JPS632598Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、液圧によつてプランジヤを駆動して
燃料を噴射し、プランジヤに液圧を作用させるタ
イミングをスプール弁にて制御する型式の燃料噴
射装置に関し、さらに詳細にはその燃料噴射装置
を内燃機関に採用した場合の噴射タイミングの気
筒間バラツキを補正する機構に関する。

近年、噴射タイミングは、排気規制等によりよ
り正確にコントロールすることが要求されてい
る。そしてこの種の燃料噴射装置は、たとえば電
磁弁によつてスプール弁の作動タイミングが制御
され、ひいては噴射タイミングが制御されるが、
電磁弁に信号が印加されてから噴射が開始される
まである時間遅れを伴う。この時間遅れは、スプ
ール弁が所定位置まで変位する間の時間、プラン
ジヤに液圧が作用してからプランジヤが作動し始
める間の時間等によつて生じ、従つて噴射タイミ
ングの気筒間バラツキが生じる。しかも、この時
間遅れの気筒間誤差は従来0.2〜0.3m sec程度あ
り、これは定格2500rpmの機関ではクランク角で
３〜4.5゜の噴射タイミングの気筒間バラツキとな
り、この種の噴射装置の実用化に関しての問題点
の１つであつた。

そこで本考案は、噴射タイミングを決定出来る
スプール弁の作動速度を各スプール弁毎に調整可
能にすることにより、噴射タイミングの気筒間バ
ラツキをなくすと共に、それを簡素な構成で、し
かもエネルギー損失なく達成できるようにした燃
料噴射装置を提供することを目的とする。

以下本考案を図に示す実施例について説明す
る。

第１図において１はインジエクタであり、ボア
２とその中を自由に摺動するスプール３とばね３
ａとによつて構成されるスプール弁と、ボア４，
５内をそれぞれ摺動する１体の大径ピストン６お
よびプランジヤ７によつて構成される燃料圧縮手
段と、ばね８ａによつて負荷される通常の燃料噴
射ノズル８と、これらをコントロールするための
第１〜第３の２ポジシヨン２ポート電磁弁９，１
０，１１を持つ。プランジヤ７下端面とボア８に
よつて形成される燃料室１２は逆止弁１３を経て
供給圧力源１４に連絡され、同時にノズル８に連
絡される。一方スプール３の左端面とボア２によ
つて形成される作動油室１５は、供給圧力源１４
から高圧の液体を供給する供給通路をなく第１の
通路３０、第１の通路３０の途中に設けられたス
プール３の移動速度を調整する調整手段５０およ
び第１の電磁弁９を経て供給圧力源１４と連絡さ
れ、また第２の通路４０および第２の電磁弁１０
を経て低圧の燃料タンク１６へ連絡される。さら
にスプール弁の１つのポートａは供給圧力源１４
に連絡し、もう１つのポートｂは絞り２２および
第３の電磁弁１１を経て燃料タンク１６へ連絡さ
れる。ピストン６上面とボア４とにより形成され
る作動油室２１は２つのポートａ，ｂのいずれか
一方と連絡される。供給圧力源１４は燃料タンク
１６′からフイルタ１７を通してポンプ１８によ
つて燃料を圧送し、調圧弁１９と蓄圧器２０とに
よつて一定圧力に制御する。２３は後述するセン
サS₁〜S₅からの信号に基いて３つの電磁弁９，１
０，１１への通電を制御するコントローラであ
る。なお、インジエクタ１は図示しないエンジン
の気筒数と同数設ける。

第２図はセンサS₁〜S₅、コントローラ２３、電
磁弁９〜１１に関するブロツク線図を示す。S₁は
エンジン回転速度を、S₂はアクセルペダルの踏み
込み量を、S₃はエンジンの温度を、S₄はエンジン
の気筒マークを、S₅は配管からの燃料洩れやエン
ジンオーバラン等の緊急状態を検出するセンサで
ある。コントローラ２３において、P₁は噴射量
設定回路、P₂は噴射開始時期設定回路、A₁はセ
ンサS₁，S₂の信号に基いて噴射量を決定する計算
回路、A₂はセンサS₃の信号に基いて噴射開始時
期を決定する計算回路、A₃は出力増幅回路であ
る。具体的には、計算回路A₁は第３の電磁弁１
１への通電時間を、計算回路A₂は気筒マークに
対する第１の電磁弁９への通電開始時期偏差を計
算する。また出力増幅回路A₃はクランク位置を
判別して必要な気筒の電磁弁９，１０，１１に必
要なタイミングで通電するもので、通常は第１，
３電磁弁９および１１に対しては一定時間だけ通
電するが、センサS₅の緊急信号により全く通電を
停止したり、又は通電しつ放しにしたりする。

第３図は調整手段５０の具体的な構成を示すも
ので、第１の通路３０中に段部５１を形成し、ニ
ードル５２の円錐部５３をその段部５１に臨ませ
て、そのクリアランスによりオリフイス５４を形
成する。ニードル５２はねじにより上記クリアラ
ンスを調整することが出来る。

上記構成において、図の状態から第１の電磁弁
９の２つのポートを導通状態にする（以下「開」
と記す）ことにより供給圧力源１４から燃料が調
整手段５０のオリフイス５４を経て作動油室１５
へ導びかれ、スプール３をばね３ａに打ち勝つて
右方へ変位させる。この時第２の電磁弁１０は閉
じている。スプール３が右方へ変位することによ
つてポートｂが閉じ、つづいてポートａが開かれ
る。これにより作動油室２１はポートａを介して
圧力源１４と導通状態となり、ピストン６とプラ
ンジヤ７との面積比に増圧されて燃料室１２の燃
料がノズル８より噴射される。この時逆止弁１３
によつて圧縮燃料が圧力源へ戻されるのを防ぐ。
ところで、インジエクタ１はエンジンの気筒数と
同数設けられ、前述したように噴射タイミングの
気筒間バラツキが生ずるのが常であるが、調整手
段５０のオリフイス５４の通路面積を調整してス
プール３の移動速度を制御することにより、第１
の電磁弁９に信号が印加されてからポートａが開
かれるまでの時間を調整することができ、従つて
各インジエクタ１毎のオリフイス５４の通路面積
を適当な値に調整することにより噴射タイミング
の気筒間バラツキをなくすことができる。

次に第１の電磁弁９を閉の状態に戻し、ついで
第２の電磁弁１０を開の状態にすれば、作動油室
１５の燃料がタンク１６に放出され、ばね３ａの
力によつてスプール３が左方へ戻される。スプー
ル３の変位によつてポートａが閉じられ続いてポ
ートｂが開かれる。すると、作動油室２１の燃料
はポートｂを経て第３の電磁弁１１が開となる時
間だけタンク１６へ放出できる状態となる。作動
油室２１の燃料が放出されるのにともなつて燃料
室１２の圧力によつてピストン６、プランジヤ７
は上方へ押し戻され、圧力源１４から逆止弁１３
を通つて次に噴射される燃料が燃料室１２へ導び
かれる。

コントローラ２３からの第１〜３の電磁弁９，
１０，１１への信号を時間にそつて説明すれば、
第４図において時刻Ａで第１の電磁弁９が開いて
噴射作動が開始し、スプール３が右端へ移動した
後時刻Ｂで第１の電磁弁９を閉じる。その後時刻
Ｃで第２の電磁弁１０を開くことによりスプール
３がもどり調量が可能な配置となり、その後時刻
Ｄで第２の電磁弁１０を閉じる。次に時刻Ｅで第
３に電磁弁１１を開けばピストン６、プランジヤ
７が戻り調量が開始され時刻Ｆに調量を完了す
る。そして、センサS₁等の信号に基いて時刻Ａを
可変制御して噴射タイミングを最適なものとし、
時間EFを可変制御して調量を行なう。

第５図は調整手段５０の他の例を示すもので、
コネクタ５５内に固定オリフイス５６を螺合して
おり、このオリフイス５６を交換することにより
結果的に噴射タイミングの気筒間バラツキをなく
すようにしている。

なお、スプールばね３ａが収納されるスプール
３の端部にあるバネ室の油を調整手段５０を介し
てタンク１６へ戻すようにしても本考案の目的を
達成出来る。さらに上記実施例ではスプール３の
駆動を油圧により行なつているが、スプール３を
電磁ソレノイドにて駆動するようになし、その電
磁ソレノイドに通電する電圧または電流値を変化
させることでスプールの移動速度を調整しても目
的を達成出来る。

さらにまた噴射タイミングの気筒間バラツキを
なくすには上述のようにスプール３の移動速度を
調整可能にすればよいから、スプール３の移動速
度を調整出来るものであれば上記以外のものも調
整手段として採用することができる。

以上の説明から明らかなように本考案は、噴射
行程でのスプールの移動速度を供給通路の途中に
設けた調整手段により供給圧力源からスプール弁
への高圧の液体の供給量を制御して、燃料噴射ノ
ズルからの燃料噴射の開始時期を設定可能にした
から、スプール弁の移動に際して高圧の液体のむ
だな流出がなく、多気筒機関用の燃料噴射装置に
おいて、簡素な構成でしかもエネルギー損失なく
噴射タイミングの気筒間バラツキをなくす事が出
来るという優れた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置の一実施例を示す模式構成
図、第３図は要部の拡大断面図、第２図は第１図
に示すセンサS₁〜S₅、コントローラ２３および電
磁弁９〜１１のブロツク線図、第４図は作動説明
に供する説明図、第５図は他の実施例を示す要部
の断面図である。 ２，３，３ａ……スプール弁を構成するボア、
スプール、およびばね、６，７……燃料圧縮手段
を構成するピストンおよびプランジヤ、８……燃
料噴射ノズル、１４……供給圧力源、３０……供
給通路をなす第１の通路、５０……調整手段、５
１……段部、５２……ニードル、５３……円錐
部、５４……オリフイス、５６……固定オリフイ
ス。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 高圧の液体を圧送する供給圧力源と、多気筒
   に配置されたインジエクタを備え、該インジエ
   クタが前記供給圧力源からの液圧を受けて作動
   して燃料を加圧圧縮する燃料圧縮手段と、その
   圧縮燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、前記燃
   料圧縮手段への液圧の作用を制御するスプール
   弁と、該スプール弁へ前記供給圧力源から高圧
   の液体を供給する供給通路と、該供給通路の途
   中に配設された調整手段とを備え、該調整手段
   を調整することにより前記供給圧力源から前記
   スプール弁への高圧の液体の供給量を制御し
   て、前記燃料噴射ノズルからの燃料噴射の設定
   開始時期に対する実際の噴射開始時期を前記各
   インジエクタ毎に変更できることを特徴とする
   燃料噴射装置。 (2) 前記調整手段は前記供給通路中に形成した段
   部と、該段部に臨ませたニードルの円錐部との
   間のクリアランスにより構成されるオリフイス
   である実用新案登録請求の範囲第１項記載の燃
   料噴射装置。 (3) 前記調整手段は固定オリフイスである実用新
   案登録請求の範囲第１項記載の燃料噴射装置。