活用において問題となったのは、その血中における半減期の短さである。HGFの血中半減期は10分と短く、その機能を十分に発揮するような血中濃度を維持することが困難であった。また、有効量のHGFを患部へどのように運搬するのかという課題も指摘されている。
分子生物学の分野における技術の飛躍的な向上により、遺伝子を細胞内へ導入する遺伝子治療が可能となった。一般に遺伝子治療は多様な医学的処置において使用することができる(Science 256:808−813(1992);Anal.Biochem.162:156−159(1987))。遺伝子治療を成功させる上で特に重要なのは、遺伝子導入のための適当なベクターを選択することである。従来、アデノウイルス等のウイルス起源ベクターの遺伝子導入における使用が提案されてきている。
しかしながら、次のようなウイルスベクターの潜在的な危険性も指摘されてきている。
ウイルスの有する感染毒性、
宿主の免疫機能低下に伴うウイルスの病原性の発現、及び
ウイルスの突然変異性または発ガン性等
ウイルスベクターに代わる方法として、リポソームをウイルス外膜と共に利用するin vivo遺伝子導入方法、あるいはHVJ−リポソーム媒介遺伝子導入法が開発されている(Science243:375−378(1989);Anal.NY Acad.Sci.772:126−139(1995))。既に、該方法を用いて肝臓、腎臓、血管壁、心臓及び脳を含む種々の組織へのin vivoでの遺伝子導入が成功している(Gene Therapy 7:417−427(2000);Science 243:375−378(1989);Biochem.Biophys.Res.Commun.186:129−134(1992);Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8474−8478(1993);Am.J.Physiol.271(Regulatory Integrative Comp.Physiol.40):R1212−R1220(1996))。
ところが、HVJ−リポソーム法においては、ウイルス及びリポソームという異なるビヒクルが必須であり、準備が複雑である。また、HVJをリポソームと融合することによってウイルス粒子よりも平均直径が1.3倍大きくなる。その結果、細胞との融合活性が野生型ウイルスの10%以下に減少すること、遺伝子導入が不可能な組織、導入効率の悪い組織が存在することが知られている。そこで、より安全で高効率な遺伝子治療を可能にする方法として、ウイルスエンベロープベクターを用いた遺伝子導入法が開発されている(特願2001−026185/特開2001−286282)。該方法では、ウイルス蛋白質の複製がない不活性化ウイルスをウイルスエンベロープとし、その中へ遺伝子を封入することにより、培養細胞、生体組織等への遺伝子導入ベクターとして用いることができる。このようなウイルスエンベロープベクターを使用することにより、肝臓、骨格筋、子宮、脳、眼部、頚動脈、皮膚、血管、肺、心臓、腎臓、脾臓、癌組織、神経、Bリンパ球、呼吸器官の組織、浮遊細胞等に安全、且つ高効率に遺伝子を導入できることが知られている。
さて脳梗塞や脳内出血に代表される脳血管疾患は、社会的にも重要な疾患である。脳血管疾患による死亡率は近年低下してきてはいるものの、依然としてその死因における順位は高い。また、虚血性脳血管障害による後遺症を持つ有病者、医療機関に入院または通院する受療者は依然として増えつづけている。
一般に、脳動脈や頚部動脈における閉塞または灌流圧の低下による虚血性病変により脳組織が不可逆的に壊死に陥っている状態を脳梗塞という。脳梗塞は、大きく以下の3つの種類に分類される(曲直部寿夫、尾前照雄監修『脳血管障害』ライフサイエンス出版、p54−55(1992);井村裕夫ら編『最新内科学大系第66巻 脳血管障害』中山書店、p28(1996))。
(1)脳動脈の硬化性病変を基盤として、血液粘度の上昇及び灌流圧低下等により動脈閉塞を起こした結果、脳組織が虚血性壊死状態となる脳血栓症、
(2)心内血栓や、稀ではあるが剥離した動脈壁血栓により脳動脈の塞栓が生じた状態である脳塞栓症、及び
(3)頭部や頭蓋内脳動脈の狭窄または閉塞により末梢部の脳組織への血流が減少することにより生じる血行力学的梗塞
脳梗塞においては、脳浮腫が発症から数時間後に出現し、発症後1週間前後までこの状態が続く。その後、浮腫は次第に減少するが、発症後1ヶ月から3ヶ月の間に梗塞巣病変として固定する。脳浮腫は脳の容量増大を引き起こす。脳は固い頭蓋に被われているため、脳浮腫によって脳の容量がある限度を超えると、急激な組織圧及び頭蓋圧を生じることとなる。その結果、脳障害が悪化し、その後の梗塞巣病変の範囲が決定される(稲村憲治、赫彰郎『日本臨床第51巻 CT,MRI時代の脳卒中学 上巻』日本臨床、p231−239(1993))。脳の一部で梗塞が起こることにより、その領域が担っていた認知、知覚、感覚、記憶等の機能が失われる。
従来、神経細胞は虚血に対して弱いことが臨床的に認識されている。神経細胞によってはわずか数分間虚血状態に置かれただけで障害を受け、細胞死に至る。虚血状態の海馬体・錐体細胞では、脱分極に伴う顕著な神経興奮の後、伝導ブロックが起こる。その後、細胞外グルタミン酸、細胞内カルシウムイオン、及びフリーラジカル等の増加に伴う細胞毒性により細胞機能が失われ、細胞死に至るとされている。このような虚血による不可逆的変化は、急性期において適切な治療を行うことにより、死亡率の改善や後遺症の軽減が可能と考えられる。現在、脳梗塞に対する治療法として抗血小板薬、脳循環代謝改善薬等の投与が行われている。抗血小板薬の中には脳血栓急性期の治療に有効な薬剤も存在はするが、類似の症状を示す脳出血患者及び脳塞栓患者では出血性脳梗塞を助長することから禁忌であり、その使用に当たっては慎重に病型を診断する必要がある。
脳梗塞発作から約1ヶ月以降の慢性期に投与される脳循環改善薬は、急性期での使用が好ましくないと考えられている(亀山正邦編『脳卒中治療マニュアル』医学書院、p172−173(1991))。その他の治療法として、発症後の超急性期において、細胞死に到っていない領域の血流を再開させるため、血栓溶解療法、バイパス術、血栓内膜剥離術、塞栓摘出術のような再灌流療法が行われている。しかしながら、脳梗塞において脳組織が既に不可逆的損傷を受けている場合には、その後の血行再開は出血性梗塞及び脳浮腫の増加等の組織障害が増幅される恐れもあり問題となっている(岡田靖、『神経研究の進歩』第40巻第4号第655−665頁、医学書院、(1996);高橋明『medicina』第32巻第11号第2261−2263頁、医学書院、(1991))。
現在、脳梗塞急性期に使用される薬剤は、出血性梗塞及び虚血再灌流障害を起こす危険性を有している。また、対象となる病態及び治療効果が期待できる投与時期が限られている等の問題もあり、十分に満足できるものではない。
発明の開示
本発明の課題は、脳血流遮断後の再灌流に伴う脳虚血再灌流障害による脳に対する障害の程度を小さくすることができる薬剤の提供である。HGF遺伝子は、VEGF等の他の血管新生因子と異なり新生した血管の透過性亢進をもたらさない。特に脳血管障害では血管透過性の亢進により、脳浮腫や脳内圧亢進による脳組織への障害が危惧されるため、血管の透過性亢進をもたらさないHGFを用いた治療及び予防方法は他の血管新生因子を用いた場合と比べて有利である。
本発明の目的は、HGF遺伝子を用いた脳血管障害に対する治療剤または予防剤、及び該薬剤を用いた脳血管障害の治療法及び予防法を提供することである。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)HGF遺伝子を含有する、脳血管障害の治療剤又は予防剤。
(2)脳血管障害が脳梗塞である、(1)記載の治療剤または予防剤。
(3)該治療剤又は予防剤が錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、軟膏、シロップ、スラリー、懸濁物の形態である、上記(1)または(2)の治療剤又は予防剤。
(4)遺伝子をウイルス−エンベロープ法、内包型リポソーム法、静電気型リポソーム法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガンで担体と共に核酸分子を細胞に移入する方法、naked−DNAによる直接導入法、若しくは正電荷ポリマーによる導入法のいずれかにより細胞に移入するための、(1)〜(3)いずれかに記載の治療剤または予防剤。
(5)遺伝子をHVJ−エンベロープ法により細胞に移入するための、(1)〜(3)いずれかに記載の治療剤または予防剤。
(6)HGF遺伝子を哺乳動物に導入する工程を含む、脳血管障害の治療または予防法。
(7)脳血管障害が脳梗塞である、(6)記載の治療または予防法。
(8)HGF遺伝子をHVJ−エンベロープ法により2〜3回哺乳動物に導入することを含む、(6)または(7)記載の治療または予防法。
(9)脳血管障害の治療剤または予防剤の製造のためのHGF遺伝子の使用。
(10)脳血管障害が脳梗塞である、(9)記載のHGF遺伝子の使用。
本発明において使用する「HGF遺伝子」とは、HGF(HGFタンパク質)を発現可能な核酸分子を指す。ここで、核酸分子とは、DNA、RNA、cDNA、mRNA等の核酸分子を指す。具体的には、HGFをコードするcDNAは、例えばNature 342:440(1989)、特許第2777678号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.163:967(1989)等に記載されている。HGFをコードするcDNAの塩基配列は前記文献に記載されている他、GenBank等のデータベースにも登録されている。即ち、これらの配列情報を元に適当な配列部分をPCRプライマーとして用い、例えば、肝臓、白血球由来のmRNAに対してRT−PCRを行うことによりHGFのcDNAをクローニングすることができる。このようなクローニングは、当業者であれば、例えば、Molecular Cloning第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等の基本書に従い容易に行うことができる。また、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムDNAを単離することもできる。
さらに、本発明のHGF遺伝子はこれらのcDNA及びゲノムDNAに限定されず、発現されるタンパク質が実質的にHGFと同じ作用を有するタンパク質をコードする限り、本発明におけるHGF遺伝子として利用することができる。即ち、1)前記cDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸、または2)前記cDNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1若しくは複数(好ましくは数個)のアミノ酸が欠失、置換、付加及び/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする核酸のうちHGFの機能を有するタンパク質をコードするものであれば、本発明において使用され得るHGF遺伝子の範疇に含まれる。前記1)及び2)の核酸は例えば、部位特異的突然変異誘発法、PCR法(Current Protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)publish.John Wiley & Sons,Section 6.1−6.4参照)、または通常のハイブリダイゼーション法(Current Protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)publish John Wiley & Sons,Section 6.3−6.4参照)等の方法により容易に得ることができる。
即ち、当業者であれば、公知のHGF遺伝子の配列またはその一部をプローブとして、或いは、該DNAと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、該DNAとハイブリダイズする核酸を単離することができる。公知のHGFと機能的に同等なタンパク質をコードする核酸を得るためのハイブリダイゼーションのストリンジェントな条件としては、通常「1×SSC、37℃」程度の条件が挙げられ、より厳しい条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しい条件としては「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の条件を挙げることができる。ハイブリダイゼーションの条件を厳しく設定する程、プローブ配列と相同性の高い配列を有する核酸を単離することができる。但し、ここで挙げたSSC、SDS及び温度についての条件は単なる例示であり、当業者であれば、これらの条件、及びプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等のその他のハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する条件を加味して、上記と同程度のストリンジェンシーが得られる条件を容易に設定することができる。
上述のようなハイブリダイゼーション法またはPCR法により単離される核酸によりコードされるタンパク質は、従来公知のHGFタンパク質に対して通常高いアミノ酸配列相同性を有する。高い相同性とは少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば95%以上)の配列相同性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877(1993))によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTX等のプログラムが開発されている(Altschul et al.J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。BLASTに基づきBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばseore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づきBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。
以上のように本発明において使用されるHGF遺伝子は、該遺伝子によりコードされるタンパク質がHGF活性を有する限り、天然由来及び人工的に製造された核酸であっても良い。HGFはin vitroにおいて肝実質細胞の増殖を促進させる活性を有する。従って、上述のようにしてハイブリダイズ法等により得られた核酸または天然HGF遺伝子を改変した核酸によりコードされるタンパク質がHGF活性を有するかどうかは、例えば、該タンパク質のin vitroにおける肝実質細胞の増殖に対する影響を調べることにより検定することができる。
次に、本発明の遺伝子治療において用いられる遺伝子導入方法、導入形態及び導入量等について記述する。
HGF遺伝子を有効成分とする遺伝子治療剤を患者に投与する方法としては、非ウイルスベクターを用いる方法と、ウイルスベクターを用いる方法の2つに大別できる。実験手引書等にベクターの調製法、投与法等が詳しく解説されている(別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術、羊土社(1996);別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法、羊土社(1997);日本遺伝子治療学学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス(1999))。以下、それらのベクター及び方法について具体的に説明する。
慣用の非ウイルス遺伝子発現ベクターに目的とする遺伝子が組み込まれた組換え発現ベクターを用いて、以下のような手法により目的遺伝子を細胞や組織に導入することができる。
細胞への遺伝子導入法としてはリポフェクション法、リン酸−カルシウム共沈法、DEAE−デキストラン法、微小ガラス管を用いたDNAの直接注入法等が挙げられる。また、組織への遺伝子導入法としてはウイルス−エンベロープ法、内包型リポソーム(internal type liposome)による遺伝子導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type liposome)による遺伝子導入法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ−AVEリポソーム法)、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガンで担体(金属粒子)と共にDNA分子を細胞に移入する方法、naked−DNAの直接導入法、正電荷ポリマーによる導入法等のいずれかの方法により、組換え発現ベクターを細胞内に取り込ませることができる。
このうちHVJ−リポソームは脂質二重膜で作られたリポソーム中にDNAを封入し、さらにこのリポソームと不活化したセンダイウイルス(Hemaggulutinating virus of Japan:HVJ)とを融合させたものである。当該HVJ−リポソーム法は従来のリポソーム法と比較して、細胞膜との融合活性が非常に高いことを特徴とするものであり、特に好ましい導入形態の一つである。HVJ−リポソームの調製法については、別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術、羊土社(1996);別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法、羊土社(1997);J.Clin.Invest.93:1458−1464(1994);Am.J.Physiol.271:R1212−1220(1996)等に詳しく述べられている。またHVJリポソーム法とは、例えばMolecular Medicine 30:1440−1448(1993);実験医学12:1822−1826(1994);蛋白質・核酸・酵素42,1806−1813(1997)等に記載の方法であり、好ましくはCirculation92(Suppl.II):479−482(1995)に記載の方法が挙げられる。
また、本発明のHGF遺伝子の投与において特に好ましい方法としてウイルス−エンベロープを用いる方法を挙げることができる。ウイルス−エンベロープは精製されたウイルスに所望の発現ベクターを界面活性剤存在下で混和するか、または、ウイルスと発現ベクターとの混合液を凍結融解することにより調製することができる(特願2001−026185/特開2001−286282)。
ウイルス−エンベロープ法において用いることができるウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイスル、ブニヤウイルス、ラブドウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、ヘパドナウイルス等の科に属するウイルス、中でも好ましくはHVJが挙げられる。ここで、ウイルスとしては、野生型及び組換え型のいずれのウイルスを用いることができる。特にHVJとしては、Hasan M.K.ら(J.General Virol.78:2813−2820(1997))、または、Yonemitsu Y.ら(Nature Biotech.18:970−973(2000))等により報告されている組換え型のHVJを用いることもできる。
一般に、HVJ−リポーソーム法及びHVJ−エンベロープ法において用いるHVJとしてはZ株(ATCCより入手可能)が好ましいが、基本的には他のHVJ株(例えばATCC VR−907やATCC VR−105等)も用いることができる。また、ウイルスエンベロープの調製する際に、精製されたウイルスをUV照射等により不活性化した後に、所望の発現ベクターを混和しても良い。ウイルスと発現ベクターを混和する際に用いることができる界面活性剤としては、例えば、オクチグルコシド、Triton X−100、CHAPS、NP−40等が挙げられる。このようにして調製されたウイルスエンベロープベクターは、注射等により治療または予防の標的となる組織に導入することができる。また、−20℃で凍結することにより、少なくとも2〜3ヶ月保存することも可能である。
ここで用いることができる発現ベクターとしては、生体内で目的遺伝子を発現されることのできるベクターであれば如何なる発現ベクターであっても良い。例えばpCAGGS(Gene108:193−200(1991))や、pBK−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(インビトロゲン社、ストラタジーン社)等の発現ベクターを例示することができる。
ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスベクターを用いた方法が代表的である。より具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルスまたはRNAウイルス(Pharmacol.Ther.80:35−47(1998);Front.Biosci.4:E26−33(1999);J.Recep.Signal.Transduct.Res.19:673−686参照)に目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることによって細胞内に遺伝子を導入することができる。
前記ウイルスベクターのうち、アデノウイルスの感染効率が他のウイルスベクターを用いた場合よりもはるかに高いことが知られており、この観点からはアデノウイルスベクター系を用いることが好ましい。
本発明の遺伝子治療剤の患者への導入法としては、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vivo法及びヒトからある種の細胞を取り出して体外で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻すex vivo法が挙げられる(日経サイエンス、1994年4月号:20−45頁;月刊薬事36(1):23−48(1994);実験医学増刊12(15):(1994);日本遺伝学治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス(1999))。本発明では、in vivo法が特に好ましい。
製剤形態としては、上記の各投与形態に合った種々の製剤形態(例えば液剤等)をとり得る。例えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤として製剤する場合、このような注射剤は定法により調製することができ、例えば適切な溶剤(PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水等)に溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。必要に応じて、注射剤には慣用の担体等を加えても良い。また、HVJ−リポソーム等のリポソーム製剤としては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等の形態が挙げられる。
本発明の治療剤または予防剤では、HGF遺伝子を単独の有効成分として利用することもできるし、または、その他の血管新生作用を有する公知の因子と併用することもできる。例えば、VEGFやEGF等の因子は血管新生作用を有することが報告されており、これらの因子をコードする遺伝子を併用することもできる。またEGF等の増殖因子は組織の種々の細胞障害を修復することが報告されていることから、必要に応じ、各種増殖因子をコードする遺伝子を併用することも可能である。本明細書の記載から、本発明の治療剤または予防剤に、必要に応じ、治療または予防対象とする脳血管障害に対し治療若しくは予防効果を有するその他の薬剤、HGFを安定化若しくは増強する物質(例えば、ヘパリン様物質(特開平10−158190号公報);多糖類(特開平5−301824号公報等)をHGF遺伝子と併用し得ることが当業者には明らかである。これらの薬剤及び物質が遺伝子によりコードされ得るものであれば、これらをコードする遺伝子を本発明の治療剤または予防剤においてHGF遺伝子と共に投与することもできる。
本発明の遺伝子治療剤または予防剤は治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与方法及び投与部位が選択される。特に、非経口的な投与が好ましい。また投与部位としては、大槽及び腰椎が特に好ましく、大槽または腰椎の髄膜内に穿刺し、穿刺位置の確認と頭蓋内圧の上昇を避ける為に適量の髄液を採取後、本治療または予防剤を投与する。本発明の治療剤または予防剤の大槽への投与については、例えば、Hayashi K.ら(Gene Therapy 8:1167−73(2001))により報告されたカニューレを用いたHVJ−リポソーム複合体の投与方法を応用することができる。
ところで、本発明の治療剤または予防剤の効果は、HGF遺伝子の投与により、脳梗塞巣周辺のいわゆるペナンブラ(penumbra)領域においてアポトーシスが抑制され、神経細胞が維持されるとことにより得られると考えられる。従って、本発明における治療とは、脳における血流障害が起きた後の処置によって血流障害の影響を小さくすることを言う。
即ち、より具体的には、本発明の薬剤または方法による治療効果とは、脳血管障害発症後の本発明の薬剤の投与または方法の適用によって、脳血管障害によってもたらされる脳組織の損傷を、非投与の場合と比べて小さくする効果を指す。したがって、本発明における治療には、損傷の完全な回復のみならず、損傷の程度を小さくする作用が含まれる。
一方本発明における予防とは、脳における血流障害が起きる前に、HGF遺伝子を予防的に投与することによって、血流障害の影響を小さくできることを言う。より具体的には、脳梗塞等の脳血管障害発症前のHGF遺伝子の投与によって、投与後に生じた脳血管障害によってもたらされる脳組織の損傷を、非投与の場合に比べて小さくできるとき、HGF遺伝子投与には予防効果があると言う。したがって、本発明における予防には、損傷の完全な回復のみならず、損傷の程度を小さくする作用が含まれる。
また本発明における「治療剤」または「予防剤」という用語は、上記のような作用を有する医薬品製剤を意味する用語として用いられる。あるいは本発明における治療方法または予防方法は、上記のような作用を有する医薬品製剤を投与する工程を含む方法である。
一方本発明における脳血管障害とは、脳の血流が阻害された状態を言う。脳の血流阻害を生じる疾患として、脳梗塞や脳内出血を示すことができる。血流の阻害は、疾患によってもたらされたものに限られない。たとえば、外科的処置に伴う人為的な血管の閉鎖や、創傷による血管の損傷が原因となって生じる血流が低下した状態も、本発明における脳血管障害に含まれる。例えば、脳実質に虚血または梗塞性病変をもたらす脳血管障害疾患・脳梗塞(脳血栓、脳塞栓等)、脳出血、くも膜下出血、高血圧性脳症、脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆等が本発明における脳血管障害に含まれる。
本発明の治療剤または予防剤には、該薬剤により意図される目的を達成するのに十分な量、即ち「治療的有効量」または「薬理学的に有効な量」のHGF遺伝子が含まれる。「治療的有効量」または「薬理学的に有効な量」とは、意図される薬理学的結果を生じるために有効な薬剤の量であり、処置されるべき患者の徴候を軽減するのに十分な量である。所定の適用における有効量を確認する有用なアッセイ法としては、標的疾患の回復の程度を測定する方法が挙げられる。実際に投与されるべき量は、処置される患者の年齢、体重及び症状、並びに投与方法等に依存するが、好ましくは、所望の効果が顕著な副作用を伴うことなく達成されるよう最適化された量である。
治療的有効量、薬理学的に有効な量、及び、毒性は、細胞培養アッセイまたは任意の適切な動物モデルにより決定することができる。また、そのような動物モデルは所望の濃度範囲および投与経路を達成するのに用い、当業者であれば、それに基づきヒトにおける有効量を決定することができる。治療効果と毒性効果との間の用量比は治療係数であり、それは比率ED50/LD50として表すことができる。大きな治療係数の薬学的組成物が好ましい。決定された用量は、使用される投与形態、患者の感受性、年齢やその他の患者の条件、疾患の種類、重篤さ等により適宜選択され、本発明の治療剤の投与量としては、患者の症状等によって異なるが、成人患者1人当たりHGF遺伝子として約1μg〜約50mgの範囲、好ましくは約10μg〜約5mg、より好ましくは約50μg〜約5mgの範囲から投与量が選択される。特に、HGF遺伝子をHVJエンベロープ法により投与する場合には、反復して投与を行うことが可能であることから、1回のみ投与するのではなく、より良い治療または予防効果を得るために複数回、例えば2、3回にわたってHGF遺伝子の投与を行うことができる。このようなHVJエンベロープを用いた複数回にわたる投与も本発明の治療・予防方法に包含される。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
(1)HGF遺伝子発現ベクターの作成
ヒトHGF cDNA(2.2kb)をpVAX1ベクターのBamHI、NotI(Invitrogen)に挿入した。
(2)HVJ−エンベロープの調製
精製センダイウイルス(HVJ)(Z株)を使用直前にUV照射(99mJ/cm)することにより不活性化した。次に不活性化HVJ(15000血球凝集単位(HAU))と上記(1)において作成したベクター、またはHGF cDNAを含まない発現ベクターを4℃において0.3%Triton X−100と混和し、4℃で15分間遠心分離した。上清を除去し、緩衝塩類溶液を加え、再度4℃で15分間遠心した。上清を除去し、リン酸緩衝整理食塩水100μlに溶解し、脳梗塞に対する効果を調べた。
(3)HVJエンベロープ−DNA複合体のラット右中大脳動脈閉塞モデルラットへの投与
体重250〜270gのWistarラットをハロセン麻酔(導入時4%、1%で維持)し、1)生理食塩水群として生理食塩水(100μl)、2)ベクターのみを含むpVAXI群としてpVAXI(400μg)/HVJ−E(15000HAU)(100μl)、3)HGF投与群としてpVAXI−HGF(400μg)/HVJ−E(15000HAU)(100μlを26G針を用い大槽投与した。各群について6匹の動物を用いた。投与3日後に、ハロセン麻酔下で右外頚動脈から右内頚動脈にpoly−L−lysineでコーティングされた4−0ナイロン糸を21mm挿入し、右中大脳動脈モデルを作成した。その際、ヒーティングパッドにて動物の体温は約37℃前後に維持し、尾動脈にて血圧を測定した。1時間後及び24時間後に神経評価を行った。神経評価は以下の基準で行い、合計のスコアとして各群の比較(表1においてNeurological severity score(NSS)として表した)を行った。StadtView5.0Jを使用し、Mann−Whitny U testにより統計処理を行った。
1)左前肢の屈曲の有無 4)左前肢の肢位
0 ・・・屈曲なし 0 ・・・迅速に元にもどる
0.5・・・軽度の屈曲 0.5・・・元にもどる
1 ・・・完全に屈曲 1 ・・・元に戻らない
2)側方圧迫への抵抗 5)右前肢の肢位
0 ・・・左右同程度の抵抗 0 ・・・迅速に元にもどる
0.5・・・軽度の抵抗減弱 0.5・・・元にもどる
1 ・・・完全に抵抗無し 1 ・・・元に戻らない
3)体位
0 ・・・正常
0.5・・・左に軽度の屈曲
1 ・・・完全に左に屈曲
Figure 2003103721
表1に示すように、生理食塩水群、pVAXI群、HGF群の間で術中の血圧、体温に差は見られなかった。また、神経評価では、HGF群では他の2つの群と比べてスコアが有意に低値であり、HGF遺伝子の投与により神経機能が保たれていることが示唆された。
24時間後に動物を殺し、前頭極から2mm間隔(図4の右上の模式図において線1〜5として示す部位)で冠状断を作成した。TTC染色を行い梗塞巣の面積を比較した(図1〜3)。梗塞巣の面積の比較のため、Adobe Photoshop5.0を使用し、梗塞巣の占めるPixel数を計測した。浮腫の影響を考慮し(健常側面積−(梗塞側面積−梗塞面積))/健常側面積×100(%)で評価した。その結果を図4に示す。冠状断の全体に占める梗塞巣の割合を%で示す。図1〜図4より明らかなように、HGF遺伝子導入群では梗塞巣が小さくなることが確認された。
産業上の利用の可能性
以上の結果によりHGF遺伝子の投与が脳梗塞のような脳血管障害の初期段階で有利な効果を示し、神経機能の維持し、梗塞巣を小さくすることが確認された。即ち、HGFが脳血管障害を調節する役割を果たすかもしれないことが示された。本発明により、HGF遺伝子の導入によるHGFの過剰発現という、新しい脳梗塞を含む脳血管障害の治療法が提供された。本発明のHGF遺伝子を使用した方法により、脳梗塞を含む脳血管障害に対して積極的な遺伝子導入による治療を行うことができ、従来、適切な治療法のなかった患者において神経機能の維持、梗塞巣の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、生理食塩水群のラット(6匹中3匹)についてのTTC染色を行った冠状断の写真である。
図2は、pVAXI群のラット(6匹中3匹)についてのTTC染色を行った冠状断の写真である。
図3は、HGF群のラット(6匹中3匹)についてのTTC染色を行った冠状断の写真である。
図4は、生理食塩水群、pVAXI群及びHGF群における梗塞巣面積を比較したグラフである。右上にラットの脳の模式図を示す。1〜5で示される線において切断し、冠状断を作成した。模式図の番号1〜5はグラフ横軸の数字に対応する。縦軸は、冠状断全体の面積に占める梗塞巣の面積の割合(%)を示す。

Claims (10)

  1. HGF遺伝子を含有する脳血管障害の治療剤または予防剤。
  2. 脳血管障害が脳梗塞である、請求項1記載の治療剤または予防剤。
  3. 該治療剤又は予防剤が錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、軟膏、シロップ、スラリー、懸濁剤の形態である、請求項1または2記載の治療剤または予防剤。
  4. 遺伝子をウイルス−エンベロープ法、内包型リポソーム法、静電気型リポソーム法、HVJ−リポソーム法、改良型HVJ−リポソーム法、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクルガンで担体と共に核酸分子を細胞に移入する方法、naked−DNAによる直接導入法、若しくは正電荷ポリマーによる導入法のいずれかにより細胞に移入するための、請求項1〜3いずれかに記載の治療剤または予防剤。
  5. 遺伝子をHVJ−エンベロープ法により細胞に移入するための、請求項1〜3いずれかに記載の治療剤または予防剤。
  6. HGF遺伝子を哺乳動物に導入する工程を含む、脳血管障害の治療または予防法。
  7. 脳血管障害が脳梗塞である、請求項6記載の治療または予防法。
  8. HGF遺伝子をHVJ−エンベロープ法により2〜3回哺乳動物に導入する工程を含む、請求項6または請求項7記載の治療または予防法。
  9. 脳血管障害の治療剤または予防剤の製造のためのHGF遺伝子の使用。
  10. 脳血管障害が脳梗塞である、請求項9記載のHGF遺伝子の使用。
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