JPS6252098B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

技術分野 本発明は流体輸送配管の結露防止用構造に関す
る。 従来技術 既設建築物に水等の流体を輸送する配管を新規
に施工する場合、屋内、屋外を問わずパイプを裸
管のままで設置すると搬送流体のためにパイプが
冷却されその外表面に結露が生じ、壁面にしみを
生じて外観を損じたり、管や建築物の耐久性を低
下させたりまた居住快適性を損なうことが多い。
そのため従来から発泡ポリスチレンやガラスウー
ルなどの断熱材でパイプを被覆し、さらにそのま
わりを保護カバーで被覆した構造の断熱パイプが
結露防止用として一般に使用されている。この断
熱配管には普通二つ割の円筒形の断熱カバーが用
いられており、パイプの取替え工事に際し、取外
しが容易にできるようになつているが配管の彎曲
部分は管の伸縮により断熱材カバーに亀裂が生じ
るため外側を石綿テープなどを巻付ける処置が必
要である。また断熱材カバーの表面には麻布や綿
布などを巻付け更にペンキ仕上げをするなどの現
場施工を要する。従つて従来の施工法においては
配管工事そのものの外、保温工事及びペンキ仕上
げ工事が別々に実施されるため、作業効率の低下
と施工費用の増加と云う問題があつた。 発明の目的と概要 本発明は前述の従来技術の問題点に鑑み、施工
を簡単になし得る断熱パイプ構造を提供すること
を目的とする。即ち本発明者の実験によれば
0.020〜0.045kcal／m.hr.℃程度の熱伝導率を有
する従来の発泡ポリスチレンやガラスウールなど
の断熱材を使用しなくとも空気層によつて充分に
これに匹敵する断熱効果を得られパイプ及びカバ
ー上に結露を生じないことを見出したのでこの結
果を利用して新規なパイプ構造を創出した。 即ち本発明は流体輸送用パイプをカバーで被覆
してパイプの外周に平均厚さ５〜15mmの密閉空気
層を形成せしめたことを特徴とする結露防止用断
熱パイプである。 パイプはカバーの内周面に突設されたリブ又は
カバーの内側に設けられた保持具によつて定位置
に支承される。 これらのリブ又は保持具は熱伝導率が
0.20kcal／ｍ・hr・℃以下のプラスチツク材料で
製せられることが必要である。 又カバーは一層のみならず二層以上設けられ、
各カバーの間にも平均厚さ５〜15mmの密閉空気層
を形成せしめることが好ましい。 以下図面に示す実施例に基いて本発明を更に詳
細に説明する。 実施例 第１図は本発明の基本的構造を示す第１実施例
のパイプ構造体の断面図である。 流体（水等）を輸送するための塩化ビニール等
の樹脂製パイプ１の外周には円筒状のカバー２が
設けられている。パイプ１はカバー２の内周面上
に軸方向に延在する４本の突設されたリブ３によ
つてカバー２の中心部にこれと同心的に支承さ
れ、該パイプの外周と該カバー２の内周との間に
一定の厚さの空気層４を形成している。該カバー
２の両端部は第３図に示すような蓋８によつて密
閉され（但しこのパイプ構造体は後述する第５図
の第３実施例に対応する）、結果として空気層４
は実質的に外部との連通を遮断された状態にあ
る。 この断熱パイプ構造体は第２図に示すようにカ
バー２の外周を把持する固定具６によつて建築物
の壁面７等に固定される。 本発明の特徴は空気層４の断熱効果を利用する
ことにある。従つてカバー２は空気層を密閉でき
るものであれば、プラスチツク製または金属製の
シート及びフイルムなどいずれも利用できる。た
だし、最外層カバーとしてフイルムカバーを使用
することは、強度的にも問題があり、実用的でな
いため、シートカバーを使用する必要があるが、
内層カバーとしてフイルムカバーは十分に利用す
ることができ、良好な断熱効果が得られる。尚、
カバー２自体の厚さは構造体としての強度を保持
できればよく、余り厚くする必要はなく、１mm厚
さもあれば充分である。又パイプ表面からカバー
外周への伝熱を極力少なくするように両者間の支
持手段も接触面積が小さくなされている。即ちパ
イプを支承するものは４個のリブ３の先端部のみ
とし、更に該リブ及びカバーを構成する材料、及
び該カバーを壁面に取付けるための固定具６を構
成する材料は塩化ビニール樹脂の如き0.2kcal／
ｍ・hr・℃以下の熱伝導率を有するものが選ばれ
る。該固定具６は必要に応じその外面のみを金属
製リングで補強してもよい。 空気の熱伝導率は本来0.20kcal／ｍ・hr・℃と
小さく、真空に次ぐ非伝熱媒体であり、しかも本
発明のように所定範囲の狭い空間に密閉状態で存
在する場合には殆んど対流を生じない。 日本の気候条件においてパイプ結露の多発時期
は高温多湿の夏季であり、地域によつては気温35
℃、湿度85％にも達するが通常は気温30℃、湿度
80％が上限と考えられ、この条件下で15℃の水温
の水を輸送してパイプ構造体の表面に結露を生じ
なければ実用上さしつかえはない。 本発明の断熱パイプ構造体において、密閉空気
層４の平均厚さは５〜15mmの範囲内にあることが
必要であり、更に好適範囲としては７〜13mmの範
囲である。空気層の厚さが５mm未満では伝熱距離
が短か過ぎて所望の断熱効果が得られない。逆に
15mmを越えるとたとえ密閉されていても空気層内
で対流を生じ見掛けの熱伝導率が増加し矢張り断
熱効果が低下して好ましくない。 ここで空気層の平均厚さとは第１図の実施例の
ようにパイプ１及びカバー２共に円形断面を有す
る場合にはパイプの外周面の半径とカバーの内周
面の半径との差によつて表わされる値であるが、
他の例の如くパイプ及び／又はカバーが非円形断
面を有する場合には、夫々の断面をこれと同面積
の円に置換え、その円同士の半径の差を以つて表
わす。このようにカバーの断面形状は円形のみな
らず楕円、多角形その他任意の形状をとり得るが
円形が最も好ましい。 リブ３はカバー２と一体的に押出成形されるこ
とが望ましいが、別個に成形されたリブ部材をパ
イプとカバーの間に挿入して固定することもでき
る。 カバーは一層のみに限らず第４図に示す第２実
施例のように第１カバー２の外側にリブ３′を介
して更に円筒状の第２カバー２′を設けて、第
１、第２カバーの間に第２の空気層４′を形成し
てもよい。この第２空気層４′もまた端部におい
て密閉されている。第２空気層４′の厚さもまた
第１空気層４と同じく５〜15mmの範囲にあること
が必要であり、更に７〜13mmの範囲にあることが
好ましい。カバーの積層数を更に増加することも
勿論可能であるが実用的には三層が限度であり、
それ以上層数を増しても余り大きな効果の進歩は
期待できない。又カバーは同心的に設けることが
好ましい。 第５図に示す本発明の第３実施例は非円形断面
のカバー２が使用されている。この例は第１実施
例と同じくパイプ１の外周に一層のカバー２を設
けたタイプであるが、カバー２は八角形状の断面
を有し、軸方向に沿つて二つに分割された割型部
材２ａと２ｂを嵌合部２ｃで係止して一体化して
いる。係止の手段としては他に応力によるかみ合
わせ、接着剤による接合、又は粘着テープによる
貼合せ等も採用し得る。 この例においてはパイプ１は保持具５によつて
その外周面を直接に把持されボルト５ｂによつて
固定された上、カバー２の内面２ｄの上から建築
物の壁面７に取付けられる。従つて第３実施例に
おいては第１実施例におけるようなリブ３は存在
せず、パイプ１は空気層４の他には長さ方向に一
定の間隔で設けられた保持具５のみを介してカバ
ー２と接触することになる。断熱効果を向上させ
るためにはこのようにカバー２の内側に設置され
る保持具５の熱伝導率を0.20kcal／ｍ・hr・℃以
下とすることが好ましい。 第６図は本発明の第４実施例の断面を示すが、
これは第３実施例の断熱パイプ構造体のカバー２
をこれと相似形をなす八角形断面の第２カバー
２′で被覆し、平均厚さが夫々13mmの二重の密閉
空気層４，４′を設けたものである。 第７図に示す第５実施例においてはパイプ１の
外周に４個のリブ３を介して四角形断面の第１カ
バー２と、該第１カバー２に外接する円形断面を
有する第２カバー２′を設け、平均厚さが夫々10
mm及び５mmの二重の密閉空気層４，４′を設けた
ものである。この例においては両カバー２，２′
の接点Ｘにおいて第２の空気層４′厚さは０mmと
なつているが、このように局部的なものであれば
本発明の効果に何等影響を及ぼさない。 次に本発明の作用について説明する。 本発明の断面パイプ構造体においては流体を輸
送するパイプ１の外周を囲繞して５〜15mmの平均
厚さを有する少なくとも一層の密閉空気層を設け
ている。しかもパイプの外周とカバーとは低い熱
伝導率を有するリブ３又は保持具５を介して極め
て限られた接触面積でのみ接続されているので、
カバー表面がパイプ内を流れる低温流体の影響に
よつて冷却されることが少なく従つて通常の気候
条件下で使用される場合には結露を防止すること
ができる。更にカバーを二重に設けた場合には夏
期における最も厳しい条件下においても充分に結
露を防止することができる。 本発明の叙上の作用効果は次に示す実験結果に
よつて更に明瞭になるであろう。 実験結果 塩化ビニール樹脂製の外径26mmのパイプ１、及
び厚さ１mmの塩化ビニール樹脂製のカバー２又は
２′によつて前述の実施例１〜５に示す本発明の
断熱パイプ構造体を作製しパイプ内に水温15℃の
水を通して結露の状態を調べた。又本発明外の対
照例についても同様の調査を行なつた。これを次
表に示す。

【表】

【表】 表から明らかなように本発明の条件に合致する
断熱パイプ構造体においては結露状態は見られな
かつたが、これを外れた比較例のものはいずれも
結露が生じ好ましくなかつた。 発明の効果 以上詳述した如く、本発明の断熱パイプはガラ
スウール、発泡ポリスチレンなどの断熱材によつ
てパイプの表面を被覆する代りにカバーによつて
パイプの外周に密閉空気層を設けてこれと同等の
結露防止効果を挙げ得るものであり、従来のよう
にパイプの彎曲部が熱的に伸縮した場合に表面被
覆層が破損する危険性が回避される。又従来品に
比し構造が簡単であるため、断熱配管の施工とそ
の取替え工事も容易となり工費を節減することが
できる。 更に叙上の結露の防止効果の他、寒冷時の使用
に際しても本発明のパイプ構造体はその優れた断
熱特性のため輸送流体の凍結防止効果が大きく、
たとえば外気温−13℃の下で塩化ビニール樹脂製
のパイプVP20A中に10℃の水を静止充填した場
合、凍結開始までの時間は裸管で9.0分であつた
のに対し、厚さ８mmの空気層を設けた本発明構造
体では33.6分、更にその上に厚さ７mmの第２空気
層を設けた本発明構造体では41.5分と実に４倍以
上の時間を要した。従つて本発明構造体は限定さ
れたパイプ距離間の凍結防止効果が優れているこ
とがわかる。同様の効果は保温用にも実質的に使
用し得ることを意味する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１実施例を示す断面図、第
２図は第１実施例にかかる断熱パイプ構造体の斜
視図であつてパイプの端面の密閉用蓋を省いてパ
イプ内部を見えるようになしたもの、第３図は本
発明の断熱パイプ構造体の端部構造を示す斜視
図、第４図〜第７図は夫々本発明の第２〜第５実
施例を示す断面図である。 １……パイプ、２，２′……カバー、２ａ，２
ｂ……２つ割形部材、２ｃ……嵌合部、２ｄ……
カバーの壁面固定部面、３……リブ、４，４′…
…密閉空気層、５……保持具、５ａ……保持具の
環状部、５ｂ，５ｃ……ボルト、６……固定具、
７……壁、８……密閉蓋。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 流体輸送用パイプをカバーで被覆すると共
   に、該カバーの内周面の一部に設けられた熱伝導
   率0.20kcal／ｍ・hr・℃以下のプラスチツク材料
   製のリブ又は保持具によつて定位置に支承し、パ
   イプの外周に平均厚さ５〜15mmの密閉空気層を形
   成せしめたことを特徴とする結露防止用断熱パイ
   プ。 ２ カバーの断面形状が円形、楕円形、多角形の
   群から選ばれている特許請求の範囲第１項に記載
   された断熱パイプ。 ３ カバーが二層以上設けられ、各カバーの間に
   も平均厚さ５〜15mmの密閉空気層を形成せしめた
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項に記載さ
   れた断熱パイプ。