JPH1164326A - 高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法 - Google Patents
高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法Info
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- JPH1164326A JPH1164326A JP9228046A JP22804697A JPH1164326A JP H1164326 A JPH1164326 A JP H1164326A JP 9228046 A JP9228046 A JP 9228046A JP 22804697 A JP22804697 A JP 22804697A JP H1164326 A JPH1164326 A JP H1164326A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】大掛かりな試験装置を用いることなく、実機と
同じクリープ損傷形態の損傷材を簡易な方法で作製し、
その損傷材よりクリープ損傷を精度良く評価できる検定
曲線を作成し、それに基づいて溶接熱影響部細粒域のク
リープ損傷を評価る信頼性の高い高Crフェライト鋼溶
接部のクリープ損傷評価方法を提供する。 【解決手段】(1)溶接熱影響部細粒域の再現材を作製
する過程と、(2)再現材を加工して、2箇所以上の位
置に複数の切欠き部を入れたクリープ破断試験片を作製
する過程と、(3)単軸荷重でのクリープ破断試験によ
り破断部以外の各切欠き底のクリープ損傷率を算出する
過程と、(4)クリープ破断部分および破断部分以外の
切欠き底断面のミクロ組織の状態(粒界キャビティ生成
量等)とクリープ損傷率の関係を求め、それからクリー
プ損傷評価用の検定曲線を作成し、それに基づいて高C
rフェライト鋼溶接部のクリープ損傷の評価を行う。
同じクリープ損傷形態の損傷材を簡易な方法で作製し、
その損傷材よりクリープ損傷を精度良く評価できる検定
曲線を作成し、それに基づいて溶接熱影響部細粒域のク
リープ損傷を評価る信頼性の高い高Crフェライト鋼溶
接部のクリープ損傷評価方法を提供する。 【解決手段】(1)溶接熱影響部細粒域の再現材を作製
する過程と、(2)再現材を加工して、2箇所以上の位
置に複数の切欠き部を入れたクリープ破断試験片を作製
する過程と、(3)単軸荷重でのクリープ破断試験によ
り破断部以外の各切欠き底のクリープ損傷率を算出する
過程と、(4)クリープ破断部分および破断部分以外の
切欠き底断面のミクロ組織の状態(粒界キャビティ生成
量等)とクリープ損傷率の関係を求め、それからクリー
プ損傷評価用の検定曲線を作成し、それに基づいて高C
rフェライト鋼溶接部のクリープ損傷の評価を行う。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボイラ等の高温高
圧部位に使用されるマルテンサイト組織の高Crフェラ
イト鋼の溶接熱影響部のクリープ損傷を評価する方法に
係り、特に実機と同じ損傷形態の損傷材を簡便な方法で
作製し、この損傷材からクリープ損傷を評価するための
検定曲線を作成し、この検定曲線を用いて精度良くクリ
ープ損傷を評価する信頼性の高いクリープ損傷評価方法
に関する。
圧部位に使用されるマルテンサイト組織の高Crフェラ
イト鋼の溶接熱影響部のクリープ損傷を評価する方法に
係り、特に実機と同じ損傷形態の損傷材を簡便な方法で
作製し、この損傷材からクリープ損傷を評価するための
検定曲線を作成し、この検定曲線を用いて精度良くクリ
ープ損傷を評価する信頼性の高いクリープ損傷評価方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電プラントや化学プラント等の高
温・高圧下で長時間使用される機器では、運転中に使用
材料がクリープ、疲労あるいは時効損傷を受け、材質が
劣化することはよく知られている。このような材質劣化
は使用材料のメタル温度、作用する応力および使用時間
によって支配されるものであり、火力発電用ボイラで
は、これらの支配因子を考慮し、通常の場合、10万時
間程度の寿命を持つように設計されている。しかし、近
年、設計寿命を超えて運転されているボイラも多くなっ
ており、また、運転時間が10万時間以内であっても高
温の燃焼ガスの偏流等によるメタル温度の上昇や、材料
中の偏析等に起因する異常な材質劣化が原因して材料が
破損する事故も生じている。このような背景から、材料
の余寿命を的確に予測し、部分的な取替えや補修を計画
的に行うことによって、プラントとしての寿命を延長す
るための技術の開発が重要となっている。特に、長時間
使用された高温機器ではクリープ損傷が進行しており、
クリープ損傷に対する評価が重要な課題となっている。
従来の使用材料は、Cr含有量が2.25%以下のフェ
ライト系耐熱鋼が主体であったが、最近では高温強度を
改善したCr含有量が9%以上の高Crフェライト鋼が
使用されており、これらの材料についても余寿命評価方
法を確立する必要性が生じている。従来のフェライト鋼
は、フェライト・パーライト組織またはフェライト・ベ
ーナイト組織であるのに対し、高Crフェライト鋼では
焼戻しマルテンサイト単相組織となるものがほとんどで
ある。この焼戻しマルテンサイト単相組織の高Crフェ
ライト鋼の溶接部では、溶接熱によりAC1変態点とAC3
変態点との間で加熱された細粒のミクロ組織を有する溶
接熱影響部(以下、HAZと言う)である軟質の細粒域
が形成されクリープ破断強度が低下するという問題が生
じる。高温高圧部位に、この高Crフェライト鋼が使用
される場合にはHAZ細粒域が最弱点部位となるため、
この部分のクリープ損傷評価方法が重要な課題となる。
クリープ損傷を評価する方法には、破壊法、非破壊法お
よび応力解析法があるが、実機部材そのものを評価し、
しかも簡便であることから非破壊法により損傷を評価す
ることが多い。非破壊法の中でも、実機表面の金属組織
をレプリカ膜に写し取り、粒界キャビティ(窪み)の生
成量や結晶粒の変形等の金属組織の変化により損傷の度
合を評価するレプリカ法が主流となっている。このレプ
リカ法により、クリープ損傷を評価するための検定曲線
(マスタカーブ)を作成するためには、その材料のクリ
ープ破断および中断材(クリープ破断まで試験をせず、
その途中で試験を中断してクリープ損傷率を求める材
料)を作製し、その材料の金属組織等の変化を調べ、ク
リープ損傷率との関係を求める必要がある。例えば、あ
る条件でクリープ破断試験を行った場合、1000時間
で破断したとすると、破断まで試験した材料は「破断
材」となる。これに対し、同じ条件でクリープ破断試験
を行い、破断前に試験を中断すると「中断材」となる。
いま、800時間で試験を中断した場合には、クリープ
損傷率は80%(クリープ損傷率=試験時間/破断時
間)となり、これら試験片の金属組織等を調査すること
により、クリープ損傷率との関係を明らかにすることが
できる。この場合のクリープ破断および中断試験には、
平滑な丸棒試験片が用いられるが、高Crフェライト鋼
の溶接継手のクリープ破断試験を単軸で行うと、上記の
最弱点部位であるHAZ細粒域で破断する。しかし、通
常は、破断時の絞りが大きく、その部位のミクロ組織を
調べると粒界キャビティはほとんど観察されない。これ
に対し、ボイラの伝熱管や配管の場合では細かいキャビ
ティがHAZ細粒域に発生し、例えば、図6に示す亀裂
のタイプ4(熱影響部22の細粒域の亀裂)の損傷形態
で現われることがよく知られている。なお、図6におい
て、亀裂のタイプ1は溶接金属21の内部の亀裂であ
り、亀裂のタイプ2は溶接金属21から熱影響部22ま
で進展した亀裂であり、亀裂のタイプ3は熱影響部22
の粗粒域の亀裂である。ボイラの伝熱管や配管として用
いられている2.25Cr−1Mo鋼では、単軸で試験
しても粒界キャビティが生じる。これはクリープ損傷機
構の違いであって、2.25Cr−1Mo鋼では多少の
加速試験(通常、温度または応力を加速して試験する方
法)を行っても実機と同様のクリープ損傷機構となるた
め、粒界キャビティが発生する。高Crフェライト鋼で
は、これまでの試験結果によると、実機と同等の低応力
状態か、もしくは3軸応力状態〔図1(d)参照〕でな
ければ粒界キャビティは発生することなく、大きく絞ら
れて破断する。同じ高Crフェライト鋼の溶接部であり
ながら、ボイラの伝熱管や配管等の実機材と、単軸試験
による平滑な丸棒試験片で損傷形態が異なるのは、応力
状態の差異によるものであると考えられる。すなわち、
実機では3軸応力状態になるため変形が拘束され、結晶
粒界の滑りが主体でクリープ損傷が進行し、結晶粒界に
微細なキャビティが発生する。これに対し、平滑な丸棒
試験片では変形が拘束されないために、非常に低応力の
試験を除いて絞りが大きくなる。この場合には、結晶粒
界の滑りは少なくなり、結晶粒内の変形が主体となった
クリープ損傷が進行するので粒界キャビティはほとんど
発生しない。したがって、実験室的に実機と同様の損傷
形態を作るためには3軸応力状態で試験をすれば良いこ
とになるが、内圧クリープ試験〔伝熱管のままで内圧
(蒸気)をかけてクリープ破断試験する方法で、試験片
は300mm長さが標準。〕や、多軸のクリープ試験
〔例えば、試験片に2軸または3軸の応力が負荷できる
試験方法(内圧クリープも多軸試験の一種)、また、十
字試験片による2方向の引張り、丸棒試験片や内圧試験
片での引張り−ねじり等の方法。〕を行うには大掛かり
な試験装置が必要となり、また検定曲線作成のために多
くの試験片を評価する必要があって、多大の労力、時間
およびコストがかかるという問題があった。
温・高圧下で長時間使用される機器では、運転中に使用
材料がクリープ、疲労あるいは時効損傷を受け、材質が
劣化することはよく知られている。このような材質劣化
は使用材料のメタル温度、作用する応力および使用時間
によって支配されるものであり、火力発電用ボイラで
は、これらの支配因子を考慮し、通常の場合、10万時
間程度の寿命を持つように設計されている。しかし、近
年、設計寿命を超えて運転されているボイラも多くなっ
ており、また、運転時間が10万時間以内であっても高
温の燃焼ガスの偏流等によるメタル温度の上昇や、材料
中の偏析等に起因する異常な材質劣化が原因して材料が
破損する事故も生じている。このような背景から、材料
の余寿命を的確に予測し、部分的な取替えや補修を計画
的に行うことによって、プラントとしての寿命を延長す
るための技術の開発が重要となっている。特に、長時間
使用された高温機器ではクリープ損傷が進行しており、
クリープ損傷に対する評価が重要な課題となっている。
従来の使用材料は、Cr含有量が2.25%以下のフェ
ライト系耐熱鋼が主体であったが、最近では高温強度を
改善したCr含有量が9%以上の高Crフェライト鋼が
使用されており、これらの材料についても余寿命評価方
法を確立する必要性が生じている。従来のフェライト鋼
は、フェライト・パーライト組織またはフェライト・ベ
ーナイト組織であるのに対し、高Crフェライト鋼では
焼戻しマルテンサイト単相組織となるものがほとんどで
ある。この焼戻しマルテンサイト単相組織の高Crフェ
ライト鋼の溶接部では、溶接熱によりAC1変態点とAC3
変態点との間で加熱された細粒のミクロ組織を有する溶
接熱影響部(以下、HAZと言う)である軟質の細粒域
が形成されクリープ破断強度が低下するという問題が生
じる。高温高圧部位に、この高Crフェライト鋼が使用
される場合にはHAZ細粒域が最弱点部位となるため、
この部分のクリープ損傷評価方法が重要な課題となる。
クリープ損傷を評価する方法には、破壊法、非破壊法お
よび応力解析法があるが、実機部材そのものを評価し、
しかも簡便であることから非破壊法により損傷を評価す
ることが多い。非破壊法の中でも、実機表面の金属組織
をレプリカ膜に写し取り、粒界キャビティ(窪み)の生
成量や結晶粒の変形等の金属組織の変化により損傷の度
合を評価するレプリカ法が主流となっている。このレプ
リカ法により、クリープ損傷を評価するための検定曲線
(マスタカーブ)を作成するためには、その材料のクリ
ープ破断および中断材(クリープ破断まで試験をせず、
その途中で試験を中断してクリープ損傷率を求める材
料)を作製し、その材料の金属組織等の変化を調べ、ク
リープ損傷率との関係を求める必要がある。例えば、あ
る条件でクリープ破断試験を行った場合、1000時間
で破断したとすると、破断まで試験した材料は「破断
材」となる。これに対し、同じ条件でクリープ破断試験
を行い、破断前に試験を中断すると「中断材」となる。
いま、800時間で試験を中断した場合には、クリープ
損傷率は80%(クリープ損傷率=試験時間/破断時
間)となり、これら試験片の金属組織等を調査すること
により、クリープ損傷率との関係を明らかにすることが
できる。この場合のクリープ破断および中断試験には、
平滑な丸棒試験片が用いられるが、高Crフェライト鋼
の溶接継手のクリープ破断試験を単軸で行うと、上記の
最弱点部位であるHAZ細粒域で破断する。しかし、通
常は、破断時の絞りが大きく、その部位のミクロ組織を
調べると粒界キャビティはほとんど観察されない。これ
に対し、ボイラの伝熱管や配管の場合では細かいキャビ
ティがHAZ細粒域に発生し、例えば、図6に示す亀裂
のタイプ4(熱影響部22の細粒域の亀裂)の損傷形態
で現われることがよく知られている。なお、図6におい
て、亀裂のタイプ1は溶接金属21の内部の亀裂であ
り、亀裂のタイプ2は溶接金属21から熱影響部22ま
で進展した亀裂であり、亀裂のタイプ3は熱影響部22
の粗粒域の亀裂である。ボイラの伝熱管や配管として用
いられている2.25Cr−1Mo鋼では、単軸で試験
しても粒界キャビティが生じる。これはクリープ損傷機
構の違いであって、2.25Cr−1Mo鋼では多少の
加速試験(通常、温度または応力を加速して試験する方
法)を行っても実機と同様のクリープ損傷機構となるた
め、粒界キャビティが発生する。高Crフェライト鋼で
は、これまでの試験結果によると、実機と同等の低応力
状態か、もしくは3軸応力状態〔図1(d)参照〕でな
ければ粒界キャビティは発生することなく、大きく絞ら
れて破断する。同じ高Crフェライト鋼の溶接部であり
ながら、ボイラの伝熱管や配管等の実機材と、単軸試験
による平滑な丸棒試験片で損傷形態が異なるのは、応力
状態の差異によるものであると考えられる。すなわち、
実機では3軸応力状態になるため変形が拘束され、結晶
粒界の滑りが主体でクリープ損傷が進行し、結晶粒界に
微細なキャビティが発生する。これに対し、平滑な丸棒
試験片では変形が拘束されないために、非常に低応力の
試験を除いて絞りが大きくなる。この場合には、結晶粒
界の滑りは少なくなり、結晶粒内の変形が主体となった
クリープ損傷が進行するので粒界キャビティはほとんど
発生しない。したがって、実験室的に実機と同様の損傷
形態を作るためには3軸応力状態で試験をすれば良いこ
とになるが、内圧クリープ試験〔伝熱管のままで内圧
(蒸気)をかけてクリープ破断試験する方法で、試験片
は300mm長さが標準。〕や、多軸のクリープ試験
〔例えば、試験片に2軸または3軸の応力が負荷できる
試験方法(内圧クリープも多軸試験の一種)、また、十
字試験片による2方向の引張り、丸棒試験片や内圧試験
片での引張り−ねじり等の方法。〕を行うには大掛かり
な試験装置が必要となり、また検定曲線作成のために多
くの試験片を評価する必要があって、多大の労力、時間
およびコストがかかるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、マル
テンサイト単相組織よりなる高Crフェライト鋼の溶接
熱影響部細粒域のクリープ損傷を評価する方法におい
て、大掛かりな試験装置を必要とすることなく、実機と
同じクリープ損傷形態の損傷材を簡便な方法で作製し、
その損傷材のクリープ損傷を精度良く評価できる検定曲
線を作成し、その検定曲線に基づいて、溶接熱影響部細
粒域のクリープ損傷の評価を高精度に行うことができる
高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法を提
供することにある。
テンサイト単相組織よりなる高Crフェライト鋼の溶接
熱影響部細粒域のクリープ損傷を評価する方法におい
て、大掛かりな試験装置を必要とすることなく、実機と
同じクリープ損傷形態の損傷材を簡便な方法で作製し、
その損傷材のクリープ損傷を精度良く評価できる検定曲
線を作成し、その検定曲線に基づいて、溶接熱影響部細
粒域のクリープ損傷の評価を高精度に行うことができる
高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法を提
供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、焼戻しマルテンサイト単相組織からなる高
Crフェライト鋼の溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷
を評価する方法であって、(1)高Crフェライト鋼の
溶接熱影響部細粒域と同等であるミクロ組織と機械的性
質を与える熱サイクルにより、上記溶接熱影響部細粒域
の再現材を作製する過程と、(2)上記再現材を加工し
て、平行部が丸棒で、該平行部の2箇所以上の位置に、
切欠き底の曲率半径が同じで、切欠き底の深さが異なる
複数の切欠き部を設けたクリープ破断試験片を作製する
過程と、(3)上記クリープ破断試験片について、単軸
荷重でのクリープ破断試験を行い、クリープ破断部以外
の各切欠き底のクリープ損傷率を、切欠き底の正味断面
積と上記クリープ破断試験片のクリープ破断データから
算出する過程と、(4)上記クリープ破断試験片のクリ
ープ破断部および該破断部以外の切欠き底の断面部にお
けるミクロ組織の状態と上記クリープ損傷率の関係を求
め、それからクリープ損傷評価用の検定曲線を作成し、
該検定曲線に基づいて、高Crフェライト鋼の溶接熱影
響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程を含む高Cr
フェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法とするもの
である。上記請求項1に記載のように、クリープ破断試
験片(単軸試験片)に、切欠き部を入れることにより、
切欠き底では3軸応力状態を作ることができるので、切
欠き底では変形が拘束され、高Crフェライト鋼溶接熱
影響部細粒域において、実機の配管等と同様に結晶粒界
が滑り細かい粒界キャビティ等を発生するクリープ損傷
材を簡易に作製することができ、大掛かりで高価な試験
装置を必要とすることなく、精度良く、かつ経済的にク
リープ損傷を評価することができる。また、HAZ細粒
域を模擬したHAZ細粒域の再現部に、切欠き深さの異
なる切欠き部を2箇所以上設けることができ、1本のク
リープ試験片で100%損傷材(破断材)の他に、損傷
率の異なる複数の損傷材を高精度に作製することができ
るので、一つの試験片で少なくとも2点以上の複数のク
リープ損傷率に関するデータが得られ、信頼性の高い高
Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法を実現
できる効果がある。また、本発明は請求項2に記載のよ
うに、請求項1において、(4)上記クリープ破断試験
片のクリープ破断部および該破断部以外の切欠き底の断
面部のミクロ組織の観察により粒界キャビティ生成量を
測定し、該キャビティ生成量と上記クリープ損傷率の関
係を求め、それからクリープ損傷評価用の検定曲線を作
成し、該検定曲線に基づいて、高Crフェライト鋼の溶
接熱影響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程を含む
高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法とす
るものである。上記請求項2に記載のように、クリープ
破断試験片のクリープ破断部および該破断部以外の切欠
き底の断面部のミクロ組織の観察により、特に粒界キャ
ビティ生成量を測定して、クリープ損傷率との関係を示
す検定曲線によりクリープ損傷の評価を行うことができ
るので、極めて精度の高い高Crフェライト鋼溶接部の
クリープ損傷評価を行える効果がある。また、本発明は
請求項3に記載のように、請求項1または請求項2にお
いて、溶接熱影響部細粒域と同等のミクロ組織と機械的
性質を与える熱サイクルは、最高加熱温度をAC1変態点
とAC3変態点との間とする高Crフェライト鋼溶接部の
クリープ損傷評価方法とするものである。上記請求項3
に記載のように、最高加熱温度を高Crフェライト鋼の
AC1変態点とAC3変態点との間とするので、実機と同等
の高Crフェライト鋼溶接熱影響部細粒域を再現するこ
とができ、精度の高い高Crフェライト鋼溶接部のクリ
ープ損傷評価を行える効果がある。また、本発明は請求
項4に記載のように、請求項1または請求項2におい
て、複数箇所設けた切欠き部と切欠き部との間隔を5m
m以上とする高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷
評価方法とするものである。上記請求項4に記載のよう
に、隣接する切欠き部との間隔を5mm以上離している
ので、切欠きによる応力場の乱れが互いに干渉すること
がないので、正確なクリープ損傷データが得られる効果
がある。また、本発明は請求項5に記載のように、請求
項1または請求項2において、切欠き底の曲率半径を
0.5〜2mmの範囲内とする高Crフェライト鋼溶接
部のクリープ損傷評価方法とするものである。上記請求
項5に記載のように、切欠き底の曲率半径を0.5〜2
mmの範囲内とすることにより、切欠き底での極端な応
力の集中が緩和でき、切欠き効果による強度の低下がな
く、また3軸応力状態を有効に保つことができる効果が
ある。
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、焼戻しマルテンサイト単相組織からなる高
Crフェライト鋼の溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷
を評価する方法であって、(1)高Crフェライト鋼の
溶接熱影響部細粒域と同等であるミクロ組織と機械的性
質を与える熱サイクルにより、上記溶接熱影響部細粒域
の再現材を作製する過程と、(2)上記再現材を加工し
て、平行部が丸棒で、該平行部の2箇所以上の位置に、
切欠き底の曲率半径が同じで、切欠き底の深さが異なる
複数の切欠き部を設けたクリープ破断試験片を作製する
過程と、(3)上記クリープ破断試験片について、単軸
荷重でのクリープ破断試験を行い、クリープ破断部以外
の各切欠き底のクリープ損傷率を、切欠き底の正味断面
積と上記クリープ破断試験片のクリープ破断データから
算出する過程と、(4)上記クリープ破断試験片のクリ
ープ破断部および該破断部以外の切欠き底の断面部にお
けるミクロ組織の状態と上記クリープ損傷率の関係を求
め、それからクリープ損傷評価用の検定曲線を作成し、
該検定曲線に基づいて、高Crフェライト鋼の溶接熱影
響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程を含む高Cr
フェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法とするもの
である。上記請求項1に記載のように、クリープ破断試
験片(単軸試験片)に、切欠き部を入れることにより、
切欠き底では3軸応力状態を作ることができるので、切
欠き底では変形が拘束され、高Crフェライト鋼溶接熱
影響部細粒域において、実機の配管等と同様に結晶粒界
が滑り細かい粒界キャビティ等を発生するクリープ損傷
材を簡易に作製することができ、大掛かりで高価な試験
装置を必要とすることなく、精度良く、かつ経済的にク
リープ損傷を評価することができる。また、HAZ細粒
域を模擬したHAZ細粒域の再現部に、切欠き深さの異
なる切欠き部を2箇所以上設けることができ、1本のク
リープ試験片で100%損傷材(破断材)の他に、損傷
率の異なる複数の損傷材を高精度に作製することができ
るので、一つの試験片で少なくとも2点以上の複数のク
リープ損傷率に関するデータが得られ、信頼性の高い高
Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法を実現
できる効果がある。また、本発明は請求項2に記載のよ
うに、請求項1において、(4)上記クリープ破断試験
片のクリープ破断部および該破断部以外の切欠き底の断
面部のミクロ組織の観察により粒界キャビティ生成量を
測定し、該キャビティ生成量と上記クリープ損傷率の関
係を求め、それからクリープ損傷評価用の検定曲線を作
成し、該検定曲線に基づいて、高Crフェライト鋼の溶
接熱影響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程を含む
高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法とす
るものである。上記請求項2に記載のように、クリープ
破断試験片のクリープ破断部および該破断部以外の切欠
き底の断面部のミクロ組織の観察により、特に粒界キャ
ビティ生成量を測定して、クリープ損傷率との関係を示
す検定曲線によりクリープ損傷の評価を行うことができ
るので、極めて精度の高い高Crフェライト鋼溶接部の
クリープ損傷評価を行える効果がある。また、本発明は
請求項3に記載のように、請求項1または請求項2にお
いて、溶接熱影響部細粒域と同等のミクロ組織と機械的
性質を与える熱サイクルは、最高加熱温度をAC1変態点
とAC3変態点との間とする高Crフェライト鋼溶接部の
クリープ損傷評価方法とするものである。上記請求項3
に記載のように、最高加熱温度を高Crフェライト鋼の
AC1変態点とAC3変態点との間とするので、実機と同等
の高Crフェライト鋼溶接熱影響部細粒域を再現するこ
とができ、精度の高い高Crフェライト鋼溶接部のクリ
ープ損傷評価を行える効果がある。また、本発明は請求
項4に記載のように、請求項1または請求項2におい
て、複数箇所設けた切欠き部と切欠き部との間隔を5m
m以上とする高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷
評価方法とするものである。上記請求項4に記載のよう
に、隣接する切欠き部との間隔を5mm以上離している
ので、切欠きによる応力場の乱れが互いに干渉すること
がないので、正確なクリープ損傷データが得られる効果
がある。また、本発明は請求項5に記載のように、請求
項1または請求項2において、切欠き底の曲率半径を
0.5〜2mmの範囲内とする高Crフェライト鋼溶接
部のクリープ損傷評価方法とするものである。上記請求
項5に記載のように、切欠き底の曲率半径を0.5〜2
mmの範囲内とすることにより、切欠き底での極端な応
力の集中が緩和でき、切欠き効果による強度の低下がな
く、また3軸応力状態を有効に保つことができる効果が
ある。
【0005】本発明の高Crフェライト鋼の溶接熱影響
部細粒域のクリープ損傷を評価するための検定曲線の作
成方法において、まず、高Crフェライト鋼のHAZ
(溶接熱影響部)細粒域を模擬した再現材を作製する。
この場合の上記再現材の加熱温度は、その材料のAC1変
態点とAC3変態点との間の温度に設定する。次に、図1
(a)に示すように、一般的に使用されている丸棒のク
リープ破断試験片1を作製し、そのクリープ破断試験片
1の丸棒の平行部に少なくとも2箇所以上に、切欠き底
11の曲率半径が一定で、切欠き深さ14の異なる切欠
き底径13がd1(5.0mm)、d2(5.1mm)、
d3(5.3mm)、d4(5.5mm)である切欠き部
10を設ける。上記のクリープ破断試験片1を、単軸荷
重でクリープ破断試験を行い、破断位置の切欠き部10
のクリープ損傷率を100%、その他の切欠き部10の
損傷率を、同じ材料の溶接継手クリープ破断データと、
切欠き底の正味断面積15〔図1(b)、(c)〕から
求める。次に、切欠き底近傍のミクロ組織から発生した
キャビティ個数(個/mm2)を調べ、クリープ損傷率
(%)を算出して、このキャビティ個数(個/mm2)
とクリープ損傷率(%)の関係からクリープ損傷を評価
するための検定曲線を作成する。図1(d)に示すよう
に、クリープ破断試験片(単軸試験片)1に、切欠き部
10を入れることにより、切欠き底11では3軸応力状
態17を作ることができる〔図1(d)〕。すなわち、
切欠き部10により引張り軸方向の応力の流れ16が乱
され、他の方向の応力成分も発生し、切欠き底11では
3軸応力状態17となる。したがって、切欠き底11で
は変形が拘束され、実機の配管等と同様に結晶粒界が滑
り細かいキャビティが発生する。また、HAZ細粒域を
模擬したHAZ細粒域の再現部に、切欠き深さ14の異
なる切欠き部10を2箇所以上設けることにより、1本
の試験片で100%損傷材の他に、損傷率の異なる損傷
材を作製することができ、1本のクリープ破断試験片1
で少なくとも2点以上のクリープ損傷率に関するデータ
を得ることができる。
部細粒域のクリープ損傷を評価するための検定曲線の作
成方法において、まず、高Crフェライト鋼のHAZ
(溶接熱影響部)細粒域を模擬した再現材を作製する。
この場合の上記再現材の加熱温度は、その材料のAC1変
態点とAC3変態点との間の温度に設定する。次に、図1
(a)に示すように、一般的に使用されている丸棒のク
リープ破断試験片1を作製し、そのクリープ破断試験片
1の丸棒の平行部に少なくとも2箇所以上に、切欠き底
11の曲率半径が一定で、切欠き深さ14の異なる切欠
き底径13がd1(5.0mm)、d2(5.1mm)、
d3(5.3mm)、d4(5.5mm)である切欠き部
10を設ける。上記のクリープ破断試験片1を、単軸荷
重でクリープ破断試験を行い、破断位置の切欠き部10
のクリープ損傷率を100%、その他の切欠き部10の
損傷率を、同じ材料の溶接継手クリープ破断データと、
切欠き底の正味断面積15〔図1(b)、(c)〕から
求める。次に、切欠き底近傍のミクロ組織から発生した
キャビティ個数(個/mm2)を調べ、クリープ損傷率
(%)を算出して、このキャビティ個数(個/mm2)
とクリープ損傷率(%)の関係からクリープ損傷を評価
するための検定曲線を作成する。図1(d)に示すよう
に、クリープ破断試験片(単軸試験片)1に、切欠き部
10を入れることにより、切欠き底11では3軸応力状
態17を作ることができる〔図1(d)〕。すなわち、
切欠き部10により引張り軸方向の応力の流れ16が乱
され、他の方向の応力成分も発生し、切欠き底11では
3軸応力状態17となる。したがって、切欠き底11で
は変形が拘束され、実機の配管等と同様に結晶粒界が滑
り細かいキャビティが発生する。また、HAZ細粒域を
模擬したHAZ細粒域の再現部に、切欠き深さ14の異
なる切欠き部10を2箇所以上設けることにより、1本
の試験片で100%損傷材の他に、損傷率の異なる損傷
材を作製することができ、1本のクリープ破断試験片1
で少なくとも2点以上のクリープ損傷率に関するデータ
を得ることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、図
を用いてさらに詳細に説明する。供試材は、マルテンサ
イト単相組織の高Crフェライト鋼の中でも最も一般的
で、火力技術基準においても規格化されている、Mod.9
Cr−1Mo鋼配管用材料(火 STPA28)を用い
た。この材料は、重量%で、9%Cr−1%Moに、N
b、Vを添加して高温強度を高めており、600℃での
許容応力は、ステンレス鋼SUS304と同等以上であ
る。この材料から、図2(a)に示すような形状のサン
プルを採取し、HAZ細粒域を模擬したHAZ再現材を
作製し、HAZ再現試験片2aとした。本供試材のAC1
変態点は830℃、AC3変態点は920℃であり、図3
に示すように、最高加熱温度が880℃となるような熱
サイクルを高周波加熱装置により与えた。HAZ再現試
験片2aの平行部に3箇所の熱電対3を設け、熱サイク
ル時における温度測定の結果、温度のばらつきは±5℃
以内であった。上記の条件で作製したHAZ再現試験片
2aを、実際の溶接条件と同等の、740℃×1時間の
条件で後熱処理を施した後、図1(a)に示すような、
クリープ破断試験片1を作製した。この試験片1の平行
部は、外径6mm、長さ30mmで、この平行部に4箇
所の切欠き部を設けた。切欠き底径13は、d1で5m
m、d2で5.1mm、d3で5.3mm、d4で5.5
mmとした。このような試験片1を用いて、切欠き底径
13のd1での正味断面応力が59MPa、温度650
℃でクリープ破断試験を行った。切欠き底径d1での破
断時間は1120時間であり、上記HAZ再現試験片の
材料と同じチャージの材料を用いて試験した溶接継手ク
リープ破断試験結果から、各切欠き部でのクリープ損傷
率(クリープ試験時間/クリープ破断時間)を算出し
た。なお、具体的な切欠き部でのクリープ損傷率の算出
は、以下の手順で行った。 (1)対象とする材料の溶接継手クリープ破断試験片か
らクリープ破断データの回帰曲線を求める〔図4
(a)〕。 (2)次に、上記(1)の回帰曲線を、切欠き付きHA
Z再現試験片のクリープ破断結果まで平行移動させる
〔図4(b)〕。この溶接継手クリープ破断データの回
帰曲線をHAZ再現試験片のクリープ破断データまで平
行移動するのは、溶接継手の材料とHAZ再現材料とは
同じチャージの材料を用いるので、破断データのばらつ
きは小さくなるものと考え、クリープ破断カーブの傾き
は同等になるものと仮定した。 (3)次いで、クリープ破断部(d1=5.0mm)以
外の切欠き底径〔d2=5.1、d3=5.3、d4=
5.5mm〕から各切欠き部における応力(=荷重/切
欠き底の正味断面積)を算出し、上記HAZ再現試験片
のクリープ破断データまで平行移動させた回帰曲線によ
り予想のクリープ破断時間を算出した〔図4(c)〕。 (4)次に、クリープ破断時間〔d1=5.0mmにお
ける破断時間t1は、1120時間〕と予想のクリープ
破断時間〔図4(c)における各切欠き部での予想の破
断時間t2(d2)、t3(d3)、t4(d4)で、
表1からt2=1308時間、t3=1713時間、t
4=2134時間〕との関係からクリープ損傷率を算出
する。すなわち、各切欠き部でのクリープ損傷率(%)
=(t1/ti)は、d1では1120/1120=1
00%、d2では1120/1308=86%、d3で
は1120/1713=65%、d4では1120/2
134=52%となる。以上の結果を表1にまとめて示
す。クリープ損傷率(%)は、切欠き底径がd1の部位
で100%(クリープ破断部)、切欠き底径がd2の部
位で86%、d3部位で65%、d4部位で52%とな
った。
を用いてさらに詳細に説明する。供試材は、マルテンサ
イト単相組織の高Crフェライト鋼の中でも最も一般的
で、火力技術基準においても規格化されている、Mod.9
Cr−1Mo鋼配管用材料(火 STPA28)を用い
た。この材料は、重量%で、9%Cr−1%Moに、N
b、Vを添加して高温強度を高めており、600℃での
許容応力は、ステンレス鋼SUS304と同等以上であ
る。この材料から、図2(a)に示すような形状のサン
プルを採取し、HAZ細粒域を模擬したHAZ再現材を
作製し、HAZ再現試験片2aとした。本供試材のAC1
変態点は830℃、AC3変態点は920℃であり、図3
に示すように、最高加熱温度が880℃となるような熱
サイクルを高周波加熱装置により与えた。HAZ再現試
験片2aの平行部に3箇所の熱電対3を設け、熱サイク
ル時における温度測定の結果、温度のばらつきは±5℃
以内であった。上記の条件で作製したHAZ再現試験片
2aを、実際の溶接条件と同等の、740℃×1時間の
条件で後熱処理を施した後、図1(a)に示すような、
クリープ破断試験片1を作製した。この試験片1の平行
部は、外径6mm、長さ30mmで、この平行部に4箇
所の切欠き部を設けた。切欠き底径13は、d1で5m
m、d2で5.1mm、d3で5.3mm、d4で5.5
mmとした。このような試験片1を用いて、切欠き底径
13のd1での正味断面応力が59MPa、温度650
℃でクリープ破断試験を行った。切欠き底径d1での破
断時間は1120時間であり、上記HAZ再現試験片の
材料と同じチャージの材料を用いて試験した溶接継手ク
リープ破断試験結果から、各切欠き部でのクリープ損傷
率(クリープ試験時間/クリープ破断時間)を算出し
た。なお、具体的な切欠き部でのクリープ損傷率の算出
は、以下の手順で行った。 (1)対象とする材料の溶接継手クリープ破断試験片か
らクリープ破断データの回帰曲線を求める〔図4
(a)〕。 (2)次に、上記(1)の回帰曲線を、切欠き付きHA
Z再現試験片のクリープ破断結果まで平行移動させる
〔図4(b)〕。この溶接継手クリープ破断データの回
帰曲線をHAZ再現試験片のクリープ破断データまで平
行移動するのは、溶接継手の材料とHAZ再現材料とは
同じチャージの材料を用いるので、破断データのばらつ
きは小さくなるものと考え、クリープ破断カーブの傾き
は同等になるものと仮定した。 (3)次いで、クリープ破断部(d1=5.0mm)以
外の切欠き底径〔d2=5.1、d3=5.3、d4=
5.5mm〕から各切欠き部における応力(=荷重/切
欠き底の正味断面積)を算出し、上記HAZ再現試験片
のクリープ破断データまで平行移動させた回帰曲線によ
り予想のクリープ破断時間を算出した〔図4(c)〕。 (4)次に、クリープ破断時間〔d1=5.0mmにお
ける破断時間t1は、1120時間〕と予想のクリープ
破断時間〔図4(c)における各切欠き部での予想の破
断時間t2(d2)、t3(d3)、t4(d4)で、
表1からt2=1308時間、t3=1713時間、t
4=2134時間〕との関係からクリープ損傷率を算出
する。すなわち、各切欠き部でのクリープ損傷率(%)
=(t1/ti)は、d1では1120/1120=1
00%、d2では1120/1308=86%、d3で
は1120/1713=65%、d4では1120/2
134=52%となる。以上の結果を表1にまとめて示
す。クリープ損傷率(%)は、切欠き底径がd1の部位
で100%(クリープ破断部)、切欠き底径がd2の部
位で86%、d3部位で65%、d4部位で52%とな
った。
【0007】
【表1】
【0008】次に、切欠き底の断面のミクロ組織を調査
した。その結果、いずれの切欠き底にもキャビティが発
生しており、その割合は、クリープ損傷率が大きくなる
ほど増加の傾向にあった。そこで、単位面積当たりのキ
ャビティ個数(個/mm2)を測定し、クリープ損傷率
(%)との関係を求めた。その結果を図5に示す。図か
ら明らかなように、クリープ損傷率の増加と共に、単位
面積当たりのキャビティ個数が増加していることが分か
る。キャビティの発生状況は、実機と同様の細かいキャ
ビティであり、本実施の形態においては実機の損傷形態
を模擬していることを確認できた。なお、本実施の形態
では、試験片の切欠き底の曲率半径を1mmとしたが、
この曲率半径が小さ過ぎると応力の集中が厳しくなり、
切欠き効果による強度低下を考慮しなければならなくな
る。また、この切欠き底の曲率半径が大き過ぎると、本
発明のクリープ破断試験片の目的である3軸応力状態が
保てなくなるため、本発明の試験片の切欠き底の曲率半
径の範囲を0.5〜2mmに限定した。また、切欠き部
を4箇所に入れたが、隣の切欠き部との距離が短すぎる
と切欠きによる応力場の乱れが互いに干渉するため、少
なくとも5mm以上離す必要がある。本実施の形態にお
ける効果を確認するために、平滑な丸棒試験片を用いて
同条件(650℃×59MPa)でクリープ破断試験を
行った溶接継手の断面を調査した。その結果、切欠き試
験片で観察されたような細かいキャビティは観察され
ず、金属組織中の炭化物や金属間化合物等の介在物の周
りには比較的大きな粒界キャビティが観察されただけで
あった。
した。その結果、いずれの切欠き底にもキャビティが発
生しており、その割合は、クリープ損傷率が大きくなる
ほど増加の傾向にあった。そこで、単位面積当たりのキ
ャビティ個数(個/mm2)を測定し、クリープ損傷率
(%)との関係を求めた。その結果を図5に示す。図か
ら明らかなように、クリープ損傷率の増加と共に、単位
面積当たりのキャビティ個数が増加していることが分か
る。キャビティの発生状況は、実機と同様の細かいキャ
ビティであり、本実施の形態においては実機の損傷形態
を模擬していることを確認できた。なお、本実施の形態
では、試験片の切欠き底の曲率半径を1mmとしたが、
この曲率半径が小さ過ぎると応力の集中が厳しくなり、
切欠き効果による強度低下を考慮しなければならなくな
る。また、この切欠き底の曲率半径が大き過ぎると、本
発明のクリープ破断試験片の目的である3軸応力状態が
保てなくなるため、本発明の試験片の切欠き底の曲率半
径の範囲を0.5〜2mmに限定した。また、切欠き部
を4箇所に入れたが、隣の切欠き部との距離が短すぎる
と切欠きによる応力場の乱れが互いに干渉するため、少
なくとも5mm以上離す必要がある。本実施の形態にお
ける効果を確認するために、平滑な丸棒試験片を用いて
同条件(650℃×59MPa)でクリープ破断試験を
行った溶接継手の断面を調査した。その結果、切欠き試
験片で観察されたような細かいキャビティは観察され
ず、金属組織中の炭化物や金属間化合物等の介在物の周
りには比較的大きな粒界キャビティが観察されただけで
あった。
【0009】
【発明の効果】本発明の高Crフェライト鋼溶接部のク
リープ損傷評価方法によれば、高Crフェライト鋼溶接
熱影響部細粒域において、実機と同様の細かいキャビテ
ィが発生するクリープ損傷材を簡易に作製することがで
き、このクリープ損傷材を用いて作成したクリープ寿命
評価用の検定曲線の信頼性が向上する。また、少量のサ
ンプルで多くのクリープ中断材を作製することができ、
クリープ損傷評価用の検定曲線を経済的に作成できるの
で、信頼性の高い溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷を
容易に行うことが可能となり工業的利用価値は極めて高
い。
リープ損傷評価方法によれば、高Crフェライト鋼溶接
熱影響部細粒域において、実機と同様の細かいキャビテ
ィが発生するクリープ損傷材を簡易に作製することがで
き、このクリープ損傷材を用いて作成したクリープ寿命
評価用の検定曲線の信頼性が向上する。また、少量のサ
ンプルで多くのクリープ中断材を作製することができ、
クリープ損傷評価用の検定曲線を経済的に作成できるの
で、信頼性の高い溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷を
容易に行うことが可能となり工業的利用価値は極めて高
い。
【図1】本発明の実施の形態において例示したクリープ
破断試験片の形状を示す模式図。
破断試験片の形状を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態において例示したHAZ再
現試験片の形状を示す模式図。
現試験片の形状を示す模式図。
【図3】本発明の実施の形態において例示したHAZ再
現時における熱サイクルを示すグラフ。
現時における熱サイクルを示すグラフ。
【図4】本発明の実施の形態において例示したクリープ
損傷率を算出する手順を示す図。
損傷率を算出する手順を示す図。
【図5】本発明の実施の形態において例示したクリープ
損傷率と生成した単位面積当たりのキャビティ個数との
関係を示すグラフ。
損傷率と生成した単位面積当たりのキャビティ個数との
関係を示すグラフ。
【図6】溶接部の亀裂の種類を示す模式図。
1…クリープ破断試験片 2a…HAZ再現試験片 2b…溶接継手クリープ破断試験片 3…熱電対 10…切欠き部 11…切欠き底 12…切欠き底の曲率半径(切欠き底での曲率) 13…切欠き底径 d1…切欠き底径(5.0mm) d2…切欠き底径(5.1mm) d3…切欠き底径(5.3mm) d4…切欠き底径(5.5mm) 14…切欠き深さ 15…切欠き底の正味断面積 16…応力の流れ 17…3軸応力状態 18…試験片の外径(6mm) 19…試験片の長さ(30mm) 21…溶接金属 22…熱影響部 23…母材 24…亀裂のタイプ1 25…亀裂のタイプ2 26…亀裂のタイプ3 27…亀裂のタイプ4
Claims (5)
- 【請求項1】焼戻しマルテンサイト単相組織からなる高
Crフェライト鋼の溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷
を評価する方法であって、(1)高Crフェライト鋼の
溶接熱影響部細粒域と同等であるミクロ組織と機械的性
質を与える熱サイクルにより、上記溶接熱影響部細粒域
の再現材を作製する過程と、(2)上記再現材を加工し
て、平行部が丸棒で、該平行部の2箇所以上の位置に、
切欠き底の曲率半径が同じで、切欠き底の深さが異なる
複数の切欠き部を設けたクリープ破断試験片を作製する
過程と、(3)上記クリープ破断試験片について、単軸
荷重でのクリープ破断試験を行い、クリープ破断部以外
の各切欠き底のクリープ損傷率を、切欠き底の正味断面
積と上記クリープ破断試験片のクリープ破断データから
算出する過程と、(4)上記クリープ破断試験片のクリ
ープ破断部および該破断部以外の切欠き底の断面部にお
けるミクロ組織の状態と上記クリープ損傷率の関係を求
め、それからクリープ損傷評価用の検定曲線を作成し、
該検定曲線に基づいて、高Crフェライト鋼の溶接熱影
響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程を含むことを
特徴とする高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評
価方法。 - 【請求項2】請求項1において、(4)上記クリープ破
断試験片のクリープ破断部および該破断部以外の切欠き
底の断面部のミクロ組織の観察により粒界キャビティ生
成量を測定し、該キャビティ生成量と上記クリープ損傷
率の関係を求め、それからクリープ損傷評価用の検定曲
線を作成し、該検定曲線に基づいて、高Crフェライト
鋼の溶接熱影響部細粒域のクリープ損傷を評価する過程
を含むことを特徴とする高Crフェライト鋼溶接部のク
リープ損傷評価方法。 - 【請求項3】請求項1または請求項2において、溶接熱
影響部細粒域と同等のミクロ組織と機械的性質を与える
熱サイクルは、最高加熱温度をAC1変態点とAC3変態点
との間とすることを特徴とする高Crフェライト鋼溶接
部のクリープ損傷評価方法。 - 【請求項4】請求項1または請求項2において、複数箇
所設けた切欠き部と切欠き部との間隔を5mm以上とす
ることを特徴とする高Crフェライト鋼溶接部のクリー
プ損傷評価方法。 - 【請求項5】請求項1または請求項2において、切欠き
底の曲率半径を0.5〜2mmの範囲内とすることを特
徴とする高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9228046A JPH1164326A (ja) | 1997-08-25 | 1997-08-25 | 高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9228046A JPH1164326A (ja) | 1997-08-25 | 1997-08-25 | 高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1164326A true JPH1164326A (ja) | 1999-03-05 |
Family
ID=16870361
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9228046A Pending JPH1164326A (ja) | 1997-08-25 | 1997-08-25 | 高Crフェライト鋼溶接部のクリープ損傷評価方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1164326A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010236941A (ja) * | 2009-03-30 | 2010-10-21 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 配管溶接部の寿命評価方法 |
CN107063816A (zh) * | 2017-03-10 | 2017-08-18 | 东方电气集团东方锅炉股份有限公司 | 一种显示t/p91、92铁素体耐热钢金相组织的浸蚀剂及其使用方法 |
WO2020065711A1 (ja) * | 2018-09-25 | 2020-04-02 | 中国電力株式会社 | 余寿命診断曲線作成方法 |
-
1997
- 1997-08-25 JP JP9228046A patent/JPH1164326A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010236941A (ja) * | 2009-03-30 | 2010-10-21 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 配管溶接部の寿命評価方法 |
CN107063816A (zh) * | 2017-03-10 | 2017-08-18 | 东方电气集团东方锅炉股份有限公司 | 一种显示t/p91、92铁素体耐热钢金相组织的浸蚀剂及其使用方法 |
WO2020065711A1 (ja) * | 2018-09-25 | 2020-04-02 | 中国電力株式会社 | 余寿命診断曲線作成方法 |
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