JPS6216718Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の目的〕 （産業上の利用分野） 本考案は、ナトリウム冷却高速増殖炉の炉心に
設置される制御棒集合体の浮上り防止装置に関す
る。

（従来の技術） ナトリウム冷却高速増殖炉に使用される制御棒
集合体は、その機能上、上下に作動し原子炉の出
力制御や緊急停止を行う制御棒と、制御棒作動の
案内、位置決定および原子炉緊急停止時の制御棒
挿入による衝撃の緩和を行う機構を持つ制御棒案
内管から構成されている。制御棒には、原子炉炉
心の中性子を吸収する中性子吸収材が充填されて
居りこの中性子吸収材は、中性子を吸収すること
により発熱する。この発熱に対し、構成上の安全
をはかるため制御棒は、制御棒案内管下部より流
入する液体ナトリウムにより冷却されている。

（考案が解決しようとする問題点） 制御棒案内管は上記制御棒を内包し、かつ冷却
を行うための通路を有するが、原子炉の運転時に
おいては下部の入口における冷却材圧力が、出口
における冷却材圧力よりもかなり高いため流体圧
により浮上ることが考えられる。制御棒案内管が
浮上つた場合には、制御棒緊急挿入時に制御棒が
迅速に炉心に挿入出来なくなることも考えられ浮
上りは必ず阻止しなければならない。

従来、かかる対策を構ずるためには、制御棒案
内管のエントランスノズル部に突起を設け、制御
棒案内管の取りつけられる炉心支持板の連結管に
溝を設けて上記エントランスノズル部の突起とは
め合せてから回転して締結し、はずれない様にす
るという方法が考えられていたが、制御棒案内管
の取付け取外しに際しては制御棒案内管を回転さ
せる必要があり周囲の炉心構成要素を全部外さね
ばならず、多大の労力を必要としていた。

本考案は、かかる事情に鑑みてなされたもの
で、ナトリウム冷却高速増殖炉の運転時において
制御棒案内管の浮上りを確実に防止し、かつ燃料
交換時には、制御棒案内管の着脱を容易に行うこ
とが出来る制御棒集合体の浮上り防止装置を提供
することを目的とするものである。

〔考案の構成〕

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するために、本発明において
は、ナトリウム冷却高速増殖炉の炉心支持板と、
この炉心支持板の上面に垂設されたスリーブと、
このスリーブ中に挿入される制御棒案内管と、こ
の制御棒案内管の下部外側円周面に軸方向に設け
られた複数の制御棒案内管溝と、これら制御棒案
内管溝に吊設された弾性棒状部材と、前記制御棒
案内管の下部に囲設された六角外筒とからなり、
前記弾性棒状部材の下端部に前記制御棒案内管の
外側方向に鋭角の傾斜角をもつた突起を有し、前
記スリーブの内側に前記傾斜角と等しい傾斜角を
もつて前記突起と嵌合しうるスリーブ溝を形成
し、かつ前記突起とスリーブ溝の接触面の少なく
とも一方にナトリウム中での接触面の融着を防ぐ
表面処理を行い、前記六角外筒の内側に前記突起
の軸方向案内用の六角外筒溝を設けた制御棒集合
体の浮上り防止装置を提供する。

（作用） このように構成された制御棒集合体の浮上り防
止装置においては、高速炉運転時にナトリウム冷
却材の流体圧により制御棒案内管が浮上ろうとす
るが、突起とスリーブ溝との接触面において発生
する摩擦力による保持力により浮上りを防ぐこと
ができる。また、燃料交換時に制御棒案内管をス
リーブから取り外す場合には前記の保持力に打勝
つような引抜き力を加えることにより弾性棒状部
材を制御棒案内管の内側へたわませて取り外すこ
とができる。また、突起とスリーブ溝との接触面
における表面処理により、ナトリウム中での接触
面の融着を防ぎ、制御棒案内管の保持力を一定に
保つことができる。

（実施例） 以下本考案の一実施例を図面によつて説明す
る。

第１図は、本考案の制御棒集合体浮上り防止装
置の取付け位置を示す。制御棒１は、制御棒案内
管２の内部を上下動する。

第２図は第１図における浮上り防止装置を拡大
して示す縦断面図である。

浮上り防止装置３は炉心支持板１７の上面に設
置される。制御棒案内管２の下部外側円周面には
軸方向に吊設される弾性棒状部材１５用の溝１３
が複数個設けられている。この弾性棒状部材１５
はその上部を固定ピン１４で制御棒案内管１３の
上部に固定されており、また弾性棒状部材１５の
下部には傾斜角θをもつた突起１６が設けられ、
炉心支持板１７の上面に垂設されたスリーブ１８
には同じ傾斜角θをもつて、この突起１６と嵌合
する溝１９が設けられており、原子炉運転時に突
起１６とスリーブ溝１９とは同じ傾斜角θをもつ
て、接触面２０で接触している。

またスリーブ溝１９と突起１６との接触面２０
は、ナトリウム中での摩擦抵抗を安定化して制御
棒案内管２の浮上りを確実に防止し、また突起１
６とスリーブ溝１９の接触面での融着を防ぐため
に適当な表面処理、例えば硬質クロムメツキ処理
を施し、かつ、その表面を充分なめらかに、例え
ばJIS規格1.5−Ｓよりなめらかに加工する。前記
スリーブ溝１９と前記突起１６の接触面の傾斜角
θ、および弾性棒状部材１５の弾性力は、適当な
摩擦力を生じ制御棒集合体の浮上りを防止し、か
つ制御棒集合体交換時に脱着が可能な値に選定す
る。また、前記弾性棒状部材１５は前記スリーブ
溝１９との脱着時に生じる大きな曲げ応力に耐え
るために例えば20％冷間加工した316ステンレス
鋼で製造する。制御棒案内管２を炉心の六角状の
格子構造内に挿入して定位置に保持するために、
制御棒案内管２の下部外側面には炉心の他の部材
との間隔を保つパツド（帯状突起）２２を有する
六角外筒２３が挿着され、固定ピン２４によつ
て、制御棒案内管２に固定されている。また、六
角外筒２３を制御棒案内管２に挿着する際、前記
突起１６と六角外筒２３の内面との接触を防止
し、なめらかに挿着できるように軸方向に長い形
状の六角外筒溝２７が六角外筒２３の内面に設け
られている。

次に作用について説明する。

制御棒案内管２を挿入する場合、この制御棒案
内管２が上方から下降してくると、まず突起１６
がスリーブ１８と接触する。これに打ち勝つよう
な下方向の力を加えると弾性棒状部材１５が内側
にたわみ、制御棒案内管２が所定の位置まで挿入
されると突起１６とスリーブ溝１９とがはめ合つ
て、制御棒案内管２はスリーブ１８に固定され
る。突起１６およびスリーブ溝１９は、同一の傾
斜角θを有する面ではめ合い、ナトリウム冷却材
の流体圧により制御棒案内管が浮上ろうとする場
合、突起１６とスリーブ溝１９との接触面におい
て発生する摩擦力による保持力により浮上りを防
ぐことができる。制御棒案内管２をスリーブ１８
から取り外す場合には、この保持力に打勝つよう
な引き抜き力を加えることにより、弾性棒状部材
１５を内側へたわませて取り外すとが出来る。制
御棒案内管２の保持力は、弾性棒状部材１５の形
状、材質、および前記突起１６とスリーブ溝１９
のはめ合い面の傾斜角θを適宜選定することによ
り決めることができる。

すなわち、第３図に示すように傾斜角θ、弾性
棒状部材１５の弾性力をＷ、摩擦係数をμとすれ
ば、制御棒集合体の引き抜き力Ｆは下記の式で与
えられる。

Ｆ＝Ｗμ＋ｔａｎθ／１−μｔａｎθ 一般に摩擦係数はバラツキが大きいので、実験
データにもとづき、摩擦係数の最大値と最小値を
設定して設計する必要がある。ナトリウム中での
実験によれば、表面を硬質クロムメツキ処理し、
その表面荒さをJIS規格1.5−Ｓよりなめらかに仕
上げた場合には、摩擦係数μは0.3＜μ＜0.8と設
定できる。いま、制御棒集合体の浮上り防止のた
めに必要な保持力をF₁とすると、第３図により
傾斜角をθ_１とすればよい。この場合同じく第３
図により制御棒集合体の引き抜きに必要な力の最
大値はF₂となる。したがつてF₁が与えられた場
合に、Ｗとθを適当に選んで、F₂がなるべく小
さくなるように設計すればよい。例えば、典型的
な高速増殖炉においては、F₁＝220Kg程度と設定
されているから、θ＝30゜、Ｗ＝208Kgとすれば
F₂＝532Kgでよい。

また脱着時に弾性棒状部材１５に作用する応力
についても弾性棒状部材１５の材質を選定し、例
えば20％冷間加工した316ステンレス鋼で製造す
れば許容応力範囲に収めることが出来る。

以上説明のように、本実施例によれば、制御棒
集合体に、弾性棒状部材を複数個取り付けておく
ことにより、簡単な構造で容易に制御棒集合体の
浮上りを防止し、適当な挿入力および引き抜き力
によつて制御棒集合体の脱着が容易となる。ま
た、スリーブ１８の内側に突起１６と嵌合係止す
るスリーブ溝１９を設けた構造としたので、この
スリーブ溝１９のスリーブ端部よりの距離が短か
い為に加工が容易であり、このスリーブ溝１９の
加工位置精度および傾斜角の角度加工の精度を容
易に上げることができるので挿入、引抜き、およ
び保持等の諸機能を確実に行なうことができる。
また他の場所に突起１６を係止する構造と比べて
脱着時における突起１６とスリーブ１８の内面
や、その他の構造物との摺動距離が短かく、摺動
により脱着時に損傷を与える危険も少ない。

〔考案の効果〕

本考案によればナトリウム冷却高速増殖炉の運
転時に、制御棒集合体の浮上りを確実に防止し、
かつ燃料交換時には制御棒集合体の着脱を容易に
行うことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例による制御棒集合体
の浮上り防止装置の設置位置を示す縦断面図、第
２図は第１図における浮上り防止装置を拡大して
示す縦断面図、第３図は本考案に係る制御棒集合
体の浮上り防止装置の突起とスリーブ溝との嵌合
面の傾斜角と制御棒集合体の引抜き力の関係を示
す特性図である。 １７……炉心支持板、１８……スリーブ、２…
…制御棒案内管、１……制御棒、１３……制御棒
案内管溝、１５……弾性棒状部材、２３……六角
外筒、１６……突起、１９……スリーブ溝、２７
……六角外筒溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ナトリウム冷却高速増殖炉の炉心支持板と、こ
   の炉心支持板の上面に垂設されたスリーブと、こ
   のスリーブ中に挿入される制御棒案内管と、この
   制御棒案内管の下部外側円周面に軸方向に設けら
   れた複数の制御棒案内管溝と、これら制御棒案内
   管溝に吊設された弾性棒状部材と、前記制御棒案
   内管の下部に囲設された六角外筒とからなり、前
   記弾性棒状部材の下端部に前記制御棒案内管の外
   側方向に鋭角の傾斜角をもつた突起を有し、前記
   スリーブの内側に前記傾斜角と等しい傾斜角をも
   つて前記突起と嵌合しうるスリーブ溝を形成し、
   かつ前記突起とスリーブ溝の接触面の少なくとも
   一方にナトリウム中での接触面の融着を防ぐ表面
   処理を行い、前記六角外筒の内側に前記突起の軸
   方向案内用の六角外筒溝を設けたことを特徴とす
   る制御棒集合体の浮上り防止装置。