JPWO2002033068A1 - 核酸の塩基配列の解析方法 - Google Patents
核酸の塩基配列の解析方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2002033068A1 JPWO2002033068A1 JP2001553959A JP2001553959A JPWO2002033068A1 JP WO2002033068 A1 JPWO2002033068 A1 JP WO2002033068A1 JP 2001553959 A JP2001553959 A JP 2001553959A JP 2001553959 A JP2001553959 A JP 2001553959A JP WO2002033068 A1 JPWO2002033068 A1 JP WO2002033068A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- stranded nucleic
- nucleic acid
- probe
- base sequence
- fluorescence
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6869—Methods for sequencing
- C12Q1/6874—Methods for sequencing involving nucleic acid arrays, e.g. sequencing by hybridisation
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6813—Hybridisation assays
- C12Q1/6827—Hybridisation assays for detection of mutation or polymorphism
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6813—Hybridisation assays
- C12Q1/6834—Enzymatic or biochemical coupling of nucleic acids to a solid phase
- C12Q1/6837—Enzymatic or biochemical coupling of nucleic acids to a solid phase using probe arrays or probe chips
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N2500/00—Screening for compounds of potential therapeutic value
Abstract
該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意し、複数種の一本鎖核酸プローブ毎にその完全相補一本鎖核酸を反応させた際の蛍光量を測定して、所定の蛍光量の位置をポジティブとしたパターンを作成し、標的一本鎖で同様にして得られるパターンと一致するパターンに用いた完全相補一本鎖核酸の配列から標的一本鎖核酸の配列を特定する。
Description
技 術 分 野
本発明はDNA診断及び治療に使用されるDNAチップを用いた核酸塩基配列を特定する方法に関する。
背 景 技 術
核酸等の物質の配列を決定し、或いはその配列をチェックする手法のひとつにDNAアレイを利用する方法がある。USP5445934には、1インチ角に10万個以上のオリゴヌクレオチドプローブを結合したDNAアレイの開示がある。このようなDNAアレイは、少量の検体で一度に多項目を検査できるという利点がある。このようなDNAチップ上に、蛍光標識した検体を流すと、上記DNAチップ上のプローブと相補的な配列を有するDNA断片はプローブと結合し、その部分だけが蛍光により識別でき、DNA試料中のDNA断片の配列を解明することができる。
Sequencing by Hybridization(SBH)法は、このようなDNAアレイを利用し塩基配列を調べる方法で、USP5202231にその詳細が記載されている。SBH法では、ある長さについて可能なオリゴヌクレオチドの全配列を基板上に並べ、検体DNAとのハイブリダイゼーション反応によって形成される完全に相補的なハイブリッド体を検出するもので、完全に相補的なハイブリッド体のセットを得れば、そのセットはある配列について1塩基ずつずれた配列の集合になるはずであり、それらを解析することにより判定を行うものである。
原理的には、検体DNA中に、ある特定の配列があるかどうかを調べるためには、その配列と相補的な配列をプローブとしてハイブリダイゼーション反応を行って結合の有無を調べることとなる。しかし、実際には、1種類のプローブでハイブリッドの有無を調べ、それを基にひとつの検査項目として判定することは非常に難しい。なぜなら、完全に相補的なハイブリッド体を比べると、ハイブリッド体由来の蛍光はそれぞれの配列により強度が異なる。特に、塩基配列中のGC含量はハイブリッド体の安定性に大きな影響を与える。しかも、完全に相補的ではなく1塩基のミスマッチを含む配列でも、ハイブリッド体を形成し、蛍光を発する。そのハイブリッド体は、同じ配列間で比較すると、完全マッチのものより安定性が低く蛍光は弱くなるが、完全に相補的な他のハイブリッド体よりも蛍光強度が高いということはよく見られる現象である。また、1塩基ミスマッチとはいっても、ハイブリッド体のどの位置にミスマッチを含むかによってその安定性は大きく変化する。末端にミスマッチを含む場合には、比較的安定なハイブリッド体が得られるが、ハイブリッド体の真ん中に含む場合には相補鎖の連続部分が分割されるために不安定になる。このように、ハイブリッド体の安定性に関してはいろいろな要因が絡み合い、完全に相補的か否かを判定する蛍光強度の絶対値(基準値)というのが得られないのが現状である。また、1塩基ミスマッチを完全に排除し、完全マッチからのみの蛍光を検出しうる条件というものも得られていないといえる。
配列によるハイブリッド体の安定性の違いを解消するための工夫として、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.82,pp1585−1588(1985)にはtetramethy lammonium chlorideを用いる方法が記載されている。しかし、上記問題点を完全に解消するには至っていない。
そこで、完全マッチか否かを判定する方法として、Science vol.274 p610−614,1996には15merのオリゴヌクレオチドのプローブ配列の真ん中に1塩基ミスマッチを配した配列を用意し、完全マッチと1塩基ミスマッチとのハイブリッド由来の蛍光強度を比較し、完全マッチの方が強度が強いときにポジティブと判定するような方法が記載されている。
さらに、USP5733729には上記方法に加えてより正確な判定を行うための方法として、コンピューターを用いて、得られたハイブリッド体の蛍光強度の比較から検体の塩基配列を知るための方法が開示されている。
これらの方法では、調べたい位置の核酸塩基部分をプローブの真ん中に設定し、その位置に必ず4種類のヌクレオチドセットを用意すること、及びそのようなプローブのセットを1塩基ずつずれた配列について用意することが必要とされる。そして上述のような15merのオリゴヌクレオチドを用い、真ん中に1塩基ミスマッチを有する他の3種類のプローブとの比較を行って完全マッチか否かを判定するという方法で、それぞれの安定性を、理論的に或いは経験的に評価し、より精度を得ることができるとされている。また、調べたい領域の塩基の長さがLであれば、プローブ数は4×L(5塩基であれば20種)になる。
上記のミスマッチを利用する方法は同じ配列の同じ位置の1塩基ミスマッチとの比較を行うことで判定が比較的容易である点、及びプローブ数が少なくて良い(SBHでは同様な解析に1024種のプローブが必要)点において優れた方法ではあるが、同じ領域に2塩基ミスマッチがある場合、或いは、塩基の欠損、挿入がある場合には正確な情報が得られないという重大な欠点がある。
一方、SBH法は、上記問題点を解決し、原理的にはどのような変異にも対応可能な方法ではあるが、その判定はかなり難しい。それは、ある配列の完全マッチよりも別の配列の1塩基ミスマッチの方が強度が強いことや、1塩基ミスマッチとはいっても、配列中のどの位置にミスマッチがあるかによって、そのハイブリッド体の安定性が大きく異なることによる。その結果、完全マッチ、1塩基ミスマッチ、2塩基ミスマッチ(連続、不連続)は蛍光強度から単純に判断することはできず、理論的な予測、各種配列との比較、経験的なパラメーターの蓄積といった複雑な解析を必要とする。
さらに、ひとつひとつのプローブに関してそのハイブリッド体の強度を計測し、その値を解析して遺伝子配列を決定、判定するためには、アレイを読みとる検出装置の他に大がかりなコンピューター装置を必要とし、DNAアレイを利用した簡便な遺伝子診断を行う上で大きな障害となる。
このような問題点に鑑み、本発明では、複雑な解析を必要とせず、正確に遺伝子の配列を決定する方法を提供する。
発 明 の 開 示
上述のように、ハイブリッド体の強度は種々の要因によって支配されており、15merから20mer程度の長さのプローブを用いた場合に、1塩基ミスマッチを有するハイブリッド体の蛍光強度を完全に除くことは事実上困難である。それに対し、2塩基ミスマッチを有する配列は、2塩基ミスマッチの位置、連続、不連続にかかわらず、ハイブリッド体の形成を抑制する条件を得ることが比較的容易である。
本発明は、このような発見に基づいてなされたものであって、完全マッチ配列のスポットに加えて、所定のミスマッチ数、例えば1塩基ミスマッチの配列を有するハイブリッド体のスポットも、ポジティブと見なす点にひとつの特徴を有する。
つまり、本発明の一実施態様にかかる標的一本鎖核酸の、所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法は、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1つが有する塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光標識が施された標識化一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、未反応の標識化一本鎖核酸を除去したのちに、該アレイから観察される蛍光強度を該プローブアレイ上の各々の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第1のテンプレートパターンを得る工程;
(c)他の全ての一本鎖核酸プローブのそれぞれについて、該ステップ(b)と同一の操作を行ない、該プローブアレイ上の1本鎖核酸プローブが各々の塩基配列に対して完全相補的な一本鎖核酸と二本鎖核酸を形成したときの該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第2〜第nのテンプレートパターンを得る工程;
(d)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含む第2のサンプルとを該テンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、次いで蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すサンプルパターンを得る工程;
(e)該サンプルパターンを上記工程(b)及び(c)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンの作成に用いた一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とするものである。
また、本発明の他の実施態様は、例えば1塩基ミスマッチと2塩基ミスマッチハイブリッド体の蛍光強度との間にしきい値(threshold)を設け、ポジティブとネガティブに区別する点にひとつの特徴を有する。係る他の実施態様は、標的一本鎖核酸の所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法であって、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1番目の塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ標識が施された一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、観察される蛍光を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位直とその蛍光特性との関係を示すテンプレートパターンIを得る工程;
(c)得られた第1のテンプレートパターンを解析し、各位置のプローブとミスマッチ塩基対数(i)を有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(Fi)を算出する工程;
(d)ミスマッチのない完全相補的な二本鎖核酸の蛍光量(F0)と、1塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(F1)との差(F1,0)を求め、さらに、(i+1)塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量(Fi+1)とi塩基ミスマッチの蛍光量(Fi)の差(Fi+1,i)を求め、Fi,i+1<<Fi−1,iとなるようなi設定する工程;
(e)第2番目のプローブの塩基配列に対して、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置をポジティブとし、i+1以上のミスマッチを有する塩基配列のプローブの基体上の位置をネガティブとし、ポジティブの位置が形成するテンプレートパターンIIを得る工程;
(f)(e)と同一の操作を他のすべての一本鎖核酸プローブについて行い、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置が形成するテンプレートパターンIII〜nを得る工程;
(g)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含むサンプルとを該第1のテンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すパターンを得る工程;
(h)該パターンを上記工程(b)(e)及び(f)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンに対応する一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とするものである。
そしてこのような態様を採用することで、上記ポジティブと区別されたスポットが基板上で形成するパターンを画像として得、それを予想パターンと比較することによりその配列を解析することができ、未知の遺伝子配列を容易に特定することができる。
また、本発明においては、さらにこのような1塩基ミスマッチと2塩基ミスマッチを完全に区別するためのハイブリダイゼーション反応条件を提示する。
更に、本発明にかかるハイブリダイゼーション反応方法は、標的一本鎖核酸を含むサンプルとプローブアレイとを反応させる工程において、プローブアレイ基板をサンプルを含む溶液中で熱変性し、その後基板をサンプル溶液に浸したまま、二本鎖形成反応に適した温度に降下させて反応を行なうことを特徴とするものである。
上記の方法において熱変性を行なう温度は60℃以上が好ましい。更に、二本鎖形成反応を行なう温度は40℃以上であることが好ましい。更に、熱変性に要する時間は10分以上であることが好ましい。
一方、本発明の検出方法は、上記のハイブリダイゼーション反応方法を用いたサンプルの検出方法であって、前記温度を降下させて反応を行なう工程の後、温度を上昇させた状態で洗浄を行なうことを特徴とするものである。
また、上記方法において前記サンプルを含む溶液の二本鎖形成反応における溶液濃度を高くし、前記洗浄における溶液濃度を低くすることが好ましい。更に、前記二本鎖形成反応における溶液中にホルムアミドを含有させることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下本発明について具体的に説明する。
(蛍光像による判定)
本発明の一実施態様では、ミスマッチを起こす可能性のある核酸塩基が近接して存在する場合に特に有効である。ここでは、癌抑制遺伝子p53の238番目、239番目のアミノ酸配列に対応する塩基配列を含む5’GATGGGNCTCNNGTTCAT3’を例として説明する。上記例は、発明の概要を説明するためのひとつの形態であり、いかなる形態のアレイにおいても、本発明は画像として処理するという点では同様な概念を提示しており、何らアレイの形態、プローブの配置を限定するものではない。また、当然のことながら、SBH法も本発明の解析対象である。
上記例において、Nで記した各塩基部分を4種の塩基(A、G、C、T)に置き換えたプローブの完全セットを用意した場合、つまり、3カ所(連続している必要はない)の塩基について調べる場合には、43=64種の、5カ所の場合には45=1024種のプローブが基板上に並ぶ。
64種のプローブを用いた場合の配置例を図1に示す。
64種プローブアレイを4分割した左上の領域には、最初のNがAであるプローブ(プローブ番号1〜16)が配置され、左下にはGであるようなプローブ(プローブ番号17〜32)が配置される。同様に、右上はC(プローブ番号33〜48)、右下はT(プローブ番号49〜64)となる。各領域の中で、2番目のNがAであるようなプローブは左から数えて1列目、Gは2列目、Cは3列目、そしてTは4列目に位置する。また、3番目のNがAであるようなプローブは上から数えて1行目、Gであるような配列は2行目、同様にCが3行目、Tが4行目に配置される。その結果、例えば、5’GATGGGACTCAAGTTCAT3’といった配列は最も左上のスポットに対応する。また、正常な遺伝子に相当する配列である5’ATGAACCGGAGGCCCATC3’は、右から3列目、上から3行目の位置にあるプローブDNA5’GATGGGCCTCCGGTTCAT3’とハイブリッドを形成することが期待される。
以下、1塩基ミスマッチをポジティブスポットとして扱う場合について説明する。この場合に、完全マッチ配列が42番のプローブ(正常遺伝子)であるとすると、ポジティブと判断される1塩基ミスマッチ配列は、塗りつぶされた9カ所となり、完全マッチと合わせて図2に示されるようなパターンを形成することが予想される。
これに対し、標的核酸の特定すべき配列に対する変異配列では例えば図3に示すようなパターンの変化が見られる。
本発明では、このような完全マッチと1塩基ミスマッチからなる予想される蛍光パターン像を予めコンピュータ等の記憶装置に入力しておき、所定の方法で得られる蛍光像との比較により判定を行う。この時、それぞれのポジティブスポットの蛍光強度の詳細な定量データは必要ない。単にあるしきい値に対するポジティブ、ネガティブの判定のみで良く、簡便かつコンピュータ等を使用した自動化された判定が可能となる。
(しきい値の設定)
18mer程度のプローブを用いる場合には、そのしきい値を通常1塩基ミスマッチの蛍光強度と2塩基ミスマッチによる蛍光強度との間に設定するのが好ましい。蛍光強度はそれぞれの配列組成、反応条件により異なるが、最も高い蛍光強度(通常は完全マッチのもの)の50%から25%の値、より好適には30%から20%をしきい値として設定すると良い。プローブ長が短い場合には、しきい値はさらに低くなる。
3塩基ミスマッチを含むものは最大値の1割以下の蛍光量であり、完全に区別できる。
しきい値を最大蛍光量の1/4に設定した場合、完全マッチ配列及び1塩基ミスマッチ配列を4,2塩基ミスマッチ配列を1、3塩基ミスマッチ配列を0として蛍光強度の分布を予想すると図4のようになる。
より具体的な判定方法について上記例について説明する。
ハイブリダイゼーション反応が極めて選択的に進行した場合には、強い蛍光は1点(完全マッチ)に集中する。次に感度を徐々に上げると、上記配置例では図3から予想されるように、1塩基ミスマッチは完全マッチを中心に縦横のライン状に並ぶはずである。しかし、実際の蛍光像は必ずしも強いスポットを中心に縦横それぞれ3個ずつライン状に並ぶとは限らない。1塩基ミスマッチ間の安定性の違いにより、6個がすべて同じ程度の強度を有するとは限らないため、検出されないスポットもあるが、少なくともこれらのライン状にいくつかスポットが見えるはずである。その時、残る3個の1塩基ミスマッチも予想される位置に強度の濃淡はあるものの検出できる。
また時には、完全マッチと1塩基ミスマッチが同程度の蛍光強度を与え、最初から完全マッチと1塩基ミスマッチとの10スポットからなる予想される像に近い画像が得られる。
2塩基ミスマッチは、時としてしきい値を越える場合があるが、そのような場合でも、予想パターンからのずれとして容易に判別できる。
このように予想パターンと実際に得られる蛍光像との比較により判定する本発明の方法は、検体遺伝子中の変異の有無を容易に判定でき、さらにどの塩基(複数でも可)が何に変異しているか変異の内容を同時に判定が可能であるという特徴を持つ。
また、64種のプローブによるハイブリダイゼーション反応の結果を、パターンで評価するという考えは、1スポットのみで判断する場合に比べ、より確実な判断という点で有利である。64種のDNAプローブとのハイブリッドは、それぞれの配列により熱安定性が異なるため、必ずしも完全マッチの場合が圧倒的に安定で強い蛍光を発するという保証はない。また、基板上のゴミやハイブリダイゼーション反応時のアーティファクトといったことが原因で、どれが最強のスポットで完全マッチのスポットであるか判断できないことも多い。その点パターンでの判定は、多少の蛍光量のばらつきがあってもそれを補える。
(プローブ長)
本発明に用いられるプローブ長は8merから30mer程度、より好ましくは、12merから25merである。8mer以下では1塩基ミスマッチを有するハイブリッド体の安定性は低く、完全マッチ由来の蛍光量の方が優位である。また、30merより長いプローブでは2塩基ミスマッチ体の蛍光が、場合によっては(例えば、両末端にミスマッチ箇所が存在する場合)1塩基ミスマッチよりも強くなる。
(ハイブリダイゼーション反応条件)
上記良好なしきい値を与えるハイブリダイゼーション反応の条件としては、基板全体を検体溶液中に浸したまま加熱し、基板上のDNAプローブと検体DNAの双方を同時に熱変性し、その後徐々に冷却してやや高めの温度でハイブリダイゼーション反応を行う。反応時の塩濃度は100mM以下が望ましい。
熱変性を行うための温度としては、60℃以上、好ましくは80℃以上が適当である。熱変性のための温度の設定は、DNAアレイ基板自体の安定性、検体の長さ、濃度、標識化合物の種類に依存して決められる。例えば、樹脂を塗布しその樹脂とDNAとを反応させて結合したような基板では、高温にすることにより、樹脂層が破壊されることがある。それに対し、シランカップリング剤を作製過程で用いた基板は、熱に対し比較的安定であり、さらに高温にすることができる。検体DNAが一本鎖の場合には、70℃以上で分子内二本鎖構造はほぼ解消されると考えられるが、二本鎖の場合或いは検体DNAが長い一本鎖DNAの場合には、さらに温度を上げたり、ホルムアミド等の変性剤を加えて一本鎖への解離を促進する必要がある。熱変性に要する時間は10分以上、好ましくは30分程度が良い。
ハイブリダイゼーション反応の条件は、プローブ長、配列、検体の種類を考慮し、常法に従い温度や塩濃度を変えることによって行われる。本発明のような、極めて類似した配列を区別して認識するための条件として好適に用いられるのは、食塩100mMを含む溶液中、45℃で3時間以上である。しかし、反応時間は検体濃度により大きな影響を受け、上記反応条件に限らない。高濃度の検体ならば3時間以内で充分判定が可能であり、また、検体溶液が希薄であれば、10時間以上の反応時間が必要である。ホルムアミドを加える場合には食塩濃度を高める必要がある。
(DNAアレイ基板の製法)
本ハイブリダイゼーション反応を良好に進めうるDNAアレイの作製方法として、以下にその例を示す。しかし、本発明の趣旨は、基板上のハイブリダイゼーションパターンを評価し、検体の塩基配列を決めるための簡便な方法を示すことであり、基本的に、基板の作製方法にはこだわらない。
DNAアレイでは、DNAプローブを基板表面にある官能基との反応により共有結合により固定する。該官能基とDNAとの結合様式として、例えば、ガラス表面のマレイミド基とDNA末端のSH基との結合反応を行わせる方法について示す。
マレイミド基の導入方法としては、まず、ガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次にそのアミノ基とEMCS試薬(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)との反応によりマレイミド基を導入する。DNAへのSH基の導入は、DNA自動合成機上5’−Thiol−ModifierC6(Glen Research社製)を用いる事により行うことができる。
該DNA溶液をインクジェット法により基板上にスポットを形成させ、該DNA基板上のマレイミド基とDNA末端のSH基との反応により、プローブDNAを固定化する。
インクジェット法によるマレイミド基を有するガラス基板への吐出に適したDNA溶液としては、グリセリン、尿素、チオジグリコール又はエチレングリコール、アセチレノールEH(川村ファインケミカル社製)、イソプロピルアルコールを含む溶液が好ましい。特にグリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH1%(いずれも質量%)を含む溶液が好ましい。
DNAが結合したアレイ基板は、2%ウシ血清アルブミン水溶液中に2時間浸し、ブロッキング反応を行った後、ハイブリダイゼーション反応に用いられる。
【実施例】
以下に実施例により、より詳細に説明する。
(実施例1:パターン認識 I)
1.プローブの設計
癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の248番目、249番目のアミノ酸配列に対応する塩基配列CGGAGGの中での変異の中で頻度が高いのは、1番目のCがTに、2番目のAがGに、そして249番目のアミノ酸3番目のGがTに変異している場合であることが知られている。そこで、この3カ所の塩基配列に着目して64種のプローブを設計した。
つまり、プローブ全長を18merとし、その真ん中にこの変異を含む6塩基を位置させ、その前後を共通配列で挟んだ構造で、5’ATGAACNNGAGNCCCATC3’である。ここで、Nと表した部分が4種の核酸塩基であるA、G、C、Tに対応する。プローブDNAは、検出したい配列(上記配列)と相補的な配列であるので、実際には、5’GATGGGNCTCNNGTTCAT3’となる。
図1には64種DNAプローブのDNAアレイ上での配置図を示した。各配列(配列番号:1〜64)を具体的に表1に示す。
【表1】
正常な遺伝子に相当する配列である5’ATGAACCGGAGGCCCATC3’は、右から3列目、上から3行目の位置にある42番のプローブDNA5’GATGGGCCTCCGGTTCAT3’とハイブリッドを形成することが期待される。
64種の実験でも、完全マッチ以外に1塩基ミスマッチのハイブリッド体からの蛍光が予想される。完全マッチと1塩基ミスマッチとからなる予想される蛍光パターンを図2に示す。
2.マレイミド基導入基板の作製
(基板洗浄)
1インチ角のガラス板をラックに入れ、超音波洗浄用洗剤に一晩浸した。その後、洗剤中で20分間超音波洗浄を行い、その後、水洗により洗剤を除去した。蒸留水ですすいだ後、蒸留水のはいった容器中でさらに超音波処理を20分間行った。次に、あらかじめ加温してあった1N水酸化ナトリウム溶液に10分間浸した。引き続き水洗、蒸留水洗浄を行った。
(表面処理)
1%シランカップリング剤水溶液(信越化学工業社製、商品名KBM603)に室温で20分浸し、その後、窒素ガスを両面に吹き付けて、水分を飛ばし、乾燥させた。120℃に加熱したオーブンで1時間ベークしシランカップリング処理を完結させた。続いて、EMCS(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)を2.7mg秤量し、DMSO/エタノールの1:1溶液に溶解した(最終濃度0.3mg/ml)。シランカップリンク剤処理を行ったガラス基板をこのEMCS溶液に2時間浸し、シランカップリング剤のアミノ基とEMCS溶液のカルボキシル基を反応させた。この状態でガラス表面にはEMCS由来のマレイミド基が表面に存在することになる。EMCS溶液と反応させたガラス板は蒸留水で洗浄後、窒素ガスで乾燥させ、DNAとの結合反応に用いられる。
3.DNAの基板への結合反応
(64種DNAプローブの合成)
5’末端にSH基(チオール基)を有する上記64種のプローブDNAは、(株)ベックスに依頼し合成した。
(DNAプローブの吐出)
上記64種のDNAそれぞれ用いて以下の吐出操作を行なった。各DNAを水に溶解し、SGクリア(グリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH1%を含む水溶液)を用いて最終濃度8μMになるよう希釈した。少量のサンプルが吐出できるように改造したBJプリンター用ヘッドBC62(キヤノン社製)のノズルにこのDNAの溶液を100μl充填した。各ヘッドあたり6種のDNAが吐出できるようにして2つヘッドを用い、一度に12種のDNAを吐出し、ヘッドを6回交換して、64種のDNAのそれぞれのスポットが独立して形成されるように吐出させた。
各プローブを、スポット径が70μm、ピッチが200μmとなるように設定し、8×8のマトリクス状に64種を並べてスポッティングした。その後、30分加湿チャンバー中に放置し、プローブDNAを基板に結合させる反応を行った。
・ハイブリダイゼーション反応
(ブロッキング反応)
反応終了後、1MNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて基板を洗い、ガラス表面のDNA溶液を完全に洗い流した。その後、2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸し、2時間放置し、ブロッキング反応を行った。
(モデル検体DNAの合成)
p53遺伝子の正常な配列を持ち、プローブDNAと同じ領域で同じ長さの標識DNANo.1を作製した。配列は下に示す通りで、5’末端にはローダミンを結合してある。
(ハイブリダイゼーション反応条件)
DNAアレイ基板の入ったハイブリダイゼーション反応用の袋に100mM NaClを含む10nMモデル検体DNA溶液を2ml入れ、最初に80℃で10分加熱後、インキュベーターの温度を45℃に下げ、そのまま15時間反応させた。
5.検出
(方法)
検出は、蛍光顕微鏡(ニコン社製)に画像解析処理装置ARGUS(浜松ホトニクス社製)を接続して行った。
(結果)
モデル系である18merの標識DNA No.1とのハイブリダイゼーション反応の結果得られた蛍光量を、図4に示す。蛍光量の最大値は完全に相補的である42番のプローブである。その蛍光量を最大値(100%)として、その20%にしきい値を設け、それ以上のところを黒く塗りつぶしてある。
No10,26,58の部分のスポットも蛍光をもち、予想パターン図2と良く一致していることがわかる。更にしきい値を下げることにより、予想パターンと一致する。つまり、上記3スポットに加え、完全マッチを中心に1塩基ミスマッチ配列の部分が縦横のラインに並ぶ。
(実施例2:パターン認識II)
実施例と同様に64種のプローブからなるDNAアレイ基板を作製し、モデル検体としてNo.2の配列を持つローダミン標識DNAとのハイブリダイゼーション反応を行った。No.2の配列は図1のNo.46プローブと相補的である。
ハイブリダイゼーション反応条件も実施例1と同様である。
実施例1と同様、予想されるパターンを求めたのが、図5である。それに対し、得られた結果を図6に示す。しきい値を最大値の10%に設定してハイブリダイゼーション反応の結果を黒ぬりで示す。予想との対応がよい。
(実施例3:パターン認識 III)
実施例2と同じモデル検体DNAを用いて実施例2と同様な実験を行った。但し、ハイブリダイゼーション反応に用いる検体DNA濃度を5nMとし、40℃で一晩反応させた。得られた結果を図7に示す。
しきい値を50%にすると、1塩基ミスマッチの34及び62番のプローブの位置(斜線部)に蛍光が現れ、さらに30%にまでしきい値を下げると、予想パターンに合う結果となる。この場合、NO.6と22の2塩基ミスマッチも検出されるが、1塩基ミスマッチが構成するパターンからのずれとして、2塩基ミスマッチであることが判別でき、完全マッチのスポットが46番であることが判定可能である。
実施例4(ゲノム検体DNA HSC5の調整)
実施例1におけるプローブの設計からブロッキング反応までの操作を同様に行ない、測定用のDNAアレイ基板を得た。このDNAアレイ基板を用いて以下の操作を行なった。
1)HSC5のp53遺伝子のエキソンの増幅
フランキングイントロンの塩基配列をもとにPCRプライマーを下記のように合成した。
PCR反応は、50μLのPCR反応溶液に10〜25ngのゲノムDNA、0.4μMのそれぞれのエキソンプライマーのセットを加え、94℃(30秒)、60℃(45秒)を40サイクル繰り返し反応を行なった。
増幅された産物はエキソン5〜8に対し、それぞれ269、181、171、229塩基対長であった。
2)エキソンの標識化
4つのエキソンに対応するテトラメチルローダミン標識一本鎖DNAを得るために上記増幅されたエキソンDNAの一部を鋳型として、0.2μMのセンスプライマーと、10μMのテトラメチルローダミン標識dUTP(Fluoro Red、Amersham Pharmacia Biotech社製)を用い、96℃(30秒)、50℃(30秒)及び60℃(4分)のサイクルのPCR反応を25サイクル行なった。
得られた一本鎖DNAはゲル濾過により精製した。
3)標識化エキソンを用いてのハイブリダイゼーション反応
上記テトラメチルローダミン標識一本鎖エキソンDNAを20%ホルムアミドを含む6×SSPE(0.9M NaCl、60μM NaH2PO4、6μM EDTA)溶液に溶解し、DNAアレイ基板の入ったハイブリダイゼーション反応用の袋に2mL入れ、最初に80℃2〜10分加熱後インキュベーターの温度を45℃に下げそのまま15時間反応させた。
その後上記DNAアレイを、2×SSPE(0.3M NaCl、20μM NaH2PO4、2μM EDTA)溶液に浸し、55℃に温度を上げて洗いの操作を行なった。
検出
実施例1と同様にして検出操作を行なった。
結果
No.10、26、58の部分のスポットも蛍光をもち、予想パターン(図8)と良く一致していることがわかる(図8参照)。
実施例5(HSC4のp53遺伝子の検出)
実施例1と同様に64種のプローブからなるDNAアレイ基板を得た。以下、ローダミン標識DNAの代わりにモデル検体としてNo.2の配列を有するHSC4を用い実施例2と同様にハイブリダイゼーション反応を行なった。なお、反応条件は実施例4と同様とした。その結果、No.14の位置に蛍光が見られ予想パターンとの対応が良い結果が得られた。
産業上の利用可能性
このように、単にハイブリッドの有無のみで判定する従来の方法に比べ、本発明の方法はさらに1塩基ミスマッチの蛍光量を考慮に入れることにより精度の良い検出が可能となった。
DNAプローブとのハイブリッドは、それぞれの配列により熱安定性が異なるため、必ずしも完全マッチの場合が圧倒的に安定で強い蛍光を発するという保証はない。パターンでの判定は、1スポットのみで判断する場合に比べ、より確実な判断という点で有利である。
基板上のゴミやハイブリダイゼーション反応時のアーティファクトといったことが原因で、どれが最強のスポットで完全マッチのスポットであるか判断できないことも多い。その点、本発明におけるパターンでの判定は、多少の蛍光量のばらつきがあってもそれを補えることが可能となる。
従って、本発明によって、遺伝子の変異を、簡便かつ効率的にスクリーニングできる検査方法を提供することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、64種のプローブを用いた場合の配置例を示す。
図2は、標的核酸の配列に対して基板上のポジティブと判断される領域の配置のパターンを示す図である。
図3は、標的核酸に対する変異配列において基板上でポジティブと判断される領域の配置のパターンを示す図である。
図4は、実施例1で得られた蛍光量のパターンを示す図である。
図5は、実施例2において予想されるパターンを示す図である。
図6は、実施例2で得られた蛍光量のしきい値10%でのパターンを示す図である。
図7は、実施例3で得られた蛍光量のパターンを示す図である。
図8は、ゲノムDNAを用いたハイブリダイゼーション反応の結果を示す図である。
本発明はDNA診断及び治療に使用されるDNAチップを用いた核酸塩基配列を特定する方法に関する。
背 景 技 術
核酸等の物質の配列を決定し、或いはその配列をチェックする手法のひとつにDNAアレイを利用する方法がある。USP5445934には、1インチ角に10万個以上のオリゴヌクレオチドプローブを結合したDNAアレイの開示がある。このようなDNAアレイは、少量の検体で一度に多項目を検査できるという利点がある。このようなDNAチップ上に、蛍光標識した検体を流すと、上記DNAチップ上のプローブと相補的な配列を有するDNA断片はプローブと結合し、その部分だけが蛍光により識別でき、DNA試料中のDNA断片の配列を解明することができる。
Sequencing by Hybridization(SBH)法は、このようなDNAアレイを利用し塩基配列を調べる方法で、USP5202231にその詳細が記載されている。SBH法では、ある長さについて可能なオリゴヌクレオチドの全配列を基板上に並べ、検体DNAとのハイブリダイゼーション反応によって形成される完全に相補的なハイブリッド体を検出するもので、完全に相補的なハイブリッド体のセットを得れば、そのセットはある配列について1塩基ずつずれた配列の集合になるはずであり、それらを解析することにより判定を行うものである。
原理的には、検体DNA中に、ある特定の配列があるかどうかを調べるためには、その配列と相補的な配列をプローブとしてハイブリダイゼーション反応を行って結合の有無を調べることとなる。しかし、実際には、1種類のプローブでハイブリッドの有無を調べ、それを基にひとつの検査項目として判定することは非常に難しい。なぜなら、完全に相補的なハイブリッド体を比べると、ハイブリッド体由来の蛍光はそれぞれの配列により強度が異なる。特に、塩基配列中のGC含量はハイブリッド体の安定性に大きな影響を与える。しかも、完全に相補的ではなく1塩基のミスマッチを含む配列でも、ハイブリッド体を形成し、蛍光を発する。そのハイブリッド体は、同じ配列間で比較すると、完全マッチのものより安定性が低く蛍光は弱くなるが、完全に相補的な他のハイブリッド体よりも蛍光強度が高いということはよく見られる現象である。また、1塩基ミスマッチとはいっても、ハイブリッド体のどの位置にミスマッチを含むかによってその安定性は大きく変化する。末端にミスマッチを含む場合には、比較的安定なハイブリッド体が得られるが、ハイブリッド体の真ん中に含む場合には相補鎖の連続部分が分割されるために不安定になる。このように、ハイブリッド体の安定性に関してはいろいろな要因が絡み合い、完全に相補的か否かを判定する蛍光強度の絶対値(基準値)というのが得られないのが現状である。また、1塩基ミスマッチを完全に排除し、完全マッチからのみの蛍光を検出しうる条件というものも得られていないといえる。
配列によるハイブリッド体の安定性の違いを解消するための工夫として、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.82,pp1585−1588(1985)にはtetramethy lammonium chlorideを用いる方法が記載されている。しかし、上記問題点を完全に解消するには至っていない。
そこで、完全マッチか否かを判定する方法として、Science vol.274 p610−614,1996には15merのオリゴヌクレオチドのプローブ配列の真ん中に1塩基ミスマッチを配した配列を用意し、完全マッチと1塩基ミスマッチとのハイブリッド由来の蛍光強度を比較し、完全マッチの方が強度が強いときにポジティブと判定するような方法が記載されている。
さらに、USP5733729には上記方法に加えてより正確な判定を行うための方法として、コンピューターを用いて、得られたハイブリッド体の蛍光強度の比較から検体の塩基配列を知るための方法が開示されている。
これらの方法では、調べたい位置の核酸塩基部分をプローブの真ん中に設定し、その位置に必ず4種類のヌクレオチドセットを用意すること、及びそのようなプローブのセットを1塩基ずつずれた配列について用意することが必要とされる。そして上述のような15merのオリゴヌクレオチドを用い、真ん中に1塩基ミスマッチを有する他の3種類のプローブとの比較を行って完全マッチか否かを判定するという方法で、それぞれの安定性を、理論的に或いは経験的に評価し、より精度を得ることができるとされている。また、調べたい領域の塩基の長さがLであれば、プローブ数は4×L(5塩基であれば20種)になる。
上記のミスマッチを利用する方法は同じ配列の同じ位置の1塩基ミスマッチとの比較を行うことで判定が比較的容易である点、及びプローブ数が少なくて良い(SBHでは同様な解析に1024種のプローブが必要)点において優れた方法ではあるが、同じ領域に2塩基ミスマッチがある場合、或いは、塩基の欠損、挿入がある場合には正確な情報が得られないという重大な欠点がある。
一方、SBH法は、上記問題点を解決し、原理的にはどのような変異にも対応可能な方法ではあるが、その判定はかなり難しい。それは、ある配列の完全マッチよりも別の配列の1塩基ミスマッチの方が強度が強いことや、1塩基ミスマッチとはいっても、配列中のどの位置にミスマッチがあるかによって、そのハイブリッド体の安定性が大きく異なることによる。その結果、完全マッチ、1塩基ミスマッチ、2塩基ミスマッチ(連続、不連続)は蛍光強度から単純に判断することはできず、理論的な予測、各種配列との比較、経験的なパラメーターの蓄積といった複雑な解析を必要とする。
さらに、ひとつひとつのプローブに関してそのハイブリッド体の強度を計測し、その値を解析して遺伝子配列を決定、判定するためには、アレイを読みとる検出装置の他に大がかりなコンピューター装置を必要とし、DNAアレイを利用した簡便な遺伝子診断を行う上で大きな障害となる。
このような問題点に鑑み、本発明では、複雑な解析を必要とせず、正確に遺伝子の配列を決定する方法を提供する。
発 明 の 開 示
上述のように、ハイブリッド体の強度は種々の要因によって支配されており、15merから20mer程度の長さのプローブを用いた場合に、1塩基ミスマッチを有するハイブリッド体の蛍光強度を完全に除くことは事実上困難である。それに対し、2塩基ミスマッチを有する配列は、2塩基ミスマッチの位置、連続、不連続にかかわらず、ハイブリッド体の形成を抑制する条件を得ることが比較的容易である。
本発明は、このような発見に基づいてなされたものであって、完全マッチ配列のスポットに加えて、所定のミスマッチ数、例えば1塩基ミスマッチの配列を有するハイブリッド体のスポットも、ポジティブと見なす点にひとつの特徴を有する。
つまり、本発明の一実施態様にかかる標的一本鎖核酸の、所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法は、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1つが有する塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光標識が施された標識化一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、未反応の標識化一本鎖核酸を除去したのちに、該アレイから観察される蛍光強度を該プローブアレイ上の各々の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第1のテンプレートパターンを得る工程;
(c)他の全ての一本鎖核酸プローブのそれぞれについて、該ステップ(b)と同一の操作を行ない、該プローブアレイ上の1本鎖核酸プローブが各々の塩基配列に対して完全相補的な一本鎖核酸と二本鎖核酸を形成したときの該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第2〜第nのテンプレートパターンを得る工程;
(d)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含む第2のサンプルとを該テンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、次いで蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すサンプルパターンを得る工程;
(e)該サンプルパターンを上記工程(b)及び(c)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンの作成に用いた一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とするものである。
また、本発明の他の実施態様は、例えば1塩基ミスマッチと2塩基ミスマッチハイブリッド体の蛍光強度との間にしきい値(threshold)を設け、ポジティブとネガティブに区別する点にひとつの特徴を有する。係る他の実施態様は、標的一本鎖核酸の所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法であって、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1番目の塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ標識が施された一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、観察される蛍光を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位直とその蛍光特性との関係を示すテンプレートパターンIを得る工程;
(c)得られた第1のテンプレートパターンを解析し、各位置のプローブとミスマッチ塩基対数(i)を有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(Fi)を算出する工程;
(d)ミスマッチのない完全相補的な二本鎖核酸の蛍光量(F0)と、1塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(F1)との差(F1,0)を求め、さらに、(i+1)塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量(Fi+1)とi塩基ミスマッチの蛍光量(Fi)の差(Fi+1,i)を求め、Fi,i+1<<Fi−1,iとなるようなi設定する工程;
(e)第2番目のプローブの塩基配列に対して、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置をポジティブとし、i+1以上のミスマッチを有する塩基配列のプローブの基体上の位置をネガティブとし、ポジティブの位置が形成するテンプレートパターンIIを得る工程;
(f)(e)と同一の操作を他のすべての一本鎖核酸プローブについて行い、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置が形成するテンプレートパターンIII〜nを得る工程;
(g)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含むサンプルとを該第1のテンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すパターンを得る工程;
(h)該パターンを上記工程(b)(e)及び(f)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンに対応する一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とするものである。
そしてこのような態様を採用することで、上記ポジティブと区別されたスポットが基板上で形成するパターンを画像として得、それを予想パターンと比較することによりその配列を解析することができ、未知の遺伝子配列を容易に特定することができる。
また、本発明においては、さらにこのような1塩基ミスマッチと2塩基ミスマッチを完全に区別するためのハイブリダイゼーション反応条件を提示する。
更に、本発明にかかるハイブリダイゼーション反応方法は、標的一本鎖核酸を含むサンプルとプローブアレイとを反応させる工程において、プローブアレイ基板をサンプルを含む溶液中で熱変性し、その後基板をサンプル溶液に浸したまま、二本鎖形成反応に適した温度に降下させて反応を行なうことを特徴とするものである。
上記の方法において熱変性を行なう温度は60℃以上が好ましい。更に、二本鎖形成反応を行なう温度は40℃以上であることが好ましい。更に、熱変性に要する時間は10分以上であることが好ましい。
一方、本発明の検出方法は、上記のハイブリダイゼーション反応方法を用いたサンプルの検出方法であって、前記温度を降下させて反応を行なう工程の後、温度を上昇させた状態で洗浄を行なうことを特徴とするものである。
また、上記方法において前記サンプルを含む溶液の二本鎖形成反応における溶液濃度を高くし、前記洗浄における溶液濃度を低くすることが好ましい。更に、前記二本鎖形成反応における溶液中にホルムアミドを含有させることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下本発明について具体的に説明する。
(蛍光像による判定)
本発明の一実施態様では、ミスマッチを起こす可能性のある核酸塩基が近接して存在する場合に特に有効である。ここでは、癌抑制遺伝子p53の238番目、239番目のアミノ酸配列に対応する塩基配列を含む5’GATGGGNCTCNNGTTCAT3’を例として説明する。上記例は、発明の概要を説明するためのひとつの形態であり、いかなる形態のアレイにおいても、本発明は画像として処理するという点では同様な概念を提示しており、何らアレイの形態、プローブの配置を限定するものではない。また、当然のことながら、SBH法も本発明の解析対象である。
上記例において、Nで記した各塩基部分を4種の塩基(A、G、C、T)に置き換えたプローブの完全セットを用意した場合、つまり、3カ所(連続している必要はない)の塩基について調べる場合には、43=64種の、5カ所の場合には45=1024種のプローブが基板上に並ぶ。
64種のプローブを用いた場合の配置例を図1に示す。
64種プローブアレイを4分割した左上の領域には、最初のNがAであるプローブ(プローブ番号1〜16)が配置され、左下にはGであるようなプローブ(プローブ番号17〜32)が配置される。同様に、右上はC(プローブ番号33〜48)、右下はT(プローブ番号49〜64)となる。各領域の中で、2番目のNがAであるようなプローブは左から数えて1列目、Gは2列目、Cは3列目、そしてTは4列目に位置する。また、3番目のNがAであるようなプローブは上から数えて1行目、Gであるような配列は2行目、同様にCが3行目、Tが4行目に配置される。その結果、例えば、5’GATGGGACTCAAGTTCAT3’といった配列は最も左上のスポットに対応する。また、正常な遺伝子に相当する配列である5’ATGAACCGGAGGCCCATC3’は、右から3列目、上から3行目の位置にあるプローブDNA5’GATGGGCCTCCGGTTCAT3’とハイブリッドを形成することが期待される。
以下、1塩基ミスマッチをポジティブスポットとして扱う場合について説明する。この場合に、完全マッチ配列が42番のプローブ(正常遺伝子)であるとすると、ポジティブと判断される1塩基ミスマッチ配列は、塗りつぶされた9カ所となり、完全マッチと合わせて図2に示されるようなパターンを形成することが予想される。
これに対し、標的核酸の特定すべき配列に対する変異配列では例えば図3に示すようなパターンの変化が見られる。
本発明では、このような完全マッチと1塩基ミスマッチからなる予想される蛍光パターン像を予めコンピュータ等の記憶装置に入力しておき、所定の方法で得られる蛍光像との比較により判定を行う。この時、それぞれのポジティブスポットの蛍光強度の詳細な定量データは必要ない。単にあるしきい値に対するポジティブ、ネガティブの判定のみで良く、簡便かつコンピュータ等を使用した自動化された判定が可能となる。
(しきい値の設定)
18mer程度のプローブを用いる場合には、そのしきい値を通常1塩基ミスマッチの蛍光強度と2塩基ミスマッチによる蛍光強度との間に設定するのが好ましい。蛍光強度はそれぞれの配列組成、反応条件により異なるが、最も高い蛍光強度(通常は完全マッチのもの)の50%から25%の値、より好適には30%から20%をしきい値として設定すると良い。プローブ長が短い場合には、しきい値はさらに低くなる。
3塩基ミスマッチを含むものは最大値の1割以下の蛍光量であり、完全に区別できる。
しきい値を最大蛍光量の1/4に設定した場合、完全マッチ配列及び1塩基ミスマッチ配列を4,2塩基ミスマッチ配列を1、3塩基ミスマッチ配列を0として蛍光強度の分布を予想すると図4のようになる。
より具体的な判定方法について上記例について説明する。
ハイブリダイゼーション反応が極めて選択的に進行した場合には、強い蛍光は1点(完全マッチ)に集中する。次に感度を徐々に上げると、上記配置例では図3から予想されるように、1塩基ミスマッチは完全マッチを中心に縦横のライン状に並ぶはずである。しかし、実際の蛍光像は必ずしも強いスポットを中心に縦横それぞれ3個ずつライン状に並ぶとは限らない。1塩基ミスマッチ間の安定性の違いにより、6個がすべて同じ程度の強度を有するとは限らないため、検出されないスポットもあるが、少なくともこれらのライン状にいくつかスポットが見えるはずである。その時、残る3個の1塩基ミスマッチも予想される位置に強度の濃淡はあるものの検出できる。
また時には、完全マッチと1塩基ミスマッチが同程度の蛍光強度を与え、最初から完全マッチと1塩基ミスマッチとの10スポットからなる予想される像に近い画像が得られる。
2塩基ミスマッチは、時としてしきい値を越える場合があるが、そのような場合でも、予想パターンからのずれとして容易に判別できる。
このように予想パターンと実際に得られる蛍光像との比較により判定する本発明の方法は、検体遺伝子中の変異の有無を容易に判定でき、さらにどの塩基(複数でも可)が何に変異しているか変異の内容を同時に判定が可能であるという特徴を持つ。
また、64種のプローブによるハイブリダイゼーション反応の結果を、パターンで評価するという考えは、1スポットのみで判断する場合に比べ、より確実な判断という点で有利である。64種のDNAプローブとのハイブリッドは、それぞれの配列により熱安定性が異なるため、必ずしも完全マッチの場合が圧倒的に安定で強い蛍光を発するという保証はない。また、基板上のゴミやハイブリダイゼーション反応時のアーティファクトといったことが原因で、どれが最強のスポットで完全マッチのスポットであるか判断できないことも多い。その点パターンでの判定は、多少の蛍光量のばらつきがあってもそれを補える。
(プローブ長)
本発明に用いられるプローブ長は8merから30mer程度、より好ましくは、12merから25merである。8mer以下では1塩基ミスマッチを有するハイブリッド体の安定性は低く、完全マッチ由来の蛍光量の方が優位である。また、30merより長いプローブでは2塩基ミスマッチ体の蛍光が、場合によっては(例えば、両末端にミスマッチ箇所が存在する場合)1塩基ミスマッチよりも強くなる。
(ハイブリダイゼーション反応条件)
上記良好なしきい値を与えるハイブリダイゼーション反応の条件としては、基板全体を検体溶液中に浸したまま加熱し、基板上のDNAプローブと検体DNAの双方を同時に熱変性し、その後徐々に冷却してやや高めの温度でハイブリダイゼーション反応を行う。反応時の塩濃度は100mM以下が望ましい。
熱変性を行うための温度としては、60℃以上、好ましくは80℃以上が適当である。熱変性のための温度の設定は、DNAアレイ基板自体の安定性、検体の長さ、濃度、標識化合物の種類に依存して決められる。例えば、樹脂を塗布しその樹脂とDNAとを反応させて結合したような基板では、高温にすることにより、樹脂層が破壊されることがある。それに対し、シランカップリング剤を作製過程で用いた基板は、熱に対し比較的安定であり、さらに高温にすることができる。検体DNAが一本鎖の場合には、70℃以上で分子内二本鎖構造はほぼ解消されると考えられるが、二本鎖の場合或いは検体DNAが長い一本鎖DNAの場合には、さらに温度を上げたり、ホルムアミド等の変性剤を加えて一本鎖への解離を促進する必要がある。熱変性に要する時間は10分以上、好ましくは30分程度が良い。
ハイブリダイゼーション反応の条件は、プローブ長、配列、検体の種類を考慮し、常法に従い温度や塩濃度を変えることによって行われる。本発明のような、極めて類似した配列を区別して認識するための条件として好適に用いられるのは、食塩100mMを含む溶液中、45℃で3時間以上である。しかし、反応時間は検体濃度により大きな影響を受け、上記反応条件に限らない。高濃度の検体ならば3時間以内で充分判定が可能であり、また、検体溶液が希薄であれば、10時間以上の反応時間が必要である。ホルムアミドを加える場合には食塩濃度を高める必要がある。
(DNAアレイ基板の製法)
本ハイブリダイゼーション反応を良好に進めうるDNAアレイの作製方法として、以下にその例を示す。しかし、本発明の趣旨は、基板上のハイブリダイゼーションパターンを評価し、検体の塩基配列を決めるための簡便な方法を示すことであり、基本的に、基板の作製方法にはこだわらない。
DNAアレイでは、DNAプローブを基板表面にある官能基との反応により共有結合により固定する。該官能基とDNAとの結合様式として、例えば、ガラス表面のマレイミド基とDNA末端のSH基との結合反応を行わせる方法について示す。
マレイミド基の導入方法としては、まず、ガラス基板にアミノシランカップリング剤を反応させ、次にそのアミノ基とEMCS試薬(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)との反応によりマレイミド基を導入する。DNAへのSH基の導入は、DNA自動合成機上5’−Thiol−ModifierC6(Glen Research社製)を用いる事により行うことができる。
該DNA溶液をインクジェット法により基板上にスポットを形成させ、該DNA基板上のマレイミド基とDNA末端のSH基との反応により、プローブDNAを固定化する。
インクジェット法によるマレイミド基を有するガラス基板への吐出に適したDNA溶液としては、グリセリン、尿素、チオジグリコール又はエチレングリコール、アセチレノールEH(川村ファインケミカル社製)、イソプロピルアルコールを含む溶液が好ましい。特にグリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH1%(いずれも質量%)を含む溶液が好ましい。
DNAが結合したアレイ基板は、2%ウシ血清アルブミン水溶液中に2時間浸し、ブロッキング反応を行った後、ハイブリダイゼーション反応に用いられる。
【実施例】
以下に実施例により、より詳細に説明する。
(実施例1:パターン認識 I)
1.プローブの設計
癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の248番目、249番目のアミノ酸配列に対応する塩基配列CGGAGGの中での変異の中で頻度が高いのは、1番目のCがTに、2番目のAがGに、そして249番目のアミノ酸3番目のGがTに変異している場合であることが知られている。そこで、この3カ所の塩基配列に着目して64種のプローブを設計した。
つまり、プローブ全長を18merとし、その真ん中にこの変異を含む6塩基を位置させ、その前後を共通配列で挟んだ構造で、5’ATGAACNNGAGNCCCATC3’である。ここで、Nと表した部分が4種の核酸塩基であるA、G、C、Tに対応する。プローブDNAは、検出したい配列(上記配列)と相補的な配列であるので、実際には、5’GATGGGNCTCNNGTTCAT3’となる。
図1には64種DNAプローブのDNAアレイ上での配置図を示した。各配列(配列番号:1〜64)を具体的に表1に示す。
【表1】
正常な遺伝子に相当する配列である5’ATGAACCGGAGGCCCATC3’は、右から3列目、上から3行目の位置にある42番のプローブDNA5’GATGGGCCTCCGGTTCAT3’とハイブリッドを形成することが期待される。
64種の実験でも、完全マッチ以外に1塩基ミスマッチのハイブリッド体からの蛍光が予想される。完全マッチと1塩基ミスマッチとからなる予想される蛍光パターンを図2に示す。
2.マレイミド基導入基板の作製
(基板洗浄)
1インチ角のガラス板をラックに入れ、超音波洗浄用洗剤に一晩浸した。その後、洗剤中で20分間超音波洗浄を行い、その後、水洗により洗剤を除去した。蒸留水ですすいだ後、蒸留水のはいった容器中でさらに超音波処理を20分間行った。次に、あらかじめ加温してあった1N水酸化ナトリウム溶液に10分間浸した。引き続き水洗、蒸留水洗浄を行った。
(表面処理)
1%シランカップリング剤水溶液(信越化学工業社製、商品名KBM603)に室温で20分浸し、その後、窒素ガスを両面に吹き付けて、水分を飛ばし、乾燥させた。120℃に加熱したオーブンで1時間ベークしシランカップリング処理を完結させた。続いて、EMCS(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide:Dojin社製)を2.7mg秤量し、DMSO/エタノールの1:1溶液に溶解した(最終濃度0.3mg/ml)。シランカップリンク剤処理を行ったガラス基板をこのEMCS溶液に2時間浸し、シランカップリング剤のアミノ基とEMCS溶液のカルボキシル基を反応させた。この状態でガラス表面にはEMCS由来のマレイミド基が表面に存在することになる。EMCS溶液と反応させたガラス板は蒸留水で洗浄後、窒素ガスで乾燥させ、DNAとの結合反応に用いられる。
3.DNAの基板への結合反応
(64種DNAプローブの合成)
5’末端にSH基(チオール基)を有する上記64種のプローブDNAは、(株)ベックスに依頼し合成した。
(DNAプローブの吐出)
上記64種のDNAそれぞれ用いて以下の吐出操作を行なった。各DNAを水に溶解し、SGクリア(グリセリン7.5%、尿素7.5%、チオジグリコール7.5%、アセチレノールEH1%を含む水溶液)を用いて最終濃度8μMになるよう希釈した。少量のサンプルが吐出できるように改造したBJプリンター用ヘッドBC62(キヤノン社製)のノズルにこのDNAの溶液を100μl充填した。各ヘッドあたり6種のDNAが吐出できるようにして2つヘッドを用い、一度に12種のDNAを吐出し、ヘッドを6回交換して、64種のDNAのそれぞれのスポットが独立して形成されるように吐出させた。
各プローブを、スポット径が70μm、ピッチが200μmとなるように設定し、8×8のマトリクス状に64種を並べてスポッティングした。その後、30分加湿チャンバー中に放置し、プローブDNAを基板に結合させる反応を行った。
・ハイブリダイゼーション反応
(ブロッキング反応)
反応終了後、1MNaCl/50mMリン酸緩衝液(pH7.0)溶液にて基板を洗い、ガラス表面のDNA溶液を完全に洗い流した。その後、2%ウシ血清アルブミン水溶液中に浸し、2時間放置し、ブロッキング反応を行った。
(モデル検体DNAの合成)
p53遺伝子の正常な配列を持ち、プローブDNAと同じ領域で同じ長さの標識DNANo.1を作製した。配列は下に示す通りで、5’末端にはローダミンを結合してある。
(ハイブリダイゼーション反応条件)
DNAアレイ基板の入ったハイブリダイゼーション反応用の袋に100mM NaClを含む10nMモデル検体DNA溶液を2ml入れ、最初に80℃で10分加熱後、インキュベーターの温度を45℃に下げ、そのまま15時間反応させた。
5.検出
(方法)
検出は、蛍光顕微鏡(ニコン社製)に画像解析処理装置ARGUS(浜松ホトニクス社製)を接続して行った。
(結果)
モデル系である18merの標識DNA No.1とのハイブリダイゼーション反応の結果得られた蛍光量を、図4に示す。蛍光量の最大値は完全に相補的である42番のプローブである。その蛍光量を最大値(100%)として、その20%にしきい値を設け、それ以上のところを黒く塗りつぶしてある。
No10,26,58の部分のスポットも蛍光をもち、予想パターン図2と良く一致していることがわかる。更にしきい値を下げることにより、予想パターンと一致する。つまり、上記3スポットに加え、完全マッチを中心に1塩基ミスマッチ配列の部分が縦横のラインに並ぶ。
(実施例2:パターン認識II)
実施例と同様に64種のプローブからなるDNAアレイ基板を作製し、モデル検体としてNo.2の配列を持つローダミン標識DNAとのハイブリダイゼーション反応を行った。No.2の配列は図1のNo.46プローブと相補的である。
ハイブリダイゼーション反応条件も実施例1と同様である。
実施例1と同様、予想されるパターンを求めたのが、図5である。それに対し、得られた結果を図6に示す。しきい値を最大値の10%に設定してハイブリダイゼーション反応の結果を黒ぬりで示す。予想との対応がよい。
(実施例3:パターン認識 III)
実施例2と同じモデル検体DNAを用いて実施例2と同様な実験を行った。但し、ハイブリダイゼーション反応に用いる検体DNA濃度を5nMとし、40℃で一晩反応させた。得られた結果を図7に示す。
しきい値を50%にすると、1塩基ミスマッチの34及び62番のプローブの位置(斜線部)に蛍光が現れ、さらに30%にまでしきい値を下げると、予想パターンに合う結果となる。この場合、NO.6と22の2塩基ミスマッチも検出されるが、1塩基ミスマッチが構成するパターンからのずれとして、2塩基ミスマッチであることが判別でき、完全マッチのスポットが46番であることが判定可能である。
実施例4(ゲノム検体DNA HSC5の調整)
実施例1におけるプローブの設計からブロッキング反応までの操作を同様に行ない、測定用のDNAアレイ基板を得た。このDNAアレイ基板を用いて以下の操作を行なった。
1)HSC5のp53遺伝子のエキソンの増幅
フランキングイントロンの塩基配列をもとにPCRプライマーを下記のように合成した。
PCR反応は、50μLのPCR反応溶液に10〜25ngのゲノムDNA、0.4μMのそれぞれのエキソンプライマーのセットを加え、94℃(30秒)、60℃(45秒)を40サイクル繰り返し反応を行なった。
増幅された産物はエキソン5〜8に対し、それぞれ269、181、171、229塩基対長であった。
2)エキソンの標識化
4つのエキソンに対応するテトラメチルローダミン標識一本鎖DNAを得るために上記増幅されたエキソンDNAの一部を鋳型として、0.2μMのセンスプライマーと、10μMのテトラメチルローダミン標識dUTP(Fluoro Red、Amersham Pharmacia Biotech社製)を用い、96℃(30秒)、50℃(30秒)及び60℃(4分)のサイクルのPCR反応を25サイクル行なった。
得られた一本鎖DNAはゲル濾過により精製した。
3)標識化エキソンを用いてのハイブリダイゼーション反応
上記テトラメチルローダミン標識一本鎖エキソンDNAを20%ホルムアミドを含む6×SSPE(0.9M NaCl、60μM NaH2PO4、6μM EDTA)溶液に溶解し、DNAアレイ基板の入ったハイブリダイゼーション反応用の袋に2mL入れ、最初に80℃2〜10分加熱後インキュベーターの温度を45℃に下げそのまま15時間反応させた。
その後上記DNAアレイを、2×SSPE(0.3M NaCl、20μM NaH2PO4、2μM EDTA)溶液に浸し、55℃に温度を上げて洗いの操作を行なった。
検出
実施例1と同様にして検出操作を行なった。
結果
No.10、26、58の部分のスポットも蛍光をもち、予想パターン(図8)と良く一致していることがわかる(図8参照)。
実施例5(HSC4のp53遺伝子の検出)
実施例1と同様に64種のプローブからなるDNAアレイ基板を得た。以下、ローダミン標識DNAの代わりにモデル検体としてNo.2の配列を有するHSC4を用い実施例2と同様にハイブリダイゼーション反応を行なった。なお、反応条件は実施例4と同様とした。その結果、No.14の位置に蛍光が見られ予想パターンとの対応が良い結果が得られた。
産業上の利用可能性
このように、単にハイブリッドの有無のみで判定する従来の方法に比べ、本発明の方法はさらに1塩基ミスマッチの蛍光量を考慮に入れることにより精度の良い検出が可能となった。
DNAプローブとのハイブリッドは、それぞれの配列により熱安定性が異なるため、必ずしも完全マッチの場合が圧倒的に安定で強い蛍光を発するという保証はない。パターンでの判定は、1スポットのみで判断する場合に比べ、より確実な判断という点で有利である。
基板上のゴミやハイブリダイゼーション反応時のアーティファクトといったことが原因で、どれが最強のスポットで完全マッチのスポットであるか判断できないことも多い。その点、本発明におけるパターンでの判定は、多少の蛍光量のばらつきがあってもそれを補えることが可能となる。
従って、本発明によって、遺伝子の変異を、簡便かつ効率的にスクリーニングできる検査方法を提供することができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、64種のプローブを用いた場合の配置例を示す。
図2は、標的核酸の配列に対して基板上のポジティブと判断される領域の配置のパターンを示す図である。
図3は、標的核酸に対する変異配列において基板上でポジティブと判断される領域の配置のパターンを示す図である。
図4は、実施例1で得られた蛍光量のパターンを示す図である。
図5は、実施例2において予想されるパターンを示す図である。
図6は、実施例2で得られた蛍光量のしきい値10%でのパターンを示す図である。
図7は、実施例3で得られた蛍光量のパターンを示す図である。
図8は、ゲノムDNAを用いたハイブリダイゼーション反応の結果を示す図である。
Claims (15)
- 標的一本鎖核酸の所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法であって、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基板上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1つが有する塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光標識が施された標識化一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、未反応の標識化一本鎖核酸を除去したのちに、該アレイから観察される蛍光強度を該プローブアレイ上の各々の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第1のテンプレートパターンを得る工程;
(c)他の全ての一本鎖核酸プローブのそれぞれについて、該ステップ(b)と同一の操作を行ない、該プローブアレイ上の1本鎖核酸プローブが各々の塩基配列に対して完全相補的な一本鎖核酸と二本鎖核酸を形成したときの該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示す第2〜第nのテンプレートパターンを得る工程;
(d)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含む第2のサンプルとを該テンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、次いで蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すサンプルパターンを得る工程;
(e)該サンプルパターンを上記工程(b)及び(c)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンの作成に用いた一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とする標的一本鎖核酸の、所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法。 - 標的一本鎖核酸の所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法であって、
(a)該未知の塩基配列の予想される複数の塩基配列の各々に対して相補的な塩基配列を有する1番〜n番(n≧2)の複数種の一本鎖核酸プローブの各々が基体上に互いに隔離されるように配置されているプローブアレイを用意する工程;
(b)該一本鎖核酸プローブの内の1番目の塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ標識が施された一本鎖核酸を含む第1のサンプルと該プローブアレイとを互いに相補的な一本鎖核酸同士が二本鎖核酸を形成する条件下で反応させ、観察される蛍光を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すテンプレートパターンIを得る工程;
(c)得られた第1のテンプレートパターンを解析し、各位置のプローブとミスマッチ塩基対数(i)を有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(Fi)を算出する工程;
(d)ミスマッチのない完全相補的な二本鎖核酸の蛍光量(F0)と、1塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量の平均値(F1)との差(F1,0)を求め、さらに、(i+1)塩基ミスマッチを有する二本鎖核酸の蛍光量(Fi+1)とi塩基ミスマッチの蛍光量(Fi)の差(Fi+1,i)を求め、Fi,i+1<<Fi−1,iとなるようなiを設定する工程;
(e)第2番目のプローブの塩基配列に対して、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置をポジティブとし、i+1以上のミスマッチを有する塩基配列のプローブの基体上の位置をネガティブとし、ポジティブの位置が形成するテンプレートパターンIIを得る工程;
(f)(e)と同一の操作を他のすべての一本鎖核酸プローブについて行い、ミスマッチ塩基対の数がi以下になる塩基配列を有する一本鎖核酸プローブの基体上の位置が形成するテンプレートパターンIII〜nを得る工程;
(g)該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含むサンプルとを該第1のテンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させ、蛍光の有無及び強度を該プローブアレイ上の各々の塩基配列の一本鎖核酸プローブについて測定し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すパターンを得る工程;
(h)該パターンを上記工程(b)(e)及び(f)で得たn個のテンプレートパターンと対比し、該パターンと実質的に一致するテンプレートパターンがある場合に、そのテンプレートパターンに対応する一本鎖核酸の塩基配列を該標的一本鎖核酸の、未知の塩基配列として特定する工程、
を有することを特徴とする標的一本鎖核酸の、所定の部位の、未知の塩基配列を特定する方法。 - 該プローブアレイと該標的一本鎖核酸を含むサンプルとを該第1のテンプレートパターンを得た条件と同じ条件の下で反応させた結果得られる該アレイの各々のサイトから得られる蛍光の強度をFiをしきい値として二値化し、該プローブアレイ上の各々の1本鎖核酸プローブの位置とその蛍光特性との関係を示すパターンを得る工程を更にを備えている請求項2に記載の方法。
- 該プローブアレイ上のプローブの長さが8merから30merの長さである請求項2記載の方法。
- 該プローブアレイ上のプローブの長さが12merから25merの長さである請求項4記載の方法。
- 前記ミスマッチの数(i)が1である請求項2に記載の方法。
- 第1のテンプレートパターンを得るために1番目の塩基配列に対して完全相補的な塩基配列を有し、かつ蛍光標識を施された一本鎖核酸を含む第1のサンプル及び標的一本鎖核酸を含むサンプルとプローブアレイとを反応させる工程において、プローブアレイ基板をサンプルを含む溶液中で熱変性し、その後基板をサンプル溶液に浸したまま、二本鎖形成反応に適した温度に降下させてハイブリダイゼーションを行う工程を更に有する請求項1〜6のいずれかに記載の反応。
- プローブアレイ上のプローブの長さが18merであり、熱変性を行う温度が70℃以上であり、二本鎖形成反応を行う温度が40℃以上であり、その時のサンプル溶液に100mMの食塩が含まれている請求項7に記載の方法。
- 標的一本鎖核酸を含むサンプルとプローブアレイとを反応させる工程において、プローブアレイ基板をサンプルを含む溶液中で熱変性し、その後基板をサンプル溶液に浸したまま、二本鎖形成反応に適した温度に降下させて反応を行なうことを特徴とするハイブリダイゼーション反応方法。
- 前記熱変性を行なう温度が60℃以上である請求項9に記載のハイブリダイゼーション反応方法。
- 前記二本鎖形成反応を行なう温度が40℃以上である請求項9に記載のハイブリダイゼーション反応方法。
- 前記熱変性に要する時間は10分以上である請求項9に記載のハイブリダイゼーション反応方法。
- 請求項9〜13に記載のハイブリダイゼーション反応方法を用いたサンプルの検出方法であって、前記温度を降下させて反応を行なう工程の後、温度を上昇させた状態で洗浄を行なうことを特徴とする検出方法。
- 前記サンプルを含む溶液の二本鎖形成反応における溶液濃度を高くし、前記洗浄における溶液濃度を低くする請求項13に記載の検出方法。
- 前記二本鎖形成反応における溶液中がホルムアミドを含有する請求項9〜14のいずれかに記載の検出方法。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2000/007244 WO2002033068A1 (fr) | 2000-10-18 | 2000-10-18 | Procede d'analyse d'une sequence de base d'acide nucleique |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2002033068A1 true JPWO2002033068A1 (ja) | 2004-02-26 |
Family
ID=11736601
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001553959A Pending JPWO2002033068A1 (ja) | 2000-10-18 | 2000-10-18 | 核酸の塩基配列の解析方法 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20050266403A9 (ja) |
JP (1) | JPWO2002033068A1 (ja) |
WO (1) | WO2002033068A1 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7556150B2 (en) * | 2004-06-07 | 2009-07-07 | Duramed Pharmaceuticals, Inc. | Dispenser for progestin used for acute and maintenance treatment of DUB |
EP2165353B1 (en) * | 2007-06-29 | 2017-08-30 | Applied Biosystems, LLC | Systems and methods for electronic detection with nanofets |
CN114241425B (zh) * | 2022-02-21 | 2022-05-31 | 南京甄视智能科技有限公司 | 垃圾检测模型的训练方法、装置、存储介质及设备 |
Family Cites Families (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5202231A (en) * | 1987-04-01 | 1993-04-13 | Drmanac Radoje T | Method of sequencing of genomes by hybridization of oligonucleotide probes |
US5143854A (en) * | 1989-06-07 | 1992-09-01 | Affymax Technologies N.V. | Large scale photolithographic solid phase synthesis of polypeptides and receptor binding screening thereof |
US5346811A (en) * | 1991-07-22 | 1994-09-13 | Cerveceria Polar | Method and products for human papillomavirus detection |
US6060288A (en) * | 1994-08-03 | 2000-05-09 | Mosaic Technologies | Method for performing amplification of nucleic acid on supports |
US5830645A (en) * | 1994-12-09 | 1998-11-03 | The Regents Of The University Of California | Comparative fluorescence hybridization to nucleic acid arrays |
US5733729A (en) * | 1995-09-14 | 1998-03-31 | Affymetrix, Inc. | Computer-aided probability base calling for arrays of nucleic acid probes on chips |
US6046165A (en) * | 1997-06-23 | 2000-04-04 | Ophidian Pharmaceuticals, Inc. | Compositions and methods for identifying and testing TGF-β pathway agonists and antagonists |
US6004752A (en) * | 1997-07-29 | 1999-12-21 | Sarnoff Corporation | Solid support with attached molecules |
US5985567A (en) * | 1997-08-15 | 1999-11-16 | Beckman Coulter, Inc. | Hybridization detection by pretreating bound single-stranded probes |
-
2000
- 2000-10-18 WO PCT/JP2000/007244 patent/WO2002033068A1/ja active Application Filing
- 2000-10-18 JP JP2001553959A patent/JPWO2002033068A1/ja active Pending
-
2002
- 2002-08-30 US US10/231,302 patent/US20050266403A9/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2002033068A1 (fr) | 2002-04-25 |
US20050266403A9 (en) | 2005-12-01 |
US20030082602A1 (en) | 2003-05-01 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP1184467B1 (en) | Screening method for gene variation | |
US20080051293A1 (en) | Method for analyzing base sequence of nucleic acid | |
US6916621B2 (en) | Methods for array-based comparitive binding assays | |
US20020187508A1 (en) | Methods and products for analyzing nucleic acids using nick translation | |
JP2006511798A (ja) | バイオチップ用チップリーダーおよびこれに関連する方法 | |
JP3872762B2 (ja) | Dnaチップの品質管理方法 | |
US20200082908A1 (en) | Methods for Optimizing Direct Targeted Sequencing | |
US20040235032A1 (en) | PCR amplification method, PCR primer set, PCR amplification product, and method for detection of nucleic acid using the amplification method | |
JP2001054400A (ja) | 遺伝子型決定二対立遺伝子マーカー | |
JPWO2002033068A1 (ja) | 核酸の塩基配列の解析方法 | |
Missoum | DNA Microarray and Bioinformatics Technologies: A mini-review | |
US20050074781A1 (en) | Nucleic acid braided J-probes | |
US20120141986A1 (en) | Multivalent substrate elements for detection of nucleic acid sequences | |
US8313905B2 (en) | Detection oligomer and method for controlling quality of biochip using detection oligomer | |
EP3447154A1 (en) | Method for detection of mutations, polymorphisms and specific dna sequences on dna matrices with dna imaging techniques for the use in medical diagnostics and forensic genetics | |
JPWO2005090565A1 (ja) | Dnaアレイと一塩基多型の検出方法 | |
JP2004041198A (ja) | 核酸の塩基配列の解析方法 | |
US20100285970A1 (en) | Methods of sequencing nucleic acids | |
JP4649312B2 (ja) | 変異遺伝子のスクリーニング方法 | |
US20170183729A1 (en) | Method of double allele specific pcr for snp microarray | |
WO2024077047A1 (en) | Methods and compositions for substrate surface chemistry | |
CA3214206A1 (en) | Nucleic acid library sequencing techniques with adapter dimer detection | |
JP2007006747A (ja) | 複数の標識を用いる遺伝子検出方法およびキット | |
WO2005106029A1 (ja) | 核酸の解析方法 |