JPH11335299A - 抗癌剤または放射線療法の副作用軽減剤 - Google Patents

抗癌剤または放射線療法の副作用軽減剤

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JPH11335299A
JPH11335299A JP14385698A JP14385698A JPH11335299A JP H11335299 A JPH11335299 A JP H11335299A JP 14385698 A JP14385698 A JP 14385698A JP 14385698 A JP14385698 A JP 14385698A JP H11335299 A JPH11335299 A JP H11335299A
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fas
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agent
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anticancer
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JP14385698A
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Takehiro Yatomi
丈博 矢冨
Tetsuya Asami
哲哉 浅見
Kazuyoshi Kuwano
和善 桑野
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】新規な抗癌剤または放射線療法の副作用軽減剤
の提供。 【解決手段】Fasアンタゴニストを有効成分とする抗
癌剤または放射線療法の副作用予防・軽減剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はFasアンタゴニス
トを有効成分として含有することを特徴とする抗癌剤ま
たは放射線療法の副作用予防・軽減剤に関する。
【0002】
【従来の技術】Fasは、ヒト線維芽細胞でマウスを免
疫して得られたモノクローナル抗体であるFas抗体
(Yonehara S.等、J.Exp.Med.,
169巻、1747−1756頁、1989年)によっ
て認識され、アポトーシスのシグナルを細胞に伝達する
細胞表面抗原である。Itoh N.等によって、Fa
s遺伝子がクローニングされ、Fasが約45kDの細
胞膜上の蛋白質であり、そのアミノ酸配列からTNFレ
セプターファミリーに属することが判明した(Cel
l,66巻、233−243頁、1991年)。また、
マウスFas遺伝子もクローニングされ、Fas mR
NAが、マウスの胸腺、肝、肺、心臓、卵巣で発現して
いることが確認された(Watanabe−Fukun
aga等、J.Immunol.,148巻、1274
−1279頁、1992年)。
【0003】ヒトFasリガンドは、Fasを発現する
細胞に対してアポトーシスを誘導する生体内分子とし
て、Nagata等により報告されたポリペプチドであ
る(Takahashi T.等、Internati
onal Immunology、6巻、1567−1
574頁、1994年)。ヒトFasリガンドは、TN
Fファミリーに属する分子量約40kDのII型糖蛋白質
で、TNFと同様に、生体内で3量体を形成すると考え
られている(Tanaka M.等、EMBOJour
nal,14巻、1129−1135頁、1995
年)。また、ヒトFasリガンドはラットFasリガン
ド(Suda T.等、Cell,75巻、1169−
1178頁、1993年)やマウスFasリガンド(T
akahashi T.等、Cell,76巻、969
−976頁、1994年)と細胞外領域において高いホ
モロジーを有しており、ヒトFasリガンドはヒトFa
sのみでなくマウスFasをも認識し、アポトーシスを
誘導することができる。逆に、ラットFasリガンド及
びマウスFasリガンドも、ヒトFasを認識してアポ
トーシスを誘導することができる。
【0004】また、Fasを介するアポトーシスの細胞
内シグナル伝達機序に関しても研究が進んでおり、Fa
sの細胞内領域、特にデスドメイン(Death do
main)と呼ばれる領域と相互作用してシグナルを伝
達または抑制する因子の同定及びクローニングが報告さ
れている他、インターロイキン−1変換酵素(ICE)
関連チオールプロテアーゼがFasを介するアポトーシ
スのシグナル伝達に寄与している可能性が示唆されてい
る。近年、アポトーシス、特にFasを介するアポトー
シスと種々の疾患及び生理現象との関連が示唆されてい
る。たとえば、ウイルス性劇症肝炎における肝細胞死及
びある種の自己免疫疾患等において、Fasを介するア
ポトーシスの異常が関与する可能性が示唆されている。
また、Fas/Fasリガンド系はアポトーシス以外の
機能、たとえば、好中球に作用して起炎症性に働く作用
等も担っている可能性が示唆されている(Kayaga
ki N.等、臨床免疫 28巻、667−675頁、
1996年)。
【0005】現在の抗癌剤は、大別するとマイトマイシ
ン、ブレオマイシン及びドキソルビシン等の抗生物質、
ニトロソウレア剤及びシクロフォスファミド等のアルキ
ル化剤、フルオロウラシル及びメトトレキサート等の代
謝拮抗剤、エトポシド及びカンプトテシン等の植物成分
製剤並びにシスプラチン等多種の抗癌剤があり、広く臨
床で使用されている。しかし、抗癌剤は癌細胞に対する
効果が強いほど、正常細胞または生体に対する副作用が
強いために充分な効果が上げられていない。例えば、マ
イトマイシンの血小板減少、ニトロソウレア系の造血障
害及び腎毒性、シクロフォスファミドの消化器毒性、シ
スプラチンの腎毒性及び後述するブレオマイシンの副作
用等がよく知られている。したがって、多くの癌におい
て抗癌効果を上げるためまたは副作用を軽減するため
に、化学療法、放射線療法または外科的療法とがそれぞ
れ組み合わされて行われている。しかし、放射線療法に
おいても脱毛及び呼吸器障害等の副作用が知られてお
り、組み合わせ療法も効果の発揮には限度が生じてい
る。
【0006】ブレオマイシンは、活性酸素との複合体を
形成してDNA鎖を切断する機序により抗癌効果を示
す。皮膚癌、頭頸部癌、肺癌、食道癌、子宮頸癌、悪性
リンパ腫、神経膠腫及び甲状腺癌の適応として広く使用
されている。しかしブレオマイシンの副作用は呼吸器障
害、皮膚毒性、粘膜障害、発熱及び腎毒性が知られてお
り、そのために投与量が限定されている。副作用の中で
もびまん性肺疾患を引き起こすことが知られている呼吸
器障害は最も重大な副作用であり、比較的頻度も多い。
これはブレオマイシンが肺に高濃度に集積しやすく、ブ
レオマイシンを加水分解する酵素も肺に少なく不活化さ
れにくいためと考えられている(Ohtsuka M.
等、臨床免疫 22巻、914〜920頁、1990
年)。発明者らは、マウスの肺にブレオマイシンを吸入
させると、気管支及び肺胞上皮細胞にアポトーシスが起
こること、並びに肺胞上皮細胞にFas、及び浸潤T細
胞にFasリガンドの発現が認められることを報告して
いる(Am.J.Respir.Cell.Mol.B
iol.、16巻、91〜101頁、1997年)。し
かしながら、上記の病態にFas/Fasリガンドを介
したアポトーシスが、直接若しくは間接的に関与してい
るかどうかは依然として不明である。
【0007】ブレオマイシンの他にもドキソルビシン、
シスプラチン、マイトマイシン、フルオロウラシル、カ
ンプトテシン及びシクロフォスファミド等もFas/F
asリガンドを介したアポトーシスを誘導することが報
告されている(Mizutani Y.、Cance
r,79巻、1180〜1189頁、1997年、Mi
cheau O.、J.Natl.Cancer In
st.、89巻、783〜789頁、1997年、Le
e J.H.,J.Korean Med.Sci、1
2巻、185〜189頁、1997年)。これらの他に
もアルキル化剤、代謝拮抗剤、または植物成分製剤(K
ataoka Y.等、最新医学、49巻、1152〜
1157頁、1994年、Kohn K.W.,Can
cer Research,56巻、5533〜554
6頁、1996年)等様々な作用機序を有する抗癌剤に
よるアポトーシスの誘導が報告されている。この様に抗
癌剤とアポトーシスの関係が研究されているが、現在の
ところ、アポトーシスを抑制するという新規な作用機序
を持つFasアンタゴニストを含有する抗癌剤の副作用
予防・軽減剤は全く知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、Fa
s/Fasリガンド系を介するアポトーシスを抑制する
という新規な作用機序による抗癌剤または放射線療法の
副作用予防・軽減剤を提供することである。より詳しく
は、本発明はFasアンタゴニストを有効成分とする抗
癌剤または放射線療法の副作用軽減剤及び予防・治療剤
を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、癌患者あ
るいは抗癌剤または放射線療法の副作用に侵されている
患者を救うべく、Fas/Fasリガンド系の機能及び
Fas/Fasリガンド系を介するアポトーシスと抗癌
剤または放射線療法の副作用の関連性を鋭意研究してき
たが、抗癌剤の副作用モデルにおいてFasアンタゴニ
ストがその副作用または病態を改善することを見出し、
本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記の予防・
治療剤に関するものである。 (1)Fasアンタゴニストを有効成分とする抗癌剤ま
たは放射線療法の副作用予防・軽減剤。 (2)前記FasアンタゴニストがFas−Fasリガ
ンドの結合を抑制する物質である(1)に記載の副作用
予防・軽減剤。 (3)前記FasアンタゴニストがFas誘導体である
(1)または(2)のいずれかに記載の副作用予防・軽
減剤。 (4)前記Fasアンタゴニストが抗Fasリガンド抗
体である(1)または(2)のいずれかに記載の副作用
予防・軽減剤。 (5)前記副作用がアポトーシスの異常が関与すること
を特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の副作用
予防・軽減剤。 (6)前記副作用が呼吸器疾患であることを特徴とする
(1)〜(5)のいずれかに記載の副作用予防・軽減
剤。 (7)前記副作用がびまん性肺疾患であることを特徴と
する(1)〜(5)のいずれかに記載の副作用予防・軽
減剤。 (8)前記抗癌剤がアポトーシスを誘導することを特徴
とする請求項(1)〜(5)のいずれかに記載の副作用
予防・軽減剤。
【0010】
【発明の実施の形態】以下にさらに詳細に本発明を説明
する。本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用予防・
軽減剤の対象となる副作用には種々の抗癌剤による副作
用が含まれる。副作用の原因となる抗癌剤はアルキル化
剤、代謝拮抗剤、抗生物質製剤、植物成分製剤またはそ
の他の抗癌剤等が含まれる。アルキル化剤はイホスファ
ミド、ナイトロジェンマスタード、ニムスチン、カルボ
コン、シクロホスファミド、ダカルバジン、チオテパ、
トシルサニンルロスルファン、ブスルファン、ミトブロ
ニトール、メルファラン、ラニムスチンまたはエストラ
ムスチン等が含まれる。代謝拮抗剤はエノシタビン、カ
ルモフール、シタラビン、テガフール、ドキシフルリジ
ン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトト
レキサートまたはメルカプトプリン等が含まれる。抗生
物質製剤はアクチノマイシンD、アクラルブシン、イダ
ルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビ
シン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ジノスタチンス
チマラマー、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC
またはペプロマイシン等が含まれる。植物製剤はエトポ
シド、カンプトテシン、イリノテカン、ビンクリスチ
ン、ビンデシンまたはビンブラスチン等が含まれる。そ
の他の抗癌剤はアセグラトン、ウベニメクス、アスパラ
ギナーゼ、ファドロール、プラカルバジン、ミトキサン
トロン、カルバプラスチン、タモキシフェン、トレミフ
ェン、クレスチン、メドロキシプロゲステロン、シスプ
ラチン、シゾフィラン、ソブゾキサン、トレチノイン、
ネダプラチン、ピシバニール、フルタミド、ペントスタ
チン、ポロフィマーナトリウムまたはレンチナン等が含
まれる。これらの抗癌剤または放射線療法により種々の
副作用が生じる。副作用を臓器により大別すると血液に
及ぼす障害(造血器障害または骨髄抑制等)、消化器障
害、呼吸器障害、皮膚障害、神経障害、生殖器障害、心
障害、肝障害、泌尿器障害、内分泌障害、免疫機能障害
または感染症が含まれる。その他にも低血糖、高血糖、
発熱、注射局所の疼痛、血栓性静脈炎、耳下腺痛、奇形
または二次的発癌等の障害が含まれる。
【0011】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤の対象となる副作用には放射線療法による
副作用が含まれる。放射線療法の副作用は急性障害また
は晩発障害がある。急性障害は皮膚障害、口腔等の粘膜
障害、悪心、嘔吐、下痢、嚥下困難、喉頭浮腫、呼吸困
難、脱毛または頭蓋内圧亢進が含まれる。晩発障害は白
内障、脳壊死、歯若しくは顎骨の壊死、食道狭窄、間質
性肺炎/肺線維症、心不全、イレウス、重腸出血、膀胱
炎または二次的誘発癌等が含まれる。
【0012】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤の対象となる副作用のうち、好ましくは呼
吸器障害が対象となる。呼吸器障害には間質性肺炎/肺
繊維症、肺炎、喉頭浮腫または呼吸困難等が含まれる。
また、呼吸器障害を誘引する抗癌剤にはブレオマイシ
ン、ブスルファン、メトトレキサートまたはメルカプト
プリン等が含まれる。上述のように放射線療法も呼吸器
障害を誘引する。
【0013】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤はこれら種々の抗癌剤または放射線療法に
よる種々の副作用が対象となるが、好ましくはアポトー
シスを誘導する抗癌剤の副作用が対象であり、より好ま
しくはFasを介するアポトーシスを誘導する抗癌剤の
副作用が対象である。また、本発明の抗癌剤または放射
線療法の副作用予防・軽減剤はこれら種々の抗癌剤また
は放射線療法による種々の副作用が対象となるが、好ま
しくは抗癌剤または放射線療法のアポトーシスの異常が
関与する副作用が対象であり、より好ましくは抗癌剤ま
たは放射線療法のFasを介するアポトーシスの異常が
関与する副作用が対象である。Fasアンタゴニストが
各副作用で起こっているアポトーシスを抑制し、副作用
の予防・治療効果をもたらす。なお、治療対象としては
ヒトが重要であるが、ヒト以外の哺乳類も含みうる。
【0014】本発明で使用されるアポトーシスを抑制す
る物質とは、アポトーシスを抑制または阻害するもので
あれば特に限定されない。具体的にはFasアンタゴニ
ストまたはFas−Fasリガンドの結合を抑制する物
質がある。これらは、Fasによるシグナルの発生また
は伝達をいずれかの段階で遮断し、Fas/Fasリガ
ンド系の機能または生物作用(特にアポトーシス)を抑
制するものであれば特に限定されず、Fasリガンド若
しくはFasの作用、機能若しくは発現を抑制するも
の、Fasリガンド細胞外領域若しくはFas細胞外領
域と相互作用するもの、FasリガンドとFasの相互
作用を抑制するもの、Fas細胞内領域とそれと相互作
用する細胞内因子との相互作用に影響するもの、または
Fasを介するアポトーシスのシグナル伝達に関する細
胞内因子(例えばICE様プロテアーゼ)の活性を抑制
するもの等のさまざまな作用機序を有するものが含まれ
る。また、タンパク質性の高分子物質または低分子の化
合物のいずれもが含まれる。
【0015】より具体的には、Fasを介するアポトー
シスを抑制する活性を有する、Fas誘導体、抗Fas
抗体、抗Fasリガンド抗体、Fas若しくはFasリ
ガンドの遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチ
ド、Fas若しくはFasリガンドのmRNAに対する
アンチセンスオリゴヌクレオチド、Fasの細胞内領域
と相互作用する物質またはICE阻害剤が挙げられる。
ここで、本発明で用いるFasアンタゴニストとして
は、Fasを介するアポトーシスを抑制する作用を有す
る、Fas誘導体、抗Fas抗体または抗Fasリガン
ド抗体が好ましい。さらに、抗Fas抗体または抗Fa
sリガンド抗体はその治療対象由来のそれぞれの種のF
asまたはFasリガンドを抗原とする抗体が好まし
い。例えば、ヒトの治療にはヒト由来のFasまたはF
asリガンドを抗原とする抗体すなわち抗ヒトFas抗
体または抗ヒトFasリガンド抗体が好ましい。また、
抗Fasリガンド抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体が
好ましい。キメラ抗体は、例えばヒトの治療にはヒト抗
体からの定常領域及び非ヒト抗体からの可変領域からな
るキメラ抗体が好ましい。ヒト化抗体は、例えばヒトの
治療には定常領域及びフレームワーク領域(FR)がヒ
ト由来で、相補性決定領域(CDR)が非ヒト由来であ
るのが好ましい。非ヒト抗体は、ヒトの治療に用いる際
には比較的循環半減期が短い、重要な免疫グロブリンの
機能的特性を欠くまたは免疫原性を有する等の生物学的
短所が生じることがある。キメラ抗体またはヒト化抗体
はこれらを克服する。また、本発明で用いるFasアン
タゴニストは、国際特許出願公開公報WO95/132
93などに記載されている適当なアッセイ法においてF
as発現細胞のアポトーシスを抑制するものが好ましい
(本明細書はこの公報を引用し、これをもって本明細書
の一部とする。)。
【0016】なお、本発明で用いられる抗体はポリクロ
ーナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよ
く、また、本発明に使用される抗体の分子種は特に限定
されない。抗原に結合しFasを介するアポトーシスを
阻害するかぎり、通常の形態の抗体分子であってもよい
し、抗体の断片も使用することができる。これらのうち
でも特に平成7年6月22日付で日本国茨城県つくば市
東一丁目一番三号の工業技術院生命工学工業技術研究所
に寄託し(受託番号P−15002)、さらに平成8年
5月9日付で原寄託から国際寄託に移管した(受託番号
FERM BP−5535)ハイブリドーマF919−
9−18により産生されるマウスF919−9−18抗
体が好ましい例である。本発明で用いる抗Fasリガン
ド抗体または抗Fas抗体は、公知技術を利用して作製
することが出来る。例えば国際特許出願公開公報WO9
5/13293及び国際特許出願公開公報WO95/0
2290等に作成方法が記載されている(本明細書はこ
の公報を引用し、これをもって本明細書の一部とす
る。)。本発明で用いる事ができるキメラ抗体は、既知
のキメラ抗体の製造方法を用いて製造することができ
る。例えば国際特許出願公開公報WO95/13293
の実施例1にキメラ蛋白質の作成方法が記載されている
(本明細書はこの公報を引用し、これをもって本明細書
の一部とする。)。
【0017】本発明に用いるヒト化抗体は、Riech
mann L.等、Nature、332巻、323
頁、1988年、ヨーロッパ特許公報第0239400
号公報、Queen等、Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA、86巻、10029号、1989
年、国際特許出願公開公報WO90/07861、国際
特許出願公開公報WO92/11018、Co等、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA、88巻、
2869頁、1991年、Co等、Nature、35
1巻、501頁、1991年及びCo等、J.Immu
nol.、148巻、1149頁、1992年等に開示
されている方法を用いて製造することができる。(本明
細書はこの文献を引用し、これをもって本明細書の一部
とする。)本発明の好適な例としては、国際特許出願公
開公報WO97/02290の実施例に開示されている
マウス抗体F919−9−18抗体のCDRを有するヒ
ト化抗Fasリガンド抗体が挙げられる。
【0018】本発明で使用されているFas誘導体は、
少なくともFasリガンドとの結合能を有するかまたは
Fasリガンドによるアポトーシスを抑制するものであ
れば、特に限定されない。公知のFasアミノ酸配列中
に1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加といった任
意の変異を有し、Fasリガンドとの結合活性を維持し
たまま、Fas/Fasリガンド系の生物作用(特にF
asを介するアポトーシス)を抑制するものが含まれ
る。具体的には、Fas変異体、切断型(trunca
ted form)Fas、キメラタンパク質、融合タ
ンパク質または化学的に修飾されたもの等が含まれる。
なお、その由来となるFasは上記の性質を有する限
り、その動物種を問わないが、抗原性を考慮すればヒト
由来のものを使用するのが好ましい。
【0019】より具体的には、公知のFasの細胞外領
域若しくは膜貫通領域を欠失したFas、またはFas
細胞外領域と他のタンパク質とのキメラタンパク質(例
えばヒトFas細胞外領域とヒト免疫グロブリンのFc
領域のキメラタンパク質であるヒトFas−Fc等)が
挙げられる。Fas誘導体は、いずれの製法のものでも
良く、公知の配列及び公知の遺伝子組換技術等により製
造することができる。例えば国際特許出願公開公報WO
95/13293の実施例1及び国際特許出願公開公報
WO97/42319の実施例中等に作成方法が記載さ
れている(本明細書はこの公報を引用し、これをもって
本明細書の一部とする。)。また、FasのN末端に欠
失を有するFas誘導体も好ましく、これらのうちでも
特に平成8年3月14日付けで日本国茨城県つくば市東
一丁目一番三号の工業技術院生命工学工業技術研究所に
寄託し(受託番号P―15514及び受託番号P−15
515)、さらに平成9年3月6日付で原寄託から国際
寄託に移管(受託番号FERMBP−5854及び受託
番号FERMBP−5855)されている大腸菌が含む
プラスミド(pM1304及びpM1317)にコード
されているFas誘導体shFas(nd29)−Fc
(国際特許出願公開公報WO97/42319)は、公
知のヒトFasのN末端の1番目から29番目までのア
ミノ酸を欠失したFas細胞外領域を含有する誘導体で
あり、活性が高く、本発明の肝硬変の予防・治療剤の有
効成分として好適な例である(本明細書はこの文献を引
用し、これをもって本明細書の一部とする。)。これら
の本発明に用いるFas誘導体は、適当なアッセイ法に
よりFasリガンドに結合活性またはFasを介するア
ポトーシスの抑制活性を有することがわかる。
【0020】本発明で使用されるFasまたはFasリ
ガンドの遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドまたはFas若しくはFasリガンドのmRNAに対
するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Fasまたは
Fasリガンドの発現を抑制するものであれば、その配
列は限定されない。その例として国際特許出願公開公報
WO95/13293の実施例20に開示されているF
asリガンドのアンチセンスオリゴヌクレオチド等が挙
げられる(本明細書はこの公報を引用し、これをもって
本明細書の一部とする。)。
【0021】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤は、抗癌剤または放射線療法の副作用に侵
されている患者に対して抗癌剤の副作用の治療剤として
使用することが可能である。また、抗癌剤を投与される
患者または放射線療法を施される患者に対して抗癌剤の
副作用に対する予防剤として使用することが可能であ
る。本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用予防・軽
減剤は、上述のFasアンタゴニストを含有することを
特徴とし、少なくとも一種の医薬用担体または媒体(例
えば滅菌水、生理食塩水、植物油、鉱油、高級アルコー
ル、高級脂肪酸または無害性有機溶媒等、さらには必要
に応じて賦形剤、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性
剤、溶解補助剤、吸着防止剤、安定化剤、保存剤、酸化
防止剤、緩衝剤、等張化剤または無痛化剤等)を適宜組
み合わせて医薬組成物やキットの形態を取ることがで
き、経口的に、または静脈内、冠動脈内、皮下、筋肉
内、経皮、吸入、直腸内若しくは局所等の非経口的に投
与することができる。好ましくは非経口的に、全身また
は局部的に、急速または持続的に投与することができ
る。
【0022】ヒトに対する投与量は患者の病態、年齢ま
たは投与方法により異なるが、適宣適当な量を選択する
ことが必要である。例えば、全身投与の場合、約0.0
1〜100mg/Kgの範囲で適当な分割容量を選択す
ることが可能である。しかしながら、本発明の抗癌剤ま
たは放射線療法の副作用予防・軽減剤の使用はこれらの
投与方法または投与量に制限されるものではない。さら
に、Fas−Fasリガンドの結合を抑制する物質若し
くは抗Fasリガンド抗体等の複数のFasアンタゴニ
ストを組み合わせて使用しても、または他の薬剤と併用
しても良い。
【0023】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤は常法に従って製剤化することができる。
例えば注射用製剤は、精製されたFasアンタゴニスト
(Fas−Fasリガンドの結合を抑制する物質若しく
は抗Fasリガンド抗体等)を生理食塩水若しくは緩衝
液等の溶剤に溶解し、必要に応じて吸着防止剤等を加え
て製剤化する。また、使用前に溶解再構成するために凍
結乾燥させたり、凍結乾燥のための一般的な賦形剤を加
えたりして製剤化しても良い。
【0024】本発明の抗癌剤または放射線療法の副作用
予防・軽減剤に用いるFasアンタゴニストは、抗癌剤
の副作用モデル(特にアポトーシスの異常が関与するこ
とが示唆されている抗癌剤の副作用モデル)においてそ
の副作用または病態の改善効果を示す。例えば実施例の
ようなブレオマイシンの肺に対する副作用モデルにおい
て組織学的に病態を改善し、また気管支肺胞所見を改善
する。さらに、実施例では、マウスを用いたモデルで実
験を行っているため、抗マウスFasリガンド抗体を使
用し副作用予防・軽減剤の効果を示しているが、ヒトに
用いる場合は抗ヒトFasリガンド抗体により実施例と
同様の効果が期待できる。また抗ヒトFasリガンド抗
体は実施例に示す通り、ヒト癌細胞を用いた抗癌剤の抗
癌作用には影響を与えない。なお、本発明の抗癌剤の副
作用予防・軽減剤は、実施例において示すとおり毒性が
なく、安全に使用できる。すなわち、本発明の抗癌剤の
副作用予防・軽減剤は、抗癌剤の主作用には影響を与え
ず、抗癌剤の副作用を予防、治療または改善することが
期待される。
【0025】
【実施例】以下に実施例をもって、本発明をいっそう具
体的に説明するが、これらは実施の一例として示すもの
であり、本発明はこれらにより何ら限定されるものでは
ない。また、以下の記載において用いる略号は当該分野
において慣例として用いられる略号に基づくものであ
る。本発明のFasアンタゴニストに含まれるFas誘
導体であるshFas(nd29)−Fc及びshFa
s(nd29)−hingeの製法並びにアポトーシス
抑制活性は国際特許出願公開公報WO97/42319
の実施例2,3,5,6及び8に開示されている。ま
た、本発明のFasアンタゴニストに含まれるヒト化抗
ヒトFasリガンド抗体であるヒト化F919抗体の製
法及びアポトーシス抑制活性は国際特許出願公開公報W
O97/02290の実施例7〜11に開示されてい
る。さらに以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】実施例1 shFas(nd29)−Fc
の毒性試験 (1)試験方法 雄性、6週齢、BDF1マウス(日本チャールス・リバ
ー製)にshFas(nd29)−Fcを10及び30
mg/kgの容量で2日に1回、12日間、計7回尾静
脈内から投与し、その影響を調べた。実験はコントロー
ル群、shFas(nd29)−Fc 10mg/kg
投与群及びshFas(nd29)−Fc 30mg/
kg投与群の3群とし、各群3例とした。なお、各投与
群の投与タンパク質量を30mg/kgと等しくするた
めに、コントロール群には30mg/kgのヒト血清ア
ルブミンを、shFas(nd29)−Fc 10mg
/kg群にはshFas(nd29)−Fc 10mg
/kgとヒト血清アルブミン 20mg/kgを、sh
Fas(nd29)−Fc 30mg/kg投与群には
shFas(nd29)−Fc 30mg/kgを投与
した。投与開始日から、2日に1回、体重測定を行っ
た。投与開始日14日目に眼底静脈より採血を行い血球
数を測定後、血漿を調製し、GOT、GPT及びクレア
チニンを測定した。また、採血終了後、剖検を行い、目
視により主要臓器(肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓及び
腸)の変化を調べた。血球数の測定は自動血球測定装置
K−2000(Sysmex製)を用いて行った。GO
T、GPT及びクレアチニンはオートアナライザーCO
BASFARA(ロッシュ製)を用いて測定した。 (2)試験結果 10及び30mg/kgのshFas(nd29)−F
cを2日に1回、12日間、計7回マウスに投与しても
体重増加、血球数、肝臓(GOT及びGPT)、腎臓
(クレアチニン)並びにその他の主要臓器(肉眼的所
見)への有意な影響は認められなかった。
【0027】実施例2 shFas(nd29)−Fc
のマウスブレオマイシンの肺に対する副作用モデルの改
善作用 (1)ブレオマイシンの肺に対する副作用モデルの作製 実験には雄性、6週齢、ICRマウス(九動製)を用い
た。体重測定の後、ペントバルビタール(ダイナボット
製)を腹腔内に投与し、麻酔した。4mg/kgとなる
ように生理食塩水に溶解したブレオマイシン塩酸塩(日
本化薬製)溶液50μlを肺に投与した。 (2)shFas(nd29)−Fcの投与 shFas(nd29)−Fcは以下に示した方法で投
与した。shFas(nd29)−Fcの静脈内投与
は、ブレオマイシン投与7日若しくは10日後に50μ
g/マウスの用量で投与した。shFas(nd29)
−Fcの肺への吸入投与は、10mlの50μg/ml
のshFas(nd29)−Fc溶液をウルトラソニッ
クネブライザー(オムロン製)にセットし、ブレオマイ
シン投与2、4、6及び8日後若しくは2、4、6、
8、10及び12日後に30分間吸入させ行なった。ブ
レオマイシンのみ投与し、shFas(nd29)−F
cを投与しないマウスをコントロール群とした。
【0028】(3)組織学的評価 ブレオマイシン投与14日後に開胸し、生理食塩水を用
いて肺動脈血を洗い出した後、肺を摘出した。摘出した
右肺を10%ホルマリン溶液を用いて24時間固定し
た。パラフィン包埋後、切片をヘマトキシリン−エオジ
ン染色した。得られた切片を光学顕微鏡下で評価した。
組織学的スコアは表1に示した基準を用いて三人の判定
者がそれぞれスコアリングを行い、その平均値を各個体
の組織学的スコアとした。 結果を以下の表2に示す。
【0029】
【0030】(4)気管支肺胞洗浄 ブレオマイシン投与14日後にペントバルビタールをマ
ウス腹腔内に投与して麻酔した。肺を露出させ、気管チ
ューブを挿入した後、カニュレーションしたチューブを
通して5mlの室温にした生理食塩水を用いて気管支肺
胞洗浄を行った。回収した洗浄液を金属製のメッシュに
通し、粘液を除去した。肺胞洗浄液中の細胞は血球計算
板を用いて測定した。マクロファージ、リンパ球、好中
球、好酸球の細胞数はDiff−Quik(Baxte
r Diagnostics製)を用いて染色した10
0個の細胞中に占める各細胞の割合を測定し、気管支肺
胞洗浄液中の全細胞数を乗じて算出した。気管支肺胞洗
浄液の解析結果を以下の表3に示す。
【0031】
【表1】
【0032】(5)ヒドロキシプロリンの測定 ブレオマイシン投与14日後に肺を摘出し、液体窒素を
用いて凍結した。均一の大きさになるよう細かく刻み、
6N塩酸中で16時間、120℃に加温して加水分解し
た。各サンプル中のヒドロキシプロリン量は、Hagi
moto N.等の方法(Am J.Respir.c
ell Mol Biol.、17巻、272〜278
頁、1997年)で測定した。1mgの肺乾燥重量に対
するヒドロキシプロリン量を指標に各群間の比較を行な
った。ヒドロキシプロリン量の測定結果を以下の表4に
示す。
【0033】 (6)結果のまとめ 組織学的解析では、shFas(nd29)−Fc投与
群は、炎症または線維化に伴う組織の障害がコントロー
ル群よりも軽度であった。気管支肺胞洗浄液中の細胞数
の解析では、shFas(nd29)−Fc投与群はコ
ントロール群に比較し、全細胞数、マクロファージ、リ
ンパ球及び好中球の細胞数のすべて若しくは一部が少な
かった。ヒドロキシプロリンの測定の結果、shFas
(nd29)−Fc投与群は、コントロール群よりも肺
組織中のヒドロキシプロリン量が少なかった。ヒドロキ
シプロリンは、線維化の指標であるコラーゲンに特有な
アミノ酸であることから、shFas(nd29)−F
c投与群は、コントロール群よりも肺組織中のコラーゲ
ン量が少なく、shFas(nd29)−Fcに線維化
抑制効果が認められた。
【0034】実施例3 抗マウスFasリガンド抗体の
作製、生産及び精製 (1)抗マウスFasリガンド抗体の作製 遺伝子工学的手法を用いたマウスFasリガンドWX2
(J.Immunology、157巻、3918−3
924頁、1996年)由来のマウスFasリガンド細
胞外領域とマウスCD40リガンドの細胞内領域、膜貫
通領域および細胞外領域の一部(N末端から78アミノ
酸)を融合したキメラ蛋白質をコードする遺伝子をヒト
エロンゲーションファクター(EF)プロモータ(Mi
zushima−Nagata、Nucleic Ac
ids Research、18巻、5322頁、19
90年)の下流に有するプラスミドを作製した。上記プ
ラスミドをWR19L細胞にトランスフェクトし、細胞
膜上にマウスFasリガンドを発現している組換え細胞
W40LFLを得て、投与抗原として用いた。免疫動物
としてアルメニアハムスターを用いた。フロイント完全
アジュバントと混合した1×107 個のW40LFLを
アルメニアハムスターの皮下に投与し、1ヶ月後にPB
Sに懸濁した2×107 個のW40LFLを皮下に投与
した。さらに1ヶ月後、PBSに懸濁した5×106
のW40LFLをフットパッドに投与した。3日後、リ
ンパ節細胞を取り出し、マウスミエローマ細胞P3−X
63−Ag8−U1(P3−U1)と細胞融合した。H
AT培地(ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジ
ン)による選択の後、生育したハイブリドーマの中か
ら、その培養上清中にマウスFasリガンドによる細胞
障害性を中和する活性を有するハイブリドーマFLIM
58を得た。 (2)FLIM58の生産および精製 ハイブリドーマFLIM58を無血清培地Hybrid
oma−SFM(GIBCO BRL)にて培養し、そ
の培養上清をプロテイン−Aカラム(PROSEP−
A、Bioprocessing)で精製し、精製抗体
FLIM58を得た。蛋白濃度は280nmの吸光度よ
り算出した。
【0035】実施例4 抗マウスFasリガンド抗体F
LIM58の毒性試験 (1)方法 雄性、8週齢、DBA/1JマウスおよびC3H/He
マウス(日本チャールス・リバー製)を用いた。抗マウ
スFasリガンド抗体FLIM58を100mg/30
ml/kgの用量で尾静脈から投与した。またコントロ
ール群には生理食塩水を30ml/kgの用量で尾静脈
から投与した。2種の系統ともに各群3例とした。観察
期間を7日間とし、体重測定、血液学的検査(赤血球、
白血球、血小板)、血液生化学的検査(GOT、GP
T、尿素窒素)、肉眼による剖検を行った。 (2)結果 抗マウスFasリガンド抗体FLIM58投与群の投与
後の体重増加、血液学的検査値(赤血球、白血球、血小
板)、血液生化学的検査値(GOT、GPT、尿素窒
素)はコントロール群と比べて差を認めなかった。ま
た、肉眼による剖検所見においても抗マウスFasリガ
ンド抗体FLIM58投与群に異常は認められなかっ
た。
【0036】実施例5 抗マウスFasリガンド抗体F
LIM58のマウスブレオマイシンの肺に対する副作用
モデルの改善作用 (1)ブレオマイシンの肺に対する副作用モデルの作製 ブレオマイシンの肺に対する副作用モデルは1U/kg
となるように生理食塩水に溶解したブレオマイシン塩酸
塩(日本化薬製)溶液を用いて、実施例2と同様に作成
した。 (2)FLIM58の投与 FLIM58は、ブレオマイシン投与の翌日及び7日後
に各100μg/マウス(計200μg/マウス)の用
量、またはブレオマイシン投与の7日後に200μg/
マウスの用量で尾静脈内から投与した(各々4例および
10例)。ブレオマイシンのみ投与し、FLIM58を
投与しないマウスをコントロール群(10例)とした。 (3)組織学的評価 組織学的評価は実施例2と同様に行った。組織学的評価
の結果を表5に示す。
【0037】 (4)結果 組織学的解析では、FLIM58投与群は、炎症または
線維化に伴う組織の障害がコントロール群よりも軽度で
あった。
【0038】実施例6 ブレオマイシン抗癌作用におけ
るヒト化抗ヒトFasリガンド抗体(ヒト化F919抗
体)の影響 (1)方法 ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞株MOLT−3細胞
(ATCC)を、10%の非働化FBS(JRH Bi
osciences)を含むRPMI1640培地(G
IBCO BRL)で6.0×105 個/mlに調製
し、96ウェルプレート(NUNC)の各ウェルに、
3.0×104 個/50μl/ウェルで植え込んだ。同
時に10%非働化FBS含有RPMI1640培地で3
または30μg力価/mlに調製したブレオマイシン塩
酸塩(日本化薬製)を、各ウェルに50μlずつ添加し
た。さらに、ヒト化F919抗体を10%非働化FBS
含有RPMI1640培地で30μg/mlになるよう
に調製し、終濃度10μg/mlとなるようウェルに5
0μl添加した。同様に、MOLT−3細胞及びブレオ
マイシン含有ウェルにヒトIgG4(ATHENS R
ESERTH AND TECHNOLOGY製)を添
加し、コントロールとした。ブレオマイシン非添加群に
は、各ウェル150μl/ウェルとなるようMOLT−
3細胞及び10%非働化FBS含有RPMI1640培
地を添加した(各群6例)。5%CO2 存在下で、37
℃にて3日間培養し、増殖細胞数をAlamar Bl
ue(岩城硝子製)を用いて判定した。すなわち、上述
の3日間培養液に、Alamar Blueを15μl
/ウェル添加し、さらに5%CO2存在下37℃で、4
時間培養した。その後、培養液の吸光度をETY−96
(ELISA ANALYZER、東洋測器製)で測定
した。なお、10%非働化FBS含有RPMI1640
培地150μlにAlamar Blueを15μl添
加したウェルをブランクとした。なお、生存率は以下の
下式に基づき求めた。 式 生存率(%)=検体(△OD)/ブレオマイシン非添加
群(△OD)×100 △OD:OD577nm−OD600nm
【0039】(2)結果 結果を図1に示す。MOLT−3細胞に対する1μg/
mlブレオマイシンによる細胞増殖抑制作用にヒト化F
919抗体は影響を与えなかった。また、細胞増殖を完
全に抑制した3μg/mlブレオマイシン添加時におい
てもヒト化F919抗体は影響を与えなかった。またコ
ントロールとして試験したヒトIgG4も影響を与えな
かった。
【0040】
【発明の効果】本発明のFasアンタゴニストを有効成
分とする抗癌剤または放射線療法の副作用予防・軽減剤
は、Fas/Fasリガンド系を介するアポトーシスの
抑制作用により、特にFasを介した細胞の死に代表さ
れるFas/Fasリガンド系の生物作用等のアポトー
シスが関与する抗癌剤または放射線療法の副作用に対し
て予防または治療効果を有する。従って、本発明のFa
sアンタゴニストは、アポトーシスが関与する抗癌剤ま
たは放射線療法の副作用に対する予防・治療剤として期
待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒト化抗ヒトFasリガンド抗体(ヒト化F
919抗体)がブレオマイシンの抗癌作用に影響を及ぼ
さないことを示す実施例5の測定結果のグラフである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fasアンタゴニストを有効成分とする抗
    癌剤または放射線療法の副作用予防・軽減剤。
  2. 【請求項2】前記FasアンタゴニストがFas−Fa
    sリガンドの結合を抑制する物質である請求項1に記載
    の副作用予防・軽減剤。
  3. 【請求項3】前記FasアンタゴニストがFas誘導体
    である請求項1または2に記載の副作用予防・軽減剤。
  4. 【請求項4】前記Fasアンタゴニストが抗Fasリガ
    ンド抗体である請求項1または2に記載の副作用予防・
    軽減剤。
  5. 【請求項5】前記副作用がアポトーシスの異常が関与す
    る請求項1〜4のいずれかに記載の副作用予防・軽減
    剤。
  6. 【請求項6】前記副作用が呼吸器疾患である請求項1〜
    5のいずれかに記載の副作用予防・軽減剤。
  7. 【請求項7】前記副作用がびまん性肺疾患である請求項
    1〜5のいずれかに記載の副作用予防・軽減剤。
  8. 【請求項8】前記抗癌剤がアポトーシスを誘導する請求
    項1〜5のいずれかに記載の副作用予防・軽減剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007519609A (ja) * 2003-09-17 2007-07-19 アイコス コーポレイション 細胞増殖を制御するためのchk1インヒビターの使用

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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