JPS6215017B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は電機子コイルを樹脂成形により一体剛
体化した無鉄心電機子に関する。 電機子コイルは、電線を所定数巻装して、ワニ
ス等の結着剤によりその支持鉄心と共に一体固着
して剛体化を図るのが一般的である。しかし機器
としての特性上、支持体のない電機子コイルが必
要である場合は、何らかの方法でコイル自身の一
体剛性化を図らなければならない。特に電動機用
回転子としての無鉄心電機子コイルの場合は、一
体剛体化に要求される特性も高度であり、高温に
おける機械強度、寸法安定性および長時間の耐熱
劣化性等に応えられる一体剛体化が要求される。
従つて上記無鉄心電機子の剛体化に熱硬化性樹脂
の注型や成形を適用し、その表面にプリプレグ硬
化物を設けることによる複合効果を応用してい
た。この場合効果は、電機コイルを剛体化する成
形材料とプリプレグとの親和性が乏しいと十分な
効果が得られないので、例えばポリエステル樹脂
成形材料を電機子コイルの剛体化に用いる場合
は、プリプレグもポリエステル樹脂を用いてい
た。しかし、低収縮性ポリエステル樹脂成形材料
は、高度な寸法精度の成形品となるにも拘らず加
熱されることによつて芳香族のカルボン酸類、ア
ルコール及びエステル類、水分等が揮散し、特に
芳香族のカルボン酸類が主因となつて無鉄心電機
子の整流子片が腐蝕され、全閉構造の電動機とし
た場合、ブラシ寿命特性などに悪影響を及ぼす欠
点があつた。 本発明は、上記従来の欠点の解消を目的とす
る。すなわち電線を所定数巻装してなる単コイル
を配列して電機子コイルとし、その表面にジアリ
ルフタレートプレポリマーを必須成分とするポリ
エステルプリプレグシートを被覆し、ポリエステ
ル樹脂成形材料で成形することにより前記コイル
成形物を中心にして表面にプリプレグ硬化物を有
することを特徴としたサンドイツチ構造の電機子
コイルとしたものである。 本発明の基調となるプリプレグ体中のジアリル
フタレートプレポリマーの成分量は、ポリエステ
ル樹脂成形材料の揮発性酸分によつて異なるが、
一般に不飽和ポリエステル樹脂１に対して１以上
が好ましい。プリプレグ中の不飽和ポリエステル
樹脂量が増加すると、一般に速硬化性となり、成
形サイクルが向上するが、本発明に係る効果が減
少する。またジアリルフタレートプレポリマーを
増量させると、成形材料との親和性が弱められる
ため、サンドイツチ構造による機械強度などの効
果が減少する。 プリプレグの基材は、有機から無機物の織布或
いは不織布を用いる。例えばガラス不織布、ガラ
スクロス、アスベスト紙、マイカシート或いはポ
リエステル不織布等である。但し、これ等のプリ
プレグ基材は多孔質のシートでなければならず、
例えばポリエステルフイルムとその不織布との複
合シート等は使えない。前記複合シートを基材と
したプリプレグで電機子コイルの表面を被覆し成
形材料で成形すると、プリプレグ硬化物と成形品
との間に気泡が生じ本発明の効果のみならず、サ
ンドイツチ構造としての複合効果全般に関して不
安定となる。尚、プリプレグの他の添加剤として
先ず流動性、硬化性、粘度調整等のためのモノマ
ーは低揮発性のものが好ましく、離型剤は脂肪酸
を用いず溶剤に可溶なものが好ましい。また過酸
化物は成形材料と同じ分解温度をもつものがよ
い。 一方、成形材料はポリエステル樹脂成形材料で
あれば特に制約はないが、電機子コイルの埋め込
みを行なうと共に、得られた成形物に高度な寸法
精度が要求されるので、低圧、低収縮のポリエス
テル樹脂成形材料が好ましい。 以下その詳細を説明する。 第１図は成形材料とプリプレグとのサンドイツ
チ構造を有する成形板の引つ張り強さを示すもの
で、プリプレグ硬化物の厚さは25〜30μである。
Ａは本発明品のもので基材にガラス密度11.5±
0.5ｇ／m²のガラス不織布を用い、かつ下記配合
の含浸樹脂を用い 不飽和ポリエステル樹脂
50部（東洋紡製）酸価15〜25 ジアリルフタレート樹脂 50部（大阪ソーダ製） ジアリルフタレートモノマー 10部 ラウリルアルコール ３部 ｔ・ブチル・パーベンゾエート ６部 成形材料はポリエステル樹脂成形材料（松下電
工製CE−2600）である。Ｂは従来品であつてＡ
と同じガラス不織布基材に不飽和ポリエステル樹
脂プリプレグを用いＡと同じ成形材料でサンドイ
ツチ状に成形して得た成形品、ＣはＡと同じ成形
材料で成形した成形品で表面にプリプレグ硬化物
を有しないものである。 本発明品に係るＡは特に100℃以上での機械強
度の保持力が顕著である。 第２図はポリエステル樹脂成形材料（松下電工
製CE−2600）とプリプレグとのサンドイツチ構
造を有する成形板（φ60、1.8±0.5mmｔ）の160
℃での加熱減量を示す特性図である。図中Ａは本
発明品のもので第１図Ａと同一材料で構成された
もの、Ｂは従来品で第１図Ｂと同一材料で構成さ
れたもの、Ｃは成形材料のみで表面にプリプレグ
硬化物を有しないものである。 本発明品に係るＡは５時間程で揮発成分は飽和
するがＢおよびＣは継続して揮発分による重量減
少が行なわれている。すなわち本発明によれば成
形品を５〜６時間後硬化することによつて揮発分
を抑制することができる。 以上のように高温高速回転での苛酷な条件で使
用される整流子電動機においてカツプ形或いは偏
平形無鉄心電機子の性能及び信頼性向上への効果
は非常に大きいものがある。 以下に偏平構造の無鉄心電機子コイルに適用し
た場合の実施例を説明する。 第３図は巻線式無鉄心電機子を示したもので、
第４図にその一断面を示す。１は電機子表面を被
覆したプリプレグ硬化物、２は成形材料、３は前
記成形材料２中に埋め込まれた電機子コイル、４
は電機子外周部の凸部、５は電機子平板部、６は
中央凸部、７は整流子、８は軸であつて、樹脂成
形電機コイル３および整流子７の一部は軸８と共
に成形材料２を介して一体剛体化されている。 以上の基本構成を有し、直径95φ、偏平部の厚
さ2.0mmの樹脂成形無鉄心電機子を作成した。こ
の電機子を160℃で６時間後硬化した後、整流子
片を研磨し電動機とした。この電動機（定格
24V、単相全波23W、6000rpm、界磁６極、電機
子23スロツト、線径0.4φ、15t／ｃ）を24V単相
全波の電源、模擬フアン負荷で連続運転したとこ
ろ、整流子片の腐蝕が認められず、ブラシ寿命へ
の腐蝕の影響を認められなかつた。電機子の経時
寸法変化も±0.10mm以内であつた。 下表に同様に実施した従来品を含めた結果を示
す。

【表】 以上の説明から明らかなように本発明によれば
整流子片の腐蝕を防止することができ、ブラシ寿
命に悪影響を及ぼすことがないと共に、電機子の
経時変化に対しても大なる効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来品に本発明品との引つ張り強さを
比較して示した特性図、第２図は従来品と本発明
品との加熱減量を比較して示した特性図、第３図
は本発明の実施例にかかる無鉄心電機子の斜視
図、第４図は同要部の拡大断面図である。 １……プリプレグ硬化物、２……成形材料、３
……電機子コイル。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 電線を所定数巻装してなる単コイルを配列し
   た電機子コイルを、ポリエステル樹脂成形材料で
   成形してなる無鉄心電機子において、前記成形物
   の表面にジアリルフタレートプレポリマーを必須
   成分としたプリプレグ硬化物を形成し、前記プリ
   プレグの中の不飽和ポリエステル樹脂量に対する
   ジアリルフタレートプレポリマーの含有量を50重
   量％以上としてなる無鉄心電機子。