JPS6321314Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は２種類以上の吸収液を同時に使用する
多段型気液接触装置用トレイの改良に関する。

たとえば、アンモニアガスとイオウ酸化物とを
同時に含有する排ガスを処理する場合、アンモニ
アガスは硫酸のごとき酸性吸収液を用いないと吸
収除去できないが、イオウ酸化物は苛性ソーダや
石灰石スラリーのごときアルカリ性吸収液でない
と吸収除去できない。このような吸収操作を１基
の気液接触塔で行なうためには、塔内を上、下２
つの気液接触部に分けてそれぞれ異なる吸収液を
使用し、かつそれら吸収液が互に混合しないよう
にすることが必要であり、そのために、上部気液
接触部と下部気液接触部との間にトレイ装置を設
けるのである。このように、トレイ装置は一方の
吸収液が他方の吸収液に混入しないように分離す
るとともにガスを通過させなければならない。ト
レイ装置において他方の吸収液が混入しないよう
にするためには、トレイの要素の間隔を狭め密閉
構造に近い形にするほどよいが、その場合ガスの
通過による圧力損失が増加する。

従来のトレイ装置を用いた二段型気液接触装置
の一例を第１図に示す。図において、イオウ酸化
物のごとき有害ガス成分を含む排ガスはガス入口
２より気液接触塔１に入り塔内を上昇し、下部気
液接触部４においてスプレーノズル３よりスプレ
ーされた下部吸収液１６と接触し、ガス中の有害
ガス成分は吸収される。ガスは引きつづき塔内を
上昇し、下部ミストエリミネータ５でガス中のス
プレー液滴を分離し、トレイ装置６に入る。トレ
イ装置６は第２図ａ，ｂ，ｃに示すように、上方
より落ちてくる吸収液をうける溝７とその上部に
溝７と溝７の間を覆う山形の蓋８とよりなつてい
る。上部気液接触部１２から落ちてきた上部吸収
液１０のうち、蓋８の上に落ちたものはその傾斜
面に沿つて流下し下方の溝７の中に落ちる。溝７
の中に直接落ちた上部吸収液１０は蓋８から落ち
たものと一緒に塔１外に排出され、自然流下でタ
ンク９内に貯蔵される。このように、トレイ装置
は上部気液接触部１２からの上部吸収液１０が下
部気液接触部４に流下し、そこで下部吸収液１６
に混入しないように、上、下部吸収液１０，１６
の分離を行なうのである。タンク９に貯蔵された
上部吸収液１０は循環ポンプ１１で上部気液接触
部１２に送られ、そこで同じくガス中の別の有害
ガス成分の吸収を行なう。別の有害ガス成分を吸
収されたガスは次いで上部ミストエリミネータ１
３でスプレー液滴を除去されたのち、塔外に排出
される。

以上において、上、下部気液接触物１２，１４
のそれぞれの吸収液１０，１６が混合すると、吸
収剤の損失となり、また下部吸収液１６の貯蔵タ
ンク１４と上部吸収液１０のタンク９とのレベル
が不均衡になるので、運転の安定上好ましくな
い。

第１図に使用された従来のトレイ装置６を第２
図ａ，ｂ，ｃにおいて更に述べると、蓋８の上に
落ちた上部吸収液１０の大部分は蓋８の傾斜面に
沿つて流下し溝７の中に落ちるが、その際吸収液
は滝のようにはげしい勢いで落ちるので、蓋８の
傾斜面で跳ね、蓋８と溝７の隙間を通つて、第２
図ａのＡに示すように、溝７と溝７の間に落下す
るものもある。また、蓋８の傾斜面を伝つて落ち
るものには、蓋８の端部より折返し蓋８の下面に
入り込んで、第２図ａのＢに示すように、溝７と
溝７の間に落ちるものもある。さらに、溝７は第
２図ｃに示すように、水平形状で水はけが悪いの
で、溝７内に吸収液が溜り、上から落ちてきた吸
収液がはね上り、第２図ａのＣに示すように、溝
７の壁をとび越えて溝７の外に落ちるものもあ
る。

このように、従来のトレイ装置は蓋８の山形の
角度が約90℃のため、落ちてきた吸収液が跳ね易
くかつ蓋８の端部が直線状であるため、吸収液が
真直ぐに下に落ち難く、さらに、溝７が水平に設
けてあるので水はけが悪く、吸収液が溜い易いと
いう欠点があつた。

本考案は上記の従来のトレイ装置の欠点を解決
し、吸収剤の損失を減少させかつ運転の安定化を
確保する多段型気液接触装置用トレイを提供する
もので、その要旨とするところは、垂直方向に直
列に設けられかつそれぞれ異なる吸収液を使用す
る多段の気液接触部のそれぞれの間に配置される
多段型気液接触装置用トレイにおいて、それぞれ
適宜間隔をおいて上下に並列された、端部に垂れ
を有する山形の傾斜板よりなる蓋と長手方向に傾
斜した溝形体とからなり、かつ該蓋の両端部の垂
れが相隣る該溝形体の溝部の上方にそれぞれ位置
するよう構成したことを特徴とする多段型気液接
触装置用トレイ、にある。

次に、本考案を図面によつて説明する。

第３図ａは本考案の一実施例の正面図、同じく
ｂはａの実施例の側面図である。

図において、本実施例は蓋８ａの傾斜面の端部
にそれぞれ垂直に垂れ１５を取り付け、１個の蓋
８ａの両端部の垂れ１５，１５が下方の相隣る２
個の溝形体７ａ，７ａの溝部の上方にそれぞれ位
置するようにし、かつ溝形体７ａを長手方向に傾
斜させた構成である。また、蓋８ａを構成する山
形の傾斜板間の角度を90゜より小さくしてある。

この構成によつて、上部吸収液が溝形体７ａの
間に落ちて下部気液接触部に落ちて下部吸収液と
混合することはない。また、下部気液接触部の溝
形体７ａの間を上昇してきたガスは溝形体７ａと
蓋８ａの間を通り、さらに蓋８ａと蓋８ａの間を
上昇して上部気液接触部の方向に上昇していく
が、蓋８ａと溝形体７ａの間をそれほど狭くしな
くてもすむので、ガスの圧力損失はそれほど大き
くならない。また、蓋８ａ上に落下した吸収液は
蓋８ａの傾斜板の角度が90゜以下であるので大き
く跳ねることはない。さらに、溝形体７ａは長手
方向に傾斜をつけてあるので水はけがよく落下し
た吸収液が溜まることはない。

以上において、主として上、下部気液接触部よ
りなる二段型気液接触装置用トレイの場合の本考
案について述べたが、本考案は三段型以上の気液
接触装置用トレイの場合にも適用できることはも
ちろんである。

本考案の効果は次の通りである。

(1) 上部気液接触部の吸収液が下部気液接触部に
落下することがないので吸収剤の損失がない。

(2) 下部気液接触部の吸収液と上部気液接触部の
吸収液のそれぞれの貯槽内の液面が安定するの
で運転も安定する。

(3) ガスの通過圧力損失が増加しない。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のトレイ装置を使用した二段型気
液接触装置の一例の系統図、第２図ａは第１図の
トレイ装置の平面図、同じくｂはａのトレイ装置
の正面図、同じくｃはａのトレイ装置の側面図、
第３図ａは本考案の一実施例の正面図、同じくｂ
はａの実施例の側面図である。 図において、１……気液接触塔、２……ガス入
口、３……スプレーノズル、４……下部気液接触
部、５……下部ミストエリミネータ、６……トレ
イ装置、６ａ……本考案のトレイ、７……溝、７
ａ……溝形体、８，８ａ……蓋、９……上部吸収
液タンク、１０……上部吸収液、１１……循環ポ
ンプ、１２……上部気液接触部、１３……上部ミ
ストエリミネータ、１４……下部吸収液貯槽タン
ク、１５……垂れ、１６……下部吸収液。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 垂直方向に直列に設けられかつそれぞれ異なる
   吸収液を使用する多段の気液接触部のそれぞれの
   間に配置される多段型気液接触装置用トレイにお
   いて、それぞれ適宜間隔をおいて上下に並列され
   た、端部に垂れを有する山形の傾斜板よりなる蓋
   と長手方向に傾斜した溝形体とからなり、かつ該
   蓋の両端部の垂れが相隣る該溝形体の溝部の上方
   にそれぞれ位置するよう構成したことを特徴とす
   る多段型気液接触装置用トレイ。