JPS6256938B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明はガソリン機関用過給機軸受の改良に
係る。

近年エンジンの過給化は急速に進み、ガソリン
自動車にもその実用化が始まつており、ガソリン
機関の軸受系については給油温度、給油量、オイ
ルの劣化度、運転状態などの条件が益々厳しくな
つて来ている。

そのうちオイルの性状と温度との影響によつて
潤滑油のＳが軸受メタルのCuと化合して硫化銅
（Cu₂S）をつくり、軸受メタル表面にこの硫化銅
を主成分とする黒化層を形成し、これが稼働時間
とともに成長し、運転中に剥離する結果摩耗して
行き、ついにはフローテイングメタルとしての機
能を保持し得なくなることが大きな問題となつて
きている。この傾向はガソリン機関用過給機のみ
ならずデイーゼル機関用過給機の場合でも発生す
るが、特にガソリン機関では排気温度が非常に高
いこと、乗用車用に使用される場合が多いことか
ら走行距離に対して発停回数が非常に多いためド
ライアツプ運転が多いこと、またガソリン機関用
のオイルは極圧添加剤をはじめとする添加成分が
多い上、活性度がきわめて高いマルチグレードオ
イルであることなどから、この種のトラブルを発
生し易くなつている。

周知のように過給機は第１図に示すようにター
ビン翼車１と送風扇車２とを共通軸３で結合し、
共通軸３は軸受ブツシユ４に対しフローテイング
メタル５を介して回転自在に支承され、例えばそ
の回転数は1000c.c.前後のガソリン機関用の過給機
で毎分25万回転にもなる。このフローテイングメ
タルの外周面、内周面は油通路８から圧送される
潤滑油で潤滑され、フローテイングメタルは共通
軸の1/2〜1/3の回転速度でつれ廻りし、共通軸と
軸受ブツシユとの相対速度を実質的に緩和してい
る。

このフローテイングメタルは例えばタービンの
ガス入口温度が900℃の場合ドライアツプピーク
温度は320℃以上にもなる。これに対して従来使
用されてきた軸受軸受メタル材のうちアルミニウ
ム合金系の軸受メタル材では含有される低融点金
属のSn（含有量約８％）が高温時に融出し、軸
受性を低下させるので230℃以上の温度では使用
することができない。

また鉛青銅系軸受メタル材ではおよそ300℃に
達するドライアツプ時に成分中のPb（約15％含
有）が表面へ融出し、Cu成分の過大層ができて
剥離がおこるようになる。りん青銅系の軸受メタ
ル材ではPbを含有しないため機械的摺動摩耗や
高温強度は大きいが、なじみ性、耐焼付き性が劣
る。

更に特殊アルミ青銅系の軸受メタルではCu含
有量が少ないため黒化層の成長速度がきわめて遅
く、高温強度や硬度が高くて摺動摩耗に対して有
効であるが、なじみ性および耐焼付き性に問題が
あつてガソリン機関用過給機の軸受メタル材とし
て使用することは難しい。

この発明は上記のような問題点を解決する軸受
メタル材、ひいては過給機軸受を提供することを
目的とし、過給機の軸受において、タービン翼と
送風扇車とを結合する共通軸に間を隔ててそのま
わりに設けられた軸受ブツシユと、該共通軸と軸
受間に遊嵌され Cu 57.0〜61.0％ Pb 2.5〜3.5％ Fe 0.5％以下 Sn＋Fe 1.0％以下 Zn 残部 よりなるフローテイングメタルと、該フローテイ
ングメタルの前記共通軸の軸心に平行方向の滑動
範囲を規制する係止材とよりなることを特徴とす
る過給機の軸受構造に係る。

次に本願発明の軸受メタル材すなわちフローテ
イングメタル材の化学成分組成についてのべる。

本願発明ではCuを57〜61％として黒化層の生
成を最小限にとどめるようにする。Pbは加工性
を良くし、かつ軸受としての良好な性質を発揮す
る範囲として2.5〜3.5％とする。FeおよびSnは
不純物として含まれ、その量が多くなると軸受メ
タルを硬くし、ダンピング効果を低下させ、かつ
割れを発生し易くするのでFeは0.5％以下、Sn＋
Feが1.0％以下になるようにし、残部は黒化層の
生成を妨げる作用のあるZnとする。

この合金材料は通例の黄銅材と同様に溶製して
引抜いた引抜材を所要の形状寸法に機械加工して
使用する。

次に本発明のフローテイングメタル材と従来使
用されてきた各種軸受メタル材との対比試験のう
ちオイル浸漬試験結果について説明する。

エンジンの急停止時における過給機のタービン
側フローテイングメタル温度の急上昇及びソーク
の結果当該メタル材が残留オイルによつて腐食す
る現象がガソリン機関において問題になつている
ので、各種エンジンオイルの温度を変え、各種軸
受メタル材をその中に一定時間浸漬したのち断面
について黒化層の厚さを測定した。その試験装置
の概要を第２図に示す。内側周囲に加熱コイル１
０を設けた円筒状容器１１中に約500c.c.のテスト
用オイル１２を入れ、その中でメタル材試験片１
３を回転速度24rpmで10時間回転させた。

試験片は本発明に係るフローテイングメタル合
金材料の標準成分組成Zn−59％Cu−３％Pb−0.5
％以下Fe−1.0％以下（Sn＋Fe）の化学組成の引
抜材を外径12mmφ、内径８mmφ、幅６mmのフロー
テイングメタル形状に加工したものを試験片とし
て用いて行つた。また対比材としては従来使用さ
れてきたJISのPBB2、PBC2、LBC4、ABB2の引
抜品の市販品を同様に機械加工して試験片とし
た。

代表的な試験結果を示すと第３図〜第５図の通
りである。図中本発明品とあるのは本発明に係る
フローテイングメタル用の合金材料を意味し、何
れのオイルに対しても黒化層の生成が従来品に比
較して著しく少ないことがわかる。

オイル浸漬試験ならびにその他の各種試験によ
つて得られた結論のうち主要なものを挙げると次
の通りである。

(1) 従来の軸受メタル材（JIS・LBC、PBC、
PBB）は油温200℃以上になると急速に黒化層
が成長し、GO−STOP耐久試験においてはピ
ーク温度が300℃を超えるため黒化層の成長と
脱落による摩耗が著しくなる。而も黒化層によ
る摩耗はオイルの種類によつて大きく影響され
るのでこれを少なくするためには適切なオイル
を選定して使用する必要がある。

(2) 本発明の軸受メタル材は黒化層の生成が殆ど
認められないので、オイルの銘柄や使用温度に
特に注意を払う必要はない。

(3) アルミニウム系軸受メタル材は黒化層を生成
しないが、過給機用軸受メタル材としては耐焼
付き性が劣るので適当ではない。

以上説明したように本発明に係る軸受メタル材
で製作したフローテイングメタル５をタービン翼
車１と送風扇車２との共通軸３と軸受ブツシユ４
との間に遊嵌し、通例の通りスナツプリング７、
スラストブツシユ９で係止した構造の過給機軸受
とすれば排ガス温度の高いガソリン機関において
も硫化銅の形成、従つて黒化層の生成を最小限に
抑えることができ、過給機の良好な性能を長時間
維持することができるようになり、ガソリン機関
の経済性の向上、ひいては過給機の普及に大きな
効果が期待される。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例を示す要部断面図、第
２図はオイル浸漬試験装置の概要を示す断面図、
第３図〜第５図は代表的なオイル浸漬試験結果を
示すグラフである。 １…タービン翼車、２…送風扇車、３…共通
軸、４…軸受ブツシユ、５…フローテイングメタ
ル、７…スナツプリング、８…油通路、９…スラ
ストブツシユ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 過給機の軸受において、 タービン翼と送風扇車とを結合する共通軸に間
   を隔ててそのまわりに設けられた軸受ブツシユ
   と、 該共通軸と軸受ブツシユの間に遊嵌され Cu 57.0〜61.0％ Pb 2.5〜3.5％ Fe 0.5％以下 Sn＋Fe 1.0％以下 Zn 残部 よりなるフローテイングメタルと、 該フローテイングメタルの前記共通軸の軸心に
   平行方向の滑動範囲を規制する係止材 とよりなることを特徴とする過給機の軸受構造。