JPH1157352A - 金属製フィルターユニット及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能な濾過性能を有する金属製のフィルタ
ー及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 フィルターとフランジの間に金属不織布
などからなる空隙を有する金属中間層を設け、該金属中
間層の一部にフィルターとフランジを接合するろう材を
侵入させて接合する。また、フランジ表面に金属粉末と
ろう材及びバインダーを混合したスラリー層を形成した
後、フィルターを該スラリー層中に装入し、ろう材を溶
融させて接合する。ろう材としてはニッケル合金が望ま
しく、真空あるいは非酸化性雰囲気でろう付することが
望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、高性能な濾過性能
を有する金属製のフィルター及びその製造方法に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来より、各種気体や液体中の異物や不
純物などを濾過するために、各種フィルターが使用され
ている。一般に化学繊維やガラス繊維あるいはセラミッ
クス繊維などがフィルター素材として使用されている
が、高温や高圧の液体や気体あるいは腐食性の液体や気
体を処理する分野では耐熱性や強度更に耐食性にも優れ
た金属製のフィルターが採用されるようになってきた。
特に耐食性や価格の観点からステンレス鋼が選定され、
金網や不織布などが使用されている。

【０００３】これらの金属製フィルターは、一般のフィ
ルターと同様に多くの場合フランジに接合してフィルタ
ーユニットとして使用され、従来フィルターとフランジ
の接合は金属の接合方法として通常採用される溶接で行
われていた。

【０００４】しかしながら、最近では、より微細な異物
などを濾過する必要性などフィルターの高性能化に対応
するためフィルターメッシュが微細化し、溶接による接
合が困難になってきた。このため、溶接に替わる接合技
術としてろう付によってフィルターとフランジを接合す
る技術の開発が進められている。

【０００５】

【発明が解決しょうとする課題】しかしながら、ろう付
方法ではろう付熱処理時に溶融したろう材が毛細管現象
によりフィルター隙間に侵入するために、フィルターと
しての役目が著しく損なわれるという難点があった。し
かも、毛細管現象では隙間が小さいぼと液体が侵入し易
くなるため、フィルターメッシュが微細化するのにとも
なって、ろう付方法を適用することがますます困難にな
ってきた。

【０００６】本発明は、このような従来の金属製フィル
ターユニット及びその製造方法の難点を解消するために
成されたものであり、フィルターへのろう材の侵入が小
さく、フィルターとフランジが強固に接合した金属製フ
ィルターユニット及びその製造方法を提供することを、
その目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の金属製フィルタ
ーユニット及びその製造方法は、金属製フィルターをフ
ランジに取り付けたフィルターユニットにおいて、フィ
ルターとフランジの間に設けられた空隙を有する金属中
間層の少なくとも一部の空隙がフィルターとフランジを
接合するろう材で充填されていることを特徴としてい
る。また、ステンレス鋼の金網あるいは不織布あるいは
焼結体からなる金属中間層を、フィルターとフランジ間
に設置した後、真空中あるいは非酸化性雰囲気中でろう
付けすることを特徴としている。また、フランジ表面に
金属粉末とろう材及びバインダーを混合したスラリー層
あるいは金属粉末及びろう材を混合した混合粉末層を形
成した後、フィルターを該スラリー層あるいは混合粉末
層中に装入し、その後ろう材を溶融させることを特徴と
している。

【０００８】更に、本発明はフランジ表面に金属粉末及
びバインダーを混合したスラリー層を形成した後、フィ
ルターを該スラリー層中に装入し、その後金属粉末を焼
結させることによってフランジとフィルターを接合する
ことを特徴としている。

【０００９】フィルターとフランジの間に空隙を有する
金属中間層を設けて該フィルターと該フランジをろう付
すると、溶融ろう材はフィルター隙間に侵入すると同時
に金属中間層の隙間にも侵入する。フィルター隙間及び
金属中間層隙間への溶融ろう材の侵入は、いずれも毛細
管現象により生ずる。毛細管現象では隙間が小さいほど
侵入力が大きくなることから、金属中間層の隙間をフィ
ルターの隙間より小さく設定することによって、溶融ろ
う材はフィルターよりも金属中間層に多く侵入し、フィ
ルターへのろう材の侵入を妨げることが可能となる。更
に、金属中間層へのろう材の侵入によって、フィルター
と金属中間層の接合及び金属中間層とフランジとの接合
が同時に可能となる。

【００１０】金属中間層の素材としては、耐食性や耐熱
性に優れるステンレス鋼が望ましく、ろう材としては耐
食性に優れるニッケル合金ろうが望ましい。また、ろう
付雰囲気としては、酸化による劣化を防ぎ信頼性の高い
ろう付部を得るために真空あるいは非酸化性雰囲気が望
ましい。

【００１１】図１に示すように、フィルター１よりも隙
間の小さい金属不織布あるいは金網あるいはステンレス
鋼などからなる金属焼結体を金属中間層２として用い、
金属中間層２をフィルター１とフランジ３の間に設置し
た後にニッケル合金ろうなどのろう材を用いてろう付を
行うと、ろう材が主として金属中間層２に侵入すること
によって、フィルターとフランジを接合することが可能
となる。

【００１２】金属中間層はろう付熱処理時にろう材が侵
入するような微細な空隙を有する構造であれば良く、フ
ィルターと接する側のフランジ表面に予め溶射法などで
空隙を有する被覆層を形成しておき、これを金属中間層
としてフィルターとフランジをろう付することも可能で
ある。また、フランジ表面に金属粉末を塗布後、焼付け
ることにより空隙を有する金属中間層を形成することも
可能である。

【００１３】一方、フランジ表面に形成した金属粉末及
びろう材の混合粉末層にフィルターを装入してからろう
材を溶融させると、図２に示すように金属粉末が溶融ろ
う材による液相焼結によって強固な焼結体の金属中間層
２を形成すると同時に、溶融ろう材４によってフィルタ
ー１と金属中間層２及び金属中間層２とフランジ３との
接合が可能となる。金属粉末とろう材の配合割合及び金
属粉末の粒径を設定することによって形成される焼結体
中の空隙の大きさをフィルターの空隙より小さくし、フ
ィルターへのろう材の侵入を妨げることが可能となる。
また、金属粉末及びろう材の混合粉末にバインダーを加
え、作業性を一層向上させることも可能である。

【００１４】フィルターと接する側のフランジ表面にス
テンレス鋼などの金属粉末及びバインダーを混合したス
ラリー層を形成した後、フィルターを該スラリー層中に
装入し、乾燥した後該金属粉末を焼結させることによっ
てフランジとフィルターを接合することもできる。金属
粉末を焼結することにより、鋳包みと同じ効果によって
フランジとフィルターを接合することが可能となる。

【００１５】本発明において、フランジ表面にスラリー
層を形成する場合などにおいては、液体状のスラリーが
フランジ表面から流れ落ちないようにフランジ表面に凸
部を設けることも可能である。

【００１６】本発明においては、フィルターと接する側
のフランジ表面を予めブラスト処理しておくことによっ
てフィルターとフランジの接合強度を向上させることが
可能である。また、フィルターの強度補強のために、フ
ィルターを目の粗い金網の間に挟んで使用することも可
能である。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について説
明する。

【００１８】実施例１ 空隙径がおよそ１０μｍ、厚さ１ｍｍのステンレス製不
織布フィルターを０．５ｍｍピッチで編んだ目の粗いス
テンレス鋼金網の間に挟み、高さ８０ｍｍ、外径６５ｍ
ｍのリング状に加工した。また、フィルターと同じステ
ンレス製不織布から外径７０ｍｍ、内径５５ｍｍのリン
グ状金属中間層を２枚製作した。リング状フィルターと
外径７２ｍｍ、内径５３ｍｍ、厚さ１．５ｍｍのステン
レス製フランジの間に金属中間層を挟み、ＡＷＳ（米国
溶接協会）規格のＢＮｉ−９のニッケルろう材を塗布し
てフィルターユニットを組み立て、真空炉で１０８０℃
で３分のろう付熱処理を行った。熱処理後、ろう付部を
詳細に観察した結果、フィルターと金属中間層の間及び
金属中間層とフランジの間には良好なろう付状況が見ら
れたが、フィルターへのろう材の侵入高さは最大５ｍｍ
であった。

【００１９】実施例２ 空隙径がおよそ１０μｍ、厚さ１ｍｍのステンレス製金
網フィルターを０．５ｍｍピッチで編んだ目の粗いステ
ンレス鋼金網の間に挟み、実施例１と同様に高さ８０ｍ
ｍ、外径６５ｍｍのリング状に加工した。また、実施例
１と同様に準備したステンレス製フランジ２枚の片側表
面に、それぞれステンレス鋼粉末をおよそ１ｍｍの厚さ
溶射した。このフランジをリング状フィルターと組み立
て、ＢＮｉ−９のろう材を塗布して、実施例１と同じ条
件の熱処理を行った。熱処理後、ろう付部を詳細に観察
した結果、フィルターと金属中間層の間及び金属中間層
とフランジの間には良好なろう付状況が見られたが、フ
ィルターへのろう材の侵入高さは最大６ｍｍであった。

【００２０】実施例３ ＳＵＳ３０４の金属粉末とＢＮｉ−９のろう材及び樹脂
バインダーを混合したスラリーを作成し、実施例１と同
様に準備したステンレス製フランジの片側表面に厚さ２
ｍｍのスラリー層を形成した。このスラリー層の中に実
施例１と同様に準備したリング状フィルターを装入し、
乾燥させた後、実施例１と同じ条件の熱処理を行った。
熱処理後、ろう付部を詳細に観察した結果、フィルター
と金属中間層の間及び金属中間層とフランジの間には良
好なろう付状況が見られたが、フィルターへのろう材の
侵入高さは最大４ｍｍであった。

【００２１】実施例４ ＳＵＳ３０４の金属粉末及びＢＮｉ−９のろう材を混合
し、実施例１と同様に準備したステンレス製フランジの
片側表面に厚さ２ｍｍの混合粉末層を形成した。この混
合粉末層の中に実施例１と同様に準備したリング状フィ
ルターを装入し、実施例１と同じ条件の熱処理を行っ
た。熱処理後、ろう付部を詳細に観察した結果、フィル
ターと金属中間層の間及び金属中間層とフランジの間に
は良好なろう付状況が見られたが、フィルターへのろう
材の侵入高さは最大５ｍｍであった。

【００２２】実施例５ ＳＵＳ３０４の金属粉末と樹脂バインダーを混合したス
ラリーを作成し、実施例１と同様に準備したステンレス
製フランジの片側表面に厚さ２ｍｍのスラリー層を形成
した。このスラリー層の中に実施例１と同様に準備した
リング状フィルターを装入し、乾燥させた後、真空炉で
１１００℃で１０分の熱処理を行った。熱処理後、ろう
付部を詳細に観察した結果、フィルターと金属中間層の
間及び金属中間層とフランジの間には良好なろう付状況
が見られたが、フィルターへのろう材の侵入高さは最大
５ｍｍであった。

【００２３】比較例１ 実施例１と同様に準備したリング状フィルターとフラン
ジを図２に示すように組み立て、ＢＮｉ−９のろう材を
塗布して、実施例１と同じ条件の熱処理を行った。熱処
理後、ろう付部を詳細に観察した結果、フィルターへの
ろう材の侵入はフィルター高さの８０ｍｍに達してお
り、フィルター空隙がろう材で埋まっていた。

【００２４】

【発明の効果】本発明によれば、高温や高圧の液体や気
体あるいは腐食性の液体や気体を処理する分野に特に適
する、高性能な濾過性能を有する金属製フィルターが容
易に製造でき、工業上非常に有益である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明により得られる金属製フィルターユニッ
トのフィルターとフランジのろう付部近傍の断面模式図
である。

【図２】本発明により得られる金属製フィルターユニッ
トのフィルターとフランジのろう付部近傍の断面模式図
である。

【図３】従来の金属製フィルターユニットのフィルター
とフランジのろう付部近傍の断面模式図である。

【符号の説明】

１……フィルター ２……一部の空隙がろう材で充填された金属中間層 ３……フランジ ４……ろう材 ５……目の粗いステンレス鋼網

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金属製フィルターをフランジに取り付けた
   フィルターユニットにおいて、フィルターとフランジの
   間に設けられた空隙を有する金属中間層の少なくとも一
   部の空隙がフィルターとフランジを接合するろう材で充
   填されていることを特徴とする金属製フィルターユニッ
   ト。
2. 【請求項２】金属製フィルターがステンレス鋼からな
   り、ろう材がニッケル合金であることを特徴とする特許
   請求の範囲請求項１記載の金属製フィルターユニット。
3. 【請求項３】ステンレス鋼の金網あるいは不織布あるい
   は空隙を有する焼結体からなる金属中間層をフィルター
   とフランジの間に設置した後、真空中あるいは非酸化性
   雰囲気中でろう付けすることを特徴とする特許請求の範
   囲請求項１あるいは２記載の金属製フィルターユニット
   の製造方法。
4. 【請求項４】フィルターと接する側のフランジ表面に金
   属粉末及びろう材の混合粉末からなる層を形成した後、
   フィルターを該混合粉末層に装入し、その後真空中ある
   いは非酸化性雰囲気中でろう材を溶融させることを特徴
   とする特許請求の範囲請求項１あるいは２記載の金属製
   フィルターユニットの製造方法。
5. 【請求項５】フィルターと接する側のフランジ表面に金
   属粉末とろう材及びバインダーを混合して得られるスラ
   リーからなる層を形成した後、フィルターを該スラリー
   層に装入し、その後真空中あるいは非酸化性雰囲気中で
   ろう材を溶融させることを特徴とする特許請求の範囲請
   求項１あるいは２記載の金属製フィルターユニットの製
   造方法。
6. 【請求項６】フィルターと接する側のフランジ表面に金
   属粉末及びバインダーを混合して得られるスラリーから
   なる層を形成した後、フィルターを該スラリー層に装入
   し、その後真空中あるいは非酸化性雰囲気中で該スラリ
   ー層中の金属粉末を焼結させることを特徴とする金属製
   フィルターユニットの製造方法。