JPH1190651A - 金属部材の接合方法及び接合装置 - Google Patents

金属部材の接合方法及び接合装置

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JPH1190651A
JPH1190651A JP27066097A JP27066097A JPH1190651A JP H1190651 A JPH1190651 A JP H1190651A JP 27066097 A JP27066097 A JP 27066097A JP 27066097 A JP27066097 A JP 27066097A JP H1190651 A JPH1190651 A JP H1190651A
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智 南場
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幸男 山本
Yukihiro Sugimoto
幸弘 杉本
Shinya Shibata
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バルブシート3をシリンダヘッド本体2のポ
ート2b開口周縁部(接合面部2a)に拡散接合して得
られるシリンダヘッド1について、従来よりも接合強度
を大きくし、かつ焼入れによる硬度の上昇を少なくす
る。 【解決手段】 予めバルブシート3の表面部に、ろう材
とバルブシート3との拡散接合層5を介してろう材層7
を形成しておく。バルブシート3とシリンダヘッド本体
2とを加圧しつつ、大小の電流値の繰り返しからなるパ
ルス電流を通電する。パルス通電に伴う発熱及び加圧に
より、ろう材及びシリンダヘッド本体2の溶融反応層6
を形成しかつ溶融したろう材を両部材2,3の接合面部
2a,3a,3b間から排出しながら、上記拡散接合層
5及び溶融反応層6を介した液相拡散状態で接合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、第1の金属部材と
第2の金属部材とが拡散接合されてなる金属部材の接合
方法及び接合装置に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばエンジンのシリンダヘ
ッドにおいてバルブシートをシリンダヘッド本体の吸気
及び排気用ポートの開口周縁部に接合する場合のよう
に、金属部材同士を接合する方法としては焼ばめによる
方法がよく知られている。
【0003】また、例えば特開平8−100701号公
報に示されているように、バルブシートとAl系シリン
ダヘッド本体とをAl−Zn系ろう材及びフッ化物系フ
ラックスによりろう付け接合するようにすることが提案
されている。
【0004】さらに、例えば特開昭58−13481号
公報に示されているように、両部材の接合面部における
接触抵抗加熱を利用した抵抗溶接により金属部材同士を
接合する方法が知られている。そして、この抵抗溶接で
は、例えば特開平6−58116号公報に示されている
ように、焼結材で構成されたバルブシートの空孔に金属
を溶浸することによって、焼結材内部の発熱量を低減し
て接合面部での発熱量を増大させるようにすることや、
例えば特開平8−270499号公報に示されているよ
うに、バルブシートの表面に皮膜を形成し、その皮膜を
シリンダヘッド本体との結合時に溶融させるようにする
ことが提案されている。
【0005】また、例えば特開平8−200148号公
報に示されているように、バルブシートとシリンダヘッ
ド本体とを、シリンダヘッド本体の接合面部に塑性変形
層を形成しつつ溶融反応層を形成することなく固相拡散
接合(圧接接合)するようにすることが提案されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来例の
ように金属部材同士を焼ばめにより接合する方法では、
被接合金属部材の脱落を確実に防止しかつ焼ばめ時の締
付力に耐えるようにするために、被接合金属部材を比較
的大きくしておく必要がある。このため、シリンダヘッ
ドではバルブシートの肉厚や幅が大きくなり、ポート間
隔を狭くしたりスロート径を大きくしたりするには限界
がある。さらに、バルブシート及びシリンダヘッド本体
間には断熱層が存在するので、熱伝導率が低くなってバ
ルブ及びバルブシート近傍の温度を有効に低下させるこ
とができないという問題がある。
【0007】また、ろう付けや抵抗溶接により金属部材
同士を接合する方法では、両部材間の熱伝導率を向上さ
せることはできるものの、基本的に接合強度が低く、バ
ルブシートとシリンダヘッドとの接合に採用するのは困
難である。特にろう付けによる接合方法では、炉の中で
長時間加熱する必要があるので、インライン化対応も不
可能、事前に熱処理を施したアルミ部材では熱処理効果
が失われる、また、アルミニウム鋳物用ろう材は融点が
低く、耐熱性が低いという問題がある。
【0008】一方、上記固相拡散接合方法では、焼ばめ
による接合方法よりもバルブシートを格段に小形化する
ことができ、エンジンの設計自由度を向上させることが
できるという利点を有するが、固相拡散接合であるた
め、加圧力や電流量等の接合条件に厳格な管理が必要で
ある。特に、Al系のシリンダヘッド本体とFe系のバ
ルブシートとの接合では、Fe−Alという脆い金属間
化合物の発生を抑えつつFe及びAlの原子を拡散させ
るという相反することを行う必要があるため、接合条件
の設定をより厳格に行う必要がある。
【0009】本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、第1の金属部材を第
2の金属部材に接合する場合に、上記従来の接合方法を
改良することによって、従来よりも高い接合強度を有す
る金属部材を短時間で容易に得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明では、第1の金属部材と第2の金属部材
とを、加圧した状態下でパルス電流により通電加熱して
拡散接合することとした。
【0011】具体的には、請求項1に記載の発明は、第
1の金属部材を第2の金属部材の接合面に当接させた状
態で加圧及び通電加熱することによって、該両部材を拡
散接合する金属部材の接合方法であって、通電電流を、
大小の電流値の繰り返しからなるパルス電流としたもの
である。
【0012】このことにより、最初の大電流値パルスの
通電時に、第1の金属部材と第2の金属部材との間の接
触抵抗により大きな抵抗発熱が生じる。そのため、両部
材間の接合面部の温度が上昇し、両部材の拡散接合が始
まる。その後、温度が少し低下した時点で2回目以降の
大電流値パルスの通電が行われる。このとき、両部材間
の接合面部では、冶金的接合により接触抵抗が低下して
いるので、最初の大電流値パルス通電時と異なり、抵抗
発熱量は減少する。そのため、両部材の温度は徐々に低
下し、徐冷されるので、その硬さが大きく上昇すること
が防止される。その結果、加工性に優れ、種々の用途に
便利な接合金属部材が得られる。
【0013】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載
の金属部材の接合方法において、予め第1の金属部材の
表面部に、前記両金属部材よりも融点の低いろう材と該
第1の金属部材との拡散層を形成すると共に、該第1の
金属部材の表面部に該拡散層を介して上記ろう材層を形
成しておき、上記第1の金属部材と第2の金属部材とを
加圧、及び上記ろう材の融点以上の温度への通電加熱を
行うことにより、上記ろう材と第2の金属部材との拡散
層を形成しかつ溶融したろう材を該両部材の接合面部間
から排出しながら、該両部材を上記両拡散層を介した液
相拡散状態で接合することとしたものである。
【0014】このことにより、ろう材を排出して拡散層
を介した状態で第1の金属部材と第2の金属部材とを液
相拡散接合するので、第2の金属部材表面部の酸化被膜
や汚れ等がろう材と共に排出されると共に、ろう材層を
介さずに拡散層が直接的に接合され、拡散がより一層促
進される。しかも、その拡散は液相拡散であるので、極
めて速く行われる。また、ろう材を溶融しかつ排出する
ことが可能なように加圧力や電流値を設定するだけで済
むので、高い接合強度が得られる条件範囲が広い。さら
に、通常、ろう材の融点は低いが、そのろう材は排出さ
れ、僅かに残っていたとしても、ろう材の成分の割合が
拡散層の形成により変化するので、接合後のろう材の融
点を高くすることができる。よって、インラインの作業
で、接合強度が高くかつ使用したろう材以上の耐熱性を
有する接合金属部材を得ることができる。
【0015】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載
の金属部材の接合方法において、第1の金属部材は、F
e系材料からなり、第2の金属部材は、Al系材料から
なり、ろう材は、Zn系材料からなることとしたもので
ある。
【0016】このことにより、Zn系のろう材は融点が
比較的低いので、ろう材の溶融及び排出を容易かつ確実
に行うことができる。しかも、Zn系のろう材はFe系
の第1の金属部材とFe−Znの拡散層を、またAl系
の第2の金属部材とAl−Znの拡散層をそれぞれ容易
に形成する。さらに、両拡散層を介した接合であるの
で、Fe−Alという脆い金属間化合物が生成するのを
有効に防止することができる。よって、請求項1〜2に
記載の接合方法に最適な材料の組合せが得られる。
【0017】請求項4に記載の発明は、請求項2〜3の
いずれか一つに記載の金属部材の接合方法において、第
1の金属部材とろう材との拡散層は、該第1の金属部材
の表面部に超音波振動を付与してろう材をコーティング
することとしたものである。
【0018】このことにより、超音波によるキャビテー
ション作用により第1の金属部材の表面部の酸化被膜や
メッキ層が破壊されるので、ろう材を第1の金属部材の
表面部に擦りつけるという機械的な摩擦を利用する方法
よりも確実にろう材を第1の金属部材側に拡散させるこ
とができる。また、フラックスを用いたろう付けを行う
場合のようなフラックス除去のための後工程が不要であ
る。よって、簡単な方法で拡散層を確実に形成すること
ができ、接合強度のより高い接合金属部材が得られる。
【0019】請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の
いずれか一つに記載の金属部材の接合方法において、第
1の金属部材を第2の金属部材に当接させる前に、予め
該第1の金属部材の内部に高電気伝導率材料を溶浸する
こととしたものである。
【0020】このことにより、高電気伝導率材料が第1
の金属部材内部の空孔に溶浸するので、鍛造と同様の効
果が得られると共に、通電時に第1の金属部材内部の発
熱を抑制してろう材を有効に溶融させることができる。
よって、接合金属部材の接合強度を有効に向上させるこ
とができる。
【0021】請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の
いずれか一つに記載の金属部材の接合方法において、第
1の金属部材と第2の金属部材との拡散接合は、第2の
金属部材の接合面部を塑性流動させて行うこととしたも
のである。
【0022】こうすることで、第2の金属部材表面の酸
化被膜が効果的に破壊されて接合面から排出されるの
で、ろう材を第2の金属部材側に確実に拡散させること
ができると共に、第2の金属部材の表面を特に保護して
おく必要はない。一方、第2の金属部材の塑性流動は、
第1の金属部材及び第2の金属部材を加圧するときにそ
の加圧力を利用することで容易に行うことができ、特別
な手段は不要である。よって、簡単な方法で拡散層を確
実に形成することができ、接合金属部材の接合強度のさ
らなる向上化を図ることができる。
【0023】請求項7に記載の発明は、第1の金属部材
を第2の金属部材に拡散接合する金属部材の接合装置で
あって、上記第1の金属部材を上記第2の金属部材の接
合面に当接させ、該接合面に圧力が加わるように該両部
材を加圧する加圧手段と、上記両部材のいずれか一方か
ら他方に向かって上記接合面を通過して流れる電流を流
す電極と、上記加圧手段によって上記両部材を加圧した
状態において、大小の電流値の繰り返しからなるパルス
電流を上記電極に供給するパルス電流発生手段とを備え
ていることとしたものである。
【0024】このことにより、請求項1に記載の発明に
よる接合方法を実現する金属部材の接合装置が得られ、
請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【0025】請求項8に記載の発明は、請求項7に記載
の金属部材の接合装置において、パルス電流発生手段
は、予め拡散層、及び上記両金属部材よりも融点の低い
ろう材層が形成された第1の金属部材を第2の金属部材
の接合面に加圧手段によって当接加圧させた状態で上記
ろう材の融点以上の温度への通電加熱を行うことによ
り、ろう材と第2の金属部材との拡散層を形成しかつ溶
融したろう材を該両部材の接合面部間から排出しなが
ら、該両部材を上記両拡散層を介した液相拡散状態で接
合するように構成されていることとしたものである。
【0026】このことにより、請求項2に記載の発明に
よる接合方法を実現する金属部材の接合装置が得られ、
請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【0027】請求項9に記載の発明は、請求項7〜8の
いずれか一つに記載の金属部材の接合装置において、パ
ルス電流発生手段は、第1の金属部材を第2の金属部材
の接合面に当接させた状態で第2の金属部材の接合面部
が塑性流動しながら該両部材が拡散接合するように加圧
手段によって加圧された状態で通電加熱を行うように構
成されていることとしたものである。
【0028】このことにより、請求項6に記載の発明に
よる接合方法を実現する金属部材の接合装置が得られ、
請求項6に記載の発明と同様の作用効果が得られる。
【0029】
【発明の実施の形態】
(基本形態)まず、本発明の適用対象として、エンジン
のシリンダヘッド1をシリンダヘッド本体2に連続通電
によって拡散接合する接合方法及び接合装置を、基本形
態として説明する。
【0030】図1は、本発明の実施形態1に係る接合金
属部材としてのエンジンのシリンダヘッド1の要部を示
し、このシリンダヘッド1は、ベース部材(第2の金属
部材)としてのシリンダヘッド本体2における4つの吸
気及び排気用ポート2b,2b,…の開口周縁部つまり
バルブが当接する位置に略リング状のバルブシート3,
3,…(第1の金属部材)が後述の如く接合されてなる
ものである。上記各ポート2bの開口周縁部はシリンダ
ヘッド1の下側から見て略正方形状に並べられており、
その各開口周縁部は各バルブシート3との接合面部2a
とされている。
【0031】上記各バルブシート3の内周面部はバルブ
当接面部3cとされて、バルブ上面の形状に沿うように
上方に向かって径が小さくなるテーパ状に形成されてい
る。また、各バルブシート3の外周面部は、シリンダヘ
ッド本体2との第1接合面部3aであって、内周面と同
様にテーパ状に形成されている。さらに、各バルブシー
ト3の上面部は、シリンダヘッド本体2との第2接合面
部3bであって、内周側に向かって上方に傾斜してい
る。
【0032】上記各バルブシート3はFe系材料からな
る焼結材であり、その内部には高電気伝導率材料として
のCu系材料が溶浸されている。この各バルブシート3
のシリンダヘッド本体2との第1及び第2接合面部3
a,3bには、図2に模式的に示すように、Zn−Al
系材料(約95重量%のZn成分及び約5重量%のAl
成分)からなるろう材と該バルブシート3との拡散層た
る拡散接合層5が形成されている。すなわち、この拡散
接合層5は、上記ろう材のZn成分がバルブシート3側
に拡散することにより形成されたFe−Znからなって
いる。
【0033】一方、上記シリンダヘッド本体2はAl系
材料からなり、このシリンダヘッド本体2の各バルブシ
ート3との接合面部2aには上記ろう材と該シリンダヘ
ッド本体2との拡散層たる溶融反応層6が形成されてい
る。すなわち、この溶融反応層6は、上記ろう材のZn
成分が溶融状態でシリンダヘッド本体2側に液相拡散す
ることにより形成されたAl−Znからなっている。
【0034】そして、上記各バルブシート3とシリンダ
ヘッド本体2とは、上記拡散接合層5及び溶融反応層6
を介した液相拡散状態で接合され、この拡散接合層5及
び溶融反応層6のトータルの厚さは1.0μm以下とさ
れている。尚、図2では、拡散接合層5及び溶融反応層
6間にろう材層7が形成されているが、このろう材層7
の厚さは極めて小さく実質的には殆ど無いと見做せる状
態にある。
【0035】以上の構成からなるシリンダヘッド1にお
いて各バルブシート3をシリンダヘッド本体2の各ポー
ト2b開口周縁部(接合面部2a)に接合してシリンダ
ヘッド1を製造する方法を説明する(尚、以下の製造工
程では、シリンダヘッド本体2及びバルブシート3の天
地は逆になっている)。
【0036】先ず、Fe系材料の粉末を焼結することに
よってバルブシート3を作製する。このとき、バルブシ
ート3は、図3に示すように、バルブシート3及びシリ
ンダヘッド本体2の接合時の加圧力に耐え得るように、
その内周側及び上側(図1では下側)に肉厚が厚くなる
ように形成されている。すなわち、この段階ではバルブ
当接面部3cは形成せず、内周面は真っ直ぐに上方に延
びるように、また上面は略水平状となるようにそれぞれ
形成する。さらに、シリンダヘッド本体2との第1接合
面部3aのテーパ角(図3のθ1)は約0.52rad
(30°)に、また第2接合面部3bの傾斜角(図3の
θ2)は約0.26rad(15°)にそれぞれ形成す
る。すなわち、上記第1接合面部3aのテーパ角θ1
は、小さすぎると、バルブシート3をシリンダヘッド本
体2に埋め込むのは容易ではあるが、シリンダヘッド本
体2の接合面部2aにおける酸化皮膜破壊作用効果が低
下する一方、大きすぎると、バルブシート3の埋め込み
が困難になると共に、バルブシート3の最外径が大きく
なりすぎて2つのポート2b,2bの間隔を狭くするこ
とができなくなるので、約0.52rad(30°)に
設定している。
【0037】そして、Cu系材料の粉末を焼結すること
によって上記バルブシート3と略同径のリングを作製し
た後、このリングを上記焼結したバルブシート3の上面
に載せた状態で加熱炉に入れて溶融させることによりバ
ルブシート3の内部にCu系材料を溶浸させる。この
後、バルブシート3の上記第1及び第2接合面部3a,
3bを含む表面部全体に、酸化被膜形成防止等の観点か
らCuメッキ層(2μm程度)を施しておく。
【0038】続いて、図5(a)に模式的に示すよう
に、上記バルブシート3の接合面に拡散接合層5を介し
てろう材層7を形成する。このバルブシート3にろう材
層7及び拡散接合層5を形成するには、ろう材浴中のバ
ルブシート3の表面部に超音波振動の付与によりろう材
をコーティング(超音波メッキ)する。すなわち、図6
に示すように、振動板11の一端部を超音波発振機12
に取り付け、上記バルブシート3をこの振動板11の他
端部の上面に載せた状態で有底状容器13内のろう材浴
14に浸漬する。この状態で上記超音波発振機12から
振動板11を介して超音波振動をバルブシート3に付与
すると、超音波によるキャビテーション作用によりバル
ブシート3の表面部のCuメッキ層や僅かに形成されて
いた酸化被膜が破壊され、ろう材のZn成分がバルブシ
ート3側に拡散してFe−Znからなる拡散接合層5が
形成されると共に、この拡散接合層5の表面側にろう材
層7が形成される。このことで、ろう材をバルブシート
3の表面部に擦りつけるという機械的な摩擦を利用する
方法よりも確実かつ容易に拡散接合層5を形成すること
ができる。尚、上記超音波メッキの条件としては、例え
ば、ろう材浴温度を400℃、超音波出力を400W、
超音波振動付与時間を20秒にそれぞれ設定すればよ
い。
【0039】次に、上記バルブシート3を、予め鋳造等
により作製しておいたシリンダヘッド本体2のポート2
b開口周縁部つまりバルブシート3との接合面部2aに
接合する。このとき、シリンダヘッド本体2の接合面部
2aは、図4(a)に示すように、接合完了時の形状
(バルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bと
同じ形状)とは異なり、約0.79rad(45°)の
テーパ角を有している。
【0040】そして、バルブシート3をシリンダヘッド
本体2の接合面部2aに接合するには、図7に示すよう
に、市販のプロジェクション溶接機を改良した接合装置
20を用いて行う。この接合装置20は、略コ字状の支
持本体21を有しており、この支持本体21の上下水平
部21a,21bは片側の鉛直部21cのみに支持され
た片持ち状とされて、鉛直部21cと反対側は開口状と
されている。上記支持本体21の上側水平部21aの下
部には加圧シリンダ22が設けられ、この加圧シリンダ
22の下側には、加圧シリンダ22のシリンダロッド2
3に取り付けられ、かつこのシリンダロッド23と同一
軸上を上下移動可能な略円筒状のCu製上側電極24が
設けられている。一方、上記下側水平部21bの上側に
は、移動台27を介してCu製下側電極25が上側電極
24に対向した状態で設けられ、この下側電極25の斜
めに傾いた上面にシリンダヘッド本体2を、その接合面
部2aがシリンダヘッド本体2の上側となるように載せ
ることが可能とされている。上記移動台27の下側水平
部21bに対する水平方向位置と下側電極25の上面の
傾きとは調整可能とされており、バルブシート3を接合
する接合面部2aの中心軸が鉛直方向となりかつ上側電
極24の中心軸に略一致するように調整する。
【0041】上記上側及び下側電極24,25は、支持
本体21の鉛直部21c内に収納された溶接電源26に
それぞれ接続され、下側電極25上面におけるシリンダ
ヘッド本体2の接合面部2aにバルブシート3を載せた
状態でそのバルブシート3の上面部に上側電極24を当
接させてバルブシート3及びシリンダヘッド本体2を加
圧シリンダ22により加圧しつつ上記溶接電源26をO
Nすると、電流がバルブシート3からシリンダヘッド本
体2へと流れるようになっている。そして、上記上側電
極24のバルブシート3上面部に当接する下面部には、
図8に拡大して示すように、支持本体21の鉛直部21
cと反対側(支持本体21の開口側)に非通電部として
の切欠部28が形成されている。
【0042】上記シリンダヘッド本体2を上記接合装置
20の下側電極25上面に載せ、バルブシート3を接合
する接合面部2aの中心軸が上側電極24と略一致する
ように移動台26の水平方向位置と下側電極24上面の
傾きとを調整した後、その接合面部2a上にバルブシー
ト3を載せる。このとき、図4(a)に示すように、バ
ルブシート3の第1及び第2接合面部3a,3bの角部
のみがシリンダヘッド本体2の接合面部2aに当接して
いる状態にある。
【0043】次いで、加圧シリンダ22の作動により上
側電極24を下側に移動させて上記バルブシート3の上
面に当接させ、この状態からバルブシート3及びシリン
ダヘッド本体2の加圧を開始する。この加圧力は294
20N(3000kgf)程度が望ましい。そして、図
9に示すように、この加圧力を保持しながら、加圧開始
から約1.5秒経過後に溶接電源26をONしてバルブ
シート3及びシリンダヘッド本体2間の通電に伴う抵抗
発熱によりろう材層7のろう材を溶融させる。この電流
値は70kA程度が望ましい。
【0044】このとき、約95重量%のZn成分及び約
5重量%のAl成分からなるろう材の融点は、図11に
示すように、約380℃と極めて低く、通電開始から直
ぐに溶融する。また、上記抵抗発熱によりシリンダヘッ
ド本体2の接合面部2aは軟化し、図4(b)に示すよ
うに、加圧によりバルブシート3の第1接合面部3aと
第2接合面部3bとの角部がシリンダヘッド本体2の接
合面部2aを塑性流動させながらバルブシート3がシリ
ンダヘッド本体2に埋め込まれていく。このことで、シ
リンダヘッド本体2の接合面部2aの酸化被膜が確実に
破壊され、溶融したろう材のZn成分がシリンダヘッド
本体2側に液相拡散してAl−Znからなる溶融反応層
6を形成する(図5(b)参照)。
【0045】一方、図5(c)に示すように、加圧によ
りろう材層7のろう材が殆ど全てバルブシート3の第1
及び第2接合面部3a,3bとシリンダヘッド本体2の
接合面部2aとの間から上記酸化被膜や汚れと共に排出
される。このため、ろう材層7を介さずに拡散接合層5
及び溶融反応層6が直接的に接合され、その両層5,6
間で拡散がより一層促進される。しかも、両層5,6を
介することでFe−Alという脆い金属間化合物が生成
するのを有効に防止することができる。したがって、バ
ルブシート3とシリンダヘッド本体2とは、拡散接合層
5及び溶融反応層6を介した液相拡散状態で接合され、
その結合強度は非常に高くなる。また、ろう材層7が僅
かに残っていたとしても、そのろう材のZn比率は拡散
により減少し、その融点は500℃程度以上まで上昇す
る(図11参照)。このため、接合後は使用したろう材
の融点以上の耐熱性を有することになる。
【0046】さらに、バルブシート3の内部に、高電気
伝導率のCu系材料が溶浸されているので、焼結により
生じた内部の空孔がCu系材料で満たされ、加圧力の一
部が上記空孔を潰すのに使われるということはなく、加
圧力の全てが直接的にシリンダヘッド本体2の接合面部
2aを塑性流動させかつろう材を排出するのに使用され
ると共に、通電時にバルブシート3内部の発熱を抑制し
てろう材を有効に溶融させることができる。
【0047】また、支持本体21の上下水平部21a,
21bは片持ち状とされて、その上下水平部21a,2
1bの撓みにより加圧力は支持本体の開口側が低くな
り、その分だけ接触抵抗が高くなっているので、開口側
の発熱量が過大となり、アルミニウムが局部的に溶解し
てバルブシートとの隙間が生じることがある。これを防
止するため、図8(a)及び(b)に示すように、上側
電極24の下面部において支持本体21開口側に切欠部
28を形成してもよい。この場合、バルブシート3及び
シリンダヘッド本体2の支持本体21開口側に相当する
部分では電流値が小さくなる。このため、シリンダヘッ
ド本体2における支持本体21の開口側が局所的に溶融
してバルブシート3との間に隙間が生じるということは
ない。また、加圧シリンダ22のシリンダロッド23と
上側電極24との中心軸が一致しているので、それらが
一致していない装置に比べて上側電極24全体における
加圧力の差や上側電極24の水平方向位置の変化を小さ
くすることができ、切欠部28の切欠きの程度は少なく
て済むと共に、シリンダヘッド本体2の接合面部2aに
対するバルブシート3の芯ずれを防止することができ
る。尚、上記切欠部28を設ける代わりに上側電極24
の下面部に絶縁部材を貼り付けることでも、シリンダヘ
ッド本体2の局所的な溶融を防止することができる。
【0048】続いて、通電の開始から1.5〜2.5秒
経過後に溶接電源26をOFFして通電を停止すると、
バルブシート3はシリンダヘッド本体2の接合面部2a
に完全に埋め込まれた状態となる(図4(c)参照)。
このとき、加圧は停止しないでそのまま継続させる。す
なわち、溶融反応層6が完全に凝固するまで加圧力を保
持して、バルブシート3とシリンダヘッド本体2との熱
膨脹率が異なることによる各接合面部2a、3a,3b
での剥離や割れを防止する。
【0049】尚、図10に示すように、通電の停止と略
同時に加圧力を低下させるのがより望ましい。すなわ
ち、大きな加圧力では変形能が小さくなる凝固直後にお
いて各接合面部2a,3a,3bで割れが生じる可能性
が高いので、収縮変形に追従させ得る程度の加圧力まで
低下させて、凝固後の各接合面部2a,3a,3bでの
割れを確実に防止する。
【0050】その後、通電の停止から約1.5秒経過後
に加圧を停止することによりバルブシート3とシリンダ
ヘッド本体2との接合が完了する。続いて、同じシリン
ダヘッド本体2において同様の作業を繰り返して残り3
つの接合面部2a,2a,…に各バルブシート3を接合
する。
【0051】最後に、各バルブシート3の内周面部や上
面部等を切削加工することでバルブ当接面部3cを形成
する等して所定の形状に仕上げる。このことにより、シ
リンダヘッド本体2の各ポート2b開口周縁部に各バル
ブシート3が接合されたシリンダヘッド1が完成する。
【0052】したがって、上記基本形態では、バルブシ
ート3とシリンダヘッド本体2とを、通電に伴う発熱及
び加圧により、拡散接合層5及び溶融反応層6を介した
液相拡散状態で接合するようにしたので、接合強度が高
くかつ使用したろう材以上の耐熱性を有するシリンダヘ
ッド1を短時間で得ることができる。また、ろう材を溶
融しかつ排出することが可能なように加圧力や電流値を
設定するだけで済むので、高い接合強度が得られる条件
範囲が広い。しかも、焼ばめによる接合方法よりもバル
ブシート3を格段に小形化することができるので、2つ
のポート2b,2bの間隔を狭くしたりスロート径を大
きくしたりすることができる。さらに、断熱層が生じる
ことはなくてバルブ近傍の熱伝導率を向上させることが
でき、しかも、ポート2b,2b間に設けた冷却水通路
をバルブシート側により近づけることが可能であるの
で、バルブ近傍の温度を有効に低下させることができ
る。さらに、グロープラグやインジェクタをポート2
b,2b間に配設したとしても、その間の肉厚を十分に
確保することができる。よって、エンジンの性能、信頼
性及び設計の自由度を向上させることができる。
【0053】尚、上記基本形態では、各バルブシート3
を焼結により製造してその内部にCu系材料を溶浸する
ようにしたが、各バルブシート3内部の密度がある程度
確保されていれば、必ずしも溶浸する必要はない。ま
た、各バルブシート3を、焼結した後に鍛造を行って得
られる焼結鍛造材とすることにより、溶浸するのと同様
に、バルブシート3内部の空孔をなくすことができるの
で、ろう材を効果的に排出することができる。
【0054】(実施形態1)次に、上記基本形態を対象
として、通電電流をパルス電流とした本発明に係る実施
形態を、実施形態1として説明する。
【0055】図12に示すように、実施形態1では、バ
ルブシート3及びシリンダヘッド本体2の接合時におけ
る通電の制御方法が上記基本形態と異なる。
【0056】すなわち、この実施形態では、一定の電流
値で連続して電流を流すのではなく、大小の電流値の繰
り返しからなるパルス通電としたものである。このパル
ス通電の大きい側の電流値は約70kAで一定であり、
小さい側の電流値は0に設定している。また、大電流値
パルスの通電時間は0.25〜1秒であり、小電流値パ
ルスの通電時間(電流を流していない時間)は0.1〜
0.5秒程度である。さらに、大電流値パルス数は3〜
9パルス(図12では4パルス)が望ましい。尚、加圧
開始から最初の大電流値パルスの通電開始までの時間及
び最後の大電流値パルスの通電停止から加圧停止までの
時間は上記基本形態と同じ1.5秒である。
【0057】このようなパルス通電を行ったときのバル
ブシート3の温度変化を図13に示す。つまり、Fe系
材料からなるバルブシート3の熱容量はかなり小さいた
めに、バルブシート3の抵抗発熱による温度上昇が激し
く、特にその上下方向中央部では、上側電極24やシリ
ンダヘッド本体2への放熱が容易な上下端部に比べて放
熱し難く、最初の大電流値パルスの通電時には、バルブ
シート3及びシリンダヘッド本体2間の接触抵抗が高い
ので、抵抗発熱量も大きくてバルブシート3の上下方向
中央部の温度は、その最初の大電流値パルスの通電停止
時にはA1変態点以上となっている。この段階で、バル
ブシート3はシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込
まれた状態となっているので、通電を完全に停止するこ
とも可能であるが、通電を停止するとバルブシート3は
A1変態点以上の温度から急激に冷却されるので、その
上下方向中央部には焼きが入って硬さが上昇してしまう
ことになる。
【0058】そこで、温度が少し低下した時点で2回目
の大電流値パルスの通電を行う。このとき、最初の大電
流値パルスの通電時とは異なり、冶金的接合により接触
抵抗が小さくなって抵抗発熱量は減少し、バルブシート
3からシリンダヘッド本体2への放熱も行われやすいの
で、最初と同じ電流値であってもバルブシート3の温度
はそれ程上昇はせず、このことを繰り返すことにより、
徐冷されるため、バルブシートの硬さは殆ど上昇しな
い。
【0059】したがって、上記実施形態1では、パルス
通電によりバルブシート3の上下方向中央部の温度を徐
々に低下させるようにしたので、バルブシート3の硬さ
が大きく上昇することはなく、その内周面部を切削加工
するときの加工性の悪化を防止することができる。ま
た、バルブ当接面部3cが硬くなりすぎることによって
バルブが摩耗し易くなるのを有効に抑制することができ
る。
【0060】尚、上記実施形態1では、パルス通電の大
電流値を一定とし、小電流値を0としたが、これに限ら
ず、例えば、図14(a)に示すように、大電流値を段
階的に低下させていってもよく、図14(b)に示すよ
うに、小電流値を0とせずに大電流値と0との中間値に
設定してもよい。また、図14(c)に示すように、最
初の大電流値パルスの通電に続いて小電流値パルス(図
14(c)では0)を通電した後、電流値を時間に対し
て比例して減少させる連続通電に切り替えてもよく、最
初の大電流値パルスの通電停止後は、バルブシート3を
徐冷可能であれば、どのような通電制御を行ってもよ
い。
【0061】また、バルブシート3の上側電極24への
放熱を向上させるために、その上側電極24内に冷却水
を通して水冷するようにすることが望ましい。さらに、
図15に示すように、上側電極24の下部に、バルブシ
ート3の内周面部に対向する円筒状の突起部31を設
け、この突起部31の外周部に円周方向に略等間隔に設
けた複数のノズル32,32,…から上側電極24内の
冷却水をバルブシート3の内周面部に噴霧するようにし
てもよい。このことで、バルブシート3の上下方向中央
部を有効に冷却し、バルブシート3がA1変態点以上に
過熱されるのを防止することができる。
【0062】なお、上記の実施形態は、被接合金属部材
であるバルブシート3とベース部材であるシリンダヘッ
ド本体2とをパルス通電により液相拡散接合したもので
あるが、パルス通電による拡散接合は、液相拡散接合に
限定されるものではない。すなわち、被接合金属部材と
ベース部材とを固体のまま接合する固相拡散接合におい
て上記パルス通電を行ってもよい。
【0063】本実施形態に係る接合方法は、図7に示す
接合装置20の溶接電源26が、電極23,24間に上
記パルス電流を供給することによってなされる。つま
り、溶接電源26は、本発明でいうところのパルス電流
発生手段となる。
【0064】(実施形態2)実施形態2は、接合装置2
0が、バルブシート3の高さ方向の位置を検出するシー
ト位置検出手段としてのリミットスイッチ(図示せず)
を有しているものである。まず、本発明によるパルス通
電を適用する対象として、連続通電を行う実施形態につ
いて説明する。
【0065】図16は本発明によるパルス通電の適用対
象となる基本の実施形態を示し、バルブシート3及びシ
リンダヘッド本体2の接合時における通電の制御方法を
上記基本形態及び実施形態1と異ならせたものである。
【0066】すなわち、この実施形態では、接合装置2
0が、バルブシート3の高さ方向の位置を検出するシー
ト位置検出手段としてのリミットスイッチ(図示せず)
を有し、バルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど
完全に埋め込まれた状態となる接合位置で上記リミット
スイッチが作動するように構成されている。そして、通
電を開始した後、このリミットスイッチが作動すると、
通電開始時の初期電流値(約70kA)よりも小さい一
定の電流値に切り替えて通電するようになっている。そ
して、切り替え後の通電の停止は時間で行われ、初期電
流値の通電開始から1.5〜5秒で停止するようになっ
ている。
【0067】このようにバルブシート3がシリンダヘッ
ド本体2に殆ど完全に埋め込まれた状態で小さい電流値
に切り替えるという通電制御を行った場合の挙動につい
て説明する。
【0068】先ず、通電開始時には、上記実施形態1で
説明したように、バルブシート3はAl系材料からなる
シリンダヘッド本体2よりも格段に温度が上昇するの
で、熱膨張率(線膨脹係数)がシリンダヘッド本体2よ
りも小さいにも拘らず、熱膨張量は大きい。このため、
バルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋
め込まれた状態で通電を完全に停止すると、バルブシー
ト3の収縮量がシリンダヘッド本体2よりも大きいの
で、バルブシート3に引張の熱応力が生じる。
【0069】そこで、初期電流値よりも小さい電流値に
切り替えて通電を行うと、上記実施形態1と同様に、バ
ルブシート3の温度は徐々に低下していく。一方、シリ
ンダヘッド本体2の温度はバルブシート3からの熱によ
り上昇するので、バルブシート3とシリンダヘッド本体
2との温度差は小さくなる。この状態で、通電を停止す
れば、収縮量の差は小さくなり、バルブシート3に生じ
る熱応力を低減することができる。
【0070】したがって、上記実施形態では、バルブシ
ート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め込まれ
た状態で初期電流値よりも小さい電流値に切り替えるよ
うにしたので、バルブシート3及びシリンダヘッド本体
2の熱容量及び熱膨張率の差に起因して生じる熱膨張量
(収縮量)の差を小さくすることができる。よって、バ
ルブシート3に生じる引張の熱応力を低減し、その内周
面部に縦クラックが発生するのを防止することができ
る。
【0071】尚、上記実施形態では、リミットスイッチ
の作動による切替後の電流値を一定としたが、これに限
らず、例えば、図17(a)に示すように、切替後の電
流値を時間に対して比例するように低下させていっても
よい。
【0072】本発明に係る実施形態2は、図17(b)
に示すように、上記実施形態1と同様に、リミットスイ
ッチの作動後は大電流値が初期電流値よりも小さいパル
ス通電としたものである。なお、上記説明より明らかな
ように、実施形態1と同じ通電制御方法であっても、上
記と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】また、上記実施形態では、リミットスイッ
チによりバルブシート3の高さ方向の位置を検出して電
流値を切り替えるようにしたが、光センサ等の位置検出
手段を用いてもよく、位置を検出する代わりに時間で電
流値を切り替えるタイミングを制御してもよい。この場
合、通電開始から0.25〜1秒、望ましくは0.25
〜0.5秒で電流値を切り替える。この時間であればバ
ルブシート3がシリンダヘッド本体2に殆ど完全に埋め
込まれた状態で切り替わることになる。
【0074】さらに、バルブシート3をシリンダヘッド
本体2に接合する前に、シリンダヘッド本体2を200
℃程度まで予熱しておくことが望ましい。このようにす
れば、それらの温度差はより一層小さくなって、熱応力
を低く抑えることができる。この結果、バルブシート3
の縦クラックの発生を確実に防止することができ、リミ
ットスイッチの作動後における電流値の切替を不要にす
ることもできる。このようにシリンダヘッド本体2を予
熱するには、上記接合装置20を用いればよい。すなわ
ち、接合装置20の上側及び下側電極24,25をカー
ボン製のものと交換し、その両電極24,25でシリン
ダヘッド本体2を挟んだ状態にして溶接電源をONする
ことにより予熱を行う。このとき、両電極24,25が
カーボン製であるので、自己発熱が大きく、シリンダヘ
ッド本体2を効率良く予熱することができる。このよう
にすれば、インライン化対応も可能となる。
【0075】また、図18に示すように、バルブシート
3の上部には内周面側に向かって高さが高くなる上面テ
ーパ部3dを設ける一方、上側電極24の下部には上記
バルブシート3の上面テーパ部3dが略嵌合する円錐状
の凹部34を形成しておき、バルブシート3の上面テー
パ部3dを上側電極24の凹部34に略嵌合した状態で
加圧するようにしてもよい。すなわち、このように加圧
すれば、バルブシート3の縮径方向にも加圧力が作用す
るので、バルブシート3の温度が上昇してもその膨張を
防止することができ、シリンダヘッド本体2との温度差
が大きくても収縮量の差は小さくなる。よって、この場
合でも、バルブシート3に縦クラックが発生するのを防
止することができる。
【0076】さらに、図19に示すように、バルブシー
ト3の内周面側の応力集中を緩和すべく、内周面部と上
面部及び下面部との角部に面取り部3e,3eを形成す
ることが望ましい。
【0077】また、バルブシート3の内周面側は最終的
には削り取る部分であるので、その削り取る部分のみを
安価な材料として焼結するようにすることもできる。
【0078】(実施形態3)図20は、本発明の実施形
態3に係る接合装置20の要部を示し(尚、図7と同じ
部分についてはその詳細な説明は省略し、異なる箇所の
みを説明する)、通電経路を上記実施形態1〜2とは異
ならせたものである。
【0079】すなわち、この実施形態では、接合装置2
0は、上記実施形態1〜2と同様に、下側電極25を有
するが、この下側電極25は溶接電源26には接続され
ておらず、バルブシート3及びシリンダヘッド本体2を
加圧するためにのみ用いられている。そして、上側電極
24は2つの第1及び第2電極24a,24bからな
り、この第1電極24aは上記実施形態1〜2と同じも
のである。一方、上記第2電極24bは、第1電極24
aを上下移動させる加圧シリンダ22と同様の別の加圧
シリンダにより独立して上下移動可能とされている。ま
た、上記第2電極24bは、第1電極24aとは異な
り、カーボン製であり、この両電極24a,24bがそ
れぞれ溶接電源26に接続されている。
【0080】上記第1及び第2電極24a,24bは、
同じシリンダヘッド本体2において新たに接合する未接
合バルブシート3及び前回接合した既接合バルブシート
3の上面にそれぞれ当接するようになっている。そし
て、溶接電源26をONすると、電流は、順に第1電極
24a、未接合バルブシート3、シリンダヘッド本体
2、既接合バルブシート3及び第2電極24bを流れ、
溶接電源26に戻るようになっている。このことで、既
接合バルブシート3は、未接合バルブシート3の接合時
の戻り側の通電経路とされている。
【0081】したがって、上記実施形態3では、未接合
バルブシート3を接合するときに、既接合バルブシート
3側では抵抗発熱量が小さく既接合バルブシート3の内
部温度が未接合バルブシート3のように上昇することは
ないが、カーボン製の第2電極24bが自己発熱するの
で、上記実施形態1で説明したように、既接合バルブシ
ート3に焼きが入って硬さが上昇していたとしても、適
度に焼戻しを行うことが可能となる。しかも、インライ
ンで工程を増やすことなく既接合バルブシート3の焼戻
しを行うことができる。よって、接合時におけるバルブ
シート3の硬さの上昇という熱影響を効果的に抑えるこ
とができる。
【0082】尚、上記実施形態3では、第2電極24b
をカーボン製としたが、これは最も自己発熱量が大きい
材料であるので、既接合バルブシート3の温度が高くな
りすぎる場合には、第2電極24bを、例えば、鉄製又
は黄銅製として焼戻しを有効に行えるものを選択すれば
よい。
【0083】(実施形態4)図21は、本発明の実施形
態4に係る接合金属部材としてのディーゼルエンジンの
ピストン41を示し、このピストン41は、上記基本形
態と同様に、Al系材料からなるピストン本体42(ベ
ース部材)の上部外周部にFe系材料からなる耐摩環4
3(非接合金属部材)が、またピストン本体42の上部
中央部に設けた燃焼室42a内の壁部表面部にFe系の
遮熱部材44(非接合金属部材)がそれぞれ接合されて
なる。
【0084】すなわち、従来は、耐摩環43を鋳ぐるん
でピストン本体42を鋳造しているが、ピストン本体4
2をT6熱処理してその強度を向上させようとしても、
耐摩環43を鋳ぐるんだ状態ではFe−Alという脆い
金属間化合物が生じるので、T6熱処理を行うことは不
可能である。しかし、この実施形態では、予めピストン
本体42をT6熱処理しておき、そのピストン本体42
に耐摩環43を接合することができる。また、たとえピ
ストン本体42に耐摩環43を接合した後にT6熱処理
したとしてもその耐熱性は良好であり、Fe−Alは生
じ難いので、問題はない。このため、ピストン41の耐
摩耗性及び強度の両方を向上させることができる。
【0085】一方、ピストン本体42の燃焼室42a内
の壁部には、特に角隅部にクラックが生じ易いという問
題がある。しかし、この実施形態では、燃焼室42a内
のリップ部に強化部材44、例えばオーステナイト系ス
テンレス鋼などが接合されているので、燃焼室42a内
の壁部にクラックが発生するのを防止することができ
る。
【0086】(実施形態5)図22は、本発明の実施形
態5に係る接合金属部材としてのエンジンのシリンダブ
ロック51の要部を示し、このシリンダブロック51
は、Al系材料からなるシリンダブロック本体52(ベ
ース部材)のウォータージャケット52aの上部にFe
系材料からなるリブ部材53(非接合金属部材)が接合
されてなる。尚、54は気筒内周面部に嵌め込まれた鋳
鉄製のライナである。
【0087】すなわち、従来は、シリンダブロック51
の剛性を向上させるために、そのシリンダブロック本体
52の鋳造時に砂中子を使用してウォータージャケット
部の上部にリブを一体で形成しているが、この方法で
は、鋳造時のサイクルタイムが長くなり、生産性が悪い
という問題がある。しかし、この実施形態では、シリン
ダブロック本体52の鋳造を容易にしつつ、リブ部材5
3を短時間でシリンダブロック本体52のウォータージ
ャケット52aの上部に接合することができ、シリンダ
ブロックの剛性を向上させることができる。このため、
気筒内周面部のライナ54の変形を防止することがで
き、LOCやNVH等のエンジン性能を向上させること
ができる。また、ライナレスにすることも可能となる。
【0088】
【実施例】次に、具体的に実施した実施例について説明
する。先ず、ベース部材として、図23に示すように、
Al合金鋳物(JIS規格H5202に規定されている
AC4D)で試験片61を鋳造した。そして、この試験
片61に対してT6熱処理を施した。
【0089】続いて、表1に示すように、ろう材コーテ
ィング方法、シート形状及び第1接合面部のテーパ角θ
1を異ならせて5種類のFe系バルブシートを作製した
(実施例1〜5)。
【0090】この表1において、ろう材コーティング方
法の欄における「Friction」とは、バルブシー
トの表面部に拡散接合層及びろう材層を形成する際、ろ
う材を擦りつけることによりコーティングを行う方法の
ことである。一方、「超音波」とは、上記基本形態で説
明したように、超音波メッキによりろう材のコーティン
グを行う方法のことである。また、シート形状の欄にお
ける「薄肉」とは、図24に示すように、バルブシート
が最終形状に近い形状をして肉厚が薄いことをいう。一
方、「厚肉」とは、図25に示すように、上記実施形態
と同様の形状をして肉厚が厚いことをいう。
【0091】尚、バルブシートの材料は、表2に示す成
分のものを使用した。この表2において、数値は重量%
であり、TCとは、総炭素量(遊離炭素(黒鉛)とセメ
ンタイトの炭素との合計量)のことである。
【0092】また、ろう材には、95重量%のZn成
分、4.95重量%のAl成分及び0.05重量%のM
g成分からなるものを使用した。
【0093】さらに、各バルブシートの内部にはCu系
材料を溶浸し、表面にはCuメッキを施した。
【0094】上記実施例1〜5の各バルブシートを、上
記基本形態と同様にして、接合装置により上記試験片6
1に接合した。この接合時における加圧力及び電流値
は、表1に示す値に設定した。尚、電流値については、
加圧力の変化等によりバルブシート及び試験片61間の
接触抵抗が変化してバルブシートの埋め込み深さが変わ
るので、略同一埋め込み深さとなるように設定してい
る。
【0095】また、比較のために、厚肉形状でかつθ1
=0.52rad(30°)のバルブシート(表面にC
uメッキしたもの)を、加圧力及び電流値をそれぞれ2
9420N(3000kgf)及び70kAとして固相
拡散接合(圧接接合)した(比較例)。
【0096】次に、上記実施例1〜5及び比較例のバル
ブシートの接合強度を測定した。すなわち、図26に示
すように、試験片61を、バルブシート62の接合した
側が下側となるように治具台63の上面に置き、このと
き、バルブシート62がその治具台63に接触しないよ
うに、治具台63の略中央部に設けた貫通孔63aの上
側に位置させる。そして、試験片61の貫通孔61aの
上側から円筒状の加圧治具64を挿入してバルブシート
62を押し、バルブシート62が試験片61から抜けた
ときの抜き荷重を測定する。この抜き荷重が接合強度に
相当する。
【0097】上記抜き荷重測定試験の結果を図27に示
す。この結果、実施例1と実施例2とを比較すること
で、超音波メッキによりバルブシートの表面部に拡散接
合層及びろう材層を形成する方が、ろう材を擦りつける
ことによりコーティングを行う方法よりも接合強度が向
上することが判る。これは、試験後のバルブシートの表
面には、実施例2においては後述の如く拡散接合層が残
っていた(図30参照)のに対し、実施例1においては
ろう材層や拡散接合層の痕跡が殆ど認められなかったこ
とから、実施例1では拡散接合層が完全に形成されてい
ないためと推定することができる。
【0098】ここで、上記実施例2において、超音波メ
ッキした直後のバルブシート表面部の顕微鏡写真(倍率
約180倍)を図28に、また接合後におけるバルブシ
ート及び試験片61の接合面部の顕微鏡写真(倍率約3
60倍)を図29に、さらに抜き荷重測定試験後のバル
ブシート表面部の顕微鏡写真(倍率約360倍)を図3
0にそれぞれ示す。図28において、上側がバルブシー
トであり、その下側にはCuメッキ層ではなく薄い拡散
接合層を介してろう材層が形成されている。尚、バルブ
シート内部には、Cu系材料が溶浸された空孔が存在す
ることが判る。また、図29において、上側のバルブシ
ートと下側の試験片61との間には隙間がなくて拡散接
合層及び溶融反応層が明確に存在している。さらに、図
30において、バルブシートの表面部(下面部)には薄
く拡散接合層が残っていることが判る。
【0099】また、実施例2と実施例3とを比較するこ
とにより、厚肉形状のバルブシートの方が薄肉形状より
も抜き荷重が大きくなることが判る。これは、実施例2
のものは、バルブシートの各角部等に変形が生じている
ことから、変形によって接合面部に作用する実際の加圧
力が低下したためと推定することができる。
【0100】そして、実施例3と実施例4とを比較する
ことにより、第1接合面部のテーパ角θ1が大きい実施
例4の方が、上記基本形態で説明したように、酸化皮膜
破壊作用効果が優れていて、接合強度は大きくなること
が判る。
【0101】さらに、実施例4と実施例5とを比較する
と、加圧力が大きい実施例5の方が接合強度は高くなる
ことが判る。しかも、加圧力を29420N(3000
kgf)とすることで、比較例のものよりも接合強度が
格段に向上することが判る。
【0102】ここで、上記実施例5において、接合後に
おけるバルブシート及び試験片61の接合面部の電子顕
微鏡写真(倍率約10000倍)を図31に示す。この
図において、左側がバルブシート(白く見える部分を含
む)であり、右側が試験片61である。そして、その間
の灰色に見える部分が拡散接合層及び溶融反応層であ
る。この両層の厚みは約1μmであることが判る。尚、
この両層の元素を分析すると、Fe、Zn及びAlがそ
れぞれ検出された。
【0103】上記加圧力の影響に関してさらに詳細に調
べるために、ろう材コーティング方法、シート形状及び
第1接合面部のテーパ角θ1を上記実施例4,5と同じ
にして加圧力を9807N(1000kgf)、147
10N(1500kgf)及び29420N(3000
kgf)にそれぞれ設定してバルブシートを試験片61
に接合し、上記最初に行った抜き荷重測定試験と同様
に、その抜き荷重を測定した。
【0104】また、加圧力が9807N(1000kg
f)のものと29420N(3000kgf)のものと
で接合後の試験片61の硬さを測定した。この硬さの測
定は、バルブシートの第1接合面部と第2接合面部との
角部(図33において接合面部からの距離=0の点)か
ら試験片61の外周側に向かってバルブシートが接合さ
れた側と反対側に約0.79rad(45°)傾いた方
向に沿って所定の距離ごとに行った。
【0105】上記抜き荷重測定試験の結果を図32に、
また硬さ測定試験の結果を図33にそれぞれ示す。この
ことで、加圧力が大きいほど接合強度は高く、高加圧力
の方が試験片61の接合面部近傍の硬さが大きいことが
判る。これは、高加圧力の方が接触抵抗が低くて発熱量
が小さい分、試験片61の軟化が抑制されているからで
あり、軟化が抑えられると、塑性流動が確実に行われて
酸化皮膜の破壊作用効果が高まると共に、ろう材の排出
も確実に行われるためである。
【0106】次いで、パルス通電の効果を調べるため
に、パルス通電を行うことによりバルブシートを試験片
61に接合した。このパルス通電の大電流値及び小電流
値はそれぞれ70kA及び0とした。また、大電流値パ
ルスの通電時間は0.5秒とし、小電流値パルスの通電
時間は0.1秒とした。さらに、大電流値パルス数は6
パルスとした。一方、比較のために、連続通電(60k
Aの電流値で2秒間通電)によりバルブシートを試験片
61に接合した。尚、加圧力はどちらも29420N
(3000kgf)とした。
【0107】そして、パルス通電及び連続通電により接
合したものについて、各々、バルブシートの上下両端部
(A部)及び上下方向中央部(B部)における接合前及
び接合後の硬さ、試験片61においてバルブシートの第
1接合面部と第2接合面部との角部から該試験片61の
外周側に向かってバルブシートが接合された側と反対側
に約45°傾いた方向に沿った所定距離ごとの硬さ並び
に抜き荷重を測定した。
【0108】上記接合前及び接合後の硬さ測定試験の結
果を図34に示す。このことで、連続通電により接合し
たものは、特に上下方向中央部(B部)の硬さが接合後
に非常に高くなるのに対し、パルス通電により接合した
ものは、徐冷により焼きが入らず、硬さが殆ど上昇して
いないことが判る。
【0109】また、接合面部からの距離による硬さ測定
試験の結果を図35に示す。この結果、パルス通電によ
り接合したものでは、バルブシートからの熱を受けるこ
とにより試験片61の硬さが低くなっていることが判
る。
【0110】さらに、抜き荷重測定結果を図36に示
す。以上のことから、パルス通電により、バルブシート
内部の徐冷を行って硬さが上昇するのを抑えつつ、試験
片61への放熱によりバルブシート及び試験片61の温
度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、し
かも、接合強度を向上させることができる。
【0111】続いて、パルス通電においてバルブシート
が試験片61にどのように埋め込まれていくかを調べる
ために、加圧開始からの時間に応じてその埋め込み量y
(図37参照)を測定した。このとき、パルス通電の大
電流値は68kAとし、小電流値は0とした。また、大
電流値パルスの通電時間(H)、小電流値パルスの通電
時間(C)及び大電流値パルス数(N)は可変とし、基
本条件では、それぞれ0.5秒、0.1秒及び6パルス
とした。そして、この基本条件に対していずれか1つの
みを変えて試験を行った(変更条件については図38参
照)。
【0112】上記埋め込み量測定試験の結果を図38に
示す。このことより、最初の大電流値パルスの通電によ
り殆ど埋め込みが完了し、後の通電では埋め込みは進行
していないことが判る。また、この試験の設定条件の範
囲では、埋め込み量は殆ど変わらない。但し、大電流値
パルスの通電時間が1秒と長い場合は、他の場合よりも
最初の大電流値パルスの通電のときから埋め込み量が僅
かに大きく、パルス数が9パルスと多い場合は、途中か
ら試験片61が軟化して埋め込みが進行することが判
る。したがって、最初の大電流値パルスの通電ではバル
ブシートの埋め込みが行える条件に、また2回目以降の
大電流値パルスの通電ではバルブシート内部の徐冷及び
シリンダヘッド本体への放熱が行える条件にそれぞれ設
定すればよい。
【0113】最後に、バルブシートを焼結鍛造材とし、
これを29420N(3000kgf)の加圧力でパル
ス通電により試験片61に接合した。このとき、パルス
通電の大電流値は60kAとし、小電流値は0とした。
また、大電流値パルスの通電時間、小電流値パルスの通
電時間及び大電流値パルス数を、それぞれ0.5秒、
0.1秒及び4パルスとした。尚、比較のために、Cu
系材料で溶浸した焼結材からなるバルブシートを同様に
試験片61に接合した。但し、パルス通電の大電流値は
53kAとした。そして、バルブシートが焼結鍛造材の
ものと溶浸した焼結材のものとについて、試験片61に
おいてバルブシートの第1接合面部と第2接合面部との
角部から該試験片61の外周側に向かってバルブシート
が接合された側と反対側に約0.79rad(45°)
傾いた方向に沿った所定距離ごとの硬さを測定した。
【0114】この結果を図39に示す。このことより、
溶浸した焼結材の方が試験片61内部の硬さが低いこと
が判る。これは、Cu系材料の溶浸によりバルブシート
内部の発熱が抑制されて接合面部において発熱が有効に
行われたために、試験片61が軟化したからである。し
かし、バルブシートが焼結鍛造材であっても接合は良好
に行われている。このことは、シート及び試験片61の
接合面部の顕微鏡写真(図40では倍率約50倍、図4
1では倍率約400倍)からも判る。これは、鍛造によ
りバルブシート内部の空孔が潰されて、溶浸したのと同
様の効果を有するからである。
【0115】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1または7
に記載の発明では、第1の金属部材を第2の金属部材の
接合面に当接させた状態で加圧し、大小の電流値の繰り
返しからなるパルス電流で通電加熱することにより、両
部材を拡散接合することとしている。そのため、最初の
大電流値パルスの通電時には、両部材間に大きな抵抗発
熱が生じ、両部材が拡散接合される一方、2回目以降の
大電流値パルスの通電時では、両部材の冶金的接合によ
る接触抵抗の低下により抵抗発熱量が減少し、金属部材
は徐冷される。その結果、金属部材の硬さの上昇が抑制
される。従って、加工性等に優れ、種々の用途に便利な
金属部材を得ることができる。
【0116】請求項2または8に記載の発明では、予め
第1の金属部材の表面部に、ろう材と第1の金属部材と
の拡散層を介してろう材層を形成しておき、この第1の
金属部材と第2の金属部材とを、該両部材間の通電に伴
う発熱及び加圧により、ろう材及び第2の金属部材の拡
散層を形成しかつ溶融したろう材を両部材の接合面部間
から排出しながら、上記両拡散層を介した液相拡散状態
で接合するようにした。したがって、インラインの作業
で、接合強度が高くかつ使用したろう材以上の耐熱性を
有する金属部材が得られる。
【0117】請求項3に記載の発明では、第1の金属部
材をFe系材料とし、第2の金属部材をAl系材料と
し、ろう材をZn系材料としたことにより、請求項2の
発明における接合方法として材料の組合せの最適化を図
ることができる。
【0118】請求項4に記載の発明では、第1の金属部
材とろう材との拡散層は、超音波振動を付与して第1の
金属部材の表面部にろう材をコーティングすることによ
り形成するようにしたので、簡単な方法で拡散層を確実
に形成することができ、接合強度のより高い金属部材が
得られる。
【0119】請求項5に記載の発明では、第1の金属部
材と第2の金属部材とを接合する前に、予め第1の金属
部材の内部に高電気伝導率材料を溶浸するようにしたこ
とにより、金属部材の接合強度を効果的に向上させるこ
とができる。
【0120】請求項6または9に記載の発明では、第1
の金属部材と第2の金属部材との拡散接合を、第2の金
属部材の接合面部を塑性流動させて行うようにしたこと
により、簡単な方法で接合層を確実に形成することがで
き、接合金属部材の接合強度をさらに向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本形態に係る接合金属部材としての
エンジンのシリンダヘッドの要部を示す断面図である。
【図2】バルブシート及びシリンダヘッド本体の接合状
態を模式的に示す断面図である。
【図3】バルブシートの接合前の形状を示す断面図であ
る。
【図4】バルブシートのシリンダヘッド本体への接合手
順を示す説明図である。
【図5】バルブシート及びシリンダヘッド本体の接合過
程を模式的に示す説明図である。
【図6】ろう材浴中のバルブシートの表面部に超音波振
動の付与によりろう材をコーティングしている状態を示
す説明図である。
【図7】接合装置を示す側面図である。
【図8】(a)は図7のVIII方向矢示図であり、(b)
は上側電極の下面部の平面図である。
【図9】加圧及び通電の制御方法を示すタイミングチャ
ートである。
【図10】加圧制御方法の他の例を示す図9相当図であ
る。
【図11】Al−Zn合金の状態図である。
【図12】実施形態1を示す図9相当図である。
【図13】パルス通電によるバルブシート内部の温度変
化を示すグラフである。
【図14】通電制御方法の他の例を示す図9相当図であ
る。
【図15】バルブシート内周面部に冷却水を噴霧してい
る状態を示す断面図である。
【図16】実施形態2を示す図9相当図である。
【図17】通電制御方法の他の例を示す図9相当図であ
る。
【図18】バルブシートを縮径方向にも加圧してその熱
膨張を抑えるようにしている状態を示す断面図である。
【図19】バルブシートの他の形状例を示す図3相当図
である。
【図20】実施形態3に係る接合装置によりバルブシー
ト及びシリンダヘッド本体を接合している状態を示す要
部断面図である。
【図21】実施形態4に係る接合金属部材としてのエン
ジンのピストンを示す断面図である。
【図22】実施形態5に係る接合金属部材としてのエン
ジンのシリンダブロックの要部を示す断面図である。
【図23】試験片を示す断面図である。
【図24】薄肉形状のバルブシートを示す断面図であ
る。
【図25】厚肉形状のバルブシートを示す断面図であ
る。
【図26】抜き荷重測定試験の要領を示す概略断面図で
ある。
【図27】実施例1〜5及び比較例のバルブシートにお
いて抜き荷重測定試験の結果を示すグラフである。
【図28】超音波メッキした直後のバルブシート表面部
の状態を示す顕微鏡写真である。
【図29】実施例2におけるバルブシート及び試験片の
接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図30】抜き荷重測定試験後のバルブシート表面部の
状態を示す顕微鏡写真である。
【図31】実施例5におけるバルブシート及び試験片の
接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図32】接合時加圧力と抜き荷重との関係を示すグラ
フである。
【図33】試験片の接合面部からの距離による硬さの変
化を示すグラフである。
【図34】連続通電及びパルス通電においてバルブシー
トの接合前後の硬さの変化を示すグラフである。
【図35】連続通電及びパルス通電において試験片の接
合面部からの距離による硬さの変化を示すグラフであ
る。
【図36】連続通電及びパルス通電において抜き荷重測
定試験の結果を示すグラフである。
【図37】埋め込み量測定試験における埋め込み量yを
示す説明図である。
【図38】加圧開始からの時間と埋め込み量yとの関係
を示すグラフである。
【図39】バルブシートが焼結鍛造材のものと溶浸した
焼結材のものとにおいて試験片の接合面部からの距離に
よる硬さの変化を示すグラフである。
【図40】焼結鍛造材からなるバルブシートと試験片と
の接合状態を示す顕微鏡写真である。
【図41】焼結鍛造材からなるバルブシートと試験片と
の接合状態をさらに拡大して示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】 1 シリンダヘッド 2 シリンダヘッド本体(第2の金属部材) 2a 接合面部 2b ポート 3 バルブシート(第1の金属部材) 3a 第1接合面部 3b 第2接合面部 5 拡散接合層 6 溶融反応層 7 ろう材層 14 ろう材浴
【表1】
【表2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F01L 3/22 F01L 3/22 B F02F 1/24 F02F 1/24 S // B23K 103:20 (72)発明者 杉本 幸弘 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 柴田 伸也 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の金属部材を第2の金属部材の接合
    面に当接させた状態で加圧及び通電加熱することによっ
    て、該両部材を拡散接合する金属部材の接合方法であっ
    て、 通電電流を、大小の電流値の繰り返しからなるパルス電
    流としたことを特徴とする金属部材の接合方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の金属部材の接合方法に
    おいて、 予め第1の金属部材の表面部に、前記両金属部材よりも
    融点の低いろう材と該第1の金属部材との拡散層を形成
    すると共に、該第1の金属部材の表面部に該拡散層を介
    して上記ろう材層を形成しておき、 上記第1の金属部材と第2の金属部材とを加圧、及び上
    記ろう材の融点以上の温度への通電加熱を行うことによ
    り、上記ろう材と第2の金属部材との拡散層を形成しか
    つ溶融したろう材を該両部材の接合面部間から排出しな
    がら、該両部材を上記両拡散層を介した液相拡散状態で
    接合することを特徴とする金属部材の接合方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の金属部材の接合方法に
    おいて、 第1の金属部材は、Fe系材料からなり、 第2の金属部材は、Al系材料からなり、 ろう材は、Zn系材料からなることを特徴とする金属部
    材の接合方法。
  4. 【請求項4】 請求項2〜3のいずれか一つに記載の金
    属部材の接合方法において、 第1の金属部材とろう材との拡散層は、該第1の金属部
    材の表面部に超音波振動を付与してろう材をコーティン
    グすることにより形成することを特徴とする金属部材の
    接合方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一つに記載の金
    属部材の接合方法において、 第1の金属部材を第2の金属部材に当接させる前に、予
    め該第1の金属部材の内部に高電気伝導率材料を溶浸す
    ることを特徴とする金属部材の接合方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一つに記載の金
    属部材の接合方法において、 第1の金属部材と第2の金属部材との拡散接合は、第2
    の金属部材の接合面部を塑性流動させて行うことを特徴
    とする金属部材の接合方法。
  7. 【請求項7】 第1の金属部材を第2の金属部材に拡散
    接合する金属部材の接合装置であって、 上記第1の金属部材を上記第2の金属部材の接合面に当
    接させ、該接合面に圧力が加わるように該両部材を加圧
    する加圧手段と、 上記両部材のいずれか一方から他方に向かって上記接合
    面を通過して流れる電流を流す電極と、 上記加圧手段によって上記両部材を加圧した状態におい
    て、大小の電流値の繰り返しからなるパルス電流を上記
    電極に供給するパルス電流発生手段とを備えていること
    を特徴とする金属部材の接合装置。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の金属部材の接合装置に
    おいて、 パルス電流発生手段は、予め拡散層、及び上記両金属部
    材よりも融点の低いろう材層が形成された第1の金属部
    材を第2の金属部材の接合面に加圧手段によって当接加
    圧させた状態で上記ろう材の融点以上の温度への通電加
    熱を行うことにより、ろう材と第2の金属部材との拡散
    層を形成しかつ溶融したろう材を該両部材の接合面部間
    から排出しながら、該両部材を上記両拡散層を介した液
    相拡散状態で接合するように構成されていることを特徴
    とする金属部材の接合装置。
  9. 【請求項9】 請求項7〜8のいずれか一つに記載の金
    属部材の接合装置において、 パルス電流発生手段は、第1の金属部材を第2の金属部
    材の接合面に当接させた状態で第2の金属部材の接合面
    部が塑性流動しながら該両部材が拡散接合するように加
    圧手段によって加圧された状態で通電加熱を行うように
    構成されていることを特徴とする金属部材の接合装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113649665A (zh) * 2021-08-13 2021-11-16 天津大学 一种瞬态电流键合抑制复合钎料中增强相团聚与上浮的方法

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CN113649665A (zh) * 2021-08-13 2021-11-16 天津大学 一种瞬态电流键合抑制复合钎料中增强相团聚与上浮的方法

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