JPS6243181Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は静止型複式メカニカルシール、特に
密封液室と機内液室とを軸封するシールリングの
変形防止構造を備えた主として高圧用の静止型複
式メカニカルシールに関するものである。

従来例によるこの種の静止型複式メカニカルシ
ールの概要構成を第１図に示す。この従来例は適
宜ハウジング２に軸装される回転軸１の大気室ａ
側および機内液室ｂ側と密封液室ｃ側とをそれぞ
れに軸封するための構成である。

この第１図構成において、３は前記回転軸１上
に被嵌固定されたスリーブ軸で、その軸上には回
転環４を周設してある。５ａ，５ｂはこの回転環
４の両端面に適宜ピン止めなどにより係着されて
一体的に回転されるシールリング、６ａ，６ｂは
前記回転環４にＯリング７ａ，７ｂを介して止着
され、各シールリング５ａ，５ｂを押止保持する
シールリング押えであり、それぞれの軸封端面に
可及的接近さててＯリング８ａ，８ｂを介装して
ある。

また９ａ，９ｂは前記ハウジング２にそれぞれ
固定した静止環リテーナ、１０ａ，１０ｂはその
カバーで、これらの間にはそれぞれにシートリン
グ１２ａ，１２ｂを有する静止環１１ａ，１１ｂ
が嵌装されており、静止環リテーナ９ａ，９ｂと
静止環１１ａ，１１ｂとは対向面間に廻り止めガ
イドピン１３ａ，１３ｂを遊嵌して軸方向にのみ
摺動可能にすると共に、スプリング１４ａ，１４
ｂにより前記シールリング５ａ，５ｂにシートリ
ング１２ａ，１２ｂを常時接圧して、これらの間
に軸封端面１５ａ，１５ｂを形成している。な
お、１６ａ，１６ｂは前記静止環リテーナ１０
ａ，１０ｂと静止環１１ａ，１１ｂとの間に介装
されたＯリングである。

こゝで一般に高圧用のメカニカルシールでの設
計要素は、軸封面に作用する負荷力Ｐと軸封面に
おける周速Ｖとの積、いわゆるPV値の良好なシ
ール材料の組合わせを選ぶこと、および高圧によ
る変形を抑えるために強度の大きいシール材料を
選ぶことなどであるが、これらの条件は相互に相
反する立場をとる。すなわち、前者を満足させる
のには、例えば超硬合金などの硬質材と、殆んど
の場合カーボンによる軟質材との組合わせが良い
とされるが、カーボン自体は強度が弱くて圧力変
形を生じ易い不利があり、また後者としては硬質
材同志の組合わせが好ましいが、PV値が超硬合
金対カーボンの1/3〜1/5となるために限界があ
る。

従つて従来にあつては、前記前者条件でPV限
界以上の設計仕様の場合、前記シールリング５
ａ，５ｂにカーボン、シートリング１２ａ，１２
ｂに超硬合金をそれぞれ使用し、カーボンの強度
面については、これを設計形状的に回避する手段
を採用しているのである。すなわち、シールリン
グ５ａ，５ｂの外周で、軸封端面に可及的接近し
た位置にＯリング８ａ，８ｂを介装させ、これに
よつて第２図に示すように、機内液圧≒大気圧の
ときに各シールリング５ａ，５ｂの外周に圧力を
作用させないか、あるいはその影響を極力小さく
させるようにしているのである。

しかし乍らこの従来構造では、機内液室ｂと密
封液室ｃとの軸封部にあつて、機内液圧が上昇し
た場合、カーボンからなるシールリング５ａ，５
ｂには、第３図に示すように、すべての面、すな
わち軸封面、背面はもとより、内周面、外周面か
らも圧力が作用して、カーボンに与えられる変形
量が増大し、軸封機能を果たさなくなるという欠
点を生ずるものであつた。

この考案は従来のこのような欠点に鑑み、カー
ボンからなるシールリングの内周にあつても、そ
の軸封端面に可及的接近した位置に新たにＯリン
グを介装させると共に、その軸封面以外の背面、
内周面、および外周面の微小空隙を大気室側に連
通させることによつて、これらの各面への作用圧
力を排除させるようにしたものである。

以下、この考案に係るメカニカルシールの一実
施例につき、第４図および第５図を参照して説明
する。

第４図はこの実施例装置の概要構成を示してい
る。この第４図において前記第１図従来例と同一
符号は同一または相当部分を示しており、この第
４図実施例では、第１図従来例の構成にあつて、
前記機内液室ｂと密封液室ｃとの軸封部側シール
リング５ｂの内周で、軸封端面１５ｂに可及的接
近した位置、すなわち前記Ｏリング８ｂに対応す
る位置の前記スリーブ軸１との間に、新たにＯリ
ング１７を介装させ、かつこのシールリング５ｂ
の軸封端面１５ｂを除く背面、外周面、および内
周面の微小空隙を、前記回転環４の基部に穿孔し
た連通孔１８により、前記大気室ａ側に連通させ
たものである。

すなわち、この具体的構造としては、前記スリ
ーブ軸１の該当部に周溝１９を形成してＯリング
１７を装着させ、このＯリング１７によりシール
リング５ｂの軸封端面１５ｂに可及的接近した内
周面とスリーブ軸との間をシールするものであ
り、このＯリング１７、および前記Ｏリング８ｂ
には、第５図に示すように、必要に応じてバツク
アツプリング２０，２１を挿入させるのがよい。
なお前記大気圧ａ側への連通孔１８は必ずしも回
転環４の基部に形成しなくてよく、単に前記微小
空隙を大気室ａ側に連通させる役割を果しさえす
ればよいのである。

従つてこの実施例構成の場合には、機内液室ｂ
と密封液室ｃとの軸封部でのシールリング５ｂ
に、その軸封端面１５ｂに可及的接近した外周
面、および内周面でＯリング８ｂ、および１７を
介在させると共に、同軸封端面１５ｂを除く背
面、外周面、および内周面の微小間隙を、連通孔
１８により大気室ａ側に連通させて、大気圧下に
おくようにしたので、第５図に示すように機内液
圧が上昇しても、シールリング５ｂに作用する圧
力の方向を、前記第２図での方向にのみ特定し得
て、シールリングへの変形圧力を排除できるので
ある。

以上詳述したようにこの考案によるときは、機
内液室と密封液室との軸封部に設けられるシール
リングにあつて、その軸封端面に可及的接近した
外周面、および内周面にそれぞれＯリングを介在
させると共に、この軸封端面を除く背面、外周
面、および内周面の微小空隙を大気室側に連通さ
せるようにしたから、機内液圧の変化に拘らずシ
ールリングに作用する圧力の方向を特定し得て、
他方向からの作用圧を小さく、かつその作用圧に
よつて生ずるシールリングへの変形量をシールの
密封性を損なわない程度の範囲内に抑制できるも
のであり、これによつて軸封要素としてのシール
リングとシートリングとの材料の組合わせに、
PV値の良好な材料、例えばカーボンと超硬合金
とを使用できるほか、構成自体も従来例と大差な
く容易かつ安価に実施できるなどの特長がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来例による静止型複式メカニカルシ
ールの概要構成を示す断面図、第２図および第３
図は同上動作説明図、第４図はこの考案の一実施
例による静止型複式メカニカルシールの概要構成
を示す断面図、第５図は同上動作説明図である。 １……回転軸、２……ハウジング、３……スリ
ーブ軸、４……回転環、５ａ，５ｂ……シールリ
ング、６ａ，６ｂ……シールリング押え、７ａ，
７ｂ，８ａ，８ｂおよび１７……Ｏリング、１１
ａ，１１ｂ……静止環、１２ａ，１２ｂ……シー
トリング、１５ａ，１５ｂ……軸封端面、１８…
…連通孔、ａ……大気室、ｂ……機内液室、ｃ…
…密封液室。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 回転側に設けた回転環の両端面に、それぞれシ
   ールリングを係着させて、各シールリングを外周
   側からシールリング押えにより保持させ、また固
   定側にそれぞれ軸方向にのみ摺動可能に保持させ
   た各静止環端部のシートリングを、前記各シール
   リングに弾圧摺接させて、大気室側と密封液室
   側、および機内液室側と密封液室側との各軸封端
   面を形成した静止型複式メカニカルシールにおい
   て、前記機内液室側と密封液室側との軸封部シー
   ルリングに対し、その軸封端面に可及的接近させ
   た外周面、および内周面にそれぞれＯリングを介
   在させると共に、この軸封端面を除く他面の微小
   空隙を前記大気室側に連通させたことを特徴とす
   る静止型複式メカニカルシール。