【発明の詳細な説明】
レストリクチンP/アクチビンAを含む薬学的組成物及
びIL−6及び/又はIL−11のアンタゴニストとし
てのその用途
発明の分野
本発明は、形質細胞腫およびハイブリドーマ増殖インヒビターサイトカイン、
本発明において間質起源のアクチビンAと同一であることが確認され、サイトカ
インのインターロイキン(IL)-6および/またはIL-11のアンタゴニストである
レストリクチンP,ならびにとくに上記レストリクチンP/アクチビンAからな
る医薬組成物、およびIL-6および/またはIL-11のインビボ活性の修飾のため
のレストリクチンP/アクチビンAの使用方法に関する。
発明の背景
造血の調節は直接的機構を介して働くサイトカインによって誘導される。一部
は、コロニー刺激因子(CSF)のように、増殖とそれに続く分化を誘導するこ
とにより造血細胞の蓄積を促進する。また、他の一部は腫瘍壊死因子(TNF)
のように、細胞周期の静止を惹起し、その結果、細胞の蓄積を制限する。増殖因
子と細胞の間の相互作用の帰結は、多くの場合、標的細胞の本質に依存し、同じ
サイトカインが、ある細胞型には刺激性であり、他の細胞型には阻害性である。
一部のインヒビターは細胞増殖の減速または最終分化の誘導によって作用し、他
のインヒビターはアポトーシスの誘導によって細胞死を起こさせる。
レストリクチンPは、以前に本発明者らの一人により、形質細胞腫細胞の増殖
のインヒビターとして報告された(Ziporiら,1986;Honigwachs-Sha'ananiら,
1991)。この因子の生物活性は最初、形質細胞腫細胞の増殖を減速する初代間質
細胞の選択的能力によって注目された(Zipori,1980 および 1981)。同様の機
能は、マウス起源の骨髄細胞由来間質細胞系、MBA-2.1の緩和な処置によって
得られるトリプシン-TPCK放出タンパク質によって発揮された(Ziporiら,1
986)。放出された粗製タンパク質混合物は一連の形質細胞腫およびハイブリト
マの増殖を阻害したが、リンパ球、赤血球および骨髄細胞起源の様々な他の白血
病細胞系の増殖に対しては有意な作用をもたなかった(Ziporiら,1986)。同様
に、正常細胞集団たとえばコロニー刺激因子に応答する骨髄細胞やマイトジェン
により誘導される脾臓細胞に対する作用は観察されなかった(Ziporiら.1986)
。増殖の阻害を誘導する因子(単数または複数)が極めて少量、間質細胞系によ
って産生されることが見出され、したがってこの活性成分を単離するためには、
その因子の大規模な産生のための条件を確立する必要があった。この産生細胞系
,MBA-2.1は完全にタンパク質を含まない条件下バイオリアクター中に負荷し
た不織布ポリエステルの三次元担体上で増殖できることが見出された(Kadouri
ら,1992)。このようなバイオリアクターの研究から、この細胞はタンパク質を
含まない条件下に10カ月まで維持可能で、この間トランスフォーミング増殖因子
(TGF)β,マクロファージ(M)-CSFおよびIL-6とともにレストリクチ
ンPを産生することが見出された。バイオリアクターシステムから得られたレス
トリクチンPは、その標的細胞に初期G1/G0静止、形態学的変化および細胞傷
害の徴候を誘導し(Honigwachs-Sha'ananiら.1991)、これは細胞内イオン変化
を伴っていた(Malikら,1992)。
IL-6は多面的なサイトカインであり、様々な組織および臓器内の細胞に影響
する。IL-6はプラズマ様細胞に対して増殖促進作用を有し、造血系内において
多様な造血細胞型の増殖および分化の誘導ならびに増殖阻害のような過程に関与
する(Ikebuchiら,1987;Hoangら,1988;Botら,1989)。したがってIL-6の
活性は厳密に調節されていることが期待される。これは、他のサイトカインまた
は多様なメディエーターの活性の結果としてIL-6遺伝子の発現のレベルで起こ
るものと考えられる。IL-6によるヒト患者処置、たとえば腫瘍治療および骨髄
移植において、IL-6は健康な細胞および組織にも有害に作用し、したがってI
L-6の有害作用を遮断または減弱させることは重要である。
アクチビンはTGFβファミリーのメンバーであり、多くの生物学的現象の調
節に関与している。FSH放出タンパク質(FRP)としても知られるアクチビ
ンAはフレンド赤白血病細胞の分化を誘導して(Murataら.1988;Yuら.1987;
Etoら,1987),正常な造血前駆細胞に影響する(Broxmeyerら,1988;Nakaoら
,1991)ことが示されている赤血球分化因子(EDF)と同一である。アクチビ
ン
Aは間質細胞により発現されることが見出されている(Yamashitaら,1992)。ア
クチビンAはさらにB9形質細胞腫細胞およびU266B1骨髄腫細胞系を殺滅す
ることが明らかにされている(Nishiharaら.1993)。U266B1細胞はIL-6非
依存性であり、血清を補充した培地中で増殖し、増殖にIL-6を要求しない。
同じ刊行物で著者らは、B9細胞をIL-6とともにまたはIL-6の不存在下に
増殖させた短期実験において、アクチビンAに暴露された場合と同程度に死滅す
ることを示した。さらに、この文献ではアクチビンAによって誘導されるB9細
胞のアポトーシスがIL-6によって防止されないとが述べられている。アクチビ
ンAは形質細胞腫細胞を殺滅するが、この作用はIL-6とは無関係であると結論
されている。
組換え宿主細胞の発現産物として、ホルモン様の活性を示すヒトおよびブタア
クチビンAからなる組成物がMasonらに付与された米国特許第4,798,885号に記載
されている。Vake.Jr.らに付与された米国特許第4,973,577号には、アクチビン
Aのダイマーであるタンパク質の有効量を投与することからなり、FSHの分泌
を増大させるように脊椎動物を処置する方法が開示されている。Perrineらに付
与された米国特許第4,997.815号には、β-グロブリン障害に冒されている対象に
おけるγ-グロブリンのβ-グロブリンへのスイッチを阻害する方法において、そ
の対象に生涯を通じて周期的にアクチビン、インヒビンまたはそれらのチェーン
から選択される化合物を導入することからなる方法が記載されている。Yuらに付
与された米国特許第5,032,507号にはヒトにおいて赤血球集団を増大させる方法
であって、上記ヒト前駆細胞をFSH放出タンパク質(FRP,アクチビンAと
同一である)と接触させることからなる方法が記載されている。Woodruffらに付
与された米国特許第5,102.868号には、雌性動物の卵巣における卵胞の成熟を阻
害する方法において、哺乳動物の卵巣にアクチビンAの有効量を投与することか
らなる方法が開示されている。
本発明によって、多面的なサイトカインであるアクチビンAがレストリクチン
Pと同一であること、およびこの分子はIL-6および/またはIL-11のアンタゴ
ニストであることが初めて示された。
発明の概要
したがって、本発明は、活性成分としてレストリクチンP/アクチビンAおよ
び医薬的に許容される担体からなり、IL-6および/またはIL-11のインビボ活
性を修飾するための医薬組成物を提供する。
好ましい実施態様においては、この組成物は、たとえば腫瘍治療または骨髄移
植時でIL-6の投与を受けている患者でのIL-6の有害作用を遮断または減弱さ
せることを意図している。
他の態様においては、本発明は、たとえばIL-6および/またはIL-11依存性
細胞の異常または過剰増殖の場合におけるIL-6および/またはIL-11のインビ
ボ活性の修飾用医薬組成物を製造するためのサイトカイン、レストリクチンP/
アクチビンAの使用に関する。
他の態様においては、本発明は、IL-6および/またはIL-11のインビボ活性
を修飾する方法において、それを必要とする患者にレストリクチンP/アクチビ
ンAの有効量を投与することからなる方法に関する。とくに、この方法は、腫瘍
治療または骨髄移植を受けている患者でのIL-6の有害作用を遮断または減弱さ
せるのに適している。
図面の簡単な説明
図1A〜Dは、実施例2に記載の間質細胞調整培地からのレストリクチンPの
最終精製を構成する一連の溶出プロフィルを示し、図1AはQ-Sepharose陰イオ
ン交換クロマトグラフィーカラムでの溶出プロフィル、図1Bは Superdex 75ゲ
ルろ過、図1CはC-8逆相HPLC-I(RP−HPLCI),図1DはC-8逆
相HPLC-II(RP−HPLCII)カラムからの溶出プロフィルを示す。
図2A〜Bは、高度精製のレストリクチンPの分析を示す。図2Aはレストリ
クチンPについて得られた配列を既知のアクチビンAの配列と比較して示す。位
置4.11および12におけるXsは配列決定装置では通常検出されないシステイン
残基の期待される位置であり、位置25におけるXは検出できなかったTrp残基に
相当する。図2Bは、実施例2の記載のように、RP-HPLCIIカラムから得
られた高度に精製されたレストリクチンPのSDS-PAGE分析を示す。
図3は、実施例3に記載されたように、精製レストリクチンP(▲)および組
換えウシアクチビンA(○)または対照(×)によるMPC-11形質細胞腫細胞
の増殖の阻害を示す。
図4A〜Bは、実施例4に記載されたように、レストリクチンPが、IL-6
(4A)およびIL-11(4B)誘導B9細胞増殖に拮抗することを示す。B9
細胞は指示された希釈度の組換えヒトIL-6(4A.○)もしくは組換えヒト
IL-11(4B,○)または精製レストリクチンPおよびIL-6(4A,▲)も
しくは精製レストリクチンPおよびIL-11(4B,▲)により処置した。
図5A〜Bは、実施例5に記載の実験において、レストリクチンPがB9細胞
へのIL-6の結合を妨害しないことを示す。
図6は、実施例6に記載したように、HepG2肝癌細胞において、レストリク
チンPが急性相プロテインα-酸グリコプロテイン(AGP)およびハプトグロ
ビン(HG)のIL-6誘導性分泌を妨害することを示すウエスタンブロットの
図である。
図7は、実施例7に記載したように、HepG2肝癌細胞において、レストリク
チンPがIL-6シグナリングに関与するSTATの活性化を妨害しなかったこ
とを示している。Stat3およびStat1αホモダイマーまたはStat3/Stat1αヘテロ
ダイマーの量は実施例7に記載したように、別のインキュベーション条件下にお
いて追跡した。
発明の詳細な説明
本発明は、マウスの形質細胞腫およびハイブリドーマの増殖静止ついで細胞死
を起こさせる間質細胞による調整培地中に見出されるレストリクチンPと命名さ
れた活性が、形質細胞系MBA-2.1による調整培地から均一に精製されたタンパ
ク質によって誘導されることを見出し、また、このタンパク質はアクチビンAモ
ノマーと同一のN末端アミノ酸配列を有することが見出されたことに基づくもの
である。アクチビンAは、間質細胞によって発現されることが見出されている(
Yamashitaら,1992)。PAGEから推定されるされるレストリクチンPモノマ
ーの分子量は15kDaであって、モノマーアクチビンA(βAインヒビン)とサイ
ズが類似することから、これらの2つの分子は同一であると結論された。実際、
組換えアクチビンAはMPC-11形質細胞腫に対してレストリクチンPと同程度
に阻害性であることを以下に示す。
レストリクチンPはその精製型で、外部から添加したIL-6またはエL-11と
競合して、因子依存性ハイブリドーマ細胞系B9を殺滅した。270倍過剰の部分精
製レストリクチンPがr-Mu-[125I]-IL-6結合と競合する能力を欠くこと(
図5A)または340倍過剰の高度精製レストリクチンPがr-Hu-[125I]-IL-
6ムテイン結合と競合する能力を欠くこと(図5B)に基づいて、レストリクチ
ンPは高親和性IL-6リガンド結合部位でIL-6と競合することによってはその
作用を発揮しないと結論される。
レストリクチンPの拮抗作用は、レストリクチンPが他のサイトカイン依存性
細胞系、たとえば増殖をM-CSFに依存する14M1.4マクロファージ、IL-3依
存性であるMC/9肥満細胞腫、またはNFS-60.GM-CSF依存性細胞の増殖
に影響しなかったことから(データは示していない)、IL-6およびIL-11に
特異的である。
形質細胞腫およびハイブリドーマに厳密に特異的なレストリクチンPの殺滅作
用は、この因子が、この細胞型に特徴的な分子機構を検知することを示唆した。
IL-6に対する依存性増殖は多くの形質細胞腫およびハイブリドーマに特徴的
である。実際、本発明者らは、レストリクチンPがハイブリドーマの生存に必須
の増殖因子と競合することによってB9細胞の増殖を阻害することを本明細書に
示す。しかしながら、MPC-11クローンのような一部の細胞はサイトカイン非
依存性であるもの、それらの増殖はレストリクチンPによって阻害される。
形質細胞腫は、IL-6シグナリングに応答する唯一の細胞型である。HepG2
肝癌細胞はIL-6の影響下に急性相プロテインを放出し(Gauldieら.1987)、
活性はレストリクチンPによって阻害できる。さらにレストリクチンPはIL-6
によって誘導される効果、M1骨髄芽球細胞のミトコンドリアおよび増殖阻害活
性ならびにその関連単球への分化の両者を消失させることができる。したがって
、レストリクチンPはIL-6の普遍的なアンタゴニストであり、IL-6が活性な
すべての系でIL-6を阻害する。
ここに間質性アクチビンAとして同定されたレストリクチンPは、プラズマ様
細胞の増殖因子であるが、別の増殖因子に依存する他の細胞に拘束されないIL
-6および/またはIL-11のアンタゴニストである。
レストリクチンP/アクチビンAはしたがって、たとえば免疫疾患の処置に使
用できる。正常プラズマ細胞の生存および機能化に要求される増殖因子のアンタ
ゴニストとして、抗体が寄与する疾患における病因的免疫状態において、これら
の細胞の数を減少させ、これらの細胞を抑制するために使用できる。すなわち、
レストリクチンP/アクチビンAは、他の細胞型を傷害することなく、すなわち
標的細胞に広いスペクトルを有する細胞傷害性薬物および免疫抑制剤の使用を回
避してプラズマ細胞を殺滅することが要求される場合に推薦される。以下の範疇
の免疫障害が、レストリクチンP/アクチビンAによって処置できる。
a.過敏症I型:IgE感作マスト細胞は喘息または鼻炎のような症状を示す
炎症反応を生じる。レストリクチンP/アクチビンAは生存抗体産生プラズマ細
胞の負荷を低下させるために使用できる。
b.過敏症II型:貧食、キラー細胞活性または補体誘発細胞溶解による抗体依
存性細胞傷害。たとえば、赤血球の細胞表面に対する抗体は、新生児の溶血性疾
患(抗Rh)および成人の自己免疫溶血性貧血を引き起こす。超急性移植片拒絶
も抗体によって誘導される。重症筋無力症はアセチルコリン受容体に対する抗体
によるものである。過敏症I型障害の場合のように、レストリクチンPはこれら
の場合にプラズマ細胞の負荷を軽減する。
c.過敏症III型:免疫複合体疾患。抗体と抗原の間の複合体は慢性B型肝炎
、全身性ループスエリテマトーデス等で生じる。レストリクチンPはこれらの場
合に、他の連鎖に影響する可能性がある細胞傷害性薬物の使用を必要とせずに複
合体産生プラズマ細胞の数を低下させるために使用できる。
d.自己抗体によって誘発されることが知られている甲状腺炎のような一部の
自己免疫疾患の場合に、レストリクチンP/アクチビンAが同様に使用できる。
他の態様においては、レストリクチンP/アクチビンAは、異常免疫グロブリ
ン合成-プラズマ細胞疾患の処置に使用できる。一連の疾患はモノクローナル免
疫グロブリンの蓄積を伴う。これらの状態の一部は制御され、モノクローナルタ
ンパク質の量は十分に耐容されるが、他の場合には、重篤な疾患を生じて、プラ
ズマ細胞の抑制に細胞傷害性薬物が使用される。レストリクチンP/アクチビン
Aは、プラズマ様細胞に特異的なその殺滅作用によりはるかに良好なアプローチ
である。処置できる状態には慢性寒冷凝集素症、重鎖疾患、丘疹性粘液沈着症、
壊疽性膿皮症、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症、および免疫グロブ
リンアミロイド症が包含される。
好ましい一実施態様においては、レストリクチンP/アクチビンAは、造血幹
細胞の増殖および分化の調節物質として知られ、多くの他の細胞型に影響する多
面的サイトカインであるIL-6のインビボ活性を修飾するために使用される。し
たがって、IL-6によるヒト患者の処置では、処置が向けられていない細胞に対
しIL-6によって引き起こされる副作用の問題に直面する。レストリクチンP/
アクチビンAの使用は、骨髄移植および腫瘍治療の経過におけるIL-6処置の場
合に、IL-6のインビボ投与の影響を遮断または減弱させることを意味する。
他の態様においては、上記a〜dに記載の免疫障害の場合に、IL-6およびI
L-11のアンタゴニストスとして、レストリクチンP/アクチビンAは有用な可能
性がある。
本発明は、任意のアクチビンA,様々な種たとえばヒト、ブタ、ウシおよびラ
ットからのネイティブなおよび組換えアクチビンAを包含する。これらのアクチ
ビンの間には100%のアミノ酸保存がある。様々な種のネイティブなおよび組換
えアクチビンは、米国特許第4,798,885号(Masonら,Genentrech に譲渡),米
国特許第4,973,577号(Vake,Jr.ら),米国特許第4,997,815号(Perrineら),
米国特許第5,032,507号(Yuら).米国特許5,071.834号(Burtonら,Genentrech
に譲渡)および米国特許第5,102,868号(Woodruffら,Genentrech に譲渡)に記
載されている。これらの記載は引用によりその全体が本明細書に導入される。
本発明に使用される組成物は、標準操作に従いたとえば米国特許第5,102,868
号に記載されたように処方され服用される。この記載は引用により本明細書に導
入される。1日用量は処置すべき疾患および患者の状態に依存することになるが
約1μg/体重から約1mg/体重の範囲である。好ましい実施態様においては、レ
ストリクチンP/アクチビンAは非経口投与に適合する担体たとえば患者の血液
と等張性のたとえばリン酸緩衝食塩溶液と製剤化し、注射により投与される。
本発明を次に、以下の非限定的実施例によって例示する。
実施例
材料および方法
(i)細胞培養:MBA-2.1間質細胞系(Ziporiら.1984)は100mmのプレー
ト(Falcon 303,Oxnard,CA)中において増殖させ、10%熱失活ウシ胎児血清(
FCS)(Biolabs,Jerusalem,Israel)を補充したダルベッコ改良イーグル培
地(DMEM;Gibco,Grand Island,NY)からなる増殖培地中で1週間継代に
よって維持した。14M1.4マクロファージ(Ziporiら,1984)は、M-CSFをソ
ースとして、20%L-細胞調整培地を添加した上述の培地中で増殖させた。MP
C-11(Laskov & Scharff.1970),SP-2.NSO.X-24,X-63 およびP3.
1(Kohler & Milstein,1976)形質細胞腫細胞系は、10%FCSを含有するRosw
ell Park Memorial Institute(RPMI)1640(Gibco)中で増殖させた。AB
LS-8(Sklarら,1975)およびAVRij-1(Zipori & Bol,1978)プレ-Bリン
パ腫細胞およにTリンパ腫BW-5147(Hyman & Stallings,1974),骨髄腫瘍細
胞系WEHI-265.1(Warnerら,1965).F4Nフレンド赤白血球細胞系および
Pu-5-IRマクロファージ細胞系(Ralphら.1976)はすべて、10%FCSおよ
び50mMβ-メルカプトエタノール含有RPMI1640中で増殖させた。B9B細胞
ハイブリドーマ細胞(Helleら,1988)は、10%FCS.50mMβ-メルカプトエ
タノールおよび10 IU/mlのヒト組換えIL-6含有RPMI1640中で増殖させた。
M1-S6(マウス骨髄性単球白血病M1細胞系;Ichikawa,1969)は10%FCS補
充RPMI1640中で増殖させた。HepG2肝癌細胞は8%FCS補充RPMI164
0中で増殖させた。すべての細胞は空気中10%CO2の加湿雰囲気下に37℃でイン
キュベートした。B9細胞は例外として空気中5%CO2中でインキュベートした
。
(ii)サイトカインの生物学的アッセイ:レストリクチンPはMPC-11形質
細胞腫またはB9ハイブリドーマ細胞のいずれかを用いてモニターした。MPC-
11細胞は、7.5%FCS補充RPMI中、レストリクチンP含有サンプルの希釈
系列または緩衝液(20mM Tris-HCl pH7.8または20mM Hepes pH7.8
)の存在下96-ウエルマイクロタイタープレート(100 ml/ウエル)(Coster,Cam
bridge.MA)に8×103細胞/ml で接種した。生存細胞数はインキュベーショ
ンの4日後に、ミトコンドリア活性によって細胞の生存度を測定する3-(4,5-ジ
メチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)
比色アッセイを用いて測定した。MTT(Sigma)(10μl/100μl培地;PBS
中5mg/ml の保存溶液)を各ウエルに加え、プレートを37℃で3時間インキュベ
ートした。インキュベーション後に150μlの酸-イソプロパノールを添加した。
光学密度(OD)をついで固相酵素免疫アッセイ(ELISA)リーダー(Tite
rtek Twinreader;FLAB,Helsinki.Finland)により、試験波長570mm,基準波
長630mmで測定した。活性の1単位は上述の条件下に対照に対して50%増殖阻害
を引き起こすタンパク質の量と指定した。このアッセイはB9細胞を用いた場合
も、B9ハイブリドーマについて上述した培養条件以外は本質的に同じである。
後者はIL-6およびIL-11レベルの滴定にも使用した。略述すればB9細胞(5
×103細胞/200μl)を試験サンプルおよび組換えヒトIL-6およびIL-11対照
の存在下に96-ウエルプレート中で培養した。64 m時間インキュベートしたのち
、細胞を3H-チミジン(Rotem Industries,Israel,1μCi/mlウエル)と16時間
パルスした。それぞれヒト組換えIL-6およびIL-11の標準曲線に関連させて
IU IL-6およびIL-11を決定した。
(iii)サイトカインおよび相当する中和抗体:使用したTGF-βに対する抗
体はTGF-αおよびTGF-βの両者を中和するウサギ抗-ネイティブブタ血小
板TGF-β1とした。これら抗体はBritish Biotechnology Ltd.(Abingdon,Ox
on,England)から購入した。ヒトTGF-β1も同じソースから入手した。ハム
スター抗-マウスINF-γ抗体は Genzyme Corporation(Boston,MA)から入手
した。IL-3 は Peprotec から入手された。組換えヒト、およびマウスIL-6
に対するモノクローナルラット抗-マウス中和抗体は、Genzyme Corporation(Bo
ston,MA)から購入した。組換え,N末端切断換ヒトIL-6(ムテニン)および
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は Pharmacia Biocenter(Nerviano,I
taly)から恵与された。粗製の濃縮マウスIL-6は Weizman InstituteのJ.Lote
m博士から恵与された。マウスのIL-6はLudwig Institute for CancerResearch
.BrusselsのJ.Van Snizk博士から入手した。ヤギ抗-M-CSF中和抗血清はAl
bert Einstein UniversityのR.E.Stanley博士から恵与された。
組換えヒトIL-1α,IL-2,IL-4およびIL-7,ならびに組換えヒトIL-1
0,IL-11およびPDGFは Genzyme Corporation(Boston,MA)から購入した
。ヒトG-CSFはImmunex Corporation,SeattleのS.Gillis博士によって恵与
された。組換えウシアクチビンAはInnogenetics(belgiunl)から購入した。
(iv)IL-6の標識:IL-6は既報(Chenら,1991)のようにして標識した。
100μlの緩衝液(100mMリン酸カリウム.pH=7.0.100mM酢酸ナトリウム
.300mM食塩)中組換え(r)-マウスIL-6(10μg)またはr-ヒトIL-6ムテ
イン(10μg)を4℃で2分間1mCiの125Iとプレインキュベートした20μlの
クロラミンT(0.5mg/mlPBS,リン酸緩衝食塩溶液.Ca++.Mg++を含まない
)に加えた。45秒後にメタ重硫酸ナトリウム(20μl,1mg/ml PBS)を加え、つ
いで直ちに100μlのKI(10mg/mlPBS)を加えた。0.25%ゼラチンならびに0.02
%のナトリウムアジド含有PBS中[125I]-IL-6を中等度コースのSephadex G
-25(Pharmacia)を用いてヨードを含まない型に分離した。
(v)B9細胞における競合結合:r-Mu-[125I]-IL-6(47,000 cpm/500μ
l)は2×106B9細胞と結合緩衝液(RPMI,20mM Hepes.8%ウシ胎児血清
.0.02%ナトリウムアジド)中氷上で1時間インキュベートした。r-Hu-[125
I]-IL-6(210.000cpm/500μl)は3×106B9細胞と0.1%ナトリウムアジドの
結合緩衝液中37℃で30分間インキュベートした。B9細胞はアッセイ前24時間I
L-6を含まない培地中に24時間維持し、使用前に結合緩衝液で3回洗浄した。使
用したr-Mu-[125I]-IL-6またはr-Hu-[125I]-IL-6の量は飽和結合を与
えた量の30〜40%であった。これらの条件下には2,070±530の高親和性結合部位
が存在し、Mu-IL-6およびHu-IL-6はLIGANDプログラム(Munson & R
odbard,1980)により測定してそれぞれ見掛けのKd5.5×10-10および1.1×10-10
で結合した。特異的高親和性結合は様々な濃度の粗製濃縮マウスIL-6,r-
Hu-IL-6ムテイン,部分精製または高度精製レストリクチンPと指示したよう
に競合した。競合結合試験の結果は過剰倍数の関数としてプロットし、B9細胞
上で1単位のレストリクチンPは1単位のIL-6を50%阻害する。
(vi)タンパク質の精製:MAB-2.1調整培地(粗製材料:1400ml.3200mgタ
ンパク質,レストリクチンP2.5×106単位)を既報(Kadouriら.1992)のよう
にタンパク質を含まないバイオリアクターシステム中で調製した。90mlのアリコ
ートを製造用Q Sepharoseカラム(100ml,XK50)にFPLCシステム(UVM-I
I検出装置,Pharmacia LKB,Sweden 使用)を用いて負荷した。負荷したカラム
を1200mlの初期緩衝液(20mM Tris-Cl pH7.8)により流速8ml/分で洗浄
した。レストリクチンPは、同じ流速で初期緩衝液中0.05M食塩400mlで溶出し
た。タンパク質の溶出はその280mmの吸収で追跡した。塩溶出物質を滅菌ろ過し
、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC,システムはSP8700/SP
8750ポンプ,Spectra Physics,CA,および441型検出器,Water Associates,MA
から構成)を用い濃縮した。各サンプル(450〜500ml)をAquapore RP-300カラ
ム(7μ,4.6×100mm+4.6×30mmプレカラム,Applied Biosystems,CA)に流速
1〜3ml/分で負荷した。負荷したカラムを30mlのアセトニトリル(ACN,5%
)およびトリフルオロ酢酸(TFA,0.1%)水溶液で洗浄した。タンパク質は
ついで3段階勾配により、ACN水溶液中 0.1%TFA,流速0.5ml/分;5〜35
%ACN/10分ついで35%ACN/20分の平坦段階、最後に35〜80%ACN/20分
にて溶出した。1ml の分画を収集した。タンパク質の溶出はその214mmの吸収で
追跡した。タンパク質含量はBradford試薬(Bio-Rad,Munich)で測定し、レス
トリクチンPの含量は上述のようにしてアッセイした。分画をSavant SpeedVac
遠心分離装置で真空乾燥し、−20℃に保持した。レストリクチンP活性を示す分
画を20mM Hepes(pH7.8)に溶解し、プールし、遠心分離し、ろ過し、各5m
l中10mgのバッチでSuperdex75ゲルろ過カラム(20/60Pharmacia)に負荷した。3
60mlの2×PBSで流速2ml/分/チューブでカラムを洗浄した。溶出パターンは
280mmで追跡した。タンパク質およびレストリクチンPの含量は上述のように測
定した。タンパク質サンプルはさらにRP-HPLCで精製した。ゲルろ過工程
からの生物活性分画(3.0〜3.5mgタンパク質)をプールし、RP-300カラム(7
μ.4.6×100mm)に負荷し、カラムを5%ACN水溶液中0.1%TFAにより流
速0.5ml/分で洗浄した。ついでタンパク質をACN水溶液中0.1%TFAの多段
直線勾配に
よって溶出した。勾配は5〜25%ACN/5分、ついで25〜40%ACN/30分、40
〜80%ACN/2分、80%ACNでの平坦段階とした。毎分0.5mlの分画を収集し
た。タンパク質の溶出はその214mmの吸収で追跡した。生物活性分画をプールし
、再クロマトグラフィー(RP-HPLC)で以下のわずかな改変を除き本質的
に同一の条件で真空乾燥した。タンパク質ピークの溶出が始まった時点で(通常
約30%ACN)勾配プログラムを「ホールド」した。カラムからピークが完全溶
出した時点で(約5〜8分以内)元の勾配プログラムを再開した。生物活性分画
を真空乾燥し−20℃に保持した。様々なタンパク質分画をMini-Protein IIゲル
装置(Bio-Rad Laboratories,CA)を用いてポリアクリルアミドゲル電気泳動(
PAGE)分析した。銀染色は Quick-Silver キット(Amersham,UK)または S
ilver Stain Plus Kit(Bio-Rad Laboratories,CA)により行った。クーマッシ
ーブリリアント染色はServa blueG Stainを用いて実施した。
例1.間質細胞株MBA−2.1の調製培地中のレストリクチン−P活性の標的 細の範囲
表1に示す種々の細胞株は、材料と方法のセクション(i)に示すように増殖
させた。細胞は、96−ウェルマイクロタイタープレート中で400細胞/10
0μl/ウエルで接種した。MBA−2.1細胞からの部分的に精製した調整培
地を、記載した濃度で加えた。培養物を4日間インキュベートし、MTT比色測
定法で生存活性を測定した。数値は、三重測定の平均±SDである。
表1に示すように、MBA−2.1細胞からの調整培地で検出したレストリク
チン−Pの阻害活性は、形質様腫瘍細胞株に特異的であった。異なる造血細胞系
統および異なる成熟段階を示す種々の他の細胞株は、この因子によりほんのわず
かに阻害されたかまたは全く影響を受けなかった。レストリクチン−P活性が、
造血細胞に影響を与えることが知られているサイトカインの1つに起因する可能
性を排除するために、我々は、レストリクチン−P様活性を有する可能性のある
因子について探索した。IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、
IL−7、IL−10、IL−11、M−CSF、G−CSF、TGFβ1、P
GDF、bFGF、IFN−γ、およびLIFを、ある濃度範囲について試験し
た。これらのサイトカインは、レストリクチン−Pに対して感受性が高いMPC
−11形質細胞腫(ジポリ(Zipori)ら,1986)の増殖を阻害する能力を持
たなかった。さらに、TGFβ1およびβ2、TNF、IL−6、IFN−γお
よびM−CSFに対する中和抗体は、MBA−2.1細胞の調整培地中のレスト
リクチン−P様活性を低下させなかった(結果は示していない)。
形質様細胞の阻害が介在される機構のヒントを得るために、上記調整培地を使
用した。MBA−2.1細胞調整培地は、後述するようにMPC−11形質細胞
腫の増殖を阻害し、またこれは、B9細胞に及ぼすIL−6の増殖促進作用を妨
害した。
例2.レストリクチン−Pの精製
これらの2つの機能が、同じ分子により媒介されるかどうかを決定するために
、レストリクチン−Pを均一になるまで精製することが必要であった。従って我
々は、タンパク質を全く含まない条件下で細胞の調整培地によりレストリクチン
−P活性が観察されるバイオリアクター製造システムを構築した(カドウリ(Ka
douri)ら,1992)。調整培地の600リットルのバッチを、透析濾過によ
り濃縮し、次にアミコン(Amicon)限外濾過、そして次に自動FPLCカラムを
使用して分画した。分画には、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過およ
び最後に均一になるまでの2工程の逆相HPLCによる精製を使用した。
間質細胞調整培地からのレストリクチン−Pの精製は、図1A〜Dにグラフで
示す。さらなる詳細は材料と方法、セクション(vi)に記載してある。Q−セフ
ァロース陰イオン交換クロマトグラフィー(図1A)では、90ml中に1.5×
105単位の粗レストリクチン−Pを含有するMBA−2.1細胞株の処理した
調整培地を、Q−セファロースの分取用カラム(100ml、XK50)にのせた
。カラムを、流速8ml/分で初期緩衝液(20mMトリス−塩酸、pH7.8)1
200mlで洗浄し、次に400mlの初期緩衝液中0.05M NaClで溶出し
た。レストリクチン−P活性を有する画分(160〜220分で溶出)をプール
し、脱塩し、RP−HPLCで濃縮した。
スーパーデックス(Superdex)75ゲル濾過(図1B)では、Q−セファロー
スカラムからのレストリクチン−Pを含有する画分を、20mMのヘペス(pH7
.5)に溶解し、スーパーデックス(Superdcx)75ゲル濾過カラム(20/6
0、ファルマシア(Pharmacia))にのせた(5ml中タンパク質10mg)。カラ
ムを360mlの2×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で流速2ml/分で洗浄し
た。8mlの画分を集めた。生物活性のある画分(102〜106分)をプールし
た。
C−3逆相HPLC−I(RP−HPLC I、図1C)では、スーパーデッ
クス(Superdex)75カラムからの生物活性のある画分を、アクアポア(Aquapo
re)RP−300カラム(7m、4.6×100mm+4.6×30mmのプレカラ
ム)に、流速1〜3ml/分でのせた。吸着されたタンパク質を、0.1%TFA
中のACN水溶液の多段階勾配で流速0.5ml/分、5〜30%ACN/5分、
次に30〜45%ACN/25分、次に45〜80%ACN/2分、そして最後
に80%ACN/30のアイソクラチック工程により、カラムから溶出した。1
mlの画分を集めた。レストリクチン−P生物活性は、31〜35分に溶出し、こ
れを集めた。
C−8逆相HPLC−II(RP−HPLC II、図1D)では、部分的に精製
したレストリクチン−Pを、前の工程と基本的に同じ条件下で再度クロマトグラ
フィー(RP−HPLC)にかけたが、タンパク質ピークが溶出し始めた後は(
通常、約36%ACN)勾配プログラムを「ホールド」にした。タンパク質のピ
ークが完全にカラムから溶出した後(約5〜8分以内)、本来の勾配プログラム
を再開した。生物活性を有する画分を33〜34分に集めた。
図1A〜Dにおいて、破線は280nm(図1Aと1B)または214nm(図1
Cと1D)における吸収を示し、白丸と太線は、MPC−11測定法で測定した
レストリクチン−Pの生物活性を示し、細線はアセトニトリルのパーセントを示
す(図1Cと1D)。
図1から明らかなように、最後の段階で、レストリクチン−Pの生物活性(す
なわち、形質細胞腫細胞株MPC−11の増殖を阻害する能力)に一致するタン
パク質の単一のピークが得られた。
この高度に精製されたレストリクチン−Pを以下のようにSDS−PAGEで
解析した。活性画分(RP−HPLC II、図1D)からのアリコートを、還元
条件下でSDS−ポリアクリルアミドゲルにのせた(レーン1)。銀染色により
タンパク質のバンドを目視観察した(レーン2)。分子量マーカーは、カーボニ
ックアンヒドラーゼ31kDa、トリプシンインヒビター21.5kDa、リゾチーム
14.4kDa、およびアプロチニン6.5kDaである。
図2Bに示すように、還元条件下でのこの生成物のSDS−PAGE解析は、
15kDaで単一のタンパク質バンドを示した。この精製されたペプチドのN−末
端の配列を決定し、図2Aに示すように、最初の35残基は、インヒビンのβA
サブユニットの前駆体のもの(これは、15kDaのポリペプチドを生成し(メー
ソン(Mason)ら,1985:ロバートソン(Robertson)ら,1992)、この
サブユニットのダイマーはアクチビンAである)と同じであった。
例3.精製されたレストリクチン−Pと組換えアクチビンAによるMPC−11 形質細胞腫細胞増殖の阻害
レストリクチン−P(三角)、アクチビンA(白丸)または対照増殖培地(×
)の連続希釈物とともに、10%FCSを含有する100μlのRPMI中で、
96ウェルファルコン(Falcon)マイクロタイタープレートに細胞を接種した(
4×102/ウェル)。細胞を4日間インキュベートし、その生存活性をMTT
測定法で推定した。棒線は、二重測定の平均±SDを示す。図3から、両方の因
子とも、MPC−11細胞の増殖を抑制する同等の能力を有することが明らかで
ある。これは、例2の結果と合わせると、レストリクチン−PがアクチビンAと
同一であることを示唆する。
例4.レストリクチン−Pは、IL−6とIL−11に誘発されるB9細胞の増 殖に拮抗する
レストリクチン−P/間質性アクチビンAが形質様細胞増殖を阻害する機構を
調べるために、我々は、この作用が、可逆的な細胞性塞栓を介するかまたは細胞
破壊を伴う機構が介するかを調べた。非精製型のレストリクチン−Pは、アポト
シスに関連するイオン性変化を誘発するようであった(マリク(Malik)ら,1
992)。この細胞死滅の様式は、その特異的増殖因子の欠如した造血細胞で起
きることが知られている。B9ハイブリドーマは、その増殖がIL−6に依存し
、従ってレストリクチン−Pが増殖因子(IL−6)の作用を妨害して増殖を停
止させる可能性を調べるためにこれを使用した。
B9細胞を、5%FCS(=増殖因子)補足RPMIで3回洗浄して微量のI
L−6を除去し、増殖培地中で一晩インキュベートした。次にこれらを増殖培地
で洗浄(×3)し、記載した希釈率の組換えヒトIL−6(図4A、白抜きの記
号)または同じIL−6希釈物と1.5単位/ウェルの精製レストリクチン−P
(図4A、塗りつぶした記号)を補足した増殖培地中で、96マイクロタイター
ウェルプレートに接種した(5×103細胞/200μl/ウェル)。組換えヒト
IL−11で同様の実験を行った。B9細胞に、このサイトカインの連続的希釈
物(図4B、白抜きの記号)またはIL−11と0.018単位/ウェルのレス
トリクチン−P(図4B、塗りつぶした記号)を接種した。IL−11はB9細
胞をあまり刺激しないため、この低濃度のレストリクチン−Pを使用すると、完
全な増殖阻害を引き起こすのに比較的低濃度のレストリクチン−Pが充分であっ
た。細胞を48時間インキュベートし、次に3H−チミジン(1μCi/ウェル)
のパルスを12時間かけた。数値は、三重測定の平均±SDを示す。
すなわち図4Aに示すように、0.1IU/ウェルのIL−6により多数のB9
細胞の増殖が誘発され、上昇する濃度のこの精製サイトカインを添加するとわず
かな増殖刺激が観察されたのみである。0.01〜0.1IU/ウエルのIL−6
で刺激したB9細胞培養物にレストリクチン−Pを添加すると、ほぼ完全な増殖
阻害が起きた。この阻害作用は、IL−6の濃度を上昇させると徐々に低下し、
200IU/mlのIL−6でほぼなくなった(図4A)。
IL−11は、形質様細胞の追加の刺激物質である(バーガーとグラマザキ(
Burger and Gramatzaki).1993)。図4Bに示すように、レストリクチン
−Pはまた、IL−11刺激B9細胞の増殖を阻害し、この阻害は、IL−11
の濃度を上昇させることにより競合を受けた。
例5.レストリクチン−PはIL−6のB9細胞への結合を妨害しない
前述のように、レストリクチン−PはIL−6およびIL−11の増殖刺激作
用を妨害し、高濃度のこれらのサイトカインは、レストリクチン−Pの作用に打
ち勝った。従って、増殖因子IL−6とIL−11およびレストリクチン−Pは
、シグナル化経路の生成に使用されるいくつかの標的機構に対して競合している
ようである。レストリクチン−P作用の標的分子の候補は、IL−6受容体複合
体であった。我々は、B9細胞の表面のその受容体への結合について放射能標識
IL−6と競合するレストリクチン−Pの能力を試験することにより、レストリ
クチン−Pが受容体アンタゴニストである可能性を試験した。
使用したr−Mu−[125I]−IL−6またはr−Hu−[125I]−IL−
6ムテイン(Muteine)の量は、飽和結合を与える量の30〜40%であった。
B9細胞細胞は、結合測定法の24時間前に増殖培地中でIL−6から分離した
。これらの条件下で、細胞は2070±530の高親和性結合部位を有し、r−
Mu−IL−6およびr−Hu−IL−6ともに高親和性で結合した(見かけの
Kdはそれぞれ5.5×10-10および1.1×10-10M)。
図5Aは、変化する濃度の粗濃縮マウスIL−6(白抜きの記号)または部分
精製したレストリクチン−P(塗りつぶした記号)と競合する一定量のr−Mu
−[126I]−IL−6の特異的高親和性結合を示す。結合したr−Mu−IL
−6の全平均は、1120±48cpmであった。図5Bは、一定量のr−Hu−
[125I]−IL−6ムテイン(白抜きの記号)または精製レストリクチン−P
(塗りつぶした記号)の特異的高親和性結合を示す。結合したr−Hu−IL−
6の全平均は、2350±68cpmであり、これは200倍過剰の粗濃縮マウス
IL−6と123±30に競合Lた。競合結合実験の結果を、過剰倍数の関数と
してプロットする(ここで、1単位のレストジクチン−Pは、B9細胞上で1単
位のIL−6を50%阻害する)。誤差棒は、多重測定の標準偏差を示す。
図5に示すように、「冷」IL−6は、予想通りその受容体への放射能標識1
L−6の結合と競合した。一方、レストリクチン−Pは、IL−6の増殖刺激作
用を完全に阻害する濃度で、その受容体への放射能標識IL−6の結合を低下さ
せなかった。すなわち、レストリクチン−Pは、リガンド結合を妨害しないよう
である。
例6.レストリクチン−Pは、急性相タンパク質であるα−酸性糖タンパク質( AGP)とハプトグロビン(HG)のIL−6誘発性分泌を妨害する
HepG2肝癌は、IL−6の影響を受けて急性相タンパク質を放出する。H
epG2細胞をコンフルエンスになるまで増殖させ、100単位/mlのIL−6
または312単位/mlのレストリクチン−Pとともに等量のIL−6で刺激した
。24時間目に調整培地を集め、PAGE(AGPとHGについて、それぞれ1
0%および7%ゲル)を行い、急性相タンパク質について対応する抗体(シグマ
(Sigma)(イスラエル)から購入した)を使用してウェスタンブロッティング
法により試験した。図6に示すように、HepG2細胞中でIL−6により誘発
されたAGPとHGの分泌は、レストリクチン−Pの添加により顕著に低下した
。
例7.STAT活性化へのレストリクチン−Pの作用
ジェーナスキナーゼ(Janus Kinases)(JAK)は、IL−6受容体と会合
する。これらは、リガンド結合を、転写のシグナルトランスデューサーおよびア
クチベーター(STAT)と呼ばれる転写因子のチロシンリン酸化と共役させる
。IL−6シグナル生成に関与するJAK/STAT経路中のレストリクチン−
Pの妨害の可能性を、HepG2細胞で試験した。HepG2細胞を、図7に示
すように、ヒト組換えIL−6(10単位/ml)およびレストリクチン−Pとと
もにインキュベートした。IL−6とレストリクチン−Pは同時に加えるか、ま
たはIL−6添加の30分または16時間前にレストリクチン−Pを加えた。培
地へのIL−6添加の15分後、細胞を採取し、ここから標準的方法により核抽
出物を調製した。次に、c−fosプロモーターsis−誘発性成分(SIE)
をカバーする32P−標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して、ゲル遅延測定
法により10μgのタンパク質を解析した。結果は図7に示し、ここにStat
3およびStat1αホモダイマーまたはStat3/Stat1αヘテロダイ
マーを含有するStat1α DNA−タンパク質複合体の位置を示してあり、
He
pG2肝癌細胞中でレストリクチン−PはJAK/STAT経路を妨害せず、S
TATタンパク質活性化をわずかに上昇させることを証明している。
例8.レストリクチン−Pは M1骨髄細胞中のIL−6強化ミトコンドリア活 性を妨害する
表2に示すように、レストリクチン−Pおよび/またはIL−6の添加ととも
に、マイクロタイタープレートに5×104/mlでM1細胞を接種した。レスト
リクチン−Pは130単位/mlで添加し、IL−6は50単位/ウェルで添加し
た。これらの条件下で、培養物をMTT比色測定法(材料と方法、セクション(
ii))で試験した時、3日目に細胞数の真の変化は起きなかった。示したデータ
は、実施した3つの実験の1つからのものであるが、いずれの実験も同様の結果
を示した。実験は、レストリクチン−Pが、M1骨髄芽球のIL−6介在ミトコ
ンドリア活性を妨害することを示す。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),IL,JP,US