JPH1172467A - ヒータ付き酸素センサ - Google Patents

ヒータ付き酸素センサ

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JPH1172467A
JPH1172467A JP9249837A JP24983797A JPH1172467A JP H1172467 A JPH1172467 A JP H1172467A JP 9249837 A JP9249837 A JP 9249837A JP 24983797 A JP24983797 A JP 24983797A JP H1172467 A JPH1172467 A JP H1172467A
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Shoji Akatsuka
正二 赤塚
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 端子金具への発熱体の組付けを容易に行うこ
とができ、ひいては製造能率の高い酸素センサを提供す
る。 【解決手段】 酸素センサ1は、先端部が閉じた中空軸
状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子
2と、該酸素検知素子2の中空部内に配置されて該酸素
検知素子2を加熱する軸状の発熱体3と、端子金具23
とを備える。端子金具23は、発熱体3を周方向に包囲
するように形成され、酸素検知素子2の内側の電極層に
接触する内部電極接続部26と、その内部電極接続部2
6に対し発熱体3の軸方向において少なくとも一方の側
に連結されて発熱体3を把持する発熱体把持部26とを
有する。そして、その発熱体把持部26の軸方向におけ
る少なくとも一方の端縁部に、発熱体3の挿入をガイド
するための発熱体挿入ガイド部100が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば内燃機関の
排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサ、あ
るいは所定のガス中の酸素を検出するための酸素センサ
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば自動車等の内燃機関の排ガ
ス浄化の要求が高まり、車両の始動時やアイドル時な
ど、排ガス温度が低い場合でも内燃機関の排ガス中の酸
素濃度を良好に検出することができるように、ヒータ付
き酸素センサが開発されている。例えば特開平4−15
7358号公報には、先端部が閉じた中空軸状をなし、
それの内壁面に電極層を有する酸素検知素子と、その酸
素検知素子の中空部内に配置されてその酸素検知素子を
加熱する軸状の発熱体とを備えた酸素センサが開示され
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記酸素センサにおい
ては、軸状の発熱体は端子金具により酸素検知素子の中
空部内に固定される。この端子金具は、例えば発熱体を
周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内側
の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部電極接
続部に対し発熱体の軸方向において少なくとも一方の側
に連結されて発熱体を把持する筒状の発熱体把持部とを
備えて構成される(特開平8−86770号公報等)。
ここで、発熱体の該端子金具への組付けは、例えば発熱
体を先端側から内部電極接続部及び発熱体把持部へ順次
挿通することにより行われるが、発熱体把持部は自身の
径方向の弾性変形により発熱体を把持する構造になって
いるため、挿通時に発熱体の端縁が発熱体把持部の縁部
に引っ掛かって組立ての能率が必ずしもよくない欠点が
ある。
【0004】本発明の課題は、端子金具への発熱体の組
付けを容易に行うことができ、ひいては製造能率の高い
酸素センサを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために、本発明の第一に係る酸素センサは
下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、
該酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それ
の内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知
素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する
軸状の発熱体と、端子金具とを備える。該端子金具は、
発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素
子の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内
部電極接続部に対し発熱体の軸方向において少なくとも
一方の側に連結されて発熱体を把持する発熱体把持部と
を有する。そして、その端子金具の発熱体把持部は、発
熱体が自身の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発
熱体の挿通に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その
弾性復帰力により該発熱体を把持するものとされる一
方、その軸方向における少なくとも一方の端縁部に、発
熱体の挿入をガイドするための発熱体挿入ガイド部が形
成される。
【0006】上記酸素センサの構造によれば、発熱体把
持部に発熱体挿入ガイド部を設けたから、発熱体を発熱
体把持部へ挿通することで端子金具の組付けを行う際
に、発熱体の端縁が発熱体把持部の縁部に引っ掛かりに
くくなる。これにより、端子金具への発熱体の組付けを
容易に行うことができ、ひいては酸素センサの製造能率
を高めることができる。
【0007】上記酸素センサにおいては、発熱体把持部
に対し、発熱体をその先端側から挿入して組付けを行う
ことが多い。この場合、発熱体挿入ガイド部は、発熱体
把持部に対し、酸素検知素子の先端から遠い側の端縁部
に形成しておくことが望ましい。
【0008】次に、発熱体挿入ガイド部は、筒状の発熱
体把持部の端縁からその軸方向に切れ込むとともに、そ
の深さ方向において徐々にその幅を縮小する切欠き部と
して構成することができる。これにより、発熱体の発熱
体把持部への挿入をよりスムーズに行うことができる。
【0009】また、本発明の第二に係る酸素センサは下
記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該
酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの
内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素
子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸
状の発熱体と、端子金具とを備える。該端子金具は、発
熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子
の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部
電極接続部に対し発熱体の軸方向において少なくとも一
方の側に連結されて発熱体を把持する発熱体把持部とを
有する。そして、その端子金具の発熱体把持部は、発熱
体が自身の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発熱
体の挿通に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その弾
性復帰力により該発熱体を把持するものとされる一方、
その軸方向における少なくとも一方の端縁部に、該軸方
向に切れ込むとともに、深さ方向において徐々にその幅
を縮小する切欠き部が形成される。
【0010】上記酸素センサの構造によれば、発熱体把
持部に形成された切欠き部が発熱体の挿入をガイドする
ための発熱体挿入ガイド部として機能しうる。これによ
り、発熱体を発熱体把持部へ挿通することで端子金具の
組付けを行う際に、発熱体の端縁が発熱体把持部の端縁
部に引っ掛かりにくくなる。また、端子金具への発熱体
の組付けを容易に行うことができ、ひいては酸素センサ
の製造能率を高めることができる。
【0011】上記酸素センサの第一及び第二の構成にお
いては、筒状の発熱体把持部に、軸方向における一方の
端縁から他方の端縁に至るスリットを形成でき、上記切
欠き部は、発熱体把持部の該スリットの両側部分を切り
欠くことにより形成することができる。上記スリットの
形成により、発熱体の挿通に伴い半径方向外向きに発熱
体把持部を容易に弾性弾性変形させることができる。ま
た、切欠き部は、発熱体把持部の該スリットの両側部分
を、該スリットの中間位置から一方の縁に向けてこれを
斜めに切り欠くことによりテーパ状に形成することがで
きる。
【0012】また、上記構成の発熱体把持部を有する端
子金具は、次の構成とすることにより容易に製造でき
る。すなわち、該端子家具は、内部電極接続部となるべ
き第一の板状部と、発熱体把持部となるべき第二の板状
部とが長さ方向において互いに隣接するとともに、各々
その幅方向中間部において連結部により互いに連結され
た金属板部材により形成されるものとする。第一の板状
部は、その幅方向両側部分を筒状に曲げ加工することに
より内部電極接続部とする。同じく第二の板状部は、そ
の幅方向両側部分を筒状に曲げ加工することにより発熱
体把持部とする。ここで、上記幅方向両縁部分は、曲げ
加工により互いに対向して上記スリットを形成すること
となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に示す実施例に基づき説明する。図1に示す酸素センサ
1は、先端が閉じた中空軸状の固体電解質部材である酸
素検知素子2と、軸状のセラミックヒータである発熱体
3とを備え、それらの外殻を構成する各種部材の組立体
として構成される。酸素検知素子2は酸素イオン伝導性
を有する固体電解質により構成されている。そのような
固体電解質としては、Y23ないしCaOを固溶させた
ZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ
土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶
体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2には
HfO2が含有されていてもよい。
【0014】この酸素検知素子2の中間部外側には、絶
縁性セラミックから形成されたインシュレータ6,7、
並びにタルクから形成されたセラミック粉末8を介して
金属製のケーシング10が設けられ、酸素検知素子2は
ケーシング10と電気的に絶縁された状態で貫通してい
る。ケーシング10は、酸素センサ1を排気管等の取付
部に取り付けるためのねじ部9aを有する主体金具9
と、その主体金具9の一方の開口部に内側が連通するよ
うに結合された主筒14とを備える。また、図2に示す
ように、酸素検知素子2の内面及び外面には、そのほぼ
全面を覆うように一対の電極層2b,2cが設けられて
いる。これら電極層2b,2cはいずれも、酸素検知素
子2を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素
分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させ
るための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能
(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極、例えばPt
多孔質電極として構成されている。
【0015】次に、主体金具9の一方の開口部には、酸
素検知素子2の先端側を所定の空間を隔てて覆うように
プロテクタ11が設けられ、プロテクタ11には排気ガ
スを透過させる複数のガス透過口12が形成され、これ
により排気ガス中の酸素が酸素検知素子2の先端側表面
に接触可能となっている。主体金具9の他方の開口部に
は、前述の主筒14がインシュレータ6との間にリング
15を介してかしめられ、この主筒14にさらに、全体
として中空筒状に形成されたフィルタアセンブリ16
(気体導入構造部)が外側から嵌合・固定されている。
このフィルタアセンブリ16の図中上端側の開口はゴム
等で構成された弾性シール部材17で封止され、またこ
れに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設
けられている。そして、それらセラミックセパレータ1
8及び弾性シール部材17及びを貫通するように、酸素
検知素子2用のリード線20,21及び発熱体3用のリ
ード線28,29(図21:図1ではリード線20,2
1の影になって見えない)が配置されている。
【0016】酸素検知素子2用の一方のリード線20
は、端子金具23のコネクタ部24及びこれに続く引出
し線部25(絶縁管25aで覆われているが、これを省
略してもよい)、並びに端子金具23の内部電極接続部
26を経て、前述の酸素検知素子2の内側の電極層2c
(図2)と電気的に接続されている。一方、他方のリー
ド線21は、別の端子金具33のコネクタ部34及びこ
れに続く引出し線部35並びに外部電極接続部35bを
経て、酸素検知素子2の図示しない外側の電極層と電気
的に接続されている。また前述の発熱体3に通電するた
めのプラス側及びマイナス側の一対のヒータ端子部40
が、発熱体3の基端部(図1において上端部)に固定さ
れ、これらヒータ端子部40を経て、発熱体3内に埋設
された後述の発熱用抵抗回路に通電されるようになって
いる。なお、これら一対のヒータ端子部40に対し、前
述の発熱体用のリード線28,29がそれぞれ接続され
る。
【0017】次に、フィルタアセンブリ16の構成につ
いて詳しく説明する。なお、繰返しになるが、本明細書
においては、酸素検知素子2の軸方向においてその先端
部に向かう側(閉じている側)を「前方側」、これと反
対方向に向かう側を「後方側」として説明を行う。
【0018】図3に示すように、フィルタアセンブリ1
6は、主筒14(ケーシング10)に対し後方外側から
ほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに、内部
が主筒14の内部と連通し、かつ壁部に複数の気体導入
孔52が形成されたフィルタ保持部51を備える。そし
て、そのフィルタ保持部51の外側には、上記気体導入
孔52を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、
そのフィルタ53の外側には、壁部に1ないし複数の補
助気体導入孔55が形成されるとともに、フィルタ53
をフィルタ保持部51との間で挟み付けて保持する筒状
の補助フィルタ保持部54が配置される。具体的には、
気体導入孔52及び補助気体導入孔55は、フィルタ保
持部51及び補助フィルタ保持部54に対し、各軸方向
中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿っ
て所定の間隔で形成されており、フィルタ53は、フィ
ルタ保持部51を周方向に取り囲むように配置されてい
る。
【0019】また、フィルタ保持部51は、自身の軸方
向中間部に形成された段付き部60により、該段付き部
60に関して軸方向前方側を第一部分61、同じく軸方
向後方側を第二部分62として、該第二部分62が第一
部分61よりも径小となるように構成されており、気体
導入孔52はその第二部分62の壁部に形成されてい
る。さらに、補助フィルタ保持部54はフィルタ保持部
51の第一部分61の外径よりも小さい内径を有する。
【0020】ここで、フィルタ53は、例えばポリテト
ラフルオロエチレン(以下、PTFEという)の未焼成
成形体を、PTFEの融点よりも低い加熱温度で1軸以
上の方向に延伸することにより得られる多孔質繊維構造
体(商品名:例えばゴアテックス(ジャパンゴアテック
ス(株)))により、水滴等の水を主体とする液体の透
過は阻止し、かつ空気及び/又は水蒸気などの気体の透
過は許容する撥水性フィルタとして構成されている。こ
れにより、補助気体導入孔55からフィルタ53を経て
気体導入孔52より、基準ガスとしての大気(外気)が
主筒14(ケーシング10)内に導入されるとともに、
水滴等の液体状態の水は主筒14内に侵入することが阻
止されるようになっている。
【0021】また、図4に示すように、フィルタ53
は、補助フィルタ保持部54の内面に密着する一方、フ
ィルタ保持部51の外面とフィルタ53との間には、例
えば補助気体導入孔55の列に沿って環状形態をなすよ
うに所定量の隙間58が形成されている。さらに、補助
フィルタ保持部54には、周方向に配列する補助気体導
入孔55の列を挟んでその軸方向両側に、フィルタ53
を介して該補助フィルタ保持部54をフィルタ保持部5
1に対して結合する環状のフィルタかしめ部56,57
が形成されている。
【0022】ここで、補助フィルタ保持部54は、その
軸方向後端縁がフィルタ53の後端縁に対応して位置す
るように配置されており、該後端縁に沿って周方向にフ
ィルタかしめ部56が形成されている。これにより、補
助フィルタ保持部54の後端面位置において、フィルタ
保持部51との間に形成される環状の隙間の開口部(フ
ィルタ確認部となる)からフィルタ53を目視できる。
例えば、図5に示すように、フィルタ保持部51に筒状
のフィルタ53を外挿し、そのさらに外側に補助フィル
タ保持部54を嵌め入れる際に、フィルタ53が補助フ
ィルタ保持部54と連れ移動して位置ずれを起こすこと
がありうる。この場合、この状態で万一フィルタかしめ
部56が形成されれば、フィルタかしめ部56からフィ
ルタ53が外れてシールが不完全となるのであるが、フ
ィルタ53が上述のように目視できるようになっている
ことで、そのようなフィルタ53のかしめ不良を容易に
発見できる。
【0023】また、図4(a)に示すように、補助フィ
ルタ保持部54の前端縁側のフィルタかしめ部57に
は、フィルタ53を部分的に露出させるフィルタ確認露
出部57aを形成することもできる。こうすれば、補助
フィルタ保持部54の前端縁側においてもフィルタ53
が正常にかしめられているか否かを容易に判別できる。
【0024】次に、補助フィルタ保持部54のそれらフ
ィルタかしめ部56,57の間に位置する部分は、フィ
ルタ53とともに外向きに橈んで凸状に膨出する形態を
なし、それによって環状の凸状部59が形成されてい
る。また、凸状部59の先端部は環状に平坦化され、そ
の平坦化部分59aに補助気体導入孔55が形成される
とともに、該平坦化部分59aの形成によりフィルタ保
持部51がフィルタ53に押し付けられ、これに密着し
ている。
【0025】このような構造とすることで、フィルタ5
3を透過してくる外気は、内側に環状の隙間58が形成
されていることで流通抵抗が和らげられ、気体導入孔5
2を通ってスムーズに主筒14内に導入できる。一方、
フィルタ53の外面は補助フィルタ保持部54の内面と
密着しているので、補助気体導入孔55からフィルタ5
3と補助フィルタ保持部54との間にゴミや油分あるい
は水滴等が侵入しにくくなり、ひいてはフィルタ53の
外面側の撥油性あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制
されて、常時良好な通気性が確保される。これにより、
例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、センサ出力
の低下が起こりにくくなる。
【0026】上記構造を有するフィルタアセンブリ16
は、例えば以下のような方法により製造することができ
る。まず、図5(a)に示すように、フィルタ保持部5
1に対し筒状のフィルタ53を外挿し、さらにその外側
に補助フィルタ保持部54となるべき筒状体54’を配
置する。ここで、フィルタ保持部51に形成された段付
き部60は、フィルタ53と筒状体54’の下縁部を支
持してこれらが抜け落ちることを阻止する役割を果た
す。続いて(b)に示すように、筒状体54’を、補助
気体導入孔55の列の両側においてそれぞれフィルタ部
に向けて周方向にかしめることにより、フィルタかしめ
部56,57を形成する。なお、図5(c)及び(d)
に示すように、補助フィルタ保持部54をフィルタ53
よりも前方側へ突出させるとともに、その突出部を径小
部54jとして形成し、該径小部54jにおいてかしめ
部54kを形成してもよい。これにより、補助フィルタ
保持部54にねじり力が加わったときに、その回り止め
効果を更に向上させることができる。
【0027】このフィルタかしめ部56,57は、図6
に示すように、補助フィルタ保持部54の周方向に沿っ
て配置された複数のかしめパンチ151を用いて、該補
助フィルタ保持部54を半径方向に圧縮することにより
形成することができる。各かしめパンチ151の内周面
は互いに連なって補助フィルタ保持部54の外周面に対
応する円筒面を形成するとともに、それぞれ補助フィル
タ保持部54の外周面に対して接近・離間可能とされ、
図示しないパンチ駆動部により補助フィルタ保持部54
に対し一斉に接近してこれを圧縮するようになってい
る。そして、各かしめパンチ151の軸方向両端縁には
凸条部152,153が形成され、補助フィルタ保持部
54の外周面に押し付けられてそれぞれ弧状の凹部を形
成し、これが周方向に連なることでフィルタかしめ部5
6,57となる。
【0028】ここで、かしめパンチ151の凸条部15
2,153に挟まれた部分は平坦な底部154a(平坦
化部材)を有する凹所154とされ、その凹所154の
深さhはフィルタ53と補助フィルタ保持部54との合
計厚さよりも小さく設定されている。このようなかしめ
パンチ151で補助フィルタ保持部54を圧縮すると、
凸条部152,153が食い込むことでフィルタかしめ
部56,57が形成される一方、両かしめ部56,57
に挟まれた部分は外向きに橈んで凸部59となる。しか
しながら、圧縮がある程度進行すると、その凸部59は
凹所154の底部154aに当たって止められ、さらに
圧縮を継続すると凸部59は凹所154により成形され
て、該凹所154の平坦な底部に対応して平坦化部分5
9aが形成される。
【0029】このとき、補助フィルタ保持部54はかし
めに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部59における橈
み量も大きくなるが、内側のフィルタ保持部51はそれ
ほど圧縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタ
53は柔軟であるので、補助フィルタ保持部54に追従
して外向きに橈むこととなる。その結果、フィルタ保持
部51とフィルタ53との間には、フィルタ保持部51
と補助フィルタ保持部54との両者の橈み量の差に基づ
いて環状の隙間58が形成されることとなる。
【0030】なお、図4(c)に示すように、フィルタ
保持部51には、少なくとも気体導入孔52の周囲にお
いて内向きに凹む凹状部63を形成し、その凹状部63
においてフィルタ53との間に隙間58を形成するよう
にしてもよい。この場合、凹状部63は、図4(d)に
示すように、気体導入孔52の周縁部分を凹ませたディ
ンプル状に形成してもよいし、同図(e)に示すように
各気体導入孔52の配列方向に沿う環状に形成してもよ
い。
【0031】図3に戻り、セラミックセパレータ18に
は、各リード線20及び21を挿通するための複数のセ
パレータ側リード線挿通孔(リ−ド線挿通孔)72が軸
方向に貫通して形成されており、その軸方向中間位置に
は、外周面から突出する形態でフランジ状のセパレータ
側支持部73が形成されている。そして、該セラミック
セパレータ18は、セパレータ側支持部73よりも前方
側に位置する部分を主筒14の後端部内側に入り込ませ
た状態で、該セパレータ側支持部73において主筒14
の後端面に当接するとともに、セパレータ側支持部73
よりも後方側に位置する部分を主筒14の外側に突出さ
せた状態で配置される。なお、セラミックセパレータ1
8の細部については後述する。
【0032】上記補助フィルタ保持部54の外側には、
筒状の防護カバー64がこれを覆うように設けられてい
る。この防護カバー64は、フィルタ63への直接的な
液滴の噴射あるいは油や汚れ等の付着物の付着を阻止な
いし抑制する働きをなす。該防護カバー64は、例えば
気体導入孔52(あるいは補助気体導入孔55)に対応
する位置においてフィルタ53との間に気体滞留空間6
5を生じるように配置され、軸方向において気体導入孔
52を挟んだ両側部分が、フィルタ保持部51の外面に
対しカバー接合部としてのかしめ部66,67により接
合されている。そして、その軸方向前方側のかしめ部6
6に対応する位置において、フィルタ保持部51との間
には、気体滞留空間65を外部と連通させてこれに外気
を導入する外部連通部68が形成されている。
【0033】具体的には、図4に示すように、フィルタ
保持部51の第一部分61の外周面に、該フィルタ保持
部51の軸方向に延びる溝部69が周方向に沿って所定
の間隔で複数形成され、これら溝部69が外部連通部6
8を構成している。そして、図7に示すように、防護カ
バー64をフィルタ保持部51の第一部分61(図3
等)に向けてかしめることにより、各溝部69をその配
列方向に横切るように、かつ溝部69の底部において防
護カバー64と第一部分61との間に隙間70が残留す
るように、上記かしめ部66が環状形態で形成されてい
る。なお、かしめ部66は、セラミックセパレータ18
の、セパレータ側支持部73の外周面に対応する位置に
形成されている。これにより、かしめ部形成の際の圧縮
力をセパレータ側支持部73で受けることができるの
で、該かしめ部66の形成を確実に行うことができる。
【0034】上記構造においては、図8に示すように、
防護カバー64とフィルタ保持部51の第一部分61と
の間において、各溝部69に形成される隙間70の前方
側開口部71から、該隙間70を通って気体滞留空間6
5へ外気が導かれることとなる。一方、かしめ部67
(別のかしめ部)は第二部分62の末端部外周面に形成
されている(図3等)。なお、図9に示すように、防護
カバー64の軸方向前方側の端縁部64aを、溝部69
の端よりも所定長だけスカート状に延伸してもよい。こ
れにより、酸素センサ1に水しぶき等がかかった場合
に、防護カバー64の内側から気体滞留空間65内へ水
滴等が侵入する確率をさらに小さくすることができる。
【0035】ここで、図45に示すように、補助フィル
タ保持部54の前端側を軸方向に延伸して、フィルタ保
持部51の第一部分61と第二部分62とにまたがるよ
うに配置してもよい。この場合、第一部分61に対応す
る位置において、補助フィルタ保持部54を該第一部分
61に向けて直接的にかしめることにより、該第一部分
61の周方向に沿って環状の補助かしめ部66を形成す
るようにしてもよい。こうすれば、補助フィルタ保持部
54のフィルタ保持部54に対する固定を一層確実に行
うことができる。なお、防護カバー64の前端側縁部
は、補助フィルタ保持部54の対応する縁部に重なる位
置まで延伸することができ、カバー接合部としてのかし
め部66を上記補助かしめ部に兼用することができる。
この場合、外部連通部68すなわち溝部69は、補助フ
ィルタ保持部54に形成することができる。
【0036】図3に戻り、フィルタアセンブリ16のフ
ィルタ保持部51は、セラミックセパレータ18の突出
部分を第二部分62の内側まで進入させてこれを覆うと
ともに、段付き部60においてセパレータ側支持部73
に対し、主筒14とは反対側から金属弾性部材74を介
して当接するように配置される。該金属弾性部材74は
ばね座金、例えば図10に示すような波型座金として構
成されており、図3に示すようにセパレータ側支持部7
3に外挿されるとともに、ケーシング側支持部としての
主筒14の端面とセラミックセパレータ18との間に圧
縮状態で配置される。これにより、金属弾性部材74
は、フィルタアセンブリ16(カバー部材)と主筒14
との間で、セラミックセパレータ18に対する適度な挾
圧保持力を生じさせてがたつきを防止し、その固定・保
持をより確実なものとする。また、酸素センサ1の組立
時等において自身の弾性変形によりセラミックセパレー
タ18のセパレータ側支持部73に過度な挾圧力が作用
することを抑制し、ひいてはそれによるセラミックセパ
レータ18の割れや欠けを防止する役割も果たす。ま
た、金属弾性部材74は、その構成材質が金属であるこ
とから耐熱性に優れ、セラミックセパレータのがたつき
防止効果を長期に渡って良好に維持することができる。
【0037】そして、フィルタ保持部51は、その先端
側、すなわち第一部分61において主筒14に対し外側
からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり
部においてフィルタ保持部を主筒14に向けてかしめる
ことにより、それらの周方向に結合部として環状のアセ
ンブリ連結かしめ部75が形成されている。このアセン
ブリ連結かしめ部75により、フィルタ保持部51は主
筒14に対し、内周面が主筒14の外周面に対して気密
状態となるように圧接されてこれに連結される。
【0038】図11に示すように、アセンブリ連結かし
め部75は、フィルタ保持部51を主筒14に向けてか
しめることにより、周方向に円環状に形成された主かし
め部76と、その主かしめ部76よりも酸素検知素子2
の先端部に近い側に形成された角状断面(本実施例では
八角形状断面)の補助かしめ部(回転阻止部)77とか
ら構成されている。
【0039】主かしめ部76においては、主筒14とフ
ィルタ保持部51との間の接触面が円筒状面となるので
気密性に優れ、それらの間から主筒14内に水等が漏れ
込むことを確実に阻止する役割を果たす。しかしなが
ら、図12(b)に模式的に示すように、主筒14とフ
ィルタ保持部51に外部からの衝撃等により強い捩じり
力が作用した場合に、円筒状の接触面では両者の間に相
対回転による滑りが発生して気密性が損なわれる可能性
もありうる。そこで上述のような補助かしめ部77を形
成すれば、その接触面が図12(a)に示すように角筒
状に形成されていることから、上述のような捩じり力が
作用しても主筒14とフィルタ保持部51との間の相対
的な回転が生じにくい。その結果、主かしめ部76にお
いてもそのような相対回転が生じることが効果的に阻止
され、主筒14とフィルタ保持部51との間の気密性を
一層確実とすることができる。なお、主かしめ部76と
補助かしめ部77とは、軸線方向における位置関係を入
れ換えて形成してもよいが、酸素センサ1の先端側は高
温にさらされることが多いので、気密性確保が優先され
る主かしめ部76がそのような熱源から遠くなる上記配
置関係がより望ましいといえる。
【0040】なお、上記補助かしめ部77以外にも、例
えば図13に示すように、フィルタ保持部51から主筒
14側に向けて食い込む食込部78を周方向に沿って所
定の間隔で形成したものも回転阻止部として機能しう
る。一方、主かしめ部76において上述のような相対回
転が生ずる心配がほとんどない場合には、補助かしめ部
77を省略することも可能である。また、フィルタ保持
部51と主筒14との間に結合部として、周方向に沿っ
て円環状の溶接部を例えばレーザー溶接等により形成し
て接合を行う構成でもよい。
【0041】以下、フィルタアセンブリ16の主筒14
に対する組付け方法について説明する。すなわち、図1
4(a)に示すように、セラミックセパレータ18に金
属弾性部材74を外挿し、さらにそのセラミックセパレ
ータ18の前端側を主筒14に挿入する。一方、フィル
タアセンブリ16は、図5に示すように予め組み立てて
おき、これを図14(a)に示すように、そのフィルタ
保持部51においてセラミックセパレータ18及び主筒
14の外側から被せる。なお、酸素検知素子2及び発熱
体3等(図1)は主筒14内に予め組みつけておき、そ
れらからのリード線20,21,28,29(図21)
はセラミックセパレータ18のセパレータ側リード線挿
通孔72(図3)に通し、さらにフィルタ保持部51の
後端側開口部から外側に延出した状態にしておく。
【0042】続いて、図14(b)に示すように、主筒
14とフィルタアセンブリ16とに軸方向の圧縮力を付
加する。これにより、金属弾性部材74はフィルタ保持
部51とセラミックセパレータ18のセパレータ側支持
部73との間で圧縮変形し、セラミックセパレータ18
を主筒14とフィルタ保持部51と間で挟み付けるため
の付勢力を発生する。そして、この状態を維持しつつ、
図14(c)に示すように、フィルタ保持部51と主筒
14とにアセンブリ連結かしめ部75を形成し、両者を
結合する。次いで、図14(d)に示すように、フィル
タ保持部51の後端側開口部に弾性シール部材17を嵌
め入れ、さらに防護カバー64を被せるとともに、
(e)に示すようにかしめ部66及び67を形成して組
立てが終了する。
【0043】上記方法によれば、フィルタアセンブリ1
6の組立てが、酸素検知素子2などのケーシング10内
への組付けとは独立に行われるので、リード線が邪魔に
なったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことがで
きる。また、ケーシング10内への部品の組付けと、フ
ィルタアセンブリ16の組立てとを並行して行えるの
で、生産性が飛躍的に向上する。さらに、フィルタ53
の組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリ16
の段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の
影響が及ばず、部品の無駄等が生じにくい。
【0044】以下、アセンブリ連結かしめ部75の形成
方法の詳細について説明する。すなわち、該方法におい
ては、図15に概念的に示すようなかしめ装置79を用
いる。図15(a)及び(b)に示すように、該かしめ
装置79は、それぞれフィルタ保持部51を周方向外側
から圧縮する複数のかしめパンチ81ないし83を含む
とともに、同図(c)に示すように、フィルタ保持部5
1の軸線方向において所定距離だけ隔たった位置関係で
配置される第一及び第二のかしめパンチユニット80及
び82を備えている。ここで、第一のかしめパンチユニ
ット80は主かしめ部76を形成するためのものであ
り、各かしめパンチ81の先端面は互いに連なって円筒
状面をなす。一方、第二のかしめパンチユニット82は
補助かしめ部77を形成するためのものであり、各かし
めパンチ83の先端面は互いに連なって八角筒状面をな
す。そして、図15(c)に示すように、これらかしめ
パンチ81,83は、それぞれ対応するもの同士が連結
部84によって連結されてパンチセグメント85を形成
し、フィルタ保持部51の外周面に対し、その半径方向
に互いに一体的に接近・離間するようになっている。
【0045】そして、フィルタ保持部51の周囲に配置
されたこれらパンチセグメント85を一斉にフィルタ保
持部51に向けて接近させることにより、フィルタ保持
部51には主かしめ部76と補助かしめ部77とが一括
して形成されることとなる。この方式によれば、主かし
め部76と補助かしめ部77とが1回のかしめ工程によ
り同時形成されるので能率的であるばかりでなく、次の
ような効果も合わせて達成される。すなわち、かしめパ
ンチによる圧縮により、フィルタ保持部51が主筒14
に向けて局所的に食込みつつ圧接されてかしめ部が形成
されるのであるが、その圧接部の周囲においてフィルタ
保持部51には、食込変形に伴うしわ寄せ部あるいは浮
き上がり部が形成されやすい。ここで、主かしめ部76
と補助かしめ部77とを順次的に形成した場合、後で形
成するかしめ部によるしわ寄せ部あるいは浮き上がり部
の影響が先に形成したかしめ部に及び、気密性が損なわ
れる問題が生じやすい。しかしながら、上述のように両
かしめ部76,77を同時に形成するようにすれば、し
わ寄せ部あるいは浮き上がり部の影響をそれらかしめ部
76及び77の間の領域にプールすることができ、ひい
てはいずれのかしめ部76,77においても十分な密着
性すなわち気密性を確保することができるようになる。
【0046】図16は、かしめ装置79のより具体的な
構成の一例を示す平面図である。すなわち、該かしめ装
置79は、リング状のパンチホルダ86と、そのパンチ
ホルダ86の周方向に沿って配置されるとともに、それ
ぞれ該パンチホルダ86を半径方向に進退可能に貫通す
る複数のパンチセグメント85とを有するパンチアセン
ブリ89を備える。また、各パンチセグメント85の後
端部にはばね支持部87が形成され、これとパンチホル
ダ86の外周面との間には、該パンチセグメント85を
外向きに付勢するばね部材88が配置される。一方、図
17(a)に示すように、このパンチアセンブリ89に
対応して、内周面91が底面側で縮径するテーパ面とさ
れた受けユニット190が設けられ、その底面中央には
ワーク挿通孔94を有する位置決め突出部93が形成さ
れている。
【0047】そして、主筒14にフィルタアセンブリ1
6を被せた状態のワークWを位置決め突出部93に対
し、プロテクタ11をワーク挿通孔94に挿入する形で
セットする。このとき、主体金具9が位置決め突出部9
3上面で支持され、ワークWは受けユニット190の底
面中央に対し直立状態で保持される。そして、パンチア
センブリ89は、受けユニット190の内側に同軸的に
セットされ、各パンチセグメント85がワークWを取り
囲んだ状態となる。また、パンチセグメント85の外側
端面92には、受けユニット190の内周面91に対応
するテーパが付与されている。
【0048】この状態で、フィルタアセンブリ16を主
筒14に向けて図示しない加圧機構により押し込み(図
14(b))、さらにパンチアセンブリ89を受けユニ
ット190の底面に向けて押し込むと、図17(b)に
示すように、テーパ状に形成された外側端面92と内周
面91との間のカム作用により、各パンチセグメント8
5は対応するばね88の圧縮を伴いながら一斉にワーク
Wに向けて接近し、主かしめ部76と補助かしめ部77
とを同時に形成する。
【0049】次に、金属弾性部材74の役割は、次のよ
うな構成で代替させることも可能である。すなわち、図
42及び図43に示すように、セパレータ側支持部73
と当接する主筒14(ケーシング10)の後方側開口端
面部(ケーシング側支持部)に、主筒14の本体部分よ
りも弾性変形が容易な緩衝支持部90を形成する。そし
て、図14と同様の組立て方法を採用する場合、セパレ
ータ側支持部73は緩衝支持部90に相対的に押し付け
られ、それによって緩衝支持部90は圧縮変形して前述
の金属弾性部材74と同様の作用・効果を奏することと
なる。なお、フィルタアセンブリ16は、アセンブリ連
結かしめ部75により主筒14に結合され、上記緩衝支
持部90の弾性変形を維持した状態でセラミックセパレ
ータ18をケーシング10に対して固定する。すなわ
ち、セパレータ固定手段の役割を果たすこととなる。
【0050】具体的には、図42に示すように緩衝支持
部90は、主筒14の本体部分14bと一体化されたば
ね部90として構成できる。本実施例において該ばね部
90は、主筒14の開口端縁部に薄肉部14aを形成
し、その薄肉部14aを断面半径方向において内側に1
回曲げ返し、その曲げ返された薄肉部14aの先端側を
さらに外向きに1回曲げ返すことにより形成されてい
る。
【0051】図43は、そのばね部90の形成方法の一
例を示すものである。すなわち、(a)に示すように、
金属素材をダイ155とパンチ156とを用いた多段の
深絞り加工により筒状体14’を成形する。次に(b)
に示すように、内パンチ158とその外側に同心的に配
置された外パンチ159とからなる複合パンチ160
と、大径部161a、段部161c及び小径部161b
が深さ方向にこの順序で形成されたダイ孔161を有す
るダイ162とを用い、外パンチ159と段部161c
との間で筒状体14’の外縁部を挟みつつ、(c)に示
すように、内パンチ158を外パンチ159から突出さ
せることにより、該筒状体14’の底部中央を打ち抜
く。このとき、筒状体14’の打ち抜かれた開口部の周
縁が内パンチ158とダイ孔161の小径部161bと
の隙間に圧入され、薄肉部14aが形成される。
【0052】そして(d)に示すように、ダイ163の
ダイ孔164内において、筒状体14’の内側に挿入し
たパンチ165と、これに対向する対向パンチ166と
の間で薄肉部14aを潰すように圧縮変形させる。対向
パンチ166の先端面外縁には、内向きの曲率を有する
面取状の曲げ型部166aが形成されており、(e)に
示すように、薄肉部14aの先端側は該曲げ型部166
aに押し付けられることにより外向きに滑るように曲げ
られてばね部90となる。
【0053】一方、図44に示すように、緩衝支持部9
0は、本体部分14bよりも低硬度の部分となるように
構成してもよい。すなわち、緩衝支持部90の硬度を本
体部分14bの硬度よりも低くすることにより、セパレ
ータ側支持部73が押し付けられた際に、緩衝支持部9
0は圧縮変形して前述の金属弾性部材74と同様の作用
・効果を奏することとなる。なお、緩衝支持部90は弾
性限度の範囲内で変形させても、塑性変形させてもいず
れでもよい。
【0054】緩衝支持部90は、例えば本体部分14b
よりも硬度の低い異材質により構成することができる。
この場合、その異材質部分は溶接あるいはろう付け等に
より本体部分14bに接合することができる。一方、例
えば主筒14がステンレス鋼等で構成される場合には、
その開口先端部を通電加熱等により局部的に熱処理して
これを軟化させることにより、本体部分14bと緩衝支
持部90とを同材質により一体形成することも可能であ
る。
【0055】また、緩衝支持部90のビッカース硬度を
Hvs、本体部分14bのビッカース硬度をHvhとした
場合、Hvhは320以上とするのがよい。Hvhが32
0未満になると主筒14の強度が不足し、酸素センサ1
の耐久性を確保できなくなる場合がある。なお、Hvh
は望ましくは360以上とするのがよい。また、Hvh
−Hvsは60以上となるように緩衝支持部90の硬度
を調整するのがよい。Hvh−Hvsが60未満になる
と、緩衝支持部90の本体部分14bに対する相対的な
変形量が不足し、所期の効果が十分に達成できなくなる
場合がある。なお、Hvh−Hvsは望ましくは80以上
とするのがよい。
【0056】次に、図3に示すように、セラミックセパ
レータ18は、酸素検知素子2の軸方向において後方側
がフィルタ保持部51の内側に入り込み、同じく前方側
が主筒14(ケーシング10)の内側に入り込むように
配置され、各リード線20,21,28,29(図2
1)がセパレータ側リード線挿通孔72において軸方向
に挿通される。一方、弾性シール部材17は、フィルタ
保持部51の後方側開口部51aに対しその内側に弾性
的にはめ込まれ、各リード線20,21,28,29を
挿通するためのシール側リード線挿通孔91を有すると
ともに、それらリード線20,21,28,29の外面
とフィルタ保持部51の内面との間をシールする。
【0057】セラミックセパレータ18の後端面は、軸
方向において気体導入孔52よりも後方側に位置すると
ともに、弾性シール部材17の後端面中央に形成された
隙間規定突出部96の頂面と密着しており、その隙間規
定突出部96により、弾性シール部材17とセラミック
セパレータ18との間には所定量の隙間98が形成され
ている。また、フィルタ保持部51の内周面とセラミッ
クセパレータ18の外周面との間にも隙間92が形成さ
れている。そして、気体導入孔52からの気体は該隙間
92内に供給され、さらにセラミックセパレータ18に
形成された気通用連通部93を通ってケーシング10内
に導かれる。具体的には、セラミックセパレータ18に
は、セパレータ側リード線挿通孔72とは別に軸方向の
気通用貫通孔95が形成されており、またその後端面に
は、一端が貫通孔95に連通し、他端側がセラミックセ
パレータ18の外周面に開放する気通用溝部94が形成
されている。すなわち、これら気通用貫通孔95及び気
通用溝部94が気通用連通部93を形成している。
【0058】図18及び図19(a)に示すように、セ
ラミックセパレータ18には、酸素検知素子2及び発熱
体3からのリード線(20,21,28,29)を挿通
するための4つのセパレータ側リード線挿通孔72が、
各々その中心が仮想的な円周経路(以下、セパレータ側
ピッチ円という)C1上に位置して配列するように形成
されている。また、気通用貫通孔95は、セラミックセ
パレータ18の中央部において、それら4つのセパレー
タ側リード線挿通孔72により囲まれる領域に形成され
ている。さらに、気通用溝部94は、セラミックセパレ
ータ18の後端面において、4つのセパレータ側リード
線挿通孔72と干渉しない位置に十字形態で形成されて
いる。なお、図18(e)に示すように、気通用溝部9
4には、その上面側において幅方向両縁に面取り部94
aが形成されている。
【0059】次に、図22に示すように、弾性シール部
材17においては、前述のシール側リード線挿通孔91
が、各々その中心が仮想的な円周経路(以下、シール側
ピッチ円という)C2上に位置して配列するように形成
されており、前述のセパレータ側ピッチ円C1(直径D
1)とシール側ピッチ円C2(直径D2)とは、その一方
が他方よりも直径が大きくなるように設定される。
【0060】例えば図3においてはD1>D2となってお
り、図22(c)に示すように、隙間規定突出部96
は、シール側ピッチ円C2上に配列したシール側リード
線挿通孔91よりも内側に位置する領域に形成されてい
る。
【0061】上記構造においては、セラミックセパレー
タ18の後端面位置を気体導入孔52よりも後方側に設
定することで、気体導入孔52を経てフィルタアセンブ
リ16内に水滴等が侵入した場合、フランジ状のセパレ
ータ側支持部73が主筒14の開口部を塞いでいる関係
上、該水滴はセラミックセパレータ18の後端面側へ一
旦回り込まないとケーシング10内へは流れ込むことが
できない。従って、酸素検知素子2側への水滴の流入が
一層起こりにくくなる効果を達成することができる。こ
の場合、気体導入孔52から流入した基準ガスもセラミ
ックセパレータ18の後端面側へ回り込まなければなら
ないが、該ガスは気通用溝部94及び気通用貫通孔95
を経て支障なくケーシング10内へ導入できる。
【0062】一方、弾性シール部材17及びセラミック
セパレータ18に対し、互いに異なるピッチ円径でリー
ド線20,21,28,29が挿通される構造となって
いるので、各リード線には弾性シール部材17とセラミ
ックセパレータ18との間で必ず曲がりが生ずる。しか
しながら、弾性シール部材17とセラミックセパレータ
18との間には適度な隙間98が形成されており、この
隙間98において各リード線20,21,28,29を
比較的緩やかに曲げることができる。これにより、セン
サ1の組立て時等にリード線が強く曲げられて痛んだ
り、断線したりするトラブルが生じにくくなる。
【0063】ここで、弾性シール部材17とセラミック
セパレータ18との間でピッチ円径にほとんど差がない
場合には上記隙間98を形成せず、弾性シール部材17
とセラミックセパレータ18とを密着配置する構成もあ
りうる。また、隙間98を形成する場合でも、隙間形成
突出部96の先端面は弾性シール部材17に密着した形
となる。いずれの場合も、弾性シール部材17とセラミ
ックセパレータ18との接触領域は、気通用貫通孔95
の形成領域と重なりを生ずることになる。しかしなが
ら、セラミックセパレータ18の上面には気通用溝部9
4が形成されているので、このような場合でも気通用貫
通孔95の入口部が密閉されず、基準ガスのケーシング
10への流通を確保することができる。
【0064】また、図19(b)及び(c)に示すよう
に、フランジ状のセパレータ側支持部73(フランジ
部)に、これを軸方向に貫通する気通用貫通部97を形
成してもよい。本実施例では該気通用貫通部97は、セ
パレータ側支持部73の外周面に対し、所定の角度間隔
で複数形成された溝部(あるいは切欠き部)とされてい
る。なお、気通用貫通部97を形成する場合は、(b)
に示すように気通用溝部94を省略することができる。
一方、(c)に示すように、気通用溝部94と気通用貫
通部97との双方を形成するようにしてもよく、この場
合は気通用溝部94及び気通用貫通孔95と気通用貫通
部97との2つの気通経路が形成されるので、基準ガス
のケーシング10への流通をより確実なものとすること
ができる。図20に、該セラミックセパレータ18を酸
素センサ1に組み付けた例を示している。
【0065】弾性シール部材17の隙間形成突出部96
は、図23(c)及び図25に示すように、弾性シール
部材17前端面の周縁に沿う連続的あるいは断続的な凸
条形態に形成することもできる。なお、図25において
は、セパレータ側ピッチ円C1の直径D1がシール側ピッ
チ円C2の直径D2よりも大きくなる場合(すなわちD1
>D2)について示しているが、該構成はD1<D2の場
合にも適用でき、例えばD1が小さく、セパレータ側リ
ード線挿通孔72に囲まれた領域に、隙間形成突出部9
6の接触領域を十分確保できない場合に有効である。
【0066】また、セラミックセパレータ18と弾性シ
ール部材17との間に隙間98を形成するために、図2
3(b)及び図24に示すように、弾性シール部材17
の後方側端縁部に、その外周面から外向きに張り出すフ
ランジ部99を形成するようにしてもよい。この場合、
弾性シール部材17の該フランジ部99においてフィル
タ保持部51の後方側端面と当接することで、フィルタ
保持部51内におけるその前端面の位置が規定される。
【0067】さて、上記酸素センサ1においては、前述
の通りフィルタアセンブリ16のフィルタ53を介して
基準ガスとしての大気が導入される一方、酸素検知素子
2の外面にはプロテクタ11のガス透過口12を介して
導入された排気ガスが接触し、該酸素検知素子2には、
その内外面の酸素濃度差に応じて酸素濃淡電池起電力が
生じる。そして、この酸素濃淡電池起電力を、排気ガス
中の酸素濃度の検出信号として電極層2b,2cからリ
ード線21,20を介して取り出す。ここで、酸素検知
素子2は、排気ガス温が十分高温となっている場合には
当該排気ガスで加熱されて活性化されるが、エンジン始
動時など排気ガス温が低温である場合には前述の発熱体
3で強制的に加熱することで活性化される。
【0068】発熱体3は、通常はセラミックヒータであ
り、例えばアルミナを主とするセラミック棒45を芯材
とし、図28に示すように、このセラミック棒45の表
面に例えば蛇行状に形成された抵抗線部(抵抗パター
ン)41(図29)からなる発熱部42を備える。これ
はシート状の外層セラミック部43(図29)に抵抗ペ
ーストを所定のパターンで印刷し、これをセラミック棒
45に巻き付けるように丸めて焼成したものである。セ
ラミック棒45は外層セラミック部43の先端から若干
突出しており、また抵抗パターン41にヒータ端子部4
0(図1等)から延びるリード線28,29(図21)
を経て、発熱のための通電が行われる。このような発熱
部42は発熱体3の先端側に偏って設けられ、その先端
部で局部的に発熱するようになっている。
【0069】そして、図28(a)に示すように、発熱
体3の発熱部42の近傍における中心軸線O1は、酸素
検知素子2の中心軸線O2に対して片側に寄るように一
定量δだけ偏心(オフセット)している。それによっ
て、発熱体3の発熱部42の先端部表面が酸素検知素子
2の中空部内壁面(以下、素子内壁面ともいう)2aに
所定の面圧で押し付けられた状態で接触している。この
接触位置は、図1から明らかなように酸素検知素子2の
閉塞側先端からやや中間側へ寄ったところ、より好まし
くは前述のプロテクタ11のガス透過口12にほぼ対応
する位置にあたるとよい。
【0070】また、図30(b)に概念的に示すよう
に、酸素検知素子2の中空部に対し、該中空部の中心軸
線O2を含むある仮想的な第一平面P1と、同じく中空部
の中心軸線O2を含むとともに第一平面P1と直交する仮
想的な第二平面P2とを設定して、該中空部をそれら第
一平面P1と第二平面P2とによって4つの領域に分割し
た場合に、発熱体3は、その中心軸線O1の上記中空部
内に位置する部分の全体が、該中空部の上記4つの領域
のいずれかに収まるように配置されている。より具体的
には、図28にも示すように発熱体3は、その中心軸線
O1が中空部の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置
されている。これにより、発熱体3は、発熱部42の側
面が検知素子2の中空部内壁面2aに対しほぼ沿う形と
なっている。
【0071】なお、酸素検知素子2の中空部の中心軸線
に対して発熱体3が片側に寄るように偏心させるのに対
応し、セラミックセパレータ18には次のような工夫が
施されている。すなわち、図3に示すようにセラミック
セパレータ18にはその前端面に開口し、底面102a
が該セラミックセパレータ18の軸方向中間部に位置す
るように発熱体端部収容孔102が形成されている。該
発熱体端部収容孔102に発熱体3の後端部を収容する
ことで、酸素センサ1の全体の長さを縮小することがで
きる。具体的には図21に示すように、発熱体端部収容
孔102は、各リード線挿通孔72に対し内側から重な
りを生ずるように、セラミックセパレータ18の中央部
を切り欠いた形態で形成されており、その内径が発熱体
3の外径よりも大きく設定されている。
【0072】発熱体3を上述のように偏心して配置した
場合、その後端部はセラミックセパレータ18の軸線に
対して偏心配置される。ここで、該発熱体3の後端部を
収容する発熱体端部収容孔102は、内径が発熱体3の
外径よりも大きく設定されているため、発熱体3の偏心
配置に伴う後端部の径方向の移動が一定の範囲内で許容
される。すなわち、発熱体3を偏心配置した場合に、そ
の後端部がセラミックセパレータ18の内壁面と干渉す
ることが防止され、偏心量も比較的自由に設定できる利
点がある。
【0073】ここで、リード線挿通孔72は、前述のよ
うにセパレータ側ピッチ円C1上に配列しているが、図
21(b)に示すように、発熱体端部収容孔102の内
径d1は、該ピッチ円の直径d2よりも小さく設定されて
いる(すなわちd1<d2)。すなわち、セラミックセパ
レータ18の、隣接するリード線挿通孔72の間に位置
する部分は、リード線20,21,28,29を互いに
分離する隔壁部103として機能するのであるが、発熱
体端部収容孔102の形成に伴い、該隔壁部103は内
側から切り欠かれることとなる。ここで、d1≧d2にな
ると隔壁部103の径方向の長さが短くなり過ぎ、リー
ド線20,21,28,29の分離効果が低下して短絡
等の問題につながる場合がある。
【0074】また、リード線挿通孔72のピッチ円C1
の直径d2と発熱体3の端部の外径Dとの比d2/Dは、
1.7〜2.8の範囲で調整することが望ましい。d2
/Dが1.7未満になると、発熱体3の偏心量を十分に
確保できず、結果として発熱体3の横当り状態が不十分
となってセンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待
できなくなる場合がある。また、d2/Dが2.8を超
えると、リード線20、21、28、29の曲がり量が
大きくなりすぎ、それらリード線に損傷等が生じやすく
なる。また、発熱体端部収容孔102は、その深さhと
内径d1との比h/d1を1.2以下に設定するのがよ
い。例えば、発熱体3を傾斜させて偏心状態を形成する
場合、h/d1が1.2を超えると、収容孔の径d1に対
して深さhが相対的に大きくなり過ぎ、発熱体3の傾斜
量すなわち偏心量を十分に確保できず、同様にセンサ立
ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくなる場合
がある。
【0075】次に、上述のように発熱体3の中心軸線O
1を上述の配置関係で酸素検知素子2の中空部の中心軸
線O2から偏心させ、かつ発熱部42を素子内壁面2a
に弾性的に押し付ける機能を果たしているのは端子金具
23(図1)である。この場合、端子金具23は3つの
役割を果たす。第一は、酸素検知素子2の内側の電極層
2cの出力端子としてリード線20との電気的接続を図
ること、第二は発熱体3を酸素検知素子2の内側に固定
することであるが、これらは従来と同様の機能である。
そして第3の機能が、発熱体3の先端部を素子内壁面2
aに横当たり構造で弾性的に押し付けることである。
【0076】図26に端子金具23の単体状態を、図2
7に端子金具23を発熱体3に組み付けた状態を示す。
これらの図から明らかなように、前述の内部電極接続部
26に関して発熱体3の先端側(すなわち発熱部42に
近い側)に発熱体把持部27が形成されている。発熱体
把持部27は、発熱体3の周囲を包囲するC字状の横断
面形状を有している。そして、発熱体3を未挿入の状態
では該発熱体3の外径よりは少し小さい内径を有し、発
熱体3の挿入に伴い弾性的に拡径してその摩擦力により
該発熱体3を把持するものである。この発熱体把持部2
7は内部電極接続部26の片側の1箇所にのみ設けられ
ている。
【0077】内部電極接続部26は、左右両側の縁に鋸
刃状の接触部26aがそれぞれ複数形成された板状部分
を円筒状に曲げ加工することにより、発熱体3を包囲す
る形態で形成されている。そして、その外周面と酸素検
知素子2の中空部内壁面2aとの間の摩擦力によって発
熱体3を該中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を
果たすとともに、上記複数の接触部26aの各先端部に
おいて内側の電極層2c(図2)と接触・導通するよう
になっている。また、発熱体3との間には所定の隙間が
形成されている。なお、これら両側の接触部26aは、
鋸刃の山に相当する部分と谷に相当する部分とが、左右
両側で互い違いに形成されており、例えばセンサ組立時
において内部電極接続部26を酸素検知素子2の内側に
挿入する際に、左右の接触部26aが同時に酸素検知素
子2の開口縁に引っ掛かったりする等のトラブルが生じ
にくくなり、ひいては内部電極接続部26の酸素検知素
子2に対する組み付けが容易となる効果を有している。
また、鋸刃状の各接触部26aの高さをやや大きく設定
することにより、上記板状部分を筒状に曲げて内部電極
接続部26を形成する際に、その曲げ方向の幅が増大し
て加工が行いやすくなる効果も合わせて達成される。
【0078】また、図27に示すように、発熱体把持部
27の軸方向における酸素検知素子の先端から遠い側の
縁、すなわち前方側の縁には発熱体挿入ガイド部100
が形成されている。具体的には、発熱体把持部27には
軸方向における一方の端縁から他方の端縁に至るスリッ
ト101が形成されており、発熱体挿入ガイド部100
は、該スリット101の両側部分を、該スリットの中間
位置から一方の縁に向けてこれを斜めに切り欠くことに
よりテーパ状に形成されている。
【0079】端子金具23への発熱体3の組付けは、端
子金具23の発熱体把持部27に対し発熱体3を先端側
から挿入することにより行うことができる。発熱体3は
発熱体把持部27に対し、その開口部からこれを径方向
外向きに拡げながら押し込まれる。このとき、発熱体3
の先端縁が把持部27の端縁に引っ掛かってスムーズに
挿入が行えない場合がある。特に、把持部27が径方向
に弾性変形できるように上述のようなスリット101が
形成される場合、そのスリット101の縁で引っ掛かり
が生じやすい。そこで、そのスリット101に上記テー
パ状の発熱体挿入ガイド部100を形成しておけば、該
テーパの作用により発熱体3の挿入がスムーズにガイド
されるので上記引っ掛かりが生じにくくなり、ひいては
端子金具23への発熱体3の組付けを能率的に行うこと
ができる。
【0080】図1に戻り、内部電極接続部26には、発
熱体把持部27が連結されているのとは反対側の端部近
傍において、該発熱体把持部27の内部電極接続部26
への連結部30に対応する位置に、その内面から突出し
て発熱体3の外周面に当接する位置決め用突出部50が
形成されている。この位置決め突出部50は、例えば内
部電極接続部26の壁部をプレス加工等により内向きに
凹ませることにより形成されており、発熱体3を前述の
ように酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2に対して
偏心した状態で位置決めするためのものである。
【0081】酸素検知素子2の中空部内壁面2aには、
これを固体電解質粉末の成形・焼成により製造する際
に、成形時の離型性を高める等の目的で、底部側が縮径
する僅かなテーパが付与されている。これに対し発熱体
3は、図28等に示すように、その中心軸線O1が検知
素子2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置さ
れるわけであるから、発熱体3の基端側に向かうほど、
発熱体3と中空部内壁面2aとの間に形成される隙間を
大きくする必要がある。上記位置決め用突出部50は、
該突出部50の形成位置におけるこの隙間量を所定の値
に規定することにより、発熱体3が発熱部42の近傍に
おいて上記中空部内壁面2aと接触し、かつ2つの中心
軸線O1と中心軸線O2とがほぼ平行となる位置関係を満
足させる役割を果たしている。
【0082】なお、酸素センサ1の製造工程では、発熱
体3に端子金具23を固定した後、このアッセンブリを
酸素検知素子2に挿入するのが普通である。ここで、発
熱体3に対する酸素検知素子2の壁部からの拘束力が存
在しないと仮定した場合に、発熱体把持部27の内部電
極接続部26に対する半径方向の連結位置関係は、発熱
体把持部27と位置決め突出部50とによって該発熱体
3の中心軸線O1が酸素検知素子2の中空部の中心軸線
O2に対し、発熱部42側が該中心軸線O2から遠ざかる
ように少し傾いた状態で保持されるように定められてい
る。これにより、上記アッセンブリの挿入の際に、発熱
体3の先端部は素子内壁面2aに弾性的に接触した状態
でここを滑りつつ内部に挿入され、図27(c)に矢印
で示すように、その中心軸線O1 が中空部の中心軸線O
2と平行となる向きにその傾斜状態が矯正されつつ該検
知素子2に対して装着されることとなる。また、発熱体
把持部27と内部電極接続部26との間の連結部30
は、両側から周方向にU字状の切欠を形成することによ
りくびれた形態で形成されている。そして、発熱体3の
検知素子2への装着時には、これが内向きに弾性変形
し、その弾性復帰力によって発熱体3の発熱部42を検
知素子2の中空部内壁面2aに押し付け、図1のような
横当たり形態を生じさせる。
【0083】この状態で発熱体3には、素子内壁面2a
が発熱体3に及ぼす応力、位置決め突出部50において
発熱体3に作用する応力、発熱体把持部27において発
熱体3に作用する応力とによって、これらの合成による
曲げモーメントが生じるが、その曲げモーメントにより
発熱体3が折れないように、言い換えれば発熱体3の許
容強度範囲以上の応力が生じないようにされている。こ
のような応力ひいては曲げモーメントの調整を図るの
は、内部電極接続部26に隣接するくびれ形態の連結部
30である。
【0084】すなわち、連結部30は、上記挿入工程で
発熱体把持部27及び位置決め用突出部50を介して発
熱体3に付与される曲げ力を吸収・緩和してその折損等
を防止する役割も果たす。そして、その弾性力の調整
は、くびれ部分の幅調整により可能となる。換言すれ
ば、連結部30のくびれ幅を適切に設定することで、上
記弾性力を適度な値に調整でき、図1の発熱体3の横当
たり構造において、素子内壁面2aに対する弾性的な押
付力を必要十分な値に確保できるのである。
【0085】次に、図29(b)に示すように、発熱体
3の外層セラミック部43がセラミック棒45に巻き付
けられた際の接合隙間として、発熱体3の外周の1箇所
に軸方向と平行なスリット状部44が生じ、この近傍で
は抵抗パターン41が存在せず、発熱疎部分となるが、
発熱体3の素子内壁面2aの横当たり構造に際してはこ
のスリット状部44の反対側の発熱部42表面を素子内
壁面2aに当てることが望ましい。これによって充分発
熱する部分から直接的に酸素検知素子2に効果的な熱伝
達が生じる。
【0086】また、酸素検知素子2の中空部内壁面2a
はテーパ状に形成されているが、その内径の平均値(以
下、単に内径という)DAと発熱体3の外径DBとの差Δ
D=DA−DBは0.1〜0.35mm、望ましくは0.1
5〜0.30mmに設定されている。また、上記ΔDの発
熱体3の外径DBに対する比ΔD/DBは、0.13以
下、望ましくは0.10以下に設定されている。
【0087】以下、上記酸素センサ1の作動について説
明する。図28(b)は、発熱体3の中心軸線O1と酸
素検知素子2の中心軸線O2とが同心的な構造の例を示
すもので、これと図28(a)とを比較すると明らかな
ように、図28(a)の例では、酸素検知素子2の中心
軸線O2に対し、発熱体3の中心軸線O1がほぼ平行な状
態で、酸素検知素子2の中心軸線O2から距離δだけ偏
心し、その発熱部42の先端部表面が素子内壁面2aに
側方から押し付けられた、いわば横当たり構造とでも称
すべき形態となっている。なお、図28(a)において
は理解を容易にするために、発熱体3と酸素検知素子2
との隙間は実際のものより誇張して描かれているが、上
述の偏心量δは、素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2
mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、
発熱体3と酸素検知素子2との間で過度な押し付け力を
生ずることなく上記横当り構造を確実なものとするため
に、例えば0.085〜0.385mm程度の大きさに設定
するのがよい。また図28(b)の発熱部42’と比べ
て、図28(a)の発熱部42は、前述のように発熱体
3の先端側により狭い領域に偏って形成されている。
【0088】このような発熱体3の素子内壁面2aに対
する横当たり構造を採用することにより、発熱部42で
生じた熱が上記接触に基づく熱伝導により速やかに酸素
検知素子2に伝わってこれを加熱し、また発熱部42の
上記接触部近傍の局部的に発熱した部分の熱輻射によっ
ても酸素検知素子2が加熱される。そして、その熱伝導
及び熱輻射による相乗的な熱伝達が、酸素検知素子2を
急速に加熱し、活性化温度までの上昇時間を短縮する。
【0089】ここで、図2に示すように酸素検知素子2
は、その素子内壁面2aに横当て状態で配置された発熱
部42により局所加熱されるのであるが、センサの立ち
上がり時間は図28(b)に示す構成のセンサと同等レ
ベルに維持されるか、あるいは却って短縮される。その
要因としては、次のようなことが考えられる。すなわ
ち、酸素イオン電導性固体電解質により形成された酸素
検知素子2に十分な濃淡電池起電力が生じるためには、
酸素検知素子2の電気抵抗値が十分小さくなることのほ
かに、酸素分子に対する解離ないし再結合反応に対する
電極層2b,2cの触媒活性が十分に高められている必
要がある。そして、センサの検出出力レベルは、酸素検
知素子2の電気抵抗値と上記2b,2cの触媒活性の兼
ね合いで決まる。
【0090】ここで、酸素検知素子2が発熱部42によ
り局所加熱されると、固体電解質の活性化による酸素検
知素子2の電気抵抗減少は、例えば図28(b)に示す
構成ほどには進まないが、図2に示すように、その局所
加熱された部分2dはより高温まで加熱されるので、当
該部分で電極層2b,2cの触媒活性が高めらる。そし
て、電極層2bの触媒活性が向上すると被測定ガス中の
酸素分子の解離が促進され、その効果により固体電解質
の濃淡電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補
われ、結果としてセンサの活性化時間(立ち上がり時
間)が短縮されるものと推測される。
【0091】また、発熱体3の中心軸線O1が検知素子
2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置するこ
とにより、発熱部42の側面が検知素子2の中空部内壁
面2aに対しほぼ沿う形となり、発熱部42により酸素
検知素子2の壁部をより均一に加熱することができるよ
うになり、ひいては酸素センサの活性化時間短縮の効果
がさらに高められている。
【0092】さらに、図1に示すように、端子金具23
において、発熱体把持部27が内部電極接続部26に対
し発熱体3の発熱部42に近い側にのみ連結されている
ので、端子金具23の発熱体3の軸線方向における長さ
が短くなり、ひいては酸素センサ1は、その軸線方向の
長さが減じられてコンパクトに構成されている。また、
発熱体3が1ケ所の把持部27により把持される形とし
たから、端子金具23を装着した発熱体3を酸素検知素
子2の中空部内に挿入してセンサ1を組み立てる際に、
前述の通り、端子金具23を介した過剰な横方向の力が
発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体3
の折損等を防止することができる。
【0093】なお、図31及び図32に示すように、端
子金具23においては、2つの発熱体把持部を27a,
27bをそれぞれ連結部29,30を介して、内部電極
接続部26に対しその軸線方向両側に連結する構成とす
ることもできる。また、位置決め突出部50は、発熱体
把持部27a,27bのいずれに形成してもよい。この
場合、発熱体把持部の内径は、位置決め突出部50の突
出量を考慮に入れて大きく設定しておく必要がある。
【0094】例えば、図31においては、発熱部42か
ら遠い側の発熱体把持部27aに形成されている。ま
た、図32は発熱部42から近い側の発熱体把持部27
bに位置決め突出部50を形成した例を示している。こ
の場合は、発熱体3は、連結部29ないし30が位置す
るのとは反対側においてその発熱部42が酸素検知素子
2の中空部内壁面2aに当接している。これにより、発
熱体3は、図33に示すように該側にやや大きく傾い
て、その中心軸線O1が中空部の中心軸線O2と所定の傾
きθで交差する形態となっている。
【0095】なお、図33においては、理解を容易にす
るために発熱体3と酸素検知素子2との隙間や傾きθを
実際のものより誇張して描いている。ここで、発熱部4
2の近傍における中心軸線O1の酸素検知素子2の中心
軸線O2に対する偏心量δと、傾きθとは、素子内壁面
2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.4
3〜2.63mmとしたとき、発熱体3と酸素検知素子2
との間で過度な押し付け力を生ずることなく上記横当り
構造を確実なものとするには、例えばδは0.085〜
0.385mm、またθは0.1〜0.5°程度の大きさと
するのがよい。
【0096】次に、図34に示す構成では、端子金具2
3は図1とほぼ同様に形成された内部電極接続部26を
備え、発熱体3の軸方向において該内部電極接続部26
の一方の側には、前述と同様の第一発熱体把持部27a
が形成される一方、他方の側にも第二発熱体把持部27
bが同様の構成で形成されている。ここで、図35に示
すように、上記1対の発熱体把持部27a,27bは、
その中心軸線が、酸素検知素子2の中空部の中心軸線O
11から偏心してこれとほぼ平行な共通の軸線O10上に位
置するように、内部電極接続部26に対して連結されて
いる。
【0097】具体的には、端子金具23においては、第
一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとが、
内部電極接続部26の各々対応する端部に対し、それぞ
れくびれた形態の第一及び第二連結部29及び30によ
り、発熱体3の径方向において同じ側の周縁に一体的に
接続されている。そして、これら連結部29,30は、
内部電極接続部26の径方向内側に曲げられて段付き部
を形成するとともに、その曲げ量を調整することによ
り、発熱体把持部27a,27bの中心軸線O10は、酸
素検知素子2の中空部の中心軸線O11に対しほぼ平行な
状態で、連結部29,30の形成側とは反対方向に所定
の偏心量dで偏心させられている。この構成によれば、
2つの把持部27a,27bにより発熱体3をより安定
的に保持することができる。
【0098】上述のような端子金具23は、例えば図3
6に示すような形状の板状金属部材123を曲げ加工す
ることにより製造することができる。すなわち、図36
(a)に示すように板状金属部材123は、3つの板状
部127a、126及び127bが、その幅方向中間部
において、連結部29及び30となるべき接続部129
及び130により互いに一体化された形態をなし、同図
(b)〜(d)に示すように、接続部129及び130
の両側に張り出した部分を幅方向において筒状に丸める
ように曲げ加工することにより、それぞれ第一発熱体把
持部27a、内部電極接続部26a及び第二発熱体把持
部27bとなる。また、連結部29及び30は、同図
(e)に示すように、発熱体把持部27a,27bの中
心軸O10が、所期の位置となるように段付き状に曲げ加
工される。
【0099】なお、上記金属板状部材123において、
発熱体把持部27a及び27bとなるべき板状部(第一
の板状部)127a及び127bは、その幅方向両縁部
分が上記曲げ加工により互いに対向してスリット101
を形成するとともに、それぞれ該縁の一方の端部側が斜
めに切り欠かれて、それぞれ前述の発熱体挿入ガイド部
100が形成されている。
【0100】次に、図37の構成においては、図35の
構成と同様に、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把
持部27bとが形成されているが、図38に示すよう
に、第二発熱体把持部27bは、中心軸線O11が第一発
熱体把持部27aの中心軸線O10から距離dだけ偏心し
て設けられている。すなわち、第一発熱体把持部27a
と第二発熱体把持部27bとは、内部電極接続部26の
各々対応する端部に対し、それぞれくびれた形態の第一
及び第二連結部29及び30により、発熱体3の径方向
において同じ側の周縁に一体的に接続されている。そし
て、これら第一及び第二連結部29及び30は、内部電
極接続部26の径方向内側に曲げられて段付き部を形成
するとともに、その曲げ量を調整することにより、第一
発熱体把持部27a及び第二発熱体把持部27bの中心
軸線O10,O11間の偏心量dが調整されている。該構成
によれば、発熱体3は、互いに偏心した2つの把持部2
7a27bにより傾斜状態で保持されて素子内壁面2a
に押し付けられる。これにより、発熱体3はその傾斜状
態をより安定的に保持することができ、発熱部3の横当
て効果がさらに確実に達成される。
【0101】ここで、第一発熱体把持部27a及び第二
発熱体把持部27bの中心軸線O10,O11間の偏心量d
は、例えば次のようにして設定することができる。すな
わち、理解を容易にするために図39に誇張して示すよ
うに、発熱体3の中心軸線O1と酸素検知素子2の中空
部の中心軸線O2とのなす角度θは、例えば素子内壁面
2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.4
3〜2.63mmとしたとき、θは前述と同様に0.1〜
0.5°程度の大きさとするのがよいが、第一発熱体把
持部27aと第二発熱体把持部27bとの軸方向端面間
の距離をLとすれば、tanθ=d/Lであり、tan
0.1°=0.0017、tan0.5°=0.008
7であるから、0.0017L≦d≦0.0087Lと
なるようにdを設定すればよい。
【0102】なお、本構成においても、両発熱体27
a,27bに発熱体挿入ガイド部100が形成されてい
る。すなわち、2つの把持部27a,27bが設けら
れ、しかも発熱体3を傾斜状態で保持するためにそれら
が互いに偏心した位置関係で形成されているので、発熱
体3は上側の把持部27aに挿入された後、下側の把持
部27bへは偏心状態で進入しようとする。そのため、
該下側の把持部27bにおいては前述の引っ掛かりの問
題が特に生じやすい。そこで、上述のように発熱体挿入
ガイド部100を形成することで、このような構成にお
いても発熱体3を端子金具23に対しスムーズに組み付
けることができる。なお、上側の把持部27aについて
は下側の把持部27bほどには引っ掛かりの問題が生じ
ないことから、下側の把持部27bにのみ発熱体挿入ガ
イド部100を形成するようにしてもよい。
【0103】続いて、図40の構成においては、発熱体
把持部27は内部電極接続部26に対し、図1と同様
に、1ケ所にのみ設けられているが、図1と異なり位置
決め突出部50が形成されていない。この構成によれ
ば、発熱体3は1ケ所の把持部27により、軸線と交差
する向きにおいて若干の動きの自由度を生じた状態で把
持されることとなる。従って、発熱体3を端子金具23
とともに酸素検知素子2の中空部内に挿入すると、該発
熱体3は、先端部が酸素検知素子2の内壁面との接触す
るに伴い、これに追従して該内壁面に沿う形で位置決め
され、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大
きな効果を期待することができるようになる。この場
合、ΔDないしΔD/DBを前述の範囲で調整すること
により、発熱体3の先端部は酸素検知素子2の中空部内
壁面にさらに沿いやすくなり、酸素センサ1の活性化時
間を短縮する効果が一層高められる。
【0104】また、別の効果としては、センサ1を組み
立てる際に、端子金具23を介した過剰な横方向の力が
発熱体3に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体
3の折損等を防止することができる。さらに、端子金具
23の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいて
は酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコン
パクトに構成できるようになる。
【0105】次に、図41に示す構成では、内部電極接
続部26の軸方向後端側に発熱体把持部27が接続され
る一方、前端側にはガイド部28が接続されている。ガ
イド部28は、ほぼ半円状の横断面形状をなし、かつ端
子金具23の中心軸線、詳しくは発熱体把持部27及び
内部電極接続部26の中心軸線に関して所定角度だけ内
側に傾斜して形成されている。これによってガイド部2
8は、発熱体3をその軸方向とほぼ垂直方向に押して素
子内壁面2aに押し付ける。
【0106】さて、本発明の請求項に記載した酸素セン
サの構成には、以下に述べる各発明の内容を少なくとも
1つ付け加えることができる。
【0107】発明(A) この発明の酸素センサは、下記のように構成されること
を特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状の酸素
検知素子と、酸素検知素子を収容する筒状のケーシング
と、そのケーシングとは独立した筒状体としてこれにほ
ぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自
身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに
対し後方側から連結されるフィルタアセンブリと、フィ
ルタアセンブリとケーシングとを互いに結合する結合部
を備える。そして、そのフィルタアセンブリは、ケーシ
ングに対し後方側からほぼ同軸的に連結される筒状形態
をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、か
つ壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィル
タ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を内面側か
ら又は外面側から塞ぐように配置され、液体の透過は阻
止し気体の透過は許容するフィルタと、フィルタをフィ
ルタ保持部に対して固定する補助フィルタ保持部とを備
えて構成され、それらフィルタ及び気体導入孔を経て外
気がケーシング内に導入される。また、該酸素センサに
おいては、ケーシングとフィルタアセンブリとを互いに
別体に形成し、フィルタアセンブリをケーシングの後方
側に配置して、その後結合部を形成することにより、そ
れらケーシングとフィルタアセンブリとを互いに連結す
ることができる。
【0108】該酸素センサの特徴の要旨は、フィルタを
含む気通構造部をフィルタアセンブリとしてケーシング
とは独立に構成し、これをケーシングに連結・一体化し
た構成を有する点にある。これにより、次のような効果
が達成される。 フィルタアセンブリの組立ては、酸素検知素子などの
ケーシング内への組付けとは独立に行うことができるの
で、例えば検知素子のリード線が邪魔になったりせず、
組立作業を極めて能率的に行うことができる。 ケーシング内への部品の組付けと、フィルタアセンブ
リの組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に
向上する。また、フィルタの組付け不良などが生じて
も、フィルタアセンブリの段階で不良が発見できれば、
センサ完成品に該不良の影響は及ばず、部品等の無駄等
が生じにくい。
【0109】フィルタアセンブリは、ケーシングの後方
側に対し内部が互いに連通するようにこれと同軸的かつ
一体的に設けられ、壁部に1ないし複数の気体導入孔が
形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側
において気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過
は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィル
タの外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし
複数の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィル
タをフィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フ
ィルタ保持部とを備えたものとして構成できる。この場
合、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より
外気がケーシング内に導入される。すなわち、内外のフ
ィルタ保持部によりフィルタを確実に保持することがで
き、フィルタ保持部へのフィルタの組付けも容易であ
る。例えばフィルタを円筒状に形成した場合、フィルタ
保持部に対し該フィルタを外挿し、さらにその外側から
保持フィルタ保持部を嵌め入れ、気体導入孔及び補助気
体導入孔と干渉しない位置において、フィルタ保持部と
補助フィルタ保持部とを結合する保持部結合部を形成す
ればよい。
【0110】気体導入孔及び補助気体導入孔は、それぞ
れフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対し、軸方
向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿
って所定の間隔で複数個形成することができる。これに
より、フィルタアセンブリ側からケーシング内へ外気を
偏りなく導入することができる。また、フィルタ保持部
を周方向に取り囲むように、例えば筒状のフィルタをそ
の外側に配置し、補助フィルタ保持部には保持部結合部
として、フィルタを挟んで該補助フィルタ保持部をフィ
ルタ保持部に向けてかしめることにより、その周方向に
沿って環状のフィルタかしめ部を形成することができ
る。保持部結合部を環状のフィルタかしめ部とすること
で、フィルタアセンブリの組立てが一層容易となる。な
お、この環状のかしめ部は、軸方向において気体導入孔
及び補助気体導入孔の列を挟む両側に形成できる。この
場合、各かしめ部において、補助フィルタ保持部とフィ
ルタ保持部との間にフィルタの縁を挟み込む形にするこ
とで、補助気体導入孔からフィルタの縁を迂回してフィ
ルタ保持部の気体導入孔ヘ至る経路が形成されにくくな
り、ここを通って水等がフィルタ保持部内側ひいてはケ
ーシング内側へ漏れ込む可能性も小さくなる。
【0111】また、フィルタを上述のように筒状に形成
してフィルタ保持部の外周に沿うように配置する場合、
補助フィルタ保持部の後端縁側には周方向に沿ってフィ
ルタかしめ部を形成することができる。そして、該補助
フィルタ保持部の後端側には、フィルタ保持部との間に
位置するフィルタを目視するためのフィルタ確認部を形
成できる。このようにすれば、次のような利点がある。
すなわち、フィルタ保持部に筒状のフィルタを外挿し、
その状態でさらに補助フィルタ保持部をフィルタ保持部
に対して軸方向に相対移動させながら嵌め入れる際に、
フィルタが補助フィルタ保持部と連れ移動して位置ずれ
を起こすことがありうる。この場合、万一この状態でフ
ィルタかしめ部が形成されれば、かしめ部からフィルタ
が外れてシールが不完全となるのであるが、フィルタ確
認部においてフィルタが上述のように目視できるように
なっていることで、そのようなフィルタのかしめ不良を
容易に発見できる。
【0112】また、補助フィルタ保持部の前端縁側にフ
ィルタかしめ部を形成する場合、そのフィルタかしめ部
においてフィルタを部分的に露出させるフィルタ確認露
出部を形成することもできる。こうすれば、補助フィル
タ保持部の前端縁側においてもかしめ部においてフィル
タが正常にかしめられているか否かを容易に判別でき
る。
【0113】次に、フィルタアセンブリは、ケーシング
に対し各種方法により連結することができる。例えば、
フィルタ保持部は、その先端側においてケーシングに対
し外側からこれに重なりを生じるように配置することが
でき、その重なり部においてフィルタ保持部をケーシン
グに向けてかしめることにより、それらの周方向に連結
部としての環状のアセンブリ連結かしめ部を形成して、
そのアセンブリ連結かしめ部により、フィルタ保持部の
内周面をケーシング外周面に対して気密状態で圧接する
構成とすることができる。すなわち、フィルタアセンブ
リをアセンブリ連結かしめ部によりケーシングに対して
容易に組みつけることができる。なお、かしめ部に代え
て、あるいはかしめ部とともに、環状の溶接部(例え
ば、抵抗溶接部あるいはレーザー溶接部)を形成するよ
うにしてもよい。
【0114】次に、フィルタ保持部は、自身の軸方向中
間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して
軸方向前方側を第一部分、同じく軸方向後方側を第二部
分として、該第二部分が第一部分よりも径小となるよう
に構成することができる。この場合、気体導入孔は、そ
の第二部分の壁部に形成することができる一方、第一部
分には、ケーシングの後端部を上記段付き部に直接又は
他部材を介して間接的に当接する位置まで挿入する構成
とすることができる。また、ケーシングに対する重なり
部は第一部分に形成され、ここに前述のアセンブリ連結
かしめ部(あるいは溶接部)を形成することができる。
【0115】上記構成によれば、段付き部を利用して、
フィルタ保持部のケーシングに対する軸方向の位置決め
を簡単に行うことができる。また、径小側の第二部分に
気体導入孔を形成し、ここにフィルタ及び補助フィルタ
保持部を外側から嵌め入れる構成とすれば、例えばフィ
ルタ保持部を第二部分が上となるように立てた状態で、
上側からフィルタ及びフィルタ保持部を順次外挿する際
に、段付き部にそれらフィルタ及びフィルタ保持部を当
てて止めることができるので、フィルタアセンブリの組
立てがさらに容易になる。この場合、補助フィルタ保持
部の内径は、第一部分の外径よりも小さく設定しておく
必要がある。
【0116】また、上記酸素センサには、酸素検知素子
からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線
挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレ
ータを設けることができる。この場合、該セラミックセ
パレータは、酸素検知素子の軸方向において後方側がフ
ィルタ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシ
ングの内側に入り込むように配置することができる。セ
ラミックセパレータの一部をフィルタ保持部の内側に進
入させることで、該セラミックセパレータの後方側にお
いてフィルタ保持部内に形成される空きスペースが小さ
くなり、ひいてはその分だけ酸素センサの軸方向の長さ
が減じて全体をコンパクトに構成できるようになる。
【0117】この場合、セラミックセパレータには、そ
の軸方向中間位置においてその外周面から突出する形態
でセパレータ側支持部を、例えばフランジ状に形成する
ことができる。そして、該セラミックセパレータは、セ
パレータ側支持部よりも前方側に位置する部分を前記ケ
ーシングの後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレ
ータ側支持部においてケーシングの後端面に対し直接又
は他部材を介して間接的に当接する一方、該セパレータ
側支持部によりも後方側に位置する部分をケーシングの
外側に突出させた状態で配置することができる。また、
フィルタ保持部は、軸方向中間に前述の段付き部が形成
される場合、セラミックセパレータの突出部分を第二部
分の内側まで進入させてこれを覆うとともに、段付き部
においてセパレータ側支持部に対し、ケーシングとは反
対側から直接又は他部材を介して間接的に当接するよう
に配置することができる。すなわち、ケーシングの端面
とフィルタ保持部の段付き部との間でセパレータ側支持
部を挟み付けることにより、ケーシング内でセラミック
セパレータを、より安定的に支持することが可能とな
り、ひいてはがたつき等によるセパレータの割れや欠け
といったトラブルも生じにくくなる。
【0118】例えば、セラミックセパレータには、気体
導入孔から流入した外気をケーシング内側へ導く気通用
連通部を、その後端面から前端面まで軸方向に貫通した
形で形成することができる。これにより、基準ガスとし
ての外気を確実かつ速やかに酸素検知素子内部まで導く
ことができるが、何らかの要因により気体導入孔から水
滴等が進入した場合には、上記気通用連通部を介してそ
の水滴が酸素検知素子の内側へ漏れ込む可能性がある。
この場合、セラミックセパレータの後端面を、気体導入
孔よりも後方側に位置させるようにすれば、水滴が仮に
浸入しても、これが気通用連通部からケーシング内に漏
れ込むためには、セラミックセパレータの後端面側に迂
回しなければならないため、水滴が酸素検知素子側へ漏
れ込む可能性をより小さくすることができる。
【0119】発明(B) この発明の酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、
該酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、外気を
ケーシング内に導入するための気体導入構造部とを有す
る。該気体導入構造部は、ケーシングの後方側に同軸的
に設けられる筒状形態をなすとともに、内部が該ケーシ
ングと連通し、かつ壁部に1ないし複数の気体導入孔が
形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体
導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体
の透過は許容するフィルタとを有し、フィルタ及び気体
導入孔を経て外気をケーシング内に導入させる。そし
て、気体導入構造部の外側には、これを覆う筒状形態を
なし、フィルタへの直接的な液滴の噴射あるいは油や汚
れ等の付着物の付着を阻止ないし抑制する防護カバーが
設けられる。
【0120】すなわち、気体導入構造部において液体の
透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタを設け、さ
らにその外側に防護カバーを設けることで、ケーシング
内への水滴等の侵入が一層起こりにくくなる。これによ
り、酸素センサが車両の足周り部分に取り付けられた場
合、水溜まりなどの水を強く跳ね上げながら走行した
り、あるいは洗車時に高圧の水が直接フィルタに当たっ
た場合等においても、上上記フィルタとの組合せによ
り、センサ内への水滴等の侵入を効果的に防止すること
ができる。
【0121】気体導入構造部は、ケーシングの後方側に
対し内部が互いに連通するようにこれと同軸的かつ一体
的に設けられ、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成
されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側にお
いて気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻
止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタの
外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし複数
の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィルタを
フィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フィル
タ保持部とを備えたものとして構成できる。この場合、
補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より外気
がケーシング内に導入される。すなわち、内外のフィル
タ保持部によりフィルタを確実に保持することができ、
フィルタ保持部へのフィルタの組付けも容易である。例
えばフィルタを円筒状に形成した場合、フィルタ保持部
に対し該フィルタを外挿し、さらにその外側から保持フ
ィルタ保持部を嵌め入れ、気体導入孔及び補助気体導入
孔と干渉しない位置において、フィルタ保持部と補助フ
ィルタ保持部とを結合する保持部結合部を形成すればよ
い。
【0122】防護カバーは、気体導入孔に対応する位置
においてフィルタとの間に気体滞留空間を生じた状態
で、その軸方向において気体導入孔を挟んだ両側部分が
をフィルタ保持部の外面に対しカバー接合部により接合
することができ、また、気体滞留空間を外部と連通させ
てこれに外気を導入する外部連通部を設けることができ
る。これにより、基準ガスとしての外気は外部連通部か
ら防護カバーの内側へ導かれ、また、その導かれた外気
は気体滞留空間の形成により、フィルタをスムーズに流
通することができるので、防護カバーを設けたにも拘わ
らず、外気(基準ガス)のケーシング内へ支障なく導く
ことができる。
【0123】この場合、カバー接合部は、防護カバーの
周方向に沿って環状に形成することができ、外部連通部
は、防護カバーとフィルタ保持部との間において、環状
のカバー接合部を横切る通路状に形成することができ
る。すなわち、環状のカバー接合部によりカバー部材内
側への水滴等の侵入がより起こり難くなり、しかもこれ
を横切る通路状の外部連通部の形成により、外気のカバ
ー部材内への導入は支障なく行うことができる。
【0124】このような構造は、以下のようにして比較
的簡単に実現することができる。すなわち、気体導入孔
よりも前方側においてフィルタ保持部の外周面に、該フ
ィルタ保持部の軸方向に延びる外部連通部としての所定
長の溝部を周方向に沿って所定の間隔で複数形成する。
また、カバー接合部は、防護カバーをフィルタ保持部に
向けてかしめることにより、各溝部を横切るように、か
つ該溝部の底部において防護カバーとフィルタ保持部と
の間に隙間が残留するように形成された環状のかしめ部
とする。これにより、該防護カバーとフィルタ保持部と
の間に形成される隙間の前方側開口部から、溝部を通っ
て気体滞留部へ外気が導かれることとなる。この場合、
溝部底部に上記隙間が確保できる程度にかしめの圧力及
び溝部の深さを調整すればよい。
【0125】なお、防護カバーの前方側端縁は、上記各
溝部の端よりも所定長だけ前方側まで延ばすことができ
る。これにより、酸素センサに水しぶき等がかかった場
合に、防護カバーの内側へ水滴等が侵入する確率をさら
に小さくすることができる。
【0126】次に、フィルタ保持部は、自身の軸方向中
間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して
軸方向前方側を第一部分、同じく後方側を第二部分とし
て、該第二部分が第一部分よりも径小となるように形成
することができる。この場合、気体導入孔はその第二部
分の壁部に形成される。これによれば、例えばフィルタ
保持部を第二部分が上となるように立てた状態で、上側
からフィルタ及びフィルタ保持部を順次外挿する際に、
段付き部にそれらフィルタ及びフィルタ保持部を当てて
止めることができるので、気体導入構造部の組立てが容
易になる。この場合、補助フィルタ保持部の内径は、第
一部分の外径よりも小さく設定しておく必要がある。
【0127】上記構造において、溝部は第一部分の外周
面に形成することができる。また、防護カバーは、その
前方側端部において該第一部分に対し環状のかしめ部に
より固着され、後方側端部において第二部分の末端部外
周面に別のかしめ部により固着される。これにより、防
護カバーとフィルタ保持部の径小の第二部分との間に気
体滞留空間を形成しやすくなる。
【0128】また、この発明の酸素センサには、酸素検
知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリ
ード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミック
セパレータを設けることができる。そして、そのセラミ
ックセパレータには、その軸方向中間位置においてその
外周面から突出するフランジ状のセパレータ側支持部を
形成することができる。セラミックセパレータは、セパ
レータ側支持部よりも前方側に位置する部分をケーシン
グの後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側
支持部においてケーシングの後端面に対し直接又は他部
材を介して間接的に当接するように配置される。そし
て、カバー接合部としての環状のかしめ部は、フランジ
状のセパレータ側支持部の外周面に対応する位置に形成
することができる。これにより、かしめ部形成の際の圧
縮力を、フランジ状のセパレータ側支持部の外周面で受
けることができるので、かしめ部の形成を確実に行うこ
とができる。
【0129】発明(C) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸
素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシ
ングと、気体導入構造部とを備える。この気体導入構造
部は、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒
状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通
し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィ
ルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導
入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の
透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置
される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体
導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保
持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部と
を備え、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔
より外気をケーシング内に導入させる役割を果たす。そ
して、上記フィルタは、補助フィルタ保持部の内面に対
し少なくとも補助気体導入孔の周囲においてこれに密着
する一方、フィルタ保持部の外面とフィルタとの間に
は、少なくとも気体導入孔の周囲において所定量の隙間
が形成される。
【0130】このように構成された酸素センサにおいて
は、フィルタを透過してくる外気は、内側に環状の隙間
が形成されていることで流通抵抗が和らげられ、気体導
入孔を通ってスムーズにケーシング内に導入できる。一
方、フィルタの外面は補助フィルタ保持部の内面と密着
しているので、補助気体導入孔からフィルタと補助フィ
ルタ保持部との間にゴミや油分あるいは水滴等のたまり
が生じにくくなり、ひいてはフィルタの外面側の撥油性
あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制されて、常時良
好な通気性が確保される。また油分のたまりが生じにく
くなることで、高温で揮発した油分の蒸気がフィルタを
通ってセンサ内部に侵入することが抑制される。これに
より、例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、セン
サ出力の低下が起こりにくくなる。
【0131】補助フィルタ保持部には、補助気体導入孔
を挟んでその軸方向両側に、フィルタを介して該補助フ
ィルタ保持部をフィルタ保持部に対して結合するフィル
タかしめ部を形成することができる。補助フィルタ保持
部のそれらフィルタかしめ部の間に位置する部分は、フ
ィルタとともに外向きに橈んで凸状形態をなし、その凸
状部の頂部に補助気体導入孔を形成することができる。
そして、その凸状部の頂部を、少なくとも該補助気体導
入孔の周囲において平坦化し、その平坦化された部分に
おいてフィルタ保持部の内面をフィルタに対して密着さ
せることができる。すなわち、補助気体導入孔を挟んで
その両側にフィルタかしめ部を形成すると、補助フィル
タ保持部はかしめ部の間の部分が上述のように外向きに
橈んで凸状部となるが、その凸状部の頂部を平坦化する
ことで、補助フィルタ保持部をフィルタとの間の密着構
造を簡単に実現できる。なお、補助フィルタ保持部に上
記平坦化部分を形成する方法としては、平坦化部材を用
いて凸状部の膨出をその頂部において規制しつつフィル
タかしめ部を形成する方法を例示できる。
【0132】この場合、かしめ部に挟まれた部分におい
て、補助フィルタ保持部とフィルタとはフィルタ保持部
の対応する部分よりも大きく外側に橈み、該フィルタ保
持部とフィルタとの間には、補助フィルタ保持部とフィ
ルタ保持部との橈み量の差に基づいて上記隙間を形成す
ることができる。すなわち、補助フィルタ保持部にはか
しめに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部における橈み
量も大きくなるが、内側のフィルタ保持部はそれほど圧
縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタは柔軟
であるので、補助フィルタ保持部に追従して外向きに橈
むこととなる。その結果、フィルタ保持部とフィルタと
の間には、フィルタ保持部と補助フィルタ保持部との橈
み量の差に基づいて隙間を簡単に形成することができ
る。
【0133】気体導入孔及び補助気体導入孔は、それぞ
れフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対し、軸方
向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿
って所定の間隔で複数個形成することができる。これに
より、気体導入構造部側からケーシング内へ外気を偏り
なく導入することができる。また、フィルタ保持部を周
方向に取り囲むように例えば筒状のフィルタをその外側
に配置し、補助フィルタ保持部には保持部結合部とし
て、フィルタを挟んで該補助フィルタ保持部をフィルタ
保持部に向けてかしめることにより、その周方向に沿っ
て環状のフィルタかしめ部を形成することができる。具
体的には、この環状のかしめ部は、軸方向において気体
導入孔及び補助気体導入孔の列を挟む両側に形成でき
る。この場合、各かしめ部において、補助フィルタ保持
部とフィルタ保持部との間にフィルタの縁を挟み込む形
にすることで、補助気体導入孔からフィルタの縁を迂回
してフィルタ保持部の気体導入孔ヘ至る経路が形成され
にくくなり、ここを通って水等がフィルタ保持部内側、
ひいてはケーシング内側へ漏れ込む可能性も小さくな
る。この場合、凸状部はそれらかしめ部の間において環
状に形成され、また、凸状部の頂部は環状に平坦化さ
れ、その平坦化部分に複数の補助気体導入孔が形成され
ることとなる。
【0134】なお、フィルタ保持部には、少なくとも気
体導入孔の周囲において内向きに凹む凹状部を形成し、
その凹状部においてフィルタとの間に隙間を形成するよ
うにしてもよい。この場合、凹状部は、気体導入孔の周
縁部分を凹ませたディンプル状に形成してもよいし、各
気体導入孔の配列方向に沿う環状に形成してもよい。
【0135】発明(D) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸
素検知素子と、酸素検知素子を収容する筒状のケーシン
グと、そのケーシングに対し内部が連通するようにこれ
と同軸的に設けられるとともに、該ケーシングに対し軸
方向後方側から連結されるカバー部材とを備える。カバ
ー部材は、その軸方向前方側においてケーシングに対し
外側からこれに重なりを生じるように配置される。そし
て、その重なり部には、該カバー部材を前記ケーシング
に向けてかしめることにより、それらの周方向に円環状
に形成された主かしめ部と、該円環状の主かしめ部にお
いてカバー部材とケーシングとが、それらの軸線周りに
おいて相対的に回転することを阻止する回転阻止部とが
形成される。
【0136】上記構成によれば、主かしめ部において
は、ケーシングとカバー部材との間の接触面が円筒状面
となるので気密性に優れ、それらの間からケーシング内
に水等が漏れ込むことが確実に阻止される。また、該主
かしめ部と共に回転阻止部を形成することで、ケーシン
グとカバー部材との間に軸線回りの捩じり力が作用して
も、両者の間に相対的な回転が生じにくく、ひいては上
記主かしめ部における気密性を一層確実なものととする
ことができる。
【0137】回転阻止部は、カバー部材の軸線方向にお
いて主かしめ部の少なくとも一方の側に、該カバー部材
をケーシングに向けてかしめることにより形成された補
助かしめ部とすれば、その形成も容易で回転阻止効果に
も優れる。補助かしめ部は、具体的には、カバー部材の
軸線方向において主かしめ部に対し所定の間隔で隣接
し、かつ該カバー部材の周方向に沿う環状に形成するこ
とができる。環状形態の補助かしめ部を主かしめ部に隣
接して形成することで、回転阻止効果が一層高められ
る。この場合、さらに具体的には、補助かしめ部の軸断
面形状を多角形状とすることができる。こうすれば、ケ
ーシングとカバー部材との接触面が角筒状となり、捩じ
り力が作用した場合のケーシングとカバー部材との間の
相対的な回転が極めて生じにくくなる。
【0138】なお、補助かしめ部は、主かしめ部よりも
酸素検知素子に近い側に形成するのがよい。すなわち、
酸素センサの先端側は高温にさらされることが多いの
で、気密性確保が優先される主かしめ部がそのような熱
源から遠くなる上記配置関係がより望ましいといえる。
【0139】また、主かしめ部と補助かしめ部とは、そ
れぞれカバー部材を周方向外側から圧縮する複数のかし
めパンチを含むとともに、カバー部材の軸線方向におい
て所定距離だけ隔たった位置関係で配置される2組のか
しめパンチユニットを用いて一括して形成することがで
きる。この方式によれば、主かしめ部と補助かしめ部と
が1回のかしめ工程により同時形成されるので能率的で
あるばかりでなく、次のような効果も合わせて達成され
る。すなわち、かしめパンチによる圧縮により、カバー
部材がケーシングに向けて局所的に食い込みつつ圧接さ
れてかしめ部が形成されるのであるが、その圧接部の周
囲においてカバー部材には、食込変形に伴うしわ寄せ部
あるいは浮き上がり部が形成されやすい。ここで、主か
しめ部と補助かしめ部とを順次的に形成した場合、後で
形成するかしめ部によるしわ寄せ部あるいは浮き上がり
部の影響が先に形成したかしめ部に及び、気密性が損な
われる問題が生じやすい。しかしながら、上述のように
両かしめ部を同時に形成するようにすれば、しわ寄せ部
あるいは浮き上がり部の影響をそれらかしめ部の間の領
域にプールすることができ、ひいてはいずれのかしめ部
においても十分な密着性すなわち気密性を確保すること
ができるようになる。
【0140】なお、上記酸素センサの構成においてカバ
ー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれに
ほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が
自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシング
に対し後方側から連結される発明(A)のフィルタアセ
ンブリとすることができる。
【0141】発明(E) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸
素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシ
ングと、気体導入構造部とを備える。気体導入構造部
は、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒状
形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通
し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィ
ルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導
入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の
透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置
される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体
導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保
持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部と
を備え、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔
より外気をケーシング内に導入させる。フィルタ保持部
は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部により、
該段付き部に関して軸方向前方側を第一部分、同じく軸
方向後方側を第二部分として、該第二部分が前記第一部
分よりも径小となるように構成されており、気体導入孔
はその第二部分の壁部に形成される。補助フィルタ保持
部は、フィルタ保持部の第一部分と第二部分とにまたが
るように配置される。そして、上記第二部分に対応する
位置において、フィルタ部を挟んでフィルタ保持部と補
助フィルタ保持部とを互いに結合する主結合部と、第一
部分に対応する位置において、フィルタ保持部と補助フ
ィルタ保持部とを互いに結合する補助結合部とが形成さ
れる。
【0142】上記構成の酸素センサにおいては、フィル
タ保持部が段付き部を介して互いに隣接する異径の第一
部分と第二部分の少なくとも2部分からなり、補助フィ
ルタ保持部がそれら2部分にまたがる筒状に形成され、
その第二部分に主結合部が形成されるのに加え、第一部
分に補助結合部を形成するようにしたから、補助フィル
タ保持部とフィルタ保持部との間に軸線周りの捩じり力
が付加されても、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部
との間に相対的な回転が生じにくい。その結果、両者の
間で保持されるフィルタのシールが破れにくく、ケーシ
ング内部への水滴等の侵入が起こりにくい。
【0143】上記構成においてフィルタは、フィルタ保
持部の第二部分のみを周方向に取り囲むように配置する
ことができる。この場合、主結合部は、フィルタを挟ん
で補助フィルタ保持部をフィルタ保持部の第二部分に向
けてかしめることにより、該第二部分の周方向に沿って
形成された環状の主かしめ部とすることができる。ま
た、補助結合部は、補助フィルタ保持部をフィルタ保持
部の第一部分に向けて直接的にかしめることにより、該
第一部分の周方向に沿って形成された環状の補助かしめ
部とすることができる。この構成によれば、主結合部と
補助結合部とをかしめにより簡単に形成でき、しかも補
助フィルタ保持部及びフィルタ保持部との間でのフィル
タのシール性も良好に確保できる。また、補助かしめ部
においては補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間
にフィルタが介在せず、両者が直接的にかしめられるの
で捩じりに対する強度が一層高められる。
【0144】また、気体導入孔及び補助気体導入孔は、
それぞれフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対
し、軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周
方向に沿って所定の間隔で複数個形成することができ、
主かしめ部は、気体導入孔ないし補助気体導入孔の列を
挟んで両側に形成された2本のかしめ部を含むものとす
ることができる。この構成によれば、気体導入構造部に
おいてケーシング内へ外気を偏りなく導入することがで
きる。また上記2本の主かしめ部によりフィルタのシー
ル性が一層良好に確保される。
【0145】発明(F) この発明の酸素センサは、下記のように構成されること
を特徴とする。 軸状の酸素検知素子。 酸素検知素子を収容する筒状のケーシング。 セラミックセパレータ:ケーシングに対し同軸的に設
けられるとともに、該ケーシングの後端部に形成された
ケーシング側支持部において直接又は他部材を介して間
接的に支持され、酸素検知素子からの各リード線がそれ
ぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通し
て形成される。 カバー部材:該ケーシングと同軸的に配置され、各リ
ード線が自身の後方外側に延びることを許容しつつ、セ
ラミックセパレータを外側から覆った状態でケーシング
に対し後方側から連結される。 金属弾性部材:カバー部材とセラミックセパレータと
の間、及びケーシング側支持部とセラミックセパレータ
との間の少なくともいずれかに圧縮状態で配置され、カ
バー部材とケーシング側支持部との間において、セラミ
ックセパレータに対する挾圧保持力を生じさせる。
【0146】上記構成において金属弾性部材は、カバー
部材とケーシングとの間で、セラミックセパレータに対
する適度な挾圧保持力を生じさせてがたつきを防止し、
その固定・保持をより確実なものとする一方、酸素セン
サの組立時等において自身の弾性変形により、セラミッ
クセパレータのセパレータ側支持部に過度な挾圧力が作
用することを抑制し、ひいてはそれによるセラミックセ
パレータの割れや欠けを防止する役割を果たす。そし
て、金属弾性部材は、その構成材質が金属であることか
ら耐熱性に優れ、高温で厳しい使用環境下でもセラミッ
クセパレータのがたつき防止効果を長期に渡って良好に
維持することができる。
【0147】セラミックセパレータには、その外周面か
ら突出してセパレータ側支持部を形成することができ
る。該セパレータ側支持部は例えばセラミックセパレー
タの周方向に沿うフランジ状に形成できる。また、金属
弾性部材は、セラミックセパレータに外挿され、カバー
部材とセパレータ側支持部との間、及びケーシング側支
持部とセパレータ側支持部との間の少なくともいずれか
に圧縮状態で配置されるばね座金とすることができる。
金属弾性部材をこのようなばね座金とすることで、セラ
ミックセパレータに対するその組付けを極めて簡単に行
うことができ、また弾性力も充分に確保することができ
る。なお、具体的にはばね座金として波型座金、すなわ
ちリング周方向において軸方向の波型のうねりを形成し
た座金を使用することができる。これにより、セラミッ
クセパレータに対し、軸線回りに比較的均一な挾圧力を
生じさせることができ、セラミックセパレータをより安
定的に支持することができる。
【0148】次に、セパレータ側支持部は、セラミック
セパレータの軸方向中間位置に形成することができる。
この場合、セラミックセパレータは、軸方向において前
方側部分をケーシングの後端部内側に収容するととも
に、ケーシングの開口端面部をケーシング側支持部とし
て、これにセパレータ側支持部を直接又は他部材を介し
て間接的に当接させる一方、後方側部分をケーシングの
外側に突出させた状態で配置することができる。また、
カバー部材は、セラミックセパレータの突出部分を外側
から覆うものとし、その内周面の軸方向中間位置には、
ケーシングの開口端面部とは反対側からセパレータ側支
持部に対し直接又は他部材を介して間接的に当接するカ
バー側支持部を形成することができる。そして、ばね座
金は、カバー側支持部とケーシングの端面との少なくと
も一方とセパレータ側支持部との間に配置することがで
きる。該構成では、セパレータ側支持部をセラミックセ
パレータの軸方向中間位置に形成し、セラミックセパレ
ータのセパレータ側支持部よりも前方側部分をケーシン
グ内に収容し、後方側部分をカバー部材内に収容するこ
とで、セラミックセパレータをより安定的に保持でき
る。
【0149】また、カバー部材は、自身の軸方向中間部
に形成された段付き部により、該段付き部に関して軸方
向前方側を第一部分、同じく後方側を第二部分として、
該第二部分が第一部分よりも径小となるように形成する
ことができる。そして、その段付き部をカバー側支持部
として、該カバー側支持部とセパレータ側支持部との間
にばね座金を配置することができる。すなわち、上記構
成の酸素センサを組み立てる場合、筒状のケーシングを
立てた状態でセラミックセパレータをその上側の開口部
から挿入するようにし、さらにカバー部材を上側から被
せるようにすれば能率がよい。この場合、ばね座金を上
述のように配置すれば、ケーシングに挿入した状態のセ
ラミックセパレータに対し該ばね座金を簡単かつ確実に
外挿することができ、センサの組立を一層能率よく行う
ことができる。また、カバー部材を上述のように段付き
構造とすることで、その段付き部とセパレータ側支持部
との間でばね座金を確実に挾圧することができる。
【0150】なお、上記酸素センサの構成においてカバ
ー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれに
ほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が
自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシング
に対し後方側から結合部により連結される前記発明
(A)のフィルタアセンブリとすることができる。
【0151】発明(G) この発明の酸素センサは、軸状の酸素検知素子と、酸素
検知素子を収容する筒状のケーシングと、ケーシングに
対し同軸的に設けられるとともに、該ケーシングの後端
部に形成されたケーシング側支持部に当接することによ
りこれに支持され、酸素検知素子からの各リード線がそ
れぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通
して形成されるセラミックセパレータとを備える。そし
て、ケーシング側支持部は、ケーシングの軸方向におい
て該ケーシングの本体部分よりも弾性変形が容易な緩衝
支持部とされており、セラミックセパレータを緩衝支持
部に対して軸方向において相対的に押し付けることによ
り該緩衝支持部をその押し付け方向に圧縮変形させた状
態で、該セラミックセパレータをケーシングに対して固
定するセパレータ固定手段が設けられている。
【0152】上記構成において緩衝支持部は、セパレー
タ固定手段とケーシングとの間で、セラミックセパレー
タに対する適度な挾圧保持力を生じさせてがたつきを防
止し、その固定・保持をより確実なものとする一方、酸
素センサの組立時等において自身の弾性変形により、セ
ラミックセパレータのセパレータ側支持部に過度な挾圧
力が作用することを抑制し、ひいてはそれによるセラミ
ックセパレータの割れや欠けを防止する役割を果たす。
そして、該緩衝支持部はケーシング側支持部として該ケ
ーシングと一体に構成されるので、従来の酸素センサの
ようにゴムリング等を別部材として設ける必要がなくな
る。その結果、部品点数が減少してセンサの組立工程が
簡略化され、ひいてはセンサの製造能率を向上させるこ
とができる。
【0153】上記構成においては、ケーシングは金属で
構成することができ、緩衝支持部は該ケーシングと同材
質または異材質の金属材料で構成することができる。こ
れによれば、緩衝支持部の構成材質が金属であることか
ら耐熱性に優れ、高温の厳しい使用環境下でもセラミッ
クセパレータのがたつき防止効果を長期に渡って良好に
維持することができる。
【0154】具体的には緩衝支持部は、本体部分と一体
化されたばね部とすることができる。ばね部を本体部分
と一体化することで、緩衝支持部を確実に弾性変形させ
ることができ、ひいてはセパレータ固定手段とケーシン
グとの間で、セラミックセパレータに対する必要十分な
挾圧保持力が生じてセラミックセパレータの固定をより
確実に行うことができる。
【0155】この場合、ばね部は、ケーシングの開口端
縁部を断面半径方向に1ないし複数回曲げ返すことによ
り形成することができる。これによればケーシングの開
口端縁部にプレス加工等によりばね部を簡単に形成する
ことができる。ばね部は、より具体的には、ケーシング
の開口端縁部に薄肉部を形成し、その薄肉部を断面半径
方向において内側に1回曲げ返し、その曲げ返された薄
肉部の先端側をさらに外向きに1回曲げ返すことにより
形成することができる。薄肉部の形成により、ばね部形
成のための曲げ加工がより行いやすくなり、しかも2回
の曲げ加工によりばね部材をより簡単に形成できる。
【0156】また、緩衝支持部は、ケーシングの本体部
分よりも低硬度の部分となるように構成してもよい。す
なわち、緩衝支持部の硬度を本体部分の硬度よりも低く
することにより、緩衝支持部は本体部に対して相対的に
圧縮変形し、ばね部と同様に機能しうる。このような緩
衝支持部は、例えば本体部分よりも硬度の低い異材質に
より構成することができる。この場合、その異材質部分
は溶接あるいはろう付け等により本体部分に接合するこ
とができる。また、緩衝支持部を形成すべきケーシング
の部分に対し、通電加熱等により局所的な軟化熱処理を
行うことにより形成する方法も可能である。この場合、
緩衝支持部は本体部分と同材質により一体形成されるこ
ととなる。
【0157】また、緩衝支持部のビッカース硬度をHv
s、本体部分のビッカース硬度をHvhとした場合、Hv
hは320以上とするのがよい。Hvhが320未満にな
るとケーシングの強度が不足し、酸素センサの耐久性を
確保できなくなる場合がある。Hvhは、より望ましく
は360以上とするのがよい。また、緩衝支持部の硬度
は、Hvh−Hvsが60以上となるように調整するのが
よい。Hvh−Hvsが60未満になると、緩衝支持部の
本体部分に対する相対的な変形量が不足し、所期の効果
が十分に達成できなくなる場合がある。Hvh−Hvs
は、より望ましくは80以上となるように調整するのが
よい。
【0158】セラミックセパレータには、その外周面か
ら突出してセパレータ側支持部を形成することができ
る。該セパレータ側支持部は例えばセラミックセパレー
タの周方向に沿うフランジ状に形成できる。そして、ケ
ーシングの開口端面部にケーシング側支持部としての緩
衝支持部を形成し、これにセパレータ側支持部を当接さ
せる構成とすることができる。これにより、セラミック
セパレータは、ケーシングに対しその開口部から挿入す
るだけで組付けを極めて簡単に行うことができる。
【0159】なお、上記酸素センサの構成においては、
ケーシングと同軸的に配置され、各リード線が自身の後
方外側に延びることを許容しつつ、セラミックセパレー
タを外側から覆った状態でケーシングに対し後方側から
連結されるカバー部材を設けることができる。この場
合、そのカバー部材の内周面の軸方向中間位置に、緩衝
支持部とは反対側からセパレータ側支持部に対し当接す
るカバー側支持部を形成することができる。これによ
り、該カバー部材は、緩衝支持部を圧縮変形させた状態
でケーシングに対し結合されることにより、上記セパレ
ータ固定手段を形成することとなる。このようなカバー
部材を設けることにより、セラミックセパレータをより
安定的かつ確実に保持・固定することができる。
【0160】なお、上記カバー部材は、ケーシングとは
独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸
素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びるこ
とを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から連結され
る前記発明(A)のフィルタアセンブリとすることがで
きる。
【0161】発明(H) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち該酸素センサは、軸状をなす酸素
検知素子と、その酸素検知素子を収容する筒状のケーシ
ングと、そのケーシング内に配置され、酸素検知素子か
らの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿
通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレー
タと、ケーシングの後方側開口部又はそのケーシングの
後方側に同軸的に一体化されて内部が該ケーシングと連
通する別の筒状体の開口部に対しその内側に弾性的には
め込まれ、各リード線を挿通するためのシール側リード
線挿通孔を有するとともに、それらリード線外面とケー
シング又は別の筒状体の内面との間をシールする弾性シ
ール部材とを備える。セラミックセパレータの軸方向後
端面は弾性シール部材の軸方向前端面と密着するととも
に、該セラミックセパレータには、これを軸方向に貫通
する気通用連通部が形成される。そして、その気通用連
通部は上記軸方向において弾性シール部材に近い側の開
口部が、当該弾性シール部材によって遮蔽されない位置
に形成される。
【0162】該酸素センサの構成においては、気通用連
通部の弾性シール部材に近い側の開口部が弾性シール部
材によって遮蔽されないので、弾性シール部材がセラミ
ックセパレータに密着配置されるにも拘わらず、該セラ
ミックセパレータの気通連通部における通気が阻害され
ることがない。
【0163】具体的には、セラミックセパレータには、
セパレータ側リード線挿通孔とは別に軸方向の気通用貫
通孔を形成でき、またその後端面に、一端が該気通用貫
通孔に連通し、他端側がセラミックセパレータの外周面
に開放する気通用溝部を形成することができる。この場
合、これら気通用貫通孔及び気通用溝部が気通用連通部
を形成することとなる。この構成によれば、気通用溝部
の他端側の開口部がセラミックセパレータの外周面に開
放するので弾性シール部材により遮蔽されず、該気通用
溝部及びそれに続く気通用貫通孔における気体の流通を
確実なものとすることができる。なお、セラミックセパ
レータの軸方向中間部において該軸方向と交差する向き
に、一端が該セラミックセパレータの外周面に開放し他
端側が気通用貫通孔に連通する横方向の貫通孔を形成し
てもよい。しかしながら、セラミックセパレータを粉末
の成形・焼成により製造する場合、上記構成のようにセ
ラミックセパレータの端面上に気通用溝部を形成するほ
うが、粉末成形体の製造がはるかに容易であり、製造能
率が高い利点がある。
【0164】上記酸素センサはより具体的には下記のよ
うに構成することができる。すなわち、ケーシングの後
方側にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに
内部が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複
数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィ
ルタ保持部の気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の
透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを有する
気体導入構造部とを備え、フィルタ及び気体導入孔を経
て外気をケーシング内に導入させる気体導入構造部(上
記別の筒状体に相当する)を設ける。セラミックセパレ
ータは、酸素検知素子の軸方向において後方側がフィル
タ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシング
の内側に入り込むように配置され、酸素検知素子からの
各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔
が軸方向に貫通して形成されたものとする。弾性シール
部材は、フィルタ保持部の後方側開口部に対しその内側
に弾性的にはめ込まれ、各リード線を挿通するためのシ
ール側リード線挿通孔を有するとともに、それらリード
線外面とフィルタ保持部内面との間をシールするものと
する。また、セラミックセパレータの後端面は、軸方向
において気体導入孔よりも後方側に位置するとともに、
弾性シール部材の軸方向前端面と密着する一方、フィル
タ保持部内周面とセラミックセパレータの外周面との間
には隙間が形成され、気体導入孔からの気体がこの隙間
内に供給されるようにする。そして、セラミックセパレ
ータには、該隙間に導入された気体をケーシング内に導
くための上記気通用連通部を形成する。
【0165】この構成によれば、液体の透過は阻止し気
体の透過は許容するフィルタを用いて気体導入構造部を
構成することで、ケーシング内に水滴等が侵入すること
は阻止しつつ、基準ガスとしての外気はケーシング内に
十分に導入することができる。この場合、セラミックセ
パレータの後端面位置を気体導入孔よりも後方側に設定
することで、気体導入孔から仮に気体導入構造部内に水
滴等が侵入しても、セラミックセパレータが該水滴の進
路を妨げる形となるので、ケーシング内へは該水滴等が
一層流れ込みにくくなる。一方、気体導入孔から流入し
た基準ガスは、気通用溝部及び気通用貫通孔を経て支障
なくケーシング内へ導入できる。
【0166】次に、酸素検知素子は先端が閉じた中空軸
状に形成でき、その中空部内には該酸素検知素子を加熱
する軸状の発熱体を配置することができる。この場合、
セラミックセパレータには、酸素検知素子及び発熱体か
らのリード線を挿通するための4つのセパレータ側リー
ド線挿通孔が、各々その中心が仮想的な円周経路(セパ
レータ側ピッチ円)上に位置して配列するように形成す
ることができる。また、気通用貫通孔は、セラミックセ
パレータの中央部において、それら4つのセパレータ側
リード線挿通孔により囲まれる領域に形成することがで
きる。さらに、気通用溝部は、セラミックセパレータの
後端面において、4つのセパレータ側リード線挿通孔と
干渉しない位置に、十字形態で形成することができる。
これにより、セラミックセパレータの限られた体積を有
効活用して、酸素検知素子及び発熱体からの各リード線
の挿通孔、気通用貫通部及び気通用溝部を過不足のない
大きさで効率的に配置・形成することができる。
【0167】一方、本発明の酸素センサは次のように構
成することができる。すなわち、セラミックセパレータ
には、その軸方向中間位置においてその外周面から突出
するフランジ状のセパレータ側支持部を形成する。該セ
ラミックセパレータは、セパレータ側支持部よりも軸方
向前方側に位置する部分をケーシングの後端部内側に入
り込ませた状態で、該セパレータ側支持部においてケー
シングの後端面に対し直接又は他部材を介して間接的に
当接し、軸方向後方側部分はケーシングの外側に突出さ
せた状態で配置する。また、セラミックセパレータの上
記ケーシングからの突出部分は、外側から前述の別の筒
状体としてのカバー部材で覆う。そして、セラミックセ
パレータのフランジ部を軸方向に貫通する形態で、気通
用貫通部を1ないし複数形成する。この構成は、フラン
ジ部を利用して気体の流通経路を確保できるので、例え
ばセラミックセパレータの本体部分に気通用貫通部を形
成する余地がない場合に有効である。また、セラミック
セパレータの本体部分に気通用貫通部を形成し、さらに
フランジ部にも気通用貫通部を形成すれば、気体の流通
を一層スムーズに行うことができる。
【0168】具体的には、気通用貫通部は、フランジ部
の外周面に対し所定の角度間隔で複数形成された溝部な
いし切欠き部とすることができる。これによれば、フラ
ンジ部の周方向において偏りなく気体を流通させること
ができ、しかも焼成前の粉末成形体の形成も容易であ
り、製造効率が高い。
【0169】なお、上記酸素センサの構成においてカバ
ー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれに
ほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が
自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシング
に対し後方側から連結される前記発明(A)のフィルタ
アセンブリとすることができる。
【0170】発明(I) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸
素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシ
ングと、該ケーシング内に外気を導入する気体導入構造
部とを備える。気体導入構造部は、ケーシングの後方側
にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに内部
が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複数の
気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ
保持部の気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過
は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを有し、フィ
ルタ及び気体導入孔を経て外気をケーシング内に導入さ
せる。また、酸素検知素子の軸方向において後方側がフ
ィルタ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシ
ングの内側に入り込むように配置され、酸素検知素子か
らの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿
通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレー
タと、フィルタ保持部の後方側開口部に対しその内側に
弾性的にはめ込まれ、各リード線を挿通するためのシー
ル側リード線挿通孔を有するとともに、それらリード線
外面とフィルタ保持部内面との間をシールする弾性シー
ル部材とを備える。さらに、セラミックセパレータの後
端面は、軸方向において気体導入孔よりも後方側に位置
するとともに、弾性シール部材とセラミックセパレータ
との間には、少なくともリード線の挿通位置において所
定量の隙間が形成される。
【0171】上記構成によれば、弾性シール部材とセラ
ミックセパレータとの間に所定量の隙間が形成されるの
で、例えば両者の間においてリード線挿通孔のピッチ円
径に差が生ずる場合でも、その径差が隙間で吸収されて
リード線に強い屈曲が生じにくく、ひいてはセンサ組立
時等においてリード線の損傷や断線等が起こりにくい。
また、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィル
タを用いて気体導入構造部を構成することで、ケーシン
グ内に水滴等が侵入することは阻止しつつ、基準ガスと
しての外気はケーシング内に十分に導入することができ
る。そして、セラミックセパレータは、後端面が気体導
入孔よりも後方側に位置するようにフィルタ保持部内に
入り込んで配置されるので、気体導入構造部に外部から
強い衝撃が加わった場合でも、内側のセラミックセパレ
ータがその衝撃を受ける役割を果たすのでフィルタ保持
部は大きな変形を免れ、ひいてはフィルタのシール性が
損なわれるといった問題も生じにくくなる。さらに、セ
ラミックセパレータの後端面位置を気体導入孔よりも後
方側に設定することで、気体導入孔から仮に気体導入構
造部内に水滴等が侵入しても、セラミックセパレータが
該水滴の進路を妨げる形となるので、ケーシング内へは
該水滴等が一層流れ込みにくくなる。なお、気体導入孔
から流入した基準ガスは、気通用溝部及び気通用貫通孔
を経て支障なくケーシング内へ導入できる。
【0172】上記構成においてセラミックセパレータに
は、セパレータ側リード線挿通孔とは別に、前述の隙間
側からケーシング内側へ気体を導くための気通用連通部
を軸方向に貫通して形成することができる。これによ
り、フィルタを介して導入された基準ガスとしての外気
が、セラミックセパレータの後端面側から気通用連通部
を経てケーシング内にスムーズに導かれるので、より安
定な酸素センの出力を得ることが可能となる。
【0173】次に、酸素検知素子は先端が閉じた中空軸
状に構成することができ、その中空部内には該酸素検知
素子を加熱する軸状の発熱体を配置することができる。
この場合、セラミックセパレータには、酸素検知素子及
び発熱体からのリード線を挿通するための3以上のセパ
レータ側リード線挿通孔が、各々その中心が仮想的な円
周経路(セパレータ側ピッチ円)上に位置して配列する
ように形成することができ、また、弾性シール部材に
は、酸素検知素子及び発熱体からのリード線を挿通する
ための3以上の前記シール側リード線挿通孔を、各々そ
の中心が仮想的な円周経路(シール側ピッチ円)上に位
置して配列するように形成することができる。そして、
セパレータ側ピッチ円とシール側ピッチ円とは、その一
方が他方よりも直径が大きくなるように設定することが
できる。
【0174】次に、弾性シール部材の前端面には、先端
がセラミックセパレータの後端面と当接することによ
り、隙間の大きさを規定する隙間規定突出部を形成する
ことができる。該構成によれば、弾性シール部材が隙間
規定突出部においてセラミックセパレータと当接するの
で、セラミックセパレータをより安定的に固定すること
ができる。また、形成されるべき隙間量も隙間規定突出
部の高さに応じて自動的に定まるので面倒な隙間調整が
不要であり、弾性シール部材組み付け後において隙間量
が変化したりする心配もない。
【0175】隙間規定突出部は、弾性シール部材の前端
面のうち、シール側ピッチ円上に配列したシール側リー
ド線挿通孔よりも内側に位置する領域に形成することが
できる。この構成では、隙間規定突出部が弾性シール部
材の前端面のほぼ中央に形成されるので、セラミックセ
パレータとの間の安定な当接状態を実現でき、ひいては
弾性シール部材の軸方向の位置ずれや傾斜等も生じにく
い。この場合、セパレータ側ピッチ円の直径が、シール
側ピッチ円の直径よりも大きくなっていれば、セラミッ
クセパレータの後端面に対する隙間規定突出部の当接領
域を、セパレータ側リード線挿通孔に取り囲まれた位置
に容易に確保できる。
【0176】一方、弾性シール部材の後方側端縁部に、
その外周面から外向きに張り出すフランジ部を形成し、
該弾性シール部材は、そのフランジ部においてフィルタ
保持部の後方側端面と当接することにより、該フィルタ
保持部内における自身の前端面の位置、すなわち上記隙
間量が規定される構成としてもよい。該構成では隙間形
成突出部が弾性シール部材に形成されないので、例えば
セパレータ側ピッチ円の直径が小さく、セパレータ側リ
ード線挿通孔に囲まれた領域に隙間形成突出部接触のた
めの十分なスペースが確保できない場合に有効である。
【0177】発明(J) この発明の酸素センサは下記のように構成されることを
特徴とする。すなわち、該酸素センサは、先端部が閉じ
た中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素
検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該
酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備え、該発熱
体の発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が該酸素
検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように
偏心していることを特徴とする。ここで、そのような偏
心(オフセット)の結果として、発熱体の発熱部の表面
が、酸素検知素子の中空部内壁面に接触していることが
望ましい。
【0178】発熱体の中心軸線を、上述のように酸素検
知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏
心させた場合、その偏心側において酸素検知素子は局所
加熱され、当該酸素検知素子の中心軸線回りの加熱状態
は不均一なものになると考えられる。そして、このよう
に検知素子を不均一加熱する構成は、従来の常識と照合
すれば、酸素検知素子の電気抵抗値が全体として十分低
くなるまでに時間がかかり、結果としてセンサの立ち上
がり時間を長くするのではないかという懸念が生ずるな
ど、不都合が極めて多いもののように思われる。ところ
が、本発明者らは、この一見望ましくないと思われる上
記構成の採用により、意外にもセンサの活性化時間は従
来と同等であるかあるいは却って短縮されることを見い
出したのである。
【0179】そして、発熱部が酸素検知素子と接触する
上記横当て構造を例えば採用することで、発熱体の発熱
部で発生する熱がその接触に基づき、その発熱部から酸
素検知素子へ直接的に熱伝導するとともに、その接触点
近傍の輻射熱も酸素検知素子に効果的に作用して、その
酸素検知素子を短時間で昇温させることができ、センサ
活性化時間が短縮される。また発熱体の発熱部が酸素検
知素子の中空部内壁面に側方から接触した構造であれ
ば、発熱部や酸素検知素子の熱膨張が生じても、発熱部
の先端を酸素検知素子の先端内面に当てる構造に比べ
て、その熱膨張の影響を受けにくい。言い換えれば、そ
のような横当て構造をとることにより、発熱体や酸素検
知素子が熱履歴を受けても、両者の接触状態を良好に保
ち易くなるのである。
【0180】また、発熱部を側方から酸素検知素子の中
空部内壁面に当てるようにすれば、接触による直接的な
熱伝導並びに輻射熱の効果により、先端同士で当てる構
造よりも全体としての熱伝達効率は高くなる。そして、
上記のように、酸素センサにおける酸素検知素子と発熱
体の発熱部との接触状態を安定に保証できることによ
り、酸素検知素子の加熱状態のばらつきが減少し、この
ことが酸素センサとしての特性のばらつきを減少させる
効果につながる。
【0181】上記酸素センサは、酸素検知素子を収容す
る筒状のケーシングと、酸素検知素子の後端側にこれと
ほぼ同軸的に配置され、酸素検知素子及び発熱体からの
各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔
がそれぞれ軸方向に貫通して形成されたセラミックセパ
レータとを備えるものとして構成できる。リード線挿通
孔は、セラミックセパレータの中心軸線をとり囲むよう
に配列する。また、セラミックセパレータには、一端が
該セラミックセパレータの前端面に開口し、底面が該セ
ラミックセパレータの軸方向中間部に位置するととも
に、内径が前記発熱体の外径よりも大きく設定された発
熱体端部収容孔が、各リード線挿通孔に対し内側から重
なりを生ずるようにセラミックセパレータの中央部を切
り欠いた形態で形成され、その発熱体収容孔内に発熱体
の後端部が収容される。
【0182】発熱体を上述のように偏心して配置した場
合、その後端部はセラミックセパレータの軸線に対して
偏心配置される。ここで、該発熱体の後端部を収容する
発熱体端部収容孔は、内径が発熱体の外径よりも大きく
設定されているため、発熱体の偏心配置に伴う後端部の
径方向の移動が一定の範囲内で許容される。すなわち、
発熱体を偏心配置した場合に、その後端部がセラミック
セパレータの内壁面と干渉することが防止され、偏心量
も比較的自由に設定できる利点がある。
【0183】ここで、リード線挿通孔が、各々その中心
が仮想的な円周経路(ピッチ円)上に位置して配列する
ように形成される場合、発熱体端部収容孔の内径d1
が、該ピッチ円の直径d2よりも小さく設定するのがよ
い(すなわちd1<d2)。すなわち、セラミックセパレ
ータの、隣接するリード線挿通孔の間に位置する部分
は、リード線を互いに分離する隔壁部として機能するの
であるが、発熱体端部収容孔の形成に伴い、該隔壁部は
内側から切り欠かれることとなる。ここで、d1≧d2に
なると隔壁部の径方向の長さが短くなり過ぎ、リード線
の分離効果が低下して短絡等の問題につながる場合があ
る。
【0184】また、リード線挿通孔のピッチ円C1の直
径d2と発熱体端部の外径Dとの比d2/Dは、1.7〜
2.8の範囲で調整することが望ましい。d2/Dが
1.7未満になると、発熱体の偏心量を十分に確保でき
ず、結果として発熱体の横当り状態が不十分となってセ
ンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくな
る場合がある。また、d2/Dが2.8を超えると、リ
ード線の曲がり量が大きくなりすぎ、該リード線に損傷
等が生じやすくなる。一方、発熱体端部収容孔は、その
深さhと内径d1との比h/d1を1.2以下に設定する
のがよい。例えば、発熱体3を傾斜させて偏心状態を形
成する場合、h/d1が1.2を超えると、収容孔の径
えd1に対して深さhが相対的に大きくなり過ぎ、発熱
体の傾斜量すなわち偏心量を十分に確保できず、同様に
センサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなく
なる場合がある。
【0185】なお、酸素検知素子の外面と中空部の内壁
面とには、酸素検知素子を構成する固体電解質へ酸素を
注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質
から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する
可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質
電極(例えばPt多孔質電極)を設けることができる。
この場合、酸素検知素子の局所加熱を行っても、センサ
の立ち上がり時間が従来と同等レベルに維持されるか、
あるいは却って短縮される要因としては、次のようなこ
とが考えられる。
【0186】すなわち、該方式の酸素センサでは、例え
ば酸素検知素子の内側に大気等の基準ガスを導入する一
方、外側に排気ガス等の測定対象ガスを接触させ、酸素
検知素子の内外の酸素濃度差に基づいて該酸素検知素子
に生ずる濃淡電池起電力により、測定対象ガス中の酸素
濃度が検出される。この場合、酸素イオン電導性固体電
解質により形成された酸素検知素子に十分な濃淡電池起
電力が生じるためには、酸素検知素子の電気抵抗値が十
分小さくなることのほかに、酸素分子に対する解離ない
し再結合反応に対する上記多孔質電極の触媒活性が十分
に高められている必要がある。そして、センサの検出出
力レベルは、酸素検知素子の電気抵抗値と上記多孔質電
極の触媒活性との兼ね合いで決まることとなる。
【0187】ここで、例えばPt等で構成された多孔質
電極の触媒活性は、例えばZrO2系等の固体電解質の
酸素イオン移動度よりも温度に対して急激に増大する傾
向があるものと推測されている。そして、酸素検知素子
が本発明の構成により局所加熱されると、固体電解質の
活性化による酸素検知素子の電気抵抗減少は、不均一加
熱のため酸素検知素子と発熱体とを同心配置する従来の
構成ほどには進まないが、その局所加熱された部分は従
来の構成よりも高温まで加熱されるので、当該部分で多
孔質電極の触媒活性が高められて被測定ガス中の酸素分
子の解離が促進され、その効果により固体電解質の濃淡
電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補われ、
結果としてセンサの立ち上がり時間が従来と同等か、そ
れよりも短縮される効果が達成されるものと推測され
る。
【0188】次に、発熱体の発熱部が、その外周面の周
方向の一部において発熱分布の疎なる発熱疎部分を有す
る場合に、その発熱疎部分以外の部分において当該発熱
体の発熱部を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させる
ことができる。例えばセラミックグリーンシートに発熱
抵抗パターンを印刷して、これを芯材に丸めて焼成する
ことにより発熱部を形成する場合は、その継ぎ合わせ側
で発熱パターンが疎になるため、例えばこれと反対側の
発熱部表面を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させる
ことができる。つまり、発熱疎部分がその中空部内壁面
に接触した場合でも一定の熱伝達の効果はあるが、それ
より発熱の充分生じる部分を接触させた方がより効果的
であるという意味である。また、発熱体の発熱部が周方
向に偏在することで、より小さな容積に発熱エネルギー
が集中することになり、特にヒーター通電時間後の活性
化時間を短縮する上で効果がある。
【0189】また、発熱体の発熱部が発熱体の先端部に
偏在していることも酸素検知素子を速やかに加熱する上
で有効である。つまり、発熱部を発熱体の全体に広げる
こともできるが、そうすると熱エネルギーが分散しやす
くなる。有効な酸素検知素子の加熱にとっては、むしろ
発熱部を発熱体の先端部に偏在させた方が、局部的に発
熱し好ましいと言える。このような発熱部の局部的な発
熱パターンと、前述の偏心による横当て構造との組合せ
により、センサの活性化時間をより短縮することができ
る。
【0190】さらに、発熱体が端子金具を介して酸素検
知素子内に組み付けられるとともに、その端子金具によ
って発熱体の発熱部を酸素検知素子の中空部内壁面に、
押し付けられている構造とすることができる。これによ
って前述のような横当て構造は一層安定に保証され、セ
ンサ特性のばらつき減少の効果はさらに高まる。
【0191】その端子金具の好適な例としては、発熱体
を把持する1箇所の発熱体把持部と、その発熱体を周方
向に包囲するように形成されて酸素検知素子内側の電極
層に接触する少なくとも1箇所の内部電極接続部と、上
記内部電極接続部を間に挟んで発熱体把持部の反対側
に、発熱体をその発熱体の軸方向と垂直な方向に押すガ
イド部とを備えたものとすることができる。そして、発
熱体把持部とガイド部によって、発熱体の中心軸線が酸
素検知素子の中空部の中心軸線に対して傾斜させられる
ことにより発熱体の発熱部が中空部内壁面(以下、素子
内壁面ともいう)に押し付けられ、発熱体が固定される
こととなる。これによれば、ガイド部が発熱体を素子内
壁面に押し付ける構造であるため、このような端子金具
を介して上述の横当て構造を容易に実現することができ
る。
【0192】また、発熱体に生じる応力に着目した場
合、素子内壁面において発熱体に作用する応力と、ガイ
ド部において発熱体に作用する応力と、上記発熱体把持
部において発熱体に作用する応力とによって合成される
発熱体に作用する曲げモーメントに対して、その発熱体
が折れないように上記ガイド部の弾性力を小さくするの
がよい。言い換えれば、主にこのガイド部の弾性力によ
り発熱体が素子内壁に押し付けられるわけであるが、こ
の弾性力を適度に調整することにより発熱体の欠損等を
防ぎつつ、その積極的な接触形態である押し付け状態を
安定に持続できる。
【0193】このようにガイド部の弾性力を小さくする
上での具体例としては、そのガイド部と内部電極接続部
との間、その内部電極接続部と上記発熱体把持部との間
の少なくともいずれかの間を、くびれた形態で連結する
連結部を形成することができる。このようなくびれた形
態の連結部が存在することにより、結果としてガイド部
の弾性力は適度に小さくなり、上述のような発熱体の欠
損等を回避する上で有効となる。また、発熱体が熱応力
により変形しようとした際に、連結部が適度に弾性変形
(あるいは塑性変形)してこれを緩和する効果も併せて
期待することができる。
【0194】次に、端子金具は、発熱体を周方向に包囲
するように形成され、酸素検知素子の内側の電極層に接
触する少なくとも1箇所の内部電極接続部と、発熱体の
軸方向において、内部電極接続部の一方の側に隣接して
これと一体的に設けられ、発熱体を周方向に包囲するよ
うに形成されてこれを把持する第一発熱体把持部と、発
熱体の軸方向において、内部電極接続部の他方の側に隣
接してこれと一体的に、かつ中心軸線が第一発熱体把持
部の中心軸線から偏心して設けられ、発熱体を周方向に
包囲するように形成されてこれを把持する第二発熱体把
持部とを備えたものとすることもできる。この場合、中
心軸線が互いに偏心した第一発熱体把持部及び第二発熱
体把持部によって、発熱体の中心軸線が酸素検知素子の
中空部の中心軸線に対して傾斜させられることにより、
該発熱体の発熱部が中空部の内壁面に押し付けられて当
該発熱体が固定されることとなる。これによれば発熱体
は、互いに偏心した2つの把持部により傾斜状態で保持
されて素子内壁面に押し付けられるので、このような端
子金具を介して上述の横当て構造を容易に実現すること
ができる。また、2つの把持部によって発熱体はその傾
斜状態をより安定的に保持することができ、発熱部の横
当て効果をさらに確実に達成することができる。
【0195】より具体的には、第一発熱体把持部と第二
発熱体把持部とを、内部電極接続部の各々対応する端部
に対し、前記発熱体の径方向において同じ側の周縁に接
続し、その接続部から見て第一発熱体把持部の中心軸線
が第二発熱体把持部の中心軸線よりも遠い側に位置する
ように構成することができる。該構成においては、発熱
部が発熱体の先端部に形成されている場合、発熱体はそ
の先端側が上記接続部側に傾いて位置し、当該接続部側
において素子内壁面に押し当てられることとなる。例え
ば、内部電極接続部への接続側とは反対の端部において
第一発熱体把持部に対し、酸素検知素子の出力(ないし
接地)端子が上記接続部側に対応する位置において突出
して形成されている場合、上述のように発熱体を配置す
ることにより、センサの組立時において例えば発熱体の
電力供給端子(一般には、発熱体の、発熱部が形成され
ているのとは反対側の端部に形成される)等と上記出力
端子との干渉が生じにくくなり、ひいてはセンサの組立
を容易に行うことができる。ただし、これら端子間にお
ける干渉等の問題が生じない場合には、第一発熱体把持
部の中心軸線を第二発熱体把持部の中心軸線よりも上記
接続部に対し近い側に位置させる構成(すなわち、発熱
体の傾斜が上記とは逆となる構成)としてもよい。
【0196】また、さらに具体的には、第一発熱体把持
部と内部電極接続部とを中心軸線が互いにほぼ一致する
ように配置し、第二発熱体把持部を、その中心軸線が内
部電極接続部の中心軸線に対し、前記接続部側に偏心す
るように配置する構成とすることができる。すなわち、
第一発熱体把持部と内部電極接続部とを同軸的に配置す
ることにより、例えば発熱体の電力供給端子と、酸素検
知素子の出力端子ないし接地端子との間に比較的に均等
に間隔を形成することができ、ひいては端子間の絶縁不
良等のトラブルを減少させることができる。
【0197】なお、本構成においても端子金具には、第
一発熱体把持部と内部電極接続部との間及び/又は該内
部電極接続部と第二発熱体把持部との間をくびれた形態
で連結する連結部を形成することができる。すなわち、
発熱体が2つの把持部で把持されていると、発熱体の熱
膨張ないし収縮が拘束されやすくなって熱応力が生じや
すい傾向にあるが、連結部が弾性変形ないし塑性変形す
ることで熱応力が緩和され、ひいては発熱体の破損等も
生じにくくなる。
【0198】この場合、上記連結部のうち、第一発熱体
把持部と内部電極接続部との間に形成されたもの(第一
連結部)と、内部電極接続部と第二発熱体把持部との間
に形成されたもの(第二連結部)とが、それぞれ内部電
極接続部の径方向内側に曲げられて段付き部を形成する
構成とすることもできる。こうすれば、それら第一連結
部及び第二連結部の曲げ量を調整することにより、第一
発熱体把持部及び第二発熱体把持部の中心軸線間の偏心
量を容易に調整できる利点が新たに生ずる。
【0199】また、端子金具の内部電極接続部及び発熱
体把持部の少なくともいずれかに、それら内部電極接続
部ないし発熱体把持部の内面から突出して発熱体の外周
面に当接するとともに、その発熱体を、発熱部の近傍に
おいて該発熱体の中心軸線が該酸素検知素子の中空部の
中心軸線に対して片側に寄るように偏心した状態で位置
決めする位置決め用突出部を形成することもできる。こ
のような位置決め用突出部は、例えば端子金具が板金加
工品で構成されている場合は、プレス加工等により簡単
に形成できる。また、発熱体の中心軸線の中空部の中心
軸線からの偏心量を、位置決め用突出部の内部電極接続
部及び/又は発熱体把持部内面からの突出高さに応じて
容易に調整できる利点も有する。
【0200】端子金具において位置決め用突出部は発熱
体把持部に設けても、内部電極接続部に設けてもいずれ
でもよい(双方に設けることも可能である)。しかしな
がら、位置決め用突出部を内部電極接続部に設け、その
内部電極接続部に連結する発熱体把持部のうち、いずれ
か一方を省略する構成とすれば、端子金具の発熱体軸線
方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上
記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成でき
るようになる。また、発熱体が1ケ所の把持部により把
持される形としたから、例えば端子金具を装着した発熱
体を酸素検知素子の中空部内に挿入してセンサを組み立
てる際に、端子金具を介した過剰な横方向の力が発熱体
に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体の折損等
を防止することができる。
【0201】なお、上記構成の端子金具において省略す
べき発熱体把持部は、発熱体の長手方向におけるいずれ
の側のものであってもよい。しかしながら、発熱体から
遠い側のものを省略する構成、換言すれば端子金具にお
いて、発熱体把持部を内部電極接続部に対し発熱体の発
熱部に近い側にのみ連結する構成とすれば、発熱体は、
センサの出力端子部等を介して外力の影響を受けやすい
上記遠い側の把持が解除され、横方向の力を受けてもこ
れを緩和し易くなって、前述の折損等を防止する効果を
さらに高めることができる。なお、より具体的には、位
置決め用突出部を内部電極接続部に対し、前記発熱体把
持部が連結されているのとは反対側の端部近傍におい
て、該発熱体把持部の内部電極接続部への連結部に対応
する位置に形成するようにすれば、発熱体の軸線方向に
おいて、位置決め用突出部による支持点(当接点)と発
熱体把持部による支持点との間の距離を増すことがで
き、ひいては端子金具により発熱体をさらに安定的に位
置決め支持させることが可能となる。
【0202】また、酸素検知素子の前記中空部に対し、
該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同
じく中空部の中心軸線を含むとともに第一平面と直交す
る仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第
一平面と第二平面とによって4つの領域に分割した場合
に、発熱体を、その中心軸線の中空部内に位置する部分
の全体が、該中空部の上記4つの領域のいずれかに収ま
るように配置することができる。該構成は、換言すれ
ば、発熱体の中心軸線の中空部内に位置する部分の全体
が、中空部の4つの領域のいずれかに収まるように、上
記仮想的な第一及び第二平面がどこかに必ず設定できる
ということを意味している。
【0203】上記構成によってもたらされる作用・効果
について、図30を用いて説明する。なお、以下におい
ては説明の便宜のため、発熱部(42)は発熱体(3)
の酸素検知素子(2)への挿入側端部に形成されてお
り、酸素検知素子(2)の中空部内壁面(2a)はほぼ
円筒状面をなすものと考える(ただし、中空部内壁面
(2a)には、酸素検知素子(2)を固体電解質粉末の
成形・焼成により製造する際に、成形時の離型性を高め
る等の目的で、底部側が縮径するテーパが付与されてい
る場合もある)。まず図30(c)は、上記仮想的な第
一及び第二平面P1,P2を如何に設定しようとも、上記
平面P1,P2で区切られる中空部の4領域のいずれか1
つに発熱体(3)の中心軸線O1を収めるのが不能な場
合を示している。すなわち、中心軸線O1は検知素子
(2)の中心軸線O2に対してかなり傾いて設定されて
おり、結果として該中心軸線O1は上記4領域の2以上
のものに必然的にまたがって位置せざるを得なくなって
いる。一方、図30(a)は、上記仮想的な第一及び第
二平面P1,P2を適当に設定することで、4領域のいず
れかに発熱体(3)の中心軸線O1を収めることが可能
な場合を示している。この場合、発熱体(3)の中心軸
線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜は、
図30(c)に示す場合と比べて必ず緩くなる。
【0204】この両者を比較すれば、図30(c)に示
す構成では、発熱部(42)の末端側の角部において検
知素子(2)の中空部内壁面(2a)との距離が短くな
り、発熱がこの部分にやや集中する傾向がある。これに
対し、同図(a)に示す構成は、発熱体(3)の中心軸
線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜が
(c)の構成よりも緩やかであることから、発熱部(4
2)の側面が検知素子(2)の中空部内壁面(2a)に
対しほぼ沿う形となり、発熱部(42)により検知素子
(2)の壁部をより均一に加熱することができる。その
結果、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大
きな効果を期待できる。ただし、図30(c)に示す構
成でも、発熱体(3)の中心軸線O1が検知素子(2)
の中心軸線O2から偏心して位置することに変わりはな
く、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定以上の
効果が期待できることはいうまでもない。
【0205】この場合、図30(b)に示すように、発
熱体(3)は、該発熱体(3)の中心軸線が酸素検知素
子の中空部の中心軸線とほぼ平行となるように中空部内
に配置されていれば、発熱部(42)の側面を検知素子
(2)の中空部内壁面(2a)に対し沿わせる効果、ひ
いては検知素子(2)の壁部を均一加熱する効果がさら
に顕著に達成される。
【0206】具体的には、発熱体が、該発熱体の中心軸
線が酸素検知素子の中空部の中心軸線とほぼ平行とな
り、かつその中心軸線が、中空部の中心軸線に対して片
側に寄るように偏心する構成とすることができる。この
場合、発熱体を周方向に包囲するように形成されて記酸
素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部
と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸方向において
その両側に連結され、ぞれぞれ発熱体を把持する1対の
発熱体把持部とを有する端子金具を設けることができ
る。これによれば、2つの把持部によって発熱体をより
安定的に保持することができる効果も新たに加わる。
【0207】一方、発熱体を周方向に包囲するように形
成され、前記酸素検知素子の内側の電極層に接触する内
部電極接続部と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸
方向において該発熱体の先端に近い側の端部にのみ連結
され、発熱体を把持する発熱体把持部とを有する端子金
具を設けることもできる。この構成によれば、発熱体は
1ケ所の把持部により、軸線と交差する向きにおいて若
干の動きの自由度を生じた状態で把持されることとな
る。従って、発熱体を端子金具とともに酸素検知素子の
中空部内に挿入すると、該発熱体は先端部が酸素検知素
子の内壁面との接触するに伴い、これに追従して該内壁
面に沿う形で位置決めされ、酸素センサの活性化時間を
短縮する上でさらに大きな効果を期待することができ
る。また、センサを組み立てる際に、端子金具を介した
過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいて
は組立時の発熱体の折損等を防止することができる。さ
らに、端子金具の発熱体軸線方向における長さを短くで
き、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じて
これをコンパクトに構成できるようになる。
【0208】なお、この発明において、前述のような発
熱体の上記酸素検知素子に対する偏心配置にかかわら
ず、発熱体の発熱部の表面が酸素検知素子の中空部内壁
面に接触はせず、ごく近接して位置する構成でもよい。
このような構成でも、偏心していない場合に比べて、発
熱部から酸素検知素子への熱輻射等の効果は高まるた
め、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定の効果
がある。
【0209】この発明の酸素センサにおいては、酸素検
知素子の軸断面内側寸法DAと発熱体の軸断面外側寸法
DBとの差ΔD=DA−DBが0.35mm以下となってい
ることが望ましい。ここで、酸素検知素子の軸断面内側
寸法及び発熱体の軸断面外側寸法は、酸素検知素子内周
面ないし発熱体外周面が円筒状面である場合には、その
内径ないし外径を意味するものとする。また、上記内周
面及び外周面が円形から外れた軸断面形状を有している
場合には、これを同面積の円形断面に換算した場合の内
径ないし外径を意味するものとする。さらに、上記軸断
面寸法が、その軸方向において一定でない場合(例えば
テーパ面状に形成されている場合)は、該軸断面寸法の
軸方向における平均値で代表させるものとする。
【0210】ΔD=DA−DBが0.35mmを超えると、
酸素検知素子の活性化時間、ひいてはセンサ立ち上がり
時間が長くなったり、あるいは該立ち上がり時間にセン
サ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。例
えば、発熱部を側方から酸素検知素子の中空部内壁面に
当てる場合、ΔDが大きくなるとその横当て力に個体間
ばらつきが生じやすくなることが、その原因として考え
られる。なお、ΔDの値は、より望ましくは0.30mm
以下に設定するのがよい。一方、ΔDが0.1mm未満に
なると、発熱体を酸素検知素子の中空部内への挿入が行
いにくくなり、発熱体の酸素検知素子に対する組み付け
能率を低下させる場合がある。それ故ΔDは0.1mm以
上に設定するのがよく、より望ましくは0.15mm以上
に設定するのがよい。
【0211】また、検知素子の軸断面内側寸法DAと発
熱体の軸断面外側寸法DBとの差ΔD=DA−DBの、DB
に対する比ΔD/DBは、0.13以下となっているこ
とが望ましい。ΔD/DBが0.13を超えると、セン
サの立ち上がり時間が長くなったり、あるいはそのセン
サ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。Δ
D/DBは、より望ましくは0.10以下に設定するの
がよい。
【0212】このような構成は、発熱体を1ケ所の把持
部のみにより把持する構成に適用した場合に特に有効で
ある。すなわち、ΔDないしΔD/DBを上記範囲で調
整することにより、酸素検知素子の内壁面との接触に伴
い、発熱体の先端部は酸素検知素子の中空部内壁面にさ
らに沿いやすくなり、酸素センサの活性化時間を短縮す
る効果が一層高められるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の酸素センサの縦断面図。
【図2】図1の、発熱部と酸素検知素子との接触部付近
を拡大して示す断面図。
【図3】図1の要部を拡大して示す断面図。
【図4】フィルタアセンブリの正面部分断面図。
【図5】フィルタアセンブリの組立て工程説明図。
【図6】そのかしめ方法の説明図。
【図7】フィルタアセンブリと防護カバーとの間のかし
め部の平面断面図及びその部分拡大図。
【図8】同じくその部分拡大縦断面図。
【図9】防護カバーの前端側を延ばした構成の縦断面
図。
【図10】金属弾性部材の一例を示す図。
【図11】アセンブリ連結かしめ部の拡大図及びそのB
−B及びC−C断面図。
【図12】アセンブリ連結かしめ部における主かしめ部
と補助かしめ部の作用説明図。
【図13】回転阻止部の変形例を示す平面断面図。
【図14】図1の酸素センサの組立工程説明図。
【図15】かしめ装置の概念図。
【図16】その要部を示す平面模式図。
【図17】同じく側面断面模式図。
【図18】セラミックセパレータの説明図。
【図19】セラミックセパレータをいくつかの変形例と
ともに示す斜視図。
【図20】図19(c)のセラミックセパレータを用い
た酸素センサの要部を示す縦断面図。
【図21】セラミックセパレータにおける発熱体端部収
容孔とセパレータ側リード線挿通孔の位置関係を示す説
明図。
【図22】弾性シール部材の説明図。
【図23】弾性シール部材をいくつかの変形例とともに
示す斜視図。
【図24】図23(b)の弾性シール部材を用いた酸素
センサの要部を示す縦断面図。
【図25】図23(c)の弾性シール部材を用いた酸素
センサの要部を示す縦断面図。
【図26】図1の端子金具を単体状態で示す図。
【図27】図1の発熱体に端子金具を組み付けたアッセ
ンブリを示す図。
【図28】図2の要部を概念化して示す部分断面図及び
比較例の同様な部分断面図。
【図29】図1の発熱部の一例を示す図。
【図30】図1の酸素センサの作用の一部を参照例と比
較して説明する概念図。
【図31】図1の酸素センサの第一の変形例を示す縦断
面図。
【図32】同じく第二の変形例を示す縦断面図。
【図33】図32の発熱部近傍を概念化して示す部分断
面図。
【図34】図1の酸素センサの第三の変形例を示す縦断
面図。
【図35】図34の端子金具を単体状態で示す図。
【図36】図35の端子金具を製造するための板状金属
部材の一例を示す図。
【図37】図1の酸素センサの第四の変形例を示す縦断
面図。
【図38】図37の端子金具を単体状態で示す図。
【図39】図37の端子金具の作用を誇張して示す図。
【図40】図1の酸素センサの第五の変形例を示す縦断
面図。
【図41】図1の酸素センサの第六の変形例を示す縦断
面図。
【図42】緩衝支持部をばね部として形成した例を示す
縦断面図。
【図43】図42のばね部の製造工程説明図。
【図44】緩衝支持部を低硬度部として形成した例を示
す縦断面図。
【図45】保持フィルタ保持部をフィルタ保持部の段部
にまたがるように形成した例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 酸素センサ 2 酸素検知素子 2a 中空部内壁面 3 発熱体 9 主体金具 10 ケーシング 14 主筒 14a 薄内部 16 フィルタアセンブリ(カバー部材、気体導入構造
部) 18 セラミックセパレータ 20,21,28,29 リード線 27,27a,27b 発熱体把持部 30 連結部 42 発熱部 43 外層セラミック部 50 位置決め用突出部 51 フィルタ保持部 52 気体導入孔 53 フィルタ 54 補助フィルタ保持部 55 補助気体導入孔 56,57 フィルタかしめ部 58 隙間 59 凸状部 60 段付き部 61 第一部分 62 第二部分 63 凹状部 64 防護カバー 65 気体滞溜空間 66,67 かしめ部(カバー接合部) 68 外部連通部 69 溝部 70 隙間 71 前方側開口部 72 セパレータ側リード線挿通孔(リード線挿通孔) 73 セパレータ側支持部(フランジ部) 74 金属弾性部材 75 アセンブリ連結かしめ部 76 主かしめ部 77 補助かしめ部(回転阻止部) 84 連結部 90 緩衝支持部 91 シール側リード線挿通孔 92 隙間 93 気通用連通部 94 気通用溝部 95 気通用貫通孔 96 隙間規定突出部 97 気通用連通部 98 隙間 99 フランジ部 100 発熱体挿入ガイド部 101 スリット 102 発熱体端部収容孔

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先端部が閉じた中空軸状をなし、それの
    内外面に電極層を有する酸素検知素子と、 該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子
    を加熱する軸状の発熱体と、 前記発熱体を周方向に包囲するように形成され、前記酸
    素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部
    と、その内部電極接続部に対し前記発熱体の軸方向にお
    いて少なくとも一方の側に連結されて前記発熱体を把持
    する発熱体把持部とを有する端子金具とを備え、 その端子金具の前記発熱体把持部は、前記発熱体が自身
    の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発熱体の挿通
    に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その弾性復帰力
    により該発熱体を把持するものとされる一方、その軸方
    向における少なくとも一方の端縁部には、前記発熱体の
    挿入をガイドするための発熱体挿入ガイド部が形成され
    ていることを特徴とするヒータ付き酸素センサ。
  2. 【請求項2】 前記発熱体挿入ガイド部は前記発熱体把
    持部に対し、前記酸素検知素子の先端から遠い側の端縁
    部に形成されている請求項1記載のヒータ付き酸素セン
    サ。
  3. 【請求項3】 前記発熱体挿入ガイド部は、筒状の前記
    発熱体把持部の端縁からその軸方向に切れ込むととも
    に、その深さ方向において徐々にその幅を縮小する切欠
    き部とされている請求項1又は2に記載のヒータ付き酸
    素センサ。
  4. 【請求項4】 先端部が閉じた中空軸状をなし、それの
    内外面に電極層を有する酸素検知素子と、 該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子
    を加熱する軸状の発熱体と、 前記発熱体を周方向に包囲するように形成され、前記酸
    素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部
    と、その内部電極接続部に対し前記発熱体の軸方向にお
    いて少なくとも一方の側に連結されて前記発熱体を把持
    する発熱体把持部とを有する端子金具とを備え、 その端子金具の前記発熱体把持部は、前記発熱体が自身
    の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発熱体の挿通
    に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その弾性復帰力
    により該発熱体を把持するものとされる一方、その軸方
    向における少なくとも一方の端縁部には、前記軸方向に
    切れ込むとともに、深さ方向において徐々にその幅を縮
    小する切欠き部が形成されていることを特徴とするヒー
    タ付き酸素センサ。
  5. 【請求項5】 筒状の前記発熱体把持部には、軸方向に
    おける一方の端縁から他方の端縁に至るスリットが形成
    されており、前記切欠き部は、前記発熱体把持部の該ス
    リットの両側部分を切り欠くことによ形成されている請
    求項3又は45に記載のヒータ付き酸素センサ。
  6. 【請求項6】 前記切欠き部は、前記発熱体把持部の該
    スリットの両側部分を、該スリットの中間位置から一方
    の縁に向けてこれを斜めに切り欠くことによりテーパ状
    に形成されている請求項5記載のヒータ付き酸素セン
    サ。
  7. 【請求項7】 前記端子金具は、前記内部電極接続部と
    なるべき第一の板状部と、前記発熱体把持部となるべき
    第二の板状部とが長さ方向において互いに隣接するとと
    もに、各々その幅方向中間部において連結部により互い
    に連結された金属板部材により形成され、 前記第一の板状部は、その幅方向両側部分を筒状に曲げ
    加工することにより前記内部電極接続部とされ、 同じく前記第二の板状部は、その幅方向両側部分を筒状
    に曲げ加工することにより前記発熱体把持部とされると
    ともに、その幅方向両縁部分は、前記曲げ加工により互
    いに対向して前記スリットを形成する請求項5又は6に
    記載のヒータ付き酸素センサ。
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