JPS634130B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、回転慣性力の緩衝器に関するもの
であつて、一層詳細には、トルクテスターを使用
する際に被測定対象物たる回転工具の回転慣性力
を緩衝除去し、正味の回転トルクだけを測定する
のに好適なトルク測定用のアタツチメントに関す
るものである。

従来より、各種工業製品の大量組立ラインにお
いて使用されるエアードライバーや電動ドライバ
ー、ナツトセツター等の回転工具は、これにより
ビスやナツト等を組立製品に締付ける際に、常に
一定の力で締付けを達成し得ることが望まれる。
そのため、使用する回転工具の回転トルクが一定
となるように基準トルク値を設定し、トルク計に
より前記基準トルク値内に回転工具の回転トルク
が納まるよう調整するトルク管理作業が不可欠と
なつている。そして、測定時のトルク値をアナロ
グ表示する旧来のスプリング負荷型のトルク計に
代えて、トルク検出機構を従来の機構とは全く一
新させ、しかも得られた測定トルク値を瞬時にデ
ジタル表示して直読を可能とした新規なトルクテ
スターが出願人及びその協力会社により開発さ
れ、現在好適に使用されている。

本発明はこのトルクテスターに使用されるアタ
ツチメントとして案出されたものであるので、本
発明が案出される迄の経緯の理解に一層資するた
め、先ずこのトルクテスターの概要を第１図を参
照して説明する。トルクテスター１０は矩形状の
ケース１２からなり、上部パネル面には、測定値
をデジタル表示する液晶デイスプレイ部１４、被
測定物である回転工具の回転出力を受けるための
特殊形状をしたソケツト１６、パワースイツチ１
８、較正用の零調整ツマミ２０その他リセツトボ
タンスイツチ２２等が整然と配設されている。ト
ルクテスター１０の内部機構は図示しないが、ケ
ース１２内にはケース底部に対し傾動自在に軸支
されたトルク検出バー及びこのバーに取付けた歪
み計並びにこの歪み計と電気的に接続して測定さ
れたトルク値を前記デイスプレイ部１４にデジタ
ル表示するための電気回路が収納されており、前
記トルク検出バーの一端部は前記ソケツト１６に
剛固に連結されて、ソケツトに加わつたトルクを
この検出バーにより検知するよう構成されてい
る。このトルクテスターの使用の実際につき説明
すると、例えば部材に設けた下孔にタツピンねじ
をねじ込んで、ねじ立て及び締付けの双方を一挙
に達成する際の電動ドライバーの最適締付けトル
クを測定するには、第１図に示すように予じめ使
用する部材と同一材質でかつ下孔２４を穿設した
正方形のテストピース２６を用意し、これをソケ
ツト１６の開口部中に嵌め込み、タツピンねじ２
８を前記下孔２４に当てがつて、電動ドライバー
（図示せず）によりねじ込み作業を行う。すると、
デイスプレイ部１４には、ねじ込み作業中におけ
る締付トルク値の経時的な変動が刻々と表示され
ると共に、最大締付トルク値（ピーク値）が残置
されるようになつている。

ところで、このように特定の材質の下孔にタツ
ピンねじをねじ込む場合のトルク値の測定ではな
く、回転工具の出力回転トルク自体を測定する場
合は、特殊形状の治具をトルクテスターのソケツ
ト１６に嵌入し、この治具に回転工具の出力軸を
連結することにより行つている。しかしながら、
この場合回転工具の出力は、その出力軸先端に得
られる正味の回転トルクと、前記出力軸の高速回
転中に回転慣性として経時的に蓄積されてゆく回
転慣性力との総和となつて表われるため、トルク
テスターに表示される最大トルク値は常に正味の
回転トルクに回転慣性力を加えたものとなり、従
つて回転工具の正確な回転トルクの測定は困難で
あつた（なお、前述したタツピンねじの締付トル
クの側定の場合には、テストピースの下孔にねじ
を螺切する作業を伴なうため、回転工具の回転慣
性力はこれによつて吸収緩和され、正味の回転ト
ルクのみが測定される）。

そこで発明者は、前記欠点に鑑み種々検討を進
めた結果、回転工具の出力軸に得られる回転トル
クの中から、出力軸の高速回転中に蓄積される回
転慣性力だけを吸収除去し、正味の回転トルクの
みが残存するようにすれば、常に正確なトルク測
定が達成されることに想到した。そして、その具
体的な実施例として、ねじ溝付シヤンクをトルク
伝達用基部に調節自在に螺着し、前記シヤンクの
一端部に回転工具の出力軸と着脱自在に係合する
係合部を設け、前記係合部に隣接して係止ヘツド
を配設し、前記係止ヘツドとトルク伝達用基部と
の間にワツシヤと弾性部材とを介在させ、更に前
記係止ヘツドとワツシヤとの間にスラスト軸受を
配設することを要旨とする回転慣性力の緩衝器を
得た。

次に、本発明に係る回転慣性力の緩衝器につ
き、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しな
がら以下詳細に説明する。

第２図は、本発明に係る緩衝器３０を、視点を
上方に置いて観察した全体斜視図であつて、第３
図はこの緩衝器３０の一部切欠半体縦断面を示す
ものである。第３図において緩衝器３０は、第１
図に示すトルクテスター１０のソケツト１６の特
殊な開口形状に密着的に嵌合する角形段部３２を
一体的に有するトルク伝達用の円形基部３４と、
この基部３４の中心に進退自在にねじ込まれるね
じ溝付シヤンク３６と、このシヤンク３６に同心
的に挿通される弾性体としての圧縮コイルばね３
８及びシヤンク３６に対して基部３４とは反対側
に位置し基部３４と共に前記圧縮コイルばね３８
を挾持する係止ヘツド４０とから基本的に構成さ
れる。

シヤンク３６の一端部（ねじ溝の螺切してない
側）には、被測定対象物であるエアードライバー
や電動ドライバーその他ナツトセツター等の回転
工具の出力軸先端に設けたビツトの形状に適合さ
せて係止部を形成しておく。例えば、ドライバー
ビツトとしては第５図に示すようにプラスビツト
４２の他端部近傍に軸心と垂直に交差するようピ
ン４４を挿通したビツトが、電動ドライバーのビ
ツト取付チヤツク（図示せず）に瞬時着脱ができ
る構造として推奨されているので、この種の電動
ドライバーのトルク測定に好適に使用し得るよう
に、本発明の実施例ではシヤンク３６の係止部と
してピン４６を設けた場合を示している。しかし
ながら、これ以外にも回転工具の出力軸に設けた
ビツトの形状に応じて、六角ナツト形状とした
り、シヤンク頭部にプラスやマイナスのすり割を
穿設したりすることができることは勿論である。

次に、第３図において係止ヘツド４０は、好ま
しくはシヤンク３６にフランジ状に一体的に形成
され、この係止ヘツド４０は前記圧縮コイルばね
３８の端部において、シヤンク３６に遊嵌したド
ラム状のスリーブ４８の中空部内に収納される。
スリーブ４８の中空底部には所定厚みのリング状
ワツシヤ５０がシヤンク３６を貫通して配置され
ると共に、係止ヘツド４０の底部下面と前記ワツ
シヤ５０の上面との間には、第６図に示すような
スラスト軸受５２を介挿して、後述するように円
滑に回転工具の正味の回転トルクがシヤンク３６
を介して基部３４に伝達されるようにしておく。
このスラスト軸受５２は多数の球体５４をリング
５６に放射状に配列し、この球体５４自体によつ
てスラスト荷重を支持するものであるが、スラス
ト荷重の支持転動体としては、この球体５４に代
えて棒状コロ（図示せず）を多数配置してもよ
い。

また、本発明に係る緩衝体に使用する弾性体と
しては、圧縮コイルばね３８に代えて、適度な弾
力を有する円筒状に形成したゴムブロツク体を用
いてもよいし、またリングを夫々１個所において
切り放しその開放両端部が一致しないよう段差を
つけて若干撓曲させた所謂スプリングワツシヤー
を多数積層して集合的に弾性体としてもよい。更
に、リング状ワツシヤーの中央部を円周部に対し
て若干突出させた所謂皿ばねを多数積層して弾性
体としたものも好適に使用し得る。これらのスプ
リングワツシヤーや皿ばねを使用する場合は、積
層状態を良好に保持するために、これら積層弾性
体の外周に弾性体の外部直径より若干大きめの内
径を有するカラーを挿通配置すれば好適である。

次に、本発明に係る緩衝器の作用効果につき説
明する。既に説明し、また第３図から良好に判明
するように、係止ヘツド４０と一体的に設けられ
たシヤンク３６は、そのねじ切部においてソケツ
ト嵌入用基部３４の中心に調節自在にねじ込まれ
ており、シヤンク３６にはこれと同心的に適宜の
弾力を有する弾性体３８が挿通配置されている。
係止ヘツド４０と弾性体３８の間には、ドラム状
スリーブ３８がシヤンク３６に対し遊嵌されると
共に前記係止ヘツド４０とスリーブ３８の中空底
部との間には、スラスト軸受５２及びワツシヤー
５０が介挿されている。このように構成された緩
衝器３０は、第４図に示すように基部３４に角形
段部３２が一体形成されているから、この角形段
部３２を第１図に示すトルクテスター１０のソケ
ツト１６に密着的に嵌合させ、一方シヤンク３６
の係合部を被測定対象物たる回転工具（例えば、
電動ドライバー）の出力軸５８に係合させること
により、測定準備が完了する（第２図参照）。次
いで、回転工具の駆動モータ（図示せず）を付勢
してやると、出力軸５８はシヤンク３６を回転さ
せ、従つて基部３４の中心に設けたねじ孔内にシ
ヤンク３６は螺入してゆく。このため圧縮コイル
ばね３８は軸方向に圧縮されるが、シヤンク３６
に加えられる回転トルクの強弱に応じた圧縮限界
に到達するとシヤンク３６はそれ以上基部３４に
進入し得なくなる。なお、コイルばね３８の圧縮
限界に到達するまではシヤンク３６は回転する訳
であるが、係止ヘツド４０とスリーブ４８の底部
上面及びワツシヤー５０との間には前述したスラ
スト軸受５２が介挿されているので、係止ヘツド
４０に加わるスラスト方向への押圧力は全て球体
５４により支持され、従つてシヤンク３６は基部
３４に対し極めて円滑に回転して螺入する。

従つて、回転工具の出力軸に得られる回転トル
ク（これは前述したように回転工具自体の正味の
回転トルクと、回転中に慣性として付加される回
転慣性力との総和である）は、緩衝器３０を介し
てトルクテスター１０のソケツト１６に伝達され
る間に、前記回転慣性力を弾性体の塑性変形によ
り吸収させ、その結果正味の回転トルクのみをソ
ケツト１０に伝達させる。すなわち、回転工具は
シヤンク３６を回転させて弾性体を締付ける間
に、この工具の出力軸に蓄積される回転慣性力を
弾性体により吸収緩和し、実際のねじ締作業時と
同様な状態を再現して、正味の回転トルクのみに
応答した正確なトルクの測定を可能とするもので
ある。なお、弾性体の締付けを伴なう正転方向へ
の締付トルクの測定が終了した後は、そのまま回
転工具を逆転させて弾性体の回復を行えば良い。

以上本発明に係る緩衝器につき好適な実施例を
挙げて説明したが、この実施例は本発明をこれに
限定するものではなく、発明の精神の範囲内で多
くの改良・変更をなし得るものである。殊に、本
発明の詳細な説明中で、弾性体やシヤンク頭部に
設けた係止部等については、図示の実施例以外に
種々の応用例があることを例を挙げて説明した
が、これらの例示は全て本発明の範囲内にあるも
のである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る緩衝器が使用されるトル
クテスターの概略を示す説明斜視図であつて、ソ
ケツトにテストピースが嵌込み可能である状態を
示し、第２図は本発明に係る緩衝器の斜視図であ
つて、この緩衝器はその基部において角形段部を
介してトルクテスターのソケツトに嵌合されると
共に緩衝器を貫通するシヤンクはその係止部を介
して回転工具の出力軸に着脱自在に挿着される状
態を略示し、第３図は本発明に係る緩衝器の一部
切欠縦断面図、第４図は本発明に係る緩衝器を基
部底面の方向から観察した斜視図、第５図はドラ
イバービツトの一好適例の平面図、第６図は本発
明に係る緩衝器に使用するスラスト軸受の斜視図
である。 １０……トルクテスター、１２……ケース、１
４……液晶デイスプレイ部、１６……ソケツト、
１８……パワースイツチ、２０……零調整ツマ
ミ、２２……リセツトボタンスイツチ、２４……
下孔、２６……テストピース、２８……タツピン
ねじ、３０……緩衝器、３２……角形段部、３４
……基部、３６……シヤンク、３８……弾性体
（圧縮コイルばね）、４０……係止ヘツド、４２…
…プラスビツト、４４，４６……ピン、４８……
スリーブ、５０……ワツシヤ、５２……スラスト
軸受、５４……球体、５６……リング、５８……
出力軸。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ねじ溝付シヤンクをトルク伝達用基部に調節
   自在に螺着し、前記シヤンクの一端部に回転工具
   の出力軸と着脱自在に係合する係合部を設け、前
   記係合部に隣接して係止ヘツドを配設し、前記係
   止ヘツドとトルク伝達用基部との間にワツシヤと
   弾性部材とを介在させ、更に前記係止ヘツドとワ
   ツシヤとの間にスラスト軸受を配設することを特
   徴とする回転慣性力緩衝器。 ２ 弾性部材は圧縮コイルばねである特許請求の
   範囲第１項記載の緩衝器。 ３ 弾性部材はスプリングワツシヤであつて、こ
   れらのスプリングワツシヤが多数積層される特許
   請求の範囲第１項記載の緩衝器。 ４ 弾性部材は皿ばねであつて、これらの皿ばね
   が多数積層される特許請求の範囲第１項記載の緩
   衝器。 ５ 弾性部材は円筒状のゴムブロツクである特許
   請求の範囲第１項記載の緩衝器。 ６ スラスト軸受は、転動体として球体を使用す
   る特許請求の範囲第１項乃至第５項の何れかに記
   載の緩衝器。 ７ スラスト軸受は、転動体として棒状コロを使
   用する特許請求の範囲第１項乃至第５項の何れか
   に記載の緩衝器。 ８ トルク伝達用基部は、トルクテスターのトル
   ク受容ソケツトと係合する嵌合部を有する特許請
   求の範囲第１項乃至第７項の何れかに記載の緩衝
   器。