JPS6255515B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は新規な平版印刷版に関し、特に、安価
に提供できる平版印刷版に関する。

平版印刷版は、厚さ1.0〜0.5mmの薄い板上に画
線部と非画線部が同一平面上で構成されている版
である。画線部には親油性、水反発性が、非画線
部には親水性、保水性、インキ反発性などの性質
が要求される。画線部は通常、有機感光層から成
り、非画線部は金属から成つている。非画線部、
画線部の素材の組合わせにより、種々の版式が使
用されており、作業性、経済性、印刷部数などの
面から目的にあつた版式が採用されている。

本発明は、これらの版式のうちで、特に工夫を
こらし、特別に安価に提供できることを目的とし
た版式に関するものである。本発明者等は鋭意検
討を重ねた結果、鉄箔という安価な材料が平版印
刷版に応用できることを見出した。

本発明は、鉄分を含む電解液から電気鋳造法に
より製造される極薄の鉄箔に亜鉛メツキを施した
ものを支持体として使用するものである。即ち、
非画線部に相当する部分は亜鉛メツキ面が利用さ
れる。

電気鋳造法により製造される鉄箔は、圧延によ
り製造される鋼箔と異なり、極薄の厚さで得られ
る。切断面はカミソリの刃のようでなく、取扱い
が安全である。メツキにより鉄分が盛りあがつて
いくため粗面が得られるため、アルミニウム板の
ようにボール研磨し陽極酸化を行うというような
表面調整をすることなくそのまま使用できる。鉄
箔の厚さは３μ〜150μ、好ましくは10μ〜100μ
である。このように極薄の厚さであるから、鉄板
と異なり、重量が軽いということも特徴である。
電気鋳造法により得られる鉄箔は、そのままでは
酸化されすぐにさびるから、亜鉛メツキを施すこ
とが好ましい。亜鉛メツキの層厚は0.1μ〜５μ
の範囲が好ましく、この範囲内であれば、電気鋳
造により得られた鉄箔の表面粗度は損われず、ま
た述分な耐刷力を有する。

亜鉛は親水性に富む材料であるから、亜鉛板に
感光性樹脂をのせて平版印刷版を製造することが
できることは、従来から知られている技術である
が、亜鉛は伸びのある材料であるため版材の寸法
精度が悪く、またアルミニウム板のように陽極酸
化ができにくいため表面調整がブラシ研磨やボー
ル研磨だけであるので、表面粗度をアルミニウム
板の陽極酸化面のようにはあらくすることができ
ない。従つて、品質的な面でアルミニウム板に比
べ欠点があるため、亜鉛板は現在では一般的に使
用されていない。しかるに、本発明では、電気鋳
造法による鉄箔が伸び縮みしない材料であるか
ら、亜鉛板のようには伸びはないし、鉄箔製造時
の電気鋳造法により自動的にアルミニウム板の陽
極酸化値に近い表面粗度のものがそのまま得られ
るため、亜鉛メツキをした電気鋳造鉄箔が亜鉛版
の欠点を完全に解消できる。更に、鉄箔は、アル
ミニウム板に比べ熱膨張係数が約半分であるか
ら、温度に対する寸法精度も安定している。

亜鉛メツキ面にそのまま感光性樹脂を塗布し
て、PS版またはワイポン版として使用すること
ができるが、感光性樹脂としてジアゾ系の樹脂を
使用すると、亜鉛が比較的活性であるため、ジア
ゾと反応し、暗反応を起こすから、PS版として
は安定性に欠ける。そのため亜鉛メツキ面を更に
化成処理することにより、感光性樹脂の貯蔵安定
性を向上させることができるし、また感光性樹脂
との密着力も向上する。化成処理としては、クロ
ム酸処理が好ましい。鉄箔の亜鉛メツキ面をクロ
ム酸処理すると、亜鉛単体よりは親水性がやや劣
るが、貯蔵安定性の向上、耐刷力の向上が可能に
なる。親水性が劣つた分は、非画線部の亜鉛クロ
メート面を不感脂液で不感脂化処理することによ
り補える。不感脂液としては、一般に知られてい
る酸や金属の水溶液が使用できる。クロム酸処理
法としては、クロム酸を含む水溶液に他の添加剤
を加えた市販のクロメート処理剤が使用できる。

亜鉛メツキをした鉄箔や亜鉛メツキ面をクロメ
ート処理した鉄箔に感光性樹脂を塗布することに
より平版が得られるが、感光性樹脂としては自体
公知のものが使用できる。例えば、ネガタイプ用
としては、重クロム酸コロイド感光液、ジアゾ樹
脂、パラキノンジアジド、ポリケイ皮酸ビニル等
の感光材料が、またポジタイプ用としては、オル
トキノンジアジドを用いた光可溶化型の感光材料
を用いることができる。これらの感光性樹脂を用
いて、PS版やワイポン版として使用できる。感
光性樹脂を亜鉛メツキ面またはそのクロメート処
理面に塗布するに際して、その面をあらかじめ高
分子被覆処理することにより、表面にきわめて薄
い永久親水性の皮膜を形成することができる。こ
の処理皮膜は、地汚れを防止するとともに、ジア
ゾ樹脂のようなジアゾ感光液との密着性を高め、
保存性を向上させることができる。このような高
分子としては、水溶性高分子電解質が使用でき
る。

亜鉛メツキを施した鉄箔は、裏面に安価な補強
材をラミネートすることで、作業性をよくする版
厚に調整することができる。かかる材料として
は、耐水化処理した紙や布、不織布、プラスチツ
クシート、合成紙などが使用できる。プラスチツ
クシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、塩化ビニル、ナイロン、ポリエステルなどで
ある。このような材料を適当な接着剤を介して鉄
箔にラミネートすると、印刷版として充分な強度
を有する。勿論、鉄箔に直接にまたはその亜鉛メ
ツキ面をクロメート処理した後に上記補強材をラ
ミネートしてもよい。

以上のようにして得られる平版印刷版は、アル
ミニウム板を使つた印刷版と比べ、品質的には大
差なく、コストが大幅に安いという特徴を有する
から、新聞オフセツト印刷のように大量使用の用
途に適した版材である。

次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明す
る。

実施例 １ 東洋鋼鈑社製「アイアンフオイル」（電気鋳造
法により製造した鉄箔で、鉄箔の厚さ50μ、亜鉛
メツキ厚さ1.4μ）を使用し、その片面を粘着剤
の塗布された100μ厚のポリエステルフイルムで
ラミネートしたのち、アルカリ脱脂し、次いでそ
の他面にポジタイプ用感光液（光陽社研究所製
「サンワイポン」）を塗布し、70℃で２分間乾燥し
た。

このようにして得られた感光面にポジフイルム
を密着させて、70cmの距離から3KWの高圧水銀
灯を45秒間照射したのち、アルカリ液で版面を洗
浄すると、露光部の感光性樹脂が洗い出された。
水洗したのち乾燥することにより、平版印刷版が
得られた。この平版印刷版を用いて、オフセツト
印刷機で印刷を実施したところ、鮮明な印刷物が
得られた。

実施例 ２ 実施例１と同じ亜鉛メツキ鉄箔を使用し、これ
をアルカリ脱脂したのち、無水クロム酸1.5％、
塩酸0.01％の水溶液中に１分間浸漬してクロメー
ト処理した。この処理鉄箔の片面を粘着剤の塗布
された100μ厚のポリエステルフイルムでラミネ
ートしたのち、他面に実施例１と同じポジタイプ
用感光液を塗布し、70℃で２分間乾燥した。

このようにして得られた感光面にポジフイルム
を密着させて、70cmの距離から3KWの高圧水銀
灯を45秒間照射したのち、アルカリ液で版面を洗
浄すると、露光部の感光性樹脂が洗い出された。
水洗した後乾燥し、「サンワイポン」所定の仕上
げゴム液を全面に塗布し、自然乾燥させて平版印
刷版を得た。この平版印刷版を用いて、オフセツ
ト印刷機で印刷を実施したところ、鮮明な印刷物
が得られた。

実施例 ３ 東洋鋼鈑社製「アイアンフオイル」（電気鋳造
法により製造した鉄箔で、鉄箔の厚さ30μ、亜鉛
メツキ厚さ0.5μ）を使用し、その片面を粘着剤
の塗布された210μ厚のスチレンベースの合成紙
（日清紡績社製「ピーチコートWG−220」）でラ
ミネートしたのち、アルカリ脱脂し、次いでその
他面にネガタイプ用感光液（光陽社研究所製「サ
ンワイポンネガタイプ」）を塗布し、70℃で２分
間乾燥した。

このようにして得られた感光面にネガフイルム
を焼付け、現像ラツカーを盛り、仕上げゴム塗布
を行つて平版印刷版を得た。この平版印刷版を用
いて、オフセツト印刷機で印刷を実施したとこ
ろ、鮮明な印刷物が得られた。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 電気鋳造法で製造した厚さ３〜150μの鉄箔
   に膜厚0.1〜５μの亜鉛メツキを施したうえに、
   感光性樹脂を塗布して成ることを特徴とする平版
   印刷版。 ２ 亜鉛メツキ面をクロム酸を含む液で化成処理
   したうえに、感光性樹脂を塗布して成る上記第１
   項の平版印刷版。 ３ 亜鉛メツキ面を必要に応じてクロム酸を含む
   液で化成処理したうえに、感光性樹脂を塗布して
   成る平版印刷版において、鉄箔の裏面に亜鉛メツ
   キおよび／またはクロメート処理の皮膜を介して
   または介することなく紙、布、不織布、プラスチ
   ツクまたは合成紙のいずれかの素材がラミネート
   されている上記第１項または第２項の平版印刷
   版。