JPS6139921Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は自動車のトーイン、トーアウト等を測
定及び調整するためのトー量の測定及び調整用治
具に関する。

自動車の車輪のトー量を第１図を参照して説明
すると、トー量Ｃは車輪１の後方側の間隔Ｂと前
方側の間隔Ａとの差によつて表わされる。第１図
Ａに示されるように、前方側間隔Ａが後方側間隔
Ｂよりも狭い場合はトー量Ｃ＝Ｂ−Ａは正の値と
なり、トーインと称される。また、第１図Ｂに示
されるように、前方側間隔Ａが後方側間隔Ｂより
も広い場合にはトー量Ｃ＝Ｂ−Ａは負の値とな
り、この場合はトーアウトと称される。さらに、
第１図Ｃに示されるように前後方向間隔Ａ，Ｂが
等しい場合にはトー量Ｃ＝０となりこの場合はト
ーゼロと称される。

このようなトー量の調整作業は一般に車輪の最
前端の間隔と最高端の間隔を測定し、一定の基準
間隔となるまで左右の車輪を互いに均等に角度変
化させることによつて調整されている。ところ
で、左右の車輪を均等に調整する作業については
作業者の勘を必要とするものであつて特に微調整
の場合は作業が極めて難しく、何度も微調整を繰
り返して行なわなければならないのが普通であ
る。

従来、このようなトー量の測定、調整作業には
トーインゲージを使用するのが一般的であるが、
従来のトーインゲージは車両の狭い下方空間に挿
入し、左右の車輪の間隔を測定するようにしたも
のであるため、手間がかかり作業性がわるいと共
に、トー量をトータルとしてしか測定することが
できないため、左右の各車輪の向きを独立して測
定することができず、設定すべきトー量の信頼性
に欠けるという問題があつた。したがつて、極端
な場合は片方の車輪が右向き、別の車輪が左向き
となりアンバランスな状態となることもあつた。
そして、トー量が正確に設定できない場合は自動
車の走行時にタイヤがサイドスリツプを起こし走
行安定性、燃費、タイヤの摩耗やころがり抵抗に
大きく影響するものである。

本考案はこのような事情に鑑みてなされたもの
で、トー量の測定及び調整操作が左右の車輪につ
いてそれぞれ独立して行なえ、これによつてトー
量を正確に設定することができ、しかも測定及び
調整操作が極めて容易に行なえて作業能率も大幅
に向上することができるトー量の測定及び調整用
治具を提供することを目的とする。

このような目的を達成するために、本考案の構
成は、各車輪に取付けることによつてその車輪の
向きを指示する指示バーと、この指示バーと関連
して設けられこの指示バーの変異がどれ程である
かを定量的に示す基準となる基準バーと、これら
各バーの先端部の開き距離を直接視認することが
できる測定部材とを設け、これらによつて各車輪
の向きを直接に測定し、また調整できるようにし
たものである。すなわち、指示バーは、リング状
をなし側面部を車輪のアクスルハブに密着して取
付けられる取付け部を有し、この取付部から接線
又は遠心方向に突出しかつその先端が取付け部の
軸心と平行に略Ｌ字形に折曲した測定アームを有
するものとする。また基準バーは、指示バーの取
付け部の側面にピンを介してその測定アームに沿
つて揺動可能に取付けた略Ｌ字形のものとする。
さらに、測定部材は測定バー及び基準バーの先端
当接位置に取付け部の軸心と平行に配置されこれ
ら各バーの先端部の開き距離測定用の目盛を表示
したものとする。

このような構成によれば、各車輪に取付けて直
接その向きを指示する指示バーと、直進方向に向
けて設定する基準バーとによつて各車輪の向きを
それぞれ独立して把握することができ、その傾き
を測定部材によつて定量的にとらえることができ
るので、トー量を各車輪ごとに独立して正確に設
定することができるようになる。しかも該治具は
各車輪のアクスルハブの中心部から後方部分にわ
たつて取付けることによつて測定及び調整できる
ので、作業が極めて容易であり、作業性も向上で
きるものである。

以下本考案の構成に基づく具体的な一実施例を
第２図〜第８図を参照して詳細に説明する。

第２図は治具を自動車の後輪に装着した状態の
平面図を示し、矢印は車両の前方を示している。
また、第３図は第２図の要部の側面図、第４図は
組立状態を斜視図によつて示している。

指示バー２はリング状の取付け部３とこの取付
け部３から接線又は遠心方向に突出しかつその先
端が取付け部の軸心と平行に略Ｌ字形に折曲した
測定アーム４とから成つている。取付け部３は後
輪５のリアアクスルハブ６と略同一平面形状を有
し、リアアクスルハブ６に設けるボルト７と同一
配置及び同一数のボルト嵌挿用取付け孔８を有し
ている。なお、測定アーム４の取付け部３の、取
付け部３中心からの突出長さは後輪５の半径より
も若干長くしている。そして、取付け部３の測定
アーム突出部分の外周面に、この取付け部３の軸
心と直交する方向にねじ孔９を設けている。基準
バー１０はねじ孔９部分から測定アーム４の先端
部までにわたつて重合配置し得る略Ｌ字形に形成
したものである。そして、この基準バー１０の取
付け部３と係合する部分に支持孔１１を開け、こ
の支持孔１１に通したねじピン１２を取付け部３
のねじ孔９に螺合することによつてこの基準バー
１０を指示バー２にねじピン１２を介して揺動可
能に取付けている。また、測定部材１３は一対の
脚１４を突出した円柱状の握り部１５の両端に左
右一対の受けバー１６を一体的に突設したもので
ある。この受けバー１６の一側面には指示バー２
の測定アーム４と基準バー１０の略Ｌ字形の先端
部を載置するための段部１７をそれぞれ長手方向
に沿わせて形成している。また、受けバー１６の
上面には段部１７に沿わせて各バーの先端部の開
き距離測定用の目盛部１８をそれぞれ表示してい
る。

次に測定及び調整操作を説明する。まず、治具
のセツトについて説明する。最初に後輪５を取外
し、リアアクスルハブ６に指示バー２の取付け部
３を密着して取付ける。この場合、リアアクスル
ハブ６のボルト７を取付け部３の取付け孔８にそ
れぞれ挿通し、この取付け部３の外側に突出した
ボルト７にナツト１９を螺合して取付け部３をリ
アアクスルハブ６に締付け固定する。なお、測定
アーム４は自動車の後方に突出する配置としてお
く。このようにして取付けた指示バー２の測定ア
ーム４はリアアクスルハブ６の向きに沿つて配置
されることになる。一方、指示バー２にねじピン
１２によつて指示した基準バー１０は車両の直進
方向に沿わせて配置させる。すなわち、この基準
バー１０は測定アーム４の向きと異なる基準向き
にセツトする。これによつて基準バー１０のＬ字
形の先端部分１０Ａは車軸と平行に配置されるこ
とになる。そこで、測定部材１３の握り部１５を
介してこの測定部材１３の各受けバー１６を車両
の後方から車軸と略平行に配置して、この測定部
材１３の受けバー１６の段部１７を基準バー１０
の先端部１０Ａと合致させるようにする。

そうすると、トーインが設定されている場合に
は、測定アーム４が基準バー１０よりも外側に所
定角度開くようになるので、基準バー１０の先端
部１０Ａと測定部材１３の受けバー１６の段部１
７とを合致させた場合においては、例えば第６図
に示すように、目盛部１８によつて開き距離Ｌを
測定することができる。なお、トーアウトが生じ
ている場合には、指示バー２の測定アーム４は基
準バー１０の内側に配置するようになるから、こ
の場合は各バー２，１０の先端の向きが逆となる
ように取付け部３の取付け方向を切換え、前記同
様にして測定すればよい。このトーアウトの場合
においては、例えば第７図に示すように測定部材
１３の目盛部１８によつてその開き距離L′を測定
すればよい。なお、トーゼロの場合は例えば第８
図に示すように、指示バー２の測定アーム４と基
準バー１０とが完全に上下に重合した状態となる
のでそのトーゼロの状態も前記同様の操作によつ
て目盛部１８で確認することができる。

以上に述べた操作は測定方法に関するものであ
るが、トー量を調整する場合は単に指示バー２の
測定アーム４と基準バー１０との開き距離を測定
するにとどまらず、所定の開き距離となるように
リアアクスルハブ６を介して後輪軸の角度を調整
すればよいものである。

以上の構成及び操作になる本治具によれば、指
示バー２及び基準バー１０を一体として自動車の
外側部及び後方部から装着配置してその基準バー
１０に対して測定部材１３を後方から組合わせる
ようにして操作することができるので、作業を容
易かつ迅速に行なえるものである。したがつて、
作業能率が従来の治具例えば一般的なトーインゲ
ージを用いるものに較べて作業能率を大幅に向上
することができる。

また以上に述べた治具によれば左右の各車輪ご
とに独立して向きを測向または調整することがで
きるので、トー量の設定が各車輪ごとに正確に行
なえて、トータル的なトー量は勿論のこと各車輪
ごとのトー量の要素を正確に把握することができ
る。したがつて、車両の進行方向に対して右輪、
左輪を等しく調整することも確実に行なえるの
で、結果として必要なトー量の設定によつて、走
行安定性の向上、燃費の向上、タイヤの異常摩耗
防止及びころがり抵抗の減少等の運転に伴う大き
な効果を確実に得ることができるようになる。

以上のように本考案はトー量の測定及び調整操
作が左右の各車輪に応じて正確かつ確実に行な
え、これによつてトー量の設定、すなわち車両の
組立て及び点検等について大きい効果を奏すると
共に、結果として車両走行時における走行安定性
等の使用上の大きい効果も合わせて奏することに
なり、初期の目的が充分達成できる。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａ〜Ｃはトー量の発生状況を示す図、第
２図〜第８図は本考案の一実施例を示すもので、
第２図は本考案の治具のセツト状態を示す平面
図、第３図は第２図の要部側面図、第４図は本考
案の治具の取付け状態を示す斜視図、第５図は使
用状態を示す部分的な拡大図、第６図〜第８図は
測定状態を示す作用説明図である。 １……車輪（５…後輪）、２……指示バー、３
……取付け部、４……測定アーム、６……リアア
クスルハブ、１０……基準バー、１２……ピン
（ねじピン）、１３……測定部材、１８……目盛
部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. リング状をなし側面部を車輪のアクスルハブに
   密着して取付けられる取付け部を有し、この取付
   け部から接線又は遠心方向に突出しかつその先端
   が前記取付け部の軸心方向と平行にＬ字形に折曲
   した測定アームを有する指示バーと、この指示バ
   ーの取付け部にピンを介して前記測定アームに沿
   つて揺動可能に取付けられた略Ｌ字形の基準バー
   と、自動車車体左右において前記測定バー及び基
   準バーの先端と当接する位置に、前記取付け部の
   軸心と平行に配置されこれら各バーの先端部の開
   き距離測定用の目盛を表示した測定部材と、を具
   備してなることを特徴とするトー量の測定及び調
   整用治具。