JPS6119212Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は自動車の駆動伝達軸等に使用される
等速自在継手、特に外方部材と内方部材が所定の
範囲内で相対的に軸方向変位並びに角度変位可能
な等速自在継手に関するものである。

この種等速自在継手はボールを用いた第１図乃
至第３図に示すタイプのものが一般的である。同
図に於いて、１は外方部材、２は内方部材、３は
外方部材１の溝４と内方部材２の溝５の間に保持
器６のボールポケツト７に収容されて配されたト
ルク伝達ボールで、両部材１，２は相対的に角度
変位可能である。また、外方部材１の溝４及び内
方部材２の溝５は軸方向に直線状をなしており、
両部材１，２は軸方向変位も可能である。そし
て、この等速自在継手では両部材１，２の等速性
を保つために次の様な配慮がなされている。即
ち、保持器６のボールポケツト７の中心線と両部
材１，２の軸線との交点をＯとし、保持器６の内
外表面（内表面は内方部材２の部分球面状外表面
に一致する）の曲率中心Ａ，Ｂを前記Ｏの左右に
等量ずらせて配置し、両部材１，２が第３図に示
すように角度変位したとき、保持器６の内外表面
を利用してそのボールポケツト７のボール中心Ｃ
を両部材１，２のなす角の２等分面上に位置さ
せ、内外部材１，２からボール３に至る距離を等
しくして両部材１，２のボール３による角速度を
等しく制御し、等速性を保つている。

ところで、従来の前記等速自在継手に於いて
は、ボール３を充分に抱持させる目的でもつてボ
ール３と保持器６のボールポケツト７の間の締め
代を大きく設けている為に、外方部材１と内方部
材２がトルク伝達をしながら相対的に軸方向変位
するに際してボール３や転がらず、ボール３と外
方部材１の間で滑りが生じ、この動きに対する抵
抗（ブランジ抵抗）が大きくなる。

そこで、ボール３と保持器６のボールポケツト
７の間にスキマを設けて締め代を小さくすると、
ボール３が転がり運動をしてブランジ抵抗の軽減
を期待できるが、この場合両部材１，２が高角度
に変位したときに異音を発生する恐れがあつた。

このことを第４図に基づいて具体的に説明する
と、両部材１，２が高角度で変位すると、保持器
６のボールポケツト７内のボール３の動きの速さ
は上死点で最大、下死点で最小となり、上死点か
ら下死点ではボール３は保持器中心O′の方向へ
移動するのに対し、下死点から上死点では保持器
中心O′と反対の方向へ移動し、これにより下死
点から上死点の間で徐々に加速されたボール３が
上死点付近で外方部材１に衝突して外部より感知
できる異音が発生するのである。

この考案はボールと保持器のボールポケツトの
間にスキマが存在する場合の異音発生の前記要因
に鑑み、保持器のボールポケツトの形状を工夫す
ることによつて異音の発生を防ぎ、かつ、ブラン
ジ抵抗を軽減することを可能とした構造の等速自
在継手を提供せんとするものである。

以下この考案の構成を第５図及び第６図に示す
実施例に従つて説明すると次の通りである。

同図に於て、１１は等速自在継手の外方部材、
１２は内方部材、１３は保持器、１４はトルク伝
達ボールである。そして、外方部材１１は直線状
の内溝１５を備えている。内方部材１２は保持器
の内表面の部分球面を案内する球状外表面１６を
備えている。保持器１３は長円形のボールポケツ
ト１７及びボール中心面の両側で継手軸方向にず
らせて配置した曲率中心を有する部分球面状の内
外表面１８，１９を備えている。

上記構造に於いて、この考案は、保持器のボー
ルポケツトのボールを抱持するポケツトの壁面の
対向間隔を拡げてボール締め代を緩めることによ
りブランジ抵抗を軽減させて振動の伝達を小さく
し、かつ内外部材が大きな作動角をとつたとき上
死点付近で従来通りの締め代をボールに与えるよ
うにボールポケツトの形状を工夫することにより
異音の発生を防止するようにしたものである。

即ち、第６図に示すように保持器１３のボール
ポケツト１７のボール３を抱持する壁面１７ａ，
１７ａの対向間隔を若干拡げ、これによりボール
１４とボールポケツト１７の間のボール締め代を
緩め、かつボールポケツト１７の継手周方向のポ
ケツト壁面１７ａ，１７ａの略中央に中高部２
０，２０を形成し、この対向する中高部２０，２
０の間隔を従来通りのボール締め代が得られる間
隔としたものである。

この考案の等速自在継手は前記構成としたか
ら、両部材１１，１２の作動角が小さい場合で外
方部材１１と内方部材１１２がトルク伝達をしな
がら相対的に軸方向変位したときは、保持器１３
のボールポケツト１７とボール１４の間のボール
締め代を緩めたことにより、ボール１４は転がり
運動をして外方部材１１と内方部材１２の間のブ
ランジ抵抗が軽減され、これにより振動の伝達を
小さくする。即ち、作動角が小さいときは、保持
器が回転方向に移動し、締め代の緩いところに逃
げる。これによりボールの締め代が緩まり、ブラ
ンジ抵抗が軽減される。

また、両部材１１，１２が大きな作動角をとつ
たときは、保持器１３とボール１４の間の円周方
向の動きが殺され、ボール１４が上死点及び下死
点に移動したとき上死点付近のボール１４は強制
的に図中２点鎖線で示すようにボールポケツト１
７のポケツト中心に位置されるから、異音発生が
起ひる上死点付近ではボールポケツト１７のボー
ル１４を抱持するポケツト壁面１７ａ，１７ａの
略中央部に形成した中高部２０，２０によりボー
ル１４に締め代を与えることができ、これにより
ボール１４と外方部材１１のボール溝１５底面の
衝突を防いて異音の発生を防止する。

尚、両部材１１，１２の作動角度が小さい場合
は、保持器１３とボール１４の間の円周方向の動
きが可能となり、これによりボール１４は図中点
線で示すようにボールポケツト１７の円周方向に
対向するポケツト壁面１７ｂ，１７ｂ側に変位し
た締め代の小さな部分で安定しているから、外方
部材１１と内方部材１２が相対的に軸方向に変位
するときはそのブランジ抵抗が少ない。

以上説明したようにこの考案は直線状案内溝を
設けた円筒状孔を備える外方部材と、上記外方部
材の前記溝と協働してボールトラツクを形成する
溝を有し、かつ、部分球面状の外表面を備える内
方部材と、前記各溝に配されたトルク伝達ボール
と、前記各ボールを収容する長円形にボールポケ
ツトを備え、かつ、前記内方部材の部分球面状外
表面及び前記外方部材の円筒状孔とで夫々案内さ
れ、ボール中心面の両側に継手軸方向にずらせて
配置した曲率中心を有する部分球面状の内外表面
を備えた保持器とからなる等速自在継手に於い
て、上記保持器のボールポケツトのボールを抱持
する継手軸方向に対向するポケツトに壁面の継手
周方向の中央部を中高とし、この中高部において
所望のボール締め代となるようにしたから、大き
な作動角をとつた時の異音発生を防ぎ、なおかつ
小さな作動角をとつた時のブランジ抵抗を軽減し
て振動の伝達を小さくすることが可能となり、こ
の種の等速自在継手として実用上極めて有効であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図及至第４図は等速自在継手の一般例を示
す図面で、第１図は第２図のＹ−Ｙ線断面図、第
２図は第１図のＸ−Ｘ線断面図、第３図は第１図
の角度をとつた状態を示す図面、第４図は第３図
のＺ−Ｚ線で切断して保持器とボールのみを示し
た図面、第５図及び第６図はこの考案に係る等速
自在継手を示す図面で、第５図は縦断面図、第６
図は保持器の平面図である。 １１……外方部材、１２……内方部材、１３…
…保持器、１４……トルク伝達ボール、１７……
ボールポケツト、１８……内表面、１９……外表
面、１７ａ……ボールポケツトのボールを抱持す
るポケツト壁面、２０……中高部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 直線状案内溝を設けた円筒状孔を備える外方部
   材と、上記外方部材の前記溝と協働してボールト
   ラツクを形成する溝を有し、かつ、部分球面状の
   外表面を備える内方部材と、前記各溝に配された
   トルク伝達ボールと、前記各ボールを収容する長
   円形にボールポケツトを備え、かつ、前記内方部
   材の部分球面状外表面及び前記外方部材の円筒状
   孔とで夫々案内され、ボール中心面の両側に継手
   軸方向にずらせて配置した曲率中心を有する部分
   球面状の内外表面を備えた保持器とからなる等速
   自在継手に於いて、上記保持器のボールポケツト
   のボールを抱持する継手軸方向に対向するポケツ
   トに壁面の継手周方向の中央部を中高とし、この
   中高部において所望のボール締め代となるように
   したことを特徴とする等速自在継手。