JPH11511120A - 血小板特異的キメラ免疫グロブリン及びその使用方法 - Google Patents

血小板特異的キメラ免疫グロブリン及びその使用方法

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JPH11511120A JP9502244A JP50224497A JPH11511120A JP H11511120 A JPH11511120 A JP H11511120A JP 9502244 A JP9502244 A JP 9502244A JP 50224497 A JP50224497 A JP 50224497A JP H11511120 A JPH11511120 A JP H11511120A
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Abstract

(57)【要約】 GPIIb/IIIa及びビトロネクチン受容体と選択的に結合する作用剤が開示され、閉塞、再閉塞(例えば、剥離閉塞)、狭窄及び/又は再狭窄の減少又は予防に使用することができる。1つの態様において、非ヒト抗原結合領域及びヒト定常領域を含む血小板特異的キメラ免疫グロブリン又はその断片等の免疫グロブリン又はその断片が、本発明の方法に使用される。

Description

【発明の詳細な説明】 血小板特異的キメラ免疫グロブリン及びその使用方法 発明の背景 血小板の凝集は、血液凝固の形成における本質的事象である。正常な環境下に おいては、血液の凝塊は血液細胞の血管系からの流出を防止するのに役立つ。し かしながら、ある疾病状態にあっては、凝塊は血流を制限しあるいは全く閉塞し て細胞の壊死を招く。 例えば、アテローム性動脈硬化症斑の位置の血小板凝集及びそれに続く血栓症 は、アンギナ(angina)、急性心筋梗塞症、及び血栓崩壊(thrombolysis)や血管 形成術が成功した後に生ずる再閉塞のような症状の発生の重要な原因因子である 。心臓発作の患者は、凝塊のフィブリン成分を溶解する組織プラスミノーゲン・ アクチベーターやストレプトキナーゼのような血栓崩壊剤で治療するのが普通で ある。フィブリン溶解に関連する主な併発症は、血小板凝集による再閉塞であり 、これは一層の心臓障害を生じ得る。糖タンパク質である(GP)IIb/II Ia受容体は血小板凝集の原因となることが知られているから、これらの受容体 をブロックする試薬は血栓崩壊治療後の再閉塞を減少させ又は防止すること及び 血栓崩壊の速度を加速することが期待される。このような試薬としては、他の血 管閉塞性疾病及び血栓塞栓症の治療にも有用であると期待される。 血小板凝集をブロックする一つの取組みは、GPIIb/IIIa受容体に特 異的なモノクローナル抗体を用いるものである。血小板凝集を阻害しそしてヒト 血栓症の治療に有用にみえる、7E3と命名されたネズミ・モノクローナル抗体 が公開された欧州特許出願第205,207号及び第206,532号に開示さ れている。ネズミ抗体がヒト治療にそれを使用する際厳しく制限されるという特 徴を有することは当該分野で公知である。外来タンパク質として、ネズミ抗体は その治療効果を減少させ又は破壊する及び/又はアレルギー反応又は感作性過剰 反応を患者に引き起こす免疫反応を惹起する。血栓塞栓症におけるこのような治 療のやり方で再投与する必要が生ずると、この種の免疫反応の起こる蓋然性が増 加する。 ヒト定常領域に結合した非ヒト結合領域からなるキメラ抗体は、ネズミ抗体の 免疫反応問題を克服する1手段として示唆されてきた。Proc .Natl.Acad.Sci. USA81:6851(1984)及びPCT出願第PCT/GB85 00392号を参照 。定常領域は主として抗体分子の免疫反応性に責任があるから、ヒト起源の定常 領域を持つキメラ抗体はヒトにおいて抗ネズミ応答を惹起し難いと推測される。 しかしながら、ヒト定常領域を所望の特異性のネズミ結合領域への連結が免疫反 応性を低減するかどうか(免疫原性の程度及び/又は発生率等)及び/又はその 結果生ずるキメラ抗体の結合能を変えるかどうかは予測できるものではない。本発明の概要 本発明は、非ヒト起源の可変領域すなわち抗原結合領域及びヒト起源の定常領 域を含む血小板特異的なキメラ免疫グロブリンに関する。キメラ免疫グロブリン は、GPIIb/IIIa受容体又は他の血小板成分に特異的であってもよい。 これらの抗体は血小板に結合しそして血小板凝集をブロックすることができる、 従って様々な臨床状態(例えば、血管形成術と同時に行われた血栓崩壊療法の後 の状態)で生ずる閉塞又は再閉塞の防止又は低減、及び狭窄及び/又は再狭窄の 防止における抗血栓症剤として有用である。別の態様において、GPIIb/I IIa受容体及びビトロネクチン受容体に結合する作用剤を用いて、閉塞、再閉 塞(突然の閉鎖等)、狭窄及び/又は再狭窄を低減又は予防する。本発明の抗血 小板抗体はイメージングにおいても有用である。図面の簡単な説明 図1は、プローブとしてクローニングされた可変領域を用いた、7E3モノク ローナル抗体の重鎖及び軽鎖mRNAのノーザン分析の結果を示す図である。 図2A〜2Bは、プラスミドp7E3VkhCk(図2A)及びプラスミドp7 E3VHhCG4(図2B)の概略図であって、これらはキメラ7E3免疫グロブ リンのそれぞれ軽鎖及び重鎖をコードするキメラ遺伝子構築物を保持する。 図3は、ベクターp7E3VkhCk及びp7E3VHhCG4によりコードされ ているキメラ7E3免疫グロブリンの血小板への結合を示す図である。 図4は、キメラ7E3(c7E3)免疫グロブリンによる血小板凝集の阻害を 示す図である。 図5は、安定な冠動脈疾病を有する3人の患者における、5分間の注入により 0.20mg/kgの用量のc7E3・Fabを静脈投与された後の血漿からの c7E3・Fab(γ1,κ)の初期クリアランスの迅速さを示す、血漿抗体濃度 (ng/mL)対時間(日)のグラフである。 図6A〜6Cは、抗体(γ1,κ)の投与後2時間にキメラ7E3・Fab(0 .15mg/kg、0.20mg/kg、又は0.25mg/kg)の1回ボー ラス投与の血小板活性に対する効果を要約する図である。用量応答は、血小板活 性が受容体遮断(図6A)、血小板凝集(図6B)、及び出血時間(図6C)に ついて試験されるとき、明らかに認められる。線は中央値を表す。 図7A〜7Cは、0.25mg/kgの1回ボーラス投与で血管形成手術の前 に投与されたキメラ7E3・Fab(γ1,κ)の抗血小板効果の期間を示す図で ある。線はベースラインのゼロ時間から受容体遮断のための24時間までの中央 値(図7A)、血小板凝集(図7B)、及び出血時間(図7C)を示す。 図8A〜8Cは、11人の患者に0.25mg/kgの1回ボーラス投与後に キメラ7E3・Fab(γ1,κ)の12時間連続注入(10μg/分)を行った 場合の抗血小板活性を要約する図である。線は受容体遮断%について測定した値 の中央値(図8A)、投与前の血小板凝集の%(ゼロ時間におけるベースライン )(図8B)、及び出血時間(図8C)を表す。 図9は、実施例4に記載された47人の患者に対する、ベースラインから注入 の終了後24時間までのヘマトクリットの変化の絶対値を示す図である。 図10は、3治療グループに対する無差別化の時からの非緊急な反復経皮再血 管化手術の確率を示すカプラン−マイエル(Kaplan−Meier)プロッ トである。 図11は、トライアルにはいった重要なサブグループ(右側にリスト)に対す るオッド比(odds ratio)及び95%信頼間隔を示すグラフである。データは主 要効果終了点(死亡、非致命的梗塞症、緊急な血管形成手術又は外科手術、又は 無反応性虚血に対する冠動脈ステント(coronary stent)の設置又は大動脈内バ ルーンポンプ)を示す。また、各サブグループに対する主要終了点の絶対的事象 比率は表の左側に示す(事象比率(%))。 図12は、6ヶ月のフォローアップ期間にわたって事象のなかった患者すべて の割合を示すグラフである。 図13は、介入(intervention)に成功し、30日後まで事象のなかった患者 の中における6ヶ月のフォローアップ期間にわたって事象のなかった患者の割合 を示すグラフである。 図14は、初期の介入に成功した患者の中で最初の48時間後の事象を考慮し て6ヶ月のフォローアップ期間にわたって事象のなかった患者の割合を示すグラ フである。 図15は、6ヶ月のフォローアップ期間にわたって大動脈関連の血管再形成術 (PRA、大動脈関連の手術)を試みなかった患者すべての割合を示すグラフで ある。 図16は、刺激しないHUVECへの125I−c7E3 Fabの飽和結合を 示すグラフである。飽和データを用いて、図17A〜17Eに示すスキャッチャ ードプロットを作成した。 図17A〜17Eは、刺激しないHUVEC(図17A);50ユニット/m lのTNFαで4時間刺激したHUVEC(図17B);50ユニット/mlの TNFαで24時間刺激したHUVEC(図17C);無血清培地中の刺激しな いHUVEC(図17D);抗体のキャッピングと内在化を予防するための0. 02%のアジドの存在下での刺激しないHUVEC(図17E)への125I−c 7E3 Fabの飽和結合のスキャッチャード分析の図である。非特異的結合を 明らかにするために100倍過剰の非放射性c7E3 Fabの存在下又は非存 在下で、125I−c7E3 Fabの濃度を増加させながらHUVECをインキ ュベートした。結合した125I−c7E3 Fabを横座標にプロットし、遊離 の抗体の濃度で割った結合量を縦座標にプロットした。曲線を通る直線回帰によ り、各グラフに示した式が得られた。(−)の傾きは、Ka値として定義される 。Y軸との切片は、Bmax、即ち、結合した抗体の最大量である。各グラフのデ ータの点は、三連の測定の平均を示す。 図18は、内皮細胞に結合する125I−LM609のスキャッチャード分析の 図である。非特異的結合を明らかにするために100倍過剰の非放射性c7E3 Fabの存在下又は非存在下で、ビトロネクチン受容体特異的抗体125I−L M609の濃度を増加させながらHUVECをインキュベートした。結合した12 5 I−LM609を横座標にプロットし、遊離の抗体の濃度で割った結合量を縦 座標にプロットした。曲線を通る直線回帰により、下記式が得られた: y=1.0831e+10−1.2188e+9x R2=0.888。 (−)の傾きは、Ka値として定義される。Y軸との切片は、Bmax、即ち、結合 した抗体の最大量である。データの点は、三連の測定の平均を示す。 図19は、内皮細胞への結合に対する125I−c7E3 Fabを用いる抗体 の競合結合を示すグラフである。増加した濃度の非放射性競合剤の存在下で、1 μg/mlの125I−c7E3とともにHUVECをインキュベートした。抗C D51は、ビトロネクチン受容体のα鎖を認識するモノクローナル抗体であり; 抗IIIaは、GPIIIaと反応するモノクローナル抗体であり;ビトロネク チンは、ヒト血漿から単離された天然の蛋白質であり;c7E3 Fabは、キ メラ7E3 Fab断片であり;m7E3 IgGは、ネズミ7E3 IgGで あり;抗7E3は、ラビットの可変領域特異的抗7E3抗体であり;LM609 は、αVβ3複合体(ビトロネクチン受容体)と結合するがGPIIb/IIIa とは結合しないモノクローナル抗体であり;10E5は、GPIIb/IIIa と反応するが内皮細胞のGPIIb/IIIaを認識しないモノクローナル抗体 であり;キメラMT412は、イソタイプ適合キメラFab断片対照として使用 される抗CD4抗体である。データの点は、三連の測定の平均を示す。 図20A〜20Bは、c7E3 Fabで処理した後の内皮細胞上での接着蛋 白質の発現を示すヒストグラムである。c7E3 Fabで4時間処理した後の HUVEC上のE−セレクチンの発現とc7E3 Fabで24時間処理した後 のHUVEC上のICAM−1の発現を、125I−抗E−セレクチン結合(図2 0A)又は125I−抗ICAM−結合(図20B)によりモニターした。示され た濃度のキメラ7E3 Fab又はキメラMT412 Fab(イソタイプ適合 陰性対照抗体である抗CD4抗体)で、4時間又は24時間のいずれかの間HU VECを処理した。E−セレクチン及びICAM−1の発現を増加させるための 陽性対照として、TNFαを用いた。データの点は、三連の測定の平均±SEM を示す。 図21A〜21Bは、c7E3 Fabで処理した内皮細胞へのPMNの接着 を示すヒストグラムである。100μg/mlのキメラ7E3 Fab又は10 0μg/mlのキメラMT412 Fab抗体で、4時間(図21A)又は24 時間(図21B)のいずれかでHUVECを処理した。E−セレクチンおよびI CAM−1の発現を増加させ、従って、PMNに対する付着を増加させるための 陽性対照として、TNFαを用いた。データは、三連の測定の平均±SEMを示 す。発明の詳細な説明 本発明のキメラ免疫グロブリンは個々のキメラ免疫グロブリン重鎖とキメラ免 疫グロブリン軽鎖とを含む。キメラ重鎖は、ヒト重鎖定常領域に連結した(例え ば、GPIIb/IIIa受容体に特異的な抗体等の血小板特異的な非ヒト抗体 の重鎖由来の)非ヒト抗原結合領域を含む。キメラ軽鎖は、ヒト軽鎖定常領域に 連結した(例えば、非ヒト抗体の軽鎖由来の)非ヒト抗原結合領域を含む。 本発明の免疫グロブリンは一価、二価、又は多価であってもよい。一価の免疫 グロブリンは、キメラ軽鎖とジスルフィド橋で結合したキメラ重鎖から形成され るダイマー(HL)である。二価の免疫グロブリンは、少なくとも1個のジスル フィド橋で結合した2個のダイマーから形成されるテトラマー(H22)である 。多価の免疫グロブリンは、例えば、凝集する重鎖定常領域(例えば、μ重鎖定 常領域)を用いて作製することもできる。Fab、Fab’又はF(ab’)2 のようなキメラ免疫グロブリン断片も作製することができる。 キメラ免疫グロブリンの非ヒト抗原結合領域は、血小板に特異的な免疫グロブ リンから誘導される。好ましい免疫グロブリンは血小板のGPIIb/IIIa 受容体に特異的なものであり、糖タンパク質GPIIb/IIIa受容体複合体 に結合するリガンドをブロックすることができるものである。 血栓症は、血管壁の障害部位における血小板の吸着で始まる。血小板の吸着は 、暴露された内皮下層にある細胞外マトリックスタンパク質、例えばフォンウイ ルブラント因子、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニンの ようなものに結合する血小板表面受容体によって媒介される。血小板の吸着によ り、血小板の単層が形成される。続いて、エピネフリン、ADP、コラーゲン、 及びトロンビンなどのアゴニストに応答して、血小板の活性化が起こる。活性化 により、血小板表面で糖タンパク質GPIIb/IIIa受容体(GPIIb/ IIIa)が暴露されることになる。活性化血小板上のGPIIb/IIIaは 、次いでフィブリノーゲンに結合することができるようになり、これは血小板凝 集を媒介することができる。フォンウイルブラント因子のような他の吸着性タン パク質へのGPIIb/IIIaの結合も、血小板を交差架橋しそして凝集させ る原因となる。従って、フィブリノーゲン又はフォンウイルブラント因子のよう な吸着性分子のGPIIb/IIIaへの結合が血小板の凝集の原因となるのは 、血栓形成の共通のステップであり、GPIIb/IIIa受容体をフィブリノ ーゲン等の分子とGPIIb/IIIaの相互作用を妨害することができる治療 剤開発のための魅力的な標的とする。さらに、抗GPIIb/IIIaキメラ抗 体を用いることにより、活性化された血小板の凝集を、血小板の初期吸着を妨害 することなく、阻害することができると期待される。血小板凝集のこの選択的阻 害は凝集のない血小板吸着が止血の維持に貢献することから、望ましいことであ る。 血小板特異的抗体として適当なものの例としては、7E3及び10E5が挙げ られる。欧州特許出願第0,205,207号、第0,206,532号及び第 0,206,533号を参照せよ。これらの教示は、参考により本明細書に合体 される。7E3抗体(又は同一又は機能的に同等なエピトープに対し反応性を有 する抗体)は、それがGPIIb/IIIa受容体の複合体型に特異的であると いう理由で特に好ましい。IIb又はIIIa成分に特異的なもののようなGP IIb/IIIa受容体(7E3により認識される抗原)に特異的な他の抗体も 使用することができる。他の血小板抗原に特異的な抗体を用いることができる。 例えば、S12抗体(J .Biol.Chem.259:9799-9804(1984); 米国特許第4, 783,330号)のような血小板αグラニュール膜タンパク質GMP−140 に対し反応性を有する抗体を使用することができる。 キメラ抗体の抗原結合領域は、非ヒト起源の免疫グロブリンから誘導すること ができる。ネズミ起源の抗原結合領域が好ましい。それは血小板、そして特にG PIIb/IIIa受容体に対するネズミ抗体は入手可能であり、あるいはネズ ミ系で作製することができるからである。他の動物やげっ歯類は抗原結合領域の 別の起源となる〔参照、例えば、Newman et al.,Bio/technology10: 1455-146 0(1992)〕。一つの態様においてはキメラ免疫グロブリンの抗原結合領域は、特 異的又は選択的抗原結合をするのに十分な非ヒト起源の血小板特異的な免疫グロ ブリンの一部、例えば非ヒト免疫グロブリン由来の1個以上の相補的決定領域又 はそれらの部分を少なくとも含んでいる(参照、例えば、Winter,米国特許第5 ,225,539号、欧州特許第0,239,400号、英国特許第2,188 ,638号;Adair et al.,国際公開第91/09967号パンフレット;Jolli ffe et al.,国際公開第91/09966号パンフレット)。別の態様では、キ メラ免疫グロブリンは、ヒト重鎖定常領域の少なくとも一部分に連結されている 非ヒト免疫グロブリンの重鎖由来の可変領域を含む少なくとも1つのキメラ重鎖 、及びヒト軽鎖定常領域の少なくとも一部分と共有結合している非ヒト免疫グロ ブリンの軽鎖由来の可変領域を含む少なくとも一つのキメラ軽鎖を含んでいる。 可変領域及び定常領域の他の組み合わせも可能である(参照、米国特許第5,1 69,939号)。 キメラ抗体の定常領域はヒト免疫グロブリン由来のものである。重鎖定常領域 は5個のアイソタイプ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミューの いずれかから選択することができる。さらに、種々のサブクラス(重鎖のIgG サブクラスなど)の重鎖は異なるエフェクター機能を担っている。従って、所望 の重鎖定常領域を選択することにより、所望のエフェクター機能を有するキメラ 抗体を作製することができる。好ましい定常領域はガンマ1(IgG1)、ガン マ3(IgG3)及びガンマ4(IgG4)である。軽鎖定常領域はカッパ型と ラムダ型とがあり得る。 一般に、キメラ抗体は、キメラ免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖成分のおのおの に対し、ヒト定常領域の少なくとも一部をコードする第二のDNAセグメントに 連結した非ヒト起源の血小板特異的な可変領域の少なくとも機能的部分(例えば 、連結セグメントと共に機能的に配列された可変領域)をコードする第一のDN Aセグメントを含む融合遺伝子を調製することにより作製される。融合遺伝子の それぞれは、発現ベクター中に組み込まれ又は挿入され、融合遺伝子を発現可能 な形で含む発現ベクターができあがる。一つの態様では、抗原結合領域を含むD NAを介入配列を介して定常領域に共有結合させる。別の態様では、1個以上の 介入配列を欠いている構築物を構築し取得することができる。次に、遺伝子産物 を発現することができる受容細胞をこの遺伝子でトランスフェクトする。トラン スフェクトされた受容細胞を、取り込まれた遺伝子の発現が行われるような条件 下で培養し、そして発現された免疫グロブリン又は免疫グロブリンの鎖を回収す る。 Ig軽鎖及びIg重鎖の可変領域をコードする遺伝子は、血小板特異的抗体を 産生するリンパ系細胞から得ることができる。例えば、GPIIb/IIIa受 容体に対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞系は、本発明のキメラ抗体のた めの免疫グロブリン可変領域の材料を提供する。他のゲッ歯類細胞系も入手可能 である。細胞系はゲッ歯類動物にヒト血小板又はGPIIb/IIIa受容体含 有成分又は血小板の一部をチャレンジし、抗体産生細胞とミエローマ細胞系との 融合ハイブリッド細胞を形成させ、該ハイブリッドをクローニングし、そして血 小板又は糖タンパク質IIb/IIIa受容体に対する抗体を産生するクローン を選択することにより作製することができる。 定常領域は、標準的クローニング技法によりヒト抗体産生細胞から得ることが できる。又は、二つのクラスの軽鎖及び五つのクラスの重鎖を表す遺伝子がクロ ーニングされたので、ヒト起源の定常領域はこれらのクローンから容易に入手す ることができる。F(ab’)2及びFabなどのキメラ抗体結合断片は、切断 型でキメラ重鎖遺伝子を設計することにより作製することができる。例えば、F (ab’)2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子は重鎖のCH1ドメイン及びヒン ジ領域をコードするDNA配列を含むであろう。また、このような断片はキメラ 免疫グロブリンの酵素的切断によって取得することができる。例えば、パパイ ン又はペプシンによる切断により、それぞれFab断片又はF(ab’)2断片 を作製することができる。 好ましくは、キメラ軽鎖及びキメラ重鎖(又はそれらの部分)をコードする融 合遺伝子は受容細胞を同時トランスフェクトするために使用することができる二 つの異なる発現ベクター中でアセンブルする。各ベクターは、二つの選択可能な 遺伝子−−細菌系での選択のためのもの及び真核細胞系での選択用のもの−−を 含んでいる。ここで各ベクターは異なる対の遺伝子を含んでいる。これらのベク ターにより、細菌系で融合遺伝子の産生及び増幅を行い、続いて真核細胞に同時 トランスフェクション及び同時トランスフェクトされた細胞の選択を行う。細菌 系で選択可能な遺伝子の例としては、アンピシリン耐性を与える遺伝子及びクロ ラムフェニコール耐性を与える遺伝子が挙げられる。真核細胞のトランスフェタ ントの選択のための2つの選択可能遺伝子としては、次のものが好ましい。(i )キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt)、 及び(ii)Tn5からのホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと命名)が 挙げられる。gptを用いる選択は、この遺伝子によりコードされる酵素のプリ ンヌクレオチド合成のため基質としてキサンチンを利用する能力に基づく。類似 の内因性酵素は利用できない。キサンチン及びイノシンモノホスフェートのキサ ンチンモノホスフェートへの転換を遮断するミコフェノール酸を含む培地中で、 gpt遺伝子を発現する細胞のみが生き残ることができる。neo遺伝子の産物 は、真核細胞中での抗生物質G418及び同クラスの他の抗生物質によるタンパ ク質合成の阻害をブロックする。この二つの選択方法は、二つの異なるDNAベ クターに乗せて真核細胞中に導入された免疫グロブリン鎖遺伝子の発現を選択す るために同時に又は逐次的に用いることができる。 好ましい受容細胞系はミエローマ細胞である。ミエローマ細胞は、トランスフ ェクトされたIg遺伝子によりコードされる免疫グロブリンを合成し、アセンブ ルしそして分泌することができる。さらに、これらは免疫グロブリンのグリコシ ル化のための機構を有している。特に好ましい受容細胞はSP2/0のようなI g−非産生ミエローマ細胞系である。これらの細胞系は、トランスフェクトされ た免疫グロブリン遺伝子によりコードされる免疫グロブリンのみを生産する。ミ エローマ細胞は培地で増殖させることもできるし、マウスの腹膜内において増殖 させることもできる、この場合分泌された免疫グロブリンは腹水から得ることが できる。Bリンパ球のような他のリンパ系細胞またはハイブリドーマ細胞も好適 な受容細胞となり得る。 免疫グロブリンをコードする遺伝子を含むベクターでリンパ系細胞をトランス フェクトする方法は数種ある。DNAをリンパ系細胞に導入するための好ましい 方法は、電気穿孔法である。この方法では、取り込まれるDNAの存在下に受容 細胞を電気パルスにかける。例えば、Potter et al., Proc .Natl.Acad.Sci. USA,81: 7161(1984)を参照。DNAを導入する別の方法は、プロトプラスト融合 法である。この方法では、キメラIg遺伝子を含む組み換えプラスミドを持つ細 菌の細胞壁を剥がすためにリゾチームを使用する。得られたスフェロプラストを ミエローマ細胞とポリエチレングリコールを用いて融合する。プロトプラスト融 合法実施後にトランスフェクタントを選択し単離する。DNAを多くの細胞タイ プに導入するために使用できる別の技術は、リン酸カルシウム沈澱法である。 キメラ免疫グロブリン遺伝子は、細菌や酵母などの非リンパ系細胞においても 発現させることができる。細菌内で発現させた場合、免疫グロブリンの重鎖と軽 鎖は封入体の一部となる。従って、これらの鎖は単離し精製した後、機能的免疫 グロブリン分子の中に組み立てられなければならない。大腸菌における発現につ いては、大腸菌からシグナル配列を含む融合蛋白として分泌させることを含めて 、他の方法も利用できる(例えば、Pluckthun,A., Bio/Technology ,9: 545-55 1(1991); Skerra,A.et al.Bio/Technology ,9: 273-278(1991)を参照)。血小板特異的キメラ免疫グロブリンの有用性 本発明の血小板特異的キメラ抗体は抗血栓治療剤として有用である。本発明の キメラ抗体(またはそれらの断片)は、たとえば血栓を有する患者や血栓形成の 危険がある患者の血小板凝集や血栓形成を抑制する目的に使用することができる 。本発明の抗体はまた、血小板凝集によって引き起こされ、血栓形成や血栓再形 成に先立ち起きることがある血流の変化(例えば、周期性血流変動)を抑制する 目的にも使用することができる。本発明の抗体は血栓形成または血栓再形成(再 閉塞)の予防を図る又は最小にする様々な状況において使用することができる。 さらに、本発明の抗体は狭窄または再狭窄の抑制(減少、遅延、または予防)を 図る様々な状況において使用することができる。 たとえば、冠状動脈疾患を有する患者やその危険がある患者は、血管の閉塞、 再閉塞、狭窄、および/または再狭窄を抑制する目的で本発明の抗血小板キメラ 抗体又は抗体断片(たとえば抗GPIIb/IIIaキメラ抗体、又は好ましく はキメラ7E3 FabやF(ab’)2など該抗体の断片)の有効量投与が奏 効しうる。 本発明の抗体は、たとえば肺塞栓症、一過性虚血発作(TIAs)、深部血管 血栓症、冠状動脈バイパス術、人工弁または人工血管(たとえば自家、非自家、 または合成血管移植の場合)の挿入手術又は血管(冠状若しくは末梢)の展開に おける血栓予防の目的で個体(たとえばヒトなどの哺乳動物)に投与することが できる。本発明の抗体は、冠状動脈介入手術(たとえば血管形成術、ステントの 配置、ステントの配置を伴う血管形成術、血管移植)又は他の血管介入手術(た とえば末梢ステントの展開、人工弁若しくは人工血管の挿入(自家、非自家、若 しくは合成血管移植の場合等))の術前、術中及び/又は術後の血小板凝集およ び血栓症を予防する目的で個体に投与することもできる。本発明の抗体は、例え ば、バルーン法、冠状動脈切除術、レーザー血管形成術などの適当な方法によっ て実施される血管形成術を受けた個体に投与することができる。抗体は血管形成 術に先立ち投与(血管形成術前投与)してもよいし、血管形成術中、または血管 形成術後に投与してもよい。上記処置により血栓症を予防することができるので 、死亡、心筋梗塞、またはPTCAや冠状動脈バイパス術を要する再発性虚血発 作(急性虚血発作)などの血管形成術に伴う血栓症合併症の発生率を低下させる ことができる。また、上記処置は、死亡、心筋梗塞、またはPTCAや冠状動脈 バイパス術(血管再生術)を要する再発性虚血発作などの冠状動脈介入手術(た とえば血管形成術、ステントの配置、ステントの配置を伴う血管形成術、血管移 植)に伴う虚血発作や合併症の発生率を長期的に低下させるという利益をもたら しうるが、この発生率の低下は狭窄や再狭窄の減少、遅延、または予防の指標と なる。他の血管介入手術(たとえば末梢ステントの展開、人工弁若しくは人工血 管の挿入(自家、非自家、または合成血管移植の場合等))による虚血発作や合 併症を長期的に低下させること又は予防することも、該手術前、手術中及び/又 は手術後に本発明の抗体を投与することにより達成可能である。 たとえば実施例4に示すように、血管形成術(経皮経管的冠状動脈形成術、P TCA)に先立ち抗血小板キメラ抗体(キメラ7E3 Fab断片)をアジュバ ント療法で投与したところ、出血時間を延長させ、アゴニスト誘導性血小板凝集 (生体外血小板凝集測定法で測定)を低下させた。実施例4および実施例5に示 した実験結果から、血小板GPIIb/IIIaの阻害とc7E3抗体(Fab 断片)による凝集抑制はヒトにおける生体内抗血栓作用をもたらすものと思われ る。 キメラ7E3抗体断片の投与に関する無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験 の結果を実施例6および実施例7に示した。実施例6に示したデータから、血管 形成術を受けて剥離閉鎖(再閉塞)の危険が高まっている患者にキメラ7E3抗 体断片を投与すると、剥離閉鎖(再閉塞)が予防され、急性虚血発生率を低下さ せうることがわかる。実施例7でさらに説明するように、血管形成術を受けて剥 離閉鎖(再閉塞)の危険が高まっている患者にキメラ7E3抗体断片を投与する と、後で起こりうる再狭窄を減少させたり遅延させたり及び/又は予防すること ができる。 抗GPIIb/IIIaキメラ抗体断片を投与すると非急性虚血合併症の発生 率が低下するが(実施例7参照)、この長期的効果はこれまで見られなかったも のである。GPIIb/IIIa受容体に選択的に結合する他の化合物又は作用 剤を用いて狭窄や再狭窄を予防または減少させることによって非急性虚血合併症 の発生率を下げるという臨床効果を得ることができる。また、これらの化合物の 投与により閉塞や再閉塞を予防することもできる。これらの化合物の具体例とし ては、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、免疫グロブリン系若しくは非免疫 グロブリン系ペプチド又はタンパク質(たとえば合成のものや組み換え体など) 、それらの類似体、および核酸や核酸類似体などが挙げられる。例えば、冠状動 脈疾患を有する患者やその危険がある患者は、GPIIb/IIIa受容体に選 択的に結合することで血管の閉塞、再閉塞、狭窄、および/または再狭窄を抑制 する化合物の有効量投与が奏効しうる。 1つの態様において、血管の狭窄及び/又は再狭窄は、GPIIb/IIIa 及びαVβ3と称するビトロネクチン受容体に結合する化合物又は作用剤(GPI Ib/IIIaのアンタゴニスト、免疫グロブリン若しくは非免疫グロブリンペ プチド又は蛋白質(合成、組み換え等)、それらの類似体並びに核酸又は核酸類 似体等)を予防的に又は治療的に投与することにより、阻害することができる。 血小板糖蛋白質GPIIb/IIIa(CD41/CD61とも称する)は、構 造的及び免疫学的特性を共有するインテグリン受容体ファミリーに属する。GP IIb/IIIaに密接に関連するインテグリンは、ビトロネクチン受容体(αV β3、CD51/CD61とも称する)であり、GPIIb/IIIaと同一の βサブユニット(即ち、β3)を用いるが、異なるαサブユニットを有するもの である。ビトロネクチン受容体は、内皮細胞及び血管平滑筋細胞等の細胞で(及 びより少ない範囲に、血小板で)発現しており、種々の細胞外マトリックス蛋白 質(ビトロネクチン、フィブロネクチン、フォン ウイルブラント(von Wi llebrand)因子、フィブリノーゲン、オステオポンチン、トロンボスポンジン、 コラーゲン、ペルレカン等)への接着を媒介する。GPIIb/IIIaとビト ロネクチン受容体とのホモロジーは、GPIIb/IIIaに対するモノクロー ナル抗体7E3が、内皮細胞で発現したビトロネクチン受容体にも結合する程度 に十分である(実施例10)。 血管壁の傷害により、細胞の活性化及び増殖の様々なメディエーターの放出を 導く。凝固に関与する血小板凝集、血小板脱顆粒、転位(inversion)及び血小板 表面事象は、血栓症並びに傷害部位で細胞増殖および移動を刺激する他の因子( 血小板由来成長因子等の成長因子類及びサイトカイン類等)の放出を導く。炎症 性サイトカインは、該領域に蓄積するマトリックス蛋白質(コラーゲン、オステ オポンチン、ビトロネクチン等)の産生を誘導する。細胞移動が引き起こされ、 血管平滑筋細胞、内皮細胞、マクロファージ、線維芽細胞及びその他の炎症性細 胞が該部位に移動し、血管内腔を狭める(狭窄又は再狭窄)病変(アテローム等 )を導く。 αVβ3インテグリン又はビトロネクチン受容体は、傷害の部位への細胞(内皮 細胞等)の移動に関わる。αVβ3は、アテローム性動脈硬化の病変に存在するビ トロネクチン、オステオポンチン又は他のマトリックス蛋白質等の細胞外マトリ ックス蛋白質に結合する。ビトロネクチンに結合した場合等のαVβ3受容体のク ロスリンクは、移動/活性化シグナル並びに移動を促進する物質の産生を開始す ることができる。血管内腔を狭める再狭窄は、血栓症的事象を導く。 特別な理論により結合することを期待するわけではないが、GPIIb/II IaとαVβ3の両方と反応し、それらの機能を阻害する作用剤(c7E3 Fa bのごとき抗体等)の投与は、血小板凝集、脱顆粒及び転位を阻害することが可 能で、血栓形成及び急性臨床事象を予防する血管壁を不導態化することができる と結論することは合理的である。従って、凝固に関わる血小板表面事象等の他の 事象を、低減又は予防することが可能であり、形成した血栓の量及び放出した 他の因子(成長因子類及びサイトカイン類等)の量の低下並びに細胞の増殖、移 動及び病変形成の阻害を導く。キメラ抗GPIIb/IIIa抗体断片の投与で 観察された(実施例7を参照)非急性虚血性合併症の低減により示されたように 、先例のない長期にわたる恩恵に基づき、血小板GPIIb/IIIaと内皮細 胞に存在するαVβ3インテグリンとに反応し、それらの機能を阻害する作用剤( c7E3 Fabのごとき抗体等)の投与は、冠動脈介入術の非急性虚血性合併 症(該手術後約3〜6月後の後期臨床事象等)を低減又は予防できる。例えば、 GPIIb/IIIa及びビトロネクチン受容体に結合するFv、Fab、Fa b’及びF(ab’)2断片等の抗体又は抗体断片を投与することができる。 好適な抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってもよく、抗体又は 免疫グロブリンという用語は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の両 方を含む意味である。また、抗体又は免疫グロブリンという用語は、単鎖抗体、 キメラ、ヒト化又は霊長類化(CDR移植)抗体並びに2以上の種由来の部分を 含むキメラ又はCDR移植単鎖抗体をも含む意味である。例えば、Cabillyら、 米国特許第4,816,567号明細書;Cabilly ら、欧州特許第0,125, 023号B1;Winter、米国特許第5,225,539号明細書;及びWinter、 欧州特許第0,239,400号B1を参照のこと。霊長類化抗体に関するNewm an,R.ら、BioTechnology,10: 1455-1460(1992)並びに単鎖抗体に関するLadner ら、米国特許第4,946,778号明細書及びBird,R.E.ら、Science,242 :423-426(1988)も参照のこと。 例えば、GPIIb/IIIa及びビトロネクチン受容体に結合するネズミ7 E3抗体又はキメラ7E3抗体を用いることができる。別の態様において、投与 対象の抗体は、7E3抗体により結合されるGPIIb/IIIa及びビトロネ クチン受容体の同一の(又は機能的に同等の)エピトープと反応できる。例えば 、GPIIb/IIIa及びビトロネクチン受容体へのモノクローナル抗体7E 3の結合を遮断する抗体を用いることができる。好ましい態様において、かかる 交差反応性抗体又はその一部(Fab断片等)は、血小板上のGPIIb/II Ia及び内皮細胞上のビトロネクチン受容体に対して、例えば、少なくとも約5 .0x107-1、より好ましくは少なくとも約1.0x108-1で高親和性を 有する。 かかる抗体は、適当な免疫原(血小板、単離及び/又は精製GPIIb/II Ia若しくはαVβ3又はそれらの構成鎖、特にβ3鎖、前記分子若しくは合成分 子の一部等)に対して惹起させることが可能である。免疫化抗原の調製並びにポ リクローナル抗体及びモノクローナル抗体の産生は、いかなる好適な技術を用い て行なってもよい。種々の方法が記載されている(例えば、米国特許第5,33 6,618号明細書(Coller); Kohler ら、Nature,256: 495-497(1975)とEur. J.Immunol.6: 511-519(1976); Milstein ら、Nature,266: 550-552(1977);K oprowski ら、米国特許第4,172,124号明細書; Harlow,E.とD.Lane ,1988,Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory: Cold Spring Harbor,NY); Current Protocols In Molecular Biology,Vol.2( Supplement 27,Summer '94),Ausubel,F.M.ら編集、(John Wiley & Sons:N ew York,NY),11 章、(1991)を参照)。投与 血小板が凝集すると凝固カスケードが活性化され、さらに安定なフィブリン網 状構造と閉塞性クロットができるが、これらは血栓溶解剤で溶解させることがで きる。本発明の抗体またはGPIIb/IIIa受容体に選択的に結合する化合 物は、たとえば血栓溶解後に起こりうる再閉塞を予防または減少させたりクロッ ト溶解を促進させたりする目的で、単独で個体(たとえばヒト)に投与してもよ いし、プラスミノーゲン活性化剤(たとえば組織プラスミノーゲンアクチベータ ー、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組み換え組織プラスミノーゲンアクチ ベーター)、抗凝固剤(たとえば抗トロンビン剤)などの血栓溶解剤やアスピリ ン、ヘパリン、ヒルローグ、ヒルジン、またはクマリン抗凝固剤(たとえばワー ファリン)などの抗血小板剤とともに投与してもよい。上記化合物、抗体または その断片は、閉塞または再閉塞を引き起こしうる血小板凝集を予防するのに十分 な量および/または狭窄または再狭窄を遅延または予防するのに十分な量で、血 栓溶解剤、抗トロンビン剤、抗凝固剤、または抗血小板剤の投与の前、同時、ま たは後に投与することもできる。 有効量(すなわち血小板凝集を抑制することによって血栓形成または再形成を 抑制するのに十分な量や狭窄、再狭窄、または虚血発作の減少、遅延、または予 防に十分な量など目的の治療効果を得るのに十分な量)の化合物、抗体または抗 体断片を、無菌生理食塩水などの薬学的に許容されるビヒクルとともに非経口的 に、好ましくは静脈内投与によって、投与することができる。また、緩衝媒体を 添加してもよい。抗体処方は、安定剤(たとえばポリソルベート80、USP/ NF)などさらに別の添加物を含むこともできる。抗体は単回投与してもよいし 、連続投与してもよいし、複数回輸液投与(たとえばボーラス注射後に連続輸液 を行なう)してもよい。あるいは、該化合物または抗体は放出制御機構(たとえ ばポリマーまたはパッチ送達系による)など適当な方法によって投与することも できる。投与量は臨床症状、個体の体重、他の薬物(たとえば血栓溶解剤)の投 与の有無など様々な要素によって決まる。 抗血小板抗体を使用する療法を繰り返すと、薬物に関連する血小板増加が引き 起こされることがある。これは、生体が抗体被覆血小板を異物として認識してそ れらに対する抗体を生成した後に、正常より短時間に網状内皮系によってそれら を消失させようとすることに起因するものである。血小板表面上にはGPIIb /IIIa受容体が非常に高密度で存在し(血小板1個あたり受容体約80,0 00個)、多数の血小板が循環しているので(1μlあたり約0.25〜0.5 x106個)、血小板増加は抗血小板抗体療法の重要な合併症となっている。キ メラ抗血小板(たとえばGPIIb/IIIa)抗体を使用すればこの問題を防 止することができる。本発明のキメラ抗血小板抗体は、他の方法では抗血小板抗 体投与に伴う発生の可能性がある血小板増加を抑制(減少または予防)すること ができる。たとえば、キメラ7E3 Fabを投与すると、血小板増加はほとん ど見られていない(たとえば実施例6および実施例7参照)。 次に、キメラ7E3 Fab抗体断片をヒトに投与すると、特にネズミ7E3 Fabの可変領域の免疫原性という観点から、ネズミの場合より誘導免疫の発 生率が驚くほど低下する(たとえば実施例4および実施例7参照)。血小板と結 合したネズミ抗血小板キメラ抗体成分の大部分は、たとえばGPIIb/III a受容体を介して血小板表面に結合して免疫系のアクセスを不可能にする結果、 そのキメラ抗体は同じエピトープに対するヒト抗体と機能的に区別できなくなる 。したがって、本発明のその他のキメラ抗血小板抗体もネズミ抗原結合領域を有 しているにも関わらずやはり免疫原性を示さない。 本発明の血小板特異的キメラ免疫グロブリンは血栓の画像化にも有用である。 この目的のためには、一般に抗体断片が好ましい。上記のように、キメラ重鎖遺 伝子の切断型を設計して免疫シンチグラフィー画像化用キメラ免疫グロブリン断 片(たとえばFab、Fab’、またはF(Ab’)2)を作製することができ る。これらの分子を直接、またはDTPAなどの結合キレート化剤を用いて、13 1 ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウム、111インジウムなどの放射性同位体で標 識して放射免疫シンチグラフィー剤を作製することもできる。あるいは、放射金 属結合(キレート化)ドメインをキメラ抗体部位に作製して標識部位としてもよ い。すなわち、ヒト以外の血小板特異的可変領域とヒト定常領域(好ましくは切 断されたもの)とメタロチオネインなどの金属結合タンパク質由来の金属結合ド メインとを有するタンパク質としてキメラ免疫グロブリンを設計することができ る。 上記血小板特異的キメラ免疫グロブリンまたはその断片を血栓を有する疑いの ある患者に投与する。標識免疫グロブリンの血栓部位局在化に十分な時間が経過 した後で、標識剤から発生するシグナルをガンマカメラなどの光学的走査装置を 用いて検出する。次いで、検出されたシグナルを血栓画像へと変換する。得られ た画像により、生体内の血栓の位置を知り、適当な治療法を計画することが可能 となる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施 例に何ら限定されるものではない。実施例 実施例1 血小板特異的キメラIgG4の作製 A.基本原理 7E3ハイブリドーマからの重鎖および軽鎖遺伝子の可変領域クローン化は、 可変領域と機能的再配列(および発現)させたIg遺伝子の対応するJ(連結) 領域の間のゲノムにおける連鎖を利用して行なった。J領域DNAプローブを用 いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることで、J領域に結合したDNA を単離することができる。生殖系列配置(再配列されていないもの)状態のDN AもJプローブにハイブリダイズするが、可変領域配列とは結合せず、単離クロ ーンの制限酵素分析によって同定することができる。 したがって、クローン化は、JHとJKを用いて再配列重鎖および軽鎖遺伝子か ら可変領域を単離するやり方で実施した。これらのクローンの配列が7E3ハイ ブリドーマ中で発現されているか否かノーザンブロッティング分析で調べた。発 現された配列を含むクローンをヒト定常領域を保持する発現ベクターに導入し、 マウス骨髄腫細胞にトランスフェクトして抗体産生の有無を調べた。次に産生細 胞から産生された抗体の結合特異性と機能性を7E3ネズミ抗体と比較した。 細胞系誘導体ネズミハイブリドーマ7E3を1985年5月30日付けでAmer ican Type Culture Collection(12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 20852 )に寄託した。生存性試験で良好な結果が得られた後、寄託番号HB8832が 付与された。B.材料および方法 特記ないかぎり、以下に示す量と百分率はいずれも重量数であり、温度の単位 は摂氏である。重鎖ゲノムライブラリーの構築 7E3ハイブリドーマから重鎖可変領域を単離するために、ファージラムダベ クターgt10を用いてサイズ分画ゲノムライブラリーを構築した。JHプロー ブを用いてEcoRI消化7E3DNAのサザーンブロッテイング分析を行なっ たところ、再配列重鎖座位に相当する位置に単一の3.5kbバンドが検出され た。この断片は7E3重鎖可変領域遺伝子を含んでいる可能性が高かった。7E 3ハイブリドーマ細胞から高分子量DNAを単離し、制限エンドヌクレアーゼE coRIで完全消化した。次いで、DNAを0.7%アガロースゲル上で分画し 、3〜4kbのサイズ範囲のDNAをゲルから直接単離した。フェノール/クロ ロホルム抽出とセファデックスG−50ゲル濾過を行なった後、上記3〜4kb 断片をラムダgt10アーム(Promega Biotech,Inc.製)に連結し、Promega Biotech 社製パッカジーン(Packagene )を用いてイン・ビトロでファージ粒子 に封入した。このライブラリーにつき、32P標識JHプローブを用いて150m mペトリ皿1枚あたり約30,000個のプラーク密度で直接スクリーニングを 行なった。5XSSC、50%ホルムアミド、2Xデンハルト試薬、200μg /ml変性サケ精子DNA中、42℃で18〜20時間にわたりプラークハイブ リダイゼーションを行なった。最後に0.5XSSC、0.1%SDS中、65 ℃で洗浄した。オートラジオグラフィー実施後に陽性クローンを同定した。軽鎖ゲノムライブラリーの構築 7E3軽鎖の可変領域を単離するために、ラムダベクターEMBL−3中にゲ ノムライブラリーを構築した。高分子量DNAを制限エンドヌクレアーゼSau 3Aで部分消化し、10〜40%ショ糖密度勾配上でサイズ分画を行なった。1 8〜23kbのDNA断片をEMBL−3アームと連結し、パッカジーン(Pack agene )を用いてイン・ビトロでファージ粒子に封入した。このライブラリーに つき、JKプローブを用いて150mmペトリ皿1枚あたり30,000個のプ ラーク密度でスクリーニングを行なった。ハイブリダイゼーション条件と洗浄条 件は重鎖ライブラリー構築の場合と同じである。DNAプローブ マウス重鎖JHプローブは、J3セグメントとJ4セグメントの両者を有する 2kbのBamHI/EcoRI断片である。マウス軽鎖JKプローブは、5つ のJKセグメントをすべて有する2.7kbのHindIII断片である。Amers ham,Inc.社から入手したキットを用いるニックトランスレーションにより32P 標識プローブを作製した。セファデックスG−50カラムを用いる遠心分離によ り遊離ヌクレオチドを分離した。上記プローブの比活性は約109cpm/μg であった。ノーザンプロッテイング分析 15μgの全細胞RNAを1%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上の電気泳 動に付し(マニアティスら(Maniatis,et al.)、Molecular Cloning )、ニト ロセルロースに移した。プロットを50%ホルムアミド、2Xデンハルト液、5 XSSC、および200μg/ml変性サケ精子DNA中、42℃で10時間に わたりニックトランスレートDNAプローブとハイブリダイズさせた。最終洗浄 条件は0.5XSSC、0.1%SDS、65℃とした。エレクトロポーレーションを用いるDNAトランスフェクション 臭化エチジウム/塩化セシウム勾配中で平衡状態に達するまで遠心分離を2回 行なうことによって、トランスフェクトさせようとするプラスミドDNAを精製 した。氷上で10〜50μgのプラスミドDNAをPBS懸濁8x106SP2 /0細胞に添加し、この混合物をバイオラッド社(Biorad)製エレクトロポーレ ーション装置に入れた。エレクトロポーレーションは200ボルトで行ない、細 胞を96穴マイクロタイタープレートに置いた。48時間後に適当な薬物選択を 行ない、1〜2週後に薬物抵抗性クローンを同定した。抗体産生量の定量 精製IgGを用いて求めた標準曲線を利用し、粒子濃度蛍光免疫測定法[ジョ リーら(Jolley,M.E. et al.)、J .Immunol.Meth67:21(1984)]により組 織培養上清のIgGタンパク質含有量を測定した。ヤギ抗ヒトIgG Fc抗体 被覆ポリスチレンビーズおよびフルオレセインコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIg G Fc抗体を用いて、ヒト定常領域を有するキメラ7E3抗体の濃度を求めた 。測定は、自動装置(Pandex Laboratories,Inc.社)を用いて行なった。血小板特異的キメラIgG4抗体の精製 組織培養上清をダイアフローYM100限外濾過膜(Amicon社)で濃縮し、プ ロテインAセファロースカラムに負荷した。クエン酸ナトリウムのpH勾配6. 5〜3.5を用いてキメラ抗体をプロテインAカラムから溶出させた。精製抗体 をダイアフローYM100限外濾過膜で濃縮した。抗体濃度は280nmにおけ る吸光度測定で求めた。結合抑制度の測定 精製抗体(ネズミ7E3抗体またはキメラ7E3抗体)を放射性ヨウ素標識7 E3抗体と競合させ、ヒト血小板結合度を比較した。クエン酸添加ヒト全血を1 875rpmで3.5分間遠心分離することで、高血小板含有血漿(PRP)を 作製した。125I標識7E3抗体(150,000cpm)を適当に希釈した精 製試験抗体に添加し、150μlのPRPを添加することで反応を開始させた。 室温で1〜2時間培養し、0.4mlのマイクロ遠心管内の30%ショ糖中、1 2,000gで4分間遠心分離することで、抗体結合血小板を遊離抗体から分離 した。血小板/抗体ペレットを含む遠心管先端部を切断し、ガンマカウンターで 計測した。ヨウ素放射標識7E3とキメラ7E3の間の血小板結合競合の程度を 、ヨウ素標識7E3IgGと未標識7E3IgGの間の競合度と比較した。血小板凝集の抑制 精製7E3抗体またはキメラ7E3抗体をクエン酸処理ヒト全血に添加し、3 7℃で10分間保温した。コラーゲンまたはADPによる活性化を行なった後、 全血凝集計(Chronolog Corp.社)を用いて血小板凝集速度を測定した。C.結果 血小板特異的可変遺伝子領域のクローン化HおよびJKプローブを用いて約100万個のプラークをスクリーニングした 後、重鎖および軽鎖ライブラリーからそれぞれ数個の陽性クローンを単離した。 少なくとも3回のプラーク精製手順を繰り返した後、各陽性クローンのバクテリ オファージDNAを単離し、EcoRI(重鎖クローン)またはHindIII (軽鎖クローン)のいずれかで消化し、1%アガロースゲル上で分画した。 DNAをニトロセルロースに移し、ブロットをJH(重鎖)またはJK32P標 識DNAプローブとハイブリダイズさせた。重鎖については、JHプローブとハ イブリダイズする3.5kbのEcoRI消化DNA断片を有する2個のクロー ンが得られた。JKプローブでは、3.0kbと6.0kbの2つのサイズクラ スのHindIII断片が同定された。 7E3ハイブリドーマ由来の真性重鎖および軽鎖可変領域に対応するクローン 化DNAは、上記ハイブリドーマから単離したmRNAとハイブリダイズするは ずである。重鎖座位または軽鎖座位にある非機能性DNA再配列は、発現されな いはずである。図1に、それぞれ7E3ハイブリドーマ由来の適当なサイズのm RNAとハイブリダイズする3.5kbのEcoRI推定重鎖断片と6.0kb のHindIII推定軽鎖断片の存在の証拠となるノーザンブロッティング分析 結果を示した。図1に示した手順で、サブクローン化断片をニックトランスレー ションで32P標識し、SP2/0(7E3ハイブリドーマの融合相手)由来の全 RNAを含むノーザンブロットとハイブリダイズさせた。3.5kbのEcoR I重鎖断片は7E3RNA中の2kbのmRNAとハイブリダイズしたが、SP 2/0RNA中ではハイブリダイズしなかった。同様に、6.0kbの軽鎖Hi ndIII断片は7E3RNA中の1250bpのmRNAとハイブリダイズし たが、SP2/0RNA中ではハイブリダイズしなかった。これらはそれぞれ重 鎖mRNAと軽鎖mRNAの正しいサイズである。クローン化DNA断片は7E 3ハイブリドーマ中で発現される配列を含んでいるので、これらのデータは、上 記クローンが7E3ハイブリドーマ由来真性可変領域配列を有していることを示 唆している。ただ、最終的な機能試験では、これらの配列を適当な定常領域配列 と組み合わせると、ネズミ7E3抗体のものと類似の親和性と特異性を有する抗 体が合成されることがわかる。ベクターおよび発現系 7E3ハイブリドーマからクローン化した推定軽鎖および重鎖V遺伝子を、既 報[サンら(Sun,L.et al. Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218(1987 )]の発現ベクター中でヒトκおよびG4定常領域遺伝子に連結した。pSV1 84ΔHneo17−1AVκhCκの17−1A VκHindIII断片を 、7E3由来の推定軽鎖可変領域遺伝子に対応する6.0kbのHindIII 断片で置換した。同様に、pSV2ΔHgpt17−1AVH−hCG4の17− 1A VHEcoRI断片を、7E3由来の推定重鎖V領域遺伝子に対応する3 .5kbのEcoRI断片で置換した。生じたプラスミドをそれぞれp7E3V κhCHκおよびp7E3VHhCG4と命名し、その構造を図2A〜2Bに示した 。 キメラ重鎖および軽鎖遺伝子を発現させるために、上記2つのプラスミドを同 時に非産生性マウス骨髄腫瘍細胞系SP2/0にトランスフェクトした。軽鎖プ ラスミドはG418抵抗性を付与し、重鎖プラスミドはミコフェノール酸抵抗性 を付与するので、各プラスミド由来の遺伝子を保持発現するクローンを得るため の二重選択を行なうことができる。G418とミコフェノール酸に対する抵抗性 を有するコロニーから安定細胞系を樹立し、両薬物の存在下でこれらを維持した 。これらの細胞系の組織培養上清について、ヤギ抗ヒトIgG Fc抗体で被覆 したポリスチレンビーズおよび同じ抗体をフルオレセイン標識したものを用いる 粒子濃度蛍光免疫測定法により、抗体の有無を分析した。調べた最初の10種類 の細胞系から、約2μg/mlを産生する1つの細胞系(c−7E3F6と命名 )を選択し、さらに試験した。血小板結合活性測定 プロテインA−セファロースカラムを用いてc−7E3F6抗体を精製した後 、抗体を濃縮し、血小板結合活性測定でネズミ7E3IgGと比較した。図3に 、ネズミ7E3とc−7E3F6(推定キメラ抗体)は、放射標識7E3との血 小板結合競合度が同程度であることを示している。結合曲線が重なり合うので、 ネズミ7E3とキメラ7E3の結合特性は本測定基準では同じであることがわか る。c−7E3F6による血小板凝集の抑制 試験抗体のヒト血小板凝集抑制能力を測定する機能測定法において、精製c− 7E3F6とネズミ7E3を比較した。測定結果を図4に示したが、抗体濃度が 同じ場合、両者は同程度にコラーゲン誘導性血小板凝集を抑制することがわかる 。c−7E3F6はADP誘導性血小板凝集も同程度に抑制する。 血小板結合と血小板凝集抑制の測定結果から次のことがわかる: (1)7E3ハイブリドーマから真の軽鎖可変領域遺伝子がクローン化された; および (2)ヒト定常領域でネズミ定常領域を置換しても、上記測定法で測定した7E 3可変領域結合性や機能性には影響がない。フィブリノーゲン被覆ビーズ測定 キメラc−7E3F6抗体は、抗体の血小板/フィブリノーゲン被覆ビーズ間 凝固抑制能力を測定する定性的機能測定において陽性であることがわかった[コ ルラーら(Coller,B. et al.)、J .Clin.Invest.73:325-338(1983)]。 実施例2 キメラIgG1およびIgG3の作製 17−1A重鎖または軽鎖可変領域断片を対応する7E3可変領域断片で置換 することによって、ネズミ7E3由来重鎖の可変領域をコードするDNAセグメ ントを、発現ベクターpSV2ΔHgpt17−1AVH−hCG1およびpSV 2ΔHgpt17−1AVH−hCG3[サンら(Sun et al.、Proc.Natl.Aca d.Sci.USA 84: 214-218(1987)]上に存在するヒトγ1およびγ3定常領域に連 結した。生じたキメラ重鎖遺伝子をキメラ軽鎖遺伝子とともにSP2/0細胞に トランスフェクトし、γ1,Kおよびγ3,K抗体を分泌する安定細胞系を樹立 した。 実施例3 ヒトにおけるキメラ7E3Fabの用途に関する初期研究 キメラ7E3Fab断片の作製 精製キメラ7E3IgG(ガンマ1重鎖、カッパ軽鎖)をタンパク分解酵素パ パインで酵素消化することでキメラ7E3(c7E3)のFab断片を作製した 。該Fab断片は他の消化断片や他の汚染成分(たとえばタンパク質、核酸、ウ イルス)を含まない生成物を得るべく考案された一連の精製工程によって単離し た。最終生成物は、0.15Mの塩化ナトリウムおよび0.01Mのリン酸ナト リウム(pH7.2)1mlあたり2mgのモノクローナルキメラ7E3Fab を含む無菌非発熱原性溶液として作製した。一部の調製物では、最終濃度0.0 01%(w/v)となるようポリソルベート80を添加した。生成物は使用前に 0.22ミクロンのタンパク質結合性の低いフィルターで濾過した。生成物は2 〜8℃で保存した。薬物動態:ヒトにおけるc7E3Fabの血漿クリアランス 3名の安定型冠動脈疾患の患者でキメラ7E3(c7E3)Fabの血漿クリ アランスを調べた。0.20mg/kg用量のc7E3Fabを5分間かけて静 脈内輸液投与し、2分〜72時間後に血液試料を経時採取した。抗体の特定部分 が血漿中に未結合状態で存在することが予想された。この未結合抗体成分を定量 するために、迅速に血漿を血小板と分離し余分な生体外結合を防止する必要があ った。遊離c7E3Fabの血漿中濃度は固相酵素免疫測定法(EIA)で測定 した。この測定では、ウサギ抗血清から精製したアフィニティー単離抗ネズミ7 E3IgGを固相捕捉用に使用し、同じウサギ抗7E3抗体調製物のビオチン化 誘導体を利用した検出系を用いた。結果を表1に示した。 * 点滴終了と採血の間隔。血小板は採血後さらに2分間血漿と接触していた ことに注意。(すなわち、遠心分離による血漿の分離に必要な時間として) ND = 未検出/分析の検出レベル以下(0.025μg/mL) NA = データ無し 7E3の注射量全部が血漿中に遊離抗体として検出されるとすれば、理論的最 高抗体濃度は約5.0μg/ml(0.25mg/kgを1kgあたり40ml の血漿量で割ったもの)となるはずであるが、注射抗体の大部分は血小板と結合 するので、実際にはこの理論的最大濃度に達することはなかった。実際、もっと も早い段階の測定では(2分後)、c7E3Fabの平均血漿中濃度(n=2) は2.43μg/mLであったが、この値は最高血漿中濃度(Cmax )として見 られた数字と同じである。その後の時点で得られたデータから、c7E3Fab の血漿中濃度は当初急速に低下することがわかる。1時間および24時間後の時 点では、血漿中に残留する投与抗体の量(n=3)はそれぞれ0.5μg/mL と0.1μg/mLであった。図5に示した血漿中抗体濃度(ng/mL)の経 時変化曲線から、3名の患者いずれにおいてもc7E3Fabの初期血漿クリア ランスが急速に起きることがわかる。 c7E3Fab断片の薬物動態特性を調べる予備分析を行なった。いくつかの 混合(無作為効果および固定効果)直線モデルならびに標準2成分モデルおよび 非成分モデルを含むいくつかのモデルを用いて、血漿中濃度データをあてはめて みた。遊離血漿抗体データは標準薬物動態モデルにはよくあてはまらなかった。 c7E3Fabの作用部位は血小板上に存在する受容体であるから、遊離抗体の 血漿中濃度が作用部位におけるその濃度と無関係であることは全く予想されない わけではない。c7E3Fabの初期の血漿クリアランスが急速であることは、 抗体が血小板GPIIb/IIIa受容体に急速に結合することを一部反映して いる。調べたモデルのうち無作為効果直線モデルは、血漿濃度データに最もよく あてはまることがわかった。このモデルを用いて測定した薬物動態測定項目のC lp、Vd、およびt1/2の予備値を表2に示した。 * データを適応させるために無作為効果直線モデルを使用した。 C1p= 血漿クリアランスを血漿中の濃度の減少を濃度で割った率と して定義し、1時間当たりの率で計算する。すなわち、ある時間での率が1時間 持続したら、計算率はその時間で除去される薬剤の割当となる。 70kgの人の標準血漿容量3Lを計算に用いた。 t1/2= 排出の半減期。ヒトにおける尿中排泄 0.25mg/kgのc7E3Fabによる静脈内注射治療を行なった3名の 安定型冠動脈疾患の患者から尿試料を採取した(これら3名の患者の血漿クリア ランスデータについてはすでに論じた通りである)。以下の時点での蓄尿全量を 採取した。すなわち、注射後0〜2時間、2〜6時間、6〜12時間、および1 2〜24時間である。また、投与前の尿試料も採取した。採取した尿の代表的試 料について、上記EIA法を少し改変したものを用いて、遊離Fabの有無を分 析した。いずれの場合も、c7E3Fabは尿中に検出されなかった。前臨床毒性試験 キメラ7E3Fabを用いて18頭のサル(Cyonomolgus とアカゲザル)で前 臨床毒性試験を実施した。最高0.6mg/kg用量のボーラス注射を行なった 後、最高0.8μg/kg/分の速度の点滴を96時間行なった(ヘパリン、ア スピリンおよび組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーターの試験を含む)。 すべてのサル、すべての用量、すべての組み合わせにおいて、7E3は安全で忍 容性が良好であり、重大な出血合併症やその他の副作用は見られなかった。安定型狭心症患者におけるキメラ7E3Fabの用量増加試験 10日以上にわたり抗血小板療法を受けていない52名の安定型アンギナ患者 (43〜75歳の男性)を被験者とする用量増加試験を行なった。様々な用法の 投与を行なった。患者には、0.15〜0.30mg/kgのキメラ7E3Fa b(患者20名)の単回静脈内ボーラス注射投与、またはボーラス負荷後12〜 96時間にわたり連続静脈内輸液投与(10μg/分)(患者32名)する治療 を行なった。 c7E3Fabのボーラス投与(0.15〜0.30mg/kg)後2時間目 に、血小板GPIIb/IIIa受容体遮断度、20μMのADP(アゴニスト )に対する血小板凝集反応、および出血時間を測定した。受容体阻害およびアゴ ニストに対する血小板凝集は既報[ゴールドら(Gold,H.K. et al.)、J .Cli n .Invest.86: 651-659(1990)]に従い測定した。出血時間はシンプレート法(S implate method )によって測定した。用量が増加すると、抑制受容体比率(受 容体結合部位の利用率から計算)でみた受容体遮断度が次第に増加した。受容体 遮断度の増加は血小板凝集の抑制(投与前値すなわちベースライン値で測定)お よび出血時間の延長と並行していた。 3つの測定項目いずれについても、ピーク作用は0.25mg/kgで見られ た。この用量は、キメラ7E3Fabの濃度を上げながら凝集計キュベット中で 15分間培養した正常被験者の高血小板血漿中でピーク抑制が見られた5μg/ mlの血漿中濃度に対応している。(この正常被験者の血漿の凝集度は、キュベ ット透過光の比率で測定した。アゴニスト添加前の血漿は比較的透明で、光透過 率はゼロに設定した。アゴニストの一種ADPを抗体不含対照試料に添加したと ころ、凝集の進行に伴い光透過率が上昇したが、c7E3Fabが存在すると用 量依存的な凝集抑制が見られ、1mlあたり5μgのc7E3Fabでは完全に 抑制された。) 受容体遮断、血小板凝集抑制、および出血時間に対する作用継続時間を測定し た。受容体遮断、血小板凝集抑制、および出血時間に対するピーク作用は2時間 後に見られ、経時的に徐々に回復した。出血時間は6〜12時間後には正常値付 近まで回復した。 受容体遮断と機能抑制のピークは0.25mg/kgで見られたので、この負 荷用量投与後の連続輸液による血小板抑制の継続時間を測定することで、血小板 抑制継続時間の延長が可能かどうか調べた。受容体遮断、血小板凝集抑制、およ び出血時間の延長は、0.25mg/kgの負荷用量投与後72時間にわたりキ メラ7E3Fabの連続輸液を10μg/分の速度で受けた5名の患者において 連続輸液の継続中ずっと維持された。点滴を中止するとただちに回復が始まった 。同様の結果は12、24、48、および96時間の点滴にも見られた。 いずれの患者も過敏反応を示さなかった。血液学的測定項目や化学的項目には 有意な治療関連の傾向は見られなかった。また、重要な出血発作もなかった。有 意でない出血発作がまれに見られたが、その内訳は一過性の軽度鼻血と軽度歯肉 出血が歯周病患者に見られたものである。この治験の結果から、キメラ7E3F abは数日にも及ぶ長期間にわたり血小板機能をよく抑制させるように患者に投 与することができることが示された。免疫原性試験の結果 ネズミ7E3F(ab’)2およびFabを用いた治験(患者150名)で、 高感度酵素結合免疫測定法による免疫応答は全患者の16%(24/150)で 見られた。いずれの反応も抗体価は低く、1:50〜1:200の範囲が普通で あった。治療群は、0.01〜0.25mg/kgのネズミ7E3F(ab’)2 で治療した健常志願者、0.05〜0.20mg/kgのネズミ7E3F(a b’)2で治療した不安定型アンギナ患者、および0.1mg/kgのネズミ7 E3F(ab’)2または0.15〜0.35mg/kgのネズミFabで治療 したPTCA患者、ならびに0.10〜0.30mg/kgのネズミ7E3Fa bの単回ボーラス静脈注射投与、0.25または0.30mg/kgの単回ボー ラス注射投与後12〜36時間にわたりネズミFabの連続輸液(0.15μg /kg/分または10μg/分)を行なうかネズミFabの注射を6時間間隔で 2回(0.2〜0.30mg/kgの単回ボーラス注射後に0.05mg/kg のボーラス注射を行なう)受けることで治療された安定型アンギナ患者が含まれ ていた。 ヒト−マウスキメラ7E3Fabにより免疫原性は顕著に低下した。用量増加 試験の被験者としてキメラ7E3Fab治療を受けた52名の安定型アンギナ患 者(上記参照)はいずれも、キメラFab用に改変した同様の測定法で測定した 免疫応答を示さなかった。抗血小板活性の回復性 キメラ7E3Fab(γ1、κ)は血小板からの消失速度が遅く、血漿中遊離 キメラ7E3Fabは急速に循環からクリアーされる(上記参照)。したがって 、キメラ7E3の抗血小板作用は、ランダムドナー由来血小板を投与することに よって容易に回復させることができる。血小板輸液によるこの回復ないし解毒作 用は、ネズミFabまたはキメラFabのいずれかの投与で血小板凝集がほぼ完 全に抑制された時点でランダムドナー由来血小板を投与された2名の患者で確認 された。出血時間を測定することによって血小板機能の回復度を判定した。この 性質は、出血患者の血小板機能を回復させる必要がある場合に有用である。 実施例4 随意冠状動脈形成術に伴う血栓合併症の予防におけるキメラ7E3抗体の用途 たとえばバルーン法や冠アテレクトミーによる経皮経管的冠状動脈形成術(P TCA)は狭窄した冠状動脈管腔の拡大手段として有効である。この手術では、 血管形成術の術中および術後に急性冠状動脈閉塞が起きるという危険を伴う。既 報では随意血管形成術症例における冠状動脈閉塞率は約3〜6%とされており[ デトレら(Detre,K.M.et al.Circulation 82:739-750(1991)]、これが院 内発症および死亡の主因となっている。ハイリスク患者では、血栓によって引き 起こされる主な心症状の発生率は10〜20%である。 冠状動脈形成術の術中や術後直後に見られる急性冠状動脈閉塞は深部動脈壁傷 害とそれに伴う部分閉塞性「内腔フラップ」が共存して引き起こされるか(血栓 形成を伴う場合とそうでない場合がある)、血管壁傷害部位に血栓形成のみによ って引き起こされるものと思われる。動物モデルでは、血栓溶解成功後に再閉塞 が起きる場合、まず「周期性血流変動」(CFVs)と呼ばれる冠状動脈血流量 の周期性低下と回復が繰り返される。これらのCFVsはほぼ完全に血小板を介 する現象であり、冠状動脈の狭窄部位と内皮傷害部位における血小板凝集塊の蓄 積と剥離が繰り返されることによって引き起こされる。ヒトにおける冠状動脈形 成術後の周期性血流変動についての記載がある。キメラ7E3抗体を用いて血管 形成術中の血小板機能を抑制させることによって血小板凝集と血栓形成を予防す ることができる。キメラ7E3抗体は血栓閉塞の危険が高い患者においてとくに 有用である。これらの患者は、急性冠状動脈血栓症の前徴として急性心筋梗塞や 不安定型アンギナや剥離閉鎖の臨床症候群を引き起こす解剖学的リスク因子(た とえば狭窄部位の病変の血管造影判定など)または臨床的リスク因子(たとえば 心筋梗塞、不安定型アンギナ、糖尿病、65歳以上の女性)に基づいて判定され る。随意PTCAにおけるキメラ抗血小板抗体 2期治験を行なった。第I期では、随意経皮経管的冠状動脈形成術(PTCA )を受けた患者におけるキメラ7E3Fabの単回投与の安全性と最適投与量を 判定することを目的として実施した。第II期では、ボーラス注射投与後に様々な 連続輸液期間を設けた場合のキメラ7E3(c7E3)の安全性と予備効果の判 定を目的として実施した。第II期治験の被験者は、虚血性心合併症の危険のある 随意冠状動脈形成術を受けた患者である。高リスク患者としては、B型またはC 型病変特異性を有する不安定型アンギナまたは安定型心疾患を有する患者が含ま れていた。表3に高リスク患者の判定基準を示し、表4に血管造影で判定した病 変特異性を示した。予備効果は、血小板機能の抑制度と血栓症合併症の予防度に よって測定した。年齢18〜76歳の男性と年齢18〜76歳の出産の可能性の ない女性が両期ともに参加した。 第I期(Stage I) 第I期では、患者を(実施例3に記載されている通りに調製および調剤した) キメラ7E3(γ1、κ)Fab 断片の一回ボーラス静脈内注射群に採用した。総計15 例(女性3名と男性12名)に投与した。患者の年齢の中央値は62才(46〜76才の 範囲)であった。表5A及び5Bに、一回投与患者全員及び投与群内の患者個々の人 口統計学的プロフィールを示す。 用量増量プロトコールにおける随意PTCAより前の約30分以内に、5例(n=5)そ れぞれにc7E3 Fab 0.15mg/kg、0.20mg/kg または0.25mg/kg を一回投与した。患 者全員にアスピリン(標準用量)を投与し、処置時に、ヘパリン(標準用量)で 完全に抗凝固処理を行った。 PTCA処置は第I期患者のための選択法として分類されたが、15例中6例に不安 定安静アンギナ(unstable rest angina)が認められた。冠動脈の拡張の位置を 表6(下部)に示す。第I期の患者15例中7例は単一血管における1病変のPTCA を受け、6例は単一血管における多病変PTCAを受け、2例は多血管PTCAを受けた (表6)。 c7E3の最適1回量を得るための効力基準を、注入後2時間に下記の中央値に到 達する最小用量と定義した。(1)少なくとも20分間の出血期間延長、(2)受容体部 位ベースラインの80%以上が遮断されるGPIIb/IIIa 受容体の遮断、及び(3)20μ M ADP に応答してベースラインの20%以下となる血小板凝集の阻害。 * 複数の血管に病変を有する患者は、両方の血管をカウントした。 RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝第II期 第II期では、患者に0.25mg/kg のc7E3 Fabをボーラス投与し、続いてc7E3 Fab を10μg/分で6時間、12時間、あるいは24時間持続注入を行った。総計32例(女 性8例および男性24例)を本試験の第II期投与群に採用した。c7E3 Fab投与患者 の年齢の中央値は57才(38〜76才の範囲)であった。コントロール患者は9例( 女性1例、男性8例)を採用した。コントロール患者の年齢の中央値は56才(37 〜74才の範囲)であった。コントロール患者は、c7E3を受けなかった、上記で定 義されたハイリスク患者であったが、投与患者と同じ方式でモニタリングおよび 追跡調査を受けた。第II期患者全員および投与群内の患者個々の人口統計学的プ ロフィールを表5Aおよび5Bに示す。 PTCAのためのバルーン膨張の30分前にc7E3 Fab投与を開始した。臨床的に指示 された通りにアスピリンおよびヘパリンを投与し、その後、時間当たり800 単位 の速度における血管形成ヘパリンの投与が推奨された。各11例が6時間群および 12時間群に採用され、10例が24時間群に採用された。 c7E3 Fab投与患者32例のうち、21例が単一血管における1病変のPTCAを受け、 7例が単一血管における多病変PTCAを受け、3例は多血管PTCAを受けた(表6) 。1例でPTCAの種類が特定されなかった。第II期患者の冠状動脈の拡張の位置を 表6に示す。コントロール患者9例のうち、8例は単一血管における1病変のPT CAを受け、1例は多血管PTCAを受けた。c7E3 Fab投与患者32例及びコントロール 患者9例は、PTCAの虚血性心併発症ハイリスクと分類される臨床的特徴及び血管 造影図上の特徴を示した。c7E3 Fab投与患者2例及びコントロール患者1例には 特記されていない危険因子があった。残りのc7E3 Fab投与患者30例及びコントロ ール患者8例には、虚血性併発症のリスクを増大させる同定可能な臨床的特徴ま たは血管造影図上の特徴が少なくとも1つ認められ、ほとんどの患者に2つ以上 の危険因子が存在した。表7は、コントロール群及びc7E3投与群の危険因子であ り、各投与群内の患者ごとの危険因子の個別リストを表8A〜表8Dに示す。 1 患者04−006は糖尿病患者であった。 2 この患者(04−007)は糖尿病であった。 3 患者03−001と02−007は糖尿病であった。 4 この患者(04−004)は次のような危険因子をさらに有していた 。女、65歳以上、かつ糖尿病。 5 患者03−003と05−001は糖尿病であった。 6 患者01−018は次のような危検因子をさらに有していた。女、6 5歳以上であった。患者は03−002は糖尿病であった。 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 OM = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 3. 特性の明示無し 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 LADD= 左前室間枝の対角(diagonal)枝 3. 特性の明示無し 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 OMn = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 1. 表3、4に 挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 OMn = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 LADD= 左前室間枝の対角(diagonal)枝 OM = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 3. 特性の明示無し 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 LADD= 左前室間枝の対角(diagonal)枝 OMn = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 3. 特性の明示無し 1. 表3、4に列挙されている潜在的な特性 2. RCA = 右冠動脈 LCX = 左回旋冠動脈 LAD = 左前室間枝 DB = OMn = 左回旋冠動脈の鈍型(obtuse)周縁枝 3. 特性の明示無し血小板機能の阻害(第I期の結果) 血小板機能阻害におけるキメラ7E3 Fab の活性を査定するため、GPIIb/IIIa受 容体結合部位利用効率(GPIIb/IIIa 遮断の百分率の中央値として記録)、20μM のADP に応答した作動物質誘導性血小板凝集の阻害の中央値、および出血期間の 中央値を連続的に測定した。作動物質に応答した受容体遮断および血小板凝集は 、本質的に記述(Gold,H.K.ら, J .Clin.Invest., 86 :651-659(1990))通 りに測定した。受容体遮断測定に関しては、時点0に受容体利用効率を測定し、 利用可能な受容体の数を0%受容体遮断(ベースライン)と考えた。他の時点は 、ベースラインまたは投与前測定時に利用できる受容体の数と相関的である。出 血期間はシンプレート(Simplate)法で測定した。 第6A〜6C図は、キメラ7E3 Fab の一回ボーラス投与後2時間の、受容体遮 断(第6図A)、血小板凝集(第6図B)、および出血期間(第6図C)に関す る用量応答である。第6A〜6C図の実線は各用量群で試験した5例の中央値を 示す。c7E3 Fabの用量を増加すると、遮断される受容体のパーセントからわかる ように、受容体遮断が漸増した(第6図A)。2時間の時点での遮断された受容 体数の中央値は、0.15mg/kg 投与群では53.8%、0.20mg/kg 投与群では80.2%、 0.25mg/kg 投与群では86.6%であった。受容体遮断の増加は、投与前値のパーセ ントとして表した、血小板凝集阻害と同様であった(第6図B)。0.15mg/kg 投 与群、0.20mg/kg 投与群および0.25mg/kg 投与群の2時間の時点における血小板 凝集の中央値はそれぞれ、ベースラインの46.1%、44.6%および17.9%であった 。同様に、注入後2時間に、用量関連性の出血期間延長がみられた(出血期間測 定は30分に省いた。第6図C)。0.15mg/kg 投与群、0.20mg/kg 投与群および0. 25mg/kg 投与群の出血期間の中央値はそれぞれ26.0分、27.5分、および30分であ った。使用した条件下で、これらの測定法で測定した限りでは、抗血小板活性に 関する最適用量は0.25mg/kgであると決定された。 第7A〜7C図は、最大血小板効果が見られた用量である、0.25mg/kg の一回 ボーラス投与後の作用持続期間を示す。X軸からわかるように、線は最上部の図 (第7図A)では受容体遮断、真ん中の図(第7図B)における血小板凝集、最 下部の図(第7図C)では出血期間に関して、ゼロ時点(ベースライン)から24 時間までの中央値を示す。受容体遮断、血小板凝集、および出血期間に対するピ ーク作用は2時間の時点にみられ、時間が経過すると徐々に回復した。出血期間 は12時間までにほぼ正常値に戻った。血小板減少を経験した患者は皆無であった 。血小板機能の阻害(第II期の結果) 第II期では、患者全員のGPIIb/IIIa受容体および血小板凝集データが得られた 訳ではなく、24時間注入群では患者2例のみがこれらの試験を受けた。したがっ て、6時間のデータおよび12時間のデータのみをまとめる。6時間注入群も12時 間注入群も、受容体遮断の中央値は、注入期間を通してベースラインの80%より 以上に維持された。6時間注入群および12時間注入群の2時間の時点における20 μM ADP 誘導性血小板凝集の中央値はそれぞれ、ベースラインの13%および15% であり、12時間群では、注入期間中、25%以下のままであった。3種類の注入期 間全ての2時間の時点での出血期間の中央値は30分を超えていた。第8A〜8C 図は、0.25mg/kg 負荷用量に続いてキメラ7E3 Fab の10μg/分持続注入を12時間 受けた患者で見られた結果である。12時間注入期間は軽く陰を付けた領域で表し 、線は中央値を示す。注入の全期間中、受容体遮断、血小板凝集阻害および出血 期間延長の程度が維持され、注入が中止されるや否や、回復が開始する。 第I期患者および第II期患者の臨床結果 c7E3 Fab投与患者47例の中で、PTCA中またはPTCA後に血栓事象を経験した者は 皆無であった。47例のc7E3投与患者のうち2例を除く全例が、病変を50%未満 の内腔直径狭窄に低減することによって血管造影法的に定義されたPTCA成功をお さめた。拡張に不成功であった2例のうち、患者01−012 は左前下行冠動脈(le ft anterior descending coronary artery)の90%狭窄が70%に低減したが、更 なる拡張は技術的に不可能であった。2人目の症例、(患者01−019 )は、以下 で検討するが、最初は拡張に成功したが、大縦解離(major longitudinal disse ction )のため冠内ステント留置(intracoronary stent placement )が必要で あった(明白な血栓はなかった)。コントロール患者9例のうち1例(01−022 )は、手技開始後15分に血栓性剥離閉塞を経験し、救急冠動脈バイパス術(CABG) を要したが、回復した。他のコントロール患者8例は、残存狭窄50%以下までの 拡張に成功した。 患者01−019(12時間注入群)は左回旋冠動脈の95%病変のバルーン拡張を受 け、残存狭窄は50%となった。術後、本症例は明白な血管迷走神経の症状を発現 し、徐脈、低血圧、および一過性の不全収縮をきたした。本症例はカテーテル法 研究所(catheterization laboratory)に戻り、持続性大縦解離のため緊急冠内 ステント留置を受けた。このステントが左主冠動脈内に移動したので、本症例は 緊急冠動脈バイパス術のため搬送された。研究者によれば、血管造影図上または 術中に、冠内血栓症の徴候は認められなかった。本症例は周術期心筋梗塞も経験 した。本症例は回復し、術後8日に退院した。 c7E3 Fab投与患者3例は各々、重大性が不確実なPTCA後胸痛の、他に例のない 症状を発現した。患者01−009(0.25mg/kg一回投与群)はc7E3後9時間に胸痛を 経験し、患者05-003(12時間注入群)はc7E3後21時間にアンギナを経験し、患者 06−003(12時間注入群)はc7E3後2日にアンギナを経験した。研究者らは、こ れらの胸痛の症状の発現は再閉塞を示す虚血症状と無関係であると報告した。 患者02−004(0.25mg/kg一回投与群)はc7E3 Fab投与前に長期胸痛を経験し、 PTCA術中ずっと持続した。翌日、ECG の変化とともに心酵素の上昇が認められ( 前日採取)、本症例は周術期非Q波(peri-procedural non Q-wave)心筋梗塞を 経験していたことがわかった(ピーククレアチニンキナーゼ=462、MB画分=64 )。 治験中、c7E3 Fab投与後52日に1例が死亡した。間質性肺疾患、うっ血性心不 全および不安定アンギナの既往歴のある、患者06−002(6時間注入群)は近位 左前下行冠動脈のPTCAに成功した。本症例は術中に持続性心室細動が出現し、電 気的除細動を2回要したが、その後、本術は無事に進行した。カテーテル法研究 所に搬送後、本症例にチアノーゼが現われたが、これは最初は利尿薬および酸素 療法に応答した。しかし、進行性呼吸障害が現われ、その後、換気支援を必要と した。本症例はその後の病院経過で、敗血症、成人型呼吸障害症候群、貧血(要 多回輸血)、および心虚血を併発した。本症例はc7E3 Fab後52日に多系不全のた め死亡した。安全性:第I期観察所見および第II期観察所見 第9図は、全患者の、注入終了後24時間までのベースラインからのヘマトクリ ットの絶対変化を投与群ごとに示す。参考のため、ゼロ変化点を示す線を表す。 コントロール患者1例(01−022 )およびc7E3 Fab投与患者1例(01−019 )は 、24時間の間に、救急冠動脈バイパス術後に輸血を必要としたため、両患者のヘ マトクリットのデータはプロットされていない(以下参照)。-12 における下方 の2本目の線は、心筋梗塞における血栓崩壊(TIMI )基準(Raoら,J .Am.Coll .Cardiol11:1-11(1988))を使用する少量の出血として明示する必要があるヘ マトクリットの変化を示す。ヘマトクリットの変化は、コントロール患者群と全 てのc7E3 Fab投与群の間で類似していた。表10は、注入終了後24時間における 血小板数の中央値の変化である。未投与コントロール群およびc7E3 Fab投与群の 血小板数の変化は類似した分布を示し、明白な用量関連効果は認められなかった 。 *0.25mg/kg のボーラス投与後のc7E3 Fab(10μg/分)の点 滴期間第I期の結果および第II期の結果に関する考察 本試験の第I期は、c7E3 が、用量漸増治験における安定アンギナ患者でみら れたものと同じ(実施例3)、アスピリンおよびヘパリンを投与したPTCA患者母 集団に特徴的な用量応答を示すことを実証した。キメラ7E3は、血小板GPIIb/III a 受容体の用量依存性遮断を引き起こし、この受容体遮断は血小板機能の阻害と 相関関係がある。加えて、第II期の結果は、持続注入によって、24時間までの血 小板Fab機能の阻害延長が達成されることを示した。注入期間と関係なく、注入 中止後6〜12時間までに、全ての患者で、血小板機能の回復が開始する。 血管造影法的終点および臨床的終点の両者を使用したc7E3投与患者の臨床結果 は、患者のリスク・プロフィールに基づいて予測されるものよりかなり良好であ った。c7E3投与群の患者の中で、術中または術後に血栓事象を経験した者は皆無 であった。加えて、2例を除く全例が、血管造影法的に成功をおさめた。臨床的 特徴または血管造影法的特徴に基づけば、第II期に採用された全症例および第I 期に採用された15例中6例がハイリスク患者であった。個々の臨床因子(不安定 アンギナ、糖尿病、65才以上の女性など)または血管造影図上の病変特異的特徴 (B型またはC型など)により、患者の合併症のリスクが増大し、複数の因子の 影響が累積する。 第II期では、それ以外の臨床的または血管造影法的病変特異的危険因子の有無 にかかわらず、投与患者17例が不安定アンギナに罹患していた。加えて、第I期 の患者6例が不安定アンギナに罹患していると確認された。発表済のシリーズで 、不安定アンギナ患者には、10〜15%の率で、重大な合併症(死亡、心筋梗塞、 緊急冠動脈バイパス術、反復PTCA)があることが確認されている(De Feyter,P .J.:編,Am .Heart J.118:860-868(1989)およびRupprecht,H.J.ら、Eur Hear t J .11: 964-973、(1990))。血管造影図上の特徴は同様に、PTCA合併症が高度 に予測されるものであった(Ellis,S.G.,1990,“Elective coronary angiopl asty(選択的冠動脈血管形成術):technique and complications(技法と合 併症)”、Textbook of Interventional Cardiology(介入的心臓学教科書)中 ,E.J.Topol,編,(W.B.Saunders Co.,Philadelphia);De Feyter,P.J.ら、 Circulation 83: 927-936(1991); Ellis,S.G.およびTopol,E.J,Am .J.Card iol66:932-937(1990); およびACC/AHA Task Force Report(ACC/AHA プロジ ェクトチーム報告書):Guidelines for percutaneous transluminal coronary angioplasty(経皮経管冠動脈形成術のためのガイドライン),J .Am.Coll.Ca rdiol12:529-545(1988))。第II期c7E3投与患者29例は、病変特異的特徴を用い た適格基準を満たした。このうち12例に1つのB型病変が認められ、14例には2 つ以上のB型病変が認められ、3例にはC型病変が認められた。加えて、本治験 における患者の多くには、単一血管または2つ以上の血管に、拡張した複数の病 変が認められたが、これらにも本術のリスクを増大する可能性がある(Samson, M.ら、Am .Heart J120:1-12(1990))。これらの患者におけるハイリスク血管造 影法的に定義された危険因子の数と重症度の両者に基づけば、虚血性合併症は10 〜20%の範囲内であると予測されるであろう(Ellis,S.G.:Elective coronary angioplasty(選択的冠動脈血管形成術):technique and complications(技 法と合併症)、Textbook of Interventional Cardiology(介入的心臓学教科書 )中、(E.J.Topol 編)W.B.Saunders Co.,Philadelphia(1990);De Feyter ,P.J.ら、Circulation 83: 927-936(1991); Ellis,S.G.and Topol,E.J,Am J.Cardiol.66: 932-937(1990))。 コントロール群も、ハイリスク患者で構成されていた。しかし、一般に、コン トロール患者の危険因子の数および重症度の方が低値であった。コントロール患 者9例中5例には、1つのB型病変(4例)または不安定アンギナ(1例)のい ずれかの危険因子が1つあったが、第II期c7E3投与患者32例中26例には、1つの C型病変か2つ以上のハイリスク特徴が認められた。この2群間の危険状態の差 は、有意差である(Fisherの厳密検定p=0.018 )。興味深いことに、剥離閉塞を 呈したコントロール患者(患者01−022 、2つのB型特徴を伴う不安定アンギナ )は、危険因子が2つ以上であると確認された3例のうちの1例であった(コン トロール患者1例には特記されていない危険特徴があった)。したがって、最高 リスクにあるコントロール患者3例中1例が血栓事象を示したが、この最高リス ク範疇内の26例のc7E3 Fab患者の中で血栓事象を示した者は皆無であった。 本試験は、静脈内ヘパリンおよび経口アスピリンが既に投与されている患者に おいて、c7E3の強力な抗血小板作用が安全に達成されることも示した。コントロ ール患者とc7E3投与患者において、出血事象は同等で、ベースラインからのヘマ トクリットの変化に投与群間の差はなかった。その他の有害事象は珍しく、その 重症度は一般に軽度ないし中等度であった。治験で1例が死亡したが、これはc7 E3 Fab投与後ほぼ2カ月に間質性肺疾患および心疾患を有する患者に発生し、PT CA後に進行性呼吸器不全を示し、敗血症、成人型呼吸障害症候群および、最終的 に多臓器不全を併発した。 最後に、結果を入手できた患者20例のうち、ヒト抗キメラ抗体免疫応答を経験 した者は皆無であった。 結論として、キメラc7E3 Fabは、PTCAを受けようとしている、アスピリンおよ び静脈内ヘパリン投与した患者の血小板機能を強力かつ安全に阻害する。抗血小 板作用は、出血リスクを有意に増大することなく、また免疫系反応性なしに、24 時間もの長期間、維持することが可能である。血栓性合併症のハイリスク患者の 中で、c7E3投与群では血栓事象が発生せず、c7E3は本患者母集団における血栓性 合併症のリスクを低減することが示唆された。 実施例5 冠動脈血管形成術中の剥離閉塞の治療 冠動脈血管形成術中の冠動脈剥離閉塞は、本術における罹病率および死亡率の 重大な決定因子である。冠動脈剥離閉塞は、選択的血管形成術症例の約3〜6% に発生する(Detre,K.M.ら、Circulation 82:739-750(1991))が、不安定アン ギナ(unstable angina pectoris)が原因で、または急性心筋梗塞後に、血管形 成術を受けた患者の20〜40%までに発生することが確認されている(Ellis,S.G .ら、Circulation 77: 372-379(1988);DeFeyter,P.J.ら、 Circulation 8 3: 927-936(1991))。剥離閉塞の機序は、血管形成術により内皮傷害領域が創ら れたか拡大された動脈部位における急性血栓症である。通常は、多くの場合プラ ーク物質の破壊による血管の幾何学的変化のため、血流パターンの乱れが認めら れ、そして内膜およびしばしば内側の切開を含めた内皮下要素の露出が認められ 、内側の切開もしばしば認められる。血栓の開始には血小板の付着および凝集が 必要なため、冠動脈血管形成術を複雑化する冠動脈剥離閉塞の治療には、キメラ 7E3 Fab 抗体断片が使用される。症例報告 本症例は、以前は優れた健康状態であった45才の男性医師である。本症例の胸 部および頸部不快は血管形成術の1週間前に開始した。これらの症状が数日にわ たって持続し、しかも悪化したとき、本症例は同僚の助言を求めた。心電図(EKG )は、前胸部T波(anterior precordial T wave)逆転を示した。本症例は地方 の病院の冠動脈ケアユニットに入院し、静脈内ニトログリセリンおよびヘパリン 、ならびに経口アスピリン治療を続けた。次の24時間にわたる連続的心アイソエ ンザイム測定は、正常範囲以上の上昇を示さなかった。次の2日にわたる連続的 EKG 記録は、前胸部T波の持続性偏平化を示したが、心筋梗塞の進化的変化は示 さなかった。入院後第2日目に、本症例を心カテーテル法研究所に搬送し、そこ で総体的に正常な左心室機能と、前側左心室壁の非常に小さな運動低下領域およ び別の下後基底帯(inferoposterobasilar zone )の運動低下領域が左心室造影 法によって明らかにされた。左心室の駆出率(ejection fraction )は72%であ った。冠動脈造影法は、左優性冠動脈系と、小さくて全体として閉塞した右冠動 脈を示した。左前下行(LAD)冠動脈の中部に有意な狭窄が認められた。小さく、 広範に罹患した対角分枝が、中部LAD 狭窄のすぐ遠位に生じていた。 本症例は冠動脈ケアユニットに戻り、静脈内ニトログリセリンおよびヘパリン で更に48時間維持した。この間本症例は無痛で、心アイソエンザイムは上昇して おらず、毎日のEGK は前胸部T波の持続性偏平化のみを示した。本症例は血管形 成のためにHermann 病院(Houston,TX )に移送された。 血管形成術の前に、本症例は静脈内ニトログリセリンおよびヘパリン、経口ア スピリンを引き続き受け、経口カルシウムチャネル遮断薬を開始した。部分トロ ンボプラスチン時間(PTT)は、数日間、70〜90秒の範囲のままであった。血管形 成術開始時における活性化凝固時間(ACT)は173 秒であった。本症例は5000単位 の静脈内ヘパリンを受けた。左冠動脈口にナンバー8フレンチJL 3.5ガイドカテ ーテルを埋め込んだ。尾部右前斜(caudal right anterior oblique )隆起およ び頭部左前斜(cranial left anterior oblique )隆起におけるLAD 冠動脈を映 像化した。LAD に最初、0.018 インチのドップラーガイドワイヤー(Cardiometr ics,Inc.,Mountain View,CA)を取付けた。本発明者らは、剥離閉塞ハイリス ク患者の血流モニタリングに、このガイドワイヤーを日常的に使用する。病変に 近いLAD 、及び病変から遠いLAD からの流速シグナルを記録した。2.5mm 冠動脈 バルーンカテーテル(Intrepid,Baxter,Inc.,Irvine,CA)をドップラーガイ ドワイヤーの向こう側に進めたが、ワイヤーは冠動脈中に静止させておいた。LA D 病変を広げるため、バルーンを適所に配置した。6気圧までの、一連の短時間 バルーン膨張を行った。ピーク流速(APV)からの流速シグナルが12cm/ 秒から33c m/ 秒に増加したこと、及び血管造影法により映像化した通り、狭窄の重症度は 低減した。 これらの拡張後の数分間の観察中に、血流シグナルが減少しはじめることに気 づいた。造影剤注入で、弾性反跳、プラーク崩壊、および血栓形成による血管形 成部位の再狭窄が明らかにされた。病変部位にバルーンを再度導入し、別のバル ーン膨張を実施した。冠動脈を再度拡張すると、血流シグナルはAPV 34cm/ 秒に 戻った。 さらに数分間のモニタリング中に、シグナルが再び低減した。本シグナルは5 分以内に完全に低下し、平均ピーク速度は3cm/秒であった。本症例は胸痛を経 験しはじめた。前胸部誘導のEKG モニターは、STセグメント上昇を示した。血管 造影法は、動脈が完全に閉塞していることを示した。ほんの2、3分前に得られ た活性化凝固時間は344 秒であった。 血小板GPIIb/IIIa 受容体に特異的なキメラ7E3モノクローナル抗体Fab 断片(c 7E3 Fab 、γ1、κ)を投与した。静脈への投与量は、1分間にキログラム当たり 0.25mgであった。c7E3 Fab投与後、約1〜2分以内に、冠動脈流速が上昇しはじ めた。造影剤の注入で、冠動脈開存性の回復が明らかにされ、心筋梗塞治験にお ける血栓崩壊1度(Thrombolysis In Myocardial Infarction Trial Grade-1;TIM I 1)血流であった。その後の15分間、冠動脈血流は引き続き増大し、AVP 23cm/ 秒で安定した。その他の数回の造影剤注入で、冠動脈血流の改善が認められた。 本症例の胸痛は静まり、モニターで観察されたSTセグメントはベースラインに戻 った。 プロトコールに従って、c7E3 Fab投与後15分に血管造影図をとった。本血管造 影図は、TIMI 3冠動脈血流を示した。この時の流速シグナルは20cm/ 秒であった 。その後5分の持続モニタリングで、冠動脈血流の更なる改善は認められなかっ た。その期間中、血管造影図のビデオ再生で、血管形成部位に依然として見える 少量の血栓が存在することが確認された。このため、冠動脈内ウロキナーゼ250, 000 単位を投与することに決定した。ほぼ10分かけて、この血栓崩壊剤を注入し た。ドップラーガイドワイヤーで測定した限りでは、その期間中に、血流の更な る改善はみられなかった。冠動脈内ウロキナーゼ注入が完了した後、c7E3 Fabの 投与後33分目に、冠動脈血管造影法をもう1度行った。動脈は開存しており、TI MI 3血流であった。ほぼ中等度であるが、明確な残存狭窄が病変部位に存続して いた。加えて、血栓は、サイズはさらに縮小していたものの完全に解消していな かった。残存狭窄を低減させるために、もう一度バルーン膨張を実施することに 決定した。 ガイドワイヤーを超えて病変部位まで、バルーンカテーテルを再び進めた。次 に、6気圧までの最終的バルーン膨張を2分間実施した。次に、バルーンカテー テルは回収したが、ワイヤーは同じ場所にそのまま残した。血流シグナルはAPV 29cm/ 秒まで上昇し、数分間、安定したままであった。血管造影図は、存在して いた残存狭窄の十分な低減を示した。次に、狭窄近位のガイドワイヤーを回収し 、流速をもう一度測定した。ガイドワイヤー、バルーンカテーテルおよびガイド カテーテルを回収した。これで処置が完了した。 本症例を冠動脈ケアユニットに搬送した。PTT を70〜90秒の範囲に保つため、 経口アスピリン、ニトレート、カルシウムチャネル遮断薬、および静脈内ヘパリ ンを数日間継続した。連続的EKG は、前胸部T波逆転の解消を示し、その後のEK G は全て正常であった。連続的クレアチンキナーゼ(CK)アイソエンザイム値は一 貫して100U/L未満であった。PTCA術以前の血小板数は248,000 であり、その後の 、c7E3 Fab投与後2時間、6時間、12時間、24時間および48時間における血小 板数はそれぞれ304,000 、279,000 、246,000 、185,000 および220,000 であっ た。術前に10μM ADP によって誘導された血小板凝集は、光学密度で73%であ り、その後の、2時間、6時間、12時間、24時間および48時間における値はそれ ぞれ0%、13%、26%、45%、および51%であった。血管形成術後1週間に、本 症例はフォローアップ・カテーテル処置を受けた。LAD 冠動脈は広く開存してお り、TIMI 3血流であった。本症例は、同日後刻、退院した。症例報告に関する考察 本症例の場合、0.25mg/kg の静脈内c7E3 Fab、250,000 単位の冠動脈内ウロキ ナーゼ、および反復拡張を併用して、冠動脈血管形成術中の剥離閉塞の急性虚血 性冠動脈症候群を治療して成功をおさめた。以上の結果から、血小板糖蛋白IIb/ IIIa受容体結合および血小板架橋を阻害する抗血小板療法は、同様な臨床状況に おいて、急性冠動脈閉塞の安定した再灌流を達成するのに役立つと考えられる。 実施例6 ハイリスク血管形成の虚血性合併症を防止するための 抗GPIIb/IIIaキメラ抗体断片の無作為、二重盲検評価 概要 経皮心筋血管再生は、1977年に冠動脈血管形成術が進歩したため、劇的な率に なった(Gruentzig,A.R.ら、N .Engl.J.Med.316:1127-1132(1987))。本 術により、虚血症状およびクォリティ・オブ・ライフは改善する(Parisi,A.F. ら、N .Engl.J.Med.,326:10-16(1992))ものの、急性合併症は重大な欠点のま ま残されている。術中または術後、病院で、症例の4〜9%において、処置した 血管が剥離して閉鎖し、そして再閉塞または剥離閉塞はかなりの罹病率を伴い、 死亡率は約10倍に増加する(Lincoff,A.M.ら、J .Am.Coll.Cardiol., 19:926 -938(1992)); Tenaglia,A.N.ら、Am .J.Cardiol,印刷中(1993);Detre,K .M.ら、Circulation ,82:739-750(1990); Ellis,S.G.ら、Circulation ,77:3 72-379(1988))。剥離血管閉塞の機序は多くの場合不明であるが、血栓形成およ び血管切開が寄与因子である。急性合併症のハイリスク患者を同定する特徴とし ては、冠動脈血栓を伴う臨床症候群(不安定アンギナ、急性心筋梗塞又は最近の 心筋梗塞)、糖尿病、女性、及び個々の病変の複雑性の増大を示す冠動脈形態学 的特徴(曲点、血栓、分岐)の存在などがある(Lincoff,A.M.ら、 J .Am.Co ll.Cardiol.19:926-938(1992); Ellis,S.G.ら、J .Am.Coll.Cardiol1 7 :(suppl B):89B-95B(1991); Moushmoush,B.ら、Cath .Cardiovasc.Diagn., 27 :97-103(1992); Myler,R.K.ら、 Circulation ,82(suppl II):II-88-II-95 (1990))。 アスピリンは、血管形成術を受けようとしている患者の剥離血管閉塞および急 性心筋梗塞のリスクを低減することが示されている(Schwartz,L.ら、 N .Engl .J.Med.,318 :1714-1719(1988); Barnathon,E.S.ら、 Circulation ,76:125- 134(1987))が、その血小板機能に対する作用は比較的弱く、アスピリンを前投 与したハイリスク患者の10〜20%の率で、虚血事象が引き続き発生する(Tenagli a,A.M.ら、J .Am.Coll.Cardiol.,(1933、印刷中))。対照的に、キメラ7E3 抗体のFab 断片をヒトに投与すると、GPIIb/IIIa 受容体の実質的遮断および血 小板凝集の阻害が達成される(実施例4、血小板機能の阻害を参照されたい)。 血管形成術を受ようとしている患者の初期試験で、c7E3 Fab抗体により、経皮 介入中および経皮介入後の剥離血管閉塞のリスクが低減した(実施例4およびEl lis,S.G.ら、 Cor .Art.Dis., 4:167-75(1993)を参照されたい)。本無作為 試験は、糖蛋白IIb/IIIa 受容体に選択的に結合するキメラ抗体断片の、虚血性 合併症防止における有効性を更に評価するために設計したものである(EPIC治験 、虚血性合併症を防止するためのc7E3 Fabの評価)。特に、血管形成術を受けよ うとしている術性合併症のハイリスク患者におけるキメラ7E3 Fab 断片(c7E3 Fa b)の臨床効果を、先見的二重盲検プラセボ対照無作為臨床治験で評価した。ハイ リスク臨床状況にある、すなわち、安静痛および心電図変化の記録を伴う重度不 安定アンギナ、進行性(evolving)急性心筋梗塞、又は周術期合併症のハイリス クを伴う臨床特徴及び冠動脈病変形態学的特徴を有する、冠動脈血管形成術また は方向性冠動脈切除術を受ける予定の、56施設における患者2099例を本治験に含 めた。患者は(a)プラセボ・ボーラスおよびプラセボ注入、(b)c7E3 Fab ・ボー ラスおよびプラセボ注入、または(c)c7E3 Fab のボーラスおよび注入のいずれか を受けた。一次終点は下記の要素のうちの任意の1つの発生を含む複合物であっ た:死亡、非致命的心筋梗塞、予定外の外科的血管再生または反復経皮術、予定 外の冠動脈ステント埋め込み、または難治性虚血のための大動脈内バルーン・ポ ン プ挿入。 ボーラスと注入で、一次終点が35%低減した(12.8%対8.3 %、p=0.008 )が 、ボーラス単独で11%の低減が認められた(12.8%対11.4%、p=0.43)。ボーラ ス投与と注入投与によって達成された事象の低減は、各終点要素内で一貫してお り、さらに、年齢、性別、既存の冠動脈間血栓、および急性冠動脈症候群(心筋 梗塞、不安定アンギナ)など、主な患者小群でも一貫していた。出血症状の発現 および輸血は、ボーラスおよび注入群で高値であり、ボーラス単独治療方式が中 間であった。冠動脈介入を受けようとしているハイリスク患者の本対照治験で、 血小板IIb/IIIa 受容体に対する抗体断片を投与すると、虚血性合併症の有意な 低減により、持続性の臨床効果が得られることが明らかにされた。方法 従来の経皮介入によるリスクを分類する、以前の試験に基づいて、剥離血管閉 塞ハイリスクでありしかも出血のハイリスクによる重大な禁忌がなければ、患者 は適格であった。患者は、3つの臨床群の1つに属する場合、ハイリスクにある と考えられた:(1)直接経皮介入または「救助」経皮介入のいずれかを受けた症 状発生の12時間以内の急性進行性心筋梗塞、(2)投薬治療にも拘わらず、先の24 時間以内の安静心電図変化に伴う安静アンギナの少なくとも2つの症状の発現を 伴う、梗塞後早期アンギナまたは不安定アンギナ、又は(3)(Ellis,S.G.ら、 J .Am.Coll.Cardiol.17(Suppl B):89B-95B(1991))によって修正された、 アメリカ心臓学会/アメリカ心臓協会基準(American Heart Association/Ameri can College of Cardiology criteria)を使用したハイリスク臨床基準および/ または血管造影法的基準(Ryan,T.J.ら、 J .Am.Coll.Cardiol.12:529-45( 1988))。これらのハイリスク臨床基準および血管造影法的基準には、標的病変 における2種類のB型特徴または1種類のC型特徴、あるいは65才を超える女性 または糖尿病患者における1種類のB型特徴が含まれた。 具体的患者登録基準を、以下に更に詳細に示す。 (I)次に挙げる状況のうちの1つにおいて、FDA 認可用具を用いた選択的また は救急冠動脈バルーン血管形成術もしくは動脈切除術(atherectomy )のために 照会。 (A) 下記のように定義された不安定アンギナおよび/または非Q波心筋梗塞: 1) 安静アンギナ:虚血性STセグメントまたはT波異常を伴う安静時アンギ ナの2つ以上の症状の発現、または 2) 再発性アンギナ:入院中の標準的な薬理学的介入に応答しない、虚血性 STセグメントまたはT波異常を伴う再発性アンギナ、または 3) 梗塞後早期アンギナ:心筋梗塞の記録から7日以内の虚血性STセグメン トまたはT波変化を伴う安静時アンギナ、又は最小限の運動(2met)で誘発される アンギナ、 ここで、一過性虚血性STセグメントまたはT波異常を、次のように定義した : a) ≧1mmのSTセグメント低下(J点(J point )後80ミリ秒)または上昇 (J点後20ミリ秒)、および/または b) T波変化(通常は逆転)、さらにここで、採用時点における全症例のク レアチンキナーゼ(CK)は正常の2倍未満でなければならない。 (B) 急性Q波心筋梗塞 1) 前駆血栓崩壊療法を用いない、心筋梗塞中の直接介入、または 2) 心筋梗塞中の血栓崩壊療法失敗のための救助血管形成術、 ここで、採用する心筋梗塞を、下記の3つの基準のうち少なくとも2つが存 在することと定義した: (1) 長期アンギナ(30分を超える); (2) 正常の上限の2倍を超える総クレアチンキナーゼ上昇(CK-MB アイソエ ンザイム上昇により確認) (3) 次のように定義した梗塞のECG 証拠: a) 3ケ所のうち少なくとも1ケ所における、少なくとも0.1mVのS Tセグメント上昇(J点後0.2秒に測定): i) 3つの下誘導(II、III、aVF )のうち少なくとも2つ;または ii) 6つの前胸部誘導(V1〜V6)のうち少なくとも2つ;または iii)誘導IおよびaVL ;または iv) 傷害の後電流(posterior current )と一致する前胸部誘導V1〜V4 のSTセグメント低下(ミラールール);または v) 左束分枝遮断の存在下、下誘導または前誘導における一次ST変 化: b) 0.04秒以上の持続期間であるか、対応するR波振幅の4分の1以上の 深さであるか、その両者である新しい有意Q波。 (C) ハイリスク臨床特徴/形態学的特徴 1) 拡張すべき動脈における、2つ以上のB型病変特異的特徴を伴う狭窄。 病変特異的特徴はACC/AHA基準を基にした; 2) 拡張すべき動脈における、1つ以上のC型特徴を伴う狭窄; 3) 65才以上の女性で、少なくとも1つのB型特徴を伴う狭窄; 4) 真性糖尿病および拡張すべき動脈における、少なくとも1つのB型特徴 を伴う狭窄;または 5) 特徴的CK-MB アイソエンザイム上昇により記録された、心筋梗塞後7日 以内の梗塞関連病変の血管形成術。 II.年齢18〜80才の男性、および出産の可能性がない年齢18〜80才の女性(すな わち、外科的に不妊処置をしたか、少なくとも1年間月経がないと定義された閉 経後の女性)。 III.プロトコール特異的手技および試験薬投与の開始前に準備された、文書に よるインフォームドコンセント。 下記のうちの一つの理由により、その理由がなければ本試験に参加資格のある 患者の参加を除外した: (1) 出血性素因の既往歴; (2) 試験採用の6週間以内の大手術; (3) 最近(採用の6週間以内)の臨床上重大な胃腸または尿性器の出血; (4) 採用前2年以内の発作または重大な神経学的残存欠陥を伴うあらゆる発 作; (5) 左主冠動脈の50%を超える閉塞; (6) 推定される又は記録された、脈管炎の既往歴; (7) 提示された試験薬注入より前の7日以内の、治験薬または用具の評価を 含む、他の臨床調査研究への参加; (8) 無作為化前プロトロンビン時間がコントロールの1.2 倍以下でない場合 、試験薬への無作為化前7日以内の、経口抗凝固薬の投与; (9) 血管形成術前および血管形成術中のために計画された静脈内デキストラ ンの使用 (10) 以前のネズミ・モノクローナル抗体の投与歴またはネズミ蛋白に対する 既知のアレルギー;または (11) インフォームドコンセントを与えられないこと。 全ての研究施設で研究施設内審査委員会の認可が得られ、全ての患者からイン フォームドコンセントが得られた。1991年12月から1992年11月の間に治験への参 加募集が行われ、2099例が合衆国内の56ケ所の研究施設で採用された。研究のプロトコル 患者は全て、アスピリンとヘパリンで処置した。アスピリンは、少なくとも手 技の2時間前に325mgの用量を経口投与し、その後1日1回325mgの用 量を維持した。ヘパリン(ぶた)は、初回ボーラスとして10000ないし12 000単位を静脈内投与し、その後15分間隔で3000単位までの増強ボーラ スを与えたが、総量20000単位を超えないようにした。目標は、手術中に、 一般に300ないし350秒と考えられている「治療」範囲内の活性化全凝固時 間を保つことであった(ケイ・ジー・ドファーティーら、アブストラクツ・オブ ・ザ・シクスティー・サード・サイエンティフィック・セッションズ、III− 189頁(1991年);ビー・ラスら、ブリティッシュ・ハート・ジャーナル ・63巻18−21頁(1990年);ジェイ・ディー・オウギルビーら、カテ ーテリゼーション・アンド・カーディオバスキュラー・ダイアグノシス18巻2 06−9頁(1989年))。ヘパリンは、少なくとも12時間、1時間100 0単位の割合で恒常点滴を続けた。静脈内および冠内硝酸塩を、臨床的適応であ れば使用した。キメラの7E3 Fab(γ1,κ)は、0.15M塩化ナトリ ウム、0.01M燐酸ナトリウムおよび0.001%ポリソルベート80を含み 1ミリリットル当たり2mgのモノクローナルFabを含むpH7.2の発熱物 質不含有の滅菌溶液として供給された。退院時に必要とされた治療は、1日32 5mgの用量のアスピリンのみであった。 患者は、二重盲検計画で、3つの処置群のひとつに同じように無作為に分けた 。第1群の患者は、0.25mg/kgの用量でc7E3 Fabのボーラスを 受け、その後10μg/分の用量でc7E3 Fabの12時間連続点滴を受け るものとした。第2群は、0.25mg/kgの用量でc7E3 Fabのボー ラスを受け、プラセボ溶液の12時間連続点滴を受けるものとした。第3群は、 プラセボのボーラスを受け、プラセボ溶液の12時間連続点滴を受けるものとし た。ボーラスは、手技開始の少なくとも10分前に開始し、5分間にわたって投 与し、点滴は、臨床的禁忌症状が出ない限り12時間続けた。 血小板計数用血液試料は、薬剤投与開始後30分、2、12および24時間、 並びにその後退院まで毎日、血小板減少症の証拠を注意深く調べるために採取し た。生命窮迫性出血および血小板減少症を評価し処置するために、あらかじめ考 案したアルゴリズムを使用した(ディー・シー・セーンら、アナルス・オブ・イ ンターナル・メディシン111巻1010−22頁(1989年))。プロトコ ルには赤血球の輸血について特に指示はなく、その代わりに、各部所に存在する 実施パターンにしたがって輸血が処方された。血管形成術は、標準的プロトコル にしたがって実施した。手技前および手技後血管造影は、150−300μグラ ムの冠内ニトログリセリン投与による冠血管拡張後に実施した。手技後、血管シ ースを研究薬剤点滴終了後少なくとも6時間維持した。さらに、シースをヘパリ ン点滴後少なくとも4時間および許容可能な活性化部分トロンボプラスチン時間 が達成されて止血作用が維持されるまでその場に残した。研究の終了点 独立した臨床終了点委員会(Clinical Endpoint Committee)が、研究終了点ま たは主要な副作用である可能性のある症状発現を全て精査した。この委員会は、 研究中の処置について盲検を維持し、症例報告書式、心電図および必要に応じて 患者の医療記録を精査した。事象の分類には、2名の査定員の同意を必要とした 。 試験の主要終了点は、無作為分類後の最初の30日内における下記事象の何れ かひとつの発生を含む複合的臨床終了点である: (1) 何らかの原因による死亡; (2) 非致命的心筋梗塞;または (3) 緊急的介入: (a) 2回目の血管形成術。再発性急性虚血に対する反復的経皮的介 入(バルーン式血管形成術または冠アテレクトミー)。予定(例えば設定手技) は終了点事象と判断しなかった; (b) 冠動脈バイパス移植。再発性急性虚血治療のための緊急的(非 選択的)外科介入; (c) 冠血管内ステントの挿入。拡張血管の即時開存性を維持するた めの冠内ステント設置;または (d) 大動脈内カウンターパルセーションバルーンポンプの挿入。反 復的血管形成術または外科介入の候補と考えられない患者における再発性虚血の ために設置されたバルーンポンプ。 この研究目的のため、「開存性」を、術者の測定で目視狭窄50%またはそれ 未満およびECG上虚血の証拠がないTIMI2−3級の流れと定義した。 終了点心筋梗塞は、次のように定義した: 1.急性進展心筋梗塞の24時間内に無作為分類した患者では、その後の非致命 的心筋梗塞の診断については2種の酵素基準の内のひとつを満たすこととした: (a)前回の「谷」(前のピーク値より25%下がるが正常値の上限の少なくと も2倍であると定義)から少なくとも33%増加を示す、正常値の上限の少なく とも3倍のクレアチンキナーゼ(CK)またはクレアチンキナーゼMB;または (b)前のピーク値より50%下がり正常値の2倍より低い「谷」の値を示した 後、CKまたはCK−MBが少なくとも100%上昇し、正常値の上限の3倍で ある。心臓酵素の再上昇を伴う長期狭心症(20分超)の記録された新規発作を 、再梗塞開始時の確定に使用した。記録された狭心症がない場合、再梗塞の開始 は、新規上昇の直前の酵素値の谷の測定時と設定した。研究開始時に存在した心 筋梗塞の開始24時間以内に再発性狭心症の開始および/または酵素値の谷が起 こった患者にのみ、定義1を使用した。全ての症例で、利用できない場合を除き CK−MB値を使用し、その場合総クレアチニンキナーゼ値を使用した。 2.急性梗塞後24時間を超えた後または最近の梗塞なしに試験に参加した患者 では、院内心筋梗塞の診断のために2種の基準中ひとつを満足しなければならな いとした:(a)2以上の近接誘導における≧0.04秒持続または対応R波幅 の>1/4の深度の新規Q波;または(b)正常値の上限の少なくとも3倍のC K−MBレベルおよび前回「谷」値より≧50%の上記値の上昇。この定義の場 合、研究開始時に急性心筋梗塞をもつ患者の再梗塞の開始時は、長期狭心症(> 20分)の新規発作発生時または新規酵素上昇前の酵素の谷の値の測定時とした 。この定義の適用については、どちらの時期も初回梗塞後24時間以降である。 3.退院後、心筋梗塞の診断のために下記2種の基準の内ひとつを必要とした: (a)2以上の近接誘導における、≧0.04秒持続もしくは対応R波幅の≧1 /4の深度の新規Q波またはその両者;または(b)正常値の上限の2倍のCK もしくはCK−MBレベル。 主要終了点の別の構成要素は、介入のための非計画的な一連の血管形成術への 回帰として定義される緊急的反復的介入の必要性である;計画的に設定された手 技は主要終了点に含めなかった。同様に、再発性虚血の処置のための緊急的冠手 術または血管形成術手技の失敗のみを主要終了点に加えた。冠動脈内ステント設 置は、ステントが血管形成術を受けている血管の窮迫または現実の剥離閉塞の処 置のために設置された場合に、主要終了点と判断した。大動脈内バルーンポンプ 設置は、ポンプが反復的血管再生手技を受けていない患者の再発性虚血の処置の ために設置された場合に、主要終了点と判断した。 出血事象は、心筋梗塞における血栓溶解研究グループ(Thrombolysis in Myoca rdial Infarction Study Group)の基準(エイ・ケイ・ラオら、ジャーナル・オ ブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー11巻1−11頁(198 8年))を用いて、大、小または軽微に分類した。大出血は、頭蓋内出血または 5g/dlを超えるヘモグロビン減少(または、ヘモグロビンが得られない場合 、少なくとも15%のヘマトクリット減少)を伴う出血と定義した。小出血は、 3g/dlを超えるヘモグロビン減少(または、ヘモグロビンが得られない場合 、少なくとも10%のヘマトクリット減少)を伴う自発性および肉眼血尿もしく は吐血として観察されるか、または出血部位が同定されない場合、4g/dlを 超えるヘモグロビン減少(または、ヘモグロビンが得られない場合、少なくとも 12%のヘマトクリット減少)とした。輸血を受けた患者の場合、大または小の 何れの出血が起こったかを決定するために用いる総ヘモグロビン減少値を得るた めに、輸血単位数を、観察ヘマトクリット減少値を3で除した値に加えた(シー ・エス・ランドフィールドら、アメリカン・ジャーナル・オブ・メディシン82 巻703−13頁(1987年))。データ管理および統計 患者は、デューク大学のデータコーディネーティングセンターに電話連絡する ことにより無作為分類した。無作為化分類は、研究部位により、また患者が急性 進展心筋梗塞をもつかどうかにより階層化した。以前のデータに基づき、患者2 100名のサンプルサイズで、主要終了点の33%減少(プラセボ群では15% と予想)を検出力0.8、α=0.05で検出するために計画を行った。 データは、症例報告様式で研究コーディネーターが収集し、データ登録前に盲 検の研究監督が検討した。主催者は、全ての患者が登録され全ての終了点が臨床 終了点委員会により裁定されるまで、無作為化コードおよび研究結果について知 らされないままであった。 ベースライン特性は、連続変数の中央値および25および75パーセンタイル 値として、並びに不連続変数の百分率として、下記の表に示す。試験の主要終了 点は、登録後最初の30日以内に複合的終了点の構成要素の何れかひとつが最初 に起こるまでの時間を考慮して分析した。もし30日期間内に事象が起こらなけ れば、患者の追跡は30日後に検閲した。各処置のカプラン−マイヤー生存曲線 を、結果のグラフによる表示に使用した(イー・エル・カプランら、ジャーナル ・オブ・アメリカン・スタチスティカル・アソシエーション53巻457−81 頁(1958年))。全ての処置の比較は、処置意志(intention-to-treat)の 原則を用いて実施した。主要終了点については、ボーラス単独患者をボーラスと 点滴群の中間と考えて傾向(用量−反応)のログ−ランク検定(log-rank test) を実施した(ジェイ・ディー・カルプフライシュおよびアール・エル・プレンテ ィス、ザ・スタティスティカル・アナリシス・オブ・フェイリュア・タイム・デ ータ、ジョン・ワイリー・アンド・ソンズ、ニューヨーク(1980年))。つ いで、トレンド検定が有意ならば、分析計画を対照群と2種のc7E3 Fab 群のそれぞれとの間で2点(pairwise)ログ−ランク比較試験に供した。安全性 の暫定分析は、患者の3分の1および約3分の2でデータが得られる場合に実施 した。各暫定分析での用量−応答曲線の検定の有意性の判定に用いた名目的アル ファ水準は、総第1種過誤率(type I error rate)を≦0.05に維持するよう にあらかじめ規定した。最終分析では、比較に使用した有意水準は0.036で あった。これらの比較は主として説明を目的とするものであるが、同様な方法( トレンドの検定後に適当ならば2点処置比較を行う)を、複合的終了点の各構成 要素に対する処置の関係を調査するために最終分析で使用した。また、最終分析 では、出血性合併症の測定に関して処置を比較するために、この方法を、慣用さ れるカイ2乗検定を用いて使用した。主要なサブグループ(年齢、性、体重、臨 床的サブグループ)における処置効果の見込み率と信頼区間を計算しグラフに示 した。結果 患者群の臨床ベースライン特性は、登録基準を含む病変特性に加えて、糖尿、 最近の心筋梗塞、高齢および女性が高い比率のため、この集団が血管形成術の急 性合併症のリスクが増加していることを示している(表11参照)。患者の大部 分は良好な左心室機能と1または2血管の疾患をもっていた。介入術の詳細は表 12に挙げる。処置の割当による実質的差異は認められなかった。 総括的主要終了点およびその構成要素を表13に示す。プラセボと比較すると 、ボーラス単独群における複合事象率の11%減少(p=0.43)およびボー ラスプラス点滴群における事象率の35%減少(p=0.008)というc7E 3 Fabによる段階的効果(p=0.009)が示された。同様な段階的効果 が、表13に示す最も重要な虚血性終了点のそれぞれについて観察された。すな わち、持続した糖蛋白質IIb/IIIaの遮断は非致死性梗塞、緊急冠バイパ ス手術および緊急的経皮的血管再生を減少する一方、同方向の有意ではない傾向 がボーラス単独で生じた短期遮断でみられた。ボーラスと点滴群における死亡の 3例は、無作為分類後で薬剤投与前に死亡した患者であった;それにも拘らず、 これらの死亡例は、処置意志の原則にしたがって分析に含めた。 非致死性虚血事象はc7E3 Fabにより予防されたので、予防された非致 死性心筋梗塞の重症度に関心がもたれる。表14に示すように、Q波梗塞および 大きな酵素上昇を伴う梗塞の両者とも予防され、用量−応答効果が存在した。 MI= 心筋梗塞 +中央値(25,75 パーセンタイル) ACT= 活住化凝固時間 +中央値(25,75 パーセンタイル) * p= 0.009試験全般の傾向 p= 0.43 プラセボとボーラスの比較 p= 0.008プラセボとボーラス+点滴の比較 † 死亡した3名の患者はこの治療枝に割り当てられたが、実際には治療を受け なかった。 MI = 心筋梗塞 PTCA= 経皮的血管形成術又はアテレクトミー CABG= 冠動脈バイパス移植 MI=心筋梗塞 CK−MBのピーク値又は総CKが正常上限の>5倍の時、大非Q波MIと定義 する。 CK−MBのピーク値又は総CKが正常上限の3〜5倍の時、小非Q波MIと定 義する。 非致死性虚血事象の時期は、正確に時期がわかる事象である緊急的反復血管形 成術に関して3群で異なっていた(図10参照)。プラセボ群における事象の大 部分は指標手技後の最初の時間に起こったが、ボーラス群では、受容体最大遮断 の時期に対応して、事象発生までに数時間(約6−12時間)の遅れが認められ た。ボーラスプラス点滴群では、虚血事象開始の著明な遅れとその絶対頻度の著 明な減少があった。 入院中の出血性合併症のプロフィールを表15に示す。効果の主要終了点と同 様、出血に対する処置の段階的効果が明かである。ボーラスプラス点滴群の患者 は、大出血率および輸血率の両者で実質的増加を示したが、ボーラス単独患者は 中等度の増加しか示さなかった。外科的血管修復率は均一に分布していたが(プ ラセボ群およびボーラスプラス点滴群で1%並びにボーラス単独群で2%)、出 血発現の大部分は冠動脈バイパス移植手術中または鼠径部血管穿刺部位で起こっ た。また、6名の患者は頭蓋内出血を起こし、プラセボ群で2件、ボーラス単独 群で1件およびボーラスプラス点滴群で3件であったが、そのうち1件は、出血 が無作為化後で血管形成術前に起こったので薬剤投与を受けなかった。 * p=0.001 **p<0.001 † 中央値(25,75 パーセンタイル) 2次的臨床事象の頻度は低く、処置によりこれらの結果に大きな差異はみられ なかった。心不全の30日率(2.3%,2.4%,2.3%)、持続低血圧( 3.0%,3.6%,4.1%)、心室細動(3.0%,2.6%,3.4%) および臨床的虚血発症(21%,17%,18%)は、プラセボ群、ボーラス群 およびボーラスと点滴群でそれぞれ類似していた。 処置の効果を、患者が急性梗塞、不安定狭心症またはハイリスクの病理所見の 何れかにより定義したサブグループ(図11参照)において評価したところ、c 7E3 Fabの利点は3種の登録カテゴリー全部に存在した。同様に、処置の 効果は、年齢と性で定義したサブグループ間で均質であった。体重の関数として 、c7E3 Fabボーラスプラス点滴の効果の利点は、体重が重い患者で処置 の効果が大きかったが、全ての患者スペクトルで存在した。 大出血の危険性は、ボーラス単独およびボーラスプラス点滴の両療法について 、体重の重い患者に較べて軽い患者で増加していた。最も軽い3分の1の患者で は、大出血は、ボーラスプラス点滴、ボーラス単独およびプラセボ処置患者でそ れぞれ21対15対7%であり、他方最も重い3分の1では、対応する出血は8 、7および7%であった。最も軽い3分の1の患者における包装赤血球輸血を、 ボーラスプラス点滴、ボーラス単独およびプラセボ処置患者でそれぞれ24、2 0および11%に行ったが、最も重い3分の1では対応率は11、7および4% であった。考察 これらの結果は、経皮経管腔的冠血管形成術を受けている患者の急性虚血性事 象の発生における血小板、恐らくは血小板由来伝達物質、および血小板機能の重 要性を確認するものである。EPIC試験を、剥離血管閉塞(再閉塞)および付 随合併症の危険性が高い一団の患者を登録するために特別に計画した。以前のデ ータベースの分析は、患者のあるものが急性梗塞(アール・エス・スタックら、 ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブカーディオロジー11巻114 1−49頁(1988年))、重症不安定狭心症(アール・ケイ・マイヤーら、 サーキュレーション82巻(補遺II)II−88−II−95頁(1990年 ))または血栓の血管造影像(ディー・ディー・シュグリューら、ブリティッシ ュ・ハート・ジャーナル56巻62−66頁(1986年)、ビー・ディー・ヘ ットマンら、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・カーディオロジー15 巻154A頁(1990年))のような血管血栓の臨床的指標に基づきハイリス クとして分類できることを示した。他の患者は、血管微小径、散在疾患または血 管形態不良(アイ・エヌ・シンクレアーら、アメリカン・ジャーナル・オブ・カ ーディオロジー61巻61G−66G頁(1988年);エヌ・エイ・ルオッコ ら、アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディオロジー69巻69−76頁(1 992年);エス.ジー.エリスら、アメリカン・ジャーナル・オブ・カーディ オロジー63巻、30−4頁(1989))のような物理的因子のためにハイリ スクであった。両タイプの患者の実数を試験に登録し、各タイプの患者に対する 血小板凝集阻害の重要性を洞察ができるようにした。このような危険性の高い患 者を入れると、全ての患者でアスピリンと高用量のヘパリンを使用したにも拘ら ず、プラセボ処置患者で15%におよぶ率の虚血性事象が起こると予期された; この予期事象率は、ほぼ実現した。 c7E3 Fabの投与は、非致死的心筋梗塞、緊急血管形成術の必要性およ び緊急冠バイパス手術の減少などの主要効果とともに、複合事象率の35%減少 をもたらした。c7E3 Fabボーラスは、血小板凝集に影響する時間の長さ に対応して、これらの事象の発生遅延を起こした。しかし、ボーラスの4ないし 6時間後に、虚血事象が起こりはじめた。この間隔は、血小板凝集がネズミ7E 3 Fabのボーラス後の基底値の約50%に戻ることを示す期間に相当する。 事象の遅延に加えて、著明で長期の血小板阻害を生じた(実施例4参照)ボー ラスと点滴の組み合わせ処置は、また急性虚血事象の発生をも予防した。複合終 了点は、血管形成術周辺期間における虚血事象に対するこの処置の与えるインパ クトの総括的予測を提供した。 この試験から得られる最も重要な知見のひとつは、種々の終了点を通して事象 減少のプロフィールが一貫していることである。心筋梗塞の減少は、実質的であ り、その後の緊急措置の臨床的必要性の同時低下と一致していた。非致死的梗塞 の分類は、経皮的冠介入の評価の主要な問題点となっている。正常値の上限を超 えるクレアチニンキナーゼMBアイソエンザイムの上昇は通常認められ、一連の 報告における患者の4ないし21%に亘っていた(エル・ダブリュー・クライン ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・カーディオロジー17巻621 −6頁(1991年);エイ・シー・ハントら、ヨーロピアン・ハート・ジャー ナル12巻690−3頁(1991年);ピー・ポーレットら、アメリカン・ジ ャーナル・オブ・カーディオロジー69巻999−1000頁(1987年); ジェイ・ジェイ・スパダロら、カテテリゼーション・アンド・カーディオバスキ ュラー・ダイアグノシス12巻230−4頁(1986年))。これらの酵素上 昇が一律に別個の臨床的事象に関連しない場合には、長期の不利な結果との関連 性はまだ証明されていない。すなわち、関連する臨床的虚血事象がない孤立した 酵素上昇の予防は、予後的に意味がないかも知れない。この微妙な領域の客観的 妥当性を確認するため、酵素と心電図を系統的に集め、盲検的終了点委員会を使 用して、心筋梗塞として事象を分類するのに心筋特異的酵素の少なくとも3倍の 増加を必要とすることとした。c7E3 Fabが緩和な酵素上昇、大きな酵素 上昇およびQ波発現を伴うものを含めて、心筋梗塞の全スペクトルを減少させる との知見は、特に救急的冠再血管形成手技の必要性もまた減少することから、予 防された事象の臨床的重要性を再確認するものである。 死亡率に対する効果は期待も観察もされなかったが、薬剤を受けなかったボー ラスおよび点滴群患者での3死亡例が注目される。これらの死亡例は、処置意志 (intention-to-treat)の原則にしたがって主要分析に計数された。死亡した他 の全ての患者は、割り当てられた治療を実際に受けていた。血管形成術にともな う死亡率が低いとすると、死亡率に対する25%の有利または不利な処置効果を 検出するのに20000名を超える患者が必要である。 ハイリスク血管形成術という状況における臨床的終了点に対する糖蛋白質II b/IIIa受容体遮断の有利な効果は納得できるものであり、難治性不安定狭 心症において血管形成術を受けている患者に同じ抗体を使用した最近の初期試験 における、肯定的な結果と一致する(エム・エル・サイムーンスら、ジャーナル ・オブ・アメリカン・カレッジ・カーディオロジー21巻269A頁(1993 年))。 これがIIb/IIIa受容体遮断に関する最初の大規模試験なので、血小板 減少症誘発に対する懸念があった。しかし、c7E3 Fabでは、僅かで、臨 床的に重要でない血小板上昇があっただけである。具体的には、分析によると、 ボーラスプラス点滴処置群(5.2%)の患者が、血小板減少症(血小板数<1 00000/μL)を、ボーラス処置群(3.6%)またはプラセボ処置群(3 .4%)より多く経験したことが明らかになった。すなわち、ボーラスプラス点 滴処置群では、プラセボ群に比較して、血小板減少症(血小板数<100000 /μL)の発生の増加があった(2点比較p=0.062)。重症の血小板減少 症(血小板数<50000/μL)は、ボーラスプラス点滴処置群患者で11名 (1.6%)およびプラセボ処置群患者で5名(0.7%)に起こった。ボーラ スプラス点滴群およびプラセボ処置群のそれぞれでわずか4名(<1%)の患者 が、重症血小板減少症および重大な、生命に危険があるかまたは致死的な有害事 象を示していた。血小板減少症の発症は全て一過性で、典型的には最初の2〜3 日に起こった。 出血合併症と輸血の顕著な増加が処置患者にみられた。この増加は、主として 大腿穿孔部の出血の結果であり、3群間で最低ヘマトクリットまたは生命に危険 がある合併症に差がなかった。手術患者が分析に含まれるか否かでは、傾向は同 じであった。この盲検研究においては、どの処置が与えられているかわからない ので、止血能力についての懸念から、ある施設での輸血決定の閾値が低くなって いたかもしれない。我々の以前の経験では、血栓溶解療法の処置を受けている患 者における出血および輸血管理用の改良プロトコルが、血液製品投与の減少に効 果があった(ティー・シー・ウオールら、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレ ッジ・カーディオロジー21巻597−603頁(1993年))。 処置による利益と出血の危険性の間の体重の関数としての相互作用は、予期し たよりも複雑であった。主要事象の発生率と大出血の危険性は、プラセボ処置患 者では体重による明らかな変化はみられなかったが、c7E3 Fabボーラス 単独患者およびボーラスプラス点滴患者の両者では、主要起結事象の発生率及び 大出血の発生率の高率化に向かう明確な傾向が体重の減少とともにみられた。 経皮的血管再生の前、途中または後の患者における糖蛋白質IIb/IIIa 受容体を遮断するこの方法の臨床的有用性の判断は、血液製品投与に対する虚血 事象の回避の相対的価値に依存する。この試験に登録したハイリスク患者では、 バランスは好ましいようである。急性心筋梗塞または緊急的反復血管再生の予後 的意義は重大であり、幸いにも輸血の危険性は連続的に低下している(ジェイ・ ジー・ドナヒューら、ニュー・イングリッシュ・ジャーナル・オブ・メディシン 327巻369−73頁(1992年);アール・ワイ・ドッドら、ニュー・イ ングリッシュ・ジャーナル・オブ・メディシン327巻419−21頁(199 2年);ケイ・イー・ネルソンら、アナルス・オブ・インターナル・メディシン 117巻554−9頁(1992年))。不要な出血と輸血を減らし、抗トロン ビンおよび抗血小板作用を含めた抗血栓療法をより有効に投与するための実務ア ルゴリズムを使用することについての努力は、この試験でみられた臨床上の利益 をさらに増強するものである。実際に、器具使用患者における強力な非経口投与 抗血栓剤は、抗血栓療法剤の体重調整処方に焦点を当てるべきである(例えば、 ここにおいて、ヘパリン用量は体重調整されなかった)。さらに詳細な物理的評 価および関係する施設に一貫して適用されるべき出血減少法を定義するプロトコ ルの使用は、出血合併症の発生についてより多くの情報をもたらすことができる 。 場合により剥離閉塞が主として血栓であったり主として機械的であったりする が、患者集団を通じて処置効果が広く一貫していることは、多数の患者で血栓形 成がより重要な役割を占めることの強い証拠である。ボーラス療法で起こる事象 発現の遅れおよびボーラスと点滴による事象の予防は、ほとんどの状況下で破壊 された動脈表面が手技後18ないし24時間までに血栓形成性の多くを失うこと を意味する。治療方法は、剥離血管閉塞の危険性が大きな患者における持続的抗 血栓作用の必要性を考慮に入れるべきである。 要約すると、この試験は、危険性の高い経皮的血管再生術を受けている患者に おける、再閉塞または剥離閉塞の減少および/または予防における糖蛋白質II b/IIIa受容体持続遮断の有利な効果を示すものである。この利点は出血増 加の危険性を冒して得られるものではあるが、総体的臨床結果を考察すると、手 技前の臨床的および血管造影的予測因子に基づいて、急性虚血合併症の危険性が 高いことが知られている患者の治療においてこの方法が有利であることがわかる 。この試験は、細胞インテグリンの機能抑制に関する有意義な治療方法について 最初の確証をもたらすとともに、将来における他のセクレチンおよびインテグリ ン標的についてバイオテクノロジーのために、またこの特異的IIb/IIIa 糖蛋白質に対する非抗体またはペプチド法のために、道を開くものである。 実施例7 抗GPIIb/IIIaキメラ抗体フラグメントの早期投与による冠介入後の臨 床的再狭窄の減少 バルーン血管形成術および経皮的冠介入後の再狭窄過程は極めて普遍的であり 、25%を超える症例において6か月以内に狭心症症状の再発と反復的血管再生 の必要性をもたらすものであり、合衆国で年間20億ドルを超える総費用を要し ている(ジェイ・ジェイ・ポプマら、サーキュレーション84巻1426−14 36頁(1991年);イー・ジェイ・トポルら、サーキュレーション87巻1 489−1497頁(1993年);ジェイ・ピー・アール・ヘルマンら、ドラ ッグス46巻249−262頁(1993年))。再狭窄の主要な生物学的引き 金は、介入部位で膨張したバルーンまたは代替え装置により誘発され、血小板血 栓形成と中膜平滑筋細胞の休止・収縮状態から遊走・増殖・分泌機能を持つ状態 へのフェノタイプの変化を伴った血管傷害である(ジェイ・エス・フォレスター ら、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・カーディオロジー17巻758 −769頁(1991年);ジェイ・エイチ・イプら、ジャーナル・オブ・アメ リカン・カレッジ・カーディオロジー17巻77B−88B頁(1991年); ダブリュー・カッセル、サーキュレーション86巻723−729頁(1993 年))。種々の薬理学的作用剤が試験モデルにおいて血管傷害後に起こる特徴的 血管筋内膜増殖の調節に成功し、少数の研究が血管造影上の利点を示唆している が、有効な薬剤を証明するための患者における大規模臨床試験はまだなく、今ま でこの事象の可能性を減少することが知られた薬理学的治療はなかった(ジェイ ・ジェイ・ポプマら、サーキュレーション84巻1426−1436頁(199 1年);ジェイ・ピー・アール・ヘルマンら、ドラッグス46巻249−262 頁(1993年);メルカトル研究団、サーキュレーション86巻100−11 0頁(1992年))。 冠血管形成術は、補助的経口アスピリンおよび静脈ヘパリンとともに日常的に 実施されている。しかし、この抗血栓法は、血小板凝集を弱く阻害するだけであ る。トロンビン、コラーゲンおよびアデノシン2燐酸を含む種々のアゴニストが 、アスピリン療法を行っていても血小板を刺激する。血小板の分子生物学は、糖 蛋白質IIb/IIIaインテグリンが血小板凝集の受容体の役をすることを解 明した(イー・エフ・プロウら、プログレス・イン・ヘモスタシス・アンド・ト ロンボシス296巻320−331頁(1988年);ビー・エス・コラーら、 ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション76巻101−108 頁(1985年))。キメラ7E3抗体Fabフラグメントは、血小板IIb/ IIIaインテグリンに選択的に結合する。初期の研究がキメラモノクローナル 抗体Fabフラグメントの予備的安全性と有効性を確認した後、2099名の患 者による多施設、二重盲検、プラセボ対照試験を実施した(実施例6参照)。剥 離閉塞の抑制を示す急性期の主要虚血事象の減少という主要な有効性終了点に加 えて(実施例6参照)、c7E3が、その後の6か月フォローアップ期間での虚 血事象または反復血管再生の必要性により定義される臨床的再狭窄を減少させ得 ることが確認された。方法 研究用母集団とプロトコルの詳細は実施例6に記載した。要点を再説すると、 患者が冠血管形成術または方向性(directional)アテレクトミーを受け、進行中 または最近の心筋梗塞、不安定狭心症もしくはアメリカン・ハート・アソシエー ション/アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジーの基準(ACC/AH Aタスク・フォース・レポート、ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・カ ーディオロジー12巻529−545頁(1988年))により定義される危険 生の高い血管造影上の病変形態をもつ場合に参加資格ありとした。除外基準は、 出血性素因、年齢≧80、2年以内の発作または6週間以内の大手術とした。プ ロトコルは、56の参加施設全ての研究検討委員会で承認され、全ての患者から インフォームドコンセントを得た。 患者は、経口アスピリン(1日325mg)を受け、初回用量は手技の2時間 以上前に投与した。静脈内ヘパリンを、少なくとも300秒の活性化凝固時間を 達成するように手技中に投与した。アスピリンおよびヘパリンに加えて、患者を 下記3種の選択的療法のひとつに無作為に配分した:(1)プラセボボーラスお よびプラセボ12時間点滴;(2)活性c7E3(セントコア、ペンシルバニア 州マルバーン);または(3)同用量の活性c7E3ボーラス、直後に10μg /分のc7E3を12時間点滴。ボーラスは、少なくとも冠介入手技の10分前 に投与した。 主要終了点は、何らかの原因による死亡、心筋梗塞、急性虚血のための冠動脈 バイパス手術、急性虚血のための反復経皮冠介入、虚血治療のための管内ステン トまたは大動脈内バルーンポンプの挿入の必要性の、30日間における複合的発 生とした。これらの事象は全て、研究中の処置に関して知らされていない独立し た臨床終了点委員会により検討され、分類には少なくとも2名の査定員の同意を 必要とした。 6か月の追跡中、二重盲検を保った。その後の死亡または非致死的心筋梗塞の 虚血事象に加えて、患者を経皮冠介入もしくは冠状動脈バイパス手術またはその 両者からなる反復血管再生手技の必要性決定に供した。主旨が突然の虚血事象の 代わりではなく血管再生手技の必要性であるため、急性期の終了点と異なって、 結果にステントまたは大動脈内バルーンポンプの使用は含めなかった。退院後の 心筋梗塞の診断基準には、2以上の近接誘導における、≧0.04秒持続もしく は対応R波幅の≧1/4の深度の新規有意なQ波または正常値の上限の2倍を超 えるクレアチニン・キナーゼもしくはクレアチニン・キナーゼ心筋バンドを必要 とした。血管再生データを、元の標的血管が反復手術または経皮血管再生を受け たかどうかとともに収集した。追跡は、97.2%完全であった。 6か月後の結果が急性期の結果と分類しているかどうかを評価するために、ベ ースラインから6か月までの全事象、30日終了点後に初期介入が成功した(虚 血性合併症を伴わず、臨床研究者の読みで最終狭窄50%未満の達成として定義 される)患者に起こった事象および48時間後に初期介入が成功した患者に起こ った事象を分析に含めた。30日終了点は、多数の冠血管介入試験の先例により 前向きに選択した。48時間の区切りは、定義により、冠介入後のほとんど全部 の剥離閉塞がこの時間帯に起こることが知られているために使用した(ケイ・エ ム・デトルら、ジャーナル・オブ・カレッジ・カーディオロジー13巻230A 頁(1989年);エイ・エム・リンコフら、ジャーナル・オブ・カレッジ・カ ーディオロジー19巻926−938頁(1992年);ピー・ジェイ・ファイ ターら、サーキュレーション83巻927−936頁(1991年))。 無作為化は、デュークコーディネーティングセンターに電話連絡することによ りおこない、研究施設により、また患者が急性心筋梗塞をもつかどうかにより階 層化した。データは、別個の6か月症例報告様式で研究コーディネーターが収集 し、その品質はデータ登録前に盲検の研究監督が元記録により検討した。主催者 は、全ての患者の追跡が完了され、事象が終了点委員会により裁定され、データ ベースが完全とわかるまで、追跡結果について知らされないままであった。統計分析 全ての処置の比較は、処置意志の原則により行った。事象発生率は、カプラン ーマイヤー法(イー・エル・カプランおよびピー・マイヤー、ジャーナル・オブ ・アメリカン・スタチスティカル・アソシエーション53巻457−81頁(1 958年))により推定し、結果を図示するため生存曲線を使用した。プラセボ 対ボーラス対ボーラスと点滴の事象発生率における用量反応検定を(それぞれ0 、1および2のスコアで)一般的ログランク統計法(generalized log-rank sta tistics)を用いて実施した。また、プラセボとc7E3処置のそれぞれの2点 比較をログランク統計法で実施した。比例ハザード(コックス)モデルが、ベー スライン特性と結果の見込み相関性の検討に適合した。これらは、モデル化され た処置の相違と組み合わせて全ての処置群につき、また処置群毎に、処置群間の 差異を調べるために行った。さらに、比例ハザード(コックス)モデルが、遅延 事象または処置効果と関連するかもしれない因子を調べるために、48時間追跡 後 の全事象の複合終了点に適合した。この分析に含めた因子は、処置、血管再生し た単独または複数の病変部、手技の持続時間、ベースラインにおける心筋梗塞も しくは不安定狭心症、または他のハイリスクな登録基準、性、年齢65≧または <65、体重および真性糖尿病であった。結果 登録は、2099名の患者について1991年12月1日からはじめ、199 2年11月18日に終わった。全試験集団の特性は前記の通りである(実施例6 、表10参照)。初期血管再生術またはアテレクトミー手技が成功した、すなわ ちその後の臨床的再狭窄の資格がある患者のベースライン特性は、表16に示す 。初期手技成功患者のベースライン特性に処置割り当てによる顕著な差異はなか った。 c7E3ボーラスまたはボーラスと点滴を受けている患者は、主として最初の 48時間の、出血性合併症と、ほぼ2倍の輸血率を示した(プラセボは7%、ボ ーラス単独は13%、ボーラスと点滴は15%、p<0.001)。12時間点 滴は、プラセボを受けている患者48名(7.0%)、ボーラス単独患者85名 (12.5%)、ボーラスと点滴群で107名(15.8%)で、完全に完了し なかった。 c7E3で血小板減少症の有意な増加はなく、過敏またはアレルギー反応も現 れなかった。陽性のヒト抗キメラ抗体(HACA)応答が、ボーラス処置患者の 5.2%およびボーラスプラス点滴処置患者の6.5%で生じた。陽性HACA 応答患者のほとんどは、低い力価の応答であった。ボーラス処置群の陽性HAC A応答をもつ32名の患者は全部、力価≦1:1600であった。陽性HACA 応答をもつボーラスプラス点滴群患者40名中34名は、力価≦1:1600で あった。HACA力価が1:6400ないし1:51200の者は、ボーラスプ ラス点滴処置群で6名であり、ボーラス処置群では全くなかった。 30日目で、プラセボ処置群(12.8%,P=0.009)に比較して、c 7E3ボーラスと点滴処置患者で大虚血事象(死亡、心筋梗塞、緊急血管再生) の35%減少(8.3%)があった(実施例6、表13参照)。6か月データは 表17に示すが、これは(a)登録患者全部、(b)登録後最初の48時間に虚 血性合併症なしに手技が成功した患者および(c)初期手技が成功し最初の30 日間に事象がなかった患者団についての死亡、心筋梗塞および冠動脈バイパス手 術または反復冠介入の必要性の結果を示す。6か月間で、虚血事象および血管再 生の23%減少があった(27%対35%、P=0.001;表17参照、全患 者登録、合併症死亡、MI,CABG,PTCA)。反復標的血管再生がプラセ ボ処置(22.3%)に対してc7E3ボーラスと点滴(16.4%)で26% 減少した(P=0.007;表17参照)ので、有利な長期効果は、主として初 期手技成功患者におけるバイパス手術または反復血管再生術の必要性が少ないこ とによるものである。ボーラス単独患者群は、この試験に用いた基準ではプラセ ボよりも有意に良いといえない中間的な結果であった。 別の分析において、最初の30日間に主要効果事象を経験しなかった全患者の 6か月データを研究した。この分析の結果は表18に示す。このデータは、c7 E3ボーラスプラス点滴の急性期投与で反復血管再生手技の必要性が21%減少 したことを示す。 また、試験に登録された全ての患者に関する全ての事象(死亡、非致死的梗塞 または冠血管再生の必要性)のデータを図12に示す。介入成功および30日ま で無事象の患者に関するデータも図13に示す。 急性期終了点の内、事象の81%は48時間までに起こった。これは、処置群 を通じて同様であった(プラセボ82.0%、ボーラス79.7%、ボーラスと 点滴81.4%)。初期介入成功患者における最初の48時間後の事象を考察す ることにより、最初の30日間の選択的標的血管再生が確認される。図14に示 すように、c7E3ボーラスとボーラスプラス点滴群の間に、30日終了点後ま で亜急性虚血事象にほとんど差がなかった。 死亡、心筋血管再生および最初目を向けなかった血管を含む全ての血管再生の 複合の代わりに、標的血管の血管再生のみに焦点を当てることが役立つ。6か月 期間の全患者集団についてみると、他の処置群に比較したときボーラスと点滴群 患者で標的血管の血管再生の有意な26%の減少があった(図15参照)。本試 験条件下で、追跡中標的血管の血管再生についてボーラス単独の効果はほとんど みられなかったことが注目される。 サブグループ分析では、ベースラインにおいて急性冠症候群(不安定狭心症、 最近のまたは急性の心筋梗塞)をもつと診断された患者と、安定狭心症であるが 危険性が高い血管造影上の形態をもっていた残りの患者を比較した(表19)。 このことは、両サブグループについて複合事象の減少に有意な効果があったこと を示したが、反復冠介入の必要性の減少については安定狭心症患者でのみ有意で あった(表19)。この知見は、手技成功患者において、事象の分析をベースラ インからした場合、または48時間後からした場合について一致していた。 考察 大規模多施設無作為試験により得られた最近の知見は、ボーラス投与と点滴投 与による血小板IIb/IIIaインテグリンブロックの冠動脈介入を受けた患者に ついて、再狭窄の減少により臨床事象(clinical events)の発現が低下すること を支持している。6ヶ月目におけるこの介入の有益効果の程度は、死亡、致命的 ではない心筋梗塞および血管再生術の必要性など虚血性事象全般の約23%の減 少、標的血管再生術の26%の減少であった。これらの結果は、c7E3のボー ラス投与と12時間の点滴投与の有益効果は、急性閉塞および急性期有害事象の 減少から、その後の冠動脈血管再生処置の必要性の低下にまで及ぶことを示して いる。 この試験に使用されたモノクローナルFabフラグメントは、血小板IIb/II Ia表面インテグリンに対して強力な結合親和性を有し、解離性は非常に小さい 。c7E3の投与とともに血管形成術を受けた患者における以前の試験により、 この抗体の点滴注入終了後も、IIb/IIIaの結合部位が少なくとも36〜48 時間の長時間占有されること、少なくとも72時間以上血小板凝集抑制がみられ ることが示されている(実施例4参照、Ellis,S.G.et al.Cor .Art.Dis., 4: 1675-175(1993); Tcheng,J.E.et al.Circulation ,88:(1993)も参照)。 これらの効果は両方共時間経過とともに減少し、ベースラインに戻るが、c7E 3の血小板凝集抑制効果の持続時間について興味深いのは、本試験に用いた評価 基準および条件では、ボーラス投与とプラセボの点滴投与では、臨床的に意味の ある効果が急性期にも6ヶ月後の結果にもみられなかったことである。このこと は、抗−GPIIb−IIIa抗体の投与により急性虚血性事象または臨床症状を示 す再狭窄を減少させるためには、この薬剤に比較的長時間曝露する必要があるこ と(例えば、試験薬のボーラスと点滴の組み合わせで達成されるように)および GPIIb/IIIaインテグリンの抑制が長い程良好な結果が得られることを示唆 している。 また、c7E3がビトロネクチン受容体と結合するという報告(Hynes,R.O.,Cell69:11-25(1992))も注目に値する。これはおそらくこの受容体がGPIIb /IIIaのβ3成分を含んでいることによると考えられる。このインテグリン(ビ トロネクチン)は、狭窄と再狭窄の調節においてある役割を果たしていると考え られており、抗−GPIIb/IIIaのビトロネクチン受容体への結合が、観察さ れた効果に関与していると考えられる。他のGPIIb/IIIa受容体抑制剤は、 標的および相同のインテグリンに対し様々な程度の特異性を有している(Sutton ,J.et al.,Clinical Research AFCR ,41:118A(1993)).。これらの分子相互作 用の臨床効果への寄与を分析するための比較試験を行うことができる。 今回の試験では、治療群における再狭窄の程度を定量するための計画的な6ヶ 月反復(repeat)血管造影は実施しなかった。多くの再狭窄試験において反復血管 造影は実施されているが(Forrester,J.S.,et al.J .Am.Coll.Cardiol.,1 7: 758-769(1991); Ip,J.H.et al ,J.Am.Coll.Cardiol.17:77B-88B(1991) ;Casscells.W.,Criculation 86:723-729(1993); Topol,E.J.et al.N .En gl.J.Med.,329 :228-233(1993); Adelman,A.G.et al.N .Engl.J.Med.3 29: 228-233(1993); Serruys,P.W.et al.,Circulation84:1568-1580(1991) )、無症状の患者において標的血管狭窄の診断がなされた場合に通常行われない 反復措置がしばしばとられているという大きな欠点がある。一方、本発明の試験 デザインは、多数の患者における実際の臨床をシュミレートしている。最近の幾 つかの再狭窄試験において示されている血管造影の有益性それ自体は、単独では 臨床的に充分なあるいは完全な意義はないので、反復血管再生術の必要性を有意 に減少させることを示すことは、再狭窄試験の真の目標である。さらに、経皮的 冠動脈介入措置後の患者において死亡および心筋梗塞が起こることは通常は無い ので、有効な薬剤介入により調節すべき主な事象は、本試験で観察している標的 血管の反復血管再生術である。試験薬のボーラスおよび点滴投与以外は、本試験 の患者はフォローアップ終了まで注意深く2重盲検を維持するなど同様に扱われ ているので、観察された臨床意味のある有益な効果は、再狭窄の程度が軽減した ことによるとみなすことは妥当である。 本試験は、臨床的再狭窄の軽減として解釈できるその後の血管再生術必要性の 臨床的に意味のある低下を立証する最初の代表的な大規模無作為試験である。こ れはIIb/IIIa遮断剤のボーラスおよび点滴投与により達成され、損傷した血 管壁の真の被膜化(passivation)を目指す。たとえc7E3をわずか12時間だけ 維持しても、この薬剤の抗血小板作用は数日間持続し、急性期における虚血性事 象のリバウンドはみられなかった。重要なことは、6ヶ月目の標的血管の血管再 生術減少という独立した有益効果は、c7E3による急性薬剤介入の持続作用を 示唆しており、血管壁の被覆化の臨床的証拠として提供することができる。 血小板IIb/IIIaブロックによる再狭窄を示す臨床事象の減少の知見は、再 狭窄における血小板−血栓の役割を強調しており、これが血管形成術後または内 皮損傷後の内膜新生の主要経路である可能性としてあげられている。(Schwartz ,R.S.et al.J .Am.Coll.Cardiol.,20:1284-1293(1992); Topol,E.J.Ma yo Clin .Proc .,68 88-90(1993); Willerson,J.T.et al.Proc .Natl.Aca d.Sci.USA88:10624-10628(1991))。中間の平滑筋細胞の増殖も再狭窄にお いて重要な役割を果たしており(Forrester,J.S.et al. ,J.Am.Coll.Cardio l.17:758-769(1991); Ip.J.H.et alJ .Am.Coll.Cardiol17:77B-88B(1 991); Casscells,W.,Circulation86:723-729,(1993))、本試験の結果は、 この重要な臨床現象に対する強力な抗−血小板および抗−血栓措置は特別に効果 のある可能性を示唆している。本試験は、冠動脈介入措置中において唯一の抗− 血小板剤としてアスピリンを使用するという最近のアプローチ(Schwartz,L.et al .,N .Eng.J.Med.318: 1714-1719(1988))は、血管損傷に対する血小板の 応答に拮抗するには不十分であるという意見を支持している。 実施例8 無作為、二重盲検、プラセボ対照試験のその他の知見 シースサイズと出血の合併症 PTCA/DCA中のシース(sheath)サイズが出血の合併と関連するかどう かを知るために出血の合併をEPIC試験(実施例6および7参照)において評 価した。シースとガイディングカテーテル(guiding catheter)のサイズを、試 験実施者により臨床的に測定した。大出血、鼠径部出血、輸血、血管修復、最低 Hct を前向きに評価した。 カテーテル挿入中の治療の割当およびヘパリン使用など既知の出血予測因子を 調整した後も、シースサイズは鼠径部出血の予測因子であった(p=0.0004)。シー スサイズが大きいほど血管修復の頻度が高くなる傾向は有意ではなかった(p=0.0 004)。大出血(10.5%)、輸血(11.8%)、および最低Hct(34)はシースサイズによっ て変化しなかった。c7E3Fabの患者は、非-7E3患者よりも鼠径部出血が多 かった(55% vs.30%、p<0.0001)。 これらの結果は、大きなシースサイズは鼠径部出血が多いことに関連している が、PTCA/DCAの大出血の合併症には寄与していないことを示している。 c7E3 Fabは、鼠径部出血の増加に関連しているが、これは小さなシース とガイディングカテーテルを使用することにより最小限にすることができると考 えられる。血小板GPIIb/IIIa受容体抑制による冠動脈介入後の虚血と出血事象の合併 EPIC〔虚血性合併症の予防におけるc7E3の評価(Evaluation of c7E3 in the Prevention of Ischemic Complications)〕試験(実施例6および7)は 、強力な血小板受容体GPIIb/IIIaアンタゴニスト、c7E3 Fabによ る治療は、ハイリスク冠動脈血管形成(PTCA)という状況において虚血性合 併症を予防するが、輸血を必要とする出血はプラセボ群の7%からc7E3 F ab群の14%に増加することを示した。このことを更に検討するために、出血 指標(最低ヘマトクリット、出血指数、ヘマトクリット値の変化、輸血した包装 赤血球の単位)と試験の主要終了点(死亡、心筋梗塞、冠動脈パイパス移植術(C ABG)または急性虚血のためのPTCA、操作失敗のための冠動脈ステントの挿入 )の関係を検討した。出血と主要終了点の強い関連性が認められた(全ての出血 指標についてp=0.0001)。この関連は、プラセボ、ボーラスc7E3 Fab、 およびボーラス+点滴c7E3 Fabの各治療についてもみられた。このよう に、顕著な出血を示す患者はより虚血性合併症を起こしやすかった。この強い関 連性は、おそらく主要終了点と関連した出血の増加による可能性がある(例えば CABG)。また、出血はそれに伴う低血圧とともに、おそらく措置後の虚血性合併 症の主要な要因となっていると考えられる。このことは、PTCAの成功後に低 血圧(主要な最終事象(primary outcome event)発症後の低血圧は除く)を示し た患者では主要な最終事象の発現が有意に多く、また大出血および主要な最終事 象をより経験していたことにより支持されている。 結論として、出血はある患者において虚血性合併症を誘発しており、出血を減ら す措置(例えば、ヘパリンの投与量の調節)をとることによって、GPIIb/II Ia抑制による冠動脈介入措置の抗虚血効果がさらに増強すると考えられる。ハイリスク血管形成術における攻撃的血小板抑制の経済的な利点と欠点 EPIC無作為試験(実施例6および7参照)の2,100名の患者において 、高用量のc7E3 Fabによる攻撃的血小板抑制により、その後の死亡、再 梗塞、ハイリスク冠動脈血管形成術(PTCA)中の虚血再発が35% 低下したが 、PTCA後の大出血の頻度が2倍になった。これらの臨床効果を合わせて考え た場合の経済性を評価するために、前向きな経済サブスタディが実施された。病 院のコスト(料金(charge)ではない)と資源使用のデータを、各参加者につい て登録後の6カ月間集めた。特に合併症なしで経過した患者の平均的な病院の基 準コストは$9300であった。主要な合併症が病院の基準コストに与える影響を、 多変数直線回帰モデル(multivariable linear regression model)で検討した: 平均病院コスト=$9065+$5923 ★ 緊急PTCA+$28,21 9★緊急CABG+$3645★(再)梗塞+$3462★大出血 このモデルは、緊急PTCAを4.5%から0.8%に、緊急CABGを3.6 %から2.4%、および(再)梗塞を8.6%から5.2%に減らすことによっ て、プラセボ療法に比較してキメラ7E3断片の療法は患者当たり平均$682 の経費を節約することを示している。しかし、この治療法では大出血を7%から 14%と2倍にすることによって、予測される経費の節約分から$242が減る ことになり、その結果、予測される一人当たりの純経費節減額は$440となる 。本試験で認められた高用量のc7E3 Fab(X=$10,970±7,2 84)とプラセボ(X=$11,376±12,555)との間の平均コスト差 は$406であり、モデルからの予測値とよく一致している。 このように、ハイリスクPTCAの虚血性合併症を有意に減少させることによ り、キメラ抗−GPIIb/IIIa断片による攻撃的血小板抑制は、良好な臨床結 果と純経費節約の両方をもたらす。治療効果を維持しつつc7E3投与による大 出血を減らすための対策をとることにより、患者あたり$700までの純経費節 約額を予測することができる。活性化凝固時間は血小板GPIIb/IIIa競合による冠動脈介入中に増加する 活性化凝固時間(ACT)は、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)においてト ロンビン抑制と抗凝血の程度をモニターして望ましくない血栓事象を最小限にす るために使用されている。キメラモノクローナル抗体c7E3 Fabなどの強 力な血小板抑制剤が導入されたために、PTCA中のACT測定と調節の有用性 は検討されていない。今のところ、c7E3のACTに対する作用は不明または 疑われていない。血小板GPIIb/IIIaアンタゴニズム措置中のACTに対す る影響を検討した。この試験では、PTCAを経験した2099人の患者を無作 為にプラセボ(n=696)とGPIIb/IIIaアンタゴニストであるc7E3 Fab(n=1403)に割り当てた。同様の量のヘパリンを受け、非常に高 用量(>14,000単位)のヘパリンを投与されている患者はプラセボ群と比 較して少ないにもかかわらず、c7E3 Fabの投与を受けている患者におい て、体重で補正したACTの値は有意に高かった(p<0.001)。 結論として、血小板GPIIb/IIIaアンタゴニストであるc7E3 Fabに より活性化凝固時間は35〜40秒延長する。このことは、併用するヘパリン療法の 用量を決めるため、及びGPIIb/IIIaを指向した冠動脈介入を行う上で重要 な意義を持っている。血小板GPIIb/IIIa受容体に対するモノクローナル抗体による血管形成術の 虚血性合併症予防を評価する試験における性差 血小板GPIIb/IIIa受容体に対するモノクローナル抗体であるc7E3 Fabの使用による血管形成術の虚血性合併症予防を評価する試験において性差 を調査した(実施例6および7を参照)。患者は、介入の少し前に次の3つの治 療の内から1つの治療を盲検的に受け、経皮的な介入(PTCA)を受けた: c 7E3のボーラス投与後に12時間のc7E3の点滴; c7E3のボーラス投与の み、あるいはプラセボ。 女性の方が男性に比べて年齢が高く、体重が軽く、より多くの心血管系リスク ファクファーを有している傾向があるにもかかわらず、死亡(2.2%対1.3 %)、 MI(7.5 %対6.3 %)、緊急的PTCA(2.6%対3.1 %)緊急的バイパス術(1. 7%対3.2 %)、ステント設置、大動脈内バルーンポンプ設置または30日までにと られたこれらの有害な虚血事象に対する複合的な措置(10.5 %対11.0%、p =0. 74)などの頻度に男女差は無かった。これらの複合措置を予測する既知の因子( 治療の割当、体重、高血圧、末梢血管疾患)および性差に統計学的な影響を与え 得る因子を調整しても、これらの結果は変化しなかった。c7E3 Fabのボ ーラスと点滴は、虚血事象の頻度を男女共、同様に低下させた。 女性は男性に比べて、より重篤な出血を示し(12.6 %対9.8 %)、より頻回に 輸血(PRBC)を必要とし(19.5 %対9.0 %)、より高い出血指数を示した(△ ヘマトクリット/3+ユニットPRBC、2.4 対1.9)。出血指数を予測するため の回帰モデルにおいて、既知の出血予測因子(治療の割当、年齢、体重、基礎 ヘマトクリット値、高血圧)を調整しても、性差は統計学的に独立した出血の予 測因子であった(p=.0041)。 結論として、女性は男性よりも出血の頻度は高かったが、ハイリスク血管形成 およびc7E3 Fabによる治療後のその他の有害事象については女性が多い ということはなかった。 実施例9 ヒト血小板上のGPIIb/IIaに対するキメラ7E3 Fabの親和性 3名の正常ヒトドナー由来の血小板へのキメラ7E3 Fabおよびネズミ7 E3 IgGの結合を37℃で調べ、これらのものを直接結合等温線プロットお よび質量作用則(mass action law )の線型表示の両方によって解析した。標識抗体 ヨードゲン標識により125Iネズミ7E3 IgG(m7E3 IgG)を調 製した。比活性および蛋白質濃度はそれぞれ4.1μCi/μgおよび45μg /mlであると決定された。HSA−食塩水希釈液(0.9%NaCl溶液中0 .1%ヒト血清アルブミン)を用いて1:20希釈物を調製し、100,000 cpm/10μlとした。ヨードゲン標識により125Iキメラ7E3 Fab( c7E3 Fab)も調製した。比活性および蛋白質濃度はそれぞれ0.995 μCi/μgおよび0.29mg/mlであった。HSA−食塩水希釈液を用い て1:62.5希釈物を調製し、100,000cpm/10μlとした。抗体 ネズミ7E3(m7E3)IgGおよびc7E3 Fabのために、250μ g/mlの濃度のストック溶液を調製した。目的濃度になるまでHSA−食塩水 希釈液を用いて数種類の希釈物を調製した。対応する標識抗体の一定量すなわち 10μlを40μlの非放射性抗体調製物に添加し、この混合物を抗体結合測定 に使用した。血小板 血小板含有量の多い血漿(PRP)を常法に従い調製した。血液をクエン酸ナ トリウム抗凝固剤中に採取し、PRPを血小板200〜300,000個/μl に調整し、1時間以内に使用した。抗体結合測定 抗体結合は、コラー[コラー(Coller,B.S.)、J.Clin.Invest.76:101-108( 1985)]が記載している方法の変法によって実施した。両方ともにあらかじめ3 7℃に加温しておいた50μlの抗体溶液の等分を450μlのPRPと混合し 、混合物を37℃で30分間インキュベートした。反応混合物から取った100 マイクロリットル等分をただちに200μlの30%シュークロース上に3連で 重層し、10,000xgで5分間遠心分離した。結合抗体を伴う沈殿血小板を 含むペレット(遠心管の先端)および未結合抗体を含む上清をマイクロ遠心管の 切断によって分離し、各区画分中の相対放射活性を測定し、記録した。3名の異 なるドナー由来の血小板を用いて3つの独立した実験を実施した。データ解析 各抗体濃度につき、ペレットおよび上清中で測定された放射活性計数値を用い て、結合抗体の割合を計算した。放射標識抗体の結合は非放射性抗体のそれと同 一であって、標識抗体から計算した結合抗体割合の値は抗体分子の集団全体を代 表しているものと仮定された。この結合抗体(Ab)割合と抗体の合計濃度([ Ab])の値を合わせて用いて、各データポイントにおける結合抗体および遊離 抗体のモル濃度を計算した。まず、[結合Ab]対[遊離Ab]の関係をプロッ トすることによって結合等温線プロットを作成した。マッキントッシュコンピュ ーターに組み込んだカレイダグラフ(KaleidaGraph)ソフトウエア(Synergy So ftware,Reading,PA )により、4パラメーター曲線を適合化させた。曲線適合 の式および4つのパラメーターは次のとおりであった: y=m1+((m2−m1)/(1+(x/m3)^m4) 上記式中、y=[結合Ab]、x=[遊離Ab]で、4つのパラメーターは次の とおりであった。 m1=上のプラトーの値(合計抗原/エピトープ濃度、[合計Ag]、飽和結合 時); m2=下のプラトーの値(非常に低い添加Ab濃度においてゼロに近似する[結 合Ab]の値); m3=yの中央値におけるxの値(抗原性エピトープの50%結合時の[遊離A b]の値);および m4=曲線の直線部分の勾配に関連する指数。 50%の結合における[遊離Ab]の値(プログラムによって計算した第3パ ラメーター)は、独立した非相互作用部位を仮定した場合に質量作用則に従うA bと抗原の反応のKdである。また、抗原部位の完全飽和に対応する上のプラト ーにおける[結合Ab]の値(第1パラメーター)は、抗原部位の濃度を与える 。後者の値を用いると、血小板1個あたりのGPIIb/IIIa受容体の数を 計算することができる。結合等温線の直接解析以外にも、質量作用則式の直線変 換に従うデータ解析も行なった。6つの直線変換が可能であって、その1つが通 常、スキャッチャードプロット(下記プロットa)と呼ばれるものである[ファ ゼカスデセントグロス(Fazekas de St.Groth,S.)、"The Quality of Antibo dies and Cellular Receptors",In: Immunological Methods,Vol.I,Lefkovi ts,I.and B.Pernis編、Academic Press,Inc.New York,1-42,1979 ]。プロットの式 すべての式は下記質量作用式からの導関数である。 Kd=[Ab]x[Ag]/[Ab:Ag] 上記式中、[Ab]、[Ag]、および[Ab:Ag]は遊離Ab、遊離Ag、 およびAb:Ag複合体の平衡モル濃度である。 結合等温線:[結合Ab]/[合計Ag]=(1/(Kd+[遊離Ab])x [遊離Ab] プロットa:[結合Ab]/[遊離Ab]=([合計Ag]/Kd)−1/Kd x[結合Ab] プロットb:1/[結合Ab]=(−1/Kd)+([合計Ag]/Kd)x1 /[結合Ab] プロットc:1/[結合Ab]=(1/[合計Ag])+(Kd/[合計Ag] )x1/[遊離Ab] プロットd:[遊離Ab]/[結合Ab]=(Kd/[合計Ag])+1[合計 Ag]x[遊離Ab] プロットe:[遊離Ab]=Kd+[合計Ag]x[遊離Ab]/[結合Ab] プロットf:[結合Ab]=[合計Ag]−Kd[結合Ab]/[遊離Ab]標識抗体の結合能 抗体を放射性同位体で標識すると、それらの抗体の一部が活性および標的抗原 に結合する能力を失うことがある。グラフの計算に先立ち、不活性な標識抗体の 割合を実験的に求め、合計抗体濃度から差し引かねばならない(トルッコとペト リス(Trucco,M.and S.de Petris )、"Determination of Equilibrium Bind ing Parameters of Monoclonal Antibodies Specific for Cell Surface antige ns",Immunological Methods ,第II巻中,Lefkovits,I.and B.Pernis 編、Ac ademic Press,N.Y.1-26(1981))。不活性な抗体群の場合、標識による活性の 欠失は完全で、抗体群の残り(すなわち結合可能な抗体)は同じ親和定数を有す るものと仮定された。 0.14〜0.2μg/mlの125I標識7E3 Fabおよび7E3 Ig Gを、約300,000個/μlの血小板とともにインキュベートした。平衡に おける結合Ab割合は、7E3 Fabおよび7E3 IgGについてそれぞれ 89%対78%であると求められた。質量作用式から計算した完全に活性な抗体 の予想される割合は、これらの濃度においては両Abともに93%であった。し たがって、この結果から、放射性標識操作の結果として7E3 Fabの4%お よび7E3 IgGの15%が不活性になったことが示唆された。結果 上記のようにして実験データをプロットした(図示せず)。結合等温線および 各実験の適合化曲線の等式による直線プロットを作成した。適合化曲線の等式を 用いて各プロットから求めたKa値およびエピトープ密度(血小板1個あたりの GPIIb/IIIa分子の数)を表20に示した。 ヒト血小板へのc7E3 Fabの結合は従来の結合パターンに従う。結合等 温線から、均一細胞表面抗原への均一モノクローナルAb Fab断片の結合か ら予想されるスムーズな予測曲線が得られた。反応の解離および会合定数はそれ ぞれ5.15nMおよび1.94E08M-1と計算された。血小板表面上に存在 するGPIIb/IIIa抗原の数は69590個(約70,000個)と求め られた。一方、m7E3 IgGはそれぞれ3.56nMおよび2.81E08 M-1の解離および会合定数で血小板に結合する。7E3 IgGについて計算し たGPIIb/IIIa密度は73,355エピトープ数/血小板であることが 判明した。これらの数字は、7E3 Fabと7E3 IgGの抗原結合部位の 本質的な反応定数が同様であることを示している。このデータの解析およびオフ レート(off rate)定数の検討に基づき、m7E3 IgGは両方のアームで血 小板に結合するものと結論付けられた。 実施例10 内皮細胞上のビトロネクチン受容体へのキメラ7E3 Fabの結合 血小板糖蛋白質GPIIb/IIIaは、構造上および免疫学的諸性質が共有 するインテグリン受容体のファミリーに属する。GPIIb/IIIaに近縁の インテグリンは、GPIIb/IIIaと同じβサブユニットを利用するが異な るαサブユニットを有するビトロネクチン受容体(αvβ3)である。該ビトロネ クチン受容体は内皮細胞上で発現し、様々な細胞外マトリックス蛋白質(例えば ビトロネクチン、フィブロネクチン、フォンウィルブラント因子、フィブリノー ゲン、オステオポンチン;トロンボスポンジン、コラーゲン、ペルレカン)への 接着に関与する。GPIIb/IIIaおよびビトロネクチン受容体間の相同性 は、GPIIb/IIIaに対する抗体である7E3も内皮細胞上で発現したビ トロネクチン受容体に結合するのに十分な程度のものである。したがって、キメ ラ7E3 Fab(c7E3 Fab)と内皮細胞の相互作用を特徴付け、その 相互作用が示す可能性のある機能的な重要性を測定するために本研究に着手した 。抗体 これらの研究で使用した抗体としては、下記のものなどが挙げられる:抗GP IIb/IIIaキメラ7E3 Fab(c−116E;パパイン消化によって 産生したIgG1 Fab);イソタイプ適合したキメラFab断片対照として 使用した抗CD4キメラMT412 Fab(細胞系C128Aによって産生さ れたもの;国際公開第91/10722号パンフレット);抗E−セレクチンH 18/7F(ab’)2(M.Bevilaquaから贈与されたもの);抗ICAM−1 #19(G.Riethmullerから贈与されたもの);ビトロネクチン受容体のα鎖を 認識するモノクローナル抗体である抗CD51(AMAC社);GPIIIaと反応 するモノクローナル抗体である抗IIIa(AMAC社);ネズミ7E3 IgG; 抗7E3はウサギの、可変領域特異的抗7E3ポリクローナル抗体調製物である ;複合体化αvβ3(ビトロネクチン受容体)に結合するがGPIIb/IIIa には結合しないモノクローナル抗体LM609(Scripps Research Institute社 ,La Jolla,カリフォルニア州のD.A.Chereshから贈与されたもの);GPII b/IIIaと反応するが内皮細胞αvβ3は認識しないモノクローナル抗体10 E5(Centocor社)である。抗体のヨード化 キメラ7E3 Fabおよびキメラ抗CD4 MT412 Fab(cMT4 12 Fab)を放射標識する前に、0.22ミクロン、13mmフィルター装 置(Millipore 社、Millex-GV #SLGV01305)で濾過した。抗体は、ヨードビーズ (Iodobeads )(Pierce Chemicals社、Rockford,IL)を用いてNa125I(Ame rsham社)で放射標識し、セファデックスG25カラム(Pharmacia PD-10 Sepha dex G-25M)に通して、未反応125Iヨウ化物を除去した。カラムはあらかじめ0 .1%ヒト血清アルブミンのリン酸塩緩衝食塩水(Albuminar-25,Armour Pharm aceutical Co.社、Kankakee,IL)でブロックし、0.01%Tween 80−PB SS溶出緩衝液で平衡化させておいた。ヨード化後、抗体を0.22ミクロンの フィルターで濾過し、280nmにおける吸光度を測定し、吸光係数として1. 50D/mg mL-1を用いることによって、抗体濃度を求めた。HUVECの培養 初代HUVECをCell Systems社(Kirkland,WA)から購入し、4代目の時点 で細胞5x106個/mlで凍結させるまで、2%ゼラチン被覆組織培養フラス コ中で血清含有培地(HUVEC培地、Cell Systems社)で培養した。HUVE C結合および活性化実験のために、細胞を溶解し、2%ゼラチン被覆96穴組織 培養プレート中に細胞約1x104個/ウェルで直接播種し、コンフルエンスに 達するまで3〜5日間培養した時点で測定した。HUVECの拡散および接着を 調べる実験のために、細胞をゼラチン被覆T−150組織培養フラスコ中で融解 し、約85%コンフルエンスに達するまで培養した。次いで、細胞をトリプシン 処理し、以下に説明するようにして被覆マトリックス上に播種した。 125 I−c7E3結合 HUVECを96穴リムーバセル(removacell)組織培養プレート(Dynatech 社)中に播種し、コンフルエンスに達するまで培養した。飽和結合のために、12 5 I−c7E3 Fabを、10%FCS含有HUVEC培地(または指定ある 場合は無血清培地)で希釈した。トレーサー抗体のキャッピングとインターナリ ゼーションを防止するために0.02%アジ化(axide )ナトリウムの存在下、 1セットの細胞をトレーサーとともにインキュベートした。非特異的結合を決定 するため、100倍過剰量の非放射性c7E3 Fabを用いた。細胞を37℃ で4時間トレーサーとともにインキュベートし、200μlの培地で2回洗い、 ウェルをはずし、ガンマカウンターを用いて結合した放射活性を定量した。ウェ ル1個あたりの細胞の数はサンプルウェルのトリプシン処理およびヘマサイトメ ーターを用いた細胞計数によって求めた。測定は3連で行なった。スキャッチャ ードデータ解析のために、結合125I−c7E3を横軸上にプロットし、結合量 を遊離抗体の濃度で割った値を縦軸上にプロットした。曲線全体の直線回帰で、 Ka値として定義される(−)の勾配が得られた。X軸切片をBmaxすなわち最大 抗体結合量として定義した。下記式を用いて、Bmax値を細胞1個あたり部位数 に変換した: 結合分子数/細胞数=Bmax(fmol単位)x(モル/1015fmol)x( アボガドロ数/モル)/細胞数/ウェル数 競合結合の場合は、スキャッチャード解析と同じ方法を用いたが、未標識競合体 の濃度を上昇させつつ1μg/mlの125I−c7E3 Fab濃度を用いた。 測定は10%FCS含有HUVEC完全培地中で行なった。HUVEC活性化の測定 A.E−セレクチンおよびICAM−1の発現 HUVECを96穴ポップアウトウェル組織培養プレート中に播種し、コンフ ルエンスに達するまで培養した。細胞を、所定濃度の抗体を含む100μlのH UVEC完全培地中で4または24時間のいずれかで処理した。50ユニット/ mlのTNFα(Genzyme 社)を陽性対照として用い、E−セレクチンおよびI CAM−1の発現を増大させた。インキュベーション後、培地を除去し、1μg /mlの125I抗E−セレクチン抗体(4時間刺激した細胞の場合)または1μ g/mlの125I抗ICAM−1抗体(24時間刺激した細胞の場合)を含む5 0μlのHUVEC完全培地と交換した。細胞を37℃で1時間インキュベート し、200μlの培地で2回洗い、ウェルをはずし、結合放射活性をガンマカウ ンターで定量した。B.HUVECへのPMN接着 HUVECを96穴ポップアウト組織培養プレート中に播種し、コンフルエン スに達するまで培養した。細胞を、所定濃度の抗体を含む100μlのHUVE C完全培地中で4または24時間で処理した。50ユニット/mlのTNFα( Genzyme 社)を陽性対照として用い、E−セレクチンおよびICAM−1の発現 および多形核白血球(PMN)の接着性を増大させた。PMNは、モノポリーリ ゾルビング培地(Monopoly Resolving Medium )(Flow Labs 社)を用いてヘパ リン処理ヒト血液から単離した。PMNを5mlのRPMIに再懸濁し、室温で 15分間にわたり100μlの111インジウム(Amersham社)で111インジウム標 識した。細胞を50mlのRPMIで2回洗い、10%FCS含有RPMIに4 x106個/mlまで再懸濁した。培地をHUVEC単層から除去し、100μ lのPMNを各ウェルに添加し、37℃で30分間インキュベートした。未結合 PMNを200μlの培地で2回洗浄することによって除去した。結合PMNは 、ガンマカウンターでウェルの計数を行なうことによって定量した。実験は3連 測定で行なった。C.被覆表面へのHUVECの拡散および接着 HUVECを2%ゼラチン被覆T−150フラスコ中に播種し、約85%コン フルエンスに達した時点で使用した。細胞を短時間トリプシン処理し、洗浄し、 細胞3x105個/mlでHUVEC完全培地に再懸濁した。細胞を10μg/ mlのc7E3 FabまたはcMT412 Fabのいずれかで処理し、ただ ちにガラス製8−チャンバースライド(NUNC #177402)またはペルマノックス( Permanox)プラスチック製8−チャンバースライド(NUNC #177445)または48 穴組織培養プラスチックプレート(Corning 社)のいずれかの中に300μl/ ウェルで播種し、37℃のCO2加湿培養器に入れた。各タイプの表面をあらか じめ室温で4時間、それぞれPBSで希釈した20μg/mlのフィブロネクチ ン(Sigma F2006 )、40μg/mlのフィブリノーゲン(Sigma F4883 )、ま たは20μg/mlのビトロネクチン(Sigma V8379 )で被覆しておいた。被覆 後、ウェルを短時間PBSで2回すすいだ。播種6および24時間後に、逆位相 差顕微鏡に取付けたカメラを用いて、細胞の写真を撮影した。 結果 ヒト内皮細胞へのc7E3 Fabの結合 親和性および細胞1個あたりの抗体結合数 125I−c7E3 Fabを用いた飽和結合データ(図16および17A〜1 7E)のスキャッチャード解析で、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対す る125I−c7E3の親和性は約Ka=1X108-1であることが判明した(表 21)。親和性は、細胞を内皮細胞上のE−セレクチンやICAM−1などの炎 症関与蛋白質をアップレギュレーションする処理であるTNFα刺激した後でも 変化しなかった。無血清培地を用いて、またはキャッピングおよびインターナリ ゼーションを防止するためにアジ化(axide )ナトリウム(0.02%)の存在 下で測定を実施した場合も、親和性は変化しなかった(表21)。 HUVECは、100倍過剰(escess)量の非放射性c7E3 Fabの存在下 または非存在下で濃度の125I標識c7E3 Fabの濃度を増加させながらイ ンキュベートし、非特異的結合を判定した。データは、前記のようにしてスキャ ッチャード解析を用いて解析した。 スキャッチャード解析は、内皮細胞1個あたり約650,000個の125I−c 7E3 Fab分子が結合することも示した。この数字はTNFαによる細胞の 刺激後、または無血清培地もしくはアジ化ナトリウムの存在下でも変化しなかっ た。125I−c7E3 Fabが内皮細胞上のαvβ3に結合する場合、その時αv β3複合体を認識する抗体であるLM609を用いた飽和結合解析で見られる細 胞あたりの部位数は同じになるはずである。スキャッチャード解析で、細胞あた り300,000個のLM609抗体が結合することが示された(図18)。内皮細胞への125I−c7E3結合の特異性 他の抗GPIIb/IIIa、抗αvβ3、またはその他の抗体が125I−c7 E3 Fabの結合を阻害しうるかどうかを決定するために競合結合実験を行な った(図19)。複合体化αvβ3(ビトロネクチン受容体)に結合するがGPI Ib/IIIaには結合しない抗体であるLM609は、約0.03μg/ mlのIC50を伴って125I−c7E3 Fab結合に対し効果的に競合した。 ネズミIgG型の7E3およびキメラFab型の7E3はそれぞれ約0.2およ び1.0μg/mlのIC50値を伴って125I−c7E3 Fab結合に対し競 合した。ウサギの可変領域特異的抗7E3抗体も、約1.0μg/mlのIC50 値を伴って125I−c7E3 Fab結合をブロックした。イソタイプをマッチ させた対照Fab断片MT412(抗CD4)は、125I−c7E3 Fab結 合に対して競合しなかった。GPIIb/IIIaと反応するが内皮細胞「GP IIb/IIIa」を認識しない10E5抗体も競合しなかった。抗αv抗体(A MAC社から購入したクローンAMF7)および抗IIIa抗体(AMAC社から購入 したクローンSZ.21)およびビトロネクチン蛋白質は125I−c7E3 F ab結合に対して競合しなかった。HUVEC活性化に及ぼすキメラ7E3 Fabの影響 内皮細胞を、E−セレクチンやICAM−1などの接着蛋白質を発現するため にLPS、IL−1、およびTNFαによって活性化させることができる。これ らの接着蛋白質は内皮への白血球の接着を仲介し、炎症部位へのそれらのトラン スミグレーション(transmigration)を可能にする。イン ビトロでは、活性化 剤への4時間の曝露は、E−セレクチンの至適発現の刺激が与えられ、24時間 のインキュベーションは、ICAM−1発現に至適である。HUVECをc7E 3 Fabとともに4または24時間インキュベーションすることは、125I抗 体結合によって測定したE−セレクチンまたはICAM−1発現のいずれも変化 させなかった(図20A〜20B)。HUVECのキメラ7E3 Fab処理( 0.01、0.1、1.0、10、または100μg/ml)または対照Fab 処理(1.0、10、または100μg/mlのキメラMT412 Fab)処 理は、PMNに対するHUVECの接着性を有意には増大させなかった(図21 A−21B;」100μg/mlを示す)。顕微鏡的には、100μg/mlま でのc7E3 Fabで4または24時間処理した細胞は、単層洗浄の前後のい ずれにおいても、未処理細胞と外観上全く違いがなかった。基質被覆表面へのHUVECの拡散および接着に及ぼすc7E3 Fabの影響 HUVECを(1)培地単独で処理し、ビトロネクチン被覆ガラスもしくはプ ラスチック上に播種、または(2)キメラ7E3 Fab(10μg/ml)で 処理し、(a)ビトロネクチン被覆ガラスもしくはプラスチック、(b)フィブ リノーゲン被覆ガラスまたはプラスチック、または(c)フィブロネクチン被覆 ガラスまたはプラスチック上に播種した。具体的には、HUVECをトリプシン 処理し、時間=0の時点において10μg/mlのc7E3 Fabで処理した 。ただちに細胞をチャンバースライドまたは48穴組織培養プレート上に播種し 、37℃でインキュベートした。播種6時間後に、逆位相差顕微鏡を用いて位相 差顕微鏡写真を撮影した。 フィブリノーゲンまたはフィブロネクチン被覆プラスチック上に播種した未処 理細胞は、ビトロネクチン被覆プラスチック上で培養した未処理細胞と類似して 見えた。キメラMT412処理細胞は未処理細胞と同様に見えた。未処理および cMT412 Fab処理細胞と比較すると、c7E3 Fabの添加は、6時 間後のフィブロネクチン、ビトロネクチン、またはフィブリノーゲン被覆ペルマ ノックスプラスチック、ガラス、または組織培養プラスチックへのHUVECの 接着および拡散に影響を及ぼさなかった。細胞播種24時間後にも影響は見られ なかった。 キメラ7E3 Fabは、キメラ7E3 Fabの血小板上GPIIb/II Iaに対する親和性に匹敵する親和性でヒト内皮細胞に結合した(Ka=1.9 4x108-1)。c7E3の親和性は、アジ化物の存在下で変化せず、この抗 体のインターナリゼーションが起きなかったことを示した。親和性は無血清培地 中でも同じであり、ウシ胎児血清中の蛋白質は内皮細胞へのc7E3 Fabの 結合を変化させないことを示唆した。約650,000個のc7E3 Fab分 子が各内皮細胞に結合し、80〜100,000個のc7E3 Fab分子が各 血小板に結合する。ある内皮細胞の表面積が、500μm2であって、血小板の それが22μm2であると仮定すると、c7E3 Fab結合部位の密度は血小 板の場合は、約4500個/μm2、内皮細胞の場合は、1000個/μm2にな る。したがって、内皮細胞上には多くの7E3結合部位が存在すると思われるも のの、部位の密度は、血小板のそれの4分の1未満である。 競合結合実験は、ビトロネクチン受容体特異的抗体LM609が内皮細胞への c7E3 Fab結合を完全に阻害したので、c7E3 Fabがビトロネクチ ン受容体を介して内皮細胞に特異的に結合したことが示唆された。ビトロネクチ ン受容体特異的抗体との飽和結合によって測定した内皮細胞上のビトロネクチン 受容体の数は約300,000個であった。これはc7E3 Fabが結合する 部位の数の半分であった。この不一致は、比較的小型のc7E3 FabがLM 609 IgGに利用され得ない受容体部位に到達する能力が高いこと、または LM609 IgG抗体の二価結合によるものと考えられた。 E−セレクチンまたはICAM−1接着蛋白質のアップレギュレーションまた は内皮細胞のPMN結合能力によって測定したところ、c7E3 Fabの結合 は、内皮細胞を活性化することを明白にしなかった。ビトロネクチン、フィブロ ネクチン、またはフィブリノーゲン被覆ガラスまたはプラスチック上に播種する 直前の内皮細胞へのc7E3 Fabの結合は、該細胞の表面に拡散および接着 する能力を変化させなかった。 この知見は、m7E3 IgG(20μg/ml)によるフィブリノーゲンお よびビトロネクチン被覆ガラス上のHUVEC接着および拡散の阻害に関する既 報とは異なっている(チャロら(Charo et al.)、J.Biol.Chem.262,9935-9 938(1987))。これらの違いの可能な説明としては次のようなものがあげられる :(1)本明細書中で述べた測定は、血清(10%FCS)含有培地中で行なわ れたものであるのに対し、既報の測定は無血清培地中で行なわれたものである; (2)これらの測定ではc7E3 Fabを使用したのに対し、他の測定ではm 7E3 IgGが使用されている;(3)本明細書で10μg/mlのc7E3 Fabを使用したのに対し、既報では20μg/mlのm7E3 IgGが使 用されている。しかしながら、本明細書で説明するHUVEC活性化実験では、 100μg/mlまでのc7E3 Fabは、ゼラチン被覆組織培養プラスチッ ク上に播種されたすでに確立されたHUVEC単層を破壊しなかった。 要約すると、キメラ7E3 Fabはイン ビトロでビトロネクチン受容体に 結合する。キメラ7E3 Fabは、約Ka=1X108-1の親和性で内皮細胞 1個あたり約650,000個の部位に結合する。αVβ3特異的抗体LM609 が、c7E3 Fab結合を完全に阻害したので、該抗体はビトロネクチン受容 体(αVβ3)を介して内皮細胞に特異的に結合することが明らかである。 活性化特異的マーカーの発現によって評価したところ、内皮細胞へのc7E3 Fabの結合は、該細胞を活性化することを明らかにしなかった。具体的には 、E−セレクチンおよび細胞間接着分子1(ICAM−1)の発現はc7E3F abによる処理では増大しなかった。 該抗体の結合は、内皮細胞単層を破壊したり、マトリックス蛋白質被覆表面上 におけるそれらの定着を防止しないものと思われる。HUVECのc7E3 F abへの曝露は、HUVECのビトロネクチン、フィブロネクチン、またはフィ ブリノーゲン被覆表面に拡散および接着する能力を変化させなかった。また、ヒ ト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の多形核白血球(PMN)への接着能は、抗 体処理によっては増強されなかった。要約すると、c7E3は、イン ビトロで 内皮細胞上のビトロネクチン受容体に結合し、この結合は、該細胞を活性化させ たり、それらの細胞がマトリックス蛋白質上に接着および拡散する能力に影響を 及ぼしたりしないことを明らかにする。均等物 当業者であれば、単に常識的実験手法を用いて、ここに述べた発明の具体的態 様に対する多くの均等物を認識し、また確認し得るであろう。これらの均等物は 下記のクレームの範疇に含まれるものである。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】1997年7月3日 【補正内容】 血小板凝集を阻害しそしてヒト血栓症の治療に有用にみえる、7E3と命名され たネズミ・モノクローナル抗体が公開された欧州特許出願第205,207号及 び第206,532号に開示されている。ネズミ抗体がヒト治療にそれを使用す る際厳しく制限されるという特徴を有することは当該分野で公知である。外来タ ンパク質として、ネズミ抗体はその治療効果を減少させ又は破壊する及び/又は アレルギー反応又は感作性過剰反応を患者に引き起こす免疫反応を惹起する。血 栓塞栓症におけるこのような治療のやり方で再投与する必要が生ずると、この種 の免疫反応の起こる蓋然性が増加する。 ヒト定常領域に結合した非ヒト結合領域からなるキメラ抗体は、ネズミ抗体の 免疫反応問題を克服する1手段として示唆されてきた。Proc .Natl.Acad.Sci. USA81:6851(1984)及びPCT国際公開第86/01533号パンフレットを 参照。定常領域は主として抗体分子の免疫反応性に責任があるから、ヒト起源の 定常領域を持つキメラ抗体はヒトにおいて抗ネズミ応答を惹起し難いと推測され る。しかしながら、ヒト定常領域を所望の特異性のネズミ結合領域への連結が免 疫反応性を低減するかどうか(免疫原性の程度及び/又は発生率等)及び/又は その結果生ずるキメラ抗体の結合能を変えるかどうかは予測できるものではない 。本発明の概要 本発明は、非ヒト起源の可変領域すなわち抗原結合領域及びヒト起源の定常領 域を含む血小板特異的なキメラ免疫グロブリンに関する。キメラ免疫グロブリン は、GPIIb/IIIa受容体又は他の血小板成分に特異的であってもよい。 これらの抗体は血小板に結合しそして血小板凝集をブロックすることができる、 従って様々な臨床状態(例えば、血管形成術と同時に行われた血栓崩壊療法の後 の状態)で生ずる閉塞又は再閉塞の防止又は低減、及び狭窄及び/又は再狭窄の 防止における抗血栓症剤として有用である。 41.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異 性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片の有効量をヒトに投与するこ とを含む、該ヒトにおいて血管形成術及び/又はステントの設置による虚血性合 併症を低減又は予防する方法。 46.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異 性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E 3又はその一部である請求項41記載の方法。 47.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及 び少なくともヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グ ロブリン断片である請求項41記載の方法。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 45/00 A61K 45/00 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK ,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK, MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR ,TT,UA,UG,UZ,VN (72)発明者 コラー,バリー エス. アメリカ合衆国 ニューヨーク 10128 ニューヨーク,パーク アベニュー 1160,アパートメント 6エー (72)発明者 ナイト,デイビッド エム. アメリカ合衆国 ペンシルベニア 19312 ベリン,ホワイトホース ロード 2430

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に選択的に結合 する化合物の有効量を患者に投与することを含む、狭窄及び/又は再狭窄を阻害 する方法。 2.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対 して特異性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片である請求項1記載 の方法。 3.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異性 を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E3 又はその一部である請求項2記載の方法。 4.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及び 少なくともヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グロ ブリン断片である請求項2記載の方法。 5.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容 体に対して特異性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体7E3)に由来す るものである請求項4記載の方法。 6.免疫グロブリン断片が、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片である請 求項4記載の方法。 7.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に選択的に結 合する化合物の有効量を冠動脈疾患患者に投与することを含む、狭窄及び/又は 再狭窄を阻害する方法。 8.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対 して特異性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片である請求項7記載 の方法。 9.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異性 を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E3 又はその一部である請求項8記載の方法。 10.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及 び少なくともヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グ ロブリン断片である請求項8記載の方法。 11.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受 容体に対して特異性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体7E3)に由来 するものである請求項10記載の方法。 12.非ヒト起源の血小板特異的な抗原結合領域及びヒト定常領域を含むキメラ 免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片の有効量をヒトに投与することを含む、 該ヒトにおいて冠動脈介入術を行った後の狭窄及び/又は再狭窄を阻害する方法 。 13.手術が血管形成術である請求項12記載の方法。 14.手術がステントの設置である請求項12記載の方法。 15.手術において血管形成術及びステントの設置を含む請求項12記載の方法 。 16.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIa受容体に特異的である請求項 13記載の方法。 17.抗原結合領域が、モノクローナル抗体7E3に由来するものである請求項 16記載の方法。 18.免疫グロブリン断片が、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片からな る群より選ばれたものである請求項17記載の方法。 19.糖蛋白質IIb/IIIaに選択的に結合する化合物の有効量をヒトに投 与することを含む、該ヒトにおいて血管介入術を行った後の狭窄及び/又は再狭 窄を阻害する方法。 20.手術がステントの設置である請求項19記載の方法。 21.血管介入術が冠動脈介入術である請求項19記載の方法。 22.手術がステントの設置である請求項21記載の方法。 23.手術が血管形成術である請求項21記載の方法。 24.手術において血管形成術及びステントの設置を含む請求項21記載の方法 。 25.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIaに対して特異性を有する免疫グロブ リン又は免疫グロブリン断片である請求項19記載の方法。 26.糖蛋白質IIb/IIIaに対して特異性を有する免疫グロブリン又は免 疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E3又はその一部である請求項25 記載の方法。 27.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及 び少なくともヒト定常領域の一部を含む、糖蛋白質IIb/IIIaに対して特 異性を有するキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グロブリン断片である、請求 項25記載の方法。 28.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIaに対して特異性を有する抗体 (例えば、モノクローナル抗体7E3)に由来するものである請求項27記載の 方法。 29.免疫グロブリン断片が、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片である 請求項27記載の方法。 30.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に選択的に結 合する化合物の有効量をヒトに投与することを含む、該ヒトにおいて血管介入術 を行った後の狭窄及び/又は再狭窄を阻害する方法。 31.手術がステントの設置である請求項30記載の方法。 32.血管介入術が冠動脈介入術である請求項30記載の方法。 33.手術がステントの設置である請求項32記載の方法。 34.手術が血管形成術である請求項32記載の方法。 35.手術において血管形成術及びステントの設置を含む請求項32記載の方法 。 36.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に 対して特異性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片である請求項30 記載の方法。 37.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異 性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E 3又はその一部である請求項36記載の方法。 38.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及 び少なくともヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グ ロブリン断片である請求項36記載の方法。 39.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受 容体に対して特異性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体7E3)に由来 するものである請求項38記載の方法。 40.免疫グロブリン断片が、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片である 請求項38記載の方法。 41.糖蛋白質IIb/IIIaに選択的に結合する化合物の有効量をヒトに投 与することを含む、該ヒトにおいて血管形成術及び/又はステントの設置による 虚血性合併症を低減又は予防する方法。 42.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIaに対して特異性を有する免疫グロブ リン又は免疫グロブリン断片である請求項41記載の方法。 43.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、糖蛋白質IIb/IIIaに 対して特異性を有する抗体に由来する非ヒト起源の抗原結合領域及び少なくとも ヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グロブリン断片 である請求項42記載の方法。 44.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に 選択的に結合する化合物である請求項41記載の方法。 45.化合物が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に 対して特異性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片である請求項44 記載の方法。 46.糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受容体に対して特異 性を有する免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、モノクローナル抗体7E 3又はその一部である請求項45記載の方法。 47.免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片が、非ヒト起源の抗原結合領域及 び少なくともヒト定常領域の一部を含むキメラ免疫グロブリン又はキメラ免疫グ ロブリン断片である請求項45記載の方法。 48.抗原結合領域が、糖蛋白質IIb/IIIa及びαVβ3ビトロネクチン受 容体に対して特異性を有する抗体(例えば、モノクローナル抗体7E3)に由来 するものである請求項47記載の方法。 49.免疫グロブリン断片が、Fab、Fab’又はF(ab’)2断片である 請求項48記載の方法。
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