JPS601448Y2 - 架空配電用絶縁電線 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、外観から異常断線の早期発見可能な架空配
電用絶縁電線に関する。

従来の架空配電用絶縁電線の構造は硬銅撚線からなる導
体の上にポリエステル等のセパレータを設け、ゴム、プ
ラスチック絶縁体で被覆するか、あるいは該誘導体の上
に直接プラスチック絶縁体を被覆したものであって、何
れも導体には伸線加工時又は撚線加工時の残留応力が多
少とも存在している。

か）る構造の架空配電用絶縁電線を屋外の高圧、低圧配
電通路に用いるとき、架設に際して引留架線金具、分岐
架線金具等は被覆絶縁体を一部除去した導体に取付けね
ばならない。

従ってかかる引留部、分岐部から侵入して来た空気中の
水分が導体と絶縁体間の僅かな間隙に毛細管現象によっ
て入ってくる。

か）ろ水分が間隙に長時間存在すると酸素濃淡電池作用
等による腐食作用が残留応力の存在する導体に加わるた
めに、これが要因となって導体に応力腐食現象が生じ、
終には応力腐食割れとなって導体が破断することが往々
にしてあり、時には電柱から架線がたれ落ち、人身事故
に及ぶ危険もあり、その防止対策として架線が破断する
以前に硬銅線の応力腐食割れの早期検出が強く要望され
ていた。

この考案は如上の点に鑑みてなされたもので、この考案
による架空配電用電線は異常断線が早期に検出され、以
って断線による危険防止を目的としたものである。

即ち、素線を複数本撚り合わせてなる銅撚線において、
最外層を硬銅線とし、内層を軟銅線又は半硬銅線とし、
その外周に絶縁被覆層を有することを特徴とする架空配
電用絶縁電線である。

銅撚線の応力腐食割れについて我々は次の如きことを知
見した。

即ち、応力腐食割れは硬銅線に生じ易いが、半硬銅線、
軟銅線には殆んど生じないので半硬銅線あるいは軟銅線
から成る導体を架空配電用絶縁電線に使用すれば、たと
え架設上の引留部、分岐部から導体と絶縁体との間の間
隙に水分が侵入しても、導体に応力腐食割れは起らず、
応力腐食割れが原因で導体が切断し、電柱から垂れおち
、人身事故を起すような危険性はない。

しかし半硬鋼あるいは軟銅線を用いて撚線加工したもの
は硬銅線の撚線加工したものに比べ抗張力が低いため半
硬銅線、あるいは軟銅線の撚線を導体として用いて架設
した場合その架線張力に耐えられず、電線はクリープを
生じ大きなディップ（弛度低下）を生ずるので、その対
策としては、架線用電柱の高さを増加するとか、定期的
に架線を引締めてその都度ディップを小さくするなどの
方法をとらねばならず、これは多大の出費を必要とし最
良の対策とは言い得ない。

この考案による導体は最外層を硬銅線とし、内層を半硬
銅線あるいは軟銅線を用いているので、電線の架線張力
に充分耐えクリープによる架線のディップの増大を防ぐ
と共に、硬銅線と半硬銅線あるいは軟銅線を同一構造中
に撚合せであるため、硬銅線が応力腐食割れを起して破
断しても、半硬銅線あるいは軟銅線は応力腐食割れを起
こさないため、導体のディップは著るしく大きくはなる
が一度に同時破断することはない。

しかも導体の応力腐食割れの有無を地上より架線のディ
ップ増大の状態から判別でき、硬銅線の応力腐食割れの
検知検出が著るしく早期にしかも容易となる。

次にこの考案による１例を図面で説明すると、１鉢撚り
の架空配電用絶縁電線は第１図にその断面を示す如く、
最外層を１２＊の硬銅線１で構成し、内層を７本の半硬
銅線２で構成した撚り導体の上にセパレータ３を介して
絶縁被覆層４を設けてなるものである。

今ここで１鉢の素線の径はすべて同じとすれば、その断
面積比から明らかな如く最外層では張力の約６５％、内
層では約３５％を分担すること）なる。

しかるに導体抗張力は安全率を見込んで架線張力に比べ
て３〜５倍の値をとっている。

従って合板りに最外層の硬銅線が全部応場＊力腐食割れ
を生じて破断しても、内層の応力腐食割れを起さない軟
鋼あるいは半硬銅線で架線張力を維持できる。

しかし軟銅線あるいは半硬銅線では硬銅線に比べて耐ク
リープ性は劣るので、最外層の硬銅線が切断しその張力
の負荷が内層の半硬銅線あるいは軟銅線にか）つたとき
は断線はしないがクリープ伸びが犬となり電線のディッ
プが大きくなり、硬銅線の応力腐食割れが生じたことが
地上からの架線の外観にって識別できる。

次に、この考案による実施例について述べる。

実施例 １ 架空配電用絶縁電線として導体構成を第１表に示す４種
類Ω虹（１）、 （２＞、 （３１，（４））の各撚線
導体（素線径２．３顧、１鉢撚り）上にポリエチレンを
押出し被覆してなる８ｏｒｒｒｉｔＯＣ線（１９／２．
３）すなわち屋外用ポリエチレン電線について夫々次の
試験を行った。

すなわち上記の各電線を架空配電用絶縁電線としてスパ
ン４０ｍ、架線張力１５００ｋｇで架設した。

第２図はその架設状態を示すもので６は架設された試験
電線であり７は架設電柱であって夫々の試験電線６のデ
ィップ５の経時変化を調査した。

その結果を第２表に示す。

第２表によれば、この考案による内層に半硬、及び軟銅
線を使用した隘（２）及び（３）は、従来の外層内層共
に硬銅線を使用したＮｏ、（１）と同様にディップの変
化は殆んど見られず良好であったが、外層に軟銅線を使
用した比較倒動、（４）は経時に伴いディップは陥、（
１）、 （２）、 （３）に比べて著るしく大となり、
この構造のものは実用的でなかった。

然るにこの考案によるＮｏ、（２）、及び（３）は実用
に供し得た。

実施例 ２ 実施例１に用いた第１表歯、（１）、 （２）、 （３
１と同種類の３種の電線をスパン４０ｍ、架線張力２０
００ｋｇで架設し、径間の中央約１ｍｌこ亘って架線金
具を取付るときの作業と同じ様にして絶縁体を剥ぎとり
、導体を露出し、その露出部分を腐食液ＩＮのＨ２ＳＯ
４＋ ＩＮのＮＨ４ＯＨ（ＰＨ９）の入ったｐｖｃ密
閉容器に挿入し２０〜８０℃の気相雰囲気下で銅導体の
応力腐食割れの促進をはかった。

架設時のディップは４０ｃｍで、その結果は、次の如く
であった。

導体が硬銅線で構成されてるもの、即ちＮＯ９＋１）は
約１年後応力腐食で導体は断線して下にたれ下った。

しかるにこの考案による外層は硬銅線、内層は半硬銅線
で構成されているもの即ちＮｏ、（２）は約６ケ月後か
らディップが大きくなりはじめ、１年後のディップは８
０ｃｍ近くなり、著るしくディップが増大したので架設
した電線を撤去し解体したところ、外層の硬銅線はすべ
て応力腐食割れにより破断していたが、内層の半硬銅線
には割れは全く見られなかった。

又この考案による外層は硬銅線、内層は軟銅線で構成さ
れてるもの即ちＮｏ、（３）は約６ケ月後からディップ
が大きくなりはじめ、−午後のデイツププは１２０ｃｍ
近くなったので架設した電線を撤去し解体したところ、
外層の硬銅線はすべて応力腐食割れにより破断していた
が内層の軟銅線には割れが全く見られなかった。

以上実施例に示す如く、従来の構成によるＮｏＪｌ）は
硬銅線の応力腐食割れにより、架線に切断を来たしたが
、この考案によるＮｏ、＋２１． ＋３）は外層の硬銅
線は応力腐食割れにより破断するも内層の半硬銅線又は
軟銅線によって架線の切断は免れ徐々に電線のディップ
が大きくなってきて、外観的にも大きな変化が現われて
来て、硬銅線の応力腐食割れの早期検出が極めて容易に
行えた。

架空配電線の導体構成をこの考案の如くすることは、保
守、点検管理上極めて実用的である。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案による絶縁電線の１実施例″の切断
面を示す、第２図は架空配電用絶縁電線の架線時の状態
を示す。 １：硬銅線、２；半硬銅線又は軟銅線、３：セパレータ
ー、４；絶縁被覆層、５：ディップ、６：電線、７：架
線用電柱。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 素線を複数本撚り合わせてなる銅撚線において、最外層
   を硬銅線とし、内層を軟銅線又は半硬銅線とし、その外
   周に絶縁被覆層を有することを特徴とする架空配電用絶
   縁電線。