JPS6128813Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、梁をなくしたスラブ構造に関する
ものである。

コンクリート建築物におけるスラブ構造は、柱
間に梁を架設し、この梁上に床版を設けた構造が
一般的である。

しかし、梁を設けると、階高の有効高さをその
分だけ高くしなければならず、建物の全高が高く
なり、使用材料の増大につながると共に、コンク
リートと鉄筋で構成されたスラブは必要な強度を
得るために全体の厚さを大きくしなければなら
ず、全体の重量が増大するという問題がある。

上記のようなコンクリートスラブの欠点を除去
するため、円形断面のパイプを適当な間隔で並べ
てスラブ層内に埋設したスラブ構造が提案されて
いるが、このような構造では隣接するパイプ相互
が分離しているため強度的に弱く、スラブ厚を大
きくしなければならないと共に、天井面への仕上
加工が必要になるという問題がある。

この考案はこのような問題点を解消するために
なされたものであり、使用材料の減量による軽量
化を計り、建物全体の高さを低くでき、しかも天
井面の仕上げが同時に行なえる無梁スラブ構造を
提供するのが目的である。

この考案の構成は、上壁の一側に下向きの側壁
を折曲げて設けた鉄板と、前記上壁よりも広幅と
なる底壁の一側に上向きの側壁を設けた鉄板と
を、上壁と底壁が上下に対向し、かつ両側壁が両
側に対向するように組合せ、各側壁と上壁及び底
壁の接合部分を溶接により固定化し、底壁の自由
側縁が延長片となつて突出する扁平な角筒状のパ
イプを形成し、多数本の前記パイプを底壁が同一
平面になるよう延長片の向きを一定にして並べ、
各延長片の自由側縁を隣接するパイプの底壁に溶
接固定し、隣接する各パイプの側壁間に形成され
た隙間に鉄筋を配置し、各パイプ間及び各パイプ
上に、パイプ上で所定の厚さとなるようにコンク
リートを打設したものである。

以下、この考案を添付図面の実施例に基づいて
説明する。

図示のように、断面が扁平な角筒状に形成され
たパイプ１は、二枚の鉄板２と３を組合せ、溶接
により結合一体化して構成されている。

一方の鉄板２は、上壁２ａの一方側縁に下向き
の側壁２ｂを折曲げ連成し、他方の鉄板３は前記
上壁２ａより広幅となる底壁３ａの一方側縁に上
向きの側壁３ｂを連成して各々が略Ｌ字状に形成
され、両鉄板２と３は、上壁２ａと下壁３ａが上
下に対向し、両側壁２ｂと３ｂが両側に対向する
ように組合せ、第１図の如く、一方鉄板２の側壁
２ｂを底壁３ａ上に、また他方鉄板３の側壁３ｂ
を上壁２ａの側縁に各々溶接することによつてパ
イプ１を構成している。

このパイプ１は底壁３ａの自由側縁が鉄板２の
側壁２ｂから外方に突出する延長片４になつてい
る。

上記パイプ１は、支柱５によつて支持された仮
設受梁６上に、底壁３ａが同一平面になるよう延
長片４の向きを一定にして並べ、第３図の如く、
延長片４の自由側縁を隣接するパイプ１の底壁３
ａに対して溶接により固定化する。

上記のように、並列状態で結合した各パイプ１
の側壁２ｂと３ｂの間に延長片４で溝状の隙間７
が形成されると共に、各パイプ１の底壁３ａがフ
ラツトに並び、金属製の天井仕上げ面を形成する
ことになる。

前記各隙間７に、トラス状の補強鉄筋８が補助
筋１１を用い延長片４に固定することによつて配
筋され、パイプ１群の上には、各補強鉄筋８と交
差する上部鉄筋９が水平に配置され、上記各隙間
７からパイプ１群上にわたつてコンクリート１０
が打設されることになる。

この考案のスラブ構造は上記のような構成であ
り、次に構築方法を説明する。

支柱５で支持した仮設受梁６上にパイプ１を一
定の間隔で順次並べ、各延長片４を隣接するパイ
プ１と溶接によつて固定化する。

各パイプ１の両端は両側に対設される壁や梁上
に達している。各パイプ１間の隙間７に補強鉄筋
８と、パイプ１群上に鉄筋９を配筋する。

上記補強鉄筋８及び鉄筋９の端部は、壁や梁の
鉄筋と溶接等によつて結合されている。

次に、各隙間７からパイプ１群上にわたつてコ
ンクリート１０を打設すればよく、パイプ１上に
おけるコンクリートの厚さは、スラブの必要とす
る強度に応じて設定すればよい。

コンクリート１０が凝固すると、支柱５と仮設
受梁６を解体すればよく、天井面が金属板によつ
て仕上げられたスラブができ上る。

このスラブは第１図のように、パイプ１が空洞
の状態で並ぶ断面形状になり、各パイプ１内を配
管や配線のほか通風用などのダクトとして利用で
き、しかも各パイプ１間においてコンクリート層
が断面Ｔ字形の梁を連続して形成するので、充分
な強度を維持することができる。

以上のように、この考案は上記のような構成で
あるので、次に列挙する効果がある。

(1) 上壁の一側に下向きの側壁を折曲げて設けた
鉄板と、前記上壁よりも広幅となる底壁の一側
に上向きの側壁を設けた鉄板とを、上壁と底壁
が上下に対向し、かつ両側壁が両側に対向する
ように組合せ、各側壁と上壁及び底壁の接合部
分を溶接により固定化し、底壁の自由側縁が延
長片となつて突出する扁平な角筒状のパイプを
形成し、多数本の前記パイプを底壁が同一平面
になるよう延長片の向きを一定にして並べ、各
パイプの延長片を隣接するパイプと固定化し、
各パイプ間からパイプ上にコンクリートを投入
するようにしたので、各パイプ間上に断面Ｔ形
梁が構成でき、充分な強度を発揮するので、ス
ラブの軽量化を計ることができる。

(2) 断面Ｔ形梁による強度とパイプの使用によ
り、スラブに使用する材料の減少と薄肉厚化を
計ることができる。

(3) 充分な強度を有するため下部に梁を設ける必
要がなくなり、階高の有効高さを梁の位置にま
で下げることができ、建物の全体の高さを低く
することができる。

(4) 並設したパイプと延長片が天井面を形成する
ため、天井面の仕上げ加工が省け、施工コスト
の低減を計ることができる。

(5) 上壁の一側に下向きの側壁を折曲げて設けた
鉄板と、前記上壁よりも広幅となる底壁の一側
に上向きの側壁を設けた鉄板とを、上壁と底壁
が上下に対向し、かつ両側壁が両側に対向する
ように組合せ、各側壁と上壁及び底壁の接合部
分を溶接により固定化し、底壁の自由側縁が延
長片となつて突出する扁平な角筒状のパイプを
形成したので、二枚の鉄板を用い延長片を備え
たパイプを簡単に製作することができ、パイプ
は扁平な角筒状で内部に空洞を形成するので、
配管路や配線路、通風ダクトとして利用でき、
しかも、パイプ相互の溶接により、スラブ強度
を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案のスラブ構造を示す施工状態
の縦断正面図、第２図は第１図における矢印−
に沿う縦断側面図、第３図は同上の要部を示す
斜視図である。 １……パイプ、４……延長片、８，９……鉄
筋、１０……コンクリート。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 上壁の一側に下向きの側壁を折曲げて設けた鉄
   板と、前記上壁よりも広幅となる底壁の一側に上
   向きの側壁を設けた鉄板とを、上壁と底壁が上下
   に対向し、かつ両側壁が両側に対向するように組
   合せ、各側壁と上壁及び底壁の接合部分を溶接に
   より固定化し、底壁の自由側縁が延長片となつて
   突出する扁平な角筒状のパイプを形成し、多数本
   の前記パイプを底壁が同一平面になるよう延長片
   の向きを一定にして並べ、各延長片の自由側縁を
   隣接するパイプの底壁に溶接固定し、隣接する各
   パイプの側縁間に形成された隙間に鉄筋を配置
   し、各パイプ間及び各パイプ上に、パイプ上で所
   定の厚さとなるようにコンクリートを打設した無
   梁スラブ構造。