【発明の詳細な説明】
線維素原受容体拮抗薬 発明の背景
本発明は、細胞接着の調節、ならびに線維素原および他の蛋白の血小板に対す
る結合の阻害、血小板のgp IIb/IIIa線維素原受容体部位への特異的
凝集の阻害に関するものである。線維素原は、血漿中に存在する糖蛋白であって
、血小板凝集および線維素形成に関与する。血小板は、全ての哺乳類の血液で認
められる細胞様の無核断片であり、やはり血液凝固に関与する。線維素原とII
b/IIIa受容体部位との相互作用は、正常な血小板機能にとって必須である
ことが知られている。
血管が怪我などの原因によって損傷を受けると、血小板が破れた内皮下表面に
付着する。接着した血小板は次に、生理活性成分および凝集物質を放出する。凝
集は、トロンビン、エピネフリンまたはADPなどの作働薬の特異的な血小板膜
受容体への結合によって開始する。作働薬による刺激により、血小板表面に潜在
している線維素原受容体が露出し、線維素原が糖蛋白IIb/IIIa受容体複
合体に結合する。
天然物および合成ペプチドを用いて、接着および血小板凝集の機序を明らかに
する努力が行われてきた。例えば、ロースラーティら(Rouslahti and Pierschb
acher,Science,238,491-497(1987))は、フィブロネクチン、ビトロネクチン
、オステオポンチン(osteopontin)、コラーゲン類、トロンボスポンジン、線
維素原およびフォン・ビルブラント因子などの細胞外マトリックスおよび血液に
存在する接着性蛋白について記載している。それらの蛋白は、その糖蛋白IIb
/IIIa認識部位としてトリペプチドであるアルキニン−グリシン−アルパラ
ギン酸(RGD)を有している。そのアルギニン−グリシン−アスパラギン酸を
含むトリペプチド類は、2個の膜をつなぐサブユニットを有する異種二量体蛋白
である構造的に関連のある受容体インテグリン類の少なくともいずれかによって
認識される。その著者らは、個々の蛋白におけるトリペプチド配列のコンホメー
ションが認識特異性にとって必須である可能性があると述べている。
シェレシュ(Cheresh,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.,84,6471-6475,(1987
))は、構造的に血小板上のIIb/IIIa複合体と類似しているが、抗原的
・機能的には異なるヒト内皮
細胞によって発現されるArg−Gly−Asp指向性の接着受容体について記
載している。この受容体は、線維素原、フォン・ビルブラント因子およびビトロ
ネクチンへの内皮細胞付着に直接関与する。
ピエルシュバッハーら(Pierschbacher and Rouslahti J.of Biol.Chem.,262
(36),17294-17298(1987))は、受容体の認識・結合にはArg−Gly−As
p配列単独で十分な信号であり、従ってトリペプチド配列のコンホメーションが
決定因子となると考えられるという仮説を立てている。各種合成ペプチドを製造
して、著者らは、その配列への鏡像体の置換もしくは付加によって影響を受ける
Arg−Gly−Aspの立体化学的コンホメーションが受容体−リガンド相互
作用に大きく影響しているという結論に達している。この著者らはさらに、非末
端残基であるPenとCysの間のジスルフィド架橋形成によるデカペプチドの
環化によって、該ペプチドはフィブロネクチンへの接着阻害の効果がかなり低下
することを示した。
同じ著者がさらに、接着促進活性を保持したフィブロネクチンの細胞認識部位
のテトラペプチド体について記載している(Proc Nat'l Acad.Sci.U.S.A.,81,
5985-5988(1984))。テ
トラペプチド認識部位を有するペプチドは、来国特許4589881号および4
614517号に記載されている。フィブロネクチンの細胞結合領域における多
くの大きいポリペプチド断片は細胞接着活性を有する(例えば、米国特許451
7686号、4661111号、4578079号参照)。
ルゲリら(Ruggeri et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.U.S.A.,83,5708-5712(19
86))は、RGDおよび血小板への線維素原結合を阻害するRGDのアスパラギ
ン酸残基に付着したバリンを有し、長さ16残基となるように設計した一連の合
成ペプチドについて調べている(Koczewiak et al.,Biochem.23,1767-1774(198
4); Ginsberg et al.,J.Biol.Chem.260(7),3931-3936(1985); Haverstick et
al.,Blood66(4),946-952(1985)も参照)。他の阻害薬が、欧州特許出願275
748号および298820号に開示されている。
ヘビ毒から多くの低分子量ポリペプチド因子が単離されている。それらの因子
は明らかに、gp IIb/IIIa複合体への高い親和性を有する。例えばフ
アンら(Huang et al.,J.Biol.Chem., 262, 16157-16163(1987); Huang et al.
,Biochemistry,28,661-666(1989))は、RGDサブユニット
を含む72アミノ酸ポリペプチドであるヘビ毒トリグラミン(venom trigramin
)の一次構造について記載している。gpIIb/IIIa複合体に対して高い
親和性を有する別の化合物として、エキスタチン(echistatin)がある。このポ
リペプチドには49個のアミノ酸があり、RGDサブユニットと各種ジスルフィ
ド架橋を有する(Gan et al.,J.Biol.Chem.,263,19827-19832(1988))(Dennis
et al.,Proc.Nat'l Acad.Scj.USA,87,2471-2475(1989)も参照)。しかしなが
らそれらのヘビ毒因子は、ビトロネクチン受容体およびフィブロネクチン受容体
を含む接着性蛋白受容体類の他のものに対しても高い親和性を持つことから、g
p IIb/IIIa複合体選択的ではない。
フィブロネクチンおよびビトロネクチンの細胞接着促進効果を倍化または阻害
し得るある種のポリペプチドにトリペプチド配列Arg−Gly−Aspが存在
することが知られているが、トリペプチド配列Arg−Gly−Aspは活性が
低い。現在、この配列に連結している他のアミノ酸が結合特異性にどのように影
響しているかについてはほとんど解明されていない。メルク社に譲渡された米国
特許5023233号には、配列Arg−Gly−Aspを有し、血小板凝集阻
害剤として有用な小さ
い環状ヘキサペプチドが開示されている。米国特許5037808号には、線維
素原および/または細胞外マトリックス蛋白と血小板gp IIb/IIIa受
容体の間の相互作用に拮抗することによって作用すると考えられている、インド
ール骨格を有する血小板凝集阻害剤の使用が開示されている。米国特許5037
808号には、血小板凝集を阻害するAsp残基を保持するグアニジノペプチド
様作用性化合物が開示されている。WO 9014103号には、抗体−ポリペ
プチド複合体であって、該ポリペプチドがArg−Gly−Asp(RGD)配
列を有する複合体の使用が開示されている。
WO 9111458号には、血小板凝集阻害剤であり、プロリン残基を側鎖
として有する大きい環状ペプチドの使用が開示されている。WO 910133
1号には、環にトリペプチド配列Arg−Gly−Aspおよびチオエーテル結
合を有する合成環状ペンタペプチドである小さい環状血小板凝集阻害剤が開示さ
れている。ハートマンら(Hartmanetal.,WO9408962)は、5−[2−(4−ピペリ
ジニル)エチルオキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスル
ホニルアミノーβ−アラニン(化合物II、図1B)および関連化合物などの
線維素源がgpIIb/IIIa受容体部位に対して結合することを阻害するこ
とによって血小板凝集を阻害するのに有効な化合物を開示している。米国特許5
051405号にも、哺乳動物血における血小板凝集および血栓形成を阻害する
、N−アミジノ−ピペリジン−3−カルボキシルグリシル−L−アスパルチル−
L−バリンなどのシュードペプチドとペプチドの使用が開示されている。EP4
45796号には、分子内ピペラジン誘導体またはピペリジン誘導体を含み得る
直鎖化合物が開示されている。EP 437367号には、直鎖ポリペプチド線
維素原受容体拮抗薬が開示されている。米国特許5265812号には、R1−
A−(W)a−X−(CH2)b−(Y)c−B−Z−COOR(式中、R1はグア
ニジノ部分もしくはアミジノ部分であり、AおよびBは特異的なモノ置換アリー
ル部分もしくは複素環部分から選択される)の構造の化合物が開示されている。
本発明は、かなりの経口活性を有することから、本明細書に記載の理由によっ
て有用である新規な線維素原受容体拮抗薬を提供するものである。メチレンオキ
シ基を有するその新規拮抗薬は、それに近似するエチレンオキシ同族体よりかな
り強力で
ある。多くの重大な疾患および障害に、血管内血栓・塞栓を起こす高血栓性合併
症が関与している。心筋梗塞、卒中、静脈炎および多くの他の重大な病気がある
ことから、新規かつ有効な線維素原受容体拮抗薬が必要とされている。発明の概要
本発明は、線維素原受容体拮抗薬である5−[(4−ピペリジニル)メトキシ
]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−ア
ラニン(図式2の化合物2−6、図1Aでは化合物Iとも称される)ならびに該
化合物の医薬的に許容される塩、ラセミ化合物およびラセミ混合物、水和物およ
び多形体であり、これらは以下において活性薬剤と称する。
本発明の活性薬剤は、血小板に対する線維素原の結合阻害ならびに血小板の凝
集阻害に有用である。上記の活性薬剤は、線維素原受容体に作用を及ぼす方法に
おいて、治療上有効であるが無毒性の量のそのような化合物を、哺乳動物、好ま
しくはヒトに投与する段階を有する方法において使用することができる。本発明
の別の特徴は、医薬的に許容される担体と、それに分散している有効であるが無
毒性の量の活性薬剤を含有する医薬組
成物である。図面の簡単な説明
図1Aは、5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニ
ル−2(S)−フェニルスルホニル−アミノ−β−アラニンである化合物2−6
(「化合物I」)の血小板凝集阻害パーセントを示す図である。
図1Bは、5−[(4−ピペリジニル)エチルオキシ]−2−インドールカル
ボニル−2(S)−フェニルスルホニル−アミノ−β−アラニンである「化合物
II」の血小板凝集阻害パーセントを示す図である。発明の詳細な説明
本発明の線維素原受容体拮抗薬化合物5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]
−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラ
ニンならびに該化合物の医薬的に許容される塩、ラセミ化合物、ラセミ混合物、
水和物および多形体は、血小板に対する線維素原の結合を阻害し、血小板の凝集
を阻害する経口的に活性な化合物として有用である。化合物5−[(4−ピペリ
ジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニ
ルアミノ−β−ア
ラニンは、それに近似する同族体である5−[2−(4−ピペリジニルエチル)
オキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−
β−アラニンのほぼ2倍の経口活性を有する。
線維素原受容体拮抗薬活性を評価するのに使用されるある試験は、ADP刺激
血小板の阻害評価に基づいたものである。凝集には、線維素原が血小板線維素原
受容体部位に結合し、それを占有することが必要である。線維素原結合の阻害薬
は、凝集を阻害する。本発明で特許請求される化合物に関連する阻害を測定する
のに使用されるADP刺激血小板凝集アッセイにおいては、ヒト血小板を新鮮血
液から単離し、分画遠心分離法とそれに続く2%ウシ血清アルブミンを含む二価
イオンを含有しないタイロード緩衝液(pH7.4)中でのセファロース2Bに
よるゲル濾過によってクエン酸デキストロースに回収する。
血小板凝集は、時系列式血小板凝集計で37℃にて測定する。反応混合物には
、ゲル濾過ヒト血小板(2×108個/mL)、線維素原(100μg/mL)
、Ca2+(1mM)および被験化合物を含有させる。他の化合物を加えてから1
分後に10mM ADPを加えることで、凝集を開始する。その後反応を
2分間以上進行させる。凝集阻害の程度を、阻害剤不存在下で認められる凝集率
のパーセントとして表す。IC50は、特定化合物を含まない対照との比較で、凝
集を50%だけ阻害するその特定化合物の用量である。
in vitroでの分析によると、5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−イ
ンドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンは、
5−[2−(4−ピペリジニルエチル)オキシ]−2−インドールカルボニル−
2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンとほぼ同等の結合能力を有
する。しかしながら、線維素原受容体拮抗薬のin vivo効力を評価するためのex
vivoでの試験では、5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカ
ルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンは5−[2−(
4−ピペリジニルエチル)オキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フ
ェニルスルホニルアミノ−β−アラニンのほぼ2倍の効果を持つことが明らかに
なっている。この大幅な差は、血小板凝集の阻害に5−[(4−ピペリジニル)
メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ
−β−アラニンを使用する患者にとって価値のある出費、
簡便性および治療の面での利点につながる。
患者への経口投与後の線維素原受容体拮抗薬の効力を測定する方法においては
、被験化合物をアカゲザルに1日1回経口投与する。1日1回投与の30分前(
データ点は図1に黒丸で示してある)および1日1回投与の3時間後(データ点
は図1に白丸で示してある)に採血を行い、ADP刺激血小板凝集アッセイを行
う。
結果は明瞭に、化合物Iが化合物IIと比較して、経口投与後にほぼ2倍の効
力を持つことを示している。化合物Iを0.3mg/kg/日で1頭のサルに経
口投与し、化合物IIを0.5mg/kg/日で別のサルに経口投与した。結果
は、1日後で第2日の投与の直前に化合物Iが血小板凝集を70%超で阻害した
が、化合物IIでは血小板凝集阻害は40%未満であったことを示している。
「医薬的に許容される塩」とは、一般に遊離塩基と好適な有機もしくは無機の
酸とを反応させることによって製造される本発明の化合物の無毒性塩を意味する
ものとする。代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重
炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウムエデト
酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩
、エデト酸塩、エジシル酸塩(edisylate)、エストレート、エシレート、フマ
ル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニ
ル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン塩、ヒドラバミン、臭化
水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸
塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸
塩、メチルスルホン酸、メチルブロマイド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液
酸塩、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ
酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツ
ロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、次酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸
塩、酒石酸塩、テオクリン酸塩(teoclate)、トルエンスルホン酸、トリエチオ
ダイド、吉草酸塩などがある。
5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S
)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンはキラル化合物である。5−[(
4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニ
ルスルホ
ニルアミノ−β−アラニンのラセミ混合物および光学分割されたエナンチオマー
は本発明の範囲に含まれる。さらに、上記一般式の水和物ならびに無水組成物お
よび多形体も本発明に含まれる。「活性薬剤」という用語には、5−[(4−ピ
ペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスル
ホニルアミノ−β−アラニンおよびその塩、ラセミ混合物もしくは光学分割され
たエナンチオマー、水和物もしくは無水物、多形体ならびに医薬的に許容される
塩が含まれる。
活性薬剤のエステル誘導体などのプロドラッグは、温血動物の血流に吸収され
た場合に、薬剤の形のものを放出するような形で開裂し、その薬剤の治療上の効
力を高める化合物誘導体である。
「医薬的に有効な量」という用語は、組織、器官系または動物について研究者
または臨床医が得ようとしている生理的応答または医学的応答を誘発するだけの
量の薬剤または医薬品を意味するものとする。「抗凝血剤」という用語は、ヘパ
リンおよびワルファリンを含むものとする。「血栓溶解剤」とは、ストレプトキ
ナーゼおよび組織プラスミノーゲン活性化因子などの薬剤を含むものとする。「
血小板抗凝集剤」という用語は、ア
スピリンおよびジピリダモールなどの薬剤を含むものとする。
以下に記載されている反応図式および実施例では、各種試薬略称が以下の意味
を有する。
BOC(またはBoc):t−ブチルオキシカルボニル
Pd−C:パラジウム/活性炭触媒
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
CBZ:カルボベンジルオキシ
CH2Cl2:塩化メチレン
CHCl3:クロロホルム
EtOH:エタノール
MeOH:メタノール
EtOAc:酢酸エチル
HOAc:酢酸
BOP:ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(
ジメチルアミノ)ホスホニウム
EDC:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・
塩酸塩
オキソン:ペルオキシ一硫酸カリウム
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
活性薬剤は、錠剤、カプセル(これらはそれぞれ、持続性製剤すなわち徐放性
製剤を含む)、丸薬、粉剤、粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ
および乳濁剤などの経口製剤として投与することができる。同様にその化合物は
、静脈投与(大量注入または注入)剤、腹腔内投与剤、皮下投与剤または筋肉投
与剤で投与することができ、それらのいずれの製剤も製薬業界の当業者には公知
である。有効であるが無毒性の量の活性薬剤を抗凝集剤として使用することがで
きる。
活性薬剤は、血小板膜糖蛋白複合体IIb/IIIa受容体への線維素原の結
合を阻害することで血栓症を防止することが望ましい患者に投与することができ
る。それら化合物は、動脈および臓器の手技および/または血小板と人工表面と
の相互作用によって血小板の凝集および消費が起こる末梢血管での手術(動脈移
植片、頚動脈血管内膜切除術)および心血管術において有用である。凝集した血
小板は、血栓および血栓塞栓を形成し得る。活性薬剤をこれらの手術患者に投与
して、血栓および血栓塞栓の形成を防止することができる。
心血管術には体外循環を使用して、血液に酸素供給するのが
普通である。血小板は体外循環経路の表面に付着する。付着は、血小板膜上のg
p IIb/IIIaと循環経路表面に吸着された線維素原との間の相互作用に
よって起る(Gluszko et al.,Amer.J.Physiol.,252(H),615-621(1987))。人
工表面から放出される血小板には、止血機能の減損がみられる。活性薬剤を投与
して、付着を防止することができる。
活性薬剤の他の利用法としては、血栓溶解療法時およびその療法後の血小板血
栓症、血栓塞栓症および再閉塞の防止、ならびに血管形成術または冠動脈バイパ
ス術後の血小板血栓症、血栓塞栓症および再閉塞の防止などがある。活性薬剤を
用いて、心筋梗塞を防止することができる。
活性薬剤を利用する投与方法は、患者の種類、人種、年齢、体重、性別および
医学的状態;治療すべき病気の重篤度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;
ならびに使用する特定の化合物もしくはそれの塩などの各種因子に応じて選択さ
れる。通常の技術を有する医師または獣医であれば、その病気の進行の予防、対
処または停止を行う上で有効な薬剤量を容易に決定・処方することができる。
指定の効果を得るべく使用する場合の活性薬剤の経口用量は、
約0.005mg/kg/日〜約50mg/kg/日であり、好ましくは0.0
05〜20mg/kg/日、最も好ましくは0.005〜10mg/kg/日で
ある。静脈投与の場合、最も好ましい用量は、定速注入時で約0.5〜約5mg
/kg/分である。有効薬剤は、1日1回、あるいは1日2回、3回または4回
の分割投与で投与することができる。さらに、活性薬剤を、好適な鼻腔内ビヒク
ルの局所使用を介して鼻腔内形態で、あるいは当業者には公知の形態の経皮貼付
剤を用いる経皮的経路を介して投与することができる。経皮投与系の形態で投与
するには、当然のことながら、投与は、投与法を通じて間歇的ではなく連続的に
行う。
本発明の方法において、活性薬剤は有効成分とすることができ、典型的な例と
しては、所期の投与剤型、すなわち経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、シロッ
プなどに関して適切に選択され、従来の医薬方面の実務と一致する好適な医薬用
の希釈剤、賦形剤または担体(本明細書においては総称で「担体」材料と称する
)と混合して投与する。
例えば、錠剤またはカプセルの形態で経口投与する場合、活性薬剤成分を、乳
糖、でんぷん、ショ糖、グルコース、メチル
セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム
、マニトール、ソルビトールなどの経口用の無毒性で医薬的に許容される不活性
担体と組み合わせることができる。液状形態での経口投与の場合、経口用医薬成
分を、エタノール、グリセリン、水などの経口用の無毒性で医薬的に許容される
不活性担体と組み合わせることができる。さらに、望ましい場合または必要な場
合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および着色剤を混合物に組み入れることもで
きる。好適な結合剤には、デンプン;ゼラチン;グルコースもしくはβ乳糖など
の天然糖;コーン甘味料;アラビアガム,トラガカントガムもしくはアルギン酸
ナトリウムなどの天然および合成ガム;カルボキシメチルセルロース、ポリエチ
レングリコール、ロウなどがある。これらの投与形態で使用される潤滑剤には、
オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、
安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。崩壊剤には
、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどがあ
るが、これらに限定されるものではない。
活性薬剤は、小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞および多ラメ
ラ小胞などのリポソーム投与系の形態で投与することもできる。リポソームは、
コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類などの各種リ
ン脂質から形成することができる。
活性薬剤は、個々の担体として化合物分子が結合したモノクローナル抗体を使
用することで投与することもできる。活性薬剤はさらに、標的指向性薬物担体と
して可溶性ポリマーと結合させることもできる。そのようなポリマーには、ポリ
ビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルア
ミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパルタミド−フェノールまた
はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキサイド−ポリリジンなどがあ
り得る。さらに、活性薬剤を、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸と
ポリグリコール酸の共重合体、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、
ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロピラン類、ポリシアノ
アクリレート類、ならびにヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロック共重合体
などの薬剤徐放を行う上で有用な生物分解性ポリマー類に結合させることができ
る。
活性薬剤はさらに、各種血管系病の治療において、プラスミノーゲン活性化剤
またはストレプトキナーゼなどの好適な抗凝血剤または血栓溶解剤と併用で投与
することもできる。それらは、ヘパリン、アスピリンまたはワルファリンと併用
することもできる。
5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S
)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンは、以下の実施例の手順に従って
製造した。当業者であれば、以下の製造手順の条件および工程に対して公知の変
更を加えてこれら化合物を製造できることは容易に理解できる。別段の断りがな
い限り、温度はいずれも℃単位である。
反応図式1
2−置換−3−アミノプロピオネート化合物は、以下の方法で製造される。
2(S)−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−アミノプロピオン酸メチル・ 塩酸塩(1−2)
2(S)−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−アミノプロピオン酸(Fluk
a)(1−1)(10g、0.042mol)のメタノール(150mL)懸濁
液を冷却し、それに20分間かけて塩化チオニル5.47g(0.046mol
)を加えた。得られた溶液を室温で終夜攪拌した。約18時間後、溶媒を減圧下
に除去し、残留固体をエーテル150mLと0.5時間攪拌した。得られた白色
固体を回収し、風乾して1−2を得た。
1H NMR(300MHz、CD3OD)δ3.26(2H、m)、3.45
(1H、dd)、3.77(3H、s)、4.25(1H、m)、5.13(2
H、s)、7.37(5H、m)。2(S)−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3−(N−t−ブチルオキシカル ボニル)−アミノプロピオン酸メチル(1−3)
CH2Cl2(500mL)と飽和NaHCO3溶液(300mL)の2相混合
物に、1−2(28.87g、0.10mol)を加えた。数分後、ジ−t−ブ
チルジカーボネート21.83
g(0.10mol)を一度に加え、得られた混合物を室温で4時間攪拌した。
次に、CH2Cl2層を水層から分離し、水層を300mLのCH2Cl2で抽出し
た。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、脱水し、溶媒を減圧下に除去して
、生成物を粘稠油状物として得た。この油状物をヘキサン300mLで磨砕して
、1−3を融点85〜87°の白色固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.42(9H、s)、1.50
(4H、m)、1.62(1H、m)、3.52(2H、m)、3.75(3H
、s)、4.41(1H、m)、4.83(1H、m)、5.12(2H、s)
、5.78(1H、m)、7.35(5H、m)。2(S)−アミノ−3−(N−t−ブチルオキシカルボニル)アミノプロピオン 酸メチル(1−4)
1−3(6.60g、0.0187mol)のEtOH(150mL)溶液に
、10%Pd/C(0.5g)を加えた。得られた混合物を、風船圧下に室温で
4時間にわたって水素化した。触媒を濾去し、溶媒を減圧下に除去して、1−4
を粘稠油状物として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.45(9H、s)、1.49
(2H、m)、1.59(2H、m)、3.25(1H、m)、3.49(1H
、m)、3.58(1H、m)、3.75(3H、s)、5.03(1H、m)
。2(S)−ブチルスルホニルアミノ−3−(N−t−ブチルオキシカルボニル) アミノプロピオン酸メチル(1−5)
1−4(0.400g、0.00183mol)のCH3CN(10mL)溶
液に、ピリジン0.226g(0.00286mol)と次にn−ブタンスルホ
ニルクロライド0.408g(0.0026mol)を加えた。得られた溶液を
室温で2.5時間攪拌して、原料を消費させた。溶媒を減圧下に除去し、50m
LのH2Oを残留物に加えた。この混合物を酢酸エチルで抽出し(50mLで3
回)、合わせた抽出液をブラインで洗浄し、脱水し(Na2SO4)、濾過し、濃
縮して、粘稠油状物0.5gを得た。この油状物をヘキサン25mLで磨砕する
ことで、1−5を白色非晶質固体として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ0.95(3H、t)、1.43
(9H、s)、1.48(2H、m)、1.80(2H、m)、3.03(2H
、m)、3.52(2H、t)、
3.80(3H、s)、4.22(1H、m)、4.99(1H、bt)、5.
48(1H、bd)。2(S)−ブチルスルホニルアミノ−3−アミノプロピオン酸メチル・塩酸塩( 1−6)
1−5(0.400g、0.00118mol)の酢酸エチル(25mL)溶
液を冷却し(−20℃)、それをHClガスで15分間処理した。得られた溶液
を活栓にて密閉し、0℃でさらに1時間攪拌した。溶媒および過剰のHClを減
圧下に除去して、1−6を吸湿性の黄色様泡状物として得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ0.94(3H、t)、1.44
(9H、s)、1.48(2H、m)、1.80(2H、m)、3.04(2H
、m)、3.53(2H、bt)、3.80(3H、s)、4.22(1H、m
)、4.93(1H、m)、5.40(1H、bd)。
2(S)−メチルスルホニルアミノ−3−アミノプロピオン酸メチル・塩酸塩( 1−7)
該当する段階でメタンスルホニルクロライドを用いて、ブチルスルホニルアミ
ノ類縁体(1−6)についての前述の方法に従って、1−7を製造した。
1H NMR(300MHz、CD3OD)δ3.07(3H、s)、3.13
(1H、m)、3.43(1H、dd)、3.83(3H、s)、4.96(1
H、m)。
2(S)−フェニルスルホニルアミノ−3−アミノプロピオン酸メチル・塩酸塩 (1−8a
)
該当する段階でフェニルスルホニルクロライドを用いて、1−6についての前
述の方法に従って、1−8aを製造した。
1H NMR(300MHz、D2O)δ3.22(1H、t)、3.45(3
H、s)、3.51(2H、m)、4.44(1H、m)、7.61〜7.80
(3H、m)、7.92(2H、
m)。
2(S)−フェニルスルホニルアミノ−3−アミノプロピオン酸エチル・塩酸塩 (1−8b)
1−1から1−2への変換においてメタノールではなくエタノールを用いて、1−8a
についての上述の方法に従って1−8bを製造した。
1H NMR(300MHz、CD3OD)δ1.0(3H、t)、3.05(
1H、m)、3.35(1H、dd)、3.9(2H、q)、4.25(1H、
m)、7.5〜7.7(3H、m)、7.9(2H、m)。
反応図式2
5−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸メチルエステル(2−2)
5−ヒドロキシインドール−2−カルボン酸(Aldrich)(3.54g、0.
02mol)のトルエン(100mL)/メタノール(25mL)溶液を、TM
SCHN2(0.022mol)で処理し、この溶液を室温で16時間攪拌した
。溶媒を除去し、残留物について、溶離液をCHCl3(95)/MeOH(5
)とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製を行って、純粋な2 −2
を得た。Rf 0.3、シリカ、CHCl3(95)/MeOH(5)。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ3.94(3H、s)、4.79
(1H、s)、6.94(1H、dd)、7.09(2H、m)、7.28(1
H、m)、8.82(1H、b)。
5−[(4−N−Boc−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボン 酸メチルエステル(2−4)
2−2(0.96g、5mmol)のTHF(15mL)溶液をPPh3(1
.48g、5.5mmol)で処理し、10分間攪拌後、ジエチルアゾジカルボ
キシレート(DEAD)(0.96g、5.5mmol)および2−3(1.1
5g、5mmol)のTHF(10mL)溶液を1時間かけて滴下した。室温で
16時間攪拌後、溶媒を除去し、残留物をEtOAcに取り、H2O、NaHC
O3飽和溶液、ブライン、10%KHSO4およびブラインで洗浄し、脱水した(
Na2SO4)。溶媒を除去し、残留物について、溶離液をヘキサン(4)/Et
OAc(1)とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製を行って
、純粋な2−4を得た。Rf 0.21、シリカ、20%EtOAc/ヘキサン
。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.20〜1.32(3H、m)
、1.42(9H、s)、1.81〜1.90(2H、m)、2.70〜2.8
5(2H、m)、3.84(2H、d)、3.94(3H、s)、4.09〜4
.14(2H、m)、7.00(1H、dd)、7.06(1H、m)、7.1
3(1
H、m)、7.32(1H、d)、8.82(1H、s)。
5−[(4−N−Boc−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニ ル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニンエチルエステル(2− 5)
2−4(0.77g、1.9mmol)を室温で攪拌下にLiOH・H2O(
0.24g、5.7mmol)で1時間処理し、所望の酸を得た。Rf 0.5
、シリカ、CHCl3(95)/MeOH(5)。
この酸(0.226g、0.58mmol)をDMFに溶かし、室温で1−8 b
(0.17g、5.8mmol)、HOBT(0.086g、0.64mmo
l)、NMM(0.176g、1.74mmol)およびEDC(0.13g、
0.68mmol)でこの順にて処理した。24時間攪拌後、溶媒を除去し、残
留物をH2O(50mL)/EtOAc(100mL)に取り、この有機相を1
0%KHSO4、ブライン、NaHCO3
飽和溶液、ブラインで洗浄し、脱水した(Na2SO4)。溶媒を除去し、残留物
について、溶離液をCHCl3(95)/MeOH(5)とするシリカゲルでの
フラッシュクロマトグラフィー精製を行って、純粋な2−5を得た。Rf 0.
19、シリカ、60%EtOAc/ヘキサン。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ1.15(3H、t)、1.23
〜1.39(3H、m)、1.48(9H、s)、1.81〜1.91(2H、
m)、2.70〜2.83(2H、m)、3.65〜3.76(1H、m)、3
.85(2H、d)、3.89〜3.98(1H、m)、4.01〜4.25(
5H、m)、5.80(1H、m)、6.78(1H、m)、6.72(1H、
s)、6.96(1H、m)、7.04(1H、s)、7.42〜7.61(4
H、m)、7.85(2H、d)、9.00(1H、s)。
5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S) −フェニルスルホニルアミノ−β−アラニン(2−6)
2−5(0.33g、0.53mmol)を室温で攪拌下にLiOH・H2
O(0.066g、1.57mmol)で1時間処理し、所望の酸を得た。Rf
0.1、シリカ、CHCl3(95)/CH3OH(5)/HOAc(1)。
この酸をEtOAcに溶かし、冷却して−25℃とし、HClガスで15分間
処理し、次に0℃で1時間攪拌した。溶媒を除去し、残留物をEtOAcで磨砕
して、純粋な2−6を得た。
1H NMR(400MHz、CD3OD)δ1.60〜1.71(2H、m)
、2.10〜2.22(3H、m)、2.99〜3.11(2H、m)、3.4
2〜3.50(2H、m)、3.54(1H、dd)、3.72(1H、dd)
、3.95(2H、d)、4.12(1H、dd)、6.88(1H、s)、6
.90(1H、dd)、7.08(1H、d)、7.30〜7.40(4H、m
)、7.52〜7.59(1H、m)、7.61〜7.70(1H、m)、7.
78〜7.86(H、m)。2−3の製造
イソニペコチン酸(isoni ecotic acid)メチルエステル(2−3b)
イソニペコチン酸2−3a(25g、0.19mol;Aldrich)を室温でM
eOH(300mL)に懸濁させ、HClガスを飽和するまで吹き込み、透明溶
液を得た。さらに10分後、溶媒を減圧下に除去して、2−3b(HCl塩)を
固体として得た。
1H NMR(300MHz、CD3OD)δ:1.9(2H、m)、2.18
(2H、m)、2.78(1H、m)、3.12(2H、brt)、3.40(
2H、m)、3.74(3H、s)。
N−Boc−イソニペコチン酸メチルエステル(2−3c)
イソニペコチン酸メチルエステルHCl(2−3b)(34g、0.19mo
l)およびジ−tert−ブチルジカルボネート(43.5g)0.2mol)
のTHF(300mL)およびH2O(150mL)溶液に、K2CO3(28.
8g、
0.21mol)を加えた。4時間後、混合物を水に投入し、EtOAcで抽出
し、ブラインで洗浄し、脱水し(MgSO4)、溶媒留去を行って、標題化合物2−3c
を、少量のジ−tert−ブチルジカルボネートを含む油状物として得
た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ:1.45(9H、s)、1.6
5(2H、m)、1.86(2H、m)、2.45(1H、m)、2.82(2
H、brt)、3.70(3H、s)、4.00(2H、m)。
N−Boc−4−ピペリジニルメタノール(2−3)
エステル2−3c(20.3g、83.5mmol)のTHF(300mL)
溶液に、アルゴン下で0℃にて、LAH(3.8g、100mmol)を数回に
分けて加えた。添加終了後、混合物を2時間攪拌し、氷に投入した。1N HC
lを加え、スラリーをEtOAcで3回抽出した。有機層を水、次にブラインで
洗浄し、脱水し(MgSO4)、濃縮して、白色固体を得た。該固体をヘキサン
/エーテル(9:1)とともに振り混ぜ、
濾過して、アルコール2−3を得た。
1H NMR(300MHz、CDCl3)δ:1.13(2H、dq)、1.
46(9H、s)、1.6〜1.8(3H、m)、1.89(1H、s)、2.
68(2H、brt)、3.45(2H、d)、4.10(2H、m)。治療処置
本発明の化合物は、ヒトまたは哺乳動物の血小板の凝集もしくは付着の阻害が
望まれる患者に投与することができる。
本発明の化合物は血小板凝集阻害に有用であり、従って動脈および臓器の手技
および/または血小板と人工表面との相互作用によって血小板の凝集および消費
が起こる末梢血管の手術(動脈移植片、頚動脈血管内膜切除術)および心血管術
において利用可能である。凝集した血小板は血栓および血栓塞栓を生じる可能性
がある。本発明の化合物をこれらの手術患者に投与して、血栓および血栓塞栓の
形成を防止することができる。実施例3
錠剤
活性化合物5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニ
ル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−
β−アラニンをそれぞれ25.0mg、50.0mgおよび100.0mg含有
する錠剤は以下に示す方法に従って製造される。
活性化合物を25〜100m含有する投与錠剤
活性化合物、セルロースおよびコーンスターチ(一部)を全て混合し、造粒し
て、10%コーンスターチペーストとする。得られた顆粒を篩にかけ、乾燥し、
残りのコーンスターチおよびステアリン酸マグネシウムと混合する。得られた顆
粒を打錠して、1錠当たり有効成分をそれぞれ25.0mg、50.0mgおよ
び100.0mg含有する錠剤を得る。実施例4 静脈投与製剤
上記の活性化合物の静脈投与製剤を以下の方法に従って製造する。
活性化合物 0.5〜10.0mg
クエン酸ナトリウム 5〜50mg
クエン酸 1〜15mg
塩化ナトリウム 1〜8mg
注射用水(USP) 1リットルまでの残量
上記の量を用いて、塩化ナトリウム、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの注
射用水(USP、1995年度米国薬局方/国民医薬品集1636頁(United S
tates Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville,Maryland,著作権1994
年)参照)溶液を予め調製しておいたものに、活性化合物を溶かす。実施例5 静脈投与製剤
5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドールカルボニル−2(S
)−フェニルスルホニルアミノ−β−アラニン、クエン酸緩衝液および塩化ナト
リウムを用いて室温で医薬組成物を調製して、濃度0.25mg/mLを得た。
水800gを標準的医薬混合容器に入れた。5−[(4−ピペリジニル)メト
キシ]−2−インドールカルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ−β
−アラニン0.25gをその
水に溶かした。クエン酸ナトリウム2.7gおよびクエン酸0.16gを加えて
、クエン酸イオンの最終濃度を10mMとした。塩化ナトリウム8gを加えた。
次に水200gを加えて、成分の所望の最終濃度とした。得られた水系製剤の組
成は以下の通りであった。成分
量
5−[(4−ピペリジニル)メトキシ]−2−インドール
カルボニル−2(S)−フェニルスルホニルアミノ 0.25mg/mL
−β−アラニン
クエン酸緩衝液 10mM
塩化ナトリウム 8mg/mL
最終濃厚製剤を30℃〜40℃で標準的なUSPI型ホウケイ酸ガラス容器に
保存する。化合物投与前に、上記濃厚製剤を4:1の比で希釈して、最終濃度0
.05mg/mLとして、輸液袋に移し入れる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S
Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD
,RU,TJ,TM),AL,AM,AU,AZ,BA
,BB,BG,BR,BY,CA,CN,CU,CZ,
EE,GE,HU,IL,IS,JP,KG,KR,K
Z,LC,LK,LR,LT,LV,MD,MG,MK
,MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SG,
SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,US,U
Z,VN
(72)発明者 ハルチエンコ,ワシル
アメリカ合衆国、ニユージヤージー・
07065、ローウエイ、イースト・リンカー
ン・アベニユー・126