JPH11510696A - 物質をスクリーニングする方法におけるまたはそれに関する改良 - Google Patents

物質をスクリーニングする方法におけるまたはそれに関する改良

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JPH11510696A JP9508234A JP50823497A JPH11510696A JP H11510696 A JPH11510696 A JP H11510696A JP 9508234 A JP9508234 A JP 9508234A JP 50823497 A JP50823497 A JP 50823497A JP H11510696 A JPH11510696 A JP H11510696A
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Abstract

(57)【要約】 特定の標的分子への結合能力が減じられた物質をスクリーニングする方法が開示される。この方法は、特定の結合対(sbp)の第1のメンバーをウイルスディスプレイパッケージの表面に提示することと、ウイルスディスプレイパッケージを、受容体分子とsbpの第2のメンバーとを発現する標的細胞に接触させることとを含む。そこにおいて、sbpの第2のメンバーへの結合を阻害するよう変化されたsbpの第1のメンバーを提示するウイルスディスプレイパッケージが、sbpの第2のメンバーに対し変化していない結合アフィニティを有するsbpの第1のメンバーを提示するディスプレイパッケージよりも、標的細胞をうまく感染させる傾向をもたらす。この発明の方法を実行する際に使用するためのキットも開示される。

Description

【発明の詳細な説明】名称:物質をスクリーニングする方法におけるまたはそれに関する改良 発明の分野 この発明は、特定の標的分子に結合する能力が減じられた物質をスクリーニン グする方法に関する。 発明の背景 a) 遺伝子ディスプレイライブラリ選択 既知の結合特性を有するタンパク質をコードする遺伝子の分離は、最近、遺伝 子ディスプレイパッケージを利用した選択技術によって容易になってきた。タン パク質をコードする遺伝子を、コードされるタンパク質がパッケージの外側に提 示されるようにパッケージ化する。そして、(たとえばコードされる抗原を固相 抗体と結合させることなどによって)パッケージをその結合アフィニティによっ て選択し、複製する。遺伝子とコードされるタンパク質との間には緊密なつなが りがあるので、複数回の結合および増幅によってパッケージを選択することが可 能であり、選択係数は100万分の1を超える。複製可能なパッケージは、cD NAライブラリからリンパ球表面マーカーをコードする遺伝子を分離するために 使用される哺乳動物細胞(Strengelinら、1988 EMBO J 7 p1053-1059)および抗 体の断片と他のタンパク質とをコードする遺伝子を分離するために使用される繊 維状バクテリオファージ(McCaffertyら、1990 Nature 348 p552-554 ;Bassら、 1990 Proteins: Struct.Funct.Genet.8 p309-314 ;Marks ら、1991 J.Mol.B iol.222 p581-597 ;HoogenboomおよびWinter、1992 J.Mol.Biol.227 p381-388 )を含む。さらに最近、複製可能なディスプレイパッケージとして組換えレトロ ウイルスが使用され、レトロウイルスディスプレイライブラリの生成のために適 した構造物が開示され、新規な細胞表面受容体を介する哺乳動物細胞へのレトロ ウイルスの侵入を標的化できるリガンドをコードする遺伝子の分離を容易にする べく、レトロウイルスディスプレイライブラリの選択が提案されている(WO9 4/06920、メディカル・リサーチ・カウンシル(Medical Research Counc il))。 レトロウイルスディスプレイとファージディスプレイとの間にはいくつかの重 要な差異が存在する。最も重要な点は、レトロウイルスは哺乳動物細胞に感染で きるのに対しファージはできないということである。加えて、ファージディスプ レイは提示されるポリペプチドリガンドの細菌での発現に依存しており、哺乳動 物細胞起源のポリペプチドリガンドが細菌で発現されるとき、しばしば正しく折 り畳まれなかったりまたは正常に機能しなかったりするので、しばしばこれが問 題となる。このような欠点は主として、間違って折り畳まれた変形物の選別およ び駆逐のための酵素系、ならびにポリペプチドリガンドの折り畳みのための酵素 系(たとえばシャペロニン、ジスルフィドおよびプロリンイソメラーゼ)および ポリペプチドリガンドの翻訳後修飾のための酵素系(たとえばグリコシルトラン スフェラーゼ)を備えた哺乳動物細胞の小胞体と同等な区画が細菌には欠けてい るということから生じる。 かくして、特定の標的抗原または受容体に対して高い結合アフィニティを持つ リガンドを提示するパッケージは、さまざまな遺伝子ディスプレイパッケージの ライブラリから容易に選択される。しかしながら、その逆も真であるとは言えな い。特定の標的に結合する能力が減じられたリガンドを提示するパッケージの選 択のために信頼できる確立された方法はない。 b) 薬剤の発見 細胞は、それらの表面受容体を使用して、それらがじかに接する環境の組成に おける微妙な変化をモニタしそれに応答する。したがって、特定の受容体を遮断 するまたは活性化する薬剤を、医療上の目的で細胞の機能を変更するために使用 することができる。過去20年または30年間にわたっての最も有益な薬剤のい くつかは、リガンドの結合を遮断するまたは細胞表面受容体を直接刺激する化合 物であった。分子生物学は現在、さまざまな生物学的活性を持つ多すぎるほどの 高分子量ポリペプチドリガンド類を発見しており(たとえば、WO94/276 43[Targeted Genetics Corporation]およびその中の参照文献を参照)、ま たヒト・ゲノム・プロジェクトによってさらに多くの発見が約束されている。し たがって、製薬産業にとっての主要な課題は、これらのリガンド類の効果を遮断 するあるいは模倣するまたは受容体のサブタイプに対してより大きな特異性を示 す新薬を発見することである(LuytenおよびLeysen 1993 Trends in Biotechnol ogy 11 p247)。 過去の新薬発見においては、合成類似体をスクリーニングすることによって天 然のリガンドのまわりの「化学的空間」を探索することが極めて成功率の高い方 策であった。アドレナリン受容体の薬剤特異性の進展がその適例である。したが って、リガンド、受容体、およびリガンド−受容体複合体についての構造上の情 報は、スクリーニングプロセスにおける活性な先導的産物(リード)をもたらす 可能性のより高い複数のクラスの化合物を指し示すことができるので、薬剤発見 において大きな価値を持つ。優良な構造上の情報は、所定のリガンドまたは受容 体に結合しそうな新たなクラスの化合物の新たな合成のための理論的根拠も提供 できる(合理的薬物設計)。残念ながら、直接的な構造分析が行なわれているリ ガンド、受容体またはリガンド−受容体複合体はほとんどなく、これらのタンパ ク質のコンピュータモデルは、相同タンパク質の既知の構造および位置指定突然 変異誘発の乏しいデータに基づいて構築されているため、しばしば疑わしいもの である。リガンドの結合特性に対して個々の点突然変異がもたらす影響に関して の包括的なデータは、モデルの改良のために極めて貴重なものとなり得る。しか しながら、点突然変異されたポリペプチドを各々、構成し、発現させ、精製し、 その特性を調べるためには多大な時間と努力とを必要とするのでこのような情報 を得ることは難しい。 したがって、短い期間のうちに多数の点突然変異についての情報を探り出すた めの迅速な(好ましくはライブラリベースの)戦略が必要である。もし、たまた まポリペプチドリガンドが細菌細胞で発現できるのであれば(これは稀なことな のだが)、ファージディスプレイライブラリを用いて、受容体に対するアフィニ ティが増強された突然変異体を同定することができる。しかし、減じられたアフ ィニティをそれらの受容体に対して示すポリペプチドリガンドの正しく折り畳ま れた突然変異体を迅速に選択できるシステムは現在のところない。 c) リガンド依存性、受容体媒介、レトロウイルス隔離 レトロウイルスエンベロープ糖タンパク質は、細胞表面受容体への特異的なウ イルスの付着を媒介し、その結果ウイルスエンベロープと標的細胞膜との間の融 合を引起こす。レトロウイルスエンベロープ糖タンパク質は、そのC末端でより 小さい膜貫通ポリペプチド成分(TM)に非共有結合的に付着する外部糖タンパ ク質成分(SU)からなる。電子顕微鏡によってウイルス表面上に見ることがで きる各表面突起(またはスパイク)は、同一のエンベロープ糖タンパク質サブユ ニットの三量体である。SUはプロリンの豊富なヒンジによって接続される2つ のドメインからなり、N末端ドメインは、受容体特異性を付与し、宿主域の異な る複数のマウス白血病ウイルス(通常典型的なレトロウイルスであるMLV)の 間で高い保存度を示す(Battini ら、1992 J.Virol,66 p1468-1475)。 ウイルスエンベロープタンパク質の遺伝的にコードされた伸長物としてレトロ ウイルスベクターの表面上で(糖)ポリペプチドリガンドの提示を可能にする一 般的方法が既に開示されている(WO94/06920、メディカル・リサーチ ・カウンシル)。このとき、設計されたレトロウイルスベクターは提示されるリ ガンドの結合特異性を持つ。今日までに、我々は、一本鎖抗体、細胞成長因子、 および免疫グロブリン結合ドメインを含む多数の異なったポリペプチドリガンド 類をマウス白血病ウイルスベースのレトロウイルスベクター上に提示してきた( WO94/06920、メディカル・リサーチ・カウンシル;WO96/002 94、メディカル・リサーチ・カウンシル;Cossetら、1994 Gene Therapy 1 pS 1 ;Nilsonら、1994 Gene Therapy 1 pS17)。原則的には、我々の技術によって 、糖ポリペプチドおよび糖タンパク質を含む、構造上多くの異なったクラスの結 合ドメインをレトロウイルスベクター上に提示できるはずである。 我々はまた最近、リガンド依存性受容体媒介ウイルス隔離と呼ばれる新規の生 物学的現象(以下の実施例1に示す)を発見した。例として説明すると、ポリペ プチドリガンドは、MLVベースのレトロウイルスベクターのエンベロープタン パク質に(遺伝子工学によって)融合されてもよく、その結果、該ポリペプチド リガンドが移植されたエンベロープタンパク質は、実質的に無傷のままその本来 の受容体と結合できる能力を維持し、しかも融合された非ウイルス性ポリペプチ ドリガンドはウイルス表面上に提示される。このとき、融合された非ウイルス性 ポリペプチドリガンドを提示するウイルスは、本来のウイルス受容体と、非ウイ ルス性リガンドに対するコグネイト受容体とに多価的に付着できる。本来のウイ ルス受容体への付着によって標的細胞の感染が起こる一方、提示される非ウイル ス性リガンドに対する細胞受容体への付着によっては標的細胞の感染は起こり得 まい。標的細胞が両種の受容体を発現し、かつ提示される非ウイルス性リガンド を介しての付着によって感染が生じない場合には、2つの結合反応(エンベロー プタンパク質と本来の受容体との結合反応および非ウイルス性リガンドとそのコ グネイト受容体との結合反応)は競合して進行し、そして標的細胞に対するウイ ルスの感染力は、第2の結合反応が本来のウイルス受容体からウイルスを遠ざけ るべく競合する効率に比例して減じられる。 たとえば、上皮増殖因子(EGF)が両種指向性レトロウイルスベクター上に 提示されたときは、設計されたベクターはEGF受容体陽性ヒト細胞上に存在す るEGF受容体に優先的に結合し、遺伝子導入は起こらなかった。EGF受容体 陰性細胞は設計されたレトロウイルスベクターに十分に感染可能であったが、そ れらがEGF受容体を発現するよう遺伝的に修飾されたときは感染性の減少を示 した。感染性の減少は、EGF受容体発現のレベルに比例した。さらに、EGF 受容体によるウイルスの捕獲を競合的に阻害するため可溶性のEGFを添加した ときは、遺伝子導入が回復した(WO96/00294を参照)。EGF受容体 を発現する細胞に対するEGF提示ウイルスの感染力の減少は、ウイルスエンベ ロープと標的細胞の形質膜との間での膜融合に対するブロックを反映するものと 考えられる。 遺伝子導入が阻害される程度は、2つの結合反応(エンベロープタンパク質と 本来の受容体との結合反応および非ウイルス性リガンドとそのコグネイト受容体 との結合反応)の相対的アフィニティ、標的細胞表面上の2つの受容体の相対密 度、およびウイルス表面の無傷のエンベロープタンパク質と非ウイルス性リガン ドとの相対密度に依存する。加えて、遺伝子導入の阻害は、非ウイルス性リガン ドに対する受容体の固有の特性、たとえば該受容体が標的細胞膜から突出する距 離、標的細胞膜内でのその移動性、およびリガンド結合後の細胞表面でのその半 減期などに影響される。 発明の概要 第1の局面において、この発明は、特定の結合対(sbp)の変化していない 第1のメンバーと比較して、sbpの第2のメンバーと結合する能力が減じられ た、sbpの複数の変化した第1のメンバーをスクリーニングする方法を提供す る。この方法は、その各々がsbpの変化した第1のメンバーをそれぞれコード する複数の核酸配列を複数のウイルスディスプレイパッケージ中に導入して、ウ イルスディスプレイパッケージ内に含まれるそれぞれの核酸配列によってコード されるsbpの変化した第1のメンバーと、感染可能な標的細胞の感染を媒介で きる感染能を有する(感染−コンピテントな)結合成分とを、各ウイルスディス プレイパッケージがその表面に提示するウイルスディスプレイパッケージライブ ラリを作製することと、ウイルスディスプレイパッケージを、感染能を有する結 合成分に対する受容体分子を表面に発現する複数の標的細胞と、接触させること とを含み、その結果、受容体分子への結合は、ウイルスディスプレイパッケージ による標的細胞の感染を促進する傾向をもたらし、前記標的細胞はまた、sbp の第2のメンバーをその表面に発現するものであり、sbpの提示される変化し た第1のメンバーを介する第2のメンバーへの結合は、ウイルスディスプレイパ ッケージによる標的細胞の感染を阻害する傾向をもたらし、またその結果、sb pの第2のメンバーへの結合能力が減じられている変化した第1のメンバーを提 示するウイルスディスプレイパッケージは、よりうまく標的細胞を感染させる傾 向をもたらすようになる。前記方法はさらに、感染した標的細胞またはそれらの 子孫から、sbpの第2のメンバーに結合する能力が減じられている変化した第 1のメンバーをコードする核酸配列を含む核酸を回収することを含む。 ウイルスディスプレイパッケージは、繊維状バクテリオファージに基づくもの であってもよく、または、より好ましくは、レトロウイルス(特に、C型レトロ ウイルス、好ましくはMLV)などの、真核細胞に感染できる任意のウイルスに 基づくものであってもよい。他の適当なウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(V SV)、インフルエンザウイルス、セムリキフォレストウイルス、シンドビスウ イルス、センダイウイルス、またはアデノウイルスを含み得る。真核細胞に感染 できるウイルスディスプレイパッケージは、上に概括した理由により、適切な形 態においてsbpの第2のメンバーを発現する可能性が原核標的細胞よりも高い 、 真核標的細胞を使用できるために、特に有用であるとわかった。特に、標的細胞 は、これから起こり得る臨床的または獣医学的状況においてこのスクリーニング 方法がどのような結果をもたらすかより正確な推定を可能にする、哺乳動物細胞 であることが望ましい(好ましくは、ラット、マウスまたはヒト細胞であり、好 都合には、細胞系である)。 sbpの第1のメンバーおよび/または第2のメンバーは(適宜グリコシル化 されたまたはグリコシル化されていない)ポリペプチドであることが好都合であ ろう。標的細胞が受容体分子およびsbpの第2のメンバーを本来的に発現する ことが有利であろうが、これらの分子の一方または両方の発現を誘導する配列を 標的細胞へ人工的に導入できることは当業者に明らかであろうし、また、受容体 分子およびsbpの第2のメンバーの両分子が標的細胞で本来的に発現される場 合であっても、これら一方または両方の発現レベルを高めるために、これらの分 子の一方または両方の発現を誘導する配列を標的細胞へ人工的に導入してもよい ことは当業者に明らかであろう。 sbpの変化した第1のメンバーは融合ポリペプチドの部分としてウイルスデ ィスプレイスパッケージ上に提示されることが好ましいであろうし、有利には、 変化した第1のメンバーは感染能を有する結合成分と融合してもよい。融合は、 ウイルスエンベロープタンパク質または糖タンパク質の有効部分とのものが好都 合であろう(ここで「有効部分」という言葉は、その本来の結合アフィニティを 実質的に保持するのに十分なウイルスエンベロープタンパク質の部分を意味する )。エンベロープタンパク質は実質的に無傷のものであることが好ましいであろ う。好ましい具体例において、sbpの変化した第1のメンバーは、ウイルスエ ンベロープ糖タンパク質とのN末端での融合体として提示される(ここで使用す る際に「N末端」という用語は、エンベロープ糖タンパク質のN末端領域(すな わち、分子のN末端の30個程度のアミノ酸内、好ましくは20個のアミノ酸内 、より好ましくは10個のアミノ酸内)での融合を指すことを意図しており、分 子のN末端の最端部における融合のみを指すことを意図しているのではない。た だし、本発明者らは、レトロウイルスエンベロープタンパク質の感染能力を保存 するという点では、N末端に最も近い融合が一般に最適であり、たとえば、レ トロウイルスエンベロープタンパク質のアミノ酸残基1での融合が残基6と7と の間での融合よりも好ましいことを見出している)。 特定の具体例において、sbpの変化した第1のメンバーは4070A ML Vエンベロープ糖タンパク質との融合体として提示される。 ウイルスディスプレイパッケージは、ウイルスディスプレイパッケージによる 感染に際して、標的細胞へ移されるかまたは標的細胞と結合される導入可能な標 識を含むことが望ましいであろう。導入可能な標識は、ウイルスディスプレイパ ッケージによって感染した標的細胞の同定および選択を容易にする、抗生物質耐 性遺伝子などのような、選別可能なマーカーであることが好ましい。 sbpの変化した第1のメンバーが適切な態様で折り畳まれなければ、ウイル スディスプレイパッケージ内に組込まれないであろうということを示唆する証拠 がある。したがって、この発明の方法は、正しく折り畳まれた多数の変化した分 子を迅速にスクリーニングし、かつ、変化していない分子に比べ減じられた結合 能力をそれでもなお示すものを同定する手段を提供する。このような正しく折り 畳まれた「非結合性」物質は、減じられた結合アフィニティおよび/または減じ られた結合アビディティを有し得る。この発明の方法は、sbpの第2のメンバ ーに対するアフィニティを実質的にすべて失った物質を検出できるように整える ことが好ましい。この発明の方法は、新薬の探索において重要で有望な用途を有 する。 sbpの変化した第1のメンバーをコードする核酸配列は、変化していない第 1のメンバーをコードする配列のランダム突然変異誘発によって調製されるのが 典型的であろう。ランダム突然変異誘発のいくつかの方法が当業者には公知であ る(たとえば、MatteuciおよびHeyneker 1983 Nucl.Acids Res.11、3113;Wel ls ら、1985 Gene 34、315 ;Nerrら、1988 DNA 7、127 ;KadonagaおよびKnowles 1985 Nucl.Acids Res.13、1733;Meyersら、1985 Science 229,242;ならび にLehtovaaraら、1988 Protein Eng.2 、63)。変化した第1のメンバーをコー ドする核酸配列は、野生型の変化していない第1のメンバーをコードする配列と 少なくとも90%相同であることが好都合であろう。 したがって、たとえば、複数の変化した第1のメンバーのすべてが(変化して いない配列に比べて)単一のアミノ酸残基において変化していてもよく、また、 いくつかの異なったアミノ酸残基において変化していてもよい(典型的には残基 の10%までが変化してよい)。変更用に選択される残基は、ランダムであって もよく、または、結合対の第1および/または第2のメンバーの構造についての 従前の知見に基づいてねらわれてもよい。この変更物は典型的にはアミノ酸置換 体の形を取るであろうが、小さな(たとえば1から10アミノ酸の)欠失または 付加も含んでもよい。 典型的には、この発明の方法はまた、対照として含まれる変化していない第1 の結合対のメンバーを使用して行なわれ、これに対して変異体である変化した第 1のメンバーの活性が直接比較されるであろう。 別の局面において、この発明は、上に規定したこの発明によるスクリーニング 方法を実行するためのキットを提供し、前記キットは、sbpの第1のメンバー をコードする配列を受入れるのに適した核酸構造物と、この発明の方法を実行す るための説明書とを含む。好ましくは、キットはさらに1つまたは2つ以上の以 下の構成要素を含む。すなわち、標的細胞、sbpの第1のメンバーをコードす る核酸に突然変異を導入するための手段、レトロウイルスパッケージング細胞、 およびウイルスディスプレイパッケージによる標的細胞の感染を検出するための 検出手段である。 さらなる局面において、この発明は、上に規定したスクリーニング方法におい て使用するためのウイルスディスプレイパッケージライブラリを提供する。この ライブラリは、複数のウイルスディスプレイパッケージを含み、各パッケージは 、その表面に、感染可能な標的細胞の感染を媒介できる感染能を有する結合成分 と、sbpの変化した第1のメンバーとを提示するものであり、ライブラリの少 なくともいくつかの異なったパッケージは異なった核酸配列を含み、異なった核 酸配列の各々はsbpの変化した第1のメンバーのそれぞれをコードする。 特に、我々の開示する新規な方法において、受容体媒介レトロウイルス隔離を 引起こすものとして知られる(以後、時に「リガンド」と呼ぶ)sbpのポリペ プチドの第1のメンバーに、折り畳まれた「非結合性」表現型を付与する突然変 異を迅速に同定するため、レトロウイルスディスプレイライブラリが使用される 。 この方法が以下に例示される。 第1のステップにおいて、リガンドをコードする核酸配列を、(当業者には既 知のいくつかの方法のいずれかを使用して)ランダム化し、典型的には90%よ り多くが元の核酸配列と相同である、配列のライブラリを作る。この核酸配列ラ イブラリを次に適切に設計されたレトロウイルスエンベロープ発現プラスミドに 連結し、得られたプラスミドライブラリを適切な補足細胞(たとえばMLVga gおよびpolタンパク質を発現する哺乳動物細胞)にトランスフェクションし 、レトロウイルスディスプレイライブラリを生成する。レトロウイルスディスプ レイライブラリにおけるそれぞれの種は、その表面にリガンドまたはその変異体 (すなわち、アミノ酸配列が変化されているもの)を提示し、対応する(突然変 異されたまたは突然変異されていない)核酸配列をキャプシドで包んでいる。( 突然変異したリガンドを提示する)キメラのエンベロープタンパク質の各々が正 しく折り畳まれ、補足(ウイルス生産)細胞の表面に運ばれることが、そのレト ロウイルス粒子への組込のために必要なはずである。したがって、リガンドの折 り畳みを妨げる突然変異はライブラリから効果的に取除かれるであろう。 次に、このライブラリは突然変異していないリガンドを提示するレトロウイル スを隔離する受容体陽性ヒト標的細胞と接触させられる。そして、突然変異した ポリペプチドドメインが受容体に対して減じられたアフィニティを示すライブラ リのメンバーによってのみ、レトロウイルスの核酸は標的細胞にうまく移される 。次に、移された核酸配列は標的細胞の染色体DNAから(たとえばPCR増幅 によって)回収され、折り畳まれた非結合性表現型を付与した突然変異体を同定 するために配列決定される。 このような遺伝子ディスプレイパッケージのライブラリを生成および選択する のに適した典型的なDNA構造物は、操作をしやすくするため十分に小さなもの にすべきであり、以下のものを含むべきである。 (1) 真核細胞発現カセット。そのコードされるポリペプチドは、ウイルス 粒子へのその効率的な組込を指示するための構造的シグナル、およびビリオンの 表面に提示される非ウイルス性成分(ペプチドまたはポリペプチド)を含む。ポ リペプチドは、選択された標的細胞の感染を媒介するよう、選択された標的細胞 上に存在する受容体に結合できるウイルス性提示成分を含むべきである。 (2) 非ウイルス性成分をコードする配列の端部に隣接するユニークな非相 補的制限部位。該配列は、ペプチドまたはポリペプチド配列のさまざまなライブ ラリのこの部位への指向的なクローニングを容易にするべく非ウイルス性成分を コードするものである。 (3) 提示ポリペプチドをコードする配列のウイルス粒子への組込を、ウイ ルス粒子がパッケージング細胞を離れる前に、指示するためのウイルスキャプシ ド化シグナル配列。 (4) 適切なトランス作用因子の存在下において、提示されるポリペプチド をコードする核酸配列および関連するキャプシド化シグナル配列のコピー数の増 幅を媒介するシス作用配列。 (5) 細菌の宿主株(たとえば大腸菌)のプラスミドの増幅を容易にするた めの細菌プラスミド複製起点および抗生物質耐性マーカー遺伝子。 レトロウイルス遺伝子ディスプレイパッケージの場合には、感染した標的細胞 でのキャプシド化されたRNAの逆転写および組込を確実にするため、長い末端 反復配列(LTR)、tRNAプライマー結合部位およびポリプリン・トラクト が好ましくは含まれる。1回の選択後に感染した標的細胞から提示ポリペプチド をコードする配列を回収することを容易にするために、キャプシド化された核酸 中に選択可能マーカー遺伝子を含むことも望ましいだろう。レトロウイルス遺伝 子ディスプレイライブラリの生成に必要なすべての特徴を示すプラスミド(pN IPenv)は、特許出願WO94/06920(メディカル・リサーチ・カウ ンシル)に開示されている。 pNIPenvを生成するために用いられたクローン化戦略と同様の戦略を用 いて、翻訳リーディングフレームを崩壊させることなく、MoMLVの完全な長 さの感染性分子クローン(Shoemaker ら、1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77 p3932-3936)における成熟モロニーMLVエンベロープ糖タンパク質の第6番 目のアミノ酸と第7番目のアミノ酸とに対するコドンの間、および第1番目のア ミノ酸に対するコドンの5′真近にユニークなSfiIおよびNotI制限部位が今回挿 入された。このベクターのgagコード領域におけるSfiI部位(ShinnicK ら、1981 Nature 293 p543-548)が取除かれ、多様なペプチド、ポリペプチド、 または糖ポリペプチドを提示する複製能を有する(複製−コンピテントな)レト ロウイルスのライブラリを生成するためこのベクターを使用できるようになって いる。我々はまた、提示されるポリペプチドが、両種指向性4070A MLV エンベロープ糖タンパク質のN末端伸長物として発現される、レトロウイルスデ ィスプレイライブラリを生成するために適した同様の構造物を生成させた。 タンパク質の折り畳みを崩壊させることなく結合アフィニティを減じる突然変 異体を同定するためのこのアプローチを論理的に敷衍すると、真核細胞に感染で きる任意の科の任意のウイルス上に提示される非ウイルス性ポリペプチドをコー ドする核酸のキャプシド化のための同様の設計のベクターを構築することに至る 。他のウイルスの科に基づく同様のベクターの構築およびその使用は、オリゴマ ーの膜スパイク糖タンパク質を提示する、水疱性口内炎ウイルス、インフルエン ザウイルス、セムリキフォレストウイルス、シンドビスウイルス、およびセンダ イウイルスなどの限定された大きさおよび複雑性を持つエンベロープ化ウイルス に特に好都合である。アデノウイルス科のウイルスから由来する同様のベクター の構築およびその使用も有利であろう。というのは、アデノウイルス繊維糖タン パク質は、ビリオンの表面から突出するスパイクとして電子顕微鏡で見ることが できるグリコシル化されたホモ三量体(Mullisら、1990 J.Virol.64 p5317-532 3 ;Devauxら、1990 J.Mol.Biol.215 p567-588)であるという点において、M oMLVエンベロープ糖タンパク質と共通した重要な特徴を有しているからであ る(Ruigrok ら、1990 J.Mol.Biol.215 p589-596)。 キャプシド化された核酸は、ウイルス性スパイク糖タンパク質との融合体とし て、提示されるペプチド、ポリペプチドまたは糖ポリペプチドをコードする必要 はないが、そのような融合体としてコードする方が好ましい。我々はまた、効率 よく粒子中に組込むことができ、非ウイルス性ペプチド、ポリペプチドまたは糖 ポリペプチドを提示するよう設計された、CD4のような非ウイルス性タンパク 質の設計された誘導体を、キャプシド化された核酸がコードする、ウイルスの使 用を構想している。我々はまた、非ウイルス性ペプチド、ポリペプチドまたは糖 ポリペプチドが合成ポリペプチドとの融合によってウイルス粒子に固定されるウ イルスの使用も構想している。 さまざまな組換えレトロウイルスライブラリの生成が、レトロウイルスプラス ミドのレトロウイルスパッケージング細胞への一過性形質転換によって以前に立 証されている(MurphyおよびEfstratiadis、1987 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 4 p8277-8281)。ライブラリの大きさは、第1にプラスミド連結生成物の増殖お よび精製のための大腸菌への、そして、第2にレトロウイルス遺伝子ディスプレ イライブラリの生成のためのレトロウイルスパッケージング細胞への、プラスミ ドのトランスフェクションの効率によって限定される。最近開発された効率の高 い、哺乳動物細胞への遺伝子配達方法(Curielら、1992 Hum.Gene Ther.3 p147 -154)を用いて、108のレトロウイルス遺伝子ディスプレイパッケージライブ ラリのサイズが可能であるはずだと我々は見積もっている。 操作に影響を受けやすく、選択処理の結果に影響を与え得る実験上のパラメー タは以下のものを含む。 1.ライブラリにおけるウイルスの基本的構成 (これはライブラリを生成するために使用されるパッケージングシステムおよ びベクタープラスミドのデザインにより決定される)。 ウイルス中にキャプシド化された核酸は、欠損がなくても(すなわち感染した 標的細胞内での感染性のあるウイルス子孫の生産能力を有しても)よく、または 欠損があってもよく、好ましくは(必須というわけではないが)(たとえば抗生 物質耐性を付与する)選択可能マーカー遺伝子を含んでもよい。 ライブラリにおけるウイルスの表面構成(したがってそれらの開始宿主域特性 )は、まずパッケージングシステムの選択によって決定される。たとえば、パッ ケージング細胞を適切に選択することにより、レトロウイルスディスプレイライ ブラリのRNA転写産物およびコードされる融合タンパク質を、変更されていな いマウス同種指向性MLVエンベロープタンパク質、もしくは変更されていない マウス両種指向性MLVエンベロープタンパク質をも提示するレトロウイルス、 または変更されていないエンベロープタンパク質を提示しないレトロウイルスに 組込むことができる。 ライブラリにおけるウイルスの開始宿主域は、さらに、(たとえばマウス同種 指向性または両種指向性の)ウイルスにおいて提示される非ウイルス性ポリペプ チドを固定するために用いられる、変更されたスパイク糖タンパク質のウイルス 性成分の性質によっても決定され得る。 2.提示されるポリペプチドのライブラリの構成 これは、ランダムなあるいは目標を定めた突然変異誘発によって生成される、 ペプチド、抗体断片(Fv、scFv、Fab)、T細胞受容体、増殖因子、サ イトカイン、ウイルスタンパク質、または酵素のさまざまな変異体の集合からな ることができる。 ライブラリのサイズ(すなわち多様性、ユニークな非ウイルス性ポリペプチド を提示するウイルスの数)は、提示されるポリペプチドをコードするベクター挿 入物に多様性を生成させるために使用される方法、ベクタークローン化部位への これらの導入の効率、ベクターの大腸菌への導入の効率、およびベクタープラス ミドライブラリのパッケージング細胞への導入の効率によって決定される。ウイ ルスライブラリにおいて多様性を生成させるため利用可能な方法は数多くあり、 これらについてはファージ抗体ライブラリに関連して既に説明されている。lo x−cre系または真核細胞において活性である他の組換え酵素系を、ベクター 挿入物の構成要素をランダムに組換えることによってライブラリの多様性をさら に増すために用いてもよい。 ライブラリにおける最終的なウイルスの力価は、ライブラリの多様性と、ライ ブラリ中のそれぞれの種のコピー数との所産になるだろう。力価は、パッケージ ングシステムの効率の関数となり、ベクターおよびヘルパー機能(すなわちウイ ルスの構造的および非構造的タンパク質)の発現の効率、ならびにパッケージン グ細胞におけるベクターゲノムの増幅およびキャプシド化の効率に関係する。し たがって、たとえば、高コピー数のエピソーム的に複製するプラスミドおよび/ または強力な細胞プロモーター/エンハンサーを使用することによって、ならび に、効率の高いキャプシド化シグナル配列を適切に選択することによって、ウイ ルスの力価を高めることができるだろう。 3.標的細胞の構成 標的細胞の、種源、組織源、分化状態、活性状態、同調状態および増殖状態は 、 選択の戦略の結果に影響を及ぼすであろう重要な変数である。 遺伝子導入が阻害される程度は、2つの結合反応(エンベロープタンパク質の 本来の受容体に対する結合反応およびリガンド(sbpの第1のメンバー)のそ のコグネイト受容体(sbpの第2のメンバー)に対する結合反応)の相対的ア フィニティ、ならびに標的細胞表面上の2つの受容体の絶対的密度および相対的 密度に依存する。リガンドは典型的には非ウイルス起源のものである。加えて、 遺伝子導入の阻害は、(非ウイルス性)リガンドに対する受容体の固有の特性、 たとえば、それが標的細胞膜から突出する距離、標的細胞膜内でのその移動度、 およびリガンド取付後の細胞表面上でのその半減期などに影響される。真核標的 細胞の絶対数および純度もまた種々のものとなり得る。 4.ウイルスディスプレイパッケージのライブラリが標的細胞と接触する条件 選択処理の結果に影響するよう、時間、温度、pH、培地の組成、競合抗原ま たは遮断タンパク質の存在などを変化させることができる。代わりに、標的細胞 を、直接ウイルスディスプレイパッケージに接触させるのではなく、ウイルス生 産細胞(通常「パッケージング細胞」として知られている)のライブラリに接触 させてもよい。 5.ウイルスライブラリへの標的細胞の暴露に続く標的細胞の処理 標的細胞をさらに選択することなく、種々の時間にわたって組織培養(または 生きた生物体)の中に維持してもよい。標的細胞の純粋な個体群は、たとえば、 蛍光染色および蛍光活性化セルソーティングによって、標的細胞の混合個体群か ら選択できる。標的細胞は、たとえば選択された増殖因子またはサイトカインを 用いることによって刺激することができる。 標的細胞は、送達されるウイルス核酸の細胞での発現に基づいて選択すること ができる。もし、ウイルス核酸が、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼな どの抗生物質耐性マーカーをコードしているならば、細胞を抗生物質G418に さらすことによって、ウイルス核酸を発現する細胞を選択するであろう。送達さ れる核酸によりコードされるタンパク質を発現しないかまたは、うまく感染しな かった細胞を取除くためのさらなる選択処理に供する前にまたはその後に、感染 した標的細胞個体群からウイルスの核酸配列を回収することができる。代わりに 、 ウイルス核酸によりコードされる(たとえばMoMLVエンベロープ糖タンパク 質などの)変更されたスパイク糖タンパク質のウイルス成分に対して、標的細胞 個体群を蛍光抗体で染色し、陽性染色された細胞を蛍光活性化セルソーティング (FACS)によって分離することができる。FACSによってもまた、移され た核酸の発現レベルに基づいた細胞の選択が容易になるであろう。MoMLVエ ンベロープスパイク糖タンパク質の発現に係る細胞の蛍光染色については、以前 明らかにされている。 6.提示ポリペプチドをコードする送達された核酸を感染標的細胞から回収す るメカニズム 標的細胞への核酸の送達後、ウイルスによって提示される非ウイルス性ペプチ ド、ポリペプチドまたは糖ポリペプチドをコードする核酸配列の回収は、末端に 位置するオリゴヌクレオチド・プライマーを用いたPCR増幅によって達成でき る。PCR増幅は、細胞全体からでも、細胞から抽出された高分子量DNAもし くは低分子量DNAからでも、あるいは細胞から抽出されたRNAから調製され たcDNAからでも行なうことができる。代わりに、野生型ウイルスを用いる重 感染によって、(たとえばレトロウイルスgagおよびpolタンパク質をコー ドする)適当なヘルパープラスミドのトランスフェクションによって、または、 提示されるポリペプチドをコードする配列を含む完全な長さの感染ウイルスゲノ ムをキャプシド化する組換えウイルスのライブラリを用いることによって、感染 した標的細胞から子孫ウイルスへ直接的にウイルス核酸を増幅させかつ回収する こともできる。 この発明は、例示の実施例により、および添付の図面を参照して以下にさらに 説明される。 図1は、さまざまな野生型およびキメラのレトロウイルスエンベロープ構造物 の模式図である(EGF=上皮増殖因子、L=モロニーMLVenvからのリー ダーシグナル配列;すべてのenv遺伝子は同じプロモータ、フレンド(Friend )MLV長い末端反復配列「LTR」を用いて発現された。コドンの番号付けは 成熟SU糖たんぱく質のN末端からの距離を示す)。 図2は、エンベロープSUたんぱく質の検出を示すウエスタンブロットの図で あり、図1に示されるエンベロープでトランスフェクションされたTELCeB 6細胞の溶解産物(lysates)(左側)のイムノブロット、またはこれらの細胞 から生成されるウイルス粒子のペレット(pellets)(右側)のイムノブロット である。ブロットは両方ともSU抗血清で染色された。ペレットのイムノブロッ トは46kDで切断され、その低位の部分がp30−CA抗血清で染色された。 図3は、細胞がA431、HT1080、TE671またはK422である、 EGF受容体結合アッセイの結果を示しており、蛍光活性化セルソーティング( FACS)により与えられた一連のグラフを示す。上の列は、MOエンベロープ (白いヒストグラム)と比較してEMOエンベロープ(黒いヒストグラム)を用 いて行なわれた結合アッセイを示し、一方下側の列は、細胞が抗hEGF.R抗 体で染色されたときの結果を示す。 図4は、FACSにより与えられた、A431細胞が標的細胞として用いられ たEGF結合の特異性を示す一連のグラフである。細胞は、EMOを用いる(上 の列のグラフ)またはAエンベロープを用いる(下の列)結合アッセイの前に、 組換えEGFで処理され(+ rEGF)(10-6M、30分間、37℃)また は処理されなかった(− rEGF)。 図5は、S−1000クロマトグラフィ後のさまざまなフラクション(テキス ト参照)のEGF結合を示すグラフである。各フラクションは、A431細胞を 標的として用いるその結合活性と、3T3細胞への感染力との両方に対して分析 された。(−):感染力なし、(+/−):1〜10LacZ−EFU、(+) :10〜100LacZ−EFU、(++):100〜1000LacZ−EF U、(+++):>1000LacZ−EFU。 図6は、両種指向性4070Aエンベロープタンパク質のコドン+1に挿入さ れたEGFコード配列を含む、キメラエンベロープ構造物E.A.の模式図であ る。 図7は、psiパッケージング配列を含むレトロウイルス発現構造物を複製す る構造物pNCAEGFL.1SfiI の模式図である。 実施例 ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)を介するEGFR陽性細胞へのレトロウ イルス遺伝子送達をターゲットとする試みにおいて、本発明者らおよびその同僚 らは、モロニーMLVのenv遺伝子の6番目のコドンと7番目のコドンとの間に 導入されてきたSfiI-NotI クローン化部位(Russellら、1993 Nucleic Aci ds Research 21、1081−1085 ;Russell ら、WO94/06920 )中に、フレームにおいて、ヒトEGFコード配列がクローン化されるキメラの エンベロープ構造物を構築した。このキメラのエンベロープ構造物(EMO)は 次いで袖足細胞系TELCeB6にトランスフェクションされ、それは、MLV gagおよびpolの機能ならびにβ−ガラクトシダーゼをコードするパッケー ジ可能なRNA転写物を発現するものであった。このトランスフェクションされ たTELCeB6細胞は、ペレット化されたウイルスのウエスタンブロット分析 により示されるように、キメラのEMOエンベロープ糖たんぱく質を有効に組込 んだレトロウイルス粒子を放出した。キメラのEMOエンベロープの糖たんぱく 質を組込んだウイルスは、マウスNIH3T3細胞にβ−ガラクトシダーゼ遺伝 子を移すことが、色素産性基質アッセイによって示され、キメラのたんぱく質は 、依然として同種指向性MLV受容体に結合し、膜融合に触媒作用を及ぼし得る ことを示した。 キメラのEMOエンベロープの糖たんぱく質を組込んだウイルスは、次いで0 .45μMろ過された培養上清のセファクリル(sephacryl)カラムクロマトグ ラフィにより可溶性の(脱外皮された)エンベロープ糖たんぱく質から分離され 、EGF.R陽性ヒト細胞系(つまりEGF受容体を発現する細胞系)に有効に 結合することが免疫蛍光染色により示された。これらの細胞への結合は可溶性E GFによって競合的に阻害された。しかしながら、結合されたウイルスは機能的 β−ガラクトシダーゼ遺伝子をヒト細胞系に移さず、一方、両種指向性4070 Aエンベロープを組込んだ対照ウイルスはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子をこれら の同じヒト細胞系に有効に移した。 本発明者らおよびその同僚らは次に、両種指向性4070Aエンベロープの糖 たんぱく質に融合されたEGFポリペプチドを提示する組換えレトロウイルスを 用いて、EGFR陽性ヒト細胞への遺伝子移入の効率を調べた。FBEGFMo sAのMoMLV env配列(Cossetら、J.Virol.1995 69,6314-6322)の 大半(NotI クローン化部位の3’に隣接するコドン7から、env遺伝子の3 ’末端に近接するClaI 部位まで)を、対応の4070A env配列(コドン 5から、env遺伝子の3’末端に近接するClaI 部位まで)の代わりに用いる ことにより、キメラのEGF−4070A(EA)発現構造物を作った。 キメラのEAエンベロープたんぱく質を提示する組換えレトロウイルスは、予 期しない態様で挙動した。それらは、β−ガラクトシダーゼ遺伝子を、マウスの NIH3T3細胞とEGF受容体発現に対しては陰性であるヒト細胞とには有効 に移したが、EGF受容体を発現するヒト細胞には移さなかった。EGF受容体 陽性のヒト細胞での力価の減少は、変更されていない4070A両種指向性エン ベロープを組込んだ対照ウイルスに比して1000万倍にもなった。 EGFR発現プラスミドでそのいくつかがトランスフェクションされたマウス およびヒト起源のさまざまな標的細胞を用いた実験を続けて行なったが、それに よると、キメラのEMOおよびEAエンベロープの糖たんぱく質を提示するウイ ルスは、EGF受容体を同様に発現する同種指向性または両種指向性MLV受容 体陽性細胞に感染する能力を選択的に損なってしまうことがわかった。より高い レベルのEGF受容体発現は、感染力のより大きな減損を伴った。EGF受容体 発現プラスミドでトランスフェクションされた細胞はEMOおよびEAウイルス に対して選択的に耐性となり、この耐性は、細胞を可溶性EGFで処理してEG F受容体を遮断/ダウンレギュレーションすると、可逆性を示した。こうして、 レトロウイルス宿主域は、ウイルス表面上のEGF受容体に対して高アフィニテ ィーのリガンドを提示することによって、EGF受容体陰性細胞に選択的に限定 された。 本発明者らおよびその同僚らは、こうして、リガンド依存性受容体媒介ウイル ス隔離と自らが呼ぶ新規な生物学上の現象、すなわちMLVまたはMLVに基づ くレトロウイルスベクターの宿主域をリガンドに依存する態様で制限する方法を 発見した。第1のステップは、非標的細胞上には存在するが標的細胞個体群には 存在しない細胞表面マーカーに特異的に結合するポリペプチドリガンドを同定す ることである。このポリペプチドは次いで、それが移植されたエンベロープのた んぱく質が実質的に無傷のままでありかつその天然の(本来の)受容体に結合す ることが可能であるよう、レトロウイルスエンベロープのたんぱく質に(遺伝子 工学によって)融合され、その融合された非ウイルス性ポリペプチドリガンドは ウイルス表面に提示される。融合された非ウイルス性ポリペプチドリガンドを提 示するウイルスは次いで本来のウイルス受容体と非ウイルス性リガンドに対する コグネイト受容体とに多価的に付着することができ;その本来のウイルス受容体 への付着は標的細胞の感染をもたらし、一方、提示された非ウイルス性リガンド に対する細胞受容体への付着は標的細胞の感染をもたらさないだろう。標的細胞 が両方の受容体種を発現し、提示される非ウイルス性リガンドによる付着が感染 をもたらさない場合には、2つの結合反応(本来の受容体へのエンベロープたん ぱく質の結合反応、およびそのコグネイト受容体への非ウイルス性リガンドの結 合反応)は競合して進行し、標的細胞に対するウイルスの感染力は、第2の結合 反応がその本来のウイルス受容体からウイルスを駆逐するべく競合する能力の度 合に比例して減少する。 したがって、遺伝子移入が阻害される度合は、2つの結合反応の相対的なアフ ィニティー、標的細胞表面上の2つの受容体の相対密度、ならびにウイルス表面 上の非ウイルス性リガンドおよび無傷のエンベロープたんぱく質の相対密度に影 響される。遺伝子移入の阻害は、加えて、非ウイルス性リガンドのための受容体 に固有の特性、たとえばそれが標的細胞膜から突出する距離、標的細胞膜内での その移動度、およびリガンド取付後の細胞表面上でのその半減期等により影響さ れる。この宿主域制限法は、他のエンベロープ化ウイルスの膜スパイク糖たんぱ く質、およびアデノウイルス繊維たんぱく質等の非エンベロープ化ウイルスの付 着たんぱく質に適用可能となり得る。エンベロープ化されたウイルスが、異なる 結合特異性と融合生成能力とを伴う複合的な別個の膜スパイク糖たんぱく質を有 する場合には(たとえば、パラミクソウイルス科、ヘルペスウイルス科)、この 方法によるウイルス宿主域の制限は糖たんぱく質のうちの2つ以上の修飾を必要 とするかもしれないしまたはしないかもしれない。 実施例1キメラのレトロウイルスエンベロープの構造物 EGF(上皮増殖因子)をコー ドする配列を、MLV(マウス白血病ウイルス)env遺伝子において、MoM LVのSU糖たんぱく質のアミノ酸+6に対応する位置に挿入した(図1)。こ の挿入位置は、ビリオンの表面において一本鎖抗体の機能的提示を可能にするこ とが以前に示された(Russell ら、1993 NAR 21 p1081−10 85)。EGFドメインは、3アラニン残基を含む小さいリンカーによって、エ ンベロープの野生型受容体結合ドメインから分離された。キメラのEMOにおい て、EGFはMo−MLVエンベロープに挿入され、一方キメラのEAはMLV 両種指向性(4070A)エンベロープにおいて位置+5でEGFが挿入された 。同種指向性(MO)および両種指向性(A)MLVからの対照エンベロープを 含むエンベロープ群を、MLV gag−polコア粒子およびlacZレトロ ウイルスベクターを発現するTELCeB6細胞にトランスフェクションした。キメラのエンベロープの発現およびウイルス組込み MLV SUに対する抗体 を用いて、TELCeB6細胞の溶解産物を、エンベロープ発現に関して分析し た(図2)。両方のキメラのエンベロープに対して、前駆体および処理されたS U生成物の両方が野生型のエンベロープと同様の割合で検出され、突然変異体が 正しく発現され処理されることを示した。突然変異体エンベロープの細胞表面発 現は、プロデューサー細胞のFACS分析によって、SUに対する抗体またはモ ノクローナル抗hEGF抗体を用いて調べられた。トランスフェクションされた 細胞はすべて抗SU抗体で染色され、EGF融合エンベロープを発現する細胞も 抗EGFモノクローナルで染色された(データは示さず)。 キメラのエンベロープ糖たんぱく質の、レトロウイルス粒子への組込みを示す ために、TELCeB6がトランスフェクションされたさまざまな細胞系の上清 を超遠心分離し、ウイルス粒子をペレット化した。ペレットは次いでそれらのg ag(p30−CA)およびエンベロープたんぱく質の内容に関してイムノブロ ットで分析された(図2)。キメラのSU糖たんぱく質が、野生型のエンベロー プに比してgagと同様の割合で検出された。キメラのエンベロープのEGF受容体への結合 異なる数のEGF受容体を発現 するヒト細胞系(図3下)を結合アッセイのために使用した。細胞はウイルス上 清とともにインキュベートされ、標的細胞表面へのウイルスエンベロープの結合 は、FACSにより、MLV SUに対する抗体を用いて分析された。 MoMLV由来のEGF融合エンベロープ(EMOエンベロープ)は、EGF .R(図3下)を過剰に発現するA431細胞(図3上)に結合していた。より 少ないEGF.Rを発現するTE671およびHT1080標的細胞上には、よ り少ない結合が見出された(図3)。検出可能なEGF受容体の発現を伴わない K422リンパ腫細胞上には、結合は検出できなかった(図3)。EAエンベロ ープは、A431細胞およびEMOに結合した(データは示さず)。A431細 胞上のEGF受容体を、EGFでのプレインキュベーションによってダウンレギ ュレーションした。この処理は、両種指向性エンベロープの結合には影響しなか った(図4下)が、EMOエンベロープの結合は破壊した(図4上)。 MLVのSUエンベロープ糖たんぱく質はそれらのTMたんぱく質の対応物と 弱く結合することが知られており(Gliniak ら、1991 J.Biol.Chem. 66 p22991−22997)、非常に低い割合のSUがビリオン上に保持 される。ゆえに、図3の結合アッセイは、一部は、ビリオンからはがされた可溶 性エンベロープ糖たんぱく質によるものとも思われる。ウイルス粒子も結合し得 るかどうかを判断するために、プロデューサー細胞の上清をゲルろ過によって分 離し、フラクションをA431細胞上での結合活性に関して分析した(図5)。 期待したとおり、ウイルス粒子を含む初期のフラクションには結合活性はほとん ど見出せず、結合活性のほとんどは、可溶性エンベロープを含む後のフラクショ ンにあった。しかしながら、(SUとTMとの間の解離を低減するために)ウイ ルス粒子を32℃で生産すると、ビリオンを含むフラクションにも強力な結合活 性が見出され(図5)、ウイルス粒子がEGF.Rに結合し得ることを示した。EMOエンベロープを保有するウイルスの宿主域特性 表1Aは、EMOエンベ ロープを組込むウイルスがNIH3T3マウス線維芽細胞に感染し得ることを示 す。EMOウイルスは、モロニーエンベロープの糖たんぱく質を発現するNIH 3T3細胞には感染し得ないが、4070Aエンベロープ糖たんぱく質を発現す るNIH3T3細胞には感染し得ることから、感染は同種指向性MLV受容体を 介するものである。EMOエンベロープを組込んだウイルスは、EGF受容体に 結合し得るのみならず、同種指向性MLV受容体を介して細胞に結合し感染し得 る。 表1Bは、EMOエンベロープを組込んだウイルスは、ヒト細胞上のEGF受 容体に結合するその能力にもかかわらず(図3)、さまざまな密度のEGF受容 体を発現するヒト細胞に感染できなかったことを示す。驚いたことに、トランス フェクションされたプラスミドから同種指向性MLV受容体を安定して発現する 細胞系EJ.A1は、EMOウイルスには感染され得なかったが、修飾されてい ないMOエンベロープを組込んだウイルスには容易に感染された。この結果は、 EMOウイルスはEJ.A1細胞上においてEGF受容体により競合的に隔離さ れ得、それが同種指向性ウイルス受容体に結合するのを阻止することを示した。 a:lacZビリオン上に発現されるエンベロープ b:lacZ−EFU/mlとしての力価。細胞系に対する省略形:3T3:N IH3T3;3T3/E:psi2;3T3/A:GP+EAM12 a:lacZビリオン上に発現されるエンベロープ b:lacZ−EFU/mlとしての力価。 c:細胞は10-6M組換えEGFとともに37℃で30分間プレインキュベート され(+)またはされなかった(−)。EMOエンベロープを保有するウイルスの競合的隔離 EMOウイルスが、本来 ならば受入れ可能な標的細胞の表面で、EGF受容体によって競合的に隔離され るかもしれないという考えをテストするために、我々は、さまざまな数のEGF 受容体を発現するマウス線維芽細胞(NR6およびNIH3T3)上で、EMO またはMOエンベロープを組込んだウイルスの力価を検定した(表2)。EMO エンベロープを保有するウイルスの力価はEGF.R発現で1000倍にまで低 減され、EGF受容体発現の密度とウイルス力価における低減の大きさとの間に 相関関係があった(表2B)。NR6−hEGF.R細胞をrEGFで前処理し て、EGF.Rを抗体染色によって確認されるようにダウンレギュレーションす ると(図示せず)、EGF融合エンベロープで被覆されたウイルスの力価は大き く増大し、親NR6細胞上で得られる力価の範囲に達した(表2A)。これらの データにより、EGF受容体とビリオンの相互作用で、それらが、ウイルスのコ アの膜融合または細胞質放出に繋がらない不全型の侵入経路に隔離されることが 確認される。EAエンベロープを保有するウイルスの宿主域および競合的隔離 表1Aは、E Aエンベロープを組込んだウイルスが両種指向性MLV受容体を介してNIH3 T3マウス線維芽細胞に感染し得ることを示す。EAウイルスは、さまざまな密 度のEGF受容体を発現するヒト細胞系のパネルについて力価検定すると、パネ ルのEGF受容体陽性ヒト細胞のすべてに感染する能力が選択的になくなること を示した(表1B)。しかしながら、それらは、EGF.Rを欠いておりおそら くは両種指向性受容体を介して感染されるヒトBおよびT細胞系(K422およ びジャーカット(Jurkat))を容易に感染させ得る(表1)。これらのデータは 、EAウイルスがヒト細胞上で発現されるEGF.Rによって有効に隔離される ことを示唆し、それらの競合的隔離を確認するためにそれらを親およびEGF受 容体発現NR6マウス線維芽細胞上でテストした(表2A)。NR6細胞上のE GF受容体の発現は、ウイルス感染の競合的阻害(100倍)をもたらし、その 阻害は、NR6トランスフェクタントをEGFで前処理してそれらのEGF受容 体を遮断/ダウンレギュレーションすると可逆性を示した。いくつかの隔離されたウイルスは感染侵入経路に救出され得る 受容体への結合 後、EGFは受容体の二量体化およびそのシグナルトランスダクションを誘発し 、それにリガンド−受容体の内在化が続き、リソソームへ送られ、そこでEGF −EGF受容体複合体は分解される(Carpenter およびCohen、1990 J.Bi ol.Chem.265 p7709−7712)。我々は、ゆえに、EGF受容体に 結合されるウイルスは速やかに細胞に内在化され、分解のためにリソソームへ送 られるかもしれないと考えた。EMO保有ウイルス粒子を用いて、リソソーム分 解の阻害剤であるクロロキンで処理されたA431細胞に感染させると、感染力 の大幅な増大(約2対数(約102)程度まで)が得られた(表3)。この効果 はEGF.受容体に特異なものである。というのも、K422細胞等のEGF. 受容体陰性細胞は同様には応答しなかったからである(表3)。 a:lacZビリオン上に発現されるエンベロープ b:lacZ−EFU/mlとしての力価。細胞はクロロキンで処理され(+) または処理されなかった(−)。 材料および方法細胞系 MoMLV(モロニーマウス白血病ウイルス)gagおよびpolたん ぱく質を発現するプラスミドを含む細胞のトランスフェクションおよびクローン 選択の後、TELCeB6細胞系をTELac2系から誘導した(Takeuchiら、 1994 J.Virol.68 p8001−8007)。TELCeB6細胞は非 感染性ウイルスコア粒子を生成し、これはMGFn1sLacZレポーターレト ロウイルスベクターを保有する(Ferry ら、1991 Proc.Natl.Acad.Sci .USA 88 p8377−8381)。A431、TE671(ATCC C RL8805)、HT1080(ATCC CCL121)、EJ(Bubenik ら 、1973 Int.J.Cancer 11 p765−773)、およびEJ.A1. (同種指向性MLV受容体を発現するEJクローン、Albritton ら、1989 Cell 57 p659−666)を、10%の胎仔ウシ血清(Gibco-BRL) で補足されたDMEM(Gibco-BRL)において増殖させた。K422細胞(Dyer ら、1990 Blood 75 p709−714)およびジャーカットT細 胞を、10%の胎仔ウシ血清(Gibco-BRL)で補足されたRPMI 1640(G ibco-BRL)において増殖させた。検出可能なEGF受容体を欠いたNR6マウス 線維芽細胞(Schneider ら、1986 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83 p 333−336)と、NR6−EGF.R(ヒト上皮増殖因子受容体を発現する プラスミドのトランスフェクション後に得られるNR6サブクローン)細胞とは 、ジー・ギル(G.Gill)(ラ・ホヤ(La Jolla)、アメリカ合衆国)の好意に より提供された。psi2細胞(Mannら、1983 Cell 33 p153−1 59)およびGP+EAM12細胞(Markowitz ら、1988 Virol. 167 p400−406)は、NIH−3T3細胞から誘導され、妨害によって対応 の受容体(EcoR−1およびRAM−1)を遮断するMoMLV(同種指向性 )およびMLV両種指向性エンベロープをそれぞれ発現した。EGF受容体発現 構造物でトランスフェクションされ、中位または高いレベルのEGF受容体を発 現するNIH3T3クローンは、ティエリー・ベル(Thierry Velu)教授(エラ スムス病院(Erasmus Hospital)、ブリュッセル(Brussel))の好意により提 供された。NIH−3T3およびNIH−3T3由来の細胞系は、10%の新生 ウシ血清(Gibco-BRL)で補足されたDMEM(Gibco-BRL)において増殖させた 。キメラのエンベロープ hEGFの53aaをコードするPCR誘導DNAフラ グメント(Bellら、1986 Nucleic Acids Res.14 p8427−844 6)を、cDNAテンプレート(ATCC 59957)および2つのプライマ ー、すなわち、SfiI 制限部位を有する OUEGF 5'-ATGCTCAGAGGGGTCAGTACGGCCCAGCCG GCCATGGCCAATAGTGACTCTGAATGTCCC-3' (Seq ID No 1)と、NotI 部位を有する OLEGF 5'-ACCTGAAGTGGTGGGAACTGCGCGC GGCCGCATGTGGGGGTCCAGACTCC-3' (Seq ID No 2)とを用いて生成し、EMOキメラのエンベロープに対するMoM LV SUまたはEAエンベロープに対する4070A SUにおいてSfiI お よびNotI での消化の後にクローン化した(図1)。 すべてのエンベロープ構造物は、BglII−ClaI フラグメント(MoMLVにお ける位置5408および7676に対応する)として発現され、FBMOSAL F発現ベクター(Cossetら、J.Virol.1995 69,6314-6322)のBamHI部位とCla I 部位との間でクローン化され、そこにおいて、PGK(ホスホグリセレートキ ナーゼ)遺伝子ポリアデニル化配列に融合されたフレオ(phleo )選択可能なマ ーカー(Gatignolら、1988 FEBS Lett 230 p171−175)が下 流においてFB3のC57 MLV LTR(Battini ら、1992 J.Virol .66 p1468−1475)に導入された。ウイルスの生成 エンベロープ発現プラスミドをリン酸カルシウム沈降法によっ てTELCeB6細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションされ た細胞はフレオマイシン(50mg/ml)を用いて選択され、DMEMおよび FBS(10%)での一晩のインキュベーション後にフレオマイシン耐性クロー ンのプールを用いてウイルスを集密細胞から採収した。これらの上清を、結合ア ッセイおよび感染アッセイのために、ウエスタンブロットサンプルを提供するた め、超遠心分離にかけた。ウイルス(プロデューサー細胞上清100m1中)は さらに、2mlカラム(バイオ・ラッド(Bio−Rad))でS−1000セ ファクリル(ファーマシア(Pharmacia))上においてゲルろ過により精製され た。4℃においてPBSでの溶出によってフラクションを得た。イムノブロット ウイルスプロデューサー細胞を、1%のトリトン(Trito n)−X100と、0.05%のSDSと、5mg/mlのデオキシコール酸ナ トリウムと、150mMのNaClと、1mMのPMSFとを含有する20mM のトリス−HCl緩衝剤(pH7.5)において溶解した。溶解産物は4℃で1 0分間インキュベートされ、10,000xgで10分間遠心分離されて核をペ レット化した。上清は次いで、さらなる分析まで、−70℃で凍結された。SW 41ベックマンローター(SW41 Beckman Rotor)におけるウイルス上清(10m 1)の超遠心分離(30,000RPM、1時間、4℃)によってウイルスサン プルを得た。ペレットは、100μlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁 され、−70℃で凍結された。サンプル(細胞溶解産物に対して30mg、また は精製されたウイルスに対して10μl)は、6%のSDSと、30%のb−メ ルカプト−エタノールと、10%のグリセロールと、0.06%のブロモフェノ ールブルーとを含有する375mMのトリス−HCl(pH6.8)緩衝剤にお いて混合され、3分間沸騰され、次いで10%のSDSアクリルアミドゲルにか けられた。ニトロセルロースフィルタ上へたんぱく質を移した後、5%の粉乳お よび0.1%のTWEENを用いてTBS(トリスベース生理食塩水 pH7. 4)中で免疫染色が行なわれた。抗体(クオリティー・バイオテック・インコー ポレイテッド(Quality Biotech Inc)、アメリカ合衆国)は、RLV(ローシ ャー(Rausher )白血病ウイルス)gp70−SUたんぱく質またはRLV p 30−CAたんぱく質のいずれかに対するヤギ抗血清であり、1/1,000お よび1/10,000にそれぞれ希釈された。西洋ワサビペルオキシダーゼ(H RPO)抱合ウサギ抗ヤギ抗体(DAKO、英国)および電気化学発光キット( アマーシャム・ライフ・サイエンス(Amersham Life Science))を用いてブロ ットを展開した。結合アッセイ 標的細胞を、PBS中で洗浄し、PBS中0.02%ベルセン( Versene )でもって37℃で10分間インキュベートして分離した。細胞はPB A(2%のFCSと0.1%のアジ化ナトリウムとを伴うPBS)中で洗浄され た。106個の細胞を4℃で30分間ウイルスとともにインキュベートした。細 胞は次いでPBAで洗浄され、1/200のRLV gp70免疫血清を含むP BAにおいて4℃で30分間インキュベートされた。細胞は、PBAで二度洗浄 され、ウサギ抗ヤギFITC抱合抗体(DAKO、英国)とともにインキュベー トされた。PBA中での最後の2回の洗浄前の5分において、細胞は20mg/ mlの沃化プロピジウムで染色された。生きた細胞の蛍光発光を蛍光活性化セル ソーター(FACSCan、ベクトン・ディキンソン(Beckton Dickinson)) を用いて分析した。hEGF.R染色の場合、100mlのPBA中106個の 細胞が10mlの抗EGF.R抗体(M886、DAKO、英国)とともに4℃ で30分間インキュベートされた。感染アッセイ 標的細胞を、24のマルチウェルプレートにおいてウェルごとに 3×104個の細胞の密度で、または6つのマルチウェルプレートにおいてウェ ルごとに2×105個の細胞の密度で接種した。4mg/mlのポリブレンを含 むウイルス上清希釈物を添加し、細胞を37℃で3〜5時間インキュベートした 。次いでウイルス上清を除去し、細胞をレギュラー培地で24〜48時間インキ ュベートした。X−Ga1染色を前に述べたとおり行なった(Takeuchiら、19 94 J.Virol.68 p8001−8007)。 EGF.Rを遮断するために、標的細胞を、10-6MのrEGFを含む培地( 236−EG、アール・アンド・ディー・システムズ(R & D Systems)、英国 )において37℃で30分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、感染を 既に述べたように行なった。リソソーム酸性化を阻止するために、100mMの リン酸クロロキン(シグマ(Sigma)、英国)を感染プロトコルの最初から6時 間培地に添加し、その後細胞を洗浄してレギュラー培地でインキュベートした。 実施例2:プラスミドライブラリ構造物の製造 a) PCR突然変異誘発およびレトロウイルス発現構造物へのクローン化 EGF cDNA突然変異体のライブラリがランダムPCR突然変異誘発によ って生成された。4070Aマウス白血病ウイルス(MLV)表面タンパク質( SU)gp 70のN末端の+1コドンで挿入され(図6)かつSfiIおよびNotI 制限部位が両端に位置するEGF cDNAを備えるキメラのEGF両種指向性 (E.A.)ベクター(Cossetら、1995 J.Virol. 69 p6314)が、PCRラン ダム突然変異誘発のためのテンプレートとして使用された(Hawkins ら、1992 J .Mol.Blol.226 p889)。100μlの反応混合物は、20ngのテンプレー ト、50pモルのBglenvrev プライマー(5′TCT AGA CTG ACA TGG CGC GT、Seq.ID No.3)および4070Aseq3 プライマー(5′ GGT GAC TCT CCA GGT TAC、Seq .ID No.4)、1mMの各デオキシヌクレオチド・三リン酸、50mMの KCl、10mMのTris−HCl(25℃でpH9.0)、6mMのMgC l2、0.5mMのMnCl2ならびに1%(v/v)のTriton X−10 0を含有した。 PCRの開始直前にMnCl2が新たに添加された。増幅は、94℃(1分) 、 65℃(1分)およびTaq DNAポリメラーゼ(Promega;5ユニット)を 用いる70℃(4分)の30サイクルからなった。得られたPCR生成cDNA 断片は、SfiIおよびNotI制限酵素で消化され、アミノ酸配列に変化を及ぼすこと なくPCR突然変異誘発によってpol遺伝子のSfiI部位が欠損した、SfiI-NotI 消化pNCAEGFL.1SfiI−バックボーンにクローン化された(図7)。 pNCAEGFL.1Sfi−レトロウイルス発現構造物のプラスミドライブラ リはエレクトロコンピテント大腸菌に形質転換のため導入された。35個の個別 のクローンが取り出され、それらのそれぞれのDNAが抽出され、SfiIおよびNo t I制限酵素によって消化された。約159塩基対という正しい断片のサイズを持 ったクローン(EGF cDNAサイズ=159bp)のみが選択され、自動シ ークエンス法によって配列決定された。 b) 配列決定 pNCAEGFL.1SfiI−プラスミドライブラリの26個のクローンが、E GF遺伝子中の突然変異の数をチェックするため配列決定された。PCR cD NA断片は、各々最終濃度が25μモルのBglenvrev およびenvseq5(5′ G TA AGG TCA GGC CAC CAG GT、Seq.ID No. 5)プライマー、5μl Taqポリメラーゼ緩衝剤(Promega )、0.25m MのdNTPを用いて、それぞれのクローンのDNAから生成され、かつ94℃ (30秒)、60℃(30秒)およびTaq ポリメラーゼ(5ユニット)を用 いる72℃(30秒)の25サイクルで増幅された。PCR断片はゲル精製され 、9.5μlの既製のターミネーター反応混合物(ABI PRISMTM)と3 .2pモルのenvseq5プライマーとともにサイクルシークエンス法のためのテン プレートとして使用された。 結果:配列決定された26個のクローンのうち、18個が、1つから5つのコ ドンにおける点突然変異を持つ変異されたEGF配列を有しており(表4)、点 突然変異の総数は39であった。 1個から5個の点突然変異を持つクローンのパーセンテージ=18×100/ 26=69% 配列決定された塩基の総数=4293 点突然変異の総数=39 遺伝子(159塩基)当りの突然変異の数=39×159/4293=1.4 c) pNCAEGFL.1SfiI−プラスミドライブラリのサイズ PCRで生成されたEGF cDNAは、pNCAEGFL.1SfiI−バック ボーンにクローン化された。10の異なった連結反応が行なわれた。連結反応生 成物はエレクトロコンピテント細胞に形質転換のため導入され(Stratagene,Ep icurian coliXLI−MRF′)、1ml当り105個の形質転換された細胞を 得た。形質転換された細胞は50mg/mlのアンピシリンで選択された。大き な(225cm×225cm)2×TYプレート上で、5バッチの形質転換体が 増殖され、残りはそれぞれ5×500mlの2×TY液体培地中37℃で一晩増 殖された。翌出プレート上の細胞のコロニーをかき取り、6mlの2×TY/ア ンピシリン中に再懸濁した。プレートおよび液体培地の両者からの細胞はプール され、ペレット化され、5mlの2×TY/15%、グリセロール/1%、グル コース/50mg/mlアンピシリン中に再懸濁された。混合物の一部(アリコ ート)(50μl)がDNAの抽出のための中型の調製物を準備するため使 用され、残りはさらに分析するまで液体窒素中で凍結された。 実施例3:レトロウイルスディスプレイライブラリの生成 a) モロニーMLV同種指向性受容体(Rec−1)を発現するウイルスプ ロデューサー細胞の製造 ヒト繊維肉腫細胞系HT1080が、モロニーMLV同種指向性受容体Rec −1をコードする発現ベクターでトランスフェクションされた。発現ベクターは 、以下に詳細に述べるように、Rec−1をコードするcDNA断片をRC/C MVベクターにポリリンカーのNotI部位で平滑末端連結することによって構築さ れた。RC/CMV Rec−1発現ベクターは、リン酸カルシウム沈澱法によ ってHT1080細胞に安定してトランスフェクションされ、細胞はプールされ 、1mg/mlネオマイシン(G418)を含有する10%FCS−DMEM選 択培地に広げられた。β−ガラクトシダーゼ遺伝子を移送する野生型のMoML VウイルスによってHT1080−Rec−1細胞を感染させられるかどうかを 調べることにより、Rec−1受容体の発現が確認された。トランスフェクショ ンされた細胞の約65%がX−galによって青く染色された。 RC/CMV Rec−1発現ベクターのポリリンカーは以下の部位を含む。Pcmv/KPn I/SacI/BamHI/SPeI/XmaIII/BstXI/EcoRI/PstI/EcoRV/BstXI/NotI/XhoI/ SPh I/NsiI/XbaI/HindIII/ClaI/‥‥ b) レトロウイルスライブラリの生成および選択 EGFプラスミドライブラリは、リン酸カルシウム沈澱法によってHT108 0細胞へ一過的にトランスフェクションされる(Sambrookら、Molecular Clonin g,Cold Spring Harbour Laboratory Press)。72時間後に、EGFを提示す る複製ベクターを含有するHT1080細胞からのウイルス上清が、5mlの1 0%FCS−DMEM中で一晩採取され、濾過される(0.45μm)。次に、 これは、4μg/mlのポリブレンの存在下でHT1080−Rec−1細胞を 感染させるために使用される。72時間後に、感染されたHT1080−Rec −1細胞から培地が取り除かれ、5mlの10%FCS−DMEMで置換えられ る。前と同じようにウイルス上清が採取され、新しいバッチのHT1080−R ec−1を感染させるために使用される。全部で3回の選択が実行される。 実施例4:選択されたレトロウイルスライブラリの特性を調べる a) HT1080−Rec−1細胞からの高分子量DNAの抽出 第2回目の選択および第3回目の選択の両方から、感染されたHT1080− Rec−1細胞からの高分子量DNAが抽出される。この細胞はPBSで洗浄さ れ、100μg/mlプロテイナーゼKを含有するDNA溶解緩衝液(TE緩衝 液、1%SDS)中で5分間37℃でインキュベートされる。細胞溶解産物は3 7℃で一晩インキュベートされ、次に15分間ローターホイール上で静かに混合 することにより2mlフェノール中に一旦抽出され、15分間1500×gで遠 心分離され、次にその水相が新しいチューブに移される。この処理をフェノール /クロロホルム(1:1)を用いて一度繰返し、そして次にクロロホルムのみを 用いて繰返す。最後のクロロホルム抽出の後、2.5容量の塩/エタノール(p H4.8で、250vol.エタノール:1vol.3M KAc)が加えられ 、その溶液はDNAが収縮した綿のような沈澱物を形成するまでゆっくりと揺ら される。そしてDNAは太いガラスフックを用いて巻き取られ、数秒間水気を切 られ、200μlTE中で一晩溶解される。 b) 高分子量DNAからのEGF cDNAのPCR増幅 EGF cDNAを増幅するため高分子量DNAの希釈されたサンプルについ て前と同様Bglenvrev およびenvseq5プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応 が行なわれる。PCR生成物はTAクローニングベクター(Invitrogen)に連結 され、ベクターはコンピテント細胞に形質転換のため導入される。挿入物を含有 する陽性コロニーが取り出され、個々のコロニーからDNAが抽出され、EGF 挿入物の配列が自動シークエンサーでチェックされる。こうして同定された突然 変異体は、EGF受容体への結合アフィニティを減じるものであるが、EGFド メインの折り畳みを妨げないものと推定される。このことは、突然変異体EGF cDNA断片をPCRによって増幅し、それをEGFキメラ構造物(E.A) にクローン化することにより確認される。次にこの構造物はウイルスプロデュー サー細胞(TELCeB6)にトランスフェクションされ、感染アッセイのため にウイルス上清が採取される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ペン,カー−ファイ イギリス、シィ・ビィ・1 2・イー・テ ィ ケンブリッジ、ハービィ・ロード、ハ ウス・5

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.特定の結合対(sbp)の変化していない第1のメンバーと比較して、前記 sbpの第2のメンバーと結合する能力が減じられた、前記sbpの複数の変化 した第1のメンバーをスクリーニングする方法であって、 前記sbpのそれぞれの変化した第1のメンバーを各々コードする複数の核酸 配列を複数のウイルスディスプレイパッケージに導入して、各々のウイルスディ スプレイパッケージが、その表面に、前記ウイルスディスプレイパッケージ内に 含まれるそれぞれの核酸配列によりコードされる前記sbpの変化した第1のメ ンバーおよび感染可能な標的細胞の感染を媒介できる感染能を有する結合部位を 提示するウイルスディスプレイパッケージライブラリを作製し、 前記感染能を有する結合部位に対する受容体分子をその表面に発現する複数の 標的細胞に前記ウイルスディスプレイパッケージを接触させ、その結果、前記受 容体分子への結合は、前記ウイルスディスプレイパッケージによる標的細胞の感 染を促進する傾向をもたらし、前記標的細胞はまたその表面に前記sbpの前記 第2のメンバーを発現するものであり、前記sbpの提示される変化した第1の メンバーを介する前記第2のメンバーへの結合は、前記ウイルスディスプレイパ ッケージによる標的細胞の感染を阻害する傾向をもたらし、その結果、前記sb pの前記第2のメンバーに結合する能力が減じられている変化した第1のメンバ ーを提示するウイルスディスプレイパッケージは、よりうまく標的細胞を感染さ せる傾向をもたらすようになり、かつ 感染した標的細胞またはその子孫から、前記sbpの前記第2のメンバーに結 合する能力が減じられている変化した第1のメンバーをコードする核酸配列を含 む核酸を回収することを含む、方法。 2.前記ウイルスディスプレイパッケージは真核細胞に感染できることを特徴と する、請求項1に記載の方法。 3.前記ウイルスディスプレイパッケージはレトロウイルスに基づくことを特徴 とする、請求項1または請求項2に記載の方法。 4.前記ウイルスディスプレイパッケージはC型レトロウイルスに基づくことを 特徴とする、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。 5.前記sbpの前記第1のメンバーは融合ポリペプチドとして提示されること を特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方法。 6.前記sbpの前記第1のメンバーは前記感染能を有する結合成分との融合体 として提示されることを特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方法。 7.前記sbpの前記第1のメンバーはウイルスエンベロープタンパク質との融 合体として提示されることを特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方 法。 8.前記sbpの前記第1のメンバーはレトロウイルスエンベロープ糖タンパク 質とのN末端融合体として提示されることを特徴とする、前掲請求項のいずれか 1項に記載の方法。 9.前記感染能を有する結合成分は、実質的に無傷のレトロウイルスエンベロー プ糖タンパク質を含むことを特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方 法。 10.前記標的細胞は真核細胞であることを特徴とする、前掲請求項のいずれか 1項に記載の方法。 11.前記標的細胞は哺乳動物細胞であることを特徴とする、前掲請求項のいず れか1項に記載の方法。 12.前記標的細胞は前記受容体分子と前記sbpの前記第2のメンバーとを本 来発現するものであることを特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方 法。 13.前記標的細胞は、前記受容体分子および/または前記sbpの前記第2の メンバーの発現を誘導する配列でトランスフェクションされたものであることを 特徴とする、前掲請求項のいずれか1項に記載の方法。 14.前記sbpの変化した第1のメンバーのそれぞれをコードする前記複数の 核酸配列は、前記sbpの前記変化していない第1のメンバーをコードする配列 に突然変異を導入することによって誘導されることを特徴とする、前掲請求項の いずれか1項に記載の方法。 15.前記突然変異は、実質的にランダムな突然変異誘発の処理によって導入さ れることを特徴とする、請求項14に記載の方法。 16.前掲請求項のいずれか1項の方法を実行する際に使用するためのキットで あって、sbpの第1のメンバーをコードする配列を受入れるのに適した核酸構 造物と、前掲請求項のいずれか1項に記載の方法を実行するための説明書とを含 む、キット。 17.標的細胞、前記sbpの変化していない第1のメンバーをコードする核酸 配列に突然変異を導入するための手段、レトロウイルスパッケージング細胞、お よびウイルスディスプレイパッケージによる標的細胞の感染を検出するための検 出手段のうち、1つまたは2つ以上をさらに含む、請求項16に記載のキット。 18.請求項1から15のいずれか1項の方法において使用するためのウイルス ディスプレイパッケージライブラリであって、 複数のウイルスディスプレイパッケージを含み、各パッケージはその表面に感 染可能な標的細胞の感染を媒介できる感染能を有する結合成分およびsbpの変 化した第1のメンバーを提示し、ライブラリにおける少なくともいくつかの異な ったパッケージは異なった核酸配列を含み、異なった核酸配列は各々、前記sb pの変化した第1のメンバーのそれぞれをコードする、ウイルスディスプレイパ ッケージライブラリ。
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