JPH1137993A - ガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法 - Google Patents

ガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法

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JPH1137993A
JPH1137993A JP9197100A JP19710097A JPH1137993A JP H1137993 A JPH1137993 A JP H1137993A JP 9197100 A JP9197100 A JP 9197100A JP 19710097 A JP19710097 A JP 19710097A JP H1137993 A JPH1137993 A JP H1137993A
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JP
Japan
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gas
data
power device
filled power
organic substance
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JP9197100A
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English (en)
Inventor
Tetsushi Tanda
哲史 反田
Shintarou Minami
伸太朗 南
Hiroshi Adachi
廣士 足達
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガス封入電力機器内部の材料に特殊な物質を
混入することなく、ガス封入電力機器内部の構成材料の
熱、放電、腐食もしくは摩擦による劣化、または寿命を
判断できるガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法
を得る。 【解決手段】 ガス封入電力機器内のガス中に存在する
有機物質を採取して得た測定データ(第1のデータ)
と、ガス封入電力機器内部の各構成材料から熱、放電、
腐食または摩擦による劣化により発生する有機物質を測
定して得た測定データ(第2のデータ)とを照合し、第
1のデータにおける第2のデータの有無からガス封入電
力機器内部の構成材料における上記劣化を検知する。ま
た、第1のデータにおいて、時間により増加する第2の
データを定期的に測定して寿命を判断する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発電設備や変電設
備等で使用されるガス封入電力機器、例えばタービン発
電機やガストランスやGISなどの内部のガスによっ
て、上記ガス封入電力機器の内部で使用されている材料
の診断を行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ガス封入電力機器内のガスを調べ
ることによって、上記ガス封入電力機器の内部で使用さ
れている材料の診断を行う方法としては、大別して2つ
の方法が知られている。
【0003】一つの方法は、例えば刊行物1{IEEE
Conference Paper,71C,p15
4(1971)}に示されていように、米国のEnvi
roment―One社が製造し、「Generato
r−Conditon−Monitor」という名称の
装置として、すでに市販され実用化されている。
【0004】上記「Generator―Condit
on―Monitor」とIon−Chamber−D
etectorとは、動作原理と材料の診断の方法が同
様であり、図6は一般的なIon−Chamber−D
etectorの構成図である。図6において、7はガ
ス封入電力機器内に充填しているガスを導入するための
電力機器配管であり、上記刊行物1ではガスとして水素
ガスを用いている。9は装置容器、10は装置容器9内
に導入したガスにα線を照射するためのα線源、11は
電圧を加えるための電極、12は電極11と極性が逆の
電圧を加えるための電極、13は電極12と電位0Vの
装置容器9の間の電流を測定するための電流計、8はガ
スの出口である。
【0005】次に図6に示した装置の動作と作用につい
て説明する。即ち、ガス封入電力機器内に充填されてい
る水素ガスの一部は電力機器配管7に導かれ、続いて装
置容器9に導入される。装置容器9に導入された水素ガ
スは、α線源10より照射されるα線によりイオン化さ
れた後、電極11と電極12の間を通ってガスの出口8
より出る。ガス封入電力機器内の水素ガスが有機物質を
含まない場合、イオン化された水素分子は軽く移動し易
いため、容易に電極11と電極12の間の電界によって
移動して電極12に到達し、ある一定の電流が電流計1
3に検出される。一方、もしガス封入電力機器内の水素
ガスが有機物質を含む場合は、イオン化された有機物質
は重く移動しにくいため、電極12に到達する割合が少
なく、有機物質を含まない場合に比べて小さな電流が電
流計13で検出されることになる。つまり、ガス封入電
力機器内のガスが有機物質を含まない場合には電流計1
3にある程度の電流が流れるが、ガス封入電力機器内ガ
スが有機物質を含む場合は電流計13で検出される電流
値が低下することになる。また、装置容器9に入ってき
た有機物質の量によって低下する電流値が異なり、有機
物質の量が多いほど電流値の低下量が大きくなり、電流
値は0アンペアに近づく。
【0006】次に図6に示したIon−Chamber
−Detectorを用いた従来の診断の方法について
説明する。まず、ガス封入電力機器が正常に運転してい
ると推定される時に、電流計13により電流値を検出し
ておき、この電流値を正常時の電流レベルとして確認し
ておく。常時または必要に応じて、ガス導入配管7から
ガスを導入し、電流を検出する。この時電流値が前に確
認した正常レベルより低下していた場合、ガス封入電力
機器内ガス中の有機物質の総量が正常時より増加したと
推定する。ガス中の有機物質の量が増加したということ
は、ガス封入電力機器内の有機材料が熱分解している可
能性があるので、検出される電流値の低下量、即ちガス
中の有機物質の総量を監視しておけば、ガス封入電力機
器内の材料が過熱しているかどうかの診断を行うことが
できる。要するに、従来の診断の方法の一つは、ガス封
入電力機器内のガス中の有機物質の総量を監視してお
き、ガス封入電力機器内で使用されている有機材料の過
熱の有無を推定する方法である。
【0007】従来の方法の二つめは、刊行物2{IEE
E Trans.,PAS―100,4983(198
1)}および刊行物3{IEEE Trans.,PA
S−95,879(1976)}に示されるもので、ガ
ス封入電力機器内のガスをフィルターまたは吸着剤に通
過させた後、フィルターまたは吸着剤に捕えられた有機
物質をガスクロマトグラフにより分析し、ガス封入電力
機器内のガス中の有機物質を特定する。また、刊行物2
においては、ガス封入電力機器内部の構成材料に、この
材料が過熱された時に放出する物質を予め混入してお
き、上記のようにガスクロマトグラフによって検出され
たガス中の物質が、上記混入した物質と同一かどうかを
調べることによって、ガス封入電力機器内部の構成材料
の過熱の有無を診断している。また、刊行物3では、ガ
ス封入電力機器内の有機物質をガスクロマトグラフによ
って特定することで、過熱が生じているかどうかを診断
することができるとしているが、診断の具体的な方法や
過熱と有機物質との関係についての記述はない。
【0008】以上要するに、従来の診断の方法として
は、一つにはガス封入電力機器内のガス中の有機物質の
総量を監視し、ガス封入電力機器内部で使用されている
有機材料の過熱の有無を推定する方法があり、もう一つ
にはガス封入電力機器内のガス中の有機物質を採取して
ガスクロマトグラフによって特定し、ガス封入電力機器
内部で使用されている有機材料の過熱の有無を推定する
方法がある。以上、従来例としてタービン発電機の診断
方法を示したが、その他のガス封入電力機器の報告に関
しても、原理的にこの従来例と何ら変わるところはな
い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のガス封入電
力機器内の材料の診断の方法の一つは、ガス封入電力機
器内のガス中の有機物質の総量を検出するので、ガス中
に存在する多くの有機物質を弁別することが不可能であ
る。このため、ガス中に材料と関係のない有機物質即ち
潤滑用オイルなどが混入していてガス封入電力機器内に
は何ら異常が生じていない時でも、過熱が生じていると
診断する場合があった。さらに、もし過熱が生じている
ことが判断されたとしても、過熱が生じている材料を特
定することが不可能であるという問題点があった。
【0010】上記従来のもう一つの従来の診断の方法で
は、ガスクロマトグラフによりガス封入電力機器内のガ
ス中の有機物質を弁別することが可能であるが、どのよ
うな物質を材料の診断の判断基準として用いれば適当で
あるか、または具体的にどのような手順、方法で診断を
行えば適当であるか、という情報が欠如しているため、
実際の診断を行うことが非常に困難であるという問題点
があった。
【0011】また、上記従来の診断の方法では、予めガ
ス封入電力機器内部の構成材料に、過熱発生し易い物質
を混入しておくことにより、過熱の有無の診断と過熱発
生が生じている材料の特定が可能であるが、この方法で
は、ガス封入電力機器を製造する時に予め材料中に特殊
な材料を混入しておくことが必須であり、材料製造の際
に通常以上の労力とコストがかかるという問題があっ
た。また、この方法の対象は、構成材料に特殊な物質を
混入しておいたガス封入電力機器に限定され、以前に製
造したガス封入電力機器で材料に特殊な物質を混入して
いない場合には、全く効果が得られないという問題があ
った。実際に、例えば日本で製造されたタービン発電機
のほとんどが、このような特殊な物質を混入していない
ため、現在の日本で運転中のガス封入電力機器でこの診
断が有効な例は極めて限られている。
【0012】さらに、例えばタービン発電機の診断に用
いた上記従来の診断方法は、すべて材料の過熱の有無の
みを検知するものであって、過熱には至らない発電機運
転温度程度での熱劣化や、放電、腐食または摩擦による
劣化を診断することは不可能であった。また、タービン
発電機以外のガス封入電力機器の場合では、過熱、熱劣
化または放電等上記各種原因による劣化を診断すること
は不可能であった。
【0013】本発明は、かかる課題を解決するためにな
されたもので、ガス封入電力機器内部の材料に特殊な物
質を混入することなく、ガス封入電力機器内部の構成材
料の熱、放電、腐食または摩擦による劣化を検知するこ
とができ、また劣化の程度から寿命を判断できるガス封
入電力機器内部の構成材料の診断方法を得ることを目的
とする。また、劣化が生じている材料を特定することに
より劣化場所を特定でき、また劣化の原因を特定でき、
迅速かつ適切な対応が可能となるガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1のガス
封入電力機器内部の構成材料の診断方法は、ガス封入電
力機器内のガス中に存在する有機物質の第1のデータ
と、予め測定した熱、放電、腐食または摩擦により上記
ガス封入電力機器内部の各構成材料から発生する有機物
質の第2のデータとを照合し、上記第1のデータにおけ
る上記第2のデータの有無または上記第1のデータにお
ける上記第2のデータの濃度の時間変化を検出する方法
である。
【0015】本発明に係る第2のガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法は、ガス封入電力機器内のガス中
に存在する有機物質の第1のデータと、予め測定した
熱、放電、腐食または摩擦による劣化により上記ガス封
入電力機器内部の各構成材料から発生する有機物質の第
2のデータとを照合し、劣化が生じている材料の特定ま
たは劣化の原因の特定をおこなう方法である。
【0016】本発明に係る第3のガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法は、上記第1または第2のガス封
入電力機器内部の構成材料の診断方法において、第1の
データおよび第2のデータがガスクロマトグラフィー、
赤外線吸収、反射赤外吸収、質量分析またはX線光電子
分光のデータである方法である。
【0017】本発明に係る第4のガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法は、上記第1ないし第3のいずれ
かのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法におい
て、照合を計算機により行う方法である。
【0018】本発明に係る第5のガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法は、上記第1ないし第4のいずれ
かのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法におい
て、分子量92以上の芳香族炭化水素を照合時の判定基
準として利用する方法である。
【0019】本発明に係る第6のガス封入電力機器内部
の構成材料の診断方法は、上記第1ないし第5のいずれ
かのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法におい
て、ガス封入電力機器から引き出したガスを吸着剤に通
過させた後吸着剤に蓄えられた有機物質を測定すること
により、第1のデータとする方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は本発明のガス封入電力機器
内部の構成材料の診断方法における診断の手順を示した
流れ図である。まず、ガス封入電力機器内のガス中に存
在する有機物質を採取し、適当な測定手段により得た測
定データを第1のデータとする。一方、ガス封入電力機
器内部の構成材料と同じか同種の材料から熱、放電、腐
食または摩擦による劣化により発生する有機物質を測定
して得た測定データを第2のデータとし、予めガス封入
電力機器内部の各構成材料について各々第2のデータを
得、これら第2のデータ群をデータベースとしておく。
次に、第1のデータと第2のデータを照合し、第1のデ
ータに第2のデータがあれば、ガス封入電力機器内部の
構成材料において熱、放電、腐食または摩擦による劣化
が生じているということである。また、第1のデータに
おいて、第2のデータが時間により変化(増加)してお
ればこれが劣化の指標となり、この第2のデータを定期
的に測定して濃度の推移を観察し、劣化の程度から材料
の寿命を判断することができる。
【0021】なお、図1に示した診断の手段を示した流
れ図ではガス封入電力機器内のガス中に存在する有機物
質を特定することなく第2のデータと照合したが、以下
に示す実施例のように有機物質を特定しても劣化の進行
状態を正確に診断できるようになるため好ましい。ま
た、上記診断方法によれば、ガス封入電力機器内部の構
成材料に特殊な物質を混入する必要がないのは言うまで
もない。また、本発明のガス封入電力機器内部の構成材
料の診断方法を上記各種劣化を診断する場合に基づいて
説明したが、過熱等他の原因の場合も、過熱等他の原因
による各構成材料のデータベースを予め測定しておけ
ば、上記劣化診断と同様に診断できる。
【0022】図2は本発明のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法における診断の手順を示した流れ図で
ある。まず、上記図1に示した診断方法と同様にして第
1のデータと、第2のデータ群(=データベース)を得
る。次に、第1のデータと第2のデータを照合し、第1
のデータに第2のデータがあれば、ガス封入電力機器内
部の構成材料において熱、放電、腐食または摩擦による
劣化が生じているということである。また、第1のデー
タに第2のデータがあり、この第2のデータがどの材料
がどの劣化原因により発生した有機物質のものであるか
を特定することにより、ガス封入電力機器内部のどの構
成材料がどのような劣化を受けているかがわかり、原因
の除去等迅速かつ適切な対応ができる。即ち、例え第1
のデータに第2のデータがあっても材料の劣化と関係の
ない例えば潤滑用オイル等に基づくものであれば、これ
を無視し影響を受けることなく診断を行うことができ
る。
【0023】また、上記診断方法によれば、ガス封入電
力機器内部の構成材料に特殊な物質を混入する必要がな
いのは言うまでもない。また、本発明のガス封入電力機
器内部の構成材料の診断方法を上記各種劣化原因および
劣化材料を診断する場合に基づいて説明したが、過熱等
他の原因の場合も、過熱等他の原因による各構成材料の
データベースを予め測定しておけば、上記劣化診断と同
様に診断できる。
【0024】また、上記ガス封入電力機器内部の構成材
料の診断方法において、第1および第2のデータがガス
クロマトグラフィー、赤外線吸収、反射赤外吸収、質量
分析またはX線光電子分光のデータであると、第1およ
び第2のデータが容易に得られる。
【0025】また、上記ガス封入電力機器内部の構成材
料の診断方法において、第1のデータと第2のデータを
計算機に取り込み、計算機上で照合するようにすれば、
診断を短時間で行うことができる。
【0026】また、上記ガス封入電力機器内部の構成材
料の診断方法において、脂肪族炭化水素を診断の判定基
準として利用しないで、分子量92以上の芳香族炭化水
素を判定基準として利用するようにすれば、特にタービ
ン発電機の診断を行う手順が大幅に簡略化されるので、
診断の時間を短縮することができる。
【0027】また、ガス封入電力機器からガスを引き出
してガス中の有機物質だけを吸着剤に蓄積すれば、ガス
封入電力機器内の有機物質が濃縮されて分析が容易にな
ると共に、可燃性の水素ガスなどを分析装置まで運搬す
る必要がなくなり安全に作業を進めることができる。
【0028】
【実施例】
実施例1.図3は、本発明の第1の実施例のガス封入電
力機器内部の構成材料の診断方法に係わる診断の手順を
示した流れ図である。以下、本発明の第1の実施例のガ
ス封入電力機器内部の構成材料の診断方法を図3の手順
に沿って詳細に説明する。図4は図3における「ガス封
入電力機器内のガス中有機物質の採取」と「有機物質の
特定」のためのガス封入電力機器内のガス採取装置の構
成を説明する説明図である。図4において、1はガス封
入電力機器内のガスを導くためのガス導入用配管、2は
吸着剤を詰めた有機物質吸着管、3はバイパス用配管、
4は弁である。5は導入したガスの流量を調整し、流量
と積算流量を読み取るための流量制御器、6はガスの出
口である。なお、有機物質吸着管2はガスを蓄えるボン
ベとすることもできる。また、図4に示す装置を用いな
くとも、ガス封入電力機器内のガスをガスクロマトグラ
フや赤外吸収分光器などの分析装置に直接導入してもよ
い。
【0029】本発明の第1の実施例においては、ガス封
入電力機器内の材料には何ら特別の物質を混入しなくと
も良く、ガス封入電力機器内のガスをそのまま例えば図
4に示す装置に導入して、ガス中の有機物質を捕えれば
良い。即ち、図4の装置を発電量600MWの運転中の
水素冷却式タービン発電機の配管に接続し、ガス導入用
配管1にタービン発電機内の水素ガスを導入し、一方の
有機物質吸着管2の両側の弁を開き、水素ガスをガス出
口6まで通過させた。有機物質吸着管2は金属製とし、
その中には吸着剤(登録商標:TENAX,Enka
Research Institute)2.5グラム
を詰めておいた。ガス出口6より出たガスは大気に放出
させた。流量制御器5にて水素ガスの通過量を毎分2リ
ットルに設定し、25分間水素ガスを有機物質吸着管2
に通過させて、すべての弁を閉じた。このようにして、
一方の有機物質吸着管2に水素ガス50リットル中の有
機物質が捕えられた。必要に応じて、もう一方の有機物
質吸着管2にタービン発電機内のガスを通過させて、分
析のための試料を増やすこともできるが、この例では1
日当たりの試料は一つとした。
【0030】上記水素ガス中の有機物質の捕獲が完了し
た後、試料である有機物質吸着管2を取り外した。次
に、有機物質吸着管2を、ガスクロマトグラフに取り付
けた熱脱着装置またはヘッドスペースサンプラーにより
250℃に加熱し、管内に吸着している有機物質を質量
分析計付ガスクロマトグラフ内に導入した。ガスクロマ
トグラフに導入された有機物質は、無極性のカラムを用
いて、昇温法により分析を行った。昇温法の条件は、初
期カラム温度40℃、昇温速度毎分5℃、最終温度26
0℃とした。検出器として四重極質量分析計を用い、走
査質量数範囲35〜500で検出を行った。上記のよう
にして検出したタービン発電機内のガス中に存在する複
数の有機物質の質量スペクトル(第1のデータ)からそ
れぞれの物質を特定あるいは推定することが可能であ
り、タービン発電機内の有機物質として、トルエン、ジ
メチルベンゼン、デカン、トリメチルデカン並びにジメ
チルエチルフェノールやメチルカルバメートなどのフェ
ノール誘導体等を特定した。また、有機物質が何である
かを特定すると同時に、ガスクロマトグラフィーのデー
タから各物質の量を測定し、タービン発電機内ガス中の
各物質の濃度を計算しておいた。
【0031】一方、タービン発電機内部の構成材料と同
種の例えばエポキシ樹脂硬化物が熱または放電により生
じる有機物質を測定して(第2のデータ)特定し、エポ
キシ樹脂硬化物の発生物質データベースを作成しておい
た。即ち、上記エポキシ樹脂硬化物の発生物質(第2の
データ)中に、フェノール誘導体、すなわちジメチルエ
チルフェノールおよびメチルカルバメートが存在するこ
とが特定された。なお、上記データベースを作成する方
法に関しては、独自に実験を行って作成してもよいし、
既知のデータから作成してもよい。
【0032】以下、図3の本発明の診断の手順のうち、
有機物質の特定以降に行う手順について説明する。ター
ビン発電機内の有機物質のガスクロマトグラフィーおよ
び質量分析データ(第1のデータ)を計算機に取り込
み、上記のように予め作成していた第2のデータ(例え
ばエポキシ樹脂硬化物の発生物質)と計算機上で照合さ
せると、タービン発電機内の有機物質の第1のデータに
上記第2のデータのフェノール誘導体が存在することが
判明したので、タービン発電機内のエポキシ樹脂硬化物
部分で熱または放電による劣化が生じていると診断し
た。
【0033】タービン発電機内にはフェノール誘導体以
外にもすでに述べたように多種類の有機物質が存在して
いた。必ずしもエポキシ樹脂硬化物から発生する有機物
質だけに限定してガス中濃度を調べる必要はなく、上記
の場合ではフェノール誘導体に加えてそれら以外の有機
物質のガス中濃度を調べてもよい。また、本実施例のよ
うに第1のデータおよび第2のデータに含まれる有機物
質を特定したが、単に第1のデータにおける第2のデー
タの有無からでも劣化を診断することができ、また、有
機物質を特定しなくても、ガス中に時間により増加する
測定値またはスペクトル的測定群があれば、データベー
スとしてフィードバックしデータベースを実用的にする
ことが望ましい。また、各材料からの第2のデータ全体
を判断基準とするのではなく、第2のデータに他とは異
なる特徴点を見いだし指標とすれば診断が容易となる。
【0034】ただし、ガス封入電力機器のうち特にター
ビン発電機では、脂肪族炭化水素および分子量92未満
の芳香族炭化水素は何ら材料の劣化や異常と関係ないこ
とを発明者らが発見したので、これらを照合時の判断基
準とはしない。タービン発電機以外のガス封入電力機器
では、上記物質を無視できる例が多いが、無視できない
場合もある。なお、今回検出されたフェノール誘導体は
すべて分子量92以上の芳香族炭化水素である。
【0035】ガス封入電力機器内部のできる限り多くの
構成材料が、様々な原因で劣化して発生する有機物質を
データベースとすることが望ましいが、本実施例のよう
にタービン発電機において特に重要な材料だけのデータ
ベースを作っておくことも有効である。なお、診断の対
象が他のガス封入電力機器の場合は、当該機器内で使用
されている材料のデータベースを用いることは言うまで
もない。
【0036】次に、タービン発電機内ガス中のジメチル
エチルフェノールおよびメチルカルバメート等のフェノ
ール誘導体濃度の時間変化を検出するために、図3の流
れの最初の部分、すなわちガス中有機物質の採取と特定
を、1ヵ月の時間間隔をおいて繰り返した。繰り返しの
間隔については特に制限はないが、濃度の変動が大きく
なってきたら間隔を短くすることが望ましい。タービン
発電機内部の構成材料の診断は、フェノール誘導体であ
るジメチルエチルフェノールおよびメチルカルバメート
の濃度の時間に対する変動量を見て行った。メチルカル
バメートの濃度は初回の測定値から1年を経過した後ま
で一定で0.2ppbであった。一方、ジメチルエチル
フェノールの濃度は初回の測定から順に、0.8、0.
9、1.0、1.1、1.2ppbと1ヵ月毎に0.1
ppbずつ増加する傾向が認められた。ジメチルエチル
フェノールの濃度が10.0ppbとなるまでの時間を
タービン発電機内のエポキシ樹脂硬化物の寿命と定める
ことにした。このままの速度で濃度が増加すると仮定す
ると、92ヵ月後に濃度が10.0ppbとなるので、
このタービン発電機内のエポキシ樹脂硬化物の寿命は約
92カ月すなわち7年8ヵ月と推定することができた。
推定した寿命が十分に長いので、現在は特に材料の更新
を行う必要はなく、約5年後から再び診断を行って、材
料の更新の準備を進めれば良いことが判明した。
【0037】本実施例では濃度が10.0ppbとなる
までの時間を材料の寿命と定めたが、これは濃度が1
0.0ppb程度になると材料の分解量が5%程度にな
り絶縁破壊が生じ易いと考えられるためである。寿命を
決める濃度を5.0ppbなどとして安全性を高めても
構わないし、材料によっては50.0ppbや1000
ppbなどの高い濃度を設定しても構わない。また、寿
命推定のための濃度の決め方を、現在の濃度の何倍と設
定しても構わない。いずれにせよ、推定された寿命がお
よそ1年以内であれば、速やかに材料の更新を行い、事
故を未然に防ぐことができる。寿命が1年以上と診断さ
れた場合は、診断を定期的に行って寿命を再度確認し、
ガス封入電力機器の停止と材料の更新を的確な時期に行
うことができる。
【0038】本実施例ではタービン発電機を診断の対象
としたが、その他のガス封入電力機器においてもまった
く同様にして本発明の診断を行うことができる。例え
ば、ガストランスでは内部の六フッ化硫黄(SF6)ガ
スを採取し、その中に存在する有機物質を特定して、デ
ータベースとの照合を行えばよい。GISの場合も同様
である。以下の実施例でも、本発明の特徴がよく現われ
るため、タービン発電機を診断の対象としている例が多
いが、どの例もその他のガス封入電力機器の診断に用い
ることができる。また、本実施例は運転中のタービン発
電機からガスを採取した場合であるが、タービン発電機
は停止中でも無負荷運転中でも本発明の効果は得られる
し、その他のガス封入電力機器においても運転中、停止
中に関わらず本発明の効果は得られる。
【0039】実施例2.図5は、本発明の第2の実施例
のガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法に係わる
診断の手順を示した流れ図である。本実施例において
も、タービン発電機内のガス中有機物質の特定を、図4
に示したガス採取装置を用いて行った。まず、250M
Wの運転中のタービン発電機から、実施例1と同様にし
てガス中の有機物質を捕集し、有機物質捕集後の残りの
ガスはタービン発電機内に戻した。続いて、実施例1と
同様に、試料を熱脱着装置によりガスクロマトグラフお
よび質量分析計に導入して分析を行った(第1のデー
タ)。本実施例では微極性カラムを使用し、カラム昇温
速度を毎分2℃に設定した。分析の結果、ガス封入電力
機器内のガス中有機物質としてトルエン、デカン、メチ
ルフェノール等の存在を確認した。
【0040】一方、タービン発電機内に使用している複
数の材料として、固定子コイル対地絶縁材料であるエポ
キシ樹脂硬化物(Aタイプエポキシ樹脂硬化物)、固定
子コイル周辺材料であるエポキシ樹脂硬化物(Bタイプ
エポキシ樹脂硬化物)および固定子接着剤であるフェノ
ール樹脂硬化物を対象に、予めそれぞれの材料が熱また
は放電により発生する有機物質を測定し(第2のデー
タ)特定したものをデータベースとした。これらの材料
が発生する有機物質を特定する方法や手順に関しては、
どのような方法や手順を用いてもよい。また、本実施例
では3種類の材料を対象としたが、より多くの種類のタ
ービン発電機内の有機材料を対象にしてもよい。
【0041】次に、図5に示す手順に従って、劣化した
材料と劣化の原因の特定を行う方法について述べる。上
記データベースにおいて、メチルフェノールが、固定子
コイル周辺材料であるエポキシ樹脂硬化物(Bタイプエ
ポキシ樹脂硬化物)の熱による発生物質に認められた
が、固定子コイル周辺材料以外の材料であるエポキシ樹
脂硬化物(Aタイプエポキシ樹脂硬化物)およびフェノ
ール樹脂硬化物の熱または放電による発生物質の中には
認められなかった。また、上記のように、タービン発電
機ガス中の有機物質にメチルフェノールが見つかってい
るので、タービン発電機中に劣化が生じていることが診
断され、かつガス封入電力機器内の固定子コイル周辺の
エポキシ材料硬化物(Bタイプエポキシ材料硬化物)部
分で劣化や異常が生じていると同時に、その劣化が放電
によるものではなく、熱によることが診断された。
【0042】上記診断を行なった結果として、事故に至
る前にタービン発電機を停止し、診断から予想された異
常箇所のみを更新して、短期間に復旧することができ
た。また、異常の原因が熱であることが推定されたの
で、その対策を取ることが可能であった。
【0043】実施例3.本発明の第3の実施例の診断方
法について説明する。本実施例も図3の手順を基本とし
て行われる。対象は、出力200MWの停止中の水素冷
却式のタービン発電機とした。タービン発電機内のガス
を分析する時には、運転中のタービン発電機からガスを
採取する方が正確な診断が行えるが、停止中でも診断を
行うことは可能である。タービン発電機内のガス採取装
置として、図4に示したガス採取装置の試料吸着管2を
試料採取ボンベに取り替えた装置を用いた。採取ボンベ
に3気圧のタービン発電機内ガス20リットルを捕集し
た後、ボンベの両側のバルブを閉じた。ボンベに蓄えら
れたタービン発電機内水素ガスを、光路長20メートル
の赤外吸収分光器用のガスセルに移した。ガスセルをフ
ーリエ変換赤外吸収分光器(FTIR)に設置し、ター
ビン発電機内ガスの赤外吸収スペクトルを測定した(第
1のデータ)。その結果、タービン発電機内には水酸基
をもつ芳香族炭化水素と構造不明の脂肪族炭化水素が存
在していることが判明した。タービン発電機内のガス中
有機物質を特定する時には、なるべく具体的な物質名を
明らかにすることが望ましいが、本実施例で示すよう
に、物質の種別を特定する程度でも本発明の診断が可能
である。
【0044】一方、タービン発電機内ガスの分析と同じ
フーリエ変換赤外吸収分光器を用いて、予めタービン発
電機内部の構成材料と同種のポリエステル樹脂硬化物が
熱により発生する有機物質を測定し(第2のデータ)デ
ータベースを作成しておいた。第2のデータには、水酸
基をもつ芳香族炭化水素の存在は確認されたが、脂肪族
炭化水素は確認されなかった。
【0045】次に、上記第1のデータと第2のデータを
照合したところ、タービン発電機内ガス中にも、ポリエ
ステル樹脂硬化物が熱により発生する有機物質中にも同
じく水酸基をもつ芳香族炭化水素が確認されたのでター
ビン発電機内の材料に熱劣化が生じていると診断され
た。
【0046】次に、水酸基をもつ芳香族炭化水素のター
ビン発電機内濃度の時間変化を調べて寿命診断を行うこ
とにした。前記手順のように3ヵ月毎にガス封入電力機
器内ガスをボンベに捕集し、フーリエ変換赤外吸収分光
器により分析し、水酸基をもつ芳香族炭化水素の吸収強
度から濃度を測定した。初回のガス捕集日から3ヵ月毎
に測定した濃度は2年に渡って一定値10ppbであっ
た。このことから、本実施例の診断対象であるタービン
発電機内の材料はほとんど劣化していないと診断され、
当面は材料の更新は必要でないことが判明した。
【0047】実施例4.本発明の第4の実施例の診断方
法について説明する。本実施例は図3および図5の手順
を基本として行われ、出力1GWの運転中の水冷式ター
ビン発電機を診断の対象とした。図4に示したガス採取
装置に代えて、四重極質量分析計を直接タービン発電機
ガス配管に取り付けた。この時、ガスの配管と四重極質
量分析計の間には微量のガス導入が可能な微小流量弁を
取り付けた。タービン発電機内から常時少量のガスを導
入するようにして、その場で有機物質の質量分析データ
が常時得られるようにした(第1のデータ)。得られた
データを回線を通じて転送し、別の監視室にて連続的に
監視できるようにした。本実施例のようにデータを転送
して電力機器設置場所から離れた場所で有機物質の特定
と診断を行ってもよいし、ガスを引き出すのと同時にそ
の場で有機物質の特定を行ってもよい。有機物質の特定
と診断を頻繁に行う必要がある場合には、本実施例のオ
ンライン監視を行う方が作業効率上得策である。分析の
結果、タービン発電機内のガス中に存在する有機物質の
質量分析による第1のデータには質量数90以下の比較
的小さな分子フラグメントが多数検出される一方、質量
数134、213などの比較的大きな分子フラグメント
も検出された。今回の分析では物質名を特定することは
不可能であったが、分子フラグメントの質量数だけを測
定しておいても、診断が可能な場合は多い。
【0048】一方、タービン発電機内部の構成材料であ
るエポキシ樹脂硬化物を含む3種類の材料が熱、放電、
腐食または摩擦により分解して生じる物質の分子フラグ
メント(第2のデータ)からなるデータベースを予め作
成しておいた。データベースは、発明者らが得たデータ
に加えて、既存のデータベースを追加して作成した。
【0049】次に、タービン発電機内ガス中から検出さ
れた分子フラグメント(第1のデータ)と前記第2のデ
ータを計算機によって照合した。質量数が90以下の分
子フラグメントはタービン発電機内ガスにも、上記3種
類の材料すべてから発生するガスにも検出されており、
劣化材料の診断の指標として用いることは困難であっ
た。しかし、質量数90以上の分子フラグメントに関し
ては、タービン発電機内ガスに見つかった質量数13
4、213の分子フラグメントは、タービン発電機内部
の構成材料のうちのエポキシ樹脂硬化物が熱により発生
するガスの分子フラグメントと唯一一致していた。そこ
で、質量数134、213のフラグメントを劣化材料の
診断のための判断基準として利用することにした。前記
のとおり、タービン発電機内ガスの質量数134、21
3の分子フラグメントとエポキシ樹脂硬化物の熱により
発生するガスのそれが一致していたことから、タービン
発電機内部のエポキシ樹脂硬化物が熱劣化を生じている
と診断された。この例のように、ガス封入電力機器内ガ
ス中の有機物質と当該機器内部の構成材料からの発生ガ
ス物質を比較する時、一致している全ての物質を比較す
ることが困難な場合は、他の材料との違いが分かり易い
特定の一致物質または測定値に限って診断の指標とする
ことができる。
【0050】続いて、この熱による劣化の程度を調べる
ため、ガス封入電力機器内ガス中の有機物質の質量数1
34と213の分子フラグメントの強度すなわち濃度の
時間変化を1ヵ月に渡って常時監視した。その結果、前
記指標分子フラグメントの強度が1週間で10%の割合
で急激に増加していることが判明した。したがって、タ
ービン発電機内部のエポキシ樹脂硬化物は急激に熱劣化
が進んでおり、早期にタービン発電機の停止と材料更新
の必要があると診断できた。本実施例においては、ター
ビン発電機に分析機器を直接的に設置し、データを転
送、監視する方法を採っているが、タービン発電機以外
のガス封入電力機器においても、また四重極質量分析計
以外の分析法を用いても、全く同様の方法でオンライン
診断が可能である。
【0051】実施例5.本発明の第5の実施例の診断方
法について説明する。実施例は図5の手順を基本として
行われる。今回はタービン発電機内部の材料を更新して
間もない400MWの試運転中のタービン発電機を診断
の対象とした。まず、実施例1と同様にして、図4に示
した装置を用いて有機物質吸着管2に上記タービン発電
機内のガス中の有機物質を捕集した。熱脱着装置により
有機物質吸着管に採取した有機物質を質量分析計付きガ
スクロマトグラフに導入し、タービン発電機内ガス中の
有機物質の分析を行った。上記有機物質吸着管への採取
と同時に、有機物質吸着管2をガラス管に替えて中に金
属片2枚を置き、金属片の表面に吸着した物質の分析用
試料とした。金属片の表面をガス採取装置から取り出し
た後、反射赤外吸収およびX線光電子分光によって分析
した。ガスクロマトグラフィーと質量分析の結果(第1
のデータ)から、芳香族炭化水素であるベンゼン、トル
エンおよび複数の脂肪族炭化水素および分子量約126
の構造不明の物質の存在を確認した。また、金属片の表
面分析から、上記の分子量約126の物質がメラミンで
あることを特定した。ガスクロマトグラフィーと質量分
析から特定されたメラミン以外の物質、すなわちベンゼ
ンは分子量92未満の芳香族炭化水素であるので、診断
に利用しないことにした。また、脂肪族炭化水素も診断
に利用しないことにした。
【0052】一方、予めタービン発電機内部の構成材料
であるエポキシ樹脂硬化物、フェノール樹脂硬化物およ
びメラミン樹脂硬化物が熱または放電により発生する有
機物質を測定し(第2のデータ)データベースを作成し
ておいた。前述のタービン発電機内のガス中の有機物質
から検出されたメラミンは、メラミン樹脂硬化物から放
電によって発生する有機物質を測定した第2のデータに
確認できた。したがって、タービン発電機内でメラミン
樹脂硬化物を使用している箇所が、放電による劣化を生
じていると診断することができた。しかしながら、メラ
ミン樹脂硬化物を使用している部分は放電が生じていた
としても特に大きな問題とならないと判断されたので、
このタービン発電機は材料の更新を行うことなく、試運
転から本運転に切り替えることになった。本実施例のよ
うに、材料更新直後の試運転中のガス封入電力機器を対
象にして診断を行い、本運転に切り替えるか否かの判断
を行うこともできる。本発明はガス封入電力機器内部の
構成材料の劣化や異常を診断する方法を提供するもので
あって、ガス封入電力機器本体の運転方法に関して直接
的な指示を与えるものではなく、本実施例のように、何
らかの劣化や異常が診断された場合でも、診断の結果か
ら判断してそのまま運転を続ける場合も有り得る。
【0053】実施例6.本発明の第6の実施例の診断方
法について説明する。本実施例は図5の手順を基本とし
て行われ、容量300MWのガス入りトランスを診断の
対象とした。図4に示したガス採取装置に代えて、ガス
導入配管にKBr窓を取り付けて赤外光が通過できるよ
うにし、赤外吸収分光器を設置した。ガス導入配管から
導入したガスは、赤外吸収分光器を通った後、再びガス
トランス内に戻るようにした。このようにして、その場
でガストランス内の有機物質の赤外吸収データ(第1の
データ)を常時監視できるようにした。
【0054】一方、ガストランス内のガスであるSF6
中における3種類のガストランスの構成材料が放電によ
り発生する有機物質(第2のデータ)のデータベース
を、文献等に基づいて作成しておいた。この例のよう
に、構成材料が発生する有機物質(第2のデータ)のデ
ータベースを作成する場合、材料が曝される条件、特に
ガス雰囲気を、当該電力機器内と同一の条件に設定して
おく方が望ましい例が多い。本実施例は後で述べるよう
に、構成材料の放電により発生する有機物質のみならず
雰囲気ガスの分解生成物質もまた診断の判定基準となる
例である。ガストランス内の赤外吸収スペクトルデータ
(第1のデータ)と構成材料の上記第2のデータを計算
機によって照合させた。その結果、ガストランス内に存
在するCOおよびSF4が、SF6雰囲気中でポリエチレ
ンテレフタレート(巻線部分の絶縁材料)が放電により
分解して生じる物質に一致していることが判明した。よ
って、このガストランスは、巻線部分で放電による劣化
が生じていると診断された。
【0055】
【発明の効果】本発明の第1のガス封入電力機器内部の
構成材料の診断方法によれば、ガス封入電力機器内のガ
ス中に存在する有機物質の第1のデータと、予め測定し
た熱、放電、腐食または摩擦により上記ガス封入電力機
器内部の各構成材料から発生する有機物質の第2のデー
タとを照合し、上記第1のデータにおける上記第2のデ
ータの有無または上記第1のデータにおける上記第2の
データの濃度の時間変化を検出すれば、熱、放電、腐食
または摩擦による劣化を検知することができ、劣化の程
度から材料の寿命を判断することができるという効果が
ある。
【0056】本発明の第2のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法によれば、ガス封入電力機器内のガス
中に存在する有機物質の第1のデータと、予め測定した
熱、放電、腐食または摩擦による劣化により上記ガス封
入電力機器内部の各構成材料から発生する有機物質の第
2のデータとを照合し、劣化が生じている材料の特定ま
たは劣化の原因の特定をおこなえば、劣化原因の除去等
迅速かつ適切な対応ができるという効果がある。
【0057】本発明の第3のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法によれば、上記第1または第2のガス
封入電力機器内部の構成材料の診断方法において、第1
のデータおよび第2のデータがガスクロマトグラフィ
ー、赤外線吸収、反射赤外吸収、質量分析またはX線光
電子分光のデータであれば、診断が容易であるという効
果がある。
【0058】本発明の第4のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法によれば、上記第1ないし第3のいず
れかのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法にお
いて、照合を計算機により行えば、診断を短時間で行う
ことができるという効果がある。
【0059】本発明の第5のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法によれば、上記第1ないし第4のいず
れかのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法にお
いて、分子量92以上の芳香族炭化水素を照合時の判定
基準として利用すれば、タービン発電機の診断を行う手
順が大幅に簡略化されるので、診断の時間を短縮するこ
とができるという効果がある。
【0060】本発明の第6のガス封入電力機器内部の構
成材料の診断方法によれば、上記第1ないし第5のいず
れかのガス封入電力機器内部の構成材料の診断方法にお
いて、ガス封入電力機器から引き出したガスを吸着剤に
通過させた後吸着剤に蓄えられた有機物質を測定するこ
とにより、第1のデータとすれば、ガス封入電力機器内
の有機物質が濃縮されて分析が容易になると共に、可燃
性の水素ガスなどを分析装置まで運搬する必要がなくな
り安全に作業を進めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のガス封入電力機器内部の構成材料の
診断方法における診断の手順を示した流れ図である。
【図2】 本発明のガス封入電力機器内部の構成材料の
診断方法における診断の手順を示した流れ図である。
【図3】 本発明の第1の実施例のガス封入電力機器内
部の構成材料の診断方法に係わる診断の手順を示した流
れ図である。
【図4】 本発明のガス封入電力機器内部の構成材料の
診断方法に係わるガス封入電力機器内のガス採取装置の
構成を説明する説明図である。
【図5】 本発明の第2の実施例のガス封入電力機器内
部の構成材料の診断方法に係わる診断の手順を示した流
れ図である。
【図6】 一般的なIon−Chamber−Dete
ctorの構成図である。
【符号の説明】
1 ガス導入用ガス封入電力機器配管、2 有機物質吸
着管。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 30/88 G01N 30/88 C // G01R 31/12 G01R 31/12 Z

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス封入電力機器内のガス中に存在する
    有機物質の第1のデータと、予め測定した熱、放電、腐
    食または摩擦により上記ガス封入電力機器内部の各構成
    材料から発生する有機物質の第2のデータとを照合し、
    上記第1のデータにおける上記第2のデータの有無また
    は上記第1のデータにおける上記第2のデータの濃度の
    時間変化を検出するガス封入電力機器内部の構成材料の
    診断方法。
  2. 【請求項2】 ガス封入電力機器内のガス中に存在する
    有機物質の第1のデータと、予め測定した熱、放電、腐
    食または摩擦による劣化により上記ガス封入電力機器内
    部の各構成材料から発生する有機物質の第2のデータと
    を照合し、劣化が生じている材料の特定または劣化の原
    因の特定を行うガス封入電力機器内部の構成材料の診断
    方法。
  3. 【請求項3】 第1のデータおよび第2のデータがガス
    クロマトグラフィー、赤外線吸収、反射赤外吸収、質量
    分析またはX線光電子分光のデータであることを特徴と
    する請求項1または請求項2に記載のガス封入電力機器
    内部の構成材料の診断方法。
  4. 【請求項4】 照合を計算機により行うことを特徴とす
    る請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガス封入
    電力機器内部の構成材料の診断方法。
  5. 【請求項5】 分子量92以上の芳香族炭化水素を照合
    時の判定基準として利用することを特徴とする請求項1
    ないし請求項4のいずれかに記載のガス封入電力機器内
    部の構成材料の診断方法。
  6. 【請求項6】 ガス封入電力機器から引き出したガスを
    吸着剤に通過させた後吸着剤に蓄えられた有機物質を測
    定することにより、第1のデータとすることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のガス封入
    電力機器内部の構成材料の診断方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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