JPS6142679Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は交流電源を用いる非消耗電極不活性ガ
スアーク溶接機のアークスタートを正極性電流が
流れたことにより検出するように構成した溶接ア
ーク起動検出器に関するものである。

従来、タングステンなどの非消耗電極を用いた
不活性ガスアーク溶接機においては溶接の開始時
に高周波電圧を印加するが、高周波電圧の印加と
同時に溶接アークが起動するとは限らず、これが
ため溶接電流が実際に流れ出した後に高周波電圧
を減衰させたり、電極の移動を開始させたり溶接
条件のプログラム制御を開始させたりする事が必
要となる。従来は磁気増巾器や変流器と整流回路
とを組合せてリレーを動作させたり、また溶接電
流の主電源回路にアークの安定を計るために無負
荷電圧の高い補助電源回路を並列に接続する方式
の溶接機にあつては、この補助電源回路内の電流
制限抵抗の両端に直接リレーを接続してそのリレ
ーを動作させることにより溶接アークの起動を検
出していた。これら従来の方法においては前者の
磁気増巾器や変流器を用いるものにあつてはリレ
ーを動作させるための別電源が必要となり大形で
かつ高価なものになる欠点があり、また後者の方
法においては装置は簡単であるが交流溶接電源を
用いて非消耗電極にてアルミニユームなどの軽金
属類を溶接するときは真の溶接アークの起動を検
出し得ない欠点を有する。即ちタングステン電極
にて軽金属類を交流アーク溶接にて溶接するとき
は溶接中においては熱電子放出能力の差から電極
側が負電位となる正極性方向の電流が多く流れる
極性効果を有することはよく知られているが、溶
接の起動時にはこれと逆に逆極性方向のみの電流
が短時間流れる。この理由は溶接開始時において
は電極の温度が低く冷陰極として動作しかつ電極
のタングステンは被溶接物にくらべて融点が高く
金属蒸気を発生し難いために陰極点の発生が妨げ
られその結果タングステン電極が陰極となる正極
性時においては溶接アークが点弧しないものであ
る。この逆極性方向の電流が流れる期間は数サイ
クル以上にも及びしかもこの間に電流から供給さ
れる電力は逆極性のためそのほとんどが電流の加
熱に消費されるから被溶接物の溶融にはほとんど
寄与せずかつこの間はアークの消滅が起りやすく
不安定な時期である。したがつて溶接の起動を検
出するに当つて単に出力電流が流れたことのみに
よつて溶接アークが確立されたものとみなす前述
の従来装置はこの不安定期間の当初において直ち
に起動したものとして信号を発するので真の溶接
アークの起動を検出するものではなく不正確なも
のである。

本考案は上記に着目し、交流アーク溶接におい
て正極性の電流が流れた時点をもつて溶接アーク
の起動とするよう構成したものである。

第１図は本考案の溶接アーク起動検出器を用い
た溶接機の例を示す接続図である。同図において
イ，ロは電源端子であり通常200Vないし400Vの
交流電源が供給される。１は溶接中閉じている開
閉器であり、２は溶接変圧器である。溶接変圧器
２の出力は電流調整回路３を経て溶接電極４およ
び被溶接物５に供給される。同図の場合電流調整
回路３は図示しない制御回路によつて導通量が制
御されるサイリスタやトランジスタなどの可変イ
ンピーダンス素子３０１，３０２および垂下特性
を与えるリアクトル３０３よりなる。電流調整回
路３には並列にバイパス回路７として抵抗器７０
１が接続されている。このバイパス回路は電流調
整回路が位相制御により調整を行うとき出力電流
の零期間を補うために比較的小さな連続した電流
を溶接部に供給する役目をする。溶接電流の流れ
る主電源回路には溶接アークの起動を助ける高周
波電圧が高周波発生回路６およびカツプリングコ
イルＣ・Ｃにより重畳される。溶接の開始に際し
開閉器１が閉じると電極４および被溶接物５には
電流調整回路３を通して溶接変圧器２の出力電圧
が印加されると同時に高周波発生装置６の出力が
カツプリングコイルＣ・Ｃを通して印加され電極
４と被溶接物５との間に火花放電を発生し主溶接
アークを誘発させる。この溶接アークの起動時に
は前述の如く、逆極性即ち電極４から被溶接物５
へ向う方向のみの電流が流れこの電流によつて電
極４が加熱された後に正極性方向の電流を含む真
の溶接アークが発生する。バイパス回路７となる
抵抗器にはその中間位置と一端との間の電圧を半
波整流する整流器８０１を含む極性判別回路８が
接続されており、この整流器は図中に示す通り正
極性の電流が流れたときの抵抗器７０１の電圧降
下によつて導通する方向に接続されているので極
性判別回路８の出力端子ａ，ｂには、正極性の電
流が流れた瞬間から出力が発生し、この信号を直
接またはアークが安定するまでの一定時間遅延さ
せた信号を溶接アークの起動信号として電極の移
動、高周波電圧の減衰、溶接条件プログラムの開
始などの信号として用いる。

第２図は別の実施例であり電流調整回路が２組
の半導体スイツチング素子たとえばサイリスタ３
０１および３０２と各スイツチング素子３０１，
３０２に直列に接続されたリアクトル３０４，３
０５から構成されている。このリアクトルは鉄心
を共通にしかつ各半導体スイツチング素子３０
１，３０２の導通により同じ方向の磁束を発生す
るようにその極性を定めかつそれぞれのインダク
タンスを十分に大きな値にしておくとこの電流調
整回路の出力電流は直列リアクトルの作用により
矩形波状のものが得られる。またバイパス回路は
正逆の各極性時の電流を調整し得るように、それ
ぞれの方向に導通する整流器７０２，７０３と電
流制限抵抗器７０４，７０５との直列回路を並列
に接続してある。同図の場合バイパス回路が２組
ありそれぞれが方向性を有するので極性判別回路
を正極性時に導通する整流器７０２および抵抗器
７０４の直列回路で兼用させて、抵抗器７０４の
端子電圧の一部または全部を端子ａ，ｂに引出し
溶接アークの起動信号とする。

以上のように本考案によれば交流電源を用いる
非消耗電極不活性ガスアーク溶接において真に溶
接アークの起動となる正極性電流が流れた時点で
検出信号を得るので動作が確実である。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本考案の溶接アーク起動
検出器を用いた溶接機の例を示す接続図である。 ２……溶接変圧器、３……電流調整回路、７…
…バイパス回路、８……極性判別回路。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 溶接変圧器と溶接部との間に接続されて出力
   電流を調整する電流調整回路と前記電流調整回
   路と並列に接続された電流制限抵抗器を含むバ
   イパス回路とから前記溶接部に電力を供給する
   ようにした交流電源を用いる非消耗電極不活性
   ガスアーク溶接機において、前記バイパス回路
   に含まれる電流制限抵抗器の端子電圧の全部ま
   たは一部を入力として入力電圧の極性のうち非
   消耗電極が負電位となる正極性の期間中のみ出
   力を発生する極性判別回路とを具備した溶接ア
   ーク起動検出器。 ２ 前記バイパス回路が単一の抵抗器であり、前
   記極性判別回路が前記バイパス回路を構成する
   抵抗器の両端または一部分に接続した半波整流
   回路である実用新案登録請求の範囲第１項に記
   載の溶接アーク起動検出器。 ３ 前記バイパス回路が正極性時に電流が導通す
   る方向に直列接続された第１の整流器および第
   １の電流制限抵抗器と、逆極性時に電流が導通
   する方向に直列接続された第２の整流器および
   第２の電流制限抵抗器とからなり、前記第１の
   整流器と第１の電流制限抵抗器とが前記極性判
   別回路を兼ね、前記第１の電流制限抵抗器の端
   子電圧の全部または一部を溶接アークの起動信
   号として出力する出力端子を設けた実用新案登
   録請求の範囲第１項に記載の溶接アーク起動検
   出器。 ４ 前記電流調整回路が正極性方向および逆極性
   方向にそれぞれ導通する半導体スイツチング素
   子であり各半導体スイツチング素子に直列にリ
   アクトルを接続し、前記リアクトルがそれぞれ
   直列接続される半導体スイツチング素子の導通
   により同方向に磁化される共通の鉄心を有する
   リアクトルである実用新案登録請求の範囲第１
   項ないし第３項のいずれか１つり記載の溶接ア
   ーク起動検出器。