JPWO2003012087A1 - リガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、リガンドおよびリガンド様低分子化合物のスクリーニングに使用することのできる細胞株に関する。
背景技術
免疫系、造血系、内分泌系、および神経系に関与する様々なリガンド(以下、「生理活性物質」ということもある)は、各担当細胞の細胞膜上に存在する特定の受容体に結合することが知られている。この結合を介して、細胞膜外からの刺激が細胞内に情報伝達され、細胞の増殖や分化を誘導し、生体における高次機能を維持するとされてきた。
現在までに30種におよぶサイトカイン、成長因子等がリガンドとして同定されている。例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、単球・マクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞等から産生される成長因子である。この因子は、好中球系前駆細胞に作用し、その増殖、分化、機能亢進を誘導し、その結果、病原体から生体を防御し、抗腫瘍活性を持つことが知られている(浅野ら、「実験医学」、7(15),1859−1865,1989)。このため、好中球減少症、難治性感染症、骨髄機能低下症だけでなく、AIDSへの応用も期待されている。
また、インターロイキン10(IL−10)は、Th2細胞から産生されTh1細胞からのサイトカインを抑制する因子であることが知られている(石田ら、「臨床免疫」、27[Suppl.16],97−106,1995)。また、このIL−10は、近年、活性型B細胞、マクロファージ、ケラチノサイト、肥満細胞など様々な細胞から産生されることが判明した。このものは、単球/マクロファージのMHCクラスII抗原、B7(CD80、CD86)の発現を抑制し、細胞接着分子(ICAM−1)の発現も抑制することが知られている(de Waal Malefyt et al.”J.Exp.Med.”,174,915,1991)。また、T細胞の増殖抑制、B細胞の活性化の作用も併せ持っている(石田ら、「臨床免疫」,27[Suppl.16],97−106,1995)。これらの作用から、IL−10は、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ等)、臓器移植準備、移植後の炎症性サイトカインによる臓器不全、炎症性疾患等への臨床的な応用が期待されている。
更に、エリスロポエチン(EPO)は、腎傍尿細管内皮細胞から主に産生され、前期赤芽球前駆細胞、後期赤芽球前駆細胞に作用し、赤芽球への分化増殖促進、ヘム合成のmRNA誘導を介して、赤血球産生促進などの効用を持っており(平嶋ら、「実験医学」,7(15),1852−1858,1989)、現在、腎性貧血、難治性貧血(再生不良性貧血、不応性貧血など)に臨床応用されている。一方、トロンボポエチン(TPO)は、肝臓類洞内皮細胞から主に産生され、巨核芽系前駆細胞、巨核芽球に作用し、巨核球からの血小板産生を誘発する作用を持っており(寺村ら、「癌と化学療法」,26(4),421−428,1999)、現在、抗癌剤投与、放射線照射、骨髄移植に伴う血小板減少に対する血小板減少抑制効果及び回復促進作用、急性骨髄性白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などに対する臨床応用が期待されている。
更にまた、インスリンは膵臓β細胞から産生される糖尿病に深く関わっている生理活性物質であって、細胞膜にあるインスリン受容体に結合することにより、膜透過性を亢進し、糖やアミノ酸の細胞内への取り込みを促進し、脂肪組織で脂肪分解を抑制し、筋肉、肝臓で、グリコーゲン、蛋白の合成を促進する(Zawalich、W.S.et al.”Endocrinology”,103,2027−2034,1978)。現在、わが国では28万人の糖尿病患者にインスリン療法を行っているが、その数は着実に毎年増え続けている。
神経成長因子(NGF)は、大脳皮質と海馬で合成され、交感神経や知覚神経などの末梢神経細胞に作用し、機能維持や生存維持などの効用を持っている(美馬ら、「医薬ジャーナル」,26(2),245−249,1990)。このものについては、現在、アルツハイマー型痴呆、脳虚血性疾患、末梢神経損傷などに対する臨床応用が期待されている。
上記のようなリガンドについては、最近、その遺伝子が続々と単離され、遺伝子組み換え型が得られるようになり、リガンドとして働くペプチドが多く同定されている。
しかしながら、これらのペプチドについて、医薬品として利用されているものは極めて少なく、わずかにG−CSFやインターフェロンα等が臨床応用されているに過ぎない。このような、ペプチドが医薬品になり難い原因としては、蛋白質であるため代謝を受け易く、残存期間が短いこと、また、抗体ができ易く中和されること等が指摘されている。
これらの問題を解決すべく、蛋白質であるリガンド(生理活性物質)に代え、これらと同等の作用を引き起こす低分子化合物(以下、「リガンド様低分子化合物」という)のスクリーニングが進められている。しかしながら、従来知られているスクリーニング法は、リガンド(生理活性物質)の担当細胞を用いたものであるため、リガンドが受容体に結合してからのシグナルを複雑に追跡しなければならず、その検出が困難であるという問題があった。すなわち、例えば、担当細胞からの産生物質の測定や、担当細胞内のシグナル等の測定が必要となり、極めて複雑な測定が要求されるという問題があった。
また、リガンドの担当細胞に代えてリガンド受容体の遺伝子が導入された細胞株をリガンドやリガンド様低分子化合物のスクリーニングに用いることも考えられるが、この場合培地中の成分、例えばウシ胎児血清(FCS)により、リガンド受容体遺伝子が導入されなかった細胞株でも増殖する可能性が残り、これをそのままリガンド等のスクリーニングに用いることはできないという問題もあった。
従って、本発明はリガンドまたはこれと同様な働きをする低分子化合物のスクリーニングに使用可能な細胞株の提供をその目的とするものである。
発明の開示
本発明者は、リガンドおよびリガンド様低分子化合物のスクリーニング方法において使用しうる細胞について、種々検討を行った結果、従来の方法で用いられていたリガンドの担当細胞に代え、サイトカイン依存性細胞株にリガンド受容体遺伝子と耐抗生物質遺伝子を導入した細胞株を用いれば、その細胞の増殖を調べることにより容易にリガンドまたはリガンド様物質のスクリーニングができることを見出した。また、この細胞株は、導入したリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子に対応するリガンドならびに抗生物質の存在下で培養することにより、リガンド受容体遺伝子の導入された細胞株のみを選択的に得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明はサイトカイン依存性細胞株にリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を導入したことを特徴とするリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株を提供するものである。
また、本発明はリガンド受容体遺伝子と耐抗生物質遺伝子とを導入したサイトカイン依存性細胞株を、導入したリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子に対応するリガンドならびに抗生物質の存在下で培養することを特徴とするリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株の製造方法を提供するものである。
発明の実施の形態
本明細書において、リガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株とは、培養培地中にリガンドまたはリガンド様低分子化合物(以下、「リガンド類」ということもある)が存在する場合にのみ、生育、増殖の可能な細胞株をいう。また、リガンド様低分子化合物とは、細胞表面上に発現した受容体に特異的に結合するという特性、受容体を活性化しうる特性または細胞内においてシグナルを代用する特性の何れか一つまたは複数を有し、生体に対しあたかもリガンドのように作用する低分子化合物をいう。
本発明のリガンドまたはリガンド様低分子化合物スクリーニング用細胞株は、サイトカイン依存性細胞株に検出すべきリガンド類に対応するリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を導入することにより調製される。
具体的には、培養されたサイトカイン依存性細胞株を適当な緩衝液に懸濁させた後、リガンド受容体遺伝子と耐抗生物質遺伝子を組み込んだDNAを公知の手段によりこれを導入することにより調製される。
本発明のスクリーニング用細胞株を調製するために使用するサイトカイン依存性細胞株の例としては、インターロイキン−3(IL−3)依存性マウス細胞、例えばBAF/B03(Palacios,R.,et al.”Cell”,41,727−734;Shi,Y.,et al.”J.Immunol.”,159,5318−5328,1997)、BAF3(Collins,M.K.,et al.“J.Cell Physiol.”,137,293−298,1988)、Ba/F3(Palacios,R.,et al.“Cell”,41,727−734,1985)等を挙げることができる。この細胞を懸濁させるために使用される緩衝液としては、K−PBS(30.8mM NaCl、120.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.46mM KH2PO4、5mM MgCl2)等が挙げられる。
また、このサイトカイン依存性細胞株に組み込まれるサイトカイン受容体遺伝子は、例えば、下記文献の方法により得られたものを利用することができる。
・ヒト顆粒球コロニー刺激因子受容体:
Larsen,B.A.,et al.”J.Exp.Med.”,
172,1559−1570,1990
・ヒトインターロイキン10受容体:
Liu,Y.,et al.”J.Immunol.”,152,
1821−1829,1994”
・ヒトエリスロポエチン受容体:
Jones,S.,et al.”Blood”,76,
31−35,1990
・ヒトトロンボポエチン受容体:
Mignotte,V.,et al.,”Genomics”,
20,5−12,1994
・ヒトインスリン受容体:
Ebina,Y.,et al.”Cell”,40,747−
758,1985
・ヒト神経成長因子受容体:
Johnson,D.,et al.”Cell”,47,
545−554,1986
一方、同じくサイトカイン依存性細胞株に組み込まれる耐抗生物質遺伝子は、このリガンド受容体遺伝子を導入した細胞の選抜を容易にするためのものであり、例えば、下記文献に記載の方法により得られたものを使用することができる。
・耐ピューロマイシン(puromycin)遺伝子:
de la Luna S.,et al.,“Gene”,62,
121−126,1988
・耐ハイグロマイシン(hygromycin)遺伝子:
Gritz,L.,et al.,“Gene”,25,
179−188,1983
・耐ネオマイシン(neomycin)遺伝子:
Wirth,M.,et al.,“Gene”,73,
419−426,1988
なお、これら耐抗生物質遺伝子を組み込んだプラスミドが既に提供されているので、これらプラスミドに上記リガンド受容体遺伝子を組み込み、リガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を組み込んだDNAとして利用することもできる。このようなプラスミドの例としては、例えば、pcDNA3.1(invitrogen社製)、pcDNA3.1/Zeo(invitrogen社製)、pcDNA3.1/Hygro(invitrogen社製)、pIRESpuro(Clontech社製)等を例示することができる。
このリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を組み込んだDNAを導入するに当たっては、一般にDNAを溶解させるために用いる溶媒、例えばTE緩衝液(10mM Tris−HCl、1mM EDTA/pH8.0)を用いることが好ましい。
サイトカイン依存性細胞株にリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を導入する方法としては、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、リポソーム法、マイクロインジェクション法等公知の方法を利用することができるが、簡便で、遺伝子導入効率の高い方法であるエレクトロポレーション法を利用することが好ましい。
このエレクトロポレーション法は、サイトカイン依存性細胞株とリガンド受容体遺伝子等をコードするDNAとを懸濁させた溶液に高圧パルスを与えることにより、細胞株の細胞壁に微孔を開け、ここからリガンド受容体遺伝子を細胞内に導入する方法である。具体的なエレクトロポレーション法の条件としては、電圧260〜300V程度、キャパシタンス960μF程度とすることが好ましい。なお、インターロイキン−3依存性マウス細胞株BAF/B03にリガンドの受容体遺伝子を導入する方法については、ローリンソンら(Rowlinson S.W.,et al.)が報告しているので、これを参考とし実施することができる(J.Biological Chemistry,273(9),5307−5314,1998)。
次いで、かくしてリガンド受容体遺伝子と耐抗生物質遺伝子を導入したサイトカイン依存性細胞株(以下、「スクリーニング用細胞株」という)は、これを導入されていない培養細胞と分離するため、リガンド受容体遺伝子に対応するリガンドと耐抗生物質遺伝子に対応する抗生物質の存在下で培養される。ここで使用される培地は、DMEM培地(Sigma社製)等の通常の培地でよいが、リガンド受容体遺伝子に対応するリガンドと耐抗生物質遺伝子に対応する抗生物質の存在が必須である。
この培養においては、スクリーニング用細胞株のみが生育可能であり、リガンド受容体遺伝子が導入されなかったその他の細胞株は全て死滅するので、本発明のスクリーニング用細胞株を他の細胞株より分離することが可能となる。なお、リガンド受容体遺伝子中に耐抗生物質遺伝子を組み込まないと、培地中の成分、例えばウシ胎児血清(FCS)により、リガンド受容体遺伝子が導入されなかった細胞株でも増殖する可能性が残ってしまい、これをスクリーニング等に用いた場合正確な結果が得られない可能性がある。
以上のようにして、分離・純化させた本発明のスクリーニング用細胞株は、被験化合物中のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニングに使用することができる。例えば、当該細胞株を適当な濃度の被検化合物の存在下で培養し、その増殖程度を調べることにより、被験化合物中のリガンドまたはリガンド様低分子化合物を検出することができる。すなわち、本発明のスクリーニング用細胞株は、リガンドまたはリガンド様低分子化合物の存在下でしか生育、増殖しないので、当該細胞株が増殖した場合は、リガンドまたはリガンド様低分子化合物が存在していたと判断することができ、結果的にある化合物がリガンドまたはリガンド様低分子化合物であると判断しうるのである。
また、スクリーニング用細胞株の培養に当たり、スクリーニング用細胞株に用いたサイトカイン依存性細胞株が、例えばインターロイキン3(IL−3)依存性マウス細胞の場合、必要によりIL−3を培地中に存在させてもよい。
IL−3は、培養細胞の活性を高める作用を奏するものであり、培養細胞の増殖促進という効果が得られる。このIL−3としては、マウスリコンビナントIL−3等のIL−3の他、これを含有することが知られている培養物を利用してもよく、その配合量は、IL−3として0.01〜100ng/ml程度、特に0.1〜10ng/ml程度とすることが好ましい。
更に、スクリーニング用細胞株の培養に当たっては、被検化合物の他、還元剤を培地中に存在させることが好ましい。このうち還元剤は、培養細胞の活性を上げ、その増殖を促進するという作用を奏するものである。
この還元剤としては、特に制約されるものではないが、作用の面から2−メルカプトエタノール、α−チオグリセロール等の還元剤を用いることが好ましい。また、培地中の還元剤の添加量としては、特に制約されるものではないが、10−6〜10−3M程度、特に10−5〜10−4M程度とすることが好ましい。
スクリーニング用細胞株の増殖の有無は、例えば、当該細胞株を一定時間、被検化合物の存在する培地中で培養し、培養後の細胞数を測定することにより判断する。好ましい培養条件としては、5%CO2のインキュベータ内で、37℃、48時間程度の培養が挙げられる。また、培養後の細胞数の測定に当たっては、発色基質として還元型発色試薬が用いられるが、このうちテトラゾリウム塩類を用いることが好ましく、特にWST−1(2−(4−iodophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H−tetrazolium monosodium salt)が好ましい。
一方、テトラゾリウム系の電子キャリアーとしては、フェナジンメトサルフェート系の電子キャリアーが好ましく、特に1−メトキシPMS(1−Methoxy−5−methylphenazinium methylsulfate)を組み合わせることが好ましい。これらのWST−1と1−メトキシPMSを組み合わせた細胞増殖判定用試薬キットは、(株)同仁化学研究所製から、「セル・カウンティング・キット」として市販されているので、これらを利用してもよい。
産業上の利用可能性
本発明のリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を導入したサイトカイン依存性細胞株(スクリーニング用細胞株)は、細胞表面にリガンドの受容体を発現させた細胞株であるため、受容体からのシグナルが伝達されなければ増殖することができない。つまり、リガンドあるいはその代替化合物が細胞表面に発現した受容体に結合しなければ生存することができないものである。
また、上記細胞株はリガンド受容体遺伝子とともに耐抗生物質遺伝子が導入されているため、リガンドと抗生物質の存在下で培養するとリガンド受容体遺伝子が導入されていない細胞株は生存することができないものである。
従って、上記細胞株をリガンドまたはリガンド様低分子化合物の検出に用いることにより、従来のリガンドの担当細胞を用いたリガンドまたはリガンド様低分子物質の検出で必要であった、リガンドが当該物質の受容体に結合してからのシグナルや、その生成物の検出といった操作が必要なくなり、測定系中のリガンドまたはリガンド様低分子化合物の存在を、この細胞株の生死で表現ができるようになった。よって本発明のスクリーニング用細胞株は、大量の低分子化合物を定量的にスクリーニングすることを可能とするものである。
実施例
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
実施例 1
ヒトインスリン依存性細胞株:
(1)ヒトインスリン依存性細胞株の作製
ヒト膵臓cDNAライブラリーより、ヒトインスリン(hlns)受容体遺伝子を基に作製したプライマーを用いてマリスらの報告しているRT−PCR法(Mullis,K.,et al.”Cold Spring Harb Symp.Quant.Biol.”,51,263−273,1986)に準じて、ヒトインスリン受容体遺伝子をクローニングした。このヒトインスリン受容体遺伝子を発現ベクター(pIRESpuro2)のマルチクローニングサイトNheI部位に挿入した。この発現ベクター(humanlns−R/pIRESpuro2)を大腸菌内に挿入して増やし、発現ベクターを抽出した。宿主細胞としてBAF/B03細胞株(Palacios,R.,et al.Cell,41,727−734,1985,Shi,Y.,et al.Immunol.,159,5318−5328,1997)を用いた。
この発現ベクター、humanlns−R/pIRESpuro2の20μgを、5×107cells/800μL K−PBS(30.8mM NaCl、120.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.46mM KH2PO4、5mM MgCl2)に調製した宿主細胞BAF/B03細胞株に添加し、4℃で15分間放置した。遺伝子導入は、電圧280V、キャパシタンス950μFのエレクトロポレーションで行った。遺伝子導入後、細胞をマウスIL−3を含有するDMEM培地((+)10%FCS)に懸濁し、培養した。24時間後、細胞をピューロマイシン(0.2μg/mL)含有DMEM培地((+)10%FCS、250unit/mLリコンビナントヒトインスリン(rhlns))に懸濁し、細胞(BAF/hlnsR)を作製した。
(2)ヒトインスリン依存性細胞株の増殖能の検討
細胞増殖能の検討に際しては、ヒトインスリン受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hlnsR)を回収しPBS(−)にて洗浄した後、DMEM培地((+)FCS、最終濃度10%)に懸濁し、96ウエルプレートに8×104cells/wellで細胞を調製した。そして、各ウエルに(0、0.0097、0.0195、0.039、0.078、0.156、0.313、0.625unit/mL)となるようrhlnsおよびピューロマイシン(0.5μg/mL)を添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。
その結果、ヒトインスリン受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hlnsR)は、rhlns濃度が0.0097〜0.625unit/mLの範囲において良好な直線性が確認された(第1図)。すなわち、本発明の細胞株を用いることにより、ヒトインスリンあるいはヒトインスリン様低分子化合物の定量的検出が可能であることが明らかとなった。
(3)ヒトインスリン依存性細胞株の増殖における還元剤の影響
上記(1)で得たヒトインスリン受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hlnsR)について、還元剤(2−メルカプトエタノール)の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((+)FSC、最終濃度10%)に5×10−5Mの2−メルカプトエタノールを添加した培地と添加しない培地を調製した。これらの培地を注入した96ウエルプレートに、PBS(−)にて洗浄したBAF/hlnsRを、それぞれ8×104cells/wellとなるように懸濁させた。
次いで、各ウエルに0、0.0097、0.0195、0.039、0.078、0.156、0.313、0.625unit/mLとなるようにrhlnsおよびピューロマイシン(0.5μg/mL)を添加し、5%CO2、37℃で24時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。その結果、細胞培養の際に還元剤である2−メルカプトエタノールを培地に添加することにより、rhlnsによるBAF/hlnsRの細胞増殖は亢進された。この結果を第2図に示す。
実施例 2
ヒトG−CSF依存性細胞株:
(1)ヒトG−CSF依存性細胞株の作製
ヒト脾臓cDNAライブラリーより、ヒトG−CSF受容体遺伝子を基に作製したプライマーを用いて実施例1と同様にRT−PCR法によりヒトG−CSF受容体遺伝子をクローニングした。このヒトG−CSF受容体遺伝子を発現ベクター(pIRESpuro)のマルチクローニングサイトEcoRI部位に挿入した。この発現ベクター(humanG−CSF−R/pIRESpuro)を大腸菌内に挿入して増やし、発現ベクターを抽出した。宿主細胞としては、BAF/B03細胞株を用いた。
この発現ベクター、humanG−CSF−R/pIRESpuroの20μgを、5×107cells/800μL K−PBS(30.8mM NaCl、120.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.46mM KH2PO4、5mM MgCl2)に調製した宿主細胞BAF/B03に添加し、4℃で15分間放置した。遺伝子導入は、電圧280V、キャパシタンス950μFのエレクトロポレーションで行った。遺伝子導入後、細胞をマウスIL−3を含有するマウス細胞株WEHI 3Bの培養液(WEHIsup)を10%含むDMEM培地((+)10%FCS)に懸濁し、培養した。48時間後、細胞をピューロマイシン(2μg/mL)含有DMEM培地((+)10%FCS、20ng/mL リコンビナントヒトG−CSF(rhG−CSF))に懸濁し、細胞を作製した。
(2)ヒトG−CSF依存性細胞株の増殖能の検討
細胞増殖能の検討に際しては、ヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hGCSFR)を回収し、PBS(−)にて洗浄した後、DMEM培地((−)FCS)に懸濁し、96ウエルプレートに5×104cells/wellで細胞を調製した。そして、各ウエルに0、0.025、0.1、0.4、1.6、6.4ng/mLとなるようrhG−CSFを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。
その結果、ヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hGCSFR)は、rhG−CSF濃度が0.025〜6.4ng/mLの範囲において、良好な直線性が得られた(第3図)。すなわち、本発明の細胞株を用いることにより、hG−CSFあるいはhG−CSF様低分子化合物の定量的検出が可能であることが明かとなった。
(3)G−CSF依存性細胞株の増殖における還元剤の影響
上記(1)で得たヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hGCSFR)について、還元剤(2−メルカプトエタノール)の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS)に5×10−5Mの2−メルカプトエタノールを添加した培地と、添加しない培地を調製した。これらの培地を注入した96ウエルプレートに、PBS(−)にて洗浄したBAF/hG−CSFRを、それぞれ5×104cells/wellとなるよう懸濁させた。
次いで、各ウエルに0、0.025、0.1、0.4、1.6、6.4ng/mLとなるようにrhG−CSFを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で呈色反応を行った。その結果、細胞培養の際に還元剤である2−メルカプトエタノールを培地に添加することにより、rhG−CSFによるBAF/hG−CSFRの細胞増殖は亢進された。また、rhG−CSF濃度が0.1、0.4、1.6、6.4ng/mLにおいてその差が顕著に確認された。この結果を第4図に示す。
(4)G−CSF依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響
上記(1)で得たヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hGCSFR)について、IL−3の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS、2−メルカプトエタノール最終濃度5×10−5M)に、マウスリコンビナントIL−3を最終濃度として0.5ng/ml添加した培地、同じくマウスIL−3を含有する、マウス細胞株WEHI−3Bの培養液(WEHIsup)を最終濃度として1.25%添加した培地およびこれらを添加しない培地の3種類の培地を調製した。
これらの培地を96ウエルプレートに注入し、各ウエルにPBS(−)で洗浄したBAF/hG−CSFRを5×104cells/wellとなるよう懸濁させた後、0、0.025、0.1、0.4、1.6、6.4ng/mLとなるようにrhG−CSFを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。
培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。その結果、マウスリコンビナントIL−3、WEHIsupを細胞培養の際に培地に添加することにより、rhG−CSFによるBAF/hG−CSFRの細胞増殖は亢進された。また、マウスリコンビナントIL−3およびWEHI−3B添加時の細胞増殖を比較した場合、rhG−CSF濃度が1.6、6.4ng/mLにおいてその差が顕著に確認された。この結果を第5図に示す。
実施例 3
ヒトIL−10依存性細胞株:
(1)ヒトIL−10依存性細胞株の作製
ヒト脾臓cDNAライブラリーより、ヒトIL−10受容体遺伝子を基に作製したプライマーを用いて実施例1と同様にRT−PCR法によりヒトIL−10受容体遺伝子をクローニングした。このヒトIL−10受容体遺伝子を発現ベクター(pIRESpuro)のマルチクローニングサイトBamHI部位に挿入した。この発現ベクター(humanIL−10−R/pIRESpuro)を大腸菌内に挿入して増やし、発現ベクターを抽出した。
この発現ベクター、humanIL−10−R/pIRESpuroの20μgを、5×107cells/800μL K−PBS(30.8mM NaCl、120.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.46mM KH2PO4、5mM MgCl2)に調製した宿主細胞、BAF/B03に添加し、4℃で15分間放置した。遺伝子導入は、電圧280V、キャパシタンス950μFのエレクトロポレーションで行った。遺伝子導入後、細胞をマウスIL−3を含有するマウス細胞株WEHI 3Bの培養液(WEHIsup)を10%含むDMEM培地((+)10%FCS)に懸濁し、培養した。48時間後、細胞をピューロマイシン(2μg/mL)含有DMEM培地((+)10%FCS、20ng/mLリコンビナントヒトIL−10(rhIL−10))に懸濁し細胞を作製した。
(2)ヒトIL−10依存性細胞株の増殖能の検討
細胞増殖能の検討に際しては、ヒトIL−10受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hIL−10R)を回収し、PBS(−)にして洗浄した後、DMEM培地((−)FCS)に懸濁し、96ウエルプレートに5×104cells/wellに細胞を調製した。そして、各ウエルに0、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000ng/mLとなるようrhIL−10を添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、WST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベーター内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。
その結果、ヒトIL−10受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hIL−10R)は、rhIL−10が0.1〜1000ng/mL添加した場合、添加量に応じた細胞増殖が確認された(第6図)。すなわち、本発明の細胞株を用いることにより、hIL−10あるいはhIL−10様低分子化合物の検出が可能であることが明らかになった。
(3)IL−10依存性細胞株の増殖における還元剤の影響
上記(1)で得たヒトIL−10受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hIL−10R)について、還元剤(2−メルカプトエタノール)の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS)に5×10−5Mの2−メルカプトエタノールを添加した培地と、添加しない培地を調製した。これらの培地を注入した96ウエルプレートに、PBS(−)にて洗浄したBAF/hIL−10Rを、それぞれ5×104cells/wellとなるよう懸濁させた。
次いで、各ウエルに0、0.001、0.001、0.01、0.1、1、10、100、1000ng/mLとなるようにrhIL−10を添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で呈色反応を行った。その結果、細胞培養の際に還元剤である2−メルカプトエタノールを培地に添加することにより、rhIL−10によるBAF/hIL−10Rの細胞増殖は亢進された。また、rhIL−10濃度が10、100、1000ng/mLにおいてその差が顕著に確認された。この結果を第7図に示す。
(4)IL−10依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響:
実施例2で得たヒトIL−10受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hIL−10R)について、IL−3の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS、2−メルカプトエタノール最終濃度5×10−5M)に、マウスリコンビナントIL−3を最終濃度として2ng/ml添加した培地、同じくマウス細胞株WEHI−3Bの培養液(WEHIsup)を最終濃度として0.625%添加した培地およびこれらを添加しない培地の3種類の培地を調製した。
これらの培地を96ウエルプレートに注入し、各ウエルにPBS(−)で洗浄したBAF/hIL−10Rを5×104cells/wellとなるよう懸濁させた後、0、0.025、0.1、0.4、1.6、6.4ng/mLとなるようにrhIL−10を添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。
培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。その結果、マウスリコンビナントIL−3、WEHIsupを細胞培養の際に培地に添加することにより、rIL−10によるBAF/hIL−10Rの細胞増殖は亢進された。この結果を第8図に示す。
実施例 4
ヒトEPO依存性細胞株:
(1)ヒトEPO依存性細胞株の作製
ヒトエリスロイド・リューケミア(erythroid leukemia)細胞株よりcDNAライブラリーを作製し、ヒトEPO受容体遺伝子を基に作製したプライマーを用いて実施例1と同様にRT−PCR法によりヒトEPO受容体遺伝子をクローニングした。このヒトEPO受容体遺伝子を発現ベクター(pIRESpuro)のマルチクローニングサイトのEcoRI部位に挿入した。この発現ベクター(humanEPO−R/pIRESpuro)を大腸菌内に挿入して増やし、発現ベクターを抽出した。宿主細胞としてBAF/B03細胞株(Palacios,R.,et al.Cell,41,727−734,1985、Shi,Y.,et al.Immunol.,159,5318−5328,1997)を用いた。
この発現ベクター、humanEPO−R/pIRESpuroの20μgを、5×107cells/800μL K−PBS(30.8mM NaCl、120.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.46mM KH2PO4、5mM MgCl2)に調製した宿主細胞BAF/B03細胞株に添加し、4℃で15分間放置した。遺伝子導入は、電圧280V、キャパシタンス950μFDのエレクトロポレーションで行った。遺伝子導入後、細胞をマウスIL−3を含有するDMEM培地((+)10%FCS)に懸濁し、培養した。48時間後、細胞をピューロマイシン(2μg/mL)含有DMEM培地((+)10%FCS、250unit/mLリコンビナントヒトEPO(rhEPO)に懸濁し、細胞(BAF/hEPOR)を作製した。
(2)ヒトEPO依存性細胞株の増殖能の検討
細胞増殖能の検討に際しては、ヒトEPO受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hEPOR)を回収し、PBS(−)にて洗浄した後、DMEM培地((−)FCS)に懸濁し、96ウエルプレートに5×104cells/wellで細胞を調製した。そして、各ウエルに(0、0.8、1.6、3.1、6.3、12.5、25、50unit/mL)となるようrhEPOを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。
その結果、ヒトEPO受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/EPOR)は、rhEPO濃度が0.8〜50unit/mLの範囲において良好な直線性が確認された(第9図)すなわち、本発明の細胞株を用いることにより、hEPOあるいはhEPO様低分子化合物の定量的検出が可能であることが明らかとなった。
(3)EPO依存性細胞株の増殖における還元剤の影響
上記(1)で得たヒトEPO受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hEPOR)について、還元剤(2−メルカプトエタノール)の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS)に5×10−5Mの2−メルカプトエタノールを添加した培地と添加しない培地を調製した。これらの培地を注入した96ウエルプレートに、PBS(−)にて洗浄したBAF/hEPORを、それぞれ5×104cells/wellとなるように懸濁させた。
次いで、各ウエルに0、0.8、1.6、3.1、6.3、12.5、25、50unit/mLとなるようにrhEPOを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。その結果、細胞培養の際に還元剤である2−メルカプトエタノールを培地に添加することにより、rhEPOによるBAF/hEPORの細胞増殖は亢進された。この結果を第10図に示す。
(4)EPO依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響
上記(1)で得たヒトEPO受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hEPOR)について、IL−3の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS、2−メルカプトエタノール最終濃度5×10−5M)に、マウスリコンビナントIL−3を最終濃度として0.5ng/mL添加した培地、同じくマウスIL−3を含有する、マウス細胞株WEHI−3Bの培養液(WEHIsup)を最終濃度として1.25%添加した培地およびこれらを添加しない培地の3種類の培地を調製した。
これらの培地を96ウエルプレートに注入し、PBS(−)にて洗浄したBAF/hEPORを、それぞれ5×104cells/wellとなるように懸濁させた後、0、0.8、1.6、3.1、6.3、12.5、25、50unit/mLとなるようにrhEPOを添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。
培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。反応後、測定波長450nmにて測定を行った。その結果、マウスリコンビナントIL−3、WEHI−3Bを細胞培養の際に培地に添加することにより、rhEPOによるBAF/hEPORの細胞増殖は亢進された。また、マウスリコンビナントIL−3およびWEHI−3B添加時の細胞増殖を比較した場合、rhEPO濃度が3.1、6.3、12.5unit/mLにおいてその差が顕著に確認された。この結果を第11図に示す。
参考例 1
G−CSF依存性細胞株を用いたG−CSF様低分子物質の検出における還元剤とIL−3の影響:
実施例2で得たヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株(BAF/hGCSFR)について、スミスクライン・ビーチャム(株)により報告されている(Science,281(5374):257−91998参照)、G−CSFを代用する低分子化合物SB247464を用いて測定を行った。また、同時にIL−3の存在がスクリーニングに与える影響を次のようにして検討した。まず、DMEM培地((−)FCS、2−メルカプトエタノール最終濃度5×10−5M)に、マウス細胞株WEHI−3Bの培養液(WEHIsup)を最終濃度として1.25%添加した培地およびこれを添加しない培地の2種類の培地を調製した。
これらの培地を96ウエルプレートに注入し、各ウエルにPBS(−)で洗浄したBAF/hG−CSFRを5×104cells/wellとなるよう懸濁させた後、SB247464(スミスクライン・ビーチャム(株)より報告されたG−CSFを代用する低分子化合物、Science,281(5374):257−91998参照)を0、10−10、10−9、10−8、10−7、10−6Mとなるように添加し、5%CO2、37℃で48時間培養を行った。
培養後、各ウエルにWST−1/1−メトキシPMS溶液(最終濃度5mM、(株)同仁化学研究所製)を添加し、CO2インキュベータ内で、呈色反応を行った。この結果ヒトG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株はSB247464を検出することができた。また、特にWEHI−3Bを培地に添加することにより、SB247464によるBAF/hG−CSFRの細胞増殖は亢進された。更に、SB247464濃度が10−8、10−9、10−10Mにおいてその差が顕著に確認された。この結果を第12図に示す。
これらの結果から、他のリガンド受容体遺伝子も、実施例1〜4に準じてRT−PCR法によりクローニングし、これを発現ベクターに挿入することにより、導入する遺伝子を構築することができる。また、構築された遺伝子も、実施例1〜4に従ってエレクトロポレーション法等を適用することにより目的とする細胞中に導入することができ、各リガンドまたはリガンド様低分子物質に対し増殖を示す細胞株を作製することが可能であり、更に参考例1の記載により、これを用いてリガンドまたはリガンド様低分子化合物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、培地中のrhlns濃度と、hlns受容体遺伝子を導入した細胞株の増殖程度の関係を調べた結果を示す図面である。
第2図は、hlns依存性細胞株の増殖における還元剤の影響を示す図面である。
第3図は、培地中のhG−CSF濃度と、hG−CSF受容体遺伝子を導入した細胞株の増殖程度の関係を調べた結果を示す図面である。
第4図は、G−CSF依存性細胞株の増殖における還元剤の影響を示した図面である。
第5図は、G−CSF依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響を示した図面である。
第6図は、培地中のhIL−10濃度と、hIL−10受容体遺伝子を導入した細胞株の増殖程度の関係を調べた結果を示す図面である。
第7図は、IL−10依存性細胞株の増殖における還元剤の影響を示した図面である。
第8図は、IL−10依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響を示した図面である。
第9図は、培地中のhEPO濃度と、hEPO受容体遺伝子を導入した細胞株の増殖程度の関係を調べた結果を示す図面である。
第10図は、EPO依存性細胞株の増殖における還元剤の影響を示した図面である。
第11図は、EPO依存性細胞株の増殖におけるIL−3の影響を示した図面である。
第12図は、G−CSF様低分子物質のG−CSF依存性細胞株の増殖における還元剤とIL−3の影響を示した図面である。
Claims (7)
- サイトカイン依存性細胞株に、リガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子を導入したことを特徴とするリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- サイトカイン依存性細胞株が、インターロイキン−3依存性細胞である請求項第1項記載のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- サイトカイン依存性細胞株が、BAF/B03、BAF3またはBa/F3である請求項第1項記載のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- リガンド受容体遺伝子が、顆粒球コロニー刺激因子受容体遺伝子、ヒトインターロイキン10受容体遺伝子、ヒトエリスロポエチン受容体遺伝子、ヒトトロンボポエチン受容体遺伝子、ヒトインスリン受容体遺伝子およびヒト神経成長因子受容体遺伝子から選ばれるリガンド受容体遺伝子である請求項第1項記載のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- 耐抗生物質遺伝子が、蛋白質合成阻害作用を有する抗生物質に抵抗性を有する遺伝子である請求項第1項記載のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- 耐抗生物質遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子またはネオマイシン耐性遺伝子である請求項第1項記載のリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株。
- リガンド受容体遺伝子と耐抗生物質遺伝子とを導入したサイトカイン依存性細胞株を、導入したリガンド受容体遺伝子および耐抗生物質遺伝子に対応するリガンドならびに抗生物質の存在下で培養することを特徴とするリガンドまたはリガンド様低分子化合物のスクリーニング用細胞株の製造方法。
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