JPS6230300B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は吸気管に吸入された燃料の霧化を促進
するための吸気加熱装置に関するものである。

内熱機関において、気化器を介して空気ととも
に吸入される燃料を加熱してその霧化を促進する
ために、気化器のスロツトル弁直下に位置する吸
気管を、機関の冷却に利用した冷却水や排気ガス
により加熱する手段がとられている。

ところで、機関の冷間始動時には特に未霧化の
燃料が吸入されやすいが、このとき冷却水や排気
ガスは充分に暖まつていないために燃料霧化促進
作用を有効に達成することができない。

そこで、冷却水や排気ガスに代え、吸気管の上
記加熱部、いわゆるヒートライザ部を加熱する手
段として、通電することにより瞬時に発熱し、か
つ特定温度に維持されるセラミツクの発熱体を具
備した吸気加熱装置が注目されている。

チタン酸バリウム等のセラミツク材は通電する
ことにより発熱して特定温度に達すると電気抵抗
が急激に増大する。この電気抵抗が急激に増大す
る温度（キユーリ点）は材質により異るが110℃
〜150℃程度であつて、キユーリ点以下の温度で
は大電流を許容して迅速にキユーリ点に達し、キ
ユーリ点を越えると電気抵抗が極めて大きくなつ
て小電流しか許容しないために過熱することな
く、キユーリ点前後の温度に自己温度調整をす
る。

このようなセラミツク材（以下、PTCセラミ
ツクという）を具備した吸気加熱装置の一般的構
造は、熱伝導性良好な金属板より成るケーシング
内にPTCセラミツクの発熱体を設け、該発熱体
をばね等の弾性部材によりケーシングの内面の一
部に押付けて密着せしめた構造を有しており、発
熱体を密着したケーシングの表面側が吸気管内に
露出するようにケーシングをヒートライザ部に設
置している。

ところでこのような構造の吸気加熱装置におけ
る一つの問題点は、吸気管内の負圧により発熱体
を密着したケーシングの部分が変形することであ
る。即ち、吸気管内に露出し、その裏面に発熱体
を密着して、吸入燃料の加熱部となるケーシング
の部分は、発熱体からの伝熱による速かな温度上
昇が得られるように薄く形成することが望まし
い。一方、吸気管内には内燃機関が部分負荷で運
転されてスロツトル弁がほとんど閉じられると大
きな負圧が発生し、この負圧の作用によつてケー
シングの薄い加熱部が吸引されて変形が生じやす
い。そして、変形が生じるとケーシングと発熱体
の密着性がそこなわれ熱伝達が低下してケーシン
グの加熱部を充分な高温に保持できなくなる。ま
た、発熱体が部分的に破損するという問題があ
る。

そこで本発明は、内面に上記発熱体を密着せし
めたケーシングを吸気管のヒートライザ部に設置
した吸気加熱装置において、ケーシング内と吸気
管内とを導通する管路を設けてケーシングと吸気
管の圧力をバランスするように構成し、これによ
りケーシングの変形を防止してケーシングと発熱
体との密着性を保持し、加熱部の迅速な昇温およ
び高温の保持を可能ならしめるものである。

以下、本発明の実施例について説明する。

第１図において、１は内燃機関の吸気管で、そ
の上流には図示しない気化器が設けられ、気化器
のベンチユリー部に開口する燃料供給口から供給
される燃料は、吸入空気と混合され、スロツトル
弁Ｔを経て吸気管１を通り、図示しないエンジン
の燃焼室に供給される。

スロツトル弁Ｔの直下に位置する吸気管のヒー
トライザー部には円形の穴１１が設けられてその
中に吸気加熱装置Ａが設置されている。なお、吸
気管１には装置Ａに近接して機関冷却水を流通せ
しめる通路Ｗが設けられている。

穴１１にはアルミニウムよりなるハツト形のケ
ーシング２が嵌入され、その下部開口端に形成し
たフランジ部において、開口を覆うように配設し
た電気絶縁かつ耐熱性の樹脂よりなるアンダーカ
バー３とともに、吸気管１の底部にボルト締め固
着されている。吸気管内に露出したケーシング２
の上壁（以下、加熱板という）２１は薄く形成さ
れ、吸気管壁面とほぼ同一面をなしている。ま
た、ケーシング２の側壁と吸気管の穴１１との
間、およびアンダーカバー３とケーシング２のフ
ランジ部との間にはＯリング２２，２３が介設さ
れ、ガスシールを行なつている。

アンダーカバー３のケーシング内側上面には銅
板のスプリングホルダー４ａが取付けられるとと
もに、その上にリン青銅のコイルスプリング５が
設置されており、このコイルスプリング５が銅板
のスプリングホルダー４ｂを介して円盤状の発熱
体６を支持し、発熱体６は加熱板２１の裏面側に
押付けられている。

この発熱体６はPTCセラミツクたるチタン酸
バリウムを主成分として焼結されたもので、正の
抵抗温度特性ならびに約150℃でキユーリ点を有
し通電することにより発熱する性質を有する。

発熱体６の上面にはエポキシ樹脂に銀およびパ
ラジウム粉末を混合した電極剤、いわゆる銀ペー
ストが焼付けられている。発熱体６の下面に接す
るスプリングホルダー４ｂは正電極を兼ねてお
り、またアンダカバー３に接するスプリングホル
ダー４ａの中央部は切りおこされて爪４１ａがア
ンダーカバー３を貫通して下方に伸び、正電極の
端子となつており、キースイツチを介してバツテ
リー（図示せず）に接続されている。アンダーカ
バー３、スプリングホルダー４ａおよび爪４１ａ
は完全に密着されている。

吸気管１および吸気加熱装置のアンダーカバー
３にはパイプがモールドされており、これ等は連
通管により結合され、吸気管１内と装置Ａのケー
シング２内とを連通する管路７を構成している。

以上の構成において、エンジンの始動にあたつ
てキースイツチを閉とすると、電流は、バツテリ
ー正電極、スプリングホルダーの爪４１ａおよび
ホルダー４ａ、コイルスプリング５、スプリング
ホルダー４ｂ、発熱体６、ケーシング２、吸気管
１、バツテリー接地電極の経路で流れる。ところ
で、発熱体６は常温では極めて低い電気抵抗であ
るために大電流を許容して瞬時にキユーリ点の
150℃程度に達するが、このとき発熱体６の電気
抵抗は極めて大きくなつて温度が上昇せず150℃
に保持される。そしてこの熱は、ケーシング２の
加熱板２１に伝熱されて該部は150℃近くの温度
に上昇し、これにより未霧化の状態で加熱板２１
に落下した燃料液滴や、吸気管壁を壁面流となつ
て流下してきた液滴が霧化されるのである。

ところで、内燃機関の運転域、例えばフアース
トアイドル状態では吸気管内負圧は500〜550mm
Hgとなり、この負圧がケーシングの加熱板２１
に作用し、加熱板２１は吸気管内に向けて山なり
の形状に変形しようとするが、本装置においては
吸気管１とケーシング２内とは管路７により導通
されているためにケーシング内も吸気管内と同様
に負圧となつて加熱板２１の両側は圧力バランス
が保たれ、これにより加熱板２１の変形がなく、
加熱板２１と発熱体６とは良好な密着状態が保持
されるのである。

第２図は上記管路７に設けた電磁弁V₁を示す
もので、一端が上記吸気管１に連結する管路部７
ａと、一端が上記ケーシング３に連結する管路部
７ｂとの間にはハウジング７１が介設され、その
中にキースイツチＳを介してバツテリーＢに接続
された電磁コイル７２の電磁吸引力によつて移動
して管路部７ａを開閉する弁体７３が設けられて
いる。そしてこの電磁弁V₁は、内燃機関停止時
には弁体７３がスプリング７４の付勢力で押し上
げられて管路部７ａを閉路し、エンジン始動時に
は弁体７３が下方へ引き下げられることにより管
路部７ａを開路する。

このように管路７が内燃機関停止時に閉路され
ることにより、内燃機関停止時に吸気管内に残留
しそして蒸発した燃料がケーシング２内へ侵入す
るのを防止することができる。

また、燃料蒸気がケーシング内へ侵入するのを
抑制するためには、管路中に燃料蒸気を吸着せし
めるフイルター部材を設けてもよい。

第３図および第４図は上記管路７に設けた一方
向弁を示すもので、第３図の一方向弁V₂では吸
気管１へ連なる管路部７ａとケーシング２に連な
る管路部７ｂとの間に介設したハウジング７１内
には、スプリング７４により管路部７ｂの開口へ
押し付けられてこれを閉路する弁体７３が設けら
れている。そしてこの一方向弁V₂のセツト圧
は、ケーシング２内の圧力が吸気管１内の圧力よ
りも所定値、例えば60mmHg以上高くなつたとき
に開弁するように設定されている。

上記の一方向弁V₂を設置した管路７を有する
吸気加熱装置において、内燃機関のクランキング
時、吸気管内負圧は30〜40mmHg程度であり、ケ
ーシング２内の圧力は大気圧であつて、一方向弁
V₂はそのセツト圧により開かない。

従つて燃料がケーシング内に侵入するようなこ
とはない。

内燃機関が完爆してフアーストアイドル状態と
なると吸気管内負圧は500〜550mmHg程度とな
る。このとき、一方向弁V₂は開いてケーシング
２内の空気が吸気管１へ流れるためにケーシング
２内も負圧となり、吸気管１内とケーシング２内
の圧力バランスが保たれ、加熱板２１が変形する
ことはない。

フアーストアイドル状態から内燃機関に負荷を
加えると、スロツトル弁Ｔは開いて吸気管内負圧
は小さくなる。このとき一方向弁V₂は閉じられ
てケーシング２内の圧力は吸気管内圧力よりも低
くなる。これにより加熱板２１はコイルスプリン
グ５のばね力に抗して発熱体６をスプリング５へ
押し付けることになり、従つて加熱板２１と発熱
体６との密着性は更に向上する。

そして内燃機関が停止したときは一方向弁は閉
じられており、吸気管内の燃料蒸気がケーシング
２内へ入るのが防止される。

また、ケーシング２内を負圧の状態として長時
間内燃機関を停止した場合には、吸気管１内の燃
料蒸気が一方向弁V₂から微量づつもれてケーシ
ング２内に入つてくることがあり得る。このよう
な場合には、吸気加熱装置のアンダーカバー３
（第１図）に小孔を設けて大気とケーシング２内
を連通せしめておけば、ケーシング２内は徐々に
侵入してくる大気で満たされるため、燃料蒸気が
ケーシング２内へ入るのを防止できる。なお、こ
の小孔とエアクリーナとを連通せしめておけば、
吸気管１およびケーシング２内にゴミやホコリが
入るのを防止できる。

第４図は他の一方向弁V₃を示すもので、吸気
管１に連結した管路部の先端は分岐管７a₁，７a₂
に分岐せしめ、これ等管路とケーシング２に連結
した管路部７ｂとの間にダイヤフラム式の一方向
弁V₃が設置されている。即ち、分岐管７a₁および
管路部７ｂと連通するハウジング７１にはスプリ
ング７４により弁体７３が支持されて分岐管７a₁
の開口を閉路している。また弁体７３の下端はダ
イヤフラム室７５を区画するダイヤフラム７６に
連結されている。ダイヤフラム室７５の弁体７３
側の室は壁面に設けた小孔７５１により大気と連
通し、他の室は上記吸気管１に連なる上記分岐管
７a₁と連通している。

このダイヤフラム式一方向弁V₃において、吸
気管内負圧は分岐管７a₁より弁体７３に作用する
とともに分岐管７a₂よりダイヤフラム７６に作用
するが、ダイヤフラム７６の受圧面積が大である
ことより弁体７３はダイヤフラム７６により引き
下げられて開弁する。この場合も弁のセツト圧は
90mmHgに設定されており、上記第３図図示の一
方向弁V₂と同一の作用効果を奏する。

次に、本発明装置の効果に関する実験例を第５
図に示す。内燃機関の運転条件は2000rpm、吸気
管内圧力は−300mmHgである。

図中、線a₁，a₂，a₃は吸気加熱装置の消費電流
の経時変化を示すもので、線a₃はケーシングと吸
気管とが連通されていない従来装置、線a₁は両者
を第１図に示す管路７で連通した本発明装置
A₁、線a₂は管路７に第３図に示す一方向弁V₂を
設けた本発明装置A₂である。

いずれも、機関始動時の通電と同時に発熱体に
大電流が流れ、キユーリ点に達すると小電流とな
つてその後は小電流が維持される。

一方、線a′₁，a′₂，a′₃は加熱板の温度を示し、
a′₃は上記従来装置、a′₁は本発明装置A₁，a′₂は本
発明装置A₂である。

図より知られる如く、従来装置の加熱板は通電
開始後10.5秒で、本発明装置A₁では６秒で、本発
明装置A₂では3.5秒でそれぞれ100℃となる。

このことは、従来装置では吸気管内負圧により
加熱板が浮上る傾向となつて加熱板と発熱体との
密着性が低下し加熱板の温度立上りが遅れるこ
と、本発明装置A₁ではケーシング内外の圧力バ
ランスが保たれているので加熱板と発熱体の密着
性が維持されて加熱板の温度立上りが良好である
こと、本発明装置A₂では上記両者の密着性が強
化されるので加熱板の温度立上りが更に向上され
ることを示している。

このように本発明は、ケーシングの内面に
PTCセラミツクの発熱体を密着せしめて吸気管
に設置した吸気加熱装置において、ケーシング内
と吸気管内とを圧力的に連通せしめる構造とした
もので、吸気管内負圧が発熱体を密着したケーシ
ング面に作用してもケーシング内部と吸気管内と
は圧力バランスが保たれているためにケーシング
が吸気管内負圧により変形することがない。

PTCセラミツクの発熱体を有するこの種の吸
気加熱装置においては、如何にしてケーシングと
発熱体との密着性を常に良好に保持し、かつもろ
いPTCセラミツクの発熱体を破損することなく
保持するかが重要な問題とされており本発明はこ
の問題の有効な対策を提供するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図は本発明装置の実施例を示
すもので、第１図は装置全体の断面図、第２図な
いし第４図はそれぞれ本発明装置に設置する開閉
弁の断面であり、第５図は本発明装置および従来
装置に関する実験結果を示す図である。 Ａ……吸気加熱装置、１……吸気管、２……ケ
ーシング、４ａ，４ｂ……電極板、５……コイル
スプリング、６……発熱体、７……管路、V₁，
V₂，V₃……管路に設置する開閉弁。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 吸気管のスロツトル弁直下位置に金属板より
   なるケーシングを少くともその一部が吸気管内に
   露出するように配設し、ケーシング内には正の抵
   抗温度特性ならびに特定温度でキユーリ点を有し
   通電することにより発熱するセラミツク材よりな
   る発熱体を弾性部材により支持してケーシングの
   上記露出部裏面に圧接せしめ、上記吸気管とケー
   シングとの間には吸気管負圧をケーシング内に導
   入するための管路を設けたことを特徴とする内燃
   機関の吸気加熱装置。 ２ 上記管路に吸気管内の燃料がケーシング内へ
   流入するのを阻止する燃料流通制御手段を設けた
   特許請求の範囲第１項記載の内燃機関の吸気加熱
   装置。 ３ 上記管路にケーシングより吸気管への流体の
   流入のみを許す一方向弁を設けた特許請求の範囲
   第１項記載の内燃機関の吸気加熱装置。