JPS6314769B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、接着剤の静的剥離強度を測定する方
法および装置に関する。

先行技術では、接着剤で被着体に接着された試
験片に、重錘によつて被着体から剥離する方向に
死荷重を与えることによつて、静的剥離強度を測
定している。ところが、この先行技術によれば、
試験片に加える死荷重を段階的に変える必要があ
るために、重錘を何回も取り換えねばならない。
しかも各重錘毎の測定時間が長時間であり、特に
重錘の重量が小さくなつたとき、すなわち剥離強
度に近い値となつたときには、重錘を取換える時
間間隔が長時間となる。そのため、静的剥離強度
を求めるために必要とされる時間が非常に長時間
となる。さらに複数の試験片によつて静的剥離強
度の平均値を求める場合には、非常に面倒であつ
て長時間を要する。

本発明は、上述の技術的課題を解決し、非常に
簡単でかつ短時間で測定することができる静的剥
離強度の測定方法および装置を提供することを目
的とする。

以下、図面によつて本発明の実施例を説明す
る。第１図は本発明の一実施例の斜視図である。
この静的剥離強度測定装置１は、静的90度剥離強
度を測定する装置であつて、ほぼ水平に固定され
た被着体２に接着された帯状の試験片３に、ばね
秤４によつて垂直上方に静荷重が与えられる。こ
のばね秤４は、試験片３の剥離が進行するのに応
じて縮小し、その縮小に応じて静荷重が変化す
る。したがつて、予め予想される静的剥離強度よ
りも大きな静荷重をばね秤４によつて試験片３に
かけておくと、剥離に必要な最低荷重となつたと
きに、試験片３の剥離が停止するとともにばね秤
４の縮小変位が停止する。それによつて試験片３
を被着体２に接着した接着剤の静的90度剥離強度
を測定することができる。

静的剥離強度測定装置１は、被着体２と、試験
片３の直上で剥離方向を含む平面内でほぼ水平に
配置されるレール５と、そのレール５に移動自在
に装着されるローラ６と、ローラ６から吊下げら
れる連結手段としての鎖７と、鎖７の下端部に連
結されるばね秤４と、試験片３を把持する把持手
段８と、ばね秤４の下端部ね把持手段８を連結す
るより戻し９とを含む。

鎖７は、ばね秤４とローラ６との間隔を調節自
在であり、前記間隔を調節することによつてばね
秤４によつて試験片３に加えられる荷重を自在に
調節することができる。より戻し９は、その上部
と下部とが回転自在に連結されて成り、したがつ
て鎖７のねじれによつて試験片３をねじる方向の
力が作用することを防止することができる。

静的90度剥離強度を測定するに当つては、先ず
被着体２に、測定すべき接着剤を用いて試験片３
を接着する。次いで、試験片３の端部を把持手段
８で把持し、第１図に示すごとく試験片３の端部
を垂直上方に剥離する。そして鎖７によつてロー
ラ６とばね秤４との間隔を調節し、前記接着剤の
予め予想される剥離強度以上の荷重が試験片３に
作用するようにして、ばね秤４によつて試験片３
に静荷重をかける。

この状態において試験片３は予想される剥離強
度以上の静荷重が作用しているので、被着体２か
ら次第に剥離されていく。試験片３の剥離が進行
するのに応じて、ばね秤４は次第に縮小し、した
がつてばね秤４による試験片３に作用する静荷重
が順次減少していく。しかもばね秤４を吊り下げ
ているローラ６は、レール５に沿つて移動自在で
ある。そのためばね秤４による荷重の作用方向
は、試験片３の剥離の進行に拘らず、試験片３に
対して常に90度の位置を保つことができる。

このようにして、試験片３の剥離が進行するの
に応じてばね秤４による静荷重が減小し、ある時
点でばね秤４による静荷重と接着剤の静的剥離強
度が均衡し、試験片３の剥離の進行が停止すると
ともに、ばね秤４の縮小変位が停止する。したが
つて試験片３の剥離の進行が停止したときの、ば
ね秤４の目盛を読み取ることによつて、接着剤の
静的剥離強度を得ることができる。

第１図の実施例では、大気中における静的90度
剥離強度を測定する場合について説明したが、試
験片３を接着した被着体２を水中に固定すれば、
水中における静的剥離強度を測定することができ
る。

また、複数の試験片を用いて静的剥離強度を測
定する場合には、第１図に示すごとく、試験片
３，３ａ，３ｂを平行に被着体２に接着し、前述
した静的剥離強度測定装置１と同様の装置を同時
に用いて測定すればよい。そうすれば複数個の試
験片による静的剥離強度の平均値を容易に得るこ
とができる。

第２図は本発明の他の実施例の正面図であり、
静的180度剥離強度測定装置を示す。この実施例
においては、第３図に示すごとく基体１１に接着
剤１３によつて試験片１４が接着され、基体１１
の端部は万力１５によつて固定される。また試験
片１４の端部は万力１５の直上に吊り下げられた
ばね秤１６に連結される。このようにして、基体
１１と試験片１４とを鉛直面内で相互離反する方
向にばね秤１６によつて静荷重を与えることによ
り、前述の実施例と同様にして静的な180度剥離
強度を測定することができる。

なお、基体１１および試験片１４が静荷重を加
えることによつて延びるおそれがあるときには、
基体１１および試験片１４の表面に第３図で示す
ごときすだれ織りの織布１７，１８を接着して、
基体１１および試験片１４が延びることを防止す
るようにしてもよい。

第４図は本発明の他の実施例の正面図である。
この実施例では、基台１９に横方向に延びる長孔
２０が形成される。試験片２１を接着すべき被着
体２２の一端部は前記長孔２０の長手方向に直角
なピン２３によつて基台１９に枢支される。また
被着体２２の他端部には前記ピン２３と平行な軸
線まわりに回動自在に脚部材２４の一端部が連結
される。脚部材２４の他端部は下方に延設され、
その他端部は長孔２０に移動自在に係合される。
この脚部材２４の他端部には蝶ねじ２５が螺合さ
れており、その蝶ねじ２５で締め付けることによ
り、脚部材２４は長孔２０の任意の位置で固定さ
れる。

脚部材２４を長孔２０に沿つて移動することに
より、基台１９と被着体２２とが成す角度αは任
意に調節され得る。そのため、試験片２１の直上
で固定位置から吊り下げられたばね秤２６を試験
片２１の端部に連結することにより、試験片２１
と荷重の作用方向との成す角度βを任意に調節す
ることができる。したがつてこの実施例によれば
任意の角度の静的剥離強度を測定することができ
る。

本発明者は、第１図に示した静的剥離強度測定
装置１を用いて実験を行なつたので、その結果に
ついて第５図を参照して説明する。この実験にお
いて、試験片３としては幅Ｗ（第１図参照）が25
mmであつて厚さｄが２mmであり、かつ可撓性およ
び接着力を有するエポキシ樹脂を用いた。この実
験においては、ばね秤４によつて試験片３に0.2
Kg／25mm、0.28Kg／25mm、0.57Kg／25mm、0.75
Kg／25mm、1.0Kg／25mmの５種類の初期荷重を作
用させた。第５図から明らかなごとく、最初に
0.75Kg／25mmおよび1.0Kg／25mmを作用させた場
合には、途中で試験片が被着体から剥離されてし
まい測定不可能となつた。残余の３つの初期荷重
の場合には、日数が経過するとともにばね秤が縮
小し、約９日経過したときに試験片の剥離の進行
が停止するとともにばね秤の縮小が停止する。こ
のときのばね秤による静止荷重は0.029Kg／25mm
であつた。したがつて、この実験における静的90
度剥離強度は0.029Kg／25mmであつた。

このように、ばね秤によつて加える最初の荷重
が過大なものでなければ、測定装置を途中で操作
することなく静的剥離強度を容易に求めることが
できる。

第６図は水中における静的90度剥離強度を測定
したときの実験結果を示すグラフである。この実
験においては、接着剤として可撓性エポキシ樹脂
を用い、試験片として幅が25mmで厚さが２mmのエ
ポキシ樹脂を用い、しかも水中での湿潤接着強度
を高めるための前処理剤としてエポキシ樹脂を用
いた。その結果第６図から明らかなごとく、約30
日経過後に試験片の剥離の進行が停止して、静的
剥離強度を求めることができた。

上述の各実施例では、ばね秤の目盛を読み取る
ことによつて静的剥離強度を求めたが、本発明の
他の実施例としてばね秤に代るばね弾性体による
荷重を電気信号に変換し、前記荷重の変化を記録
計に記録させるようにしてもよい。また、本考案
における「ばね秤」は、市販されているばね秤に
限定されず、ばね弾性体の変位量を読み取ること
ができるように構成されたものを含むことを付言
しておく。

上述のごとく本発明によれば、被着体に接着さ
れた試験片をばね弾性体で剥離方向に引つ張つて
静荷重を与えるようにしたので、試験片の剥離の
進行に応じてばね弾性体が縮小し、ばね弾性体に
よる荷重と静的剥離強度が均衡したときに試験片
の剥離の進行が停止する。したがつてそのときの
静荷重を検出することによつて静的剥離強度を容
易に測定することができる。しかも従来のごとく
測定の途中に重錘を何回も取換える必要がなく、
短時間で静的剥離強度を測定することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の斜視図、第２図は
本発明の他の実施例の正面図、第３図は第２図の
仮想線で囲むＡ部を示す断面図、第４図は本発明
の他の実施例の正面図、第５図，第６図は実験結
果をそれぞれ示すグラフである。 １…静的剥離強度測定装置、２，１１，２２…
被着体、３，３ａ，３ｂ，１４，２１…試験片、
４，１６，２６…ばね秤、５…レール、６…ロー
ラ、７…鎖、８…把持手段、１３…接着剤。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 試験片を接着剤で被着体に接着した状態で、
   前記試験片をばね弾性体によつて剥離方向に引つ
   張つて試験片に静荷重を与え、ばね弾性体の変位
   が停止したときに作用している静荷重を検出する
   ことによつて静的剥離強度を測定することを特徴
   とする接着剤の静的剥離強度測定方法。 ２ 固定位置に固定され試験片が接着剤で接着さ
   れる被着体、 前記被着体に接着された試験片の直上に配置さ
   れ、かつ試験片の剥離方向を含む平面内でほぼ水
   平に配置されるレール、 前記レールに移動自在に装着されるローラ、 前記試験片を把持する把持手段、ならびに 前記ローラから吊り下げられかつ下端部が前記
   把持手段に連結されるばね秤を含むことを特徴と
   する接着剤の静的剥離強度測定装置。 ３ 前記ローラとばね秤との間には、ローラとば
   ね秤との間隔を調節自在にした連結手段が介在さ
   れることを特徴とする特許請求の範囲第２項記載
   の接着剤の静的剥離強度測定装置。