JPH11325024A - 繊維強化プラスチック製部材 - Google Patents

繊維強化プラスチック製部材

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JPH11325024A
JPH11325024A JP10131767A JP13176798A JPH11325024A JP H11325024 A JPH11325024 A JP H11325024A JP 10131767 A JP10131767 A JP 10131767A JP 13176798 A JP13176798 A JP 13176798A JP H11325024 A JPH11325024 A JP H11325024A
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JP
Japan
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thread
fiber
screw
fibers
strength
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Application number
JP10131767A
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English (en)
Inventor
Akihiko Kitano
彰彦 北野
Fumiaki Noman
文昭 乃万
Yoshinobu Kubota
吉伸 窪田
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、従来の機械接合部を有する
FRP部品の上述した問題点を解決し、軽量であるのは
勿論のこと、接合強度に優れる、信頼性・安全性の高い
めねじを有するFRP部材を提供することにある。ま
た、この発明の他の目的は、そのようなFRP部材を低
コストで製造する方法を提供することにある。 【解決手段】 めねじ接合部を有する繊維強化プラスチ
ック製部材であって、連続である強化繊維が、該めねじ
のねじ山内を通過してピッチ間を斜行し、かつ該部材内
で該めねじのねじ谷頂部を越えていることを特徴とする
繊維強化プラスチック製部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スポーツ用品、
日用品、産業資材、構造体などに使用される接合構造を
有する各種の繊維強化プラスチック(FRP)部品に関
する。
【0002】
【従来の技術】繊維強化プラスチック(以下FRPと略
す)は、軽量性を生かしてスポーツ用品、日用品、産業
資材などに、金属材料などと併用して広く使用されてい
る。この際、FRP部品と他の部品の接合には、接着と
同様に、かん合、リベット、ボルト接合、ねじ接合など
の機械接合がなされる。
【0003】これら、機械接合のうち、組立、分解が可
能で、金属材料とも容易に接合が可能であるねじ接合が
現場では最も好ましい接合法となっている。
【0004】FRPのねじ接合には、旋盤やタップ加工
でFRPを削ってめねじを形成することが一般に行われ
ているが、機械加工は強化繊維を切断するため、加工面
に繊維が露出して水分などにより繊維と樹脂の界面破壊
が進行して、長期的な接合強度も低下するという問題が
あった。また、機械加工には、高価な工具が必要であっ
た。
【0005】近年、おねじではあるが、繊維端をねじ山
に露出させない方法として、あらかじめ連続繊維にマト
リックスを含浸させた組み紐などにねじ山形状を有する
外枠で圧力をかけてねじ山に賦形するというボルトが提
案されているが、おねじの場合、ねじ山中の繊維の配列
方向は、ねじの軸方向と一致させる必要があるので、繊
維はねじ山を斜めに通過するのではなく、ねじ山に沿っ
た配列となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の機械接合部を有するFRP部品の上述した問題点を解
決し、軽量であるのは勿論のこと、接合強度に優れる、
信頼性・安全性の高いめねじを有するFRP部材を提供
することにある。また、この発明の他の目的は、そのよ
うなFRP部材を低コストで製造する方法を提供するこ
とにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は基本的には、以下の構成を有する。即ち、
めねじ接合部を有する繊維強化プラスチック製部材であ
って、連続である強化繊維が、該めねじのねじ山内を通
過してピッチ間を斜行し、かつ該部材内で該めねじのね
じ谷頂部を越えていることを特徴とする繊維強化プラス
チック製部材である。
【0008】また、この発明は、そのようなFRP部材
を製造する方法として、フィラメントワインド法または
テープワインド法、またはハンドレイアップ法を用いて
ねじ山を形成するFRP部材の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明を実施態様に基づ
いて詳細に説明するが、本発明でいうねじとは、締結用
ねじと総称される締め付けによる軸力の発生により、機
械または構造物の部分と部分を結合したり、それら相互
間の動きを止める目的を達成するものであったり、管と
管、または機械と管を繋ぐ、管継ぎ手などに用いられる
管用ねじ、送りねじあるいは親ねじといわれる機械また
は構造物の部分を本体に対して直線的に移動させるね
じ、デバイダなどの微少な位置調節ねじ、微少寸法を拡
大するねじ、プレスや万力のように大きな力を発生する
ねじ、大きな力と位置調節を兼ねたねじ、張線の張力を
加減するねじ、互いにはめ合わされたおねじとめねじの
一方を直線的に移動させることにより他方を回転させる
機能を持ったねじなどである。本発明のめねじはFRP
製であるが、おねじは、FRP以外の金属やセラミック
等でもかまわない。
【0010】図1は本発明の繊維強化プラスチック製部
材のめねじ部の縦(垂直)断面を示し、図2は横(水
平)断面図を示す。めねじ1は金属製のめねじと同様に
定義(JIS B 0101)されるねじ山2とねじみ
ぞ3を有し、ねじ山の径中心である軸線4、ねじ山角度
5、谷の径6、内径7、ピッチ8も金属めねじと同様に
定義される。
【0011】図7に示したように、本発明においては、
強化繊維9は、めねじのねじ山2内を通過している。し
かし、ねじ山にずっと平行に沿って配列しているわけで
はなく、ねじ山の走向方向に対して、角度を有してお
り、ピッチ間を斜行して、ねじ山を横断してる。そし
て、隣接するピッチ間で、あるいは数ピッチ離れて、ね
じ谷頂部12を越えている。また、図7の左側に示した
ように、強化繊維の一部は、途中から谷径より外側に離
れて、部材内に走向していてもよい。あるいは、再び、
谷径より内側に戻っていても良い。
【0012】図2に示すように、強化繊維9はねじ山内
を通過してピッチ間を斜行し、通過する長さ(L)は繊
維が谷の径と交叉する2箇所AとBの間の繊維長で表さ
れる。
【0013】そして、強化繊維9がねじ山に対して斜行
しているという斜めの程度は、この繊維長にて決定され
る。つまり、繊維長が短いほどねじ山の配向方向に対し
て垂直であり、長いほど並行である。
【0014】本発明におけるねじ山2の形状は、三角、
台形、鋸歯、波形等JIS B 0101、 JIS
B0201〜JIS B0218で定義されているねじ
は勿論のこと、おねじとめねじとの間で軸力のやりとり
が可能である形状ならばいずれの形状でも構わない。平
行ねじ、並目ねじ、細目ねじ、テーパねじなどの特殊ね
じ、右ねじ、左ねじをも含む。
【0015】但し、FRPにおいては、金属とは異な
り、不均質材であるため、鋭角な箇所では繊維は均一分
布と成りやすく、鋭角部の強度がバラツク傾向があるの
で、ねじやまおよびねじみぞに丸みを持たせたもの(図
3)が好ましい。図3の(1)は三角ねじに丸みをもた
せたもので、図3の(2)は台形ねじに丸みをもたせた
もの、図3の(3)は鋸歯ねじに丸みをもたせたもので
ある。
【0016】FRPの場合、ねじ山の角度は、強化繊維
をねじ山に確実に配列させ、かつねじ山強度を大きくす
るという点から、50度〜140度の範囲が好ましい。
本範囲より小さいと強化繊維がねじ山に入り難く成形時
によけいな装置が必要となり、本範囲より大きいとねじ
の強度が低くなる可能性があるからである。さらに、ね
じ山角度が90度〜120度の範囲内であると成形性と
強度がよりバランスされて、より好ましい。
【0017】ねじ山のピッチは、ねじの径にもよるが、
接合長さを短く、コンパクトにするという点から、0.
5〜30mmの範囲内であることが好ましい。実用上
は、1〜20mmの範囲内が標準的で好ましい。
【0018】また、ねじの谷の径と内径の差は0.5〜
10mm程度が強度発現上好ましい。0.5〜6mmの
範囲内であると、ねじ込みに要する力がより小さくてす
む。
【0019】ねじの内径の大きさとしては、特に限定さ
れるものではないが、スポーツ用品や日用品においては
内径が数十センチメートル以下、産業資材においては数
m以下である。
【0020】勿論、超大型の建造物、例えば、海洋構造
物や船舶、車両などにおいてはねじの内径は数mに達し
ても差し支えない。
【0021】本発明において、強化繊維が該部材内で該
めねじのねじ谷頂部を越えているとは、ねじ山内を通過
してピッチ間を斜行した強化繊維が該部材内においてね
じ谷頂部を越えて、となりのねじ山内に入ることを指
す。強化繊維がねじ山内にあるとは、強化繊維が該部材
内においてねじの谷径と内径の間の空間を通過すること
である。ただし、強化繊維が通過する位置の平均値は内
径よりも0.3mm以上外側が好ましく、また、強化繊維
が通過する位置の平均値は、谷径と内径の差の長さの1
0%以上谷径より内側が好ましい。より好ましくは0.
5mm以上、30%以上である。0.3mm未満であると強
度不十分となり、10%以下では強度不十分となるから
である。また、強化繊維がねじ谷頂部を通過する位置の
平均値は谷径よりも0.3mm以上外側が好ましい。より
好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると
繊維が露出して耐環境性が不十分となるからである。
【0022】次に、本発明の強化繊維は図2に示すよう
に、ねじ山部を斜めに通過して配列しているが、繊維端
はねじ山内にはなく、ねじ山と2点以上で交わる。ねじ
山内に繊維端があると繊維端部での応力集中によりねじ
山の強度が不十分となるからである。
【0023】ねじ山の通過の仕方としては、ねじ山の山
頂と接するように通過しても(図2)、ねじ山の山頂か
ら離れて通過しても(図4)、あるいはねじ山内を巻回
して通過しても(図5)差し支えない。
【0024】繊維は必ずしも単数のねじ山内に有る必要
はなく、複数のねじ山に亘り通過していても差し支えな
い。
【0025】また、1本の強化繊維がねじ山内を通過し
てピッチ間を斜行する長さLは、やはり結合部の強度上
の理由から内径の3倍以下であることが好ましい。1本
の繊維がねじ山内に長く存在するということはねじ山を
通過する繊維の数を低下させるので、接合部の強度が不
十分となる可能性があるからである。なお、ねじ山に繰
り返し応力が作用する場合には、Lは内径以下であるこ
とがより好ましい。
【0026】具体的に好ましいねじ山を通過する繊維の
数は、1ピッチあたり、強化繊維に対して50%以上で
あることが好ましい。さらに、好ましくは、80%以上
で、かつ、それらはねじの周に亘り偏ることなく、ほぼ
均一に分布していることがより好ましい。
【0027】なお、ねじ山を通過する強化繊維の長さ
は、成形時に求めることができるが、成形後は、ねじ山
部を切り出して、溶媒中に漬けて樹脂のみを溶かすか、
樹脂のみを焼き飛ばすなどして除去することで求めるこ
とが出来る。
【0028】次に、ねじ山におけるマトリックスに対す
る強化繊維の量は、体積含有率で20%以上80%以下
であることが好ましい。本範囲以下では、繊維を均一に
配列することが難しく、本範囲以上では繊維同士が接触
する確率が大きくなって、ねじ山の強度は強化繊維の量
の割には向上幅が小さいからである。
【0029】成形のし易さからは、体積含有率は30〜
65%、強度の利用率の点では、45から70%が好ま
しい。強化繊維としてガラス繊維および/または炭素繊
維などの高強度繊維の場合は、50〜65%の範囲内で
極めて高い強度を発現する。尚、体積含有率はJIS−
K7052またはJIS−K7075により測定でき
る。
【0030】次に、接合部の強度は、ねじ山から少し離
れた箇所の強度の影響も受けるので、ねじ溝に沿って軸
方向に強化繊維を配列させることも接合部の強度を向上
させる上で有効な手段である。
【0031】この場合の強化繊維はねじ山を通過する必
要はなく、軸線の方向、好ましくは軸線となす角度が0
〜45度の範囲内であれば接合部の強度をかなり向上さ
せることができる。強化繊維が後述する炭素繊維などの
高強度繊維(1600MPa以上の強度の繊維)である
場合は、軸線とのなす角度は0〜60度の範囲として差
し支えない。
【0032】また、ねじ山を通過しない繊維と通過する
繊維の間に応力を伝達させるために、両繊維を交絡させ
たり、両繊維間をステッチしたり、ループ状物で繋いだ
りして拘束しても差し支えない。
【0033】より具体的には、組み紐や3次元織物とし
て交絡させたり、ナイロン糸などの細い繊維でステッチ
したり、釘、針、釣り針のようなフック、ホッチキスの
針等の金属あるいはプラスチック製の留め具で繋ぐこと
である。
【0034】次に、本発明の強化繊維としては炭素繊
維、ガラス繊維、アルミナ繊維、窒化珪素繊維等の無機
繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ナイロンなど
のポリアミド系合成繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリ
エステル系繊維、ポリフェニルスルホン繊維等の有機繊
維といった公知の繊維を使用することができる。
【0035】軽量化という点では炭素繊維あるいはアラ
ミド繊維が最も好ましく、耐衝撃性、経済性という点で
はガラス繊維あるいはポリアミド繊維が好ましい。
【0036】炭素繊維(略称:CF)とは、ポリアクリ
ルニトリル繊維やピッチを原料として、耐炎化、炭化/
黒鉛化工程等を経て製造されるいわゆる炭素繊維(グラ
ファイト繊維とも呼ばれる)のことで、単繊維の直径は
5〜10μmで、高強度タイプのものと、高弾性率タイ
プのものが市販されている。本発明においては、PAN
(ポリアクリルニトリル)系、ピッチ系のいずれでもか
まわないが、中でもPAN系の炭素繊維は上記弾性率、
伸度以外に径方向の強度も高いので、ねじ山の径方向の
強度を向上させ、しいては接合部の温度変化に伴う耐久
性強度を向上させるので特に好ましい。
【0037】一般に、炭素繊維は、単繊維(モノフィラ
メント)を数千〜数十万本単位に束ねたストランド形態
で使用するが、本発明においては、ねじ山へのストラン
ドの配列をを確実にするために、ストランド幅の比較的
小さい、1000〜48000本の範囲の単繊維からな
るCF束が好ましい。
【0038】また、特公平1−272867号公報に示
されている測定方法で得られるストランドの毛羽が30
個/m以下であることがねじ山強度を安定して得るため
に好ましい。毛羽がこれ以上であると、成形中に糸切れ
が発生する可能性があるからである。
【0039】また、ねじ山の剛性が小さいとねじ山の変
形が大きくなり、ねじの脱着を繰り返した場合に疲労し
易くなるので、炭素繊維は、弾性率が230〜600G
Paの範囲内であることが好ましい。尚、炭素繊維の弾
性率と強度は、JIS R7601により測定すること
ができる。
【0040】ガラス繊維は、圧縮/引張の強度バランス
が良く(圧縮強度と引張強度がほぼ等しい)、本発明に
おいて好ましい強化繊維の一つである。ガラス繊維と
は、二酸化珪素(SiO2 )を主成分とするいわゆるE
ガラス、Cガラス、Sガラスなどの繊維状ガラスのこと
で、繊維径は5〜20μm程度のものである。また、炭
素繊維と比較して安価にできるという特長を有する。
【0041】有機繊維とは、アラミド繊維、ナイロンな
どのポリアミド系合成繊維、ポリエチレン繊維などのポ
リオレフィン系合成繊維、ポリエステル系合成繊維、ポ
リフェニルスルフォン繊維、ポリベンゾオキサジン繊
維、ポリ塩化ビニリデン系合成繊維、ポリビニルアルコ
ール系合成繊維、ポリウレタン繊維、フッ素系繊維、フ
ェノール繊維などの産業用および衣料用などに使用され
ている人造繊維である。
【0042】これら有機繊維は、炭素繊維やガラス繊維
のように脆性ではなく、延性でありしなやかで、屈曲さ
せても容易に破断しないという特徴がある。ねじ山の衝
撃エネルギー吸収性能を向上させる効果も有する。
【0043】また、ガラス繊維と比較した場合には、燃
焼が可能であるため廃棄が容易であるという特長、さら
には比重がガラス繊維の約半分であるので部材を極めて
軽量にすることができるという特長もある。
【0044】尚、アラミド繊維は脂環式ポリアミド系と
パラ系アラミドがあり、ナイロン以上に酸に対する抵抗
性があると同時に、強度は2.5GPa〜3.8GPa
と極めて高い。
【0045】上記の炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維を
2種類以上混用して、各繊維の長所を引き出して物性上
も経済上もバランスの取れたFRPを得ることも好まし
い方法である。例えば、(例えば、炭素繊維とガラス繊
維を併用し、炭素繊維の軽量性と、ガラス繊維の耐衝撃
性の特徴をもたせる使い方)も好ましい。
【0046】ねじの軽量性と強度という点から強化繊維
の全てを炭素繊維とすることであるが、経済性からはガ
ラス繊維と炭素繊維を併用することが好ましい。この場
合、ガラス繊維と炭素繊維の量は重量比率で1:1〜
1:2の範囲内であると好ましい。
【0047】また、金属材(ボルト)との電気腐食を低
減させるために、ガラス繊維あるいは有機繊維をねじや
まの外周に配列させても差し支えない。
【0048】また、ねじをねじ込んだ時の剛性を確保す
るという点からは、強化繊維のねじり弾性率は5〜30
GPaの範囲内であると好ましい。繊維のねじり弾性率
は特開平1−124629により測定できる。
【0049】また、ねじ山の熱変形を抑え、各種温度下
でも容易にねじの脱着を可能とするためには、強化繊維
の熱膨張係数は−0.1×10-6〜40×10-6/℃の
範囲内であると好ましい。
【0050】強化繊維の形態としては、連続繊維あるい
は長繊維状であることがこのましく、あらかじめ連続繊
維に樹脂を含浸させてヤーン状にしたヤーンプリプレ
グ、連続繊維織物に樹脂を含浸させた織物プリプレグ目
空き状態にしてねじ山に通したり、ストランド、ロービ
ング、織物状の強化繊維に樹脂を含浸させながらねじ山
を形成しても差し支えない。複数の強化繊維を混用する
場合には、強化繊維同士は合糸状であっても、カバリン
グ糸状などであっても構わない。強度および剛性上の観
点から好ましいのは、ヤーン、ストランドあるいは、ロ
ービング形態である。
【0051】また、後述の樹脂との相性を向上させるた
めに強化繊維には、表面処理が施されいたり、サイジン
グ剤、油剤、カップリング剤、平滑剤などと呼ばれる表
面仕上げ剤が塗布されていてもかまわない。
【0052】また、強化繊維には、摩擦係数を調節する
目的で、ニッケル、銀、アルミニウムなどの金属コーテ
ィング、塗装、メッキ等を施すことも本発明に含まれ
る。
【0053】次に、FRPを構成する樹脂は、エポキシ
樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、
フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、などの熱硬化
性樹脂、あるいは、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポ
リエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポ
リブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、
ポリカーボネート等の樹脂などの熱可塑性樹脂、及びこ
れら樹脂をアロイ化した変性樹脂が挙げられる。
【0054】中でもエポキシ樹脂は、伸度が大きく、繊
維強度の利用率が高いのでねじ山強度を向上させるには
最も好ましい。また、耐環境性、耐熱性、耐衝撃性もエ
ポキシ樹脂およびエポキシ樹脂をベースにして無機粒
子、熱可塑性樹脂、ゴムなどを添加した変性エポキシ樹
脂(アロイ樹脂とも呼ばれる)が好ましい。また、エポ
キシ樹脂は、ボルトの振動減衰(ダンピング)性能上も
好ましい樹脂である。
【0055】エポキシ樹脂以外に好ましい樹脂として
は、ポリエステル樹脂が耐候性、耐環境性に優れていて
耐久性上好ましい。また、ビニルエステル樹脂も耐衝撃
性に優れていて好ましい。
【0056】また、リサイクルという点では、ナイロン
やポリエチレンなどの熱可塑性樹脂が好ましい。
【0057】また、ねじ山では摩擦に伴う発熱があるの
で、熱劣化の少ない、ガラス転移温度が80℃以上の樹
脂であることが好ましい。また、熱伝導率が0.1W/
mK〜100W/mKの範囲内である樹脂が好ましい。
【0058】また、熱伝導率を向上させるために樹脂内
にアルミニウムなどの金属粉やカーボンブラックなど熱
導電性を高める無機粒子などを混入させても差し支えな
い。
【0059】さらに、ねじ山の強度には、樹脂の伸度も
影響するので、好ましくは、樹脂の伸度は1〜10%の
範囲内であることが好ましい。1%以下であると繊維よ
り先に樹脂自体が破壊する可能性があり、10%以上で
あるとクリープする可能性があるからである。尚、樹脂
の伸度はJIS−K7113により求める。
【0060】樹脂の伸度を上記範囲にする手段として、
エポキシ樹脂系の熱硬化樹脂において、硬化剤を柔軟な
構造のものにしたり硬化温度を低下させるなどして、架
橋点間距離を大きくしたり架橋密度を小さくしたりする
ことが有効である。熱可塑樹脂においては、冷却速度を
速めるなどして結晶化度を小さくすることが有効であ
る。
【0061】また、FRP中のボイド量を5%以下に抑
えることでも繊維強化樹脂層の伸度が増大して、ねじ山
強度が向上するので好ましい。ボイド量が3%以下にな
るとさらに強度が向上して、より好ましい。尚、ボイド
量はJIS−K7053またはJIS−K7075によ
り求められる。
【0062】尚、熱応力を低減する必要がある場合に
は、室温(10℃〜40℃)硬化タイプの樹脂が好まし
い。
【0063】次に、製造方法としては、フィランメント
ワインドのマンドレル上に所定の形状のねじ山を形成
し、このマンドレル上に所定量の繊維を巻き付けて、マ
ンドレルを脱芯する方法が挙げられる。この際、繊維に
は樹脂などのマトリックスを予め含浸させておいても、
ドライの繊維を巻き付けた後、樹脂または金属などのマ
トリックスを含浸させても構わない。熱可塑性樹脂など
では、粉体あるいは粒子状にしたマトリックスを予め繊
維に付着させておいて、繊維を配列した後、融解・固化
させることもできる。フィラメントワインド法による成
形は、強化繊維に張力がかけられるので、繊維は蛇行せ
ず、結果としてより高い強度を有するねじ山が得られる
ので好ましい。
【0064】また、その他の製造方法としては、所定の
ねじ山形状を有する金属に、このねじ山に、強化繊維の
ストランドやプリプレグ、織物などの基材をハンドレイ
アップしても製造することができる。この場合、金属を
低融点合金とすると形成されたねじ山を傷めずに金属を
取り除くことができる。また、低融点合金の代わりに、
石膏やガラスとして、成形後に石膏やガラスを割って取
り除いたりすることも可能である。また、低融点合金の
代わりに水溶性ポリマーも耐熱性を必要としない場合
(例えばマトリックスが室温硬化樹脂など)に使用する
ことができる。さらに、水溶性ポリマーの代わりに氷も
マトリックスが低温で硬化する場合や、氷が溶ける前に
マトリックスを除熱して硬化させることが可能な場合に
用いることができる。ハンドレイアップにおいてもマト
リックスは予め含浸させたものであっても、強化繊維を
配列した後に含浸させても構わない。
【0065】また、ねじ山に不純物や異物が付着してい
たりする場合には、繊維を損傷しない程度にねじ山を機
械加工することも好ましい。また、ねじ山に樹脂の含浸
不良部やピットなどの孔がある場合には、マトリックス
と同一の素材などをピットに埋めて修復することも接合
部の信頼性を向上させる上で好ましい。
【0066】最後に、本めねじにねじ込むおねじは、金
属等いかなる材質で合っても差し支えないが、おねじを
線膨張係数の大きい金属とすると、寸法精度が十分でな
くても熱膨張係数の差によりねじ山の脱着が容易とな
る。特に、金属材料としてアルミニウム合金製のおねじ
と組み合わせると温度を低くすることで、ねじを容易に
抜くことができる。また、高温では、ねじが抜けにくく
強いねじ強度、良好なシール性能が得られる。
【0067】また、高張力鋼製のおねじと組み合わせる
とおねじの強度が高いため、極めて高い接合強度が得ら
れる。
【0068】また、FRP製のおねじと組合わせると、
両者の硬度がほぼ同一であるため、おねじとめねじの摩
耗量が同一となり、片方が著しく損傷することがなく、
耐久性上好ましい。特に、強化繊維に炭素繊維が含まれ
る場合には、摺動性が良好であり、ねじの脱着を繰り返
してもねじ山が損傷しにくいという効果、温度変化によ
るねじの緩みがないという効果、軽量、錆ない等の効果
に加え、リサイクル時におねじとめねじを分離する必要
がないという効果が生じて好ましい。
【0069】さらに最後に、接合部の強度は一般に部材
よりも低いが、本発明のように接合部が強くなりすぎる
と、接合部ではなくFRP部材本体の破壊が起こり、接
合部で破壊していれば、補修できたものが、補修不可能
な箇所で破壊する可能性が生じる。従って、ねじ強度
は、10MPa〜200MPaの範囲内であることが好
ましい。
【0070】
【実施例】(実施例1)図6に示すように、外径50m
m、ねじ山角度120、ピッチ10mmのおねじを形成
したマンドレルの中央に径が300mの円柱を取り付
け、フィラメントワインド法により単位糸数が1200
0本からなる炭素繊維束(強度4900MPa、弾性率
240GPa、ねじり弾性率20GPa、線膨張係数1
×10-6/℃)にエポキシ樹脂(伸度3%、熱伝導率
0.5W/mK、ガラス転移温度120℃)を含浸させ
て、ねじ山を繊維が通過するように巻き付け、120℃
で硬化させた後、マンドレルを脱芯して、ねじ山角度1
20度、谷径50mm、ピッチ10mmのめねじを有す
るFRP円筒部材(長さ50mm、外径70mm)を2
本得た。
【0071】本円筒部材の片方を500℃の高温炉に入
れて樹脂を焼きとばして、炭素繊維の状態を調べたとこ
ろ、ねじ山には炭素繊維が切断されずに配列しており、
1ピッチ内にある炭素繊維の体積含有率は50%、炭素
繊維がねじ山を通過する長さは30〜70mmの範囲内
であった。
【0072】次に、もう一方の円筒部材にアルミニウム
製のおねじをねじ込んで、圧縮試験によりねじ山強度を
測定したところ、強度は50MPaであった。
【0073】(比較例1)実施例1において、マンドレ
ルに円柱を取り付けずに、炭素繊維をマンドレルのねじ
山にフープ状のみに巻き付けて、外見上は実施例1同様
のFRP円筒部材を2本得た。
【0074】本円筒部材の1本を500℃の高温炉に入
れて樹脂を焼きとばして、炭素繊維の状態を調べたとこ
ろ、ねじ山には炭素繊維束がねじ山に沿って螺旋状に配
列しており、炭素繊維がねじ山を通過する長さは、60
0mm以上であった。
【0075】実施例1と同様に、もう一方の円筒部材に
アルミニウム製のおねじをねじ込んで、圧縮試験により
ねじ山強度を測定したところ、強度は5MPaであり、
ねじ山部分がスプリング状態に抜け出てきた。
【0076】(実施例2)実施例1と同様にして得た円
筒部材を水中(20℃〜30℃)に2週間浸漬した後、
実施例1と同様に試験したところ、強度は49MPa
で、強度低下はほとんど無かった。
【0077】(比較例2)実施例1と同一の強化繊維と
エポキシ樹脂からなるプリプレグを積層した板材に旋盤
で実施例1と同一の形状のねじ山を形成した。該板材を
実施例2と同様の水中に浸漬し、強度測定したところ、
浸漬後の強度は浸漬前の60%であった。
【0078】(実施例3)外径50mm、ねじ山角度9
°、ピッチ8mmの雄ねじを形成したマンドレルの中央
に径が300mの円柱を取り付け、フィラメントワイン
ド法により単位糸数が6000本からなる炭素繊維束
(強度3500MPa、弾性率240GPa、ねじり弾
性率15GPa、線膨張係数1×10-6/℃)にエポキ
シ樹脂(伸度2.5%、熱伝導率0.8W/mK、ガラ
ス転移温度120℃)を含浸させて、ねじ山に繊維が接
するように巻き付け、120℃で硬化させた後、マンド
レルを脱芯して、ねじ山角度90度、内径48mm、谷
径50mm、ピッチ8mmのめねじを有するFRP円筒
部材(長さ50mm、外径70mm)を2本得た。
【0079】本円筒部材の片方を500℃の高温炉に入
れて樹脂を焼きとばして、炭素繊維の状態を調べたとこ
ろ、ねじ山には炭素繊維が切断されずに配列しており、
1ピッチ内にある炭素繊維の体積含有率は61%、炭素
繊維がねじ山を通過する長さは、20〜100mmであ
った。
【0080】もう一方の円筒部材にアルミニウム製のお
ねじをねじ込んで、圧縮試験によりねじ山強度を測定し
たところ、強度は45MPaであった。
【0081】(実施例4)実施例3において、炭素繊維
束を巻き付ける前に、目付け300g/m2の平織ガラ
ス繊維クロスをねじ山外周に一層巻き付け、その上から
実施例3の炭素繊維束を巻き付けた以外は実施例3と全
く同様にして、ねじ山角度90度、内径48mm、谷径
50mm、ピッチ8mmのめねじを有するFRP円筒部
材(長さ50mm、外径70mm)を2本得た。
【0082】本め円筒部材の片方を500℃の高温炉に
入れて樹脂を焼きとばして、炭素繊維の状態を調べたと
ころ、炭素繊維が切断されずに配列しており、1ピッチ
内にある該炭素繊維の体積含有率は40%(ガラス繊維
の体積含有率は20%)、炭素繊維がねじ山を通過する
長さは、20〜110mmの範囲内であった。
【0083】もう一方の円筒部材にアルミニウム製のお
ねじをねじ込んで、圧縮試験によりねじ山強度を測定し
たところ、強度は35MPaであった。
【0084】(実施例5)実施例4において、目付け3
00g/m2のガラス繊維クロスの代わりに、目付け2
40g/m2の一方向炭素繊維織物を、実施例3の炭素
繊維束を巻き付ける工程途中で一層巻き付けた以外は実
施例4と全く同様にして、ねじ山角度90度、内径48
mm、谷径50mm、ピッチ8mmのめねじを有するF
RP円筒部材(長さ50mm、外径70mm)を2本得
た。
【0085】本円筒部材の片方を500℃の高温炉に入
れて樹脂を焼きとばして、炭素繊維の状態を調べたとこ
ろ、ねじ山には炭素繊維が切断されずに配列しており、
1ピッチ内にある該炭素繊維の体積含有率は65%(炭
素繊維織物を構成していた切断されたの炭素繊維の体積
含有率は10%)、炭素繊維がねじ山を通過する長さ
は、20〜110mmの範囲内であった。
【0086】もう一方の円筒部材にアルミニウム製のお
ねじをねじ込んで、引張試験によりねじ山強度を測定し
たところ、強度は35MPaであった。
【0087】(実施例6)実施例1において、試験温度
を−60℃とした以外は実施例1と同様に試験したとこ
ろ、ねじ山強度は30MPaであった。
【0088】(実施例7)実施例6において、試験温度
を80℃とした以外は実施例5と同様に試験したとこ
ろ、ねじ山強度は45MPaであった。
【0089】(実施例8)実施例1においてねじ山の角
度を30度とした以外は実施例1と全く同様にして、F
RP製の円筒部材を得、試験したところ、ねじ山内の強
化繊維の体積含有率は30%であり、強度は20MPa
であった。
【0090】
【発明の効果】本発明のFRP部材は、接合を目的とす
るめねじを有し、かつ、該めねじのねじ山部を強化繊維
が通過していることを特徴とすることから、他の部材
(例えばおねじを有する金属)部材など)と容易に、か
つ、強く、かつ、信頼性高く接合することができ、これ
までの金属材料と同等の構造部材として使用することが
できるので、FRP業界から極めて望まれている発明と
いえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施態様に係わるめねじの縦
(垂直)断面図である。
【図2】 この発明の一実施態様に係わるめねじの横
(水平)断面図である。
【図3】 この発明の一実施態様に係わるめねじの縦断
面図である。
【図4】 この発明の一実施態様に係わるめねじの横断
面図である。
【図5】 この発明の一実施態様に係わるめねじの横断
面図である。
【図6】 この発明の一実施態様に係わるフィラメント
ワインド成形法の図である。
【図7】 この発明の一実施態様に係わるめねじの透視
斜視図である。
【符号の説明】
1:めねじ 2:ねじ山 3:ねじ溝 4:軸線 5:ねじ山角度 6:谷径 7:内径 8:ピッチ 9:強化繊維 10:マンドレル 11:円筒 12:ねじ谷頂部

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めねじ接合部を有する繊維強化プラスチ
    ック製部材であって、連続である強化繊維が、該めねじ
    のねじ山内を通過してピッチ間を斜行し、かつ該部材内
    で該めねじのねじ谷頂部を越えていることを特徴とする
    繊維強化プラスチック製部材。
  2. 【請求項2】 該強化繊維が該ねじ山を通過する長さ
    が、ねじの周長の3倍以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の繊維強化プラスチック製部材。
  3. 【請求項3】 ねじ山の山角度が60〜170度の範囲
    内であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊
    維強化プラスチック製部材。
  4. 【請求項4】 強化繊維が少なくとも炭素繊維を含むこ
    とを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の繊維
    強化プラスチック製部材。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至は4のいずれかに記載のF
    RP部材を製造するに際して、フィラメントワインド法
    またはテープワインド法、またはハンドレイアップ法を
    用いてねじ山を形成する繊維強化プラスチック製部材の
    製造方法。
JP10131767A 1998-05-14 1998-05-14 繊維強化プラスチック製部材 Pending JPH11325024A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007100482A (ja) * 2005-10-07 2007-04-19 Okinawa Pref Gov 樹脂製ボールジョイントのその製造方法
JP2010538480A (ja) * 2007-09-04 2010-12-09 コメット アクチェンゲゼルシャフト 可変容量真空コンデンサ用駆動システム

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