JPS601751Y2 - 格闘技用安全防具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は空手道、日本拳法、逮捕術、ボクシング、剣
道、銃剣術等加撃を伴う格闘技全般に利用し得る安全防
具、特に顔面及び頭部を保護するためのものに関する。

一般に上記のような格闘技には練習や試合で安全防具を
使用することが多いが、例えば我国の空手界では１寸止
め空手ヨと称される無防具形式のものが伝統的に重んじ
られ、安全防具を装着する空手は公式には認められない
。

その主な理由は伝統武道としての空手道のイメージダウ
ンや防具使用への心理的抵抗感、重装備による動作の制
約、安全性の不十分さ、コスト力塙い等であるが、空手
道における安全性、フルコンタクト導入による技佃の向
上や活気ある競技への進歩及び対戦時の判定の明確さ、
あるいはスポーツとしての空手の普及等の観点からみて
安全な防具の普及が求めれている。

この点に関し、従来頭部及び顔面保護用の防具として特
公昭５０−３７ＯＲ公報に示されるように、頭部両側面
を覆うクッション材入りの面側面の上下前方に、バンド
状のクッション入り額当てと顎当てを設けて後側のバン
ド締着とあいまって両側の面側面を頭部に装着せしめる
構造とし、さらに面側面の前方には、顔面をカバーし顔
面との間には上下に通風自在な隙間を形成する透明の防
護マスクを取付けてなるものが知られている。

しかし上記の面においては、防護マスクに加えられる正
面方向からの打撃による衝撃荷重はバンド状クッション
材を介してすべて額と顎に加わるので、特に顎関節部分
を痛める危険があり、防護マスクも両側の後端部のみで
固着されているので弾力性には富むが強力な正面攻撃に
際しては耐久力が乏しいために破壊する率が高く、構造
的にフルコンタクトの打撃には適さないという欠点があ
る。

また透明の防護マスクは、上下に内部の吐息や発汗によ
る湿気を排出して内面のくもりを防止するための間隙が
形成されているが、これでは鼻や口からの吐息によるマ
スク内面のくもりを防止することもできず、そのくもり
による透明度や視界の妨げを免れないという問題があり
、逆にマスク正面への通気孔の穿設はマスク強度を著し
く弱めて危険なために採用できない。

その他構造が複雑なために製造コストが高いという欠点
もある。

この考案はこれらの欠点を解消する格闘技用防具を提供
せんとするもので、以下図示する実施態様につき詳細に
説明する。

第１図は本考案の防具の１例を示す全体斜視図で、１は
正面を覆うフェイスカバー２と左右を覆うサイドカバー
３，３とを発泡樹脂若しくはスポンジ状の合成ゴム又は
合成樹脂材等によって一体形成してなるカバ一本体であ
る。

該カバ一本体１は図示する例では強い衝撃を緩和できる
ようにそれ自体が弾力性を有する例えば塩化ビニールと
特殊合成ゴムよりなる独立気泡式の発泡材（実施例では
住友ノーガツタ株式会社の商品である１エンソライトヨ
を使用した）等よりなり、しかも各カバー２，３は外側
を耐衝撃性の優れた比較的硬質の材料よりなる外装材２
ａ、３ａとし、内側を顔面及び頭部への適合性（順応性
）に富む比較的軟質の材料よりなる内装材２ｂ、３ｂと
して複数の層に接着形成している。

また各カバー２，３は一定の厚み（例えば２〜３ｃｒｎ
）を有し、正面及び側面カバー２，３を使用者の頭部に
適合して装着できるような湾曲形状に予め一体成形し、
若しくはそれぞれを分割形成して各部を接着等によって
接合して一体化せしめる。

カバ一本体１を上記のように硬軟の重層構造にすること
により加撃時の緩衝効果や防具の頭部への適合性が優れ
たものとなるほか、防具そのものの強度及び耐久性が単
層のものに比して著しく向上する。

フェイスカバー２の正面には頭部にカバー１を装着した
時にできるだけ広い視界が確保されるように十分な広さ
の透視窓４が穿設され、各サイドカバー３には耳の部分
を塞がないための耳部５及び適数個の気抜き孔６が穿設
されている。

上記耳部６の外側周縁にはその周縁形状に沿ってＣ型又
はＵ型等に折曲げられ、その内部がクッション材からな
る耳部保護枕７が接着又は縫合等によって取付けられ、
側面からの加撃に際して耳を保護し且つ加撃時の内部気
圧を外部に逃がして鼓膜裂傷等の事故を防止する構造と
なっている。

フェイスカバー２の下端からサイドカバー３の下端に至
る連続部は装着者の下顎骨及び顎関節を保護するための
顎保護部８が順次突設されている。

またサイドカバー３の各後端部には、カバ一本体１を頭
部に装着固定するための締着用の紐９が孔１０を介して
通されており、該紐９は上部より交互に通されており、
両下端を引下げることによってサイドカバー両端が互に
引寄せられて締着され、紐止め１１を上方へ押し上げる
ことにより紐９の締着状態が固定される構造（第３図参
照）である。

上記サイドカバー３の後端の締着構造は上述した紐によ
るほか、バンド又は係止金具（いずれも図示しない）等
周知且つ任意の締着手段によることができる。

サイドカバー３，３の後部締着部のいずれか一方の内側
には、上記サイドカバー３，３の後端の不連続部分の内
側にあって前記縁９により後頭部へ押接締着されるふと
ん状の後頭部当て１２の一端が縫合又は締着等によって
折曲げ自在に取付けられている。

該後頭部当て１２は内部にクッション材を有する緩衝部
をなし、主として着用者が打撃を受けて後方に転倒した
際等に後頭部を保護するものである。

フェイスカバー２の正面には透視窓４全体を覆うように
一定の厚みを有し耐衝撃性に優れた透明プラスチック材
（実施例では三菱瓦斯化学株式会社商品１ニーピロン・
ガラスヨを使用し、これは従来の強化ガラスの１５０倍
以上の衝撃強さを持ち、仮に破壊した場合でも破片の飛
散もなく、透明性、表面光沢共に優れていることが確認
されている。

）よりなる防護マスク１３が紐１４により縫合固着され
ており、フェイスカバー２の下部との間には通気用間隙
が形成されている。

該防護マスク１３はフェイスカバー２の正面形状に適合
するフランジ状の周縁部１５とカバ一本体１内より透視
窓４を介して外部、特に対戦相手の動静が屈折なく見透
せるように、略装着者の目の位置付近を中心としたアー
ルをなす一段若しくは複数段の球面部（透視部）１６と
からなり、フェイスカバー２への縫合固着は周縁部１５
において行われる。

上記防護マスク１３の球面部１６前面の下半部位置にお
ける着用者の口や鼻に対面して吐息が当る部分には多数
の通気孔１７が穿設され、この通気孔１７が穿設される
部分は、マスクの特に正面方向からの加撃に対する耐衝
撃性の低下を防止するために肉厚部１８として形成され
ている。

また防護マスク１３の球面部１６の外周縁の上部と下部
にはできるだけマスクの衝撃強度を損わず且つ通気性の
良好な形状や位置を選んで通気窓１９が穿設されている
。

上記通気孔１７や通気窓１９はマスク内部の通風性を良
好にし、着用者が格闘技の練習や競技をする際の吐息や
発汗で防護マスク内面がくもるのを防止するものである
。

また防護マスク１３のフランジ部１５の局面には比較的
弾力性に冨みその外周面が滑らかなアールに形成された
ゴム又は合成樹脂材製の周面カバー２０が嵌合等によっ
て被着され、例えば素手で加撃を行う場合等に加撃者の
手がマスク周面によって負傷するのを防止し且つマスク
のフェイスカバー２への固着性を高める構造となってい
る。

なおりバ一本体は第１〜３図に示す例では、弾性材を所
定形状に形成した後にその全表面及び裏面に合成樹脂塗
料又は接着剤等よりなる可撓性、伸縮性、防水性、耐摩
耗性等に富んだ樹脂皮膜２１をコーティングによって形
成している。

上記皮膜は溶解樹脂中にカバ一本体を浸漬しあるいは塗
布する等の方法によって行われる。

このような皮膜２１を形成することにより、カバ一本体
１の完全防水及び非吸水（汗）性等を実現させて使い心
地や衛生面及び外観性において優れたものとするほか、
カバ一本体の緩衝性及び強度を向上せしめる効果がある
。

なお、第１図〜第３図に示すカバ一本体１の全表面を皮
革や合成皮革で覆うことによって上記皮膜を形成するこ
とも可能である。

第４図は本考案のもう一つの実施態様を示す防具の斜視
図で、この例ではフェイスカバー２の内部のクッション
材のみを一体的に成形してその外表面を皮革又は合成皮
革で覆って皮膜２１とするとともに、その後部両側のサ
イドカバー３，３には上記皮膜２１を接続延長し、その
内部には別個に形成したクッション材を封入している。

その結果フェイスカバー２とサイドカバー３，３は皮膜
２１によって形成される別個の袋状部からなり、別個の
不連続なりッション材が各封入されることになる。

上記以外の点は第１図〜第３図の場合と基本的には同一
である。

なお、図示したいずれの形式のものも、サイドカバーに
多数の小孔を穿設して着用時の内部の蒸れを防止するこ
とは容易に可能である。

この考案は以上の如く構成される結果、既に上記説明中
で述べたような諸作用効果を伴うほか、次のような具体
的効果を生ずるものである。

（１）防具自体が従来品に比して軽量で顔面、頭部への
適合性がよいため頭部全体の動作を殆んど妨げず緩衝効
果が良いほか、目、鼻、口、耳及び頭部の安全が十分確
保される。

特に防護マスクの周縁部をフェイスカバーの前面の左右
及び上部外周で直接受は且つそのフェイスカバーは顔面
周囲に均一に接触しているので、顎関節への集中的な衝
撃が避けられるほか、マスクの固定性及び衝撃強度も高
められる利点がある。

（２）透視窓及びくもりのない透明マスクを通じて装着
者の視界が十分に確保されるので対戦相手の動作全体が
正確に見られるほか、相手方からも装着者の目の動きや
顔の表情の変化の確認が容易なので正確な攻撃防御がで
き、第三者からもこれらの確認が容易である。

（３）色彩の選択を含めてデザインを簡単でスマートな
ものにでき、装着時に汗も含まない（防水性）ので衛生
的であるとともに、装着脱が容易なので心理的にも実際
の使用にも殆んど抵抗なく利用できる。

（４）フリースパーリング又はフルコンタクトができる
ので使用できる技の範囲が広くなるとともに、実際の攻
撃及び防御の技術が向上し、空手道等の格闘技自体がそ
の本質に沿った興味あるものになる。

（５）また実際に加撃することができるので従来相当の
専門家（高段者）によっても困難であった勝負の判定が
衝撃音やショックによる動作で容易且つ明確化し、誤審
も著しく減少する。

他方勝敗の判定が観覧者にとっては殆んど判らないケー
スが寸止め空手等では少くなかったが、この考案の安全
防具を用いたフルコンタクト等の試合方式により、これ
が明確になり、試合そのものを興味あるものにできる。

（６）カバ一本体及び防護マスクが大量生産できる形状
及び材質であるし、材料コストそのものも安価で構造も
簡単なので全体のコストも従来品に比して著しく低減で
き、材料の弾力性及びカバ一本体の締着固定方式等によ
りサイズも殆んどフリーサイズ化できる利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の防具の１例を示す斜視図、第２図は同
じくその着用状態を示す側面断面図、第３図は一部破断
乎面図、第４図は他の実施態様を示す防具の斜視図、第
５図は同じくその一部省略破断乎面図である。 １・・・・・・カバ一本体、２・・・・・・フェイスカ
バー、２ａｙ３ａ・・・・・・外装材、２ｂ、３ｂ・・
・・・・内装材、３・・・・・・サイカバー、４・・・
・・・透視窓、５・曲・耳部、６・・・・・・気抜き孔
、７・・・・・・耳部保護枕、８・・・・・・顎保護部
、９・・・・・・紐、１０・・・・・・孔、１１・曲・
紐止め、１２・・・・・・後頭部当て、１３・・・・・
・防護マスク、１４・・・・・・紐、１５・・・・・・
周縁部、１６・・・球面部（透視部）、１７・・・・・
・通気孔、１８・・・・・・肉厚部、１９・・・・・・
通気窓、２０・・・・・・周面カバー、２１・・・・・
・皮膜。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 正面に着用者の視界や呼吸を妨げない大きさの透視窓４
   を設け、着用者の額、顎及び面側面を含む顔面周囲に適
   合して接触するフェイスカバー２と、該フェイスカバー
   ２の上部及び中間部から後方に連続して着用者の側頭部
   と後頭部を覆うサイドカバー３と、上記両力バー２，３
   の下端において連続し着用者の頭側面を覆う顎保護部８
   とを設けてカバ一本体１を形成し、前記フェイスカバー
   ２は表面側の硬質のクッション材よりなる外装材と、内
   面側の軟質のクッション材よりなる内装材とを重層せし
   めて一体的に形成し、前記フェイスカバー２には、透視
   窓４を覆いフランジ状周縁部１５及び球面状透視部１６
   とからなる耐衝撃性を有する透明な樹脂製の防護マスク
   １３をそのフランジ状周縁部１５と透明窓４の周縁とに
   紐１４を通して固着し、上記球面状透明部１６の下半部
   中央には多数の小孔からなる通気孔１７を穿設するとと
   もに、該通気孔１７の穿設部分を肉厚部１８として形成
   し、さらに球面状透視部１６のフランジ状周縁部１５に
   近接した位置には１個又は複数個の通気窓１９を形成し
   てなる格闘技用安全防具。