JP3705907B6 - 酸素センサ - Google Patents

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康司 松尾
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサ、あるいは所定のガス中の酸素を検出するための酸素センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車エンジン等の内燃機関において、その空燃比制御等に使用するための各種酸素センサが開発されている。近年では特に、排気ガスによる大気汚染など環境保護上の問題に対応するために、排気ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサについても、とりわけ高性能で長寿命のものに対する需要が高まっている。
【0003】
例えば、このような酸素センサとして代表的なものには、ZrO2等の酸素イオン電導性固体電解質により先端部が閉じた中空軸状に形成された酸素検知素子を筒状のケーシング内に収容し、該酸素検知素子の先端外面を被検出雰囲気と接触させるとともに、その内側空間に基準ガスとしての大気を導入して、該検知素子に生ずる酸素濃淡電池起電力により被検出雰囲気中の酸素濃度を測定するようにした構造のものが広く使用されている。
【0004】
上記酸素センサにおいては、酸素検知素子あるいはそれを加熱するための発熱体からのリード線をケーシングから取り出すための構造として、セラミックセパレータをケーシング内に配置し、その個別のリード線挿通孔に各リード線を通すようにしたものが一般的である。このようなセラミックセパレータを使用することにより、例えばリード線間あるいはリード線に続く端子部間で短絡が生じることを防止ないし抑制される。
【0005】
ところで、従来の酸素センサにおいては、例えば外周面にフランジ部を設けたセラミックセパレータをケーシング内に挿入し、そのフランジ部とケーシングの開口端との間にゴムリングを配置して、さらにその外側を筒状のカバー部材で被うようにした構造のものが多い。この場合、例えばカバー部材に段付き部などの支持部を設け、カバー部材をケーシングに対して軸方向に押し付けることにより、セパレータのフランジ部をケーシング端面とカバー部材の支持部との間で挾圧し、その状態でカバー部材をケーシングに対してかしめることにより固定がなされる。このとき、上記ゴムリングは、その弾性力によりセラミックセパレータをカバー部材とケーシングの間に挾圧保持力を生じさせて、該セパレータのケーシング内でのがたつきを防止する役割を果たす。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構造においては、セラミックセパレータ及びケーシングのいずれとも別体のゴムリングを使用することになるので部品点数が多く、製造能率が悪い欠点がある。また、ゴムリングを使用するため耐熱性の限度が低く、例えば加熱冷却のサイクルを繰返した場合にゴムリングが弾性力を失い、がたつき防止の効果が低下して、衝撃力が作用したときにセラミックセパレータに割れや欠け等が生じたりしやすくなり、ひいては酸素センサの寿命低下につながる問題がある。
【0007】
本発明の課題は、セラミックセパレータのケーシングに対する固定を確実に行うことができてしかも部品点数が少なく、製造能率の高い酸素センサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明の酸素センサは、軸状の酸素検知素子と、酸素検知素子を収容し、外部に面する主筒を含む筒状のケーシングと、ケーシングに対し同軸的に設けられるとともに、該ケーシングの後端部に形成されたケーシング側支持部に当接することによりこれに支持され、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されるセラミックセパレータとを備える。そして、ケーシング側支持部は、ケーシングの本体部分と一体化され、該本体部分よりも低硬度で、且つケーシングの軸方向において該ケーシングの本体部分よりも弾性変形が容易な緩衝支持部とされており、セラミックセパレータを緩衝支持部に対して軸方向において相対的に押し付けることにより該緩衝支持部をその押し付け方向に圧縮変形させた状態で、該セラミックセパレータをケーシングに対して固定するセパレータ固定手段が設けられている。なお、本明細書においては、酸素検知素子の軸方向においてその先端部に向かう側を「前方側」、これと反対方向に向かう側を「後方側」とする。
【0009】
上記構成において緩衝支持部は、セパレータ固定手段とケーシングとの間で、セラミックセパレータに対する適度な挾圧保持力を生じさせてがたつきを防止し、その固定・保持をより確実なものとする一方、酸素センサの組立時等において自身の弾性変形により、セラミックセパレータのセパレータ側支持部に過度な挾圧力が作用することを抑制し、ひいてはそれによるセラミックセパレータの割れや欠けを防止する役割を果たす。そして、該緩衝支持部はケーシング側支持部として該ケーシングと一体に構成されるので、従来の酸素センサのようにゴムリング等を別部材として設ける必要がなくなる。その結果、部品点数が減少してセンサの組立工程が簡略化され、ひいてはセンサの製造能率を向上させることができる。
【0010】
上記構成においては、ケーシングは金属で構成することができ、緩衝支持部は該ケーシングと同材質または異材質の金属材料で構成することができる。これによれば、緩衝支持部の構成材質が金属であることから耐熱性に優れ、高温の厳しい使用環境下でもセラミックセパレータのがたつき防止効果を長期に渡って良好に維持することができる。
【0011】
具体的には緩衝支持部は、本体部分と一体化されたばね部とすることができる。ばね部を本体部分と一体化することで、緩衝支持部を確実に弾性変形させることができ、ひいてはセパレータ固定手段とケーシングとの間で、セラミックセパレータに対する必要十分な挾圧保持力が生じてセラミックセパレータの固定をより確実に行うことができる。
【0012】
この場合、ばね部は、ケーシングの開口端縁部を断面半径方向に1ないし複数回曲げ返すことにより形成することができる。これによればケーシングの開口端縁部にプレス加工等によりばね部を簡単に形成することができる。ばね部は、より具体的には、ケーシングの開口端縁部に薄肉部を形成し、その薄肉部を断面半径方向において内側に1回曲げ返し、その曲げ返された薄肉部の先端側をさらに外向きに1回曲げ返すことにより形成することができる。薄肉部の形成により、ばね部形成のための曲げ加工がより行いやすくなり、しかも2回の曲げ加工によりばね部材をより簡単に形成できる。
【0013】
そして緩衝支持部は、ケーシングの本体部分よりも低硬度の部分となるように構成している。すなわち、緩衝支持部の硬度を本体部分の硬度よりも低くすることにより、緩衝支持部は本体部に対して相対的に圧縮変形し、ばね部と同様に機能しうる。このような緩衝支持部は、例えば本体部分よりも硬度の低い異材質により構成することができる。この場合、その異材質部分は溶接あるいはろう付け等により本体部分に接合することができる。また、緩衝支持部を形成すべきケーシングの部分に対し、通電加熱等により局所的な軟化熱処理を行うことにより形成する方法も可能である。この場合、緩衝支持部は本体部分と同材質により一体形成されることとなる。
【0014】
また、緩衝支持部のビッカース硬度をHvs、本体部分のビッカース硬度をHvhとした場合、Hvhは320以上とするのがよい。Hvhが320未満になるとケーシングの強度が不足し、酸素センサの耐久性を確保できなくなる場合がある。Hvhは、より望ましくは360以上とするのがよい。また、緩衝支持部の硬度は、Hvh−Hvsが60以上となるように調整するのがよい。Hvh−Hvsが60未満になると、緩衝支持部の本体部分に対する相対的な変形量が不足し、所期の効果が十分に達成できなくなる場合がある。Hvh−Hvsは、より望ましくは80以上となるように調整するのがよい。
【0015】
セラミックセパレータには、その外周面から突出してセパレータ側支持部を形成することができる。該セパレータ側支持部は例えばセラミックセパレータの周方向に沿うフランジ状に形成できる。そして、ケーシングの開口端面部にケーシング側支持部としての緩衝支持部を形成し、これにセパレータ側支持部を当接させる構成とすることができる。これにより、セラミックセパレータは、ケーシングに対しその開口部から挿入するだけで組付けを極めて簡単に行うことができる。
【0016】
なお、上記酸素センサの構成においては、ケーシングと同軸的に配置され、各リード線が自身の後方外側に延びることを許容しつつ、セラミックセパレータを外側から覆った状態でケーシングに対し後方側から連結されるカバー部材を設けることができる。この場合、そのカバー部材の内周面の軸方向中間位置に、緩衝支持部とは反対側からセパレータ側支持部に対し当接するカバー側支持部を形成することができる。これにより、該カバー部材は、緩衝支持部を圧縮変形させた状態でケーシングに対し結合されることにより、上記セパレータ固定手段を形成することとなる。このようなカバー部材を設けることにより、セラミックセパレータをより安定的かつ確実に保持・固定することができる。
【0017】
なお、上記カバー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から結合部により連結されるフィルタアセンブリとすることができる。該フィルタアセンブリは、ケーシングに対し後方側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、かつ壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を内面側から又は外面側から塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタをフィルタ保持部に対して固定する補助フィルタ保持部とを備えて構成され、それらフィルタ及び気体導入孔を経て外気がケーシング内に導入される。
【0018】
このように、フィルタを含む気通構造部をフィルタアセンブリとしてケーシングとは独立に構成し、これをケーシングに連結・一体化した構成とすることにより、次のような効果が達成される。
▲1▼フィルタアセンブリの組立ては、酸素検知素子などのケーシング内への組付けとは独立に行うことができるので、例えば検知素子のリード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。
▲2▼ケーシング内への部品の組付けと、フィルタアセンブリの組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。また、フィルタの組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリの段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響は及ばず、部品等の無駄等が生じにくい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
図1に示す酸素センサ1は、先端が閉じた中空軸状の固体電解質部材である酸素検知素子2と、軸状のセラミックヒータである発熱体3とを備え、それらの外殻を構成する各種部材の組立体として構成される。酸素検知素子2は酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、Y23ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。
【0020】
この酸素検知素子2の中間部外側には、絶縁性セラミックから形成されたインシュレータ6,7、並びにタルクから形成されたセラミック粉末8を介して金属製のケーシング10が設けられ、酸素検知素子2はケーシング10と電気的に絶縁された状態で貫通している。ケーシング10は、酸素センサ1を排気管等の取付部に取り付けるためのねじ部9aを有する主体金具9と、その主体金具9の一方の開口部に内側が連通するように結合された主筒14とを備える。また、図2に示すように、酸素検知素子2の内面及び外面には、そのほぼ全面を覆うように一対の電極層2b,2cが設けられている。これら電極層2b,2cはいずれも、酸素検知素子2を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極、例えばPt多孔質電極として構成されている。
【0021】
次に、主体金具9の一方の開口部には、酸素検知素子2の先端側を所定の空間を隔てて覆うようにプロテクタ11が設けられ、プロテクタ11には排気ガスを透過させる複数のガス透過口12が形成され、これにより排気ガス中の酸素が酸素検知素子2の先端側表面に接触可能となっている。主体金具9の他方の開口部には、前述の主筒14がインシュレータ6との間にリング15を介してかしめられ、この主筒14にさらに、全体として中空筒状に形成されたフィルタアセンブリ16(気体導入構造部)が外側から嵌合・固定されている。このフィルタアセンブリ16の図中上端側の開口はゴム等で構成された弾性シール部材17で封止され、またこれに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設けられている。そして、それらセラミックセパレータ18及び弾性シール部材17及びを貫通するように、酸素検知素子2用のリード線20,21及び発熱体3用のリード線28,29(図21:図1ではリード線20,21の影になって見えない)が配置されている。
【0022】
酸素検知素子2用の一方のリード線20は、端子金具23のコネクタ部24及びこれに続く引出し線部25(絶縁管25aで覆われているが、これを省略してもよい)、並びに端子金具23の内部電極接続部26を経て、前述の酸素検知素子2の内側の電極層2c(図2)と電気的に接続されている。一方、他方のリード線21は、別の端子金具33のコネクタ部34及びこれに続く引出し線部35並びに外部電極接続部35bを経て、酸素検知素子2の図示しない外側の電極層と電気的に接続されている。また前述の発熱体3に通電するためのプラス側及びマイナス側の一対のヒータ端子部40が、発熱体3の基端部(図1において上端部)に固定され、これらヒータ端子部40を経て、発熱体3内に埋設された後述の発熱用抵抗回路に通電されるようになっている。なお、これら一対のヒータ端子部40に対し、前述の発熱体用のリード線28,29がそれぞれ接続される。
【0023】
次に、フィルタアセンブリ16の構成について詳しく説明する。なお、繰返しになるが、本明細書においては、酸素検知素子2の軸方向においてその先端部に向かう側(閉じている側)を「前方側」、これと反対方向に向かう側を「後方側」として説明を行う。
【0024】
図3に示すように、フィルタアセンブリ16は、主筒14(ケーシング10)に対し後方外側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに、内部が主筒14の内部と連通し、かつ壁部に複数の気体導入孔52が形成されたフィルタ保持部51を備える。そして、そのフィルタ保持部51の外側には、上記気体導入孔52を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、そのフィルタ53の外側には、壁部に1ないし複数の補助気体導入孔55が形成されるとともに、フィルタ53をフィルタ保持部51との間で挟み付けて保持する筒状の補助フィルタ保持部54が配置される。具体的には、気体導入孔52及び補助気体導入孔55は、フィルタ保持部51及び補助フィルタ保持部54に対し、各軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で形成されており、フィルタ53は、フィルタ保持部51を周方向に取り囲むように配置されている。
【0025】
また、フィルタ保持部51は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部60により、該段付き部60に関して軸方向前方側を第一部分61、同じく軸方向後方側を第二部分62として、該第二部分62が第一部分61よりも径小となるように構成されており、気体導入孔52はその第二部分62の壁部に形成されている。さらに、補助フィルタ保持部54はフィルタ保持部51の第一部分61の外径よりも小さい内径を有する。
【0026】
ここで、フィルタ53は、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)の未焼成成形体を、PTFEの融点よりも低い加熱温度で1軸以上の方向に延伸することにより得られる多孔質繊維構造体(商品名:例えばゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株)))により、水滴等の水を主体とする液体の透過は阻止し、かつ空気及び/又は水蒸気などの気体の透過は許容する撥水性フィルタとして構成されている。これにより、補助気体導入孔55からフィルタ53を経て気体導入孔52より、基準ガスとしての大気(外気)が主筒14(ケーシング10)内に導入されるとともに、水滴等の液体状態の水は主筒14内に侵入することが阻止されるようになっている。
【0027】
また、図4に示すように、フィルタ53は、補助フィルタ保持部54の内面に密着する一方、フィルタ保持部51の外面とフィルタ53との間には、例えば補助気体導入孔55の列に沿って環状形態をなすように所定量の隙間58が形成されている。さらに、補助フィルタ保持部54には、周方向に配列する補助気体導入孔55の列を挟んでその軸方向両側に、フィルタ53を介して該補助フィルタ保持部54をフィルタ保持部51に対して結合する環状のフィルタかしめ部56,57が形成されている。
【0028】
ここで、補助フィルタ保持部54は、その軸方向後端縁がフィルタ53の後端縁に対応して位置するように配置されており、該後端縁に沿って周方向にフィルタかしめ部56が形成されている。これにより、補助フィルタ保持部54の後端面位置において、フィルタ保持部51との間に形成される環状の隙間の開口部(フィルタ確認部となる)からフィルタ53を目視できる。例えば、図5に示すように、フィルタ保持部51に筒状のフィルタ53を外挿し、そのさらに外側に補助フィルタ保持部54を嵌め入れる際に、フィルタ53が補助フィルタ保持部54と連れ移動して位置ずれを起こすことがありうる。この場合、この状態で万一フィルタかしめ部56が形成されれば、フィルタかしめ部56からフィルタ53が外れてシールが不完全となるのであるが、フィルタ53が上述のように目視できるようになっていることで、そのようなフィルタ53のかしめ不良を容易に発見できる。
【0029】
また、図4(a)に示すように、補助フィルタ保持部54の前端縁側のフィルタかしめ部57には、フィルタ53を部分的に露出させるフィルタ確認露出部57aを形成することもできる。こうすれば、補助フィルタ保持部54の前端縁側においてもフィルタ53が正常にかしめられているか否かを容易に判別できる。
【0030】
次に、補助フィルタ保持部54のそれらフィルタかしめ部56,57の間に位置する部分は、フィルタ53とともに外向きに橈んで凸状に膨出する形態をなし、それによって環状の凸状部59が形成されている。また、凸状部59の先端部は環状に平坦化され、その平坦化部分59aに補助気体導入孔55が形成されるとともに、該平坦化部分59aの形成によりフィルタ保持部51がフィルタ53に押し付けられ、これに密着している。
【0031】
このような構造とすることで、フィルタ53を透過してくる外気は、内側に環状の隙間58が形成されていることで流通抵抗が和らげられ、気体導入孔52を通ってスムーズに主筒14内に導入できる。一方、フィルタ53の外面は補助フィルタ保持部54の内面と密着しているので、補助気体導入孔55からフィルタ53と補助フィルタ保持部54との間にゴミや油分が侵入しにくくなり、ひいてはフィルタ53の外面側の撥油性あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制されて、例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、センサ出力の低下が起こりにくくなる。
【0032】
上記構造を有するフィルタアセンブリ16は、例えば以下のような方法により
製造することができる。まず、図5(a)に示すように、フィルタ保持部51に対し筒状のフィルタ53を外挿し、さらにその外側に補助フィルタ保持部54となるべき筒状体54’を配置する。ここで、フィルタ保持部51に形成された段付き部60は、フィルタ53と筒状体54’の下縁部を支持してこれらが抜け落ちることを阻止する役割を果たす。続いて(b)に示すように、筒状体54’を、補助気体導入孔55の列の両側においてそれぞれフィルタ部に向けて周方向にかしめることにより、フィルタかしめ部56,57を形成する。なお図5(c)及び(d)に示すように、補助フィルタ保持部54をフィルタ53よりも前方側へ突出させるとともに、その突出部を径小部54jとして形成し、該径小部54jにおいてかしめ部54kを形成してもよい。これにより補助フィルタ保持部54にねじり力が加わったときに、その回り止め効果を更に向上させることができる。
【0033】
このフィルタかしめ部56,57は、図6に示すように、補助フィルタ保持部54の周方向に沿って配置された複数のかしめパンチ151を用いて、該補助フィルタ保持部54を半径方向に圧縮することにより形成することができる。各かしめパンチ151の内周面は互いに連なって補助フィルタ保持部部54の外周面に対応する円筒面を形成するとともに、それぞれ補助フィルタ保持部54の外周面に対して接近・離間可能とされ、図示しないパンチ駆動部により補助フィルタ保持部54に対し一斉に接近してこれを圧縮するようになっている。そして、各かしめパンチ151の軸方向両端縁には凸条部152,153が形成され、補助フィルタ保持部54の外周面に押し付けられてそれぞれ弧状の凹部を形成し、これが周方向に連なることでフィルタかしめ部56,57となる。
【0034】
ここで、かしめパンチ151の凸条部152,153に挟まれた部分は平坦な底部を有する凹所154とされ、その凹所154の深さhはフィルタ53と補助フィルタ保持部54との合計厚さよりも小さく設定されている。このようなかしめパンチ151で補助フィルタ保持部54を圧縮すると、凸条部152,153が食い込むことでフィルタかしめ部56,57が形成される一方、両かしめ部56,57に挟まれた部分は外向きに橈んで凸部59となる。しかしながら、圧縮がある程度進行すると、その凸部59は凹所154の底部に当たって止められ、さらに圧縮を継続すると凸部59は凹所154により成形されて、該凹所154の平坦な底部に対応して平坦化部分59aが形成される。
【0035】
このとき、補助フィルタ保持部54はかしめに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部59における橈み量も大きくなるが、内側のフィルタ保持部51はそれほど圧縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタ53は柔軟であるので、補助フィルタ保持部54に追従して外向きに橈むこととなる。その結果、フィルタ保持部51とフィルタ53との間には、フィルタ保持部51と補助フィルタ保持部54との両者の橈み量の差に基づいて環状の隙間58が形成されることとなる。
【0036】
なお、図4(c)に示すように、フィルタ保持部51には、少なくとも気体導入孔52の周囲において内向きに凹む凹状部63を形成し、その凹状部63においてフィルタ53との間に隙間58を形成するようにしてもよい。この場合、凹状部63は、図4(d)に示すように、気体導入孔52の周縁部分を凹ませたディンプル状に形成してもよいし、同図(e)に示すように各気体導入孔52の配列方向に沿う環状に形成してもよい。
【0037】
図3に戻り、セラミックセパレータ18には、各リード線20及び21を挿通するための複数のセパレータ側リード線挿通孔(リード線挿通孔)72が軸方向に貫通して形成されており、その軸方向中間位置には、外周面から突出する形態でフランジ状のセパレータ側支持部73が形成されている。そして、該セラミックセパレータ18は、セパレータ側支持部73よりも前方側に位置する部分を主筒14の後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部73において主筒14の後端面に当接するとともに、セパレータ側支持部73よりも後方側に位置する部分を主筒14の外側に突出させた状態で配置される。なお、セラミックセパレータ18の細部については後述する。
【0038】
上記補助フィルタ保持部54の外側には、筒状の防護カバー64がこれを覆うように設けられている。この防護カバー64は、フィルタ63への直接的な液滴の噴射あるいは油や汚れ等の付着物の付着を阻止ないし抑制する働きをなす。該防護カバー64は、例えば気体導入孔52(あるいは補助気体導入孔55)に対応する位置においてフィルタ53との間に気体滞留空間65を生じるように配置され、軸方向において気体導入孔52を挟んだ両側部分が、フィルタ保持部51の外面に対しカバー接合部としてのかしめ部66,67により接合されている。そして、その軸方向前方側のかしめ部66に対応する位置において、フィルタ保持部51との間には、気体滞留空間65を外部と連通させてこれに外気を導入する外部連通部68が形成されている。
【0039】
具体的には、図4に示すように、フィルタ保持部51の第一部分61の外周面に、該フィルタ保持部51の軸方向に延びる溝部69が周方向に沿って所定の間隔で複数形成され、これら溝部69が外部連通部68を構成している。そして、図7に示すように、防護カバー64をフィルタ保持部51の第一部分61(図3等)に向けてかしめることにより、各溝部69をその配列方向に横切るように、かつ溝部69の底部において防護カバー64と第一部分61との間に隙間70が残留するように、上記かしめ部66が環状形態で形成されている。なお、かしめ部66は、セラミックセパレータ18の、セパレータ側支持部73の外周面に対応する位置に形成されている。これにより、かしめ部形成の際の圧縮力をセパレータ側支持部73で受けることができるので、該かしめ部66の形成を確実に行うことができる。
【0040】
上記構造においては、図8に示すように、防護カバー64とフィルタ保持部51の第一部分61との間において、各溝部69に形成される隙間70の前方側開口部71から、該隙間70を通って気体滞留空間65へ外気が導かれることとなる。一方、かしめ部67(別のかしめ部)は第二部分62の末端部外周面に形成されている(図3等)。なお、図9に示すように、防護カバー64の軸方向前方側の端縁部64aを、溝部69の端よりも所定長だけスカート状に延伸してもよい。これにより、酸素センサ1に水しぶき等がかかった場合に、防護カバー64の内側から気体滞留空間65内へ水滴等が侵入する確率をさらに小さくすることができる。
【0041】
ここで、図45に示すように、補助フィルタ保持部54の前端側を軸方向に延伸して、フィルタ保持部51の第一部分61と第二部分62とにまたがるように配置してもよい。この場合、第一部分61に対応する位置において、補助フィルタ保持部54を該第一部分61に向けて直接的にかしめることにより、該第一部分61の周方向に沿って環状の補助かしめ部66を形成するようにしてもよい。こうすれば、補助フィルタ保持部51のフィルタ保持部54に対する固定を一層確実に行うことができる。なお、防護カバー64の前端側縁部は、補助フィルタ保持部54の対応する縁部に重なる位置まで延伸することができ、カバー接合部としてのかしめ部66を上記補助かしめ部に兼用することができる。この場合、外部連通部68すなわち溝部69は、補助フィルタ保持部54に形成することができる。
【0042】
図3に戻り、フィルタアセンブリ16のフィルタ保持部51は、セラミックセパレータ18の突出部分を第二部分62の内側まで進入させてこれを覆うとともに、段付き部60においてセパレータ側支持部73に対し、主筒14とは反対側から金属弾性部材74を介して当接するように配置される。該金属弾性部材74はばね座金、例えば図10に示すような波型座金として構成されており、図3に示すようにセパレータ側支持部73に外挿されるとともに、ケーシング側支持部としての主筒14の端面とセラミックセパレータ18との間に圧縮状態で配置される。これにより、金属弾性部材74は、フィルタアセンブリ16(カバー部材)と主筒14との間で、セラミックセパレータ18に対する適度な挾圧保持力を生じさせてがたつきを防止し、その固定・保持をより確実なものとする。また、酸素センサ1の組立時等において自身の弾性変形によりセラミックセパレータ18のセパレータ側支持部73に過度な挾圧力が作用することを抑制し、ひいてはそれによるセラミックセパレータ18の割れや欠けを防止する役割も果たす。また、金属弾性部材74は、その構成材質が金属であることから耐熱性に優れ、セラミックセパレータのがたつき防止効果を長期に渡って良好に維持することができる。
【0043】
また、セパレータ側支持部73と当接する主筒14(ケーシング10)の後方側開口端面部(ケーシング側支持部)には、主筒14の本体部分よりも弾性変形が容易な緩衝支持部90が形成されている。緩衝支持部90は、具体的には本体部分14bよりも低硬度部分となるように構成されている。すなわち、緩衝支持部90の硬度を本体部分14bの硬度よりも低くすることにより、セパレータ側支持部73が押し付けられた際に、緩衝支持部90は圧縮変形して前述の金属弾性部材64と同様の作用・効果を奏することとなる。なお、緩衝支持部90は弾性限度の範囲内で変形させても、塑性変形させてもいずれでもよい。
【0044】
緩衝支持部90は、例えば本体部分14bよりも硬度の低い異材質により構成することができる。この場合、その異材質部分は溶接あるいはろう付け等により本体部分に接合することができる。一方、例えば主筒14がステンレス鋼等で構成される場合には、その開口先端部を通電加熱等により局部的に熱処理してこれを軟化させることにより、本体部分14bと緩衝支持部90とを同材質により一体形成することも可能である。
【0045】
また、緩衝支持部90のビッカース硬度をHvs、本体部分14bのビッカース硬度をHvhとした場合、Hvhは320以上とするのがよい。Hvhが320未満になると主筒14の強度が不足し、酸素センサ1の耐久性を確保できなくなる場合がある。なお、Hvhは望ましくは360以上とするのがよい。また、Hvh−Hvsは60以上となるように緩衝支持部90の硬度を調整するのがよい。Hvh−Hvsが60未満になると、緩衝支持部90の本体部分14bに対する相対的な変形量が不足し、所期の効果が十分に達成できなくなる場合がある。なお、Hvh−Hvsは望ましくは80以上とするのがよい。
【0046】
ここで、フィルタアセンブリ16は、アセンブリ連結かしめ部75により主筒14に結合され、上記緩衝支持部90の弾性変形を維持した状態でセラミックセパレータ18をケーシング10に対して固定する。すなわち、セパレータ固定手段の役割を果たすこととなる。なお、緩衝支持部90の圧縮変形によって十分な挾圧保持力を確保するできる場合には、図44に示すように金属弾性部材64は省略することも可能である。
【0047】
また、図42に示すように緩衝支持部90は、主筒14の本体部分14bと一体化されたばね部90として構成することもできる。本実施例において該ばね部90は、主筒14の開口端縁部に薄肉部14aを形成し、その薄肉部14aを断面半径方向において内側に1回曲げ返し、その曲げ返された薄肉部14aの先端側をさらに外向きに1回曲げ返すことにより形成されている。
【0048】
図43は、そのばね部90の形成方法の一例を示すものである。すなわち、(a)に示すように、金属素材をダイ155とパンチ156とを用いた多段の深絞り加工により筒状体14’を成形する。次に(b)に示すように、内パンチ158とその外側に同心的に配置された外パンチ159とからなる複合パンチ160と、大径部161a、段部161c及び小径部161bが深さ方向にこの順序で形成されたダイ孔161を有するダイ162とを用い、外パンチ159と段部161cとの間で筒状体14’の外縁部を挟みつつ、(c)に示すように、内パンチ158を外パンチ159から突出させることにより、該筒状体14’の底部中央を打ち抜く。このとき、筒状体14’の打ち抜かれた開口部の周縁が内パンチ158とダイ孔161の小径部161bとの隙間に圧入され、薄肉部14aが形成される。
【0049】
そして(d)に示すように、ダイ163のダイ孔164内において、筒状体14’の内側に挿入したパンチ165と、これに対向する対向パンチ166との間で薄肉部14aを潰すように圧縮変形させる。対向パンチ166の先端面外縁には、内向きの曲率を有する面取状の曲げ型部166aが形成されており、(e)に示すように、薄肉部14aの先端側は該曲げ型部166aに押し付けられることにより外向きに滑るように曲げられてばね部90となる。
【0050】
そして、図3に示すように、フィルタ保持部51は、その先端側、すなわち第一部分61において主筒14に対し外側からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり部においてフィルタ保持部を主筒14に向けてかしめることにより、それらの周方向に環状のアセンブリ連結かしめ部75が形成されている。このアセンブリ連結かしめ部75により、フィルタ保持部51は主筒14に対し、内周面が主筒14の外周面に対して気密状態となるように圧接されてこれに連結される。
【0051】
次に、図11に示すように、アセンブリ連結かしめ部75は、フィルタ保持部51を主筒14に向けてかしめることにより、周方向に円環状に形成された主かしめ部76と、その主かしめ部76よりも酸素検知素子2の先端部に近い側に形成された角状断面(本実施例では八角形状断面)の補助かしめ部(回転阻止部)77とから構成されている。
【0052】
主かしめ部76においては、主筒14とフィルタ保持部51との間の接触面が円筒状面となるので気密性に優れ、それらの間から主筒14内に水等が漏れ込むことを確実に阻止する役割を果たす。しかしながら、図12(b)に模式的に示すように、主筒14とフィルタ保持部51に外部からの衝撃等により強い捩じり力が作用した場合に、円筒状の接触面では両者の間に相対回転による滑りが発生して気密性が損なわれる可能性もありうる。そこで上述のような補助かしめ部77を形成すれば、その接触面が図12(a)に示すように角筒状に形成されていることから、上述のような捩じり力が作用しても主筒14とフィルタ保持部51との間の相対的な回転が生じにくい。その結果、主かしめ部76においてもそのような相対回転が生じることが効果的に阻止され、主筒14とフィルタ保持部51との間の気密性を一層確実とすることができる。なお、主かしめ部76と補助かしめ部77とは、軸線方向における位置関係を入れ換えて形成してもよいが、酸素センサ1の先端側は高温にさらされることが多いので、気密性確保が優先される主かしめ部76がそのような熱源から遠くなる上記配置関係がより望ましいといえる。
【0053】
なお、上記補助かしめ部77以外にも、例えば図13に示すように、フィルタ保持部51から主筒14側に向けて食い込む食込部78を周方向に沿って所定の間隔で形成したものも回転阻止部として機能しうる。一方、主かしめ部76において上述のような相対回転が生ずる心配がほとんどない場合には、補助かしめ部77を省略することも可能である。また、フィルタ保持部51と主筒14との間に結合部として、周方向に沿って円環状の溶接部を例えばレーザー溶接等により形成して接合を行う構成でもよい。
【0054】
以下、フィルタアセンブリ16の主筒14に対する組付け方法について説明する。すなわち、図14(a)に示すように、セラミックセパレータ18に金属弾性部材74を外挿し、さらにそのセラミックセパレータ18の前端側を主筒14に挿入する。一方、フィルタアセンブリ16は、図5に示すように予め組み立てておき、これを図14(a)に示すように、そのフィルタ保持部51においてセラミックセパレータ18及び主筒14の外側から被せる。なお、酸素検知素子2及び発熱体3等(図1)は主筒14内に予め組みつけておき、それらからのリード線20,21,28,29(図21)はセラミックセパレータ18のセパレータ側リード線挿通孔72(図3)に通し、さらにフィルタ保持部51の後端側開口部から外側に延出した状態にしておく。
【0055】
続いて、図14(b)に示すように、主筒14とフィルタアセンブリ16とに軸方向の圧縮力を付加する。これにより、金属弾性部材74はフィルタ保持部51とセラミックセパレータ18のセパレータ側支持部73との間で圧縮変形し、セラミックセパレータ18を主筒14とフィルタ保持部51と間で挟み付けるための付勢力を発生する。そして、この状態を維持しつつ、図14(c)に示すように、フィルタ保持部51と主筒14とにアセンブリ連結かしめ部75を形成し、両者を結合する。次いで、図14(d)に示すように、フィルタ保持部51の後端側開口部に弾性シール部材17を嵌め入れ、さらに防護カバー64を被せるとともに、(e)に示すようにかしめ部66及び67を形成して組立てが終了する。
【0056】
上記方法によれば、フィルタアセンブリ16の組立てが、酸素検知素子2などのケーシング10内への組付けとは独立に行われるので、リード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。また、ケーシング10内への部品の組付けと、フィルタアセンブリ16の組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。さらに、フィルタ53の組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリ16の段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響が及ばず、部品の無駄等が生じにくい。
【0057】
以下、アセンブリ連結かしめ部75の形成方法の詳細について説明する。すなわち、該方法においては、図15に概念的に示すようなかしめ装置79を用いる。図15(a)及び(b)に示すように、該かしめ装置79は、それぞれフィルタ保持部51を周方向外側から圧縮する複数のかしめパンチ81ないし83を含むとともに、同図(c)に示すように、フィルタ保持部51の軸線方向において所定距離だけ隔たった位置関係で配置される第一及び第二のかしめパンチユニット80及び82を備えている。ここで、第一のかしめパンチユニット80は主かしめ部76を形成するためのものであり、各かしめパンチ81の先端面は互いに連なって円筒状面をなす。一方、第二のかしめパンチユニット82は補助かしめ部77を形成するためのものであり、各かしめパンチ83の先端面は互いに連なって八角筒状面をなす。そして、図15(c)に示すように、これらかしめパンチ81,83は、それぞれ対応するもの同士が連結部84によって連結されてパンチセグメント85を形成し、フィルタ保持部51の外周面に対し、その半径方向に互いに一体的に接近・離間するようになっている。
【0058】
そして、フィルタ保持部51の周囲に配置されたこれらパンチセグメント85を一斉にフィルタ保持部51に向けて接近させることにより、フィルタ保持部51には主かしめ部76と補助かしめ部77とが一括して形成されることとなる。この方式によれば、主かしめ部76と補助かしめ部77とが1回のかしめ工程により同時形成されるので能率的であるばかりでなく、次のような効果も合わせて達成される。すなわち、かしめパンチによる圧縮により、フィルタ保持部51が主筒14に向けて局所的に食込みつつ圧接されてかしめ部が形成されるのであるが、その圧接部の周囲においてフィルタ保持部51には、食込変形に伴うしわ寄せ部あるいは浮き上がり部が形成されやすい。ここで、主かしめ部76と補助かしめ部77とを順次的に形成した場合、後で形成するかしめ部によるしわ寄せ部あるいは浮き上がり部の影響が先に形成したかしめ部に及び、気密性が損なわれる問題が生じやすい。しかしながら、上述のように両かしめ部76,77を同時に形成するようにすれば、しわ寄せ部あるいは浮き上がり部の影響をそれらかしめ部76及び77の間の領域にプールすることができ、ひいてはいずれのかしめ部76,77においても十分な密着性すなわち気密性を確保することができるようになる。
【0059】
図16は、かしめ装置79のより具体的な構成の一例を示す平面図である。すなわち、該かしめ装置79は、リング状のパンチホルダ86と、そのパンチホルダ86の周方向に沿って配置されるとともに、それぞれ該パンチホルダ86を半径方向に進退可能に貫通する複数のパンチセグメント85とを有するパンチアセンブリ89を備える。また、各パンチセグメント85の後端部にはばね支持部87が形成され、これとパンチホルダ86の外周面との間には、該パンチセグメント85を外向きに付勢するばね部材88が配置される。一方、図17(a)に示すように、このパンチアセンブリ89に対応して、内周面91が底面側で縮径するテーパ面とされた受けユニット190が設けられ、その底面中央にはワーク挿通孔94を有する位置決め突出部93が形成されている。
【0060】
そして、主筒14にフィルタアセンブリ16を被せた状態のワークWを位置決め突出部93に対し、プロテクタ11をワーク挿通孔94に挿入する形でセットする。このとき、主体金具9が位置決め突出部93上面で支持され、ワークWは受けユニット190の底面中央に対し直立状態で保持される。そして、パンチアセンブリ89は、受けユニット190の内側に同軸的にセットされ、各パンチセグメント85がワークWを取り囲んだ状態となる。また、パンチセグメント85の外側端面92には、受けユニット190の内周面91に対応するテーパが付与されている。
【0061】
この状態で、フィルタアセンブリ16を主筒14に向けて図示しない加圧機構により押し込み(図14(b))、さらにパンチアセンブリ89を受けユニット190の底面に向けて押し込むと、図17(b)に示すように、テーパ状に形成された外側端面92と内周面91との間のカム作用により、各パンチセグメント85は対応するばね88の圧縮を伴いながら一斉にワークWに向けて接近し、主かしめ部76と補助かしめ部77とを同時に形成する。
【0062】
次に、図3に示すように、セラミックセパレータ18は、酸素検知素子2の軸方向において後方側がフィルタ保持部51の内側に入り込み、同じく前方側が主筒14(ケーシング10)の内側に入り込むように配置され、各リード線20,21,28,29(図21)がセパレータ側リード線挿通孔72において軸方向に挿通される。一方、弾性シール部材17は、フィルタ保持部51の後方側開口部51aに対しその内側に弾性的にはめ込まれ、各リード線20,21,28,29を挿通するためのシール側リード線挿通孔91を有するとともに、それらリード線20,21,28,29の外面とフィルタ保持部51の内面との間をシールする。
【0063】
セラミックセパレータ18の後端面は、軸方向において気体導入孔52よりも後方側に位置するとともに、弾性シール部材17の後端面中央に形成された隙間規定突出部96の頂面と密着しており、その隙間規定突出部96により、弾性シール部材17とセラミックセパレータ18との間には所定量の隙間98が形成されている。また、フィルタ保持部51の内周面とセラミックセパレータ18の外周面との間にも隙間92が形成されている。そして、気体導入孔52からの気体は該隙間92内に供給され、さらにセラミックセパレータ18に形成された気通用連通部93を通ってケーシング10内に導かれる。具体的には、セラミックセパレータ18には、セパレータ側リード線挿通孔72とは別に軸方向の気通用貫通孔95が形成されており、またその後端面には、一端が貫通孔95に連通し、他端側がセラミックセパレータ18の外周面に開放する気通用溝部94が形成されている。すなわち、これら気通用貫通孔95及び気通用溝部94が気通用連通部93を形成している。
【0064】
図18及び図19(a)に示すように、セラミックセパレータ18には、酸素検知素子2及び発熱体3からのリード線(20、21、28、29)を挿通するための4つのセパレータ側リード線挿通孔72が、各々その中心が仮想的な円周経路(以下、セパレータ側ピッチ円という)C1上に位置して配列するように形成されている。また、気通用貫通孔95は、セラミックセパレータ18の中央部において、それら4つのセパレータ側リード線挿通孔72により囲まれる領域に形成されている。さらに、気通用溝部94は、セラミックセパレータ18の後端面において、4つのセパレータ側リード線挿通孔72と干渉しない位置に十字形態で形成されている。なお、図18(e)に示すように、気通用溝部94には、その上面側において幅方向両縁に面取り部94aが形成されている。
【0065】
次に、図22に示すように、弾性シール部材17においては、前述のシール側リード線挿通孔91が、各々その中心が仮想的な円周経路(以下、シール側ピッチ円という)C2上に位置して配列するように形成されており、前述のセパレータ側ピッチ円C1(直径D1)とシール側ピッチ円C2(直径D2)とは、その一方が他方よりも直径が大きくなるように設定される。
【0066】
例えば図3においてはD1>D2となっており、図22(c)に示すように、隙間規定突出部96は、シール側ピッチ円C2上に配列したシール側リード線挿通孔91よりも内側に位置する領域に形成されている。
【0067】
上記構造においては、セラミックセパレータ18の後端面位置を気体導入孔52よりも後方側に設定することで、気体導入孔52を経てフィルタアセンブリ16内に水滴等が侵入した場合、フランジ状のセパレータ側支持部73が主筒14の開口部を塞いでいる関係上、該水滴はセラミックセパレータ18の後端面側へ一旦回り込まないとケーシング10内へは流れ込むことができない。従って、酸素検知素子2側への水滴の流入が一層起こりにくくなる効果を達成することができる。この場合、気体導入孔52から流入した基準ガスもセラミックセパレータ18の後端面側へ回り込まなければならないが、該ガスは気通用溝部94及び気通用貫通孔95を経て支障なくケーシング10内へ導入できる。
【0068】
一方、弾性シール部材17及びセラミックセパレータ18に対し、互いに異なるピッチ円径でリード線20,21,28,29が挿通される構造となっているので、各リード線には弾性シール部材17とセラミックセパレータ18との間で必ず曲がりが生ずる。しかしながら、弾性シール部材17とセラミックセパレータ18との間には適度な隙間98が形成されており、この隙間98において各リード線20,21,28,29を比較的緩やかに曲げることができる。これにより、センサ1の組立て時等にリード線が強く曲げられて痛んだり、断線したりするトラブルが生じにくくなる。
【0069】
ここで、弾性シール部材17とセラミックセパレータ18との間でピッチ円径にほとんど差がない場合には上記隙間98を形成せず、弾性シール部材17とセラミックセパレータ18とを密着配置する構成もありうる。また、隙間98を形成する場合でも、隙間形成突出部96の先端面は弾性シール部材17に密着した形となる。いずれの場合も、弾性シール部材17とセラミックセパレータ18との接触領域は、気通用貫通孔95の形成領域と重なりを生ずることになる。しかしながら、セラミックセパレータ18の上面には気通用溝部94が形成されているので、このような場合でも気通用貫通孔95の入口部が密閉されず、基準ガスのケーシング10への流通を確保することができる。
【0070】
また、図19(b)及び(c)に示すように、フランジ状のセパレータ側支持部73(フランジ部)に、これを軸方向に貫通する気通用貫通部97を形成してもよい。本実施例では該気通用貫通部97は、セパレータ側支持部73の外周面に対し、所定の角度間隔で複数形成された溝部(あるいは切欠き部)とされている。なお、気通用貫通部97を形成する場合は、(b)に示すように気通用溝部94を省略することができる。一方、(c)に示すように、気通用溝部94と気通用貫通部97との双方を形成するようにしてもよく、この場合は気通用溝部94及び気通用貫通孔95と気通用貫通部97との2つの気通経路が形成されるので、基準ガスのケーシング10への流通をより確実なものとすることができる。図20に、該セラミックセパレータ18を酸素センサ1に組み付けた例を示している。
【0071】
弾性シール部材17の隙間形成突出部96は、図23(c)及び図25に示すように、弾性シール部材17前端面の周縁に沿う連続的あるいは断続的な凸条形態に形成することもできる。なお、図25においては、セパレータ側ピッチ円C1の直径D1がシール側ピッチ円C2の直径D2よりも大きくなる場合(すなわちD1>D2)について示しているが、該構成はD1<D2の場合にも適用でき、例えばD1が小さく、セパレータ側リード線挿通孔72に囲まれた領域に、隙間形成突出部96の接触領域を十分確保できない場合に有効である。
【0072】
また、セラミックセパレータ18と弾性シール部材17との間に隙間98を形成するために、図23(b)及び図24に示すように、弾性シール部材17の後方側端縁部に、その外周面から外向きに張り出すフランジ部99を形成するようにしてもよい。この場合、弾性シール部材17の該フランジ部99においてフィルタ保持部51の後方側端面と当接することで、フィルタ保持部51内におけるその前端面の位置が規定される。
【0073】
さて、上記酸素センサ1においては、前述の通りフィルタアセンブリ16のフィルタ53を介して基準ガスとしての大気が導入される一方、酸素検知素子2の外面にはプロテクタ11のガス透過口12を介して導入された排気ガスが接触し、該酸素検知素子2には、その内外面の酸素濃度差に応じて酸素濃淡電池起電力が生じる。そして、この酸素濃淡電池起電力を、排気ガス中の酸素濃度の検出信号として電極層2b,2cからリード線21,20を介して取り出す。ここで、酸素検知素子2は、排気ガス温が十分高温となっている場合には当該排気ガスで加熱されて活性化されるが、エンジン始動時など排気ガス温が低温である場合には前述の発熱体3で強制的に加熱することで活性化される。
【0074】
発熱体3は、通常はセラミックヒータであり、例えばアルミナを主とするセラミック棒45を芯材とし、図28に示すように、このセラミック棒45の表面に例えば蛇行状に形成された抵抗線部(抵抗パターン)41(図29)からなる発熱部42を備える。これはシート状の外層セラミック部43(図29)に抵抗ペーストを所定のパターンで印刷し、これをセラミック棒45に巻き付けるように丸めて焼成したものである。セラミック棒45は外層セラミック部43の先端から若干突出しており、また抵抗パターン41にヒータ端子部40(図1等)から延びるリード線28,29(図21)を経て、発熱のための通電が行われる。このような発熱部42は発熱体3の先端側に偏って設けられ、その先端部で局部的に発熱するようになっている。
【0075】
そして、図28(a)に示すように、発熱体3の発熱部42の近傍における中心軸線O1は、酸素検知素子2の中心軸線O2に対して片側に寄るように一定量δだけ偏心(オフセット)している。それによって、発熱体3の発熱部42の先端部表面が酸素検知素子2の中空部内壁面(以下、素子内壁面ともいう)2aに所定の面圧で押し付けられた状態で接触している。この接触位置は、図1から明らかなように酸素検知素子2の閉塞側先端からやや中間側へ寄ったところ、より好ましくは前述のプロテクタ11のガス透過口12にほぼ対応する位置にあたるとよい。
【0076】
また、図30(b)に概念的に示すように、酸素検知素子2の中空部に対し、該中空部の中心軸線O2を含むある仮想的な第一平面P1と、同じく中空部の中心軸線O2を含むとともに第一平面P1と直交する仮想的な第二平面P2とを設定して、該中空部をそれら第一平面P1と第二平面P2とによって4つの領域に分割した場合に、発熱体3は、その中心軸線O1の上記中空部内に位置する部分の全体が、該中空部の上記4つの領域のいずれかに収まるように配置されている。より具体的には、図28にも示すように発熱体3は、その中心軸線O1が中空部の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置されている。これにより、発熱体3は、発熱部42の側面が検知素子2の中空部内壁面2aに対しほぼ沿う形となっている。
【0077】
なお、酸素検知素子2の中空部の中心軸線に対して発熱体3が片側に寄るように偏心させるのに対応し、セラミックセパレータ18には次のような工夫が施されている。すなわち、図3に示すようにセラミックセパレータ18にはその前端面に開口し、底面102aが該セラミックセパレータ18の軸方向中間部に位置するように発熱体端部収容孔102が形成されている。該発熱体端部収容孔102に発熱体3の後端部を収容することで、酸素センサ1の全体の長さを縮小することができる。具体的には図21に示すように、発熱体端部収容孔102は、各リード線挿通孔72に対し内側から重なりを生ずるように、セラミックセパレータ18の中央部を切り欠いた形態で形成されており、その内径が発熱体3の外径よりも大きく設定されている。
【0078】
発熱体3を上述のように偏心して配置した場合、その後端部はセラミックセパレータ18の軸線に対して偏心配置される。ここで、該発熱体3の後端部を収容する発熱体端部収容孔102は、内径が発熱体3の外径よりも大きく設定されているため、発熱体3の偏心配置に伴う後端部の径方向の移動が一定の範囲内で許容される。すなわち、発熱体3を偏心配置した場合に、その後端部がセラミックセパレータ18の内壁面と干渉することが防止され、偏心量も比較的自由に設定できる利点がある。
【0079】
ここで、リード線挿通孔72は、前述のようにセパレータ側ピッチ円C1上に配列しているが、図21(b)に示すように、発熱体端部収容孔102の内径d1は、該ピッチ円の直径d2よりも小さく設定されている(すなわちd1<d2)。すなわち、セラミックセパレータ18の、隣接するリード線挿通孔72の間に位置する部分は、リード線20,21,28,29を互いに分離する隔壁部103として機能するのであるが、発熱体端部収容孔102の形成に伴い、該隔壁部103は内側から切り欠かれることとなる。ここで、d1≧d2になると隔壁部103の径方向の長さが短くなり過ぎ、リード線20,21,28,29の分離効果が低下して短絡等の問題につながる場合がある。
【0080】
また、リード線挿通孔72のピッチ円C1の直径d2と発熱体3の端部の外径Dとの比d2/Dは、1.7〜2.8の範囲で調整することが望ましい。d2/Dが1.7未満になると、発熱体3の偏心量を十分に確保できず、結果として発熱体3の横当り状態が不十分となってセンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくなる場合がある。また、d2/Dが2.8を超えると、リード線20、21、28、29の曲がり量が大きくなりすぎ、それらリード線に損傷等が生じやすくなる。また、発熱体端部収容孔102は、その深さhと内径d1との比h/d1を1.2以下に設定するのがよい。例えば、発熱体3を傾斜させて偏心状態を形成する場合、h/d1が1.2を超えると、収容孔の径d1に対して深さhが相対的に大きくなり過ぎ、発熱体3の傾斜量すなわち偏心量を十分に確保できず、同様にセンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくなる場合がある。
【0081】
次に、上述のように発熱体3の中心軸線O1を上述の配置関係で酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2から偏心させ、かつ発熱部42を素子内壁面2aに弾性的に押し付ける機能を果たしているのは端子金具23(図1)である。この場合、端子金具23は3つの役割を果たす。第一は、酸素検知素子2の内側の電極層2cの出力端子としてリード線20との電気的接続を図ること、第二は発熱体3を酸素検知素子2の内側に固定することであるが、これらは従来と同様の機能である。そして第3の機能が、発熱体3の先端部を素子内壁面2aに横当たり構造で弾性的に押し付けることである。
【0082】
図26に端子金具23の単体状態を、図27に端子金具23を発熱体3に組み付けた状態を示す。これらの図から明らかなように、前述の内部電極接続部26に関して発熱体3の先端側(すなわち発熱部42に近い側)に発熱体把持部27が形成されている。発熱体把持部27は、発熱体3の周囲を包囲するC字状の横断面形状を有している。そして、発熱体3を未挿入の状態では該発熱体3の外径よりは少し小さい内径を有し、発熱体3の挿入に伴い弾性的に拡径してその摩擦力により該発熱体3を把持するものである。この発熱体把持部27は内部電極接続部26の片側の1箇所にのみ設けられている。
【0083】
内部電極接続部26は、左右両側の縁に鋸刃状の接触部26aがそれぞれ複数形成された板状部分を円筒状に曲げ加工することにより、発熱体3を包囲する形態で形成されている。そして、その外周面と酸素検知素子2の中空部内壁面2aとの間の摩擦力によって発熱体3を該中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を果たすとともに、上記複数の接触部26aの各先端部において内側の電極層2c(図2)と接触・導通するようになっている。また、発熱体3との間には所定の隙間が形成されている。なお、これら両側の接触部26aは、鋸刃の山に相当する部分と谷に相当する部分とが、左右両側で互い違いに形成されており、例えばセンサ組立時において内部電極接続部26を酸素検知素子2の内側に挿入する際に、左右の接触部26aが同時に酸素検知素子2の開口縁に引っ掛かったりする等のトラブルが生じにくくなり、ひいては内部電極接続部26の酸素検知素子2に対する組み付けが容易となる効果を有している。また、鋸刃状の各接触部26aの高さをやや大きく設定することにより、上記板状部分を筒状に曲げて内部電極接続部26を形成する際に、その曲げ方向の幅が増大して加工が行いやすくなる効果も合わせて達成される。
【0084】
また、図27に示すように、発熱体把持部27の軸方向における酸素検知素子の先端から遠い側の縁、すなわち前方側の縁には発熱体挿入ガイド部100が形成されている。具体的には、発熱体把持部27には軸方向における一方の端縁から他方の端縁に至るスリット101が形成されており、発熱体挿入ガイド部100は、該スリット101の両側部分を、該スリットの中間位置から一方の縁に向けてこれを斜めに切り欠くことによりテーパ状に形成されている。
【0085】
端子金具23への発熱体3の組付けは、端子金具23の発熱体把持部27に対し発熱体3を先端側から挿入することにより行うことができる。発熱体3は発熱体把持部27に対し、その開口部からこれを径方向外向きに拡げながら押し込まれる。このとき、発熱体3の先端縁が把持部27の端縁に引っ掛かってスムーズに挿入が行えない場合がある。特に、把持部27が径方向に弾性変形できるように上述のようなスリット101が形成される場合、そのスリット101の縁で引っ掛かりが生じやすい。そこで、そのスリット101に上記テーパ状の発熱体挿入ガイド部100を形成しておけば、該テーパの作用により発熱体3の挿入がスムーズにガイドされるので上記引っ掛かりが生じにくくなり、ひいては端子金具23への発熱体3の組付けを能率的に行うことができる。ただし、組付け時に上記引っ掛かり等があまり問題にならない場合には、発熱体挿入ガイド部100は省略してもよい。
【0086】
図1に戻り、内部電極接続部26には、発熱体把持部27が連結されているのとは反対側の端部近傍において、該発熱体把持部27の内部電極接続部26への連結部30に対応する位置に、その内面から突出して発熱体3の外周面に当接する位置決め用突出部50が形成されている。この位置決め突出部50は、例えば内部電極接続部26の壁部をプレス加工等により内向きに凹ませることにより形成されており、発熱体3を前述のように酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2に対して偏心した状態で位置決めするためのものである。
【0087】
酸素検知素子2の中空部内壁面2aには、これを固体電解質粉末の成形・焼成により製造する際に、成形時の離型性を高める等の目的で、底部側が縮径する僅かなテーパが付与されている。これに対し発熱体3は、図28等に示すように、その中心軸線O1が検知素子2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置されるわけであるから、発熱体3の基端側に向かうほど、発熱体3と中空部内壁面2aとの間に形成される隙間を大きくする必要がある。上記位置決め用突出部50は、該突出部50の形成位置におけるこの隙間量を所定の値に規定することにより、発熱体3が発熱部42の近傍において上記中空部内壁面2aと接触し、かつ2つの中心軸線O1と中心軸線O2とがほぼ平行となる位置関係を満足させる役割を果たしている。
【0088】
なお、酸素センサ1の製造工程では、発熱体3に端子金具23を固定した後、このアッセンブリを酸素検知素子2に挿入するのが普通である。ここで、発熱体3に対する酸素検知素子2の壁部からの拘束力が存在しないと仮定した場合に、発熱体把持部27の内部電極接続部26に対する半径方向の連結位置関係は、発熱体把持部27と位置決め突出部50とによって該発熱体3の中心軸線O1が酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2に対し、発熱部42側が該中心軸線O2から遠ざかるように少し傾いた状態で保持されるように定められている。これにより、上記アッセンブリの挿入の際に、発熱体3の先端部は素子内壁面2aに弾性的に接触した状態でここを滑りつつ内部に挿入され、図27(c)に矢印で示すように、その中心軸線O1 が中空部の中心軸線O2と平行となる向きにその傾斜状態が矯正されつつ該検知素子2に対して装着されることとなる。また、発熱体把持部27と内部電極接続部26との間の連結部30は、両側から周方向にU字状の切欠を形成することによりくびれた形態で形成されている。そして、発熱体3の検知素子2への装着時には、これが内向きに弾性変形し、その弾性復帰力によって発熱体3の発熱部42を検知素子2の中空部内壁面2aに押し付け、図1のような横当たり形態を生じさせる。
【0089】
この状態で発熱体3には、素子内壁面2aが発熱体3に及ぼす応力、位置決め突出部50において発熱体3に作用する応力、発熱体把持部27において発熱体3に作用する応力とによって、これらの合成による曲げモーメントが生じるが、その曲げモーメントにより発熱体3が折れないように、言い換えれば発熱体3の許容強度範囲以上の応力が生じないようにされている。このような応力ひいては曲げモーメントの調整を図るのは、内部電極接続部26に隣接するくびれ形態の連結部30である。
【0090】
すなわち、連結部30は、上記挿入工程で発熱体把持部27及び位置決め用突出部50を介して発熱体3に付与される曲げ力を吸収・緩和してその折損等を防止する役割も果たす。そして、その弾性力の調整は、くびれ部分の幅調整により可能となる。換言すれば、連結部30のくびれ幅を適切に設定することで、上記弾性力を適度な値に調整でき、図1の発熱体3の横当たり構造において、素子内壁面2aに対する弾性的な押付力を必要十分な値に確保できるのである。
【0091】
次に、図29(b)に示すように、発熱体3の外層セラミック部43がセラミック棒45に巻き付けられた際の接合隙間として、発熱体3の外周の1箇所に軸方向と平行なスリット状部44が生じ、この近傍では抵抗パターン41が存在せず、発熱疎部分となるが、発熱体3の素子内壁面2aの横当たり構造に際してはこのスリット状部44の反対側の発熱部42表面を素子内壁面2aに当てることが望ましい。これによって充分発熱する部分から直接的に酸素検知素子2に効果的な熱伝達が生じる。
【0092】
また、酸素検知素子2の中空部内壁面2aはテーパ状に形成されているが、その内径の平均値(以下、単に内径という)DAと発熱体3の外径DBとの差ΔD=DA−DBは0.1〜0.35mm、望ましくは0.15〜0.30mmに設定されている。また、上記ΔDの発熱体3の外径DBに対する比ΔD/DBは、0.13以下、望ましくは0.10以下に設定されている。
【0093】
以下、上記酸素センサ1の作動について説明する。
図28(b)は、発熱体3の中心軸線O1と酸素検知素子2の中心軸線O2とが同心的な構造の例を示すもので、これと図28(a)とを比較すると明らかなように、図28(a)の例では、酸素検知素子2の中心軸線O2に対し、発熱体3の中心軸線O1がほぼ平行な状態で、酸素検知素子2の中心軸線O2から距離δだけ偏心し、その発熱部42の先端部表面が素子内壁面2aに側方から押し付けられた、いわば横当たり構造とでも称すべき形態となっている。なお、図28(a)においては理解を容易にするために、発熱体3と酸素検知素子2との隙間は実際のものより誇張して描かれているが、上述の偏心量δは、素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、発熱体3と酸素検知素子2との間で過度な押し付け力を生ずることなく上記横当り構造を確実なものとするために、例えば0.085〜0.385mm程度の大きさに設定するのがよい。また図28(b)の発熱部42’と比べて、図28(a)の発熱部42は、前述のように発熱体3の先端側により狭い領域に偏って形成されている。
【0094】
このような発熱体3の素子内壁面2aに対する横当たり構造を採用することにより、発熱部42で生じた熱が上記接触に基づく熱伝導により速やかに酸素検知素子2に伝わってこれを加熱し、また発熱部42の上記接触部近傍の局部的に発熱した部分の熱輻射によっても酸素検知素子2が加熱される。そして、その熱伝導及び熱輻射による相乗的な熱伝達が、酸素検知素子2を急速に加熱し、活性化温度までの上昇時間を短縮する。
【0095】
ここで、図2に示すように酸素検知素子2は、その素子内壁面2aに横当て状態で配置された発熱部42により局所加熱されるのであるが、センサの立ち上がり時間は図28(b)に示す構成のセンサと同等レベルに維持されるか、あるいは却って短縮される。その要因としては、次のようなことが考えられる。すなわち、酸素イオン電導性固体電解質により形成された酸素検知素子2に十分な濃淡電池起電力が生じるためには、酸素検知素子2の電気抵抗値が十分小さくなることのほかに、酸素分子に対する解離ないし再結合反応に対する電極層2b,2cの触媒活性が十分に高められている必要がある。そして、センサの検出出力レベルは、酸素検知素子2の電気抵抗値と上記2b,2cの触媒活性の兼ね合いで決まる。
【0096】
ここで、酸素検知素子2が発熱部42により局所加熱されると、固体電解質の活性化による酸素検知素子2の電気抵抗減少は、例えば図28(b)に示す構成ほどには進まないが、図2に示すように、その局所加熱された部分2dはより高温まで加熱されるので、当該部分で電極層2b,2cの触媒活性が高めらる。そして、電極層2bの触媒活性が向上すると被測定ガス中の酸素分子の解離が促進され、その効果により固体電解質の濃淡電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補われ、結果としてセンサの活性化時間(立ち上がり時間)が短縮されるものと推測される。
【0097】
また、発熱体3の中心軸線O1が検知素子2側の中心軸線O2とほぼ平行となるように配置することにより、発熱部42の側面が検知素子2の中空部内壁面2aに対しほぼ沿う形となり、発熱部42により酸素検知素子2の壁部をより均一に加熱することができるようになり、ひいては酸素センサの活性化時間短縮の効果がさらに高められている。
【0098】
さらに、図1に示すように、端子金具23において、発熱体把持部27が内部電極接続部26に対し発熱体3の発熱部42に近い側にのみ連結されているので、端子金具23の発熱体3の軸線方向における長さが短くなり、ひいては酸素センサ1は、その軸線方向の長さが減じられてコンパクトに構成されている。また、発熱体3が1ケ所の把持部27により把持される形としたから、端子金具23を装着した発熱体3を酸素検知素子2の中空部内に挿入してセンサ1を組み立てる際に、前述の通り、端子金具23を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体3の折損等を防止することができる。
【0099】
なお、図31及び図32に示すように、端子金具23においては、2つの発熱体把持部を27a,27bをそれぞれ連結部29,30を介して、内部電極接続部26に対しその軸線方向両側に連結する構成とすることもできる。また、位置決め突出部50は、発熱体把持部27a,27bのいずれに形成してもよい。この場合、発熱体把持部の内径は、位置決め突出部50の突出量を考慮に入れて大きく設定しておく必要がある。
【0100】
例えば、図31においては、発熱部42から遠い側の発熱体把持部27aに形成されている。また、図32は発熱部42から近い側の発熱体把持部27bに位置決め突出部50を形成した例を示している。この場合は、発熱体3は、連結部29ないし30が位置するのとは反対側においてその発熱部42が酸素検知素子2の中空部内壁面2aに当接している。これにより、発熱体3は、図33に示すように該側にやや大きく傾いて、その中心軸線O1が中空部の中心軸線O2と所定の傾きθで交差する形態となっている。
【0101】
なお、図33においては、理解を容易にするために発熱体3と酸素検知素子2との隙間や傾きθを実際のものより誇張して描いている。ここで、発熱部42の近傍における中心軸線O1の酸素検知素子2の中心軸線O2に対する偏心量δと、傾きθとは、素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、発熱体3と酸素検知素子2との間で過度な押し付け力を生ずることなく上記横当り構造を確実なものとするには、例えばδは0.085〜0.385mm、またθは0.1〜0.5°程度の大きさとするのがよい。
【0102】
次に、図34に示す構成では、端子金具23は図1とほぼ同様に形成された内部電極接続部26を備え、発熱体3の軸方向において該内部電極接続部26の一方の側には、前述と同様の第一発熱体把持部27aが形成される一方、他方の側にも第二発熱体把持部27bが同様の構成で形成されている。ここで、図35に示すように、上記1対の発熱体把持部27a,27bは、その中心軸線が、酸素検知素子2の中空部の中心軸線O11から偏心してこれとほぼ平行な共通の軸線O10上に位置するように、内部電極接続部26に対して連結されている。
【0103】
具体的には、端子金具23においては、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとが、内部電極接続部26の各々対応する端部に対し、それぞれくびれた形態の第一及び第二連結部29及び30により、発熱体3の径方向において同じ側の周縁に一体的に接続されている。そして、これら連結部29,30は、内部電極接続部26の径方向内側に曲げられて段付き部を形成するとともに、その曲げ量を調整することにより、発熱体把持部27a,27bの中心軸線O10は、酸素検知素子2の中空部の中心軸線O11に対しほぼ平行な状態で、連結部29,30の形成側とは反対方向に所定の偏心量dで偏心させられている。この構成によれば、2つの把持部27a,27bにより発熱体3をより安定的に保持することができる。
【0104】
上述のような端子金具23は、例えば図36に示すような形状の板状金属部材123を曲げ加工することにより製造することができる。すなわち、図36(a)に示すように板状金属部材123は、3つの板状部127a、126及び127bが、その幅方向中間部において、連結部29及び30となるべき接続部129及び130により互いに一体化された形態をなし、同図(b)〜(d)に示すように、接続部129及び130の両側に張り出した部分を幅方向において筒状に丸めるように曲げ加工することにより、それぞれ第一発熱体把持部27a、内部電極接続部26a及び第二発熱体把持部27bとなる。また、連結部29及び30は、同図(e)に示すように、発熱体把持部27a,27bの中心軸O10が、所期の位置となるように段付き状に曲げ加工される。
【0105】
なお、上記金属板状部材123において、発熱体把持部27a及び27bとなるべき板状部(第一の板状部)127a及び127bは、その幅方向両縁部分が上記曲げ加工により互いに対向してスリット101を形成するとともに、それぞれ該縁の一方の端部側が斜めに切り欠かれて、それぞれ前述の発熱体挿入ガイド部100が形成されている。
【0106】
次に、図37の構成においては、図35の構成と同様に、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとが形成されているが、図38に示すように、第二発熱体把持部27bは、中心軸線O11が第一発熱体把持部27aの中心軸線O10から距離dだけ偏心して設けられている。すなわち、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとは、内部電極接続部26の各々対応する端部に対し、それぞれくびれた形態の第一及び第二連結部29及び30により、発熱体3の径方向において同じ側の周縁に一体的に接続されている。そして、これら第一及び第二連結部29及び30は、内部電極接続部26の径方向内側に曲げられて段付き部を形成するとともに、その曲げ量を調整することにより、第一発熱体把持部27a及び第二発熱体把持部27bの中心軸線O10,O11間の偏心量dが調整されている。該構成によれば、発熱体3は、互いに偏心した2つの把持部27a27bにより傾斜状態で保持されて素子内壁面2aに押し付けられる。これにより、発熱体3はその傾斜状態をより安定的に保持することができ、発熱部3の横当て効果がさらに確実に達成される。
【0107】
ここで、第一発熱体把持部27a及び第二発熱体把持部27bの中心軸線O10,O11間の偏心量dは、例えば次のようにして設定することができる。すなわち、理解を容易にするために図39に誇張して示すように、発熱体3の中心軸線O1と酸素検知素子2の中空部の中心軸線O2とのなす角度θは、例えば素子内壁面2aの内径を2.8〜3.2mm、発熱体3の外径を2.43〜2.63mmとしたとき、θは前述と同様に0.1〜0.5°程度の大きさとするのがよいが、第一発熱体把持部27aと第二発熱体把持部27bとの軸方向端面間の距離をLとすれば、tanθ=d/Lであり、tan0.1°=0.0017、tan0.5°=0.0087であるから、0.0017L≦d≦0.0087Lとなるようにdを設定すればよい。
【0108】
なお、本構成においても、両発熱体27a,27bに発熱体挿入ガイド部100が形成されている。すなわち、2つの把持部27a,27bが設けられ、しかも発熱体3を傾斜状態で保持するためにそれらが互いに偏心した位置関係で形成されているので、発熱体3は上側の把持部27aに挿入された後、下側の把持部27bへは偏心状態で進入しようとする。そのため、該下側の把持部27bにおいては前述の引っ掛かりの問題が特に生じやすい。そこで、上述のように発熱体挿入ガイド部100を形成することで、このような構成においても発熱体3を端子金具23に対しスムーズに組み付けることができる。なお、上側の把持部27aについては下側の把持部27bほどには引っ掛かりの問題が生じないことから、下側の把持部27bにのみ発熱体挿入ガイド部100を形成するようにしてもよい。
【0109】
続いて、図40の構成においては、発熱体把持部27は内部電極接続部26に対し、図1と同様に、1ケ所にのみ設けられているが、図1と異なり位置決め突出部50が形成されていない。この構成によれば、発熱体3は1ケ所の把持部27により、軸線と交差する向きにおいて若干の動きの自由度を生じた状態で把持されることとなる。従って、発熱体3を端子金具23とともに酸素検知素子2の中空部内に挿入すると、該発熱体3は、先端部が酸素検知素子2の内壁面との接触するに伴い、これに追従して該内壁面に沿う形で位置決めされ、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待することができるようになる。この場合、ΔDないしΔD/DBを前述の範囲で調整することにより、発熱体3の先端部は酸素検知素子2の中空部内壁面にさらに沿いやすくなり、酸素センサ1の活性化時間を短縮する効果が一層高められる。
【0110】
また、別の効果としては、センサ1を組み立てる際に、端子金具23を介した過剰な横方向の力が発熱体3に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体3の折損等を防止することができる。さらに、端子金具23の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。
【0111】
次に、図41に示す構成では、内部電極接続部26の軸方向後端側に発熱体把持部27が接続される一方、前端側にはガイド部28が接続されている。ガイド部28は、ほぼ半円状の横断面形状をなし、かつ端子金具23の中心軸線、詳しくは発熱体把持部27及び内部電極接続部26の中心軸線に関して所定角度だけ内側に傾斜して形成されている。これによってガイド部28は、発熱体3をその軸方向とほぼ垂直方向に押して素子内壁面2aに押し付ける。
【0112】
さて、本発明の請求項に記載した酸素センサの構成には、以下に述べる各発明の内容を少なくとも1つ付け加えることができる。
【0113】
発明(A)
この発明の酸素センサは、下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状の酸素検知素子と、酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、そのケーシングとは独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から連結されるフィルタアセンブリと、フィルタアセンブリとケーシングとを互いに結合する結合部を備える。そして、そのフィルタアセンブリは、ケーシングに対し後方側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、かつ壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を内面側から又は外面側から塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、フィルタをフィルタ保持部に対して固定する補助フィルタ保持部とを備えて構成され、それらフィルタ及び気体導入孔を経て外気がケーシング内に導入される。
また、該酸素センサにおいては、ケーシングとフィルタアセンブリとを互いに別体に形成し、フィルタアセンブリをケーシングの後方側に配置して、その後結合部を形成することにより、それらケーシングとフィルタアセンブリとを互いに連結することができる。
【0114】
該酸素センサの特徴の要旨は、フィルタを含む気通構造部をフィルタアセンブリとしてケーシングとは独立に構成し、これをケーシングに連結・一体化した構成を有する点にある。これにより、次のような効果が達成される。
▲1▼フィルタアセンブリの組立ては、酸素検知素子などのケーシング内への組付けとは独立に行うことができるので、例えば検知素子のリード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。
▲2▼ケーシング内への部品の組付けと、フィルタアセンブリの組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。また、フィルタの組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリの段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響は及ばず、部品等の無駄等が生じにくい。
【0115】
フィルタアセンブリは、ケーシングの後方側に対し内部が互いに連通するようにこれと同軸的かつ一体的に設けられ、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部とを備えたものとして構成できる。この場合、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より外気がケーシング内に導入される。すなわち、内外のフィルタ保持部によりフィルタを確実に保持することができ、フィルタ保持部へのフィルタの組付けも容易である。例えばフィルタを円筒状に形成した場合、フィルタ保持部に対し該フィルタを外挿し、さらにその外側から保持フィルタ保持部を嵌め入れ、気体導入孔及び補助気体導入孔と干渉しない位置において、フィルタ保持部と補助フィルタ保持部とを結合する保持部結合部を形成すればよい。
【0116】
気体導入孔及び補助気体導入孔は、それぞれフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対し、軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で複数個形成することができる。これにより、フィルタアセンブリ側からケーシング内へ外気を偏りなく導入することができる。また、フィルタ保持部を周方向に取り囲むように、例えば筒状のフィルタをその外側に配置し、補助フィルタ保持部には保持部結合部として、フィルタを挟んで該補助フィルタ保持部をフィルタ保持部に向けてかしめることにより、その周方向に沿って環状のフィルタかしめ部を形成することができる。保持部結合部を環状のフィルタかしめ部とすることで、フィルタアセンブリの組立てが一層容易となる。なお、この環状のかしめ部は、軸方向において気体導入孔及び補助気体導入孔の列を挟む両側に形成できる。この場合、各かしめ部において、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間にフィルタの縁を挟み込む形にすることで、補助気体導入孔からフィルタの縁を迂回してフィルタ保持部の気体導入孔ヘ至る経路が形成されにくくなり、ここを通って水等がフィルタ保持部内側ひいてはケーシング内側へ漏れ込む可能性も小さくなる。
【0117】
また、フィルタを上述のように筒状に形成してフィルタ保持部の外周に沿うように配置する場合、補助フィルタ保持部の後端縁側には周方向に沿ってフィルタかしめ部を形成することができる。そして、該補助フィルタ保持部の後端側には、フィルタ保持部との間に位置するフィルタを目視するためのフィルタ確認部を形成できる。このようにすれば、次のような利点がある。すなわち、フィルタ保持部に筒状のフィルタを外挿し、その状態でさらに補助フィルタ保持部をフィルタ保持部に対して軸方向に相対移動させながら嵌め入れる際に、フィルタが補助フィルタ保持部と連れ移動して位置ずれを起こすことがありうる。この場合、万一この状態でフィルタかしめ部が形成されれば、かしめ部からフィルタが外れてシールが不完全となるのであるが、フィルタ確認部においてフィルタが上述のように目視できるようになっていることで、そのようなフィルタのかしめ不良を容易に発見できる。
【0118】
また、補助フィルタ保持部の前端縁側にフィルタかしめ部を形成する場合、そのフィルタかしめ部においてフィルタを部分的に露出させるフィルタ確認露出部を形成することもできる。こうすれば、補助フィルタ保持部の前端縁側においてもかしめ部においてフィルタが正常にかしめられているか否かを容易に判別できる。
【0119】
次に、フィルタアセンブリは、ケーシングに対し各種方法により連結することができる。例えば、フィルタ保持部は、その先端側においてケーシングに対し外側からこれに重なりを生じるように配置することができ、その重なり部においてフィルタ保持部をケーシングに向けてかしめることにより、それらの周方向に連結部としての環状のアセンブリ連結かしめ部を形成して、そのアセンブリ連結かしめ部により、フィルタ保持部の内周面をケーシング外周面に対して気密状態で圧接する構成とすることができる。すなわち、フィルタアセンブリをアセンブリ連結かしめ部によりケーシングに対して容易に組みつけることができる。なお、かしめ部に代えて、あるいはかしめ部とともに、環状の溶接部(例えば、抵抗溶接部あるいはレーザー溶接部)を形成するようにしてもよい。
【0120】
次に、フィルタ保持部は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して軸方向前方側を第一部分、同じく軸方向後方側を第二部分として、該第二部分が第一部分よりも径小となるように構成することができる。この場合、気体導入孔は、その第二部分の壁部に形成することができる一方、第一部分には、ケーシングの後端部を上記段付き部に直接又は他部材を介して間接的に当接する位置まで挿入する構成とすることができる。また、ケーシングに対する重なり部は第一部分に形成され、ここに前述のアセンブリ連結かしめ部(あるいは溶接部)を形成することができる。
【0121】
上記構成によれば、段付き部を利用して、フィルタ保持部のケーシングに対する軸方向の位置決めを簡単に行うことができる。また、径小側の第二部分に気体導入孔を形成し、ここにフィルタ及び補助フィルタ保持部を外側から嵌め入れる構成とすれば、例えばフィルタ保持部を第二部分が上となるように立てた状態で、上側からフィルタ及びフィルタ保持部を順次外挿する際に、段付き部にそれらフィルタ及びフィルタ保持部を当てて止めることができるので、フィルタアセンブリの組立てがさらに容易になる。この場合、補助フィルタ保持部の内径は、第一部分の外径よりも小さく設定しておく必要がある。
【0122】
また、上記酸素センサには、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータを設けることができる。この場合、該セラミックセパレータは、酸素検知素子の軸方向において後方側がフィルタ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシングの内側に入り込むように配置することができる。セラミックセパレータの一部をフィルタ保持部の内側に進入させることで、該セラミックセパレータの後方側においてフィルタ保持部内に形成される空きスペースが小さくなり、ひいてはその分だけ酸素センサの軸方向の長さが減じて全体をコンパクトに構成できるようになる。
【0123】
この場合、セラミックセパレータには、その軸方向中間位置においてその外周面から突出する形態でセパレータ側支持部を、例えばフランジ状に形成することができる。そして、該セラミックセパレータは、セパレータ側支持部よりも前方側に位置する部分を前記ケーシングの後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部においてケーシングの後端面に対し直接又は他部材を介して間接的に当接する一方、該セパレータ側支持部によりも後方側に位置する部分をケーシングの外側に突出させた状態で配置することができる。また、フィルタ保持部は、軸方向中間に前述の段付き部が形成される場合、セラミックセパレータの突出部分を第二部分の内側まで進入させてこれを覆うとともに、段付き部においてセパレータ側支持部に対し、ケーシングとは反対側から直接又は他部材を介して間接的に当接するように配置することができる。すなわち、ケーシングの端面とフィルタ保持部の段付き部との間でセパレータ側支持部を挟み付けることにより、ケーシング内でセラミックセパレータを、より安定的に支持することが可能となり、ひいてはがたつき等によるセパレータの割れや欠けといったトラブルも生じにくくなる。
【0124】
例えば、セラミックセパレータには、気体導入孔から流入した外気をケーシング内側へ導く気通用連通部を、その後端面から前端面まで軸方向に貫通した形で形成することができる。これにより、基準ガスとしての外気を確実かつ速やかに酸素検知素子内部まで導くことができるが、何らかの要因により気体導入孔から水滴等が進入した場合には、上記気通用連通部を介してその水滴が酸素検知素子の内側へ漏れ込む可能性がある。この場合、セラミックセパレータの後端面を、気体導入孔よりも後方側に位置させるようにすれば、水滴が仮に浸入しても、これが気通用連通部からケーシング内に漏れ込むためには、セラミックセパレータの後端面側に迂回しなければならないため、水滴が酸素検知素子側へ漏れ込む可能性をより小さくすることができる。
【0125】
発明(B)
この発明の酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、外気をケーシング内に導入するための気体導入構造部とを有する。該気体導入構造部は、ケーシングの後方側に同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに、内部が該ケーシングと連通し、かつ壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを有し、フィルタ及び気体導入孔を経て外気をケーシング内に導入させる。そして、気体導入構造部の外側には、これを覆う筒状形態をなし、フィルタへの直接的な液滴の噴射あるいは油や汚れ等の付着物の付着を阻止ないし抑制する防護カバーが設けられる。
【0126】
すなわち、気体導入構造部において液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタを設け、さらにその外側に防護カバーを設けることで、ケーシング内への水滴等の侵入が一層起こりにくくなる。これにより、酸素センサが車両の足周り部分に取り付けられた場合、水溜まりなどの水を強く跳ね上げながら走行したり、あるいは洗車時に高圧の水が直接フィルタに当たった場合等においても、上上記フィルタとの組合せにより、センサ内への水滴等の侵入を効果的に防止することができる。
【0127】
気体導入構造部は、ケーシングの後方側に対し内部が互いに連通するようにこれと同軸的かつ一体的に設けられ、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部とを備えたものとして構成できる。この場合、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より外気がケーシング内に導入される。すなわち、内外のフィルタ保持部によりフィルタを確実に保持することができ、フィルタ保持部へのフィルタの組付けも容易である。例えばフィルタを円筒状に形成した場合、フィルタ保持部に対し該フィルタを外挿し、さらにその外側から保持フィルタ保持部を嵌め入れ、気体導入孔及び補助気体導入孔と干渉しない位置において、フィルタ保持部と補助フィルタ保持部とを結合する保持部結合部を形成すればよい。
【0128】
防護カバーは、気体導入孔に対応する位置においてフィルタとの間に気体滞留空間を生じた状態で、その軸方向において気体導入孔を挟んだ両側部分がをフィルタ保持部の外面に対しカバー接合部により接合することができ、また、気体滞留空間を外部と連通させてこれに外気を導入する外部連通部を設けることができる。これにより、基準ガスとしての外気は外部連通部から防護カバーの内側へ導かれ、また、その導かれた外気は気体滞留空間の形成により、フィルタをスムーズに流通することができるので、防護カバーを設けたにも拘わらず、外気(基準ガス)のケーシング内へ支障なく導くことができる。
【0129】
この場合、カバー接合部は、防護カバーの周方向に沿って環状に形成することができ、外部連通部は、防護カバーとフィルタ保持部との間において、環状のカバー接合部を横切る通路状に形成することができる。すなわち、環状のカバー接合部によりカバー部材内側への水滴等の侵入がより起こり難くなり、しかもこれを横切る通路状の外部連通部の形成により、外気のカバー部材内への導入は支障なく行うことができる。
【0130】
このような構造は、以下のようにして比較的簡単に実現することができる。すなわち、気体導入孔よりも前方側においてフィルタ保持部の外周面に、該フィルタ保持部の軸方向に延びる外部連通部としての所定長の溝部を周方向に沿って所定の間隔で複数形成する。また、カバー接合部は、防護カバーをフィルタ保持部に向けてかしめることにより、各溝部を横切るように、かつ該溝部の底部において防護カバーとフィルタ保持部との間に隙間が残留するように形成された環状のかしめ部とする。これにより、該防護カバーとフィルタ保持部との間に形成される隙間の前方側開口部から、溝部を通って気体滞留部へ外気が導かれることとなる。この場合、溝部底部に上記隙間が確保できる程度にかしめの圧力及び溝部の深さを調整すればよい。
【0131】
なお、防護カバーの前方側端縁は、上記各溝部の端よりも所定長だけ前方側まで延ばすことができる。これにより、酸素センサに水しぶき等がかかった場合に、防護カバーの内側へ水滴等が侵入する確率をさらに小さくすることができる。
【0132】
次に、フィルタ保持部は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して軸方向前方側を第一部分、同じく後方側を第二部分として、該第二部分が第一部分よりも径小となるように形成することができる。この場合、気体導入孔はその第二部分の壁部に形成される。これによれば、例えばフィルタ保持部を第二部分が上となるように立てた状態で、上側からフィルタ及びフィルタ保持部を順次外挿する際に、段付き部にそれらフィルタ及びフィルタ保持部を当てて止めることができるので、気体導入構造部の組立てが容易になる。この場合、補助フィルタ保持部の内径は、第一部分の外径よりも小さく設定しておく必要がある。
【0133】
上記構造において、溝部は第一部分の外周面に形成することができる。また、防護カバーは、その前方側端部において該第一部分に対し環状のかしめ部により固着され、後方側端部において第二部分の末端部外周面に別のかしめ部により固着される。これにより、防護カバーとフィルタ保持部の径小の第二部分との間に気体滞留空間を形成しやすくなる。
【0134】
また、この発明の酸素センサには、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータを設けることができる。そして、そのセラミックセパレータには、その軸方向中間位置においてその外周面から突出するフランジ状のセパレータ側支持部を形成することができる。セラミックセパレータは、セパレータ側支持部よりも前方側に位置する部分をケーシングの後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部においてケーシングの後端面に対し直接又は他部材を介して間接的に当接するように配置される。そして、カバー接合部としての環状のかしめ部は、フランジ状のセパレータ側支持部の外周面に対応する位置に形成することができる。これにより、かしめ部形成の際の圧縮力を、フランジ状のセパレータ側支持部の外周面で受けることができるので、かしめ部の形成を確実に行うことができる。
【0135】
発明(C)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、気体導入構造部とを備える。この気体導入構造部は、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部とを備え、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より外気をケーシング内に導入させる役割を果たす。そして、上記フィルタは、補助フィルタ保持部の内面に対し少なくとも補助気体導入孔の周囲においてこれに密着する一方、フィルタ保持部の外面とフィルタとの間には、少なくとも気体導入孔の周囲において所定量の隙間が形成される。
【0136】
このように構成された酸素センサにおいては、フィルタを透過してくる外気は、内側に環状の隙間が形成されていることで流通抵抗が和らげられ、気体導入孔を通ってスムーズにケーシング内に導入できる。一方、フィルタの外面は補助フィルタ保持部の内面と密着しているので、補助気体導入孔からフィルタと補助フィルタ保持部との間にゴミや油分あるいは水滴等のたまりが生じにくくなり、ひいてはフィルタの外面側の撥油性あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制されて、常時良好な通気性が確保される。また油分のたまりが生じにくくなることで、高温で揮発した油分の蒸気がフィルタを通ってセンサ内部に侵入することが抑制される。これにより、例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、センサ出力の低下が起こりにくくなる。
【0137】
補助フィルタ保持部には、補助気体導入孔を挟んでその軸方向両側に、フィルタを介して該補助フィルタ保持部をフィルタ保持部に対して結合するフィルタかしめ部を形成することができる。補助フィルタ保持部のそれらフィルタかしめ部の間に位置する部分は、フィルタとともに外向きに橈んで凸状形態をなし、その凸状部の頂部に補助気体導入孔を形成することができる。そして、その凸状部の頂部を、少なくとも該補助気体導入孔の周囲において平坦化し、その平坦化された部分においてフィルタ保持部の内面をフィルタに対して密着させることができる。すなわち、補助気体導入孔を挟んでその両側にフィルタかしめ部を形成すると、補助フィルタ保持部はかしめ部の間の部分が上述のように外向きに橈んで凸状部となるが、その凸状部の頂部を平坦化することで、補助フィルタ保持部をフィルタとの間の密着構造を簡単に実現できる。なお、補助フィルタ保持部に上記平坦化部分を形成する方法としては、平坦化部材を用いて凸状部の膨出をその頂部において規制しつつフィルタかしめ部を形成する方法を例示できる。
【0138】
この場合、かしめ部に挟まれた部分において、補助フィルタ保持部とフィルタとはフィルタ保持部の対応する部分よりも大きく外側に橈み、該フィルタ保持部とフィルタとの間には、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との橈み量の差に基づいて上記隙間を形成することができる。すなわち、補助フィルタ保持部にはかしめに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部における橈み量も大きくなるが、内側のフィルタ保持部はそれほど圧縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタは柔軟であるので、補助フィルタ保持部に追従して外向きに橈むこととなる。その結果、フィルタ保持部とフィルタとの間には、フィルタ保持部と補助フィルタ保持部との橈み量の差に基づいて隙間を簡単に形成することができる。
【0139】
気体導入孔及び補助気体導入孔は、それぞれフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対し、軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で複数個形成することができる。これにより、気体導入構造部側からケーシング内へ外気を偏りなく導入することができる。また、フィルタ保持部を周方向に取り囲むように例えば筒状のフィルタをその外側に配置し、補助フィルタ保持部には保持部結合部として、フィルタを挟んで該補助フィルタ保持部をフィルタ保持部に向けてかしめることにより、その周方向に沿って環状のフィルタかしめ部を形成することができる。具体的には、この環状のかしめ部は、軸方向において気体導入孔及び補助気体導入孔の列を挟む両側に形成できる。この場合、各かしめ部において、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間にフィルタの縁を挟み込む形にすることで、補助気体導入孔からフィルタの縁を迂回してフィルタ保持部の気体導入孔ヘ至る経路が形成されにくくなり、ここを通って水等がフィルタ保持部内側、ひいてはケーシング内側へ漏れ込む可能性も小さくなる。この場合、凸状部はそれらかしめ部の間において環状に形成され、また、凸状部の頂部は環状に平坦化され、その平坦化部分に複数の補助気体導入孔が形成されることとなる。
【0140】
なお、フィルタ保持部には、少なくとも気体導入孔の周囲において内向きに凹む凹状部を形成し、その凹状部においてフィルタとの間に隙間を形成するようにしてもよい。この場合、凹状部は、気体導入孔の周縁部分を凹ませたディンプル状に形成してもよいし、各気体導入孔の配列方向に沿う環状に形成してもよい。
【0141】
発明(D)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、そのケーシングに対し内部が連通するようにこれと同軸的に設けられるとともに、該ケーシングに対し軸方向後方側から連結されるカバー部材とを備える。カバー部材は、その軸方向前方側においてケーシングに対し外側からこれに重なりを生じるように配置される。そして、その重なり部には、該カバー部材を前記ケーシングに向けてかしめることにより、それらの周方向に円環状に形成された主かしめ部と、該円環状の主かしめ部においてカバー部材とケーシングとが、それらの軸線周りにおいて相対的に回転することを阻止する回転阻止部とが形成される。
【0142】
上記構成によれば、主かしめ部においては、ケーシングとカバー部材との間の接触面が円筒状面となるので気密性に優れ、それらの間からケーシング内に水等が漏れ込むことが確実に阻止される。また、該主かしめ部と共に回転阻止部を形成することで、ケーシングとカバー部材との間に軸線回りの捩じり力が作用しても、両者の間に相対的な回転が生じにくく、ひいては上記主かしめ部における気密性を一層確実なものととすることができる。
【0143】
回転阻止部は、カバー部材の軸線方向において主かしめ部の少なくとも一方の側に、該カバー部材をケーシングに向けてかしめることにより形成された補助かしめ部とすれば、その形成も容易で回転阻止効果にも優れる。補助かしめ部は、具体的には、カバー部材の軸線方向において主かしめ部に対し所定の間隔で隣接し、かつ該カバー部材の周方向に沿う環状に形成することができる。環状形態の補助かしめ部を主かしめ部に隣接して形成することで、回転阻止効果が一層高められる。この場合、さらに具体的には、補助かしめ部の軸断面形状を多角形状とすることができる。こうすれば、ケーシングとカバー部材との接触面が角筒状となり、捩じり力が作用した場合のケーシングとカバー部材との間の相対的な回転が極めて生じにくくなる。
【0144】
なお、補助かしめ部は、主かしめ部よりも酸素検知素子に近い側に形成するのがよい。すなわち、酸素センサの先端側は高温にさらされることが多いので、気密性確保が優先される主かしめ部がそのような熱源から遠くなる上記配置関係がより望ましいといえる。
【0145】
また、主かしめ部と補助かしめ部とは、それぞれカバー部材を周方向外側から圧縮する複数のかしめパンチを含むとともに、カバー部材の軸線方向において所定距離だけ隔たった位置関係で配置される2組のかしめパンチユニットを用いて一括して形成することができる。この方式によれば、主かしめ部と補助かしめ部とが1回のかしめ工程により同時形成されるので能率的であるばかりでなく、次のような効果も合わせて達成される。すなわち、かしめパンチによる圧縮により、カバー部材がケーシングに向けて局所的に食い込みつつ圧接されてかしめ部が形成されるのであるが、その圧接部の周囲においてカバー部材には、食込変形に伴うしわ寄せ部あるいは浮き上がり部が形成されやすい。ここで、主かしめ部と補助かしめ部とを順次的に形成した場合、後で形成するかしめ部によるしわ寄せ部あるいは浮き上がり部の影響が先に形成したかしめ部に及び、気密性が損なわれる問題が生じやすい。しかしながら、上述のように両かしめ部を同時に形成するようにすれば、しわ寄せ部あるいは浮き上がり部の影響をそれらかしめ部の間の領域にプールすることができ、ひいてはいずれのかしめ部においても十分な密着性すなわち気密性を確保することができるようになる。
【0146】
なお、上記酸素センサの構成においてカバー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から連結される発明(A)のフィルタアセンブリとすることができる。
【0147】
発明(E)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、気体導入構造部とを備える。気体導入構造部は、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の外側において気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタと、そのフィルタの外側に配置される筒状に形成され、壁部に1ないし複数の補助気体導入孔が形成されるとともに、該フィルタをフィルタ保持部との間で挟み付けて保持する補助フィルタ保持部とを備え、補助気体導入孔からフィルタを経て気体導入孔より外気をケーシング内に導入させる。フィルタ保持部は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して軸方向前方側を第一部分、同じく軸方向後方側を第二部分として、該第二部分が前記第一部分よりも径小となるように構成されており、気体導入孔はその第二部分の壁部に形成される。補助フィルタ保持部は、フィルタ保持部の第一部分と第二部分とにまたがるように配置される。そして、上記第二部分に対応する位置において、フィルタ部を挟んでフィルタ保持部と補助フィルタ保持部とを互いに結合する主結合部と、第一部分に対応する位置において、フィルタ保持部と補助フィルタ保持部とを互いに結合する補助結合部とが形成される。
【0148】
上記構成の酸素センサにおいては、フィルタ保持部が段付き部を介して互いに隣接する異径の第一部分と第二部分の少なくとも2部分からなり、補助フィルタ保持部がそれら2部分にまたがる筒状に形成され、その第二部分に主結合部が形成されるのに加え、第一部分に補助結合部を形成するようにしたから、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間に軸線周りの捩じり力が付加されても、補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間に相対的な回転が生じにくい。その結果、両者の間で保持されるフィルタのシールが破れにくく、ケーシング内部への水滴等の侵入が起こりにくい。
【0149】
上記構成においてフィルタは、フィルタ保持部の第二部分のみを周方向に取り囲むように配置することができる。この場合、主結合部は、フィルタを挟んで補助フィルタ保持部をフィルタ保持部の第二部分に向けてかしめることにより、該第二部分の周方向に沿って形成された環状の主かしめ部とすることができる。また、補助結合部は、補助フィルタ保持部をフィルタ保持部の第一部分に向けて直接的にかしめることにより、該第一部分の周方向に沿って形成された環状の補助かしめ部とすることができる。この構成によれば、主結合部と補助結合部とをかしめにより簡単に形成でき、しかも補助フィルタ保持部及びフィルタ保持部との間でのフィルタのシール性も良好に確保できる。また、補助かしめ部においては補助フィルタ保持部とフィルタ保持部との間にフィルタが介在せず、両者が直接的にかしめられるので捩じりに対する強度が一層高められる。
【0150】
また、気体導入孔及び補助気体導入孔は、それぞれフィルタ保持部及び補助フィルタ保持部に対し、軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で複数個形成することができ、主かしめ部は、気体導入孔ないし補助気体導入孔の列を挟んで両側に形成された2本のかしめ部を含むものとすることができる。この構成によれば、気体導入構造部においてケーシング内へ外気を偏りなく導入することができる。また上記2本の主かしめ部によりフィルタのシール性が一層良好に確保される。
【0151】
発明(F)
この発明の酸素センサは、下記のように構成されることを特徴とする。
▲1▼軸状の酸素検知素子。
▲2▼酸素検知素子を収容する筒状のケーシング。
▲3▼セラミックセパレータ:ケーシングに対し同軸的に設けられるとともに、該ケーシングの後端部に形成されたケーシング側支持部において直接又は他部材を介して間接的に支持され、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成される。
▲4▼カバー部材:該ケーシングと同軸的に配置され、各リード線が自身の後方外側に延びることを許容しつつ、セラミックセパレータを外側から覆った状態でケーシングに対し後方側から連結される。
▲5▼金属弾性部材:カバー部材とセラミックセパレータとの間、及びケーシング側支持部とセラミックセパレータとの間の少なくともいずれかに圧縮状態で配置され、カバー部材とケーシング側支持部との間において、セラミックセパレータに対する挾圧保持力を生じさせる。
【0152】
上記構成において金属弾性部材は、カバー部材とケーシングとの間で、セラミックセパレータに対する適度な挾圧保持力を生じさせてがたつきを防止し、その固定・保持をより確実なものとする一方、酸素センサの組立時等において自身の弾性変形により、セラミックセパレータのセパレータ側支持部に過度な挾圧力が作用することを抑制し、ひいてはそれによるセラミックセパレータの割れや欠けを防止する役割を果たす。そして、金属弾性部材は、その構成材質が金属であることから耐熱性に優れ、高温で厳しい使用環境下でもセラミックセパレータのがたつき防止効果を長期に渡って良好に維持することができる。
【0153】
セラミックセパレータには、その外周面から突出してセパレータ側支持部を形成することができる。該セパレータ側支持部は例えばセラミックセパレータの周方向に沿うフランジ状に形成できる。また、金属弾性部材は、セラミックセパレータに外挿され、カバー部材とセパレータ側支持部との間、及びケーシング側支持部とセパレータ側支持部との間の少なくともいずれかに圧縮状態で配置されるばね座金とすることができる。金属弾性部材をこのようなばね座金とすることで、セラミックセパレータに対するその組付けを極めて簡単に行うことができ、また弾性力も充分に確保することができる。なお、具体的にはばね座金として波型座金、すなわちリング周方向において軸方向の波型のうねりを形成した座金を使用することができる。これにより、セラミックセパレータに対し、軸線回りに比較的均一な挾圧力を生じさせることができ、セラミックセパレータをより安定的に支持することができる。
【0154】
次に、セパレータ側支持部は、セラミックセパレータの軸方向中間位置に形成することができる。この場合、セラミックセパレータは、軸方向において前方側部分をケーシングの後端部内側に収容するとともに、ケーシングの開口端面部をケーシング側支持部として、これにセパレータ側支持部を直接又は他部材を介して間接的に当接させる一方、後方側部分をケーシングの外側に突出させた状態で配置することができる。また、カバー部材は、セラミックセパレータの突出部分を外側から覆うものとし、その内周面の軸方向中間位置には、ケーシングの開口端面部とは反対側からセパレータ側支持部に対し直接又は他部材を介して間接的に当接するカバー側支持部を形成することができる。そして、ばね座金は、カバー側支持部とケーシングの端面との少なくとも一方とセパレータ側支持部との間に配置することができる。該構成では、セパレータ側支持部をセラミックセパレータの軸方向中間位置に形成し、セラミックセパレータのセパレータ側支持部よりも前方側部分をケーシング内に収容し、後方側部分をカバー部材内に収容することで、セラミックセパレータをより安定的に保持できる。
【0155】
また、カバー部材は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部により、該段付き部に関して軸方向前方側を第一部分、同じく後方側を第二部分として、該第二部分が第一部分よりも径小となるように形成することができる。そして、その段付き部をカバー側支持部として、該カバー側支持部とセパレータ側支持部との間にばね座金を配置することができる。すなわち、上記構成の酸素センサを組み立てる場合、筒状のケーシングを立てた状態でセラミックセパレータをその上側の開口部から挿入するようにし、さらにカバー部材を上側から被せるようにすれば能率がよい。この場合、ばね座金を上述のように配置すれば、ケーシングに挿入した状態のセラミックセパレータに対し該ばね座金を簡単かつ確実に外挿することができ、センサの組立を一層能率よく行うことができる。また、カバー部材を上述のように段付き構造とすることで、その段付き部とセパレータ側支持部との間でばね座金を確実に挾圧することができる。
【0156】
なお、上記酸素センサの構成においてカバー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から結合部により連結される前記発明(A)のフィルタアセンブリとすることができる。
【0157】
発明(G)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち該酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、その酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、そのケーシング内に配置され、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータと、ケーシングの後方側開口部又はそのケーシングの後方側に同軸的に一体化されて内部が該ケーシングと連通する別の筒状体の開口部に対しその内側に弾性的にはめ込まれ、各リード線を挿通するためのシール側リード線挿通孔を有するとともに、それらリード線外面とケーシング又は別の筒状体の内面との間をシールする弾性シール部材とを備える。セラミックセパレータの軸方向後端面は弾性シール部材の軸方向前端面と密着するとともに、該セラミックセパレータには、これを軸方向に貫通する気通用連通部が形成される。そして、その気通用連通部は上記軸方向において弾性シール部材に近い側の開口部が、当該弾性シール部材によって遮蔽されない位置に形成される。
【0158】
該酸素センサの構成においては、気通用連通部の弾性シール部材に近い側の開口部が弾性シール部材によって遮蔽されないので、弾性シール部材がセラミックセパレータに密着配置されるにも拘わらず、該セラミックセパレータの気通連通部における通気が阻害されることがない。
【0159】
具体的には、セラミックセパレータには、セパレータ側リード線挿通孔とは別に軸方向の気通用貫通孔を形成でき、またその後端面に、一端が該気通用貫通孔に連通し、他端側がセラミックセパレータの外周面に開放する気通用溝部を形成することができる。この場合、これら気通用貫通孔及び気通用溝部が気通用連通部を形成することとなる。この構成によれば、気通用溝部の他端側の開口部がセラミックセパレータの外周面に開放するので弾性シール部材により遮蔽されず、該気通用溝部及びそれに続く気通用貫通孔における気体の流通を確実なものとすることができる。なお、セラミックセパレータの軸方向中間部において該軸方向と交差する向きに、一端が該セラミックセパレータの外周面に開放し他端側が気通用貫通孔に連通する横方向の貫通孔を形成してもよい。しかしながら、セラミックセパレータを粉末の成形・焼成により製造する場合、上記構成のようにセラミックセパレータの端面上に気通用溝部を形成するほうが、粉末成形体の製造がはるかに容易であり、製造能率が高い利点がある。
【0160】
上記酸素センサはより具体的には下記のように構成することができる。すなわち、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを有する気体導入構造部とを備え、フィルタ及び気体導入孔を経て外気をケーシング内に導入させる気体導入構造部(上記別の筒状体に相当する)を設ける。セラミックセパレータは、酸素検知素子の軸方向において後方側がフィルタ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシングの内側に入り込むように配置され、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたものとする。弾性シール部材は、フィルタ保持部の後方側開口部に対しその内側に弾性的にはめ込まれ、各リード線を挿通するためのシール側リード線挿通孔を有するとともに、それらリード線外面とフィルタ保持部内面との間をシールするものとする。また、セラミックセパレータの後端面は、軸方向において気体導入孔よりも後方側に位置するとともに、弾性シール部材の軸方向前端面と密着する一方、フィルタ保持部内周面とセラミックセパレータの外周面との間には隙間が形成され、気体導入孔からの気体がこの隙間内に供給されるようにする。そして、セラミックセパレータには、該隙間に導入された気体をケーシング内に導くための上記気通用連通部を形成する。
【0161】
この構成によれば、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタを用いて気体導入構造部を構成することで、ケーシング内に水滴等が侵入することは阻止しつつ、基準ガスとしての外気はケーシング内に十分に導入することができる。この場合、セラミックセパレータの後端面位置を気体導入孔よりも後方側に設定することで、気体導入孔から仮に気体導入構造部内に水滴等が侵入しても、セラミックセパレータが該水滴の進路を妨げる形となるので、ケーシング内へは該水滴等が一層流れ込みにくくなる。一方、気体導入孔から流入した基準ガスは、気通用溝部及び気通用貫通孔を経て支障なくケーシング内へ導入できる。
【0162】
次に、酸素検知素子は先端が閉じた中空軸状に形成でき、その中空部内には該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体を配置することができる。この場合、セラミックセパレータには、酸素検知素子及び発熱体からのリード線を挿通するための4つのセパレータ側リード線挿通孔が、各々その中心が仮想的な円周経路(セパレータ側ピッチ円)上に位置して配列するように形成することができる。また、気通用貫通孔は、セラミックセパレータの中央部において、それら4つのセパレータ側リード線挿通孔により囲まれる領域に形成することができる。さらに、気通用溝部は、セラミックセパレータの後端面において、4つのセパレータ側リード線挿通孔と干渉しない位置に、十字形態で形成することができる。これにより、セラミックセパレータの限られた体積を有効活用して、酸素検知素子及び発熱体からの各リード線の挿通孔、気通用貫通部及び気通用溝部を過不足のない大きさで効率的に配置・形成することができる。
【0163】
一方、本発明の酸素センサは次のように構成することができる。すなわち、セラミックセパレータには、その軸方向中間位置においてその外周面から突出するフランジ状のセパレータ側支持部を形成する。該セラミックセパレータは、セパレータ側支持部よりも軸方向前方側に位置する部分をケーシングの後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部においてケーシングの後端面に対し直接又は他部材を介して間接的に当接し、軸方向後方側部分はケーシングの外側に突出させた状態で配置する。また、セラミックセパレータの上記ケーシングからの突出部分は、外側から前述の別の筒状体としてのカバー部材で覆う。そして、セラミックセパレータのフランジ部を軸方向に貫通する形態で、気通用貫通部を1ないし複数形成する。この構成は、フランジ部を利用して気体の流通経路を確保できるので、例えばセラミックセパレータの本体部分に気通用貫通部を形成する余地がない場合に有効である。また、セラミックセパレータの本体部分に気通用貫通部を形成し、さらにフランジ部にも気通用貫通部を形成すれば、気体の流通を一層スムーズに行うことができる。
【0164】
具体的には、気通用貫通部は、フランジ部の外周面に対し所定の角度間隔で複数形成された溝部ないし切欠き部とすることができる。これによれば、フランジ部の周方向において偏りなく気体を流通させることができ、しかも焼成前の粉末成形体の形成も容易であり、製造効率が高い。
【0165】
なお、上記酸素センサの構成においてカバー部材は、ケーシングとは独立した筒状体としてこれにほぼ同軸的に設けられ、酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ、ケーシングに対し後方側から連結される前記発明(A)のフィルタアセンブリとすることができる。
【0166】
発明(H)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、軸状をなす酸素検知素子と、該酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、該ケーシング内に外気を導入する気体導入構造部とを備える。気体導入構造部は、ケーシングの後方側にほぼ同軸的に設けられる筒状形態をなすとともに内部が該ケーシングの内部と連通し、壁部に1ないし複数の気体導入孔が形成されたフィルタ保持部と、該フィルタ保持部の気体導入孔を塞ぐように配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを有し、フィルタ及び気体導入孔を経て外気をケーシング内に導入させる。また、酸素検知素子の軸方向において後方側がフィルタ保持部の内側に入り込み、同じく前方側がケーシングの内側に入り込むように配置され、酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータと、フィルタ保持部の後方側開口部に対しその内側に弾性的にはめ込まれ、各リード線を挿通するためのシール側リード線挿通孔を有するとともに、それらリード線外面とフィルタ保持部内面との間をシールする弾性シール部材とを備える。さらに、セラミックセパレータの後端面は、軸方向において気体導入孔よりも後方側に位置するとともに、弾性シール部材とセラミックセパレータとの間には、少なくともリード線の挿通位置において所定量の隙間が形成される。
【0167】
上記構成によれば、弾性シール部材とセラミックセパレータとの間に所定量の隙間が形成されるので、例えば両者の間においてリード線挿通孔のピッチ円径に差が生ずる場合でも、その径差が隙間で吸収されてリード線に強い屈曲が生じにくく、ひいてはセンサ組立時等においてリード線の損傷や断線等が起こりにくい。また、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタを用いて気体導入構造部を構成することで、ケーシング内に水滴等が侵入することは阻止しつつ、基準ガスとしての外気はケーシング内に十分に導入することができる。そして、セラミックセパレータは、後端面が気体導入孔よりも後方側に位置するようにフィルタ保持部内に入り込んで配置されるので、気体導入構造部に外部から強い衝撃が加わった場合でも、内側のセラミックセパレータがその衝撃を受ける役割を果たすのでフィルタ保持部は大きな変形を免れ、ひいてはフィルタのシール性が損なわれるといった問題も生じにくくなる。さらに、セラミックセパレータの後端面位置を気体導入孔よりも後方側に設定することで、気体導入孔から仮に気体導入構造部内に水滴等が侵入しても、セラミックセパレータが該水滴の進路を妨げる形となるので、ケーシング内へは該水滴等が一層流れ込みにくくなる。なお、気体導入孔から流入した基準ガスは、気通用溝部及び気通用貫通孔を経て支障なくケーシング内へ導入できる。
【0168】
上記構成においてセラミックセパレータには、セパレータ側リード線挿通孔とは別に、前述の隙間側からケーシング内側へ気体を導くための気通用連通部を軸方向に貫通して形成することができる。これにより、フィルタを介して導入された基準ガスとしての外気が、セラミックセパレータの後端面側から気通用連通部を経てケーシング内にスムーズに導かれるので、より安定な酸素センの出力を得ることが可能となる。
【0169】
次に、酸素検知素子は先端が閉じた中空軸状に構成することができ、その中空部内には該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体を配置することができる。この場合、セラミックセパレータには、酸素検知素子及び発熱体からのリード線を挿通するための3以上のセパレータ側リード線挿通孔が、各々その中心が仮想的な円周経路(セパレータ側ピッチ円)上に位置して配列するように形成することができ、また、弾性シール部材には、酸素検知素子及び発熱体からのリード線を挿通するための3以上の前記シール側リード線挿通孔を、各々その中心が仮想的な円周経路(シール側ピッチ円)上に位置して配列するように形成することができる。そして、セパレータ側ピッチ円とシール側ピッチ円とは、その一方が他方よりも直径が大きくなるように設定することができる。
【0170】
次に、弾性シール部材の前端面には、先端がセラミックセパレータの後端面と当接することにより、隙間の大きさを規定する隙間規定突出部を形成することができる。該構成によれば、弾性シール部材が隙間規定突出部においてセラミックセパレータと当接するので、セラミックセパレータをより安定的に固定することができる。また、形成されるべき隙間量も隙間規定突出部の高さに応じて自動的に定まるので面倒な隙間調整が不要であり、弾性シール部材組み付け後において隙間量が変化したりする心配もない。
【0171】
隙間規定突出部は、弾性シール部材の前端面のうち、シール側ピッチ円上に配列したシール側リード線挿通孔よりも内側に位置する領域に形成することができる。この構成では、隙間規定突出部が弾性シール部材の前端面のほぼ中央に形成されるので、セラミックセパレータとの間の安定な当接状態を実現でき、ひいては弾性シール部材の軸方向の位置ずれや傾斜等も生じにくい。この場合、セパレータ側ピッチ円の直径が、シール側ピッチ円の直径よりも大きくなっていれば、セラミックセパレータの後端面に対する隙間規定突出部の当接領域を、セパレータ側リード線挿通孔に取り囲まれた位置に容易に確保できる。
【0172】
一方、弾性シール部材の後方側端縁部に、その外周面から外向きに張り出すフランジ部を形成し、該弾性シール部材は、そのフランジ部においてフィルタ保持部の後方側端面と当接することにより、該フィルタ保持部内における自身の前端面の位置、すなわち上記隙間量が規定される構成としてもよい。該構成では隙間形成突出部が弾性シール部材に形成されないので、例えばセパレータ側ピッチ円の直径が小さく、セパレータ側リード線挿通孔に囲まれた領域に隙間形成突出部接触のための十分なスペースが確保できない場合に有効である。
【0173】
発明(I)
この発明の酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体とを備え、該発熱体の発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が該酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心していることを特徴とする。ここで、そのような偏心(オフセット)の結果として、発熱体の発熱部の表面が、酸素検知素子の中空部内壁面に接触していることが望ましい。
【0174】
発熱体の中心軸線を、上述のように酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心させた場合、その偏心側において酸素検知素子は局所加熱され、当該酸素検知素子の中心軸線回りの加熱状態は不均一なものになると考えられる。そして、このように検知素子を不均一加熱する構成は、従来の常識と照合すれば、酸素検知素子の電気抵抗値が全体として十分低くなるまでに時間がかかり、結果としてセンサの立ち上がり時間を長くするのではないかという懸念が生ずるなど、不都合が極めて多いもののように思われる。ところが、本発明者らは、この一見望ましくないと思われる上記構成の採用により、意外にもセンサの活性化時間は従来と同等であるかあるいは却って短縮されることを見い出したのである。
【0175】
そして、発熱部が酸素検知素子と接触する上記横当て構造を例えば採用することで、発熱体の発熱部で発生する熱がその接触に基づき、その発熱部から酸素検知素子へ直接的に熱伝導するとともに、その接触点近傍の輻射熱も酸素検知素子に効果的に作用して、その酸素検知素子を短時間で昇温させることができ、センサ活性化時間が短縮される。また発熱体の発熱部が酸素検知素子の中空部内壁面に側方から接触した構造であれば、発熱部や酸素検知素子の熱膨張が生じても、発熱部の先端を酸素検知素子の先端内面に当てる構造に比べて、その熱膨張の影響を受けにくい。言い換えれば、そのような横当て構造をとることにより、発熱体や酸素検知素子が熱履歴を受けても、両者の接触状態を良好に保ち易くなるのである。
【0176】
また、発熱部を側方から酸素検知素子の中空部内壁面に当てるようにすれば、接触による直接的な熱伝導並びに輻射熱の効果により、先端同士で当てる構造よりも全体としての熱伝達効率は高くなる。そして、上記のように、酸素センサにおける酸素検知素子と発熱体の発熱部との接触状態を安定に保証できることにより、酸素検知素子の加熱状態のばらつきが減少し、このことが酸素センサとしての特性のばらつきを減少させる効果につながる。
【0177】
上記酸素センサは、酸素検知素子を収容する筒状のケーシングと、酸素検知素子の後端側にこれとほぼ同軸的に配置され、酸素検知素子及び発熱体からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔がそれぞれ軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータとを備えるものとして構成できる。リード線挿通孔は、セラミックセパレータの中心軸線をとり囲むように配列する。また、セラミックセパレータには、一端が該セラミックセパレータの前端面に開口し、底面が該セラミックセパレータの軸方向中間部に位置するとともに、内径が前記発熱体の外径よりも大きく設定された発熱体端部収容孔が、各リード線挿通孔に対し内側から重なりを生ずるようにセラミックセパレータの中央部を切り欠いた形態で形成され、その発熱体収容孔内に発熱体の後端部が収容される。
【0178】
発熱体を上述のように偏心して配置した場合、その後端部はセラミックセパレータの軸線に対して偏心配置される。ここで、該発熱体の後端部を収容する発熱体端部収容孔は、内径が発熱体の外径よりも大きく設定されているため、発熱体の偏心配置に伴う後端部の径方向の移動が一定の範囲内で許容される。すなわち、発熱体を偏心配置した場合に、その後端部がセラミックセパレータの内壁面と干渉することが防止され、偏心量も比較的自由に設定できる利点がある。
【0179】
ここで、リード線挿通孔が、各々その中心が仮想的な円周経路(ピッチ円)上に位置して配列するように形成される場合、発熱体端部収容孔の内径d1が、該ピッチ円の直径d2よりも小さく設定するのがよい(すなわちd1<d2)。すなわち、セラミックセパレータの、隣接するリード線挿通孔の間に位置する部分は、リード線を互いに分離する隔壁部として機能するのであるが、発熱体端部収容孔の形成に伴い、該隔壁部は内側から切り欠かれることとなる。ここで、d1≧d2になると隔壁部の径方向の長さが短くなり過ぎ、リード線の分離効果が低下して短絡等の問題につながる場合がある。
【0180】
また、リード線挿通孔のピッチ円C1の直径d2と発熱体端部の外径Dとの比d2/Dは、1.7〜2.8の範囲で調整することが望ましい。d2/Dが1.7未満になると、発熱体の偏心量を十分に確保できず、結果として発熱体の横当り状態が不十分となってセンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくなる場合がある。また、d2/Dが2.8を超えると、リード線の曲がり量が大きくなりすぎ、該リード線に損傷等が生じやすくなる。一方、発熱体端部収容孔は、その深さhと内径d1との比h/d1を1.2以下に設定するのがよい。例えば、発熱体3を傾斜させて偏心状態を形成する場合、h/d1が1.2を超えると、収容孔の径えd1に対して深さhが相対的に大きくなり過ぎ、発熱体の傾斜量すなわち偏心量を十分に確保できず、同様にセンサ立ち上がり時間の短縮効果が十分に期待できなくなる場合がある。
【0181】
なお、酸素検知素子の外面と中空部の内壁面とには、酸素検知素子を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極(例えばPt多孔質電極)を設けることができる。この場合、酸素検知素子の局所加熱を行っても、センサの立ち上がり時間が従来と同等レベルに維持されるか、あるいは却って短縮される要因としては、次のようなことが考えられる。
【0182】
すなわち、該方式の酸素センサでは、例えば酸素検知素子の内側に大気等の基準ガスを導入する一方、外側に排気ガス等の測定対象ガスを接触させ、酸素検知素子の内外の酸素濃度差に基づいて該酸素検知素子に生ずる濃淡電池起電力により、測定対象ガス中の酸素濃度が検出される。この場合、酸素イオン電導性固体電解質により形成された酸素検知素子に十分な濃淡電池起電力が生じるためには、酸素検知素子の電気抵抗値が十分小さくなることのほかに、酸素分子に対する解離ないし再結合反応に対する上記多孔質電極の触媒活性が十分に高められている必要がある。そして、センサの検出出力レベルは、酸素検知素子の電気抵抗値と上記多孔質電極の触媒活性との兼ね合いで決まることとなる。
【0183】
ここで、例えばPt等で構成された多孔質電極の触媒活性は、例えばZrO2系等の固体電解質の酸素イオン移動度よりも温度に対して急激に増大する傾向があるものと推測されている。そして、酸素検知素子が本発明の構成により局所加熱されると、固体電解質の活性化による酸素検知素子の電気抵抗減少は、不均一加熱のため酸素検知素子と発熱体とを同心配置する従来の構成ほどには進まないが、その局所加熱された部分は従来の構成よりも高温まで加熱されるので、当該部分で多孔質電極の触媒活性が高められて被測定ガス中の酸素分子の解離が促進され、その効果により固体電解質の濃淡電池起電力ひいてはセンサの検出出力レベルが補われ、結果としてセンサの立ち上がり時間が従来と同等か、それよりも短縮される効果が達成されるものと推測される。
【0184】
次に、発熱体の発熱部が、その外周面の周方向の一部において発熱分布の疎なる発熱疎部分を有する場合に、その発熱疎部分以外の部分において当該発熱体の発熱部を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させることができる。例えばセラミックグリーンシートに発熱抵抗パターンを印刷して、これを芯材に丸めて焼成することにより発熱部を形成する場合は、その継ぎ合わせ側で発熱パターンが疎になるため、例えばこれと反対側の発熱部表面を酸素検知素子の中空部内壁面に接触させることができる。つまり、発熱疎部分がその中空部内壁面に接触した場合でも一定の熱伝達の効果はあるが、それより発熱の充分生じる部分を接触させた方がより効果的であるという意味である。また、発熱体の発熱部が周方向に偏在することで、より小さな容積に発熱エネルギーが集中することになり、特にヒーター通電時間後の活性化時間を短縮する上で効果がある。
【0185】
また、発熱体の発熱部が発熱体の先端部に偏在していることも酸素検知素子を速やかに加熱する上で有効である。つまり、発熱部を発熱体の全体に広げることもできるが、そうすると熱エネルギーが分散しやすくなる。有効な酸素検知素子の加熱にとっては、むしろ発熱部を発熱体の先端部に偏在させた方が、局部的に発熱し好ましいと言える。このような発熱部の局部的な発熱パターンと、前述の偏心による横当て構造との組合せにより、センサの活性化時間をより短縮することができる。
【0186】
さらに、発熱体が端子金具を介して酸素検知素子内に組み付けられるとともに、その端子金具によって発熱体の発熱部を酸素検知素子の中空部内壁面に、押し付けられている構造とすることができる。これによって前述のような横当て構造は一層安定に保証され、センサ特性のばらつき減少の効果はさらに高まる。
【0187】
その端子金具の好適な例としては、発熱体を把持する1箇所の発熱体把持部と、その発熱体を周方向に包囲するように形成されて酸素検知素子内側の電極層に接触する少なくとも1箇所の内部電極接続部と、上記内部電極接続部を間に挟んで発熱体把持部の反対側に、発熱体をその発熱体の軸方向と垂直な方向に押すガイド部とを備えたものとすることができる。そして、発熱体把持部とガイド部によって、発熱体の中心軸線が酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して傾斜させられることにより発熱体の発熱部が中空部内壁面(以下、素子内壁面ともいう)に押し付けられ、発熱体が固定されることとなる。これによれば、ガイド部が発熱体を素子内壁面に押し付ける構造であるため、このような端子金具を介して上述の横当て構造を容易に実現することができる。
【0188】
また、発熱体に生じる応力に着目した場合、素子内壁面において発熱体に作用する応力と、ガイド部において発熱体に作用する応力と、上記発熱体把持部において発熱体に作用する応力とによって合成される発熱体に作用する曲げモーメントに対して、その発熱体が折れないように上記ガイド部の弾性力を小さくするのがよい。言い換えれば、主にこのガイド部の弾性力により発熱体が素子内壁に押し付けられるわけであるが、この弾性力を適度に調整することにより発熱体の欠損等を防ぎつつ、その積極的な接触形態である押し付け状態を安定に持続できる。
【0189】
このようにガイド部の弾性力を小さくする上での具体例としては、そのガイド部と内部電極接続部との間、その内部電極接続部と上記発熱体把持部との間の少なくともいずれかの間を、くびれた形態で連結する連結部を形成することができる。このようなくびれた形態の連結部が存在することにより、結果としてガイド部の弾性力は適度に小さくなり、上述のような発熱体の欠損等を回避する上で有効となる。また、発熱体が熱応力により変形しようとした際に、連結部が適度に弾性変形(あるいは塑性変形)してこれを緩和する効果も併せて期待することができる。
【0190】
次に、端子金具は、発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内側の電極層に接触する少なくとも1箇所の内部電極接続部と、発熱体の軸方向において、内部電極接続部の一方の側に隣接してこれと一体的に設けられ、発熱体を周方向に包囲するように形成されてこれを把持する第一発熱体把持部と、発熱体の軸方向において、内部電極接続部の他方の側に隣接してこれと一体的に、かつ中心軸線が第一発熱体把持部の中心軸線から偏心して設けられ、発熱体を周方向に包囲するように形成されてこれを把持する第二発熱体把持部とを備えたものとすることもできる。この場合、中心軸線が互いに偏心した第一発熱体把持部及び第二発熱体把持部によって、発熱体の中心軸線が酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して傾斜させられることにより、該発熱体の発熱部が中空部の内壁面に押し付けられて当該発熱体が固定されることとなる。これによれば発熱体は、互いに偏心した2つの把持部により傾斜状態で保持されて素子内壁面に押し付けられるので、このような端子金具を介して上述の横当て構造を容易に実現することができる。また、2つの把持部によって発熱体はその傾斜状態をより安定的に保持することができ、発熱部の横当て効果をさらに確実に達成することができる。
【0191】
より具体的には、第一発熱体把持部と第二発熱体把持部とを、内部電極接続部の各々対応する端部に対し、前記発熱体の径方向において同じ側の周縁に接続し、その接続部から見て第一発熱体把持部の中心軸線が第二発熱体把持部の中心軸線よりも遠い側に位置するように構成することができる。該構成においては、発熱部が発熱体の先端部に形成されている場合、発熱体はその先端側が上記接続部側に傾いて位置し、当該接続部側において素子内壁面に押し当てられることとなる。例えば、内部電極接続部への接続側とは反対の端部において第一発熱体把持部に対し、酸素検知素子の出力(ないし接地)端子が上記接続部側に対応する位置において突出して形成されている場合、上述のように発熱体を配置することにより、センサの組立時において例えば発熱体の電力供給端子(一般には、発熱体の、発熱部が形成されているのとは反対側の端部に形成される)等と上記出力端子との干渉が生じにくくなり、ひいてはセンサの組立を容易に行うことができる。ただし、これら端子間における干渉等の問題が生じない場合には、第一発熱体把持部の中心軸線を第二発熱体把持部の中心軸線よりも上記接続部に対し近い側に位置させる構成(すなわち、発熱体の傾斜が上記とは逆となる構成)としてもよい。
【0192】
また、さらに具体的には、第一発熱体把持部と内部電極接続部とを中心軸線が互いにほぼ一致するように配置し、第二発熱体把持部を、その中心軸線が内部電極接続部の中心軸線に対し、前記接続部側に偏心するように配置する構成とすることができる。すなわち、第一発熱体把持部と内部電極接続部とを同軸的に配置することにより、例えば発熱体の電力供給端子と、酸素検知素子の出力端子ないし接地端子との間に比較的に均等に間隔を形成することができ、ひいては端子間の絶縁不良等のトラブルを減少させることができる。
【0193】
なお、本構成においても端子金具には、第一発熱体把持部と内部電極接続部との間及び/又は該内部電極接続部と第二発熱体把持部との間をくびれた形態で連結する連結部を形成することができる。すなわち、発熱体が2つの把持部で把持されていると、発熱体の熱膨張ないし収縮が拘束されやすくなって熱応力が生じやすい傾向にあるが、連結部が弾性変形ないし塑性変形することで熱応力が緩和され、ひいては発熱体の破損等も生じにくくなる。
【0194】
この場合、上記連結部のうち、第一発熱体把持部と内部電極接続部との間に形成されたもの(第一連結部)と、内部電極接続部と第二発熱体把持部との間に形成されたもの(第二連結部)とが、それぞれ内部電極接続部の径方向内側に曲げられて段付き部を形成する構成とすることもできる。こうすれば、それら第一連結部及び第二連結部の曲げ量を調整することにより、第一発熱体把持部及び第二発熱体把持部の中心軸線間の偏心量を容易に調整できる利点が新たに生ずる。
【0195】
また、端子金具の内部電極接続部及び発熱体把持部の少なくともいずれかに、それら内部電極接続部ないし発熱体把持部の内面から突出して発熱体の外周面に当接するとともに、その発熱体を、発熱部の近傍において該発熱体の中心軸線が該酸素検知素子の中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心した状態で位置決めする位置決め用突出部を形成することもできる。このような位置決め用突出部は、例えば端子金具が板金加工品で構成されている場合は、プレス加工等により簡単に形成できる。また、発熱体の中心軸線の中空部の中心軸線からの偏心量を、位置決め用突出部の内部電極接続部及び/又は発熱体把持部内面からの突出高さに応じて容易に調整できる利点も有する。
【0196】
端子金具において位置決め用突出部は発熱体把持部に設けても、内部電極接続部に設けてもいずれでもよい(双方に設けることも可能である)。しかしながら、位置決め用突出部を内部電極接続部に設け、その内部電極接続部に連結する発熱体把持部のうち、いずれか一方を省略する構成とすれば、端子金具の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。また、発熱体が1ケ所の把持部により把持される形としたから、例えば端子金具を装着した発熱体を酸素検知素子の中空部内に挿入してセンサを組み立てる際に、端子金具を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体の折損等を防止することができる。
【0197】
なお、上記構成の端子金具において省略すべき発熱体把持部は、発熱体の長手方向におけるいずれの側のものであってもよい。しかしながら、発熱体から遠い側のものを省略する構成、換言すれば端子金具において、発熱体把持部を内部電極接続部に対し発熱体の発熱部に近い側にのみ連結する構成とすれば、発熱体は、センサの出力端子部等を介して外力の影響を受けやすい上記遠い側の把持が解除され、横方向の力を受けてもこれを緩和し易くなって、前述の折損等を防止する効果をさらに高めることができる。なお、より具体的には、位置決め用突出部を内部電極接続部に対し、前記発熱体把持部が連結されているのとは反対側の端部近傍において、該発熱体把持部の内部電極接続部への連結部に対応する位置に形成するようにすれば、発熱体の軸線方向において、位置決め用突出部による支持点(当接点)と発熱体把持部による支持点との間の距離を増すことができ、ひいては端子金具により発熱体をさらに安定的に位置決め支持させることが可能となる。
【0198】
また、酸素検知素子の前記中空部に対し、該中空部の中心軸線を含むある仮想的な第一平面と、同じく中空部の中心軸線を含むとともに第一平面と直交する仮想的な第二平面とを設定して、該中空部をそれら第一平面と第二平面とによって4つの領域に分割した場合に、発熱体を、その中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、該中空部の上記4つの領域のいずれかに収まるように配置することができる。該構成は、換言すれば、発熱体の中心軸線の中空部内に位置する部分の全体が、中空部の4つの領域のいずれかに収まるように、上記仮想的な第一及び第二平面がどこかに必ず設定できるということを意味している。
【0199】
上記構成によってもたらされる作用・効果について、図30を用いて説明する。なお、以下においては説明の便宜のため、発熱部(42)は発熱体(3)の酸素検知素子(2)への挿入側端部に形成されており、酸素検知素子(2)の中空部内壁面(2a)はほぼ円筒状面をなすものと考える(ただし、中空部内壁面(2a)には、酸素検知素子(2)を固体電解質粉末の成形・焼成により製造する際に、成形時の離型性を高める等の目的で、底部側が縮径するテーパが付与されている場合もある)。まず図30(c)は、上記仮想的な第一及び第二平面P1,P2を如何に設定しようとも、上記平面P1,P2で区切られる中空部の4領域のいずれか1つに発熱体(3)の中心軸線O1を収めるのが不能な場合を示している。すなわち、中心軸線O1は検知素子(2)の中心軸線O2に対してかなり傾いて設定されており、結果として該中心軸線O1は上記4領域の2以上のものに必然的にまたがって位置せざるを得なくなっている。一方、図30(a)は、上記仮想的な第一及び第二平面P1,P2を適当に設定することで、4領域のいずれかに発熱体(3)の中心軸線O1を収めることが可能な場合を示している。この場合、発熱体(3)の中心軸線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜は、図30(c)に示す場合と比べて必ず緩くなる。
【0200】
この両者を比較すれば、図30(c)に示す構成では、発熱部(42)の末端側の角部において検知素子(2)の中空部内壁面(2a)との距離が短くなり、発熱がこの部分にやや集中する傾向がある。これに対し、同図(a)に示す構成は、発熱体(3)の中心軸線O1の検知素子(2)の中心軸線O2に対する傾斜が(c)の構成よりも緩やかであることから、発熱部(42)の側面が検知素子(2)の中空部内壁面(2a)に対しほぼ沿う形となり、発熱部(42)により検知素子(2)の壁部をより均一に加熱することができる。その結果、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待できる。ただし、図30(c)に示す構成でも、発熱体(3)の中心軸線O1が検知素子(2)の中心軸線O2から偏心して位置することに変わりはなく、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定以上の効果が期待できることはいうまでもない。
【0201】
この場合、図30(b)に示すように、発熱体(3)は、該発熱体(3)の中心軸線が酸素検知素子の中空部の中心軸線とほぼ平行となるように中空部内に配置されていれば、発熱部(42)の側面を検知素子(2)の中空部内壁面(2a)に対し沿わせる効果、ひいては検知素子(2)の壁部を均一加熱する効果がさらに顕著に達成される。
【0202】
具体的には、発熱体が、該発熱体の中心軸線が酸素検知素子の中空部の中心軸線とほぼ平行となり、かつその中心軸線が、中空部の中心軸線に対して片側に寄るように偏心する構成とすることができる。この場合、発熱体を周方向に包囲するように形成されて記酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸方向においてその両側に連結され、ぞれぞれ発熱体を把持する1対の発熱体把持部とを有する端子金具を設けることができる。これによれば、2つの把持部によって発熱体をより安定的に保持することができる効果も新たに加わる。
【0203】
一方、発熱体を周方向に包囲するように形成され、前記酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸方向において該発熱体の先端に近い側の端部にのみ連結され、発熱体を把持する発熱体把持部とを有する端子金具を設けることもできる。この構成によれば、発熱体は1ケ所の把持部により、軸線と交差する向きにおいて若干の動きの自由度を生じた状態で把持されることとなる。従って、発熱体を端子金具とともに酸素検知素子の中空部内に挿入すると、該発熱体は先端部が酸素検知素子の内壁面との接触するに伴い、これに追従して該内壁面に沿う形で位置決めされ、酸素センサの活性化時間を短縮する上でさらに大きな効果を期待することができる。また、センサを組み立てる際に、端子金具を介した過剰な横方向の力が発熱体に作用しにくくなり、ひいては組立時の発熱体の折損等を防止することができる。さらに、端子金具の発熱体軸線方向における長さを短くでき、ひいては酸素センサの上記軸線方向の長さを減じてこれをコンパクトに構成できるようになる。
【0204】
なお、この発明において、前述のような発熱体の上記酸素検知素子に対する偏心配置にかかわらず、発熱体の発熱部の表面が酸素検知素子の中空部内壁面に接触はせず、ごく近接して位置する構成でもよい。このような構成でも、偏心していない場合に比べて、発熱部から酸素検知素子への熱輻射等の効果は高まるため、酸素センサの活性化時間を短縮する上で一定の効果がある。
【0205】
この発明の酸素センサにおいては、酸素検知素子の軸断面内側寸法DAと発熱体の軸断面外側寸法DBとの差ΔD=DA−DBが0.35mm以下となっていることが望ましい。ここで、酸素検知素子の軸断面内側寸法及び発熱体の軸断面外側寸法は、酸素検知素子内周面ないし発熱体外周面が円筒状面である場合には、その内径ないし外径を意味するものとする。また、上記内周面及び外周面が円形から外れた軸断面形状を有している場合には、これを同面積の円形断面に換算した場合の内径ないし外径を意味するものとする。さらに、上記軸断面寸法が、その軸方向において一定でない場合(例えばテーパ面状に形成されている場合)は、該軸断面寸法の軸方向における平均値で代表させるものとする。
【0206】
ΔD=DA−DBが0.35mmを超えると、酸素検知素子の活性化時間、ひいてはセンサ立ち上がり時間が長くなったり、あるいは該立ち上がり時間にセンサ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。例えば、発熱部を側方から酸素検知素子の中空部内壁面に当てる場合、ΔDが大きくなるとその横当て力に個体間ばらつきが生じやすくなることが、その原因として考えられる。なお、ΔDの値は、より望ましくは0.30mm以下に設定するのがよい。一方、ΔDが0.1mm未満になると、発熱体を酸素検知素子の中空部内への挿入が行いにくくなり、発熱体の酸素検知素子に対する組み付け能率を低下させる場合がある。それ故ΔDは0.1mm以上に設定するのがよく、より望ましくは0.15mm以上に設定するのがよい。
【0207】
また、検知素子の軸断面内側寸法DAと発熱体の軸断面外側寸法DBとの差ΔD=DA−DBの、DBに対する比ΔD/DBは、0.13以下となっていることが望ましい。ΔD/DBが0.13を超えると、センサの立ち上がり時間が長くなったり、あるいはそのセンサ個体間でのばらつきが生じやすくなる場合がある。ΔD/DBは、より望ましくは0.10以下に設定するのがよい。
【0208】
このような構成は、発熱体を1ケ所の把持部のみにより把持する構成に適用した場合に特に有効である。すなわち、ΔDないしΔD/DBを上記範囲で調整することにより、酸素検知素子の内壁面との接触に伴い、発熱体の先端部は酸素検知素子の中空部内壁面にさらに沿いやすくなり、酸素センサの活性化時間を短縮する効果が一層高められるのである。
【0209】
発明(J)
この発明の第一に係る酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体と、端子金具とを備える。該端子金具は、発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸方向において少なくとも一方の側に連結されて前記発熱体を把持する発熱体把持部とを有する。そして、その端子金具の発熱体把持部は、発熱体が自身の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発熱体の挿通に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その弾性復帰力により該発熱体を把持するものとされる一方、その軸方向における少なくとも一方の端縁部に、発熱体の挿入をガイドするための発熱体挿入ガイド部が形成される。
【0210】
上記酸素センサの構造によれば、発熱体把持部に発熱体挿入ガイド部を設けたから、発熱体を発熱体把持部へ挿通することで端子金具の組付けを行う際に、発熱体の端縁が発熱体把持部の縁部に引っ掛かりにくくなる。これにより、端子金具への発熱体の組付けを容易に行うことができ、ひいては酸素センサの製造能率を高めることができる。
【0211】
上記酸素センサにおいては、発熱体把持部に対し、発熱体をその先端側から挿入して組付けを行うことが多い。この場合、発熱体挿入ガイド部は、発熱体把持部に対し、酸素検知素子の先端から遠い側の端縁部に形成しておくことが望ましい。
【0212】
次に、発熱体挿入ガイド部は、筒状の発熱体把持部の端縁からその軸方向に切れ込むとともに、その深さ方向において徐々にその幅を縮小する切欠き部として構成することができる。これにより、発熱体の発熱体把持部への挿入をよりスムーズに行うことができる。
【0213】
また、この発明の第二に係る酸素センサは下記のように構成されることを特徴とする。すなわち、該酸素センサは、先端部が閉じた中空軸状をなし、それの内外面に電極層を有する酸素検知素子と、該酸素検知素子の中空部内に配置されて該酸素検知素子を加熱する軸状の発熱体と、端子金具とを備える。該端子金具は、発熱体を周方向に包囲するように形成され、酸素検知素子の内側の電極層に接触する内部電極接続部と、その内部電極接続部に対し発熱体の軸方向において少なくとも一方の側に連結されて発熱体を把持する発熱体把持部とを有する。そして、その端子金具の発熱体把持部は、発熱体が自身の内側に挿通される筒状の形態をなし、該発熱体の挿通に伴い半径方向外向きに弾性変形して、その弾性復帰力により該発熱体を把持するものとされる一方、その軸方向における少なくとも一方の端縁部に、該軸方向に切れ込むとともに、深さ方向において徐々にその幅を縮小する切欠き部が形成される。
【0214】
上記酸素センサの構造によれば、発熱体把持部に形成された切欠き部が発熱体の挿入をガイドするための発熱体挿入ガイド部として機能しうる。これにより、発熱体を発熱体把持部へ挿通することで端子金具の組付けを行う際に、発熱体の端縁が発熱体把持部の端縁部に引っ掛かりにくくなる。これにより、端子金具への発熱体の組付けを容易に行うことができ、ひいては酸素センサの製造能率を高めることができる。
【0215】
上記酸素センサの第一及び第二の構成においては、筒状の発熱体把持部に、軸方向における一方の端縁から他方の端縁に至るスリットを形成でき、上記切欠き部は、発熱体把持部の該スリットの両側部分を切り欠くことにより形成することができる。上記スリットの形成により、発熱体の挿通に伴い半径方向外向きに発熱体把持部を容易に弾性弾性変形させることができる。また、切欠き部は、発熱体把持部の該スリットの両側部分を、該スリットの中間位置から一方の縁に向けてこれを斜めに切り欠くことによりテーパ状に形成することができる。
【0216】
また、上記構成の発熱体把持部を有する端子金具は、次の構成とすることにより容易に製造できる。すなわち、該端子金具は、内部電極接続部となるべき第一の板状部と、発熱体把持部となるべき第二の板状部とが長さ方向において互いに隣接するとともに、各々その幅方向中間部において連結部により互いに連結された金属板部材により形成されるものとする。第一の板状部は、その幅方向両側部分を筒状に曲げ加工することにより内部電極接続部とする。同じく第二の板状部は、その幅方向両側部分を筒状に曲げ加工することにより発熱体把持部とする。ここで、上記幅方向両縁部分は、曲げ加工により互いに対向して上記スリットを形成することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例としての酸素センサの縦断面図。
【図2】図1の、発熱部と酸素検知素子との接触部付近を拡大して示す断面図。
【図3】図1の要部を拡大して示す断面図。
【図4】フィルタアセンブリの正面部分断面図。
【図5】フィルタアセンブリの組立て工程説明図。
【図6】そのかしめ方法の説明図。
【図7】フィルタアセンブリと防護カバーとの間のかしめ部の平面断面図及びその部分拡大図。
【図8】同じくその部分拡大縦断面図。
【図9】防護カバーの前端側を延ばした構成の縦断面図。
【図10】金属弾性部材の一例を示す図。
【図11】アセンブリ連結かしめ部の拡大図及びそのB−B及びC−C断面図。
【図12】アセンブリ連結かしめ部における主かしめ部と補助かしめ部の作用説明図。
【図13】回転阻止部の変形例を示す平面断面図。
【図14】図1の酸素センサの組立工程説明図。
【図15】かしめ装置の概念図。
【図16】その要部を示す平面模式図。
【図17】同じく側面断面模式図。
【図18】セラミックセパレータの説明図。
【図19】セラミックセパレータをいくつかの変形例とともに示す斜視図。
【図20】図19(c)のセラミックセパレータを用いた酸素センサの要部を示す縦断面図。
【図21】セラミックセパレータにおける発熱体端部収容孔とセパレータ側リード線挿通孔の位置関係を示す説明図。
【図22】弾性シール部材の説明図。
【図23】弾性シール部材をいくつかの変形例とともに示す斜視図。
【図24】図23(b)の弾性シール部材を用いた酸素センサの要部を示す縦断面図。
【図25】図23(c)の弾性シール部材を用いた酸素センサの要部を示す縦断面図。
【図26】図1の端子金具を単体状態で示す図。
【図27】図1の発熱体に端子金具を組み付けたアッセンブリを示す図。
【図28】図2の要部を概念化して示す部分断面図及び比較例の同様な部分断面図。
【図29】図1の発熱部の一例を示す図。
【図30】図1の酸素センサの作用の一部を参照例と比較して説明する概念図。
【図31】図1の酸素センサの第一の変形例を示す縦断面図。
【図32】同じく第二の変形例を示す縦断面図。
【図33】図32の発熱部近傍を概念化して示す部分断面図。
【図34】図1の酸素センサの第三の変形例を示す縦断面図。
【図35】図34の端子金具を単体状態で示す図。
【図36】図35の端子金具を製造するための板状金属部材の一例を示す図。
【図37】図1の酸素センサの第四の変形例を示す縦断面図。
【図38】図37の端子金具を単体状態で示す図。
【図39】図37の端子金具の作用を誇張して示す図。
【図40】図1の酸素センサの第五の変形例を示す縦断面図。
【図41】図1の酸素センサの第六の変形例を示す縦断面図。
【図42】緩衝支持部をばね部として形成した例を示す縦断面図。
【図43】図42のばね部の製造工程説明図。
【図44】緩衝支持部を低硬度部として形成した例を示す縦断面図。
【図45】保持フィルタ保持部をフィルタ保持部の段部にまたがるように形成した例を示す縦断面図。
【符号の説明】
1 酸素センサ
2 酸素検知素子
2a 中空部内壁面
3 発熱体
9 主体金具
10 ケーシング
14 主筒
14a 薄内部
16 フィルタアセンブリ(カバー部材、気体導入構造部)
18 セラミックセパレータ
20,21,28,29 リード線
27,27a,27b 発熱体把持部
30 連結部
42 発熱部
43 外層セラミック部
50 位置決め用突出部
51 フィルタ保持部
52 気体導入孔
53 フィルタ
54 補助フィルタ保持部
55 補助気体導入孔
56,57 フィルタかしめ部
58 隙間
59 凸状部
60 段付き部
61 第一部分
62 第二部分
63 凹状部
64 防護カバー
65 気体滞溜空間
66,67 かしめ部(カバー接合部)
68 外部連通部
69 溝部
70 隙間
71 前方側開口部
72 セパレータ側リード線挿通孔(リード線挿通孔)
73 セパレータ側支持部(フランジ部)
74 金属弾性部材
75 アセンブリ連結かしめ部
76 主かしめ部
77 補助かしめ部(回転阻止部)
84 連結部
90 緩衝支持部
91 シール側リード線挿通孔
92 隙間
93 気通用連通部
94 気通用溝部
95 気通用貫通孔
96 隙間規定突出部
97 気通用連通部
98 隙間
99 フランジ部
100 発熱体挿入ガイド部
101 スリット
102 発熱体端部収容孔

Claims (8)

  1. 軸状をなす酸素検知素子と、
    前記酸素検知素子を収容し、外部に面する主筒を含む筒状のケーシングと、
    そのケーシングに対し同軸的に設けられるとともに、該ケーシングの後端部に形成されたケーシング側支持部に当接することによりこれに支持され、前記酸素検知素子からの各リード線がそれぞれ挿通される複数のリード線挿通孔が軸方向に貫通して形成されたセラミックセパレータとを備え、
    前記ケーシング側支持部は、前記ケーシングの本体部分と一体化され、該本体部分よりも低硬度で、且つ前記ケーシングの軸方向において、該ケーシングの本体部分よりも弾性変形が容易な緩衝支持部とされており、
    さらに、前記セラミックセパレータを前記緩衝支持部に対して軸方向において相対的に押し付けることにより該緩衝支持部をその押し付け方向に圧縮変形させた状態で、該セラミックセパレータを前記ケーシングに対して固定するセパレータ固定手段が設けられていることを特徴とする酸素センサ。
  2. 前記緩衝支持部は、前記本体部分と一体化されたばね部である請求項1記載の酸素センサ。
  3. 前記ばね部は、前記ケーシングの開口端縁部を断面半径方向に1ないし複数回曲げ返すことにより形成されている請求項2記載の酸素センサ。
  4. 前記ばね部は、前記ケーシングの開口端縁部に薄肉部を形成し、その薄肉部を断面半径方向において内側に1回曲げ返し、その曲げ返された薄肉部の先端側をさらに外向きに1回曲げ返すことにより形成されている請求項3記載の酸素センサ。
  5. 前記本体部分のビッカース硬度Hvhが320以上である請求項記載の酸素センサ。
  6. 前記緩衝支持部のビッカース硬度をHvs、前記本体部分のビッカース硬度をHvhとして、Hvh−Hvsが60以上の範囲で調整されている請求項記載の酸素センサ。
  7. 前記セラミックセパレータは、その外周面から突出するように前記セパレータ側支持部が形成されており、かつ軸方向において前方側部分が前記ケーシングの端部内側収容されるとともに、前記ケーシングの開口端面部に前記ケーシング側支持部としての前記緩衝支持部が形成され、これに前記セパレータ側支持部が当接している請求項1ないしのいずれかに記載の酸素センサ。
  8. 前記ケーシングと同軸的に設けられ、前記酸素検知素子からのリード線が自身の後方外側へ延びることを許容しつつ前記ケーシングに対し後方側から連結される筒状に形成されるとともに、その内周面の軸方向中間位置に前記緩衝支持部とは反対側から前記セパレータ側支持部に対し当接するカバー側支持部が形成されたカバー部材が設けられ、
    そのカバー部材は、前記緩衝支持部を圧縮変形させた状態で前記ケーシングに対し結合されることにより、前記セパレータ固定手段を形成している請求項記載の酸素センサ。
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