JPH1190217A - 電子照射による濡れ性の制御方法 - Google Patents

電子照射による濡れ性の制御方法

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JPH1190217A
JPH1190217A JP26916497A JP26916497A JPH1190217A JP H1190217 A JPH1190217 A JP H1190217A JP 26916497 A JP26916497 A JP 26916497A JP 26916497 A JP26916497 A JP 26916497A JP H1190217 A JPH1190217 A JP H1190217A
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electron irradiation
water
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Koji Miura
浩治 三浦
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来と異なる新規な手法により、材料表面の
濡れ性を制御することのできる方法を提案する。 【解決手段】 材料の表面に電子を照射して、材料表面
の表面結晶格子状態を保ちながら水に対する濡れ性を制
御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、表面コーティン
グ、表面改質、トライボロジーなどに関わる、材料の濡
れ性を制御することのできる方法を提案しようとするも
のであり、防曇ガラスや微細構造のケミカルエッチング
といった分野に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】材料表面の、水に対する濡れ性の如何
は、たとえば、ガラスなどの分野においいてはこのガラ
スの曇り易さに関係するものであり、また、材料を水溶
液で洗浄する場合においては、その洗浄のし易さにも関
わってくるので、産業上からも重要な特性だといえる。
【0003】かかる材料表面の濡れ特性は、マクロ的に
は材料表面と水との表面張力により左右され、一般に、
材料と水との接触角が大きいほどはっ水(溌水)性があ
るとされている。したがって、表面の濡れ特性を変える
ために、一般には、疎水性や親水性のある材料を選択す
ることが行われている。
【0004】しかし、疎水性や親水性のある材料を試行
錯誤的に調査するのは、膨大な労力を要するばかりか、
かかる化学組成を変えることによる経験的な手法により
要求する濡れ特性が得られたとしても、材料の表面特性
として求められる他の特性を全て満足させるとは限らな
かった。たとえば、表面硬度や摩擦特性などが要求どお
りにならないことが多かった。また、材料内部と材料表
面との物性が必ずしも同じにはならないので、いろいろ
な問題が多く残されていた。例えば、 SiOx やSiNx
のガラス材の表面硬度や摩擦特性の制御は表面組成が代
わりやすいため大変難しいという問題があった。
【0005】したがって、材料内部の力学的性質を維持
しながら、表面特性のみを変えるという視点から、表面
コーティング技術が盛んに行われている。例えば、赤外
線反射特性をもつガラスや、表面伝導ガラス等が開発さ
れている。また、表面の濡れ特性を変えるためには、例
えば疎水性コーティングとしてフッ素系材料のコーティ
ングが行われている。しかし、表面の濡れ特性の機構は
複雑なため、コーティング技術としては不十分であり、
また、材料の表面特性として求められる他の特性を全て
満足させ得るとは限らなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、従来とは
全く異なる、新規な手法により、材料表面の濡れ性を制
御することのできる方法を提案するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、材料の表面
に電子を照射して、材料表面の表面結晶格子状態を保ち
ながら水に対する濡れ性を制御することを特徴とする電
子照射による濡れ性の制御方法である。この発明は、例
えば材料としてアルカリハライド、具体的にはNaF に適
用することができ、また、電子の照射量が、1nm平方当
たり1〜2個、照射エネルギーが30eV以下であること
は、より好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】従来、材料と水との濡れ性に関す
るメカニズムについては、必ずしも明らかでなかった
が、発明者は、この濡れ性に関する研究を進めたとこ
ろ、材料表面のミクロな視点における水の吸着状況が、
マクロな状況と直接関連性を有することを発見したので
ある。
【0009】そして、このミクロレベルでの吸着状況
は、材料表面に低照射量、低エネルギーの電子を照射す
ることによって変化させることができること、ひいては
この電子照射により、材料の濡れ性を制御することがで
きることを新たに見出したのである。しかも、この電子
照射は、低照射量、低エネルギーであるため、表面結晶
構造は変化しないままで濡れ性を変化させることができ
ることも併せて明らかとなった。
【0010】このように、この発明では、電子照射によ
り表面の結晶構造を変化させずに、表面の濡れ性を変化
させる点が肝要である。これにより、濡れ特性以外の表
面特性を最適にしておいてから、濡れ性をこの発明によ
り制御することができるので、各特性について良好な結
果が得られるという利点が生じる。
【0011】この発明に従い、電子照射により濡れ性を
制御できるのは、次の理由によるものと考えられる。発
明者らが走査型フォース顕微鏡を用いた最近の研究によ
り、ミクロレベル(およそ10nmレベル)における材料表
面への水の吸着形態は、H2O −下地(材料)表面の相互
作用の強さと、H2O −H2O の相互作用の強さとの関係に
より説明することができることが明らかとなった。
【0012】すなわち、材料としてNaF を用いた研究に
おいて、その(001)面上における水の吸着様式は、
Volmer-Weber機構の成長形態を示すLiF(001)型と、単層
程度の一様な吸着を示すNaCl(001) 型と丁度中間の様式
を示したのである。この結果は、NaF(001)のH2O −下地
表面の相互作用の強さと、H2O −H2O の相互作用の強さ
がほぼ等しいことから説明することができるのである。
この結果から、H2O −下地表面の相互作用の強さがH2O
−H2O の相互作用の強さより大きい場合には、一様に濡
れ、逆の場合は濡れにくいといえる。
【0013】ここに、NaF(001)表面に、電子照射を、4
nm×4nm当たり30eVのエネルギーを持つ数個の電子量で
照射したところ、NaF(001)の水の吸着様式は、H2O −H2
O の相互作用の強さがH2O −下地表面の相互作用の強さ
よりも強い場合のVolmer-Weber機構による成長形態(Li
F(001)型)に移行したのである。これは、電子照射によ
りH2O −下地表面の相互作用の強さがH2O −H2O の相互
作用の強さがより弱くなったためと考えられる。なお、
上記の電子照射では下地表面の結晶格子は維持されてい
た。
【0014】かくして、電子照射により、下地表面の表
面結晶格子を保ちながら、材料表面のH2O −下地表面の
相互作用の強さとH2O −H2O の相互作用の強さとの関係
を変化させることができるので、ミクロレベルでの水の
吸着状況を制御し、ひいては材料の濡れ性を制御できる
ものと考えられる。
【0015】この発明を適用できる材料は、NaF 、LiF
、NaClといったアルカリハライドばかりでなく、ガラ
ス材料として重要な SiNx や SiOx それで金属酸化物の
ように、電子照射により表面の相互作用が変化できるも
のであれば材料を問わない。
【0016】電子照射の照射量、エネルギーは、材料に
もよるが、1nm当たり1〜2個、照射エネルギーが30eV
以下であることが好ましい。1nm当たり1個より少ない
照射量では水の吸着状況を変えにくいという問題があ
り、また、2個よりも多い照射量では、表面格子の維持
が困難になるといった不具合を生じる。更に、照射エネ
ルギーが30eVより大きいと表面原子の脱離等が起こり、
表面組成が変わるという点で好ましくない。
【0017】この発明により材料の表面に電子を照射し
て、材料表面の表面結晶格子状態を保ちながら水に対す
る濡れ性を制御することことができるため、濡れにくい
ガラスの表面改質の開発や、傷のつきにくい材料開発に
つながる摩擦特性の改変に役立つ。具体的には、物性面
から表面コーティングに有効な材料を選択し、このこの
表面コーティング材料の水に対する表面相互作用エネル
ギーを調べ、表面に対する電子照射量を材料に併せて評
価し、その電子照射量で照射を行えばよい。
【0018】以上、「水に対する濡れ性」について述べ
たが、水同様の相互強さを有する水溶液に対する濡れ性
の制御にもこの発明を適用できるのはいうまでもない。
さらに、この発明は、電子照射により材料表面の濡れ性
を局所的に変化させることができるため、水溶液による
材料表面の局所的な洗浄、エッチングに適用することが
できる。
【0019】
【実施例】NaF 単結晶を用意し、このNaF の(001) 面に
10-6Torrの真空中にて4nm×4nm当たり数個の電子を30
eVのエネルギーで照射した。得られた試料について、室
温、湿度30〜50%の大気雰囲気中にて、走査型フォース
顕微鏡(Scanning Force Microscope :SFM)を用いて表
面観察を行った。
【0020】電子照射を行った試料表面の水の吸着状態
を、電子照射を行わなかった試料との対比で図1に示
す。図1(a) が電子照射を行わなかった試料の例であ
り、同図(b) が電子照射を行った試料の例である。電子
照射をしない場合、NaF (001) 表面では厚みの違う水膜
ができるのに対し、電子照射した表面では、液滴模様が
みられる。また、試料表面の結晶格子構造を図2に示
す。同図(a) が電子照射を行わなかった試料の例であ
り、同図(b) が電子照射を行った試料の例である。図2
から、表面の結晶構造は電子照射をしてもほとんど変化
が見られないことがわかる。なお、表面の摩擦特性は、
わずかに変化した。
【0021】以上のような特性の変化は、電子照射によ
って、表面にFセンターが形成され、これと大気中の水
との反応でOHセンターが表面に形成され、これにより
H2O−下地表面の相互作用の強さが弱くなったことによ
るものと考えられる。
【0022】以上、材料がNaF の場合について説明した
が、この発明は、実施例に開示した材料に限定されるも
のではなく、電子照射により、表面結晶格子状態を維持
しつつ、 H2O下地表面の相互作用の強さを変化させるこ
とができる全ての材料に適用することができる。実際の
製品化の際は、バルク材に有効な材料の表面コーティン
グを行った後、電子照射により濡れ特性や摩擦特性を変
える手法をとれば良い。
【0023】
【発明の効果】この発明の電子照射による濡れ性の制御
方法は、材料の表面に電子を照射して、材料表面の表面
結晶格子状態を保ちながら水に対する濡れ性を制御とい
う、従来とは全くことなる方法により濡れ性を制御する
ことができるので、材料の表面特性として求められる他
の特性を全て満足させ得る表面コーティングの開発など
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】NaF 表面における水の吸着状態を、電子照射を
行わなかった場合と行った場合とで対比させて示す図で
ある。
【図2】NaF の表面結晶格子状態を、電子照射を行わな
かった場合と行った場合とで対比させて示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 材料の表面に電子を照射して、材料表面
    の表面結晶格子状態を保ちながら水に対する濡れ性を制
    御することを特徴とする電子照射による濡れ性の制御方
    法。
  2. 【請求項2】 材料がアルカリハライドである請求項1
    記載の電子照射による濡れ性の制御方法。
  3. 【請求項3】 材料がNaFである請求項1記載の電子照
    射による濡れ性の制御方法。
  4. 【請求項4】 電子の照射量が、1nm平方当たり1〜2
    個、照射エネルギーが30eV以下である請求項1〜3のい
    ずれか一項に記載の電子照射による濡れ性の制御方法。
JP09269164A 1997-09-17 1997-09-17 電子照射による濡れ性の制御方法 Expired - Lifetime JP3081913B2 (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0525313A2 (de) * 1991-06-18 1993-02-03 Hoechst Aktiengesellschaft Resistiver Strombegrenzer und Verfahren zu seiner Herstellung
US7632388B2 (en) 2005-04-12 2009-12-15 The Furukawa Electric Co., Ltd. Liquid actuator
CN113654951A (zh) * 2021-06-17 2021-11-16 河北工业大学 金属表面润湿性快速、可逆调控方法

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CN113654951A (zh) * 2021-06-17 2021-11-16 河北工业大学 金属表面润湿性快速、可逆调控方法

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