JPS6135161B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は植物自身の内生する植物ホルモンの
合成促進剤、特に生体内における合成を促進する
薬剤に関するものである。

植物は植物ホルモンと呼ばれる特定の生理機能
調節物質を生産する。植物はこの植物ホルモンを
生産する特定の組織あるいは器管を持たず、個々
のホルモンの特異的働きを受ける特定の標的機関
を有していない。しかしながら植物ホルモンは一
般に植物体の限られた部域において生産され、植
物の発生、分化など、質的、量的な植物体に起こ
るほとんどあらゆる変化をコントロールしてい
る。すなわち植物の一生は気温、日照量等の外的
要因、あるいは植物としての内的要因の影響を受
け、それらの種々の要因に対し、生命の維持ある
いは種の保存等のために、植物ホルモンが生体内
を移動し、所定の部位において、微量で著しい生
理作用を示している。

これまでに植物ホルモンとしての機能が確認さ
れているものは、オーキシン、ジベレリン、サイ
トカイニン、エチレン、アブシジン酸の５系列の
化合物で、比較的低分子の有機化合物である。こ
れらの有機化合物は合成され、植物ホルモンとし
て農林業等に応用される。しかし、それらの合成
植物ホルモンは植物体への処理において、処理濃
度、処理時期あるいは処理部位等の処理方法が微
妙で、その処理を誤まると、目的とする生理効果
が発現せず、逆の効果すなわち薬害作用を呈した
り、ひどい時には植物体の生存を危うくすること
もある。

この発明はこのような外的合成植物ホルモン処
理における問題点を起こすことなく、植物が生体
内で植物ホルモンを自らコントロールして生合成
するのを促進する薬剤を提供することを目的とし
ている。

この発明はクロレラの熱水による抽出混合物を
含むことを特徴とする植物ホルモンの合成促進剤
である。

本発明においてクロレラは天然に生息するもの
ならびに培養されたものが含まれる。

本発明におけるクロレラの熱水による抽出混合
物はクロレラを熱水より抽出して得られる各種成
分の混合物であり、好ましい抽出混合物は水１
に対し藻体を乾燥重量で１〜1000ｇ懸濁させ、50
〜150℃で0.5〜120分、好ましくは100℃で１分以
上接触させ、接触後遠心分離等により藻体を分離
して得られるものである。抽出物は必要に応じて
ゲル濾過、透析等により精製することができる。

以上によつて得られるクロレラの熱水による抽
出混合物は分子量1000〜1000000の糖、たんぱ
く、多糖体、核酸その他の物質を含み、植物の生
体内における植物ホルモンの合成促進活性を示
す。本発明において使用できる抽出混合物として
は、以上により得られた抽出液そのまま、あるい
はこれらの濃縮物または凍結もしくは噴霧乾燥等
により乾燥した抽出物粉体などがある。

上記のクロレラの熱水による抽出混合物は液
状、粉末または固形状で植物ホルモンの合成促進
剤として使用でき、直接または間接的に植物体に
適用し処理する。例えば液状の場合は葉面散布、
塗布、潅水、土壤潅注等による処理が適してお
り、粉末または固形状の場合は畝間処理、土壤混
入等による処理が適している。特に効果あるいは
作業上の点からいえば、液状のものを葉面散布し
たり、土壤潅注するのが望ましい。

植物体に対するクロレラの熱水による抽出混合
物の処理量は植物の種類、形態、生育状況、施用
方法等によつて異なり、実験的に確認することが
できる。例えば樹木あるいは野菜類のような草本
類に対して、溶液により茎葉処理を行う場合、ク
ロレラの熱水による抽出混合物の乾燥重量換算で
0.002〜２mg/程度の濃度の溶液で、茎葉が十分
濡れる程度の液量で処理するのが望ましい。

このようにクロレラの熱水による抽出混合物に
より植物体を処理することにより、植物の生体内
におけるオーキシン、ジベレリン、サイトカイニ
ン、エチレン、アブシジン酸などの内生植物ホル
モンの効率的な生合成を促進することができる。
このため、植物体の葉面、茎、根、地下茎等にこ
れらの植物ホルモンが蓄積され、これを抽出等の
操作により採取することができる。この場合、抽
出時の採取操作は公知の方法が採用できる。また
生体内における植物ホルモンの合成により、その
生理的効果によつて植物自体の生長を促進した
り、花芽の形成をコントロールしたり、着花を促
進したり、あるいは果実の肥大を促進することが
でき、これにより、有用生産物の質的、量的向上
をはかるなど、広く農林業等への応用が可能とな
る。

なお、本発明のクロレラの熱水による抽出混合
物の抽出方法および植物体に対する処理方法等に
は制限はなく、処理に際しては他の薬剤等との併
用も加能であり、また植物ホルモンの施用を併行
して行つてもよい。

以上のとおり、本発明によれば、クロレラの熱
水による抽出混合物によつて植物体を処理するこ
とにより、植物の生体内における内生植物ホルモ
ンの合成を促進することができる効果がある。

次に本発明の実施例について説明する。

実施例 クロレラ粉末30ｇを水１に懸濁させ、100℃
で30分間熱水抽出して、抽出液を遠心分離し、そ
の上澄液を乾燥して、粉末状抽出物を得、この粉
末状抽出物を２mg/の濃度に溶解して原液とし
た。そしてこの原液を1000倍に希釈してコウライ
シバ（Zoysia matrella L.）に散布した。

散布２日後に芝生を掘り取り、根および地下茎
を試料として採取し、70％エタノールで磨砕し24
時間浸漬して、サイトカイニンを抽出した。抽出
物からStaden、J.van（1976）の方法によりサイ
トカイニンを分離し、イオン交換樹脂で精製後、
ペーパークロマトグラフにより展開した。展開後
はイソプロパノール、25％アンモニア、水（10：
１：1V／Ｖ）であり、クロマトグラフ展開部分
を10等分して80％エタノールにより溶出し、
Biddington、N.L.およびThomas、T.H.（1973）
の方法に準じてAmaranthus bioassayによりサイ
トカイニン検定を行つた。すなわちアマランタス
の子葉と胚軸を、検体を含む培地で倍養し、ベタ
シアニンを抽出して、２波長分光光度計により
542nｍと620nｍの吸光度の差を測定した。

結果を第１図のグラフに示す。第１図におい
て、Ａは未処理の根16ｇを試料とした場合、Ｂは
抽出物により処理した根16ｇを試料とした場合、
Ｃは未処理の地下茎８ｇを試料とした場合、Ｄは
抽出物より処理した地下茎８ｇを試料とした場
合、Ｅ，Ｆはそれぞれゼアチンを使用した場合の
ベタシアニンの生成量を示し、縦軸はそれぞれオ
プテイカルデンシテイ、横軸はＡ……ＤがRf
value、Ｅ，Ｆがゼアチンの濃度（μｇ/）を示
し、コントロールはＭ／75のリン酸緩衝液の値で
ある。

次に処理に使用した原液およびこれを希釈した
液について同様にAmaranthus bioassayによりサ
イトカイニン検定を行つた結果を第２図のグラフ
に示す。

第１図の結果より、クロレラの熱水による抽出
混合物で処理しない場合は根、地下茎ともにサイ
トカイニンがほとんど生成していないのに対し、
処理した場合は根、地下茎ともに多量のサイトカ
イニンが生成しており、一方第２図の結果より、
抽出物自体にはサイトカイニンが存在しないこと
が明らかである。このためクロレラの熱水による
抽出混合物により植物体を処理することにより、
内生植物ホルモンの合成が促進されることがわか
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は実施例におけるアマランタスバイオア
ツセイの結果を示すグラフで、Ａは未処理の根を
試料とした場合、Ｂは処理した根を試料とした場
合、Ｃは未処理の地下茎を試料とした場合、Ｄは
処理した地下茎を試料とした場合、Ｅ，Ｆはそれ
ぞれゼアチンを使用した場合のベタシアニンの生
成量を示し、第２図はクロレラの熱水による抽出
混合物のアマランタスバイオアツセイの結果を示
すグラフである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ クロレラの熱水による抽出混合物を含むこと
   を特徴とする植物ホルモンの合成促進剤。