JPS6112429Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は油圧緩衝器に関し、更に詳しくは車両
のばね下荷重に基づく衝撃を吸収するために用い
られるのに特に適する油圧緩衝器に関する。

前記油圧緩衝器はシリンダ内で滑動するピスト
ンに設けられた絞り機構を利用して、伸び側およ
び縮み側の減衰力を発生させる。この場合の絞り
機構として、ピストンに設けられたポートの端を
取り囲む弁座にコイルばねによつて弁体を押圧す
るようにした絞り機構がよく用いられている。本
考案はこのような絞り機構を有する油圧緩衝器に
関する。

ところで、前記コイルばね方式の絞り機構で
は、コイルばねの中心軸線に対して実質的に対称
形状に作られたコイルばねと弁体とを対称状に配
置している。そのため、弁体の開閉特にコイルば
ねの中心を節としてその直径両端がピツチングす
る弁体の首振り振動が発生し、減衰力性能のばら
つきや異音発生の原因となつている。

従つて本考案の目的は前記不具合を解消できる
油圧緩衝器を提供することにある。

本考案の油圧緩衝器は、コイルばねの少なくと
も一方の端がシリンダの軸線に直交する仮想面か
ら傾斜した支持面に支持されたことを特徴とす
る。この結果、コイルばねの配置に非対称性が付
加され、前記不具合は除去される。

前記した弁体の首振り振動は弁体の重量とコイ
ルばねのばね定数によつて定まる周波数およびこ
の近傍の周波数で起こるが、各部材が限られた空
間内に配置されている油圧緩衝器では、弁体の重
量および（または）コイルばねのばね定数を変え
ることは実際上難しく、また油圧緩衝器の減衰特
性に影響を及ぼすおそれがあるので好ましくな
い。本考案によれば、弁体の重量およびコイルば
ねのばね定数は不変であるので、油圧緩衝器の減
衰特性は変らない。

以下に、添付の図面を参照して本考案の実施例
について説明する。

本考案の油圧緩衝器は第１図に示すように、シ
リンダ１０内でピストン１２が滑動し、このピス
トン１２の運動によつて生ずる油液の流動の際の
運動エネルギを消失させて、減衰を行う。シリン
ダ１０は下方の端部で例えば、自動車の懸架装置
に設けられるサスペンシヨンアームに連結され
る。他方、ピストン１２にはピストンロツド１４
が連結されている。このピストンロツド１４は前
記シリンダ１０の開口端から外部へ突出して上方
へ伸び、車体に連結される。

ピストン１２の外周にはシール部材１６が取付
けられており、シリンダ１０とピストン１２との
間にシールを施している。このピストン１２に
は、シリンダ１０の軸線方向に伸びる複数のポー
ト１８が設けられている。複数のポート１８はピ
ストン１２の円周方向に等間隔に配置されてい
る。各ポート１８の下方の端１９を取囲む弁座２
０がピストン１２に設けられ、この弁座２０に当
接する弁体２２がピストン１２の下方に配置され
ている。前記ピストン１２の前記ポート１８より
も外周側に、複数のリターン用のポート２４が設
けられている。このリターン用のポート２４もピ
ストン１２の円周方向に等間隔に配置されてお
り、ポート２４の上方の端２５を取囲む環状の弁
座２１がピストン１２に設けられている。弁座２
１に当接する弁体２６がピストン１２の上方に配
置されている。

前記弁体２２は中央の筒状部２７とこの筒状部
２７の上端に一体に設けられたフジンジ部２８と
からなる。この筒状部２７は前記ピストンロツド
１４の端部１５に装着されたカラー３０に緩嵌さ
れ、このカラーに沿つて、シリンダの軸線方向へ
移動可能である。弁体２２のフランジ部２８の上
側面は前記ピストン１２に設けられた弁座２０に
当接されている。

前記ピストンロツド１４の端部１５にばね受け
３２の筒状部３１が螺合されている。このばね受
け３２の筒状部の下端に一体に設けられたフラン
ジ部３３にスペーサ３４が載置され、スペーサ３
４と前記弁体２２のフランジ部２８との間に圧縮
状態のコイルばね３６が配置されている。このコ
イルばね３６は前記弁体２２を前記ピストン１２
の弁座２０に押圧する。ばね受け３２は上方のば
ね受け３８、前記ピストン１２およびカラー３０
をピストンロツド１４の端部１５に固定するナツ
トを兼ねている。

前記スペーサ３４は第２図に示すように、支持
面３５を有する。この支持面３５はシリンダ１０
の軸線Ｃに直交する仮想面Ｐに対して角度θだけ
傾斜している。この傾斜角は極端に大きくするこ
とは必要でなく、10゜程度でよい。スペーサ３４
に前記のような傾斜状の支持面３５を設けた結
果、直径方向の両端において、一方端は仮想面か
らH₁となり、他方端は仮想面からH₂となる（H₁
＞H₂）。他方、ばね受けのフランジ部３３の上側
面は前記仮想面と一致しているので、H₁側のコ
イルばね３６の部分はH₂側のコイルばね３６の
部分よりも強く圧縮される。このようにコイルば
ね３６の荷重を偏らせているので、弁体２２は僅
かに一方向へ偏倚した状態で開閉することとなつ
て、首振り振動は誘起されない。

前記上方のばね受け３８はピストン１２とピス
トンロツド１４の肩との間に挾持されて固定され
ている。このばね受け３８の前記ピストンのポー
ト１８に対向する部位は切欠き３９に形成されて
いる。このばね受け３８と環状の弁体２６との間
に円錐形コイルばね４０が配置され、弁体２６を
弁座２１に押圧している。

本考案の油圧緩衝器を例えば自動車の懸架装置
に設置して使用するとき、ピストンロツド１４の
伸び運動に対しては、ピストン１２の上方に位置
していた油液がばね受け３８の切欠き３９を通つ
た後ピストン１２のポート１８に至り、弁体２２
を弁座２０から離してピストン１２の下方へ流動
する。この流動に伴う粘性抵抗によつて運動エネ
ルギが消失され、伸び運動の減衰が行われる。ま
た、ピストンロツド１４の縮み運動に対しては、
図示してないボトムバルブによつて減衰がなされ
る。この場合、弁座２１に当接されている弁体２
６はポート２４を流動する油液に抵抗を付加す
る。

第３図は支持面の別の例である。本例では、弁
体４２のフランジ部４３の下側面が支持面４４に
形成されている。この支持面４４も、前記支持面
３５と同じく、シリンダの軸線Ｃに直交する仮想
面Ｐに対して角度θだけ傾斜している。この場合
の傾斜の程度は前記支持面と同じである。

コイルばね３６の両端を傾斜状の支持面に支持
させることもできる。この場合、別途に形成した
スペーサをコイルばね３６と弁体２２との間およ
びコイルばね３６とばね受け３２との間に介在さ
せることもでき、或いは弁体およびばね受けのそ
れぞれのフランジ部に傾斜状の支持面を直接形成
してもよい。

本考案によればコイルばねの少なくとも一方の
端は傾斜した支持面に支持されているので、コイ
ルばねおよび弁体に非対称性を織り込むことがで
きる。このようにしてコイルばねの円周上の締付
け荷重を偏らせ、弁体を僅かに偏倚させた状態で
安定的に開閉させて、弁体の首振り振動を防止す
る。この結果、減衰力性能がばらついたり、異音
を発生することはない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の油圧緩衝器の要部を示す断面
図、第２図はスペーサの斜視図、第３図は油圧緩
衝器の別の例の要部を示す断面図である。 １０：シリンダ、１２：ピストン、１４：ピス
トンロツド、１８：ポート、２０，２１：弁座、
２２，４２：弁体、３２，３８：ばね受け、３
６，４０：コイルばね、３４：スペーサ、３５，
４４：支持面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダと、該シリンダ内を滑動しかつ油液流
   動用のポートが設けられたピストンと、一端部が
   該ピストンに連結されかつ他端部が前記シリンダ
   から外部へ突出するピストンロツドと、前記ポー
   トの一方の端を取り囲む弁座に当接される弁体
   と、前記ピストンロツドに固定されたばね受け
   と、前記弁体とばね受けとの間に配置されかつ前
   記弁体を弁座に押圧するコイルばねとを含み、該
   コイルばねの少なくとも一方の端は前記シリンダ
   の軸線に直交する仮想面から傾斜した支持面に支
   持された、油圧緩衝器。