JPH11322808A - 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法 - Google Patents

架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法

Info

Publication number
JPH11322808A
JPH11322808A JP10127572A JP12757298A JPH11322808A JP H11322808 A JPH11322808 A JP H11322808A JP 10127572 A JP10127572 A JP 10127572A JP 12757298 A JP12757298 A JP 12757298A JP H11322808 A JPH11322808 A JP H11322808A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hyaluronic acid
crosslinked
crosslinked hyaluronic
acid sponge
derivative
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10127572A
Other languages
English (en)
Inventor
Takamitsu Kuroyanagi
能光 黒柳
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP10127572A priority Critical patent/JPH11322808A/ja
Publication of JPH11322808A publication Critical patent/JPH11322808A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 架橋ヒアルロン酸スポンジと補強材等の他の
材料とを組み合わせた架橋ヒアルロン酸スポンジ材料に
おいて、医療用途での使用にも十分な程度に空隙率が高
く、さらにピンセットでの処理や縫合にも十分耐え得る
ような機械的強度を有する架橋ヒアルロン酸スポンジ材
料およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を、ヒア
ルロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物を凍
結真空乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジか
らなる二つの層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の
層間に積層されたポリマーメッシュ層とを含む構成と
し、また、それを架橋化工程、凍結真空乾燥工程、アル
コール洗浄・水洗浄工程、再凍結真空乾燥工程を含む方
法により製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ材料およびその製造方法に関し、詳しくは、架橋
ヒアルロン酸スポンジと補強材等のその他の材料を組み
合わせた架橋ヒアルロン酸スポンジ材料であって、医療
用途に使用できる程度に、空隙率が高く、さらに機械的
強度に優れる架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその
製造方法に関する。
【0002】なお、本明細書において「スポンジ」の用
語は、独立気泡あるいは連続気泡を有する多孔質体につ
いて用いられる。
【0003】
【従来の技術】ヒアルロン酸は、動物組織の細胞間質に
多く、具体的には、眼硝子体、臍帯、関節液、皮膚、軟
骨、その他の結合組織に存在するムコ多糖の一つであ
り、ヒアルロン酸およびその誘導体は水溶液やゲルの形
態で、眼科手術の助剤や外科手術後の組織の癒着を防止
するための組成物として医療用途で幅広く利用されてい
る。これらのうちでも、ヒアルロン酸およびその誘導体
の水溶液は、機械的安定性に関する要求が低い際に用い
られるが、機械的安定性が要求される様な場合には架橋
ヒアルロン酸ゲルが用いられている。
【0004】しかし、求められる機械的安定性がより大
きい場合には、上記ゲル形態のヒアルロン酸でもその要
求に十分答えられない状況があった。例えば、架橋ヒア
ルロン酸ゲルの成形物は、ピンセットで処理する際や縫
合する際に容易に破壊されてしまう点で問題であり、上
記ピンセット処理や縫合にも耐えうる様なより高い機械
的強度が求められていた。さらに、架橋ヒアルロン酸ゲ
ル成形物は、生理食塩水中に膨潤状態で貯蔵しなければ
ならないと言った保管面での問題も有していた。
【0005】そこで、特公平7−30124号公報等に
記載されているように、架橋ヒアルロン酸ゲル成形物か
ら水分を除去して、スポンジ構造の架橋ヒアルロン酸成
形物を作製することにより、上記問題を解決しようとす
る試みがなされるようになった。しかしながら、上記の
ように架橋ヒアルロン酸ゲル成形物から単に水分を除去
するだけで架橋ヒアルロン酸スポンジを作製したので
は、保管面での問題は解決され、また機械的強度もある
程度まで改善されるものの、十分と言えるものではなか
った。そのため、特公平7−30124号公報において
は、さらに上記で得られた架橋ヒアルロン酸スポンジに
圧力をかけて圧縮することにより機械的強度を改善して
いるが、今度はスポンジ構造が破壊されてしまい、保水
性を発現できない点で好ましいとは言えなかった。
【0006】一方、架橋ヒアルロン酸スポンジの機械的
強度を改善するために、前記スポンジと補強材等の他の
材料を組み合わせた架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の開
発も行われているが、空隙率、機械的強度がともに十分
な材料は得られていないのが現状である。
【0007】このような状況から、架橋ヒアルロン酸ス
ポンジと補強材等の他の材料とを組み合わせた架橋ヒア
ルロン酸スポンジ材料において、医療用途での使用にも
十分な程度に空隙率が高く、さらにピンセットでの処理
や縫合にも十分耐え得るような機械的強度を有する架橋
ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法の開発が
望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点か
らなされたものであり、架橋ヒアルロン酸スポンジと補
強材等の他の材料とを組み合わせた架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ材料において、医療用途での使用にも十分な程度
に空隙率が高く、さらにピンセットでの処理や縫合にも
十分耐え得るような機械的強度を有する架橋ヒアルロン
酸スポンジ材料およびその製造方法を提供することを課
題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を行ったところ、ヒアルロン
酸および/またはその誘導体を分子間架橋後、凍結真空
乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジとポリマ
ーメッシュを組み合わせて、前記架橋ヒアルロン酸スポ
ンジの間にポリマーメッシュを組み込んだ構成とした架
橋ヒアルロン酸スポンジ材料が、適当な空隙率を維持し
たまま、ピンセットでの処理や縫合にも十分耐え得るよ
うな機械的強度を有することを見出し、さらに、上記架
橋ヒアルロン酸スポンジとして、分子間架橋化、凍結真
空乾燥後のヒアルロン酸分子間架橋物を、メタノール等
のアルコールで洗浄後水洗浄し、再度凍結真空乾燥して
得られる架橋ヒアルロン酸スポンジを用いることによ
り、上記空隙率、機械的強度等の特性がより向上される
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち本発明は、ヒアルロン酸および/
またはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて
得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの層
と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に積層され
たポリマーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン酸スポン
ジ材料である。
【0011】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジに用い
られるポリマーメッシュ層は、具体的には、100〜3
00メッシュのメッシュ幅を有する、ポリアミド、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリエステルから選ばれる
素材のポリマーメッシュにより構成することができる。
【0012】また本発明は、ヒアルロン酸および/また
はその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得ら
れる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの層と、前
記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に積層されたポリ
マーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料
を製造する方法であって、下記(A)〜(D)工程を含
む方法により架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの
層を作製し、その層間にポリマーメッシュ層を積層する
ことを特徴とする架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造
方法を提供する。 (A)ヒアルロン酸および/またはその誘導体の水溶液
と架橋剤を混合、濃縮して、前記ヒアルロン酸および/
またはその誘導体の分子間架橋物を得る工程、(B)前
記(A)工程で得られた分子間架橋物を凍結真空乾燥さ
せる工程、(C)前記(B)工程後の分子間架橋物をア
ルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄する工程、
(D)前記(C)工程後の分子間架橋物を再び凍結真空
乾燥して架橋ヒアルロン酸スポンジを得る工程。
【0013】上記本発明の製造方法においては、(A)
工程でヒアルロン酸および/またはその誘導体の水溶液
と架橋剤を混合するが、その際に用いる架橋剤として、
好ましくは水溶性エポキシ化合物を挙げることができ
る。
【0014】また、上記本発明の製造方法においては、
(C)工程で前記(B)工程後の分子間架橋物をアルコ
ール洗浄するが、その際に用いるアルコールとして、好
ましくはメタノールを挙げることができる。
【0015】さらに本発明は、ヒアルロン酸および/ま
たはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得
られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの層と、
前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に積層されたポ
リマーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材
料の製造方法であって、下記(A’)〜(E’)工程を
含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造方法を提供す
るものである。 (A’)ヒアルロン酸および/またはその誘導体の水溶
液と架橋剤を混合して混合液を作製する工程、(B’)
前記(A’)工程で得られた混合液を、ポリマーメッシ
ュを中間に挟み込むかたちでポリマーメッシュと共に成
形用容器に導入し、前記混合液を濃縮して、前記ヒアル
ロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物の中間
層に前記ポリマーメッシュが積層された積層体を得る工
程、(C’)前記(B’)工程で得られた積層体を凍結
真空乾燥させる工程、(D’)前記(C’)工程後の積
層体をアルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄する
工程、(E’)前記(D’)工程後の積層体を再び凍結
真空乾燥して前記架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を得る
工程。
【0016】この様な本発明の製造方法においては、
(A’)工程でヒアルロン酸および/またはその誘導体
の水溶液と架橋剤を混合して混合液を作製するが、その
際に用いる架橋剤として、好ましくは水溶性エポキシ化
合物を挙げることができる。
【0017】また、上記本発明の製造方法においては、
(D’)工程で前記(C’)工程後の積層体をアルコー
ル洗浄するが、その際に用いるアルコールとして、好ま
しくはメタノールを挙げることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の架橋ヒアルロン
酸スポンジ材料およびその製造方法について具体的に説
明する。 (1)本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料 本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料は、ヒアルロン
酸および/またはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空
乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる
二つの層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に
積層されたポリマーメッシュ層とを含むものである。
【0019】上記本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材
料を構成するポリマーメッシュ層は、ポリマー素材をメ
ッシュ状に成形したものからなる。ポリマーメッシュを
構成するポリマー素材としては、メッシュ状に成形する
ことが可能な素材であれば、特に制限されないが、具体
的には、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリエステル等が挙げられる。これらのうちでも、本発
明においてはポリアミドが好ましく用いられる。また、
本発明に用いるポリマーメッシュのメッシュ幅として、
具体的には、100〜300メッシュ程度、好ましくは
200〜300メッシュ程度が挙げられる。メッシュ幅
が100メッシュ未満だと、創面に適用した際にメッシ
ュが新生組織内に埋入することがあり、300メッシュ
を越えると網目が微小となりスポンジ層とメッシュの接
着性が低下することがある。
【0020】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を
構成するポリマーメッシュ層の厚さとしては、架橋ヒア
ルロン酸スポンジ材料の形状や架橋ヒアルロン酸スポン
ジ層の厚さ、これが用いられる用途等にもよるが、シー
ト状にして医療用途に用いる場合には、概ね0.2〜
1.0mm、好ましくは、0.3〜0.5mm程度とす
ることができる。
【0021】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を
構成する架橋ヒアルロン酸スポンジ層は、ヒアルロン酸
および/またはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾
燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる。
【0022】上記架橋ヒアルロン酸スポンジは、より具
体的には、原料のヒアルロン酸および/またはその誘導
体と架橋剤とを水性溶媒中で反応させて分子間架橋物と
し、適切な条件下で凍結真空乾燥することにより得られ
る。原料として用いるヒアルロン酸および/またはその
誘導体の分子量は、特に限定されるものではないが、具
体的には、平均分子量が好ましくは50万〜200万程
度のものが、より好ましくは100万〜200万程度の
ものが挙げられる。
【0023】また、ヒアルロン酸の誘導体としては、ヒ
アルロン酸ナトリウム塩、ヒアルロン酸カリウム塩等の
ヒアルロン酸金属塩や、ヒアルロン酸のヒドロキシル
基、カルボキシル基等がエーテル化、エステル化、アミ
ド化、アセタール化、ケタール化されて得られるヒアル
ロン酸誘導体等が挙げられる。これらのヒアルロン酸誘
導体のうちでも、本発明においては、ヒアルロン酸ナト
リウムが好ましく用いられる。
【0024】この様なヒアルロン酸および/またはその
誘導体は、従来公知の方法で製造することが可能であ
る。あるいは、ヒアルロン酸およびその誘導体について
は市販品も多いので、これら市販品を本発明に用いるこ
とも可能である。
【0025】上記架橋剤としては、上述のヒアルロン酸
および/またはその誘導体の分子を架橋させる作用を有
するものであれば特に制限されず、例えば、エーテル、
エステルもしくはアミド結合を生じる二官能性または多
官能性の従来公知の架橋剤を用いることが可能である。
【0026】ヒアルロン酸および/またはその誘導体と
架橋剤とを水性溶媒中で反応させて分子間架橋物とする
方法についても、従来公知の方法が適用され得る。ま
た、得られた分子間架橋物の乾燥方法については、凍結
真空乾燥法が用いられるが、これについても従来公知の
方法が特に制限されずに適用可能である。
【0027】この様にして得られる架橋ヒアルロン酸ス
ポンジが、特に制限なく、本発明の架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ材料の架橋ヒアルロン酸スポンジ層に用いられ
る。本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料において前
記架橋ヒアルロン酸スポンジ層は、上記ポリマーメッシ
ュ層を挟み込んでその両側に積層される。架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ層の厚さは、特に制限されるものではな
く、架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の形状や用途によっ
て適宜選択される。また、ポリマーメッシュ層の両側で
異なってもよく、同じであってもよい。例えば、本発明
の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料をシート状にして医療
用途に用いる場合には、両側の架橋ヒアルロン酸スポン
ジ層ともに、概ね2〜20mm、好ましくは3〜5mm
程度の厚さとすることができる。
【0028】また、本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ
材料において架橋ヒアルロン酸スポンジ層とポリマーメ
ッシュ層を積層する方法であるが、特に制限されず、単
に架橋ヒアルロン酸スポンジ層/ポリマーメッシュ層/
架橋ヒアルロン酸スポンジ層の順に3層を重ね合わせる
ことで積層体とすることも可能であり、また、例えば、
加圧や接着剤を用いる等により各層同士を緩やかにある
いは強固に結合して積層体とすることも可能である。
【0029】さらに、本発明の架橋ヒアルロン酸スポン
ジ材料は、以下に説明する本発明の各製造方法により製
造することが可能であり、これらの製造方法により得ら
れる架橋ヒアルロン酸スポンジ材料は多孔性や機械的強
度に優れるものである。 (2)本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造方
法 本発明においては、第1の製造方法として、ヒアルロン
酸および/またはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空
乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる
二つの層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に
積層されたポリマーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン
酸スポンジ材料を製造する方法であって、(A)ヒアル
ロン酸および/またはその誘導体の水溶液と架橋剤を混
合、濃縮して、前記ヒアルロン酸および/またはその誘
導体の分子間架橋物を得る工程(以下、「架橋化工程」
という)、(B)前記(A)工程で得られた分子間架橋
物を凍結真空乾燥させる工程(以下、「第1の凍結真空
乾燥工程」という)、(C)前記(B)工程後の分子間
架橋物をアルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄す
る工程(以下、「洗浄工程」という)、および、(D)
前記(C)工程後の分子間架橋物を再び凍結真空乾燥し
て架橋ヒアルロン酸スポンジを得る工程(以下、「第2
の凍結真空乾燥工程」という)を含む方法により架橋ヒ
アルロン酸スポンジからなる二つの層を作製し、その層
間にポリマーメッシュ層を積層することを特徴とする製
造方法を提供する。
【0030】なお、本発明においては、ヒアルロン酸お
よび/またはその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥
させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つ
の層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に積層
されたポリマーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ材料を製造する方法として、上記架橋ヒアルロン
酸スポンジ層を作製した後、これをポリマーメッシュ層
と積層する製造方法と、後で詳細に説明する、架橋ヒア
ルロン酸スポンジ層の形成と前記架橋ヒアルロン酸スポ
ンジ層とポリマーメッシュ層との積層とを同時に行う製
造方法と、を提供するものであるが、両者を区別するた
めに、本明細書においては、前者を本発明の第1の製造
方法、後者を本発明の第2の製造方法と呼ぶこととす
る。
【0031】以下、本発明の第1の製造方法を説明する
が、(A)〜(D)工程を含む架橋ヒアルロン酸スポン
ジからなる二つの層の作製方法について、まず、その詳
細を説明する。 (A)架橋化工程 本製造方法において架橋ヒアルロン酸スポンジを製造す
る際には、まずヒアルロン酸および/またはその誘導体
の水溶液と架橋剤を混合、濃縮して、前記ヒアルロン酸
および/またはその誘導体の分子間架橋物を得る。
【0032】この製造方法で用いるヒアルロン酸および
/またはその誘導体については、上述したのと同様なも
のを使用することができる。本工程では、この様なヒア
ルロン酸および/またはその誘導体を適当量の水に溶解
した水溶液がまず作製される。前記水溶液におけるヒア
ルロン酸および/またはその誘導体の濃度は、用いるヒ
アルロン酸および/またはその誘導体の種類や分子量等
にもよるが、概ね0.5〜1.5重量%、好ましくは
1.0〜1.5重量%程度とすることができる。また、
溶媒として用いる水としては、pH5〜6のイオン交換
水が好ましい。
【0033】次いで、ヒアルロン酸および/またはその
誘導体の水溶液に、架橋剤が添加混合される。本製造方
法において用いる架橋剤は、ヒアルロン酸および/また
はその誘導体を分子間架橋させる作用を有するものであ
って、後の(C)洗浄工程におけるアルコール好ましく
はメタノールを用いた洗浄によって十分に除去可能なも
のであれば特に制限されない。この様な架橋剤として、
具体的には、水溶性エポキシ化合物、グルタールアルデ
ヒド等が挙げられるが、本発明において好ましくは、水
溶性エポキシ化合物が用いられる。
【0034】水溶性エポキシ化合物として、具体的に
は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセ
ロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシ
ジルエーテルなどが挙げられる。架橋剤として水溶性エ
ポキシ化合物を用いた場合、ヒアルロン酸および/また
はその誘導体の水溶液に添加される水溶性エポキシ化合
物の量は、ヒアルロン酸および/またはその誘導体の繰
り返し単位1モルに対して概ね1/2〜1/10モルの
割合であることが好ましく、より好ましくは1/5〜1
/10モル程度、特に好ましくは1/5モル程度の添加
量である。
【0035】上記ヒアルロン酸および/またはその誘導
体の水溶液への架橋剤の添加混合により、ヒアルロン酸
および/またはその誘導体は分子間架橋するが、分子間
架橋反応を促進するために、混合液を必要に応じて攪拌
しながら加熱することが好ましい。加熱温度は、架橋剤
として水溶性エポキシ化合物を用いた場合には、約30
〜60℃が好ましく、より好ましい温度は、約40〜6
0℃であり、特に好ましい温度は約50℃である。60
℃を越えるような高い温度で加熱すると混合液に気泡が
生じて、得られる架橋ヒアルロン酸スポンジのスポンジ
構造の均一性が十分でない場合がある。30℃より低い
温度では、分子間架橋反応速度が小さくなり、所望の濃
度の分子間架橋物を得るのに長時間を要することがあ
る。
【0036】この様にして、上記混合液を加熱すること
により、混合液中ではヒアルロン酸および/またはその
誘導体の架橋剤、好ましくは、水溶性エポキシ化合物に
よる分子間架橋が進み、混合液は濃縮されて、ヒアルロ
ン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物が得られ
る。本製造方法におけるヒアルロン酸および/またはそ
の誘導体の分子間架橋物を得るためには、用いるヒアル
ロン酸および/またはその誘導体の水溶液における溶質
濃度や、架橋剤の種類、添加量等にもよるが、架橋剤と
して水溶性エポキシ化合物を用いた場合には、前記混合
液を概ね体積が初期体積の1/2〜1/10になるまで
濃縮することが好ましい。さらに、得られる架橋ヒアル
ロン酸スポンジの機械的強度を考慮すれば、混合液は初
期体積の1/5程度まで濃縮することがより好ましい。
【0037】上記の様に濃縮されて得られたヒアルロン
酸および/またはその誘導体の分子間架橋物を以下の
(B)工程(第1の凍結真空乾燥工程)に用いる。
【0038】なお、ここで得られるヒアルロン酸および
/またはその誘導体の分子間架橋物の形状で、最終的な
架橋ヒアルロン酸スポンジが得られるので、この工程で
分子間架橋物を所望の形状に成形することが好ましい。
具体的には、シート状、棒状、チューブ状等の形状が挙
げられる。 (B)第1の凍結真空乾燥工程 本製造方法においては、上記(A)工程で得られたヒア
ルロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物は、
次いで凍結真空乾燥される。凍結真空乾燥の条件は大き
な氷の結晶を形成させないために、約−30〜−85
℃、好ましくは、約−50〜−85℃、より好ましく
は、−85℃程度の温度で急速冷凍される。真空条件
は、50〜5mmHg程度が好ましく、より好ましくは
10〜5mmHg程度である。
【0039】凍結真空乾燥処理の時間は、凍結真空乾燥
装置の大きさやヒアルロン酸および/またはその誘導体
の分子間架橋物の量や形状に依存するので、それらに合
わせて適宜選択すればよい。 (C)洗浄工程 上記(B)工程で得られたヒアルロン酸および/または
その誘導体の分子間架橋物の乾燥物は、次いで、未反応
の架橋剤を除去するためにアルコールで洗浄される。用
いるアルコールとしては特に制限されないが、具体的に
は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等が挙げられるが、本発明において好ましくは、メタ
ノールが挙げられる。
【0040】洗浄方法としては、上記未反応の架橋剤が
除去できる方法であれば制限されないが、具体的な洗浄
方法として、上記分子間架橋物の乾燥物に対して十分
量、例えば、容量で10〜50倍量のアルコールに、上
記分子間架橋物の乾燥物を浸漬し、必要に応じて攪拌や
振盪を加えながら適当な時間、例えば、12〜24時間
放置する方法等が挙げられる。また、この様なアルコー
ルによる洗浄を、必要に応じて、2回以上行ってもよ
い。
【0041】この様にしてアルコールにより、上記分子
間架橋物の乾燥物を洗浄することにより、未反応の架橋
剤を完全に除去することが可能となり、さらに第2の凍
結真空乾燥の工程後に得られる架橋ヒアルロン酸スポン
ジの最終形態が良好となり、スポンジ構造も強固なもの
となり得る。また、アルコール洗浄後の分子間架橋物自
体、強度的に優れるものであり、次いで行われる水によ
る洗浄によってヒアルロン酸および/またはその誘導体
の分子間架橋物の形状が破壊されるようなことがなくな
る。
【0042】上記アルコール洗浄後のヒアルロン酸およ
び/またはその誘導体の分子間架橋物は、次いで、必要
に応じて分子間架橋物中のアルコールを適当な方法で除
去した後、水で洗浄される。用いる水としては中性のイ
オン交換水が好ましい。この水での洗浄は、水溶性の未
反応物の抽出除去と、この後行われる第2の凍結真空乾
燥工程を円滑に行うためにアルコールを完全に排除する
ことを目的として行われる。水での洗浄方法について
は、上記アルコール洗浄と同様にして行うことができ
る。例えば、上記アルコール洗浄後の分子間架橋物を十
分量の、具体的には、容量で10〜30倍量の水に浸漬
し、必要に応じて攪拌や振盪を加えながら適当な時間、
例えば、12〜24時間放置する方法等が挙げられる。
また、この様な水による洗浄を、必要に応じて、2回以
上行ってもよい。
【0043】なお、前記水洗浄後のヒアルロン酸および
/またはその誘導体の分子間架橋物は、水分を含んで膨
潤した状態のものである。 (D)第2の凍結真空乾燥工程 本製造方法においては、上記(C)工程で得られたヒア
ルロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物の水
膨潤物は、次いで凍結真空乾燥される。凍結真空乾燥の
条件は、上記(B)工程における第1の凍結真空乾燥の
条件と同様とすることができる。具体的には、約−30
〜−85℃、好ましくは、約−50〜−85℃、より好
ましくは、−85℃程度の温度で急速冷凍する。真空条
件は、50〜5mmHg程度が好ましく、より好ましく
は10〜5mmHg程度である。
【0044】凍結真空乾燥処理の時間は、凍結真空乾燥
装置の大きさやヒアルロン酸および/またはその誘導体
の分子間架橋物の量や形状に依存するので、それらに合
わせて適宜選択すればよい。
【0045】この様にして上記(C)工程で得られたヒ
アルロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物の
水膨潤物が凍結真空乾燥されることで、本製造方法によ
る架橋ヒアルロン酸スポンジが得られる。
【0046】この様な製造方法により得られる架橋ヒア
ルロン酸スポンジは、上記(A)工程で分子間架橋した
際の含水状態の形状を維持したまま水分が十分に除去さ
れたものであるので空隙率が十分に高く、さらにアルコ
ールによる洗浄と水による洗浄によって未反応の原料成
分、具体的には水溶性エポキシ化合物等の架橋剤等を除
去しているので、医療用具としての安全性等に優れるも
のである。
【0047】この様にして作製される架橋ヒアルロン酸
スポンジは、上記(A)工程後の形状を維持しており、
得られた架橋ヒアルロン酸スポンジをそのまま架橋ヒア
ルロン酸スポンジ材料の架橋ヒアルロン酸スポンジ層と
することができる。あるいは、得られた架橋ヒアルロン
酸スポンジをこの段階で適当な大きさや形状に加工して
それを架橋ヒアルロン酸スポンジ層としてもよい。従っ
て、本発明の製造方法において用いる架橋ヒアルロン酸
スポンジからなる層の二つを得るためには、上記(A)
工程において、本発明の製造方法に用いる架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ層の形状に対応する成形用容器の二個に上
記混合液を注入して、これを濃縮した後、(B)〜
(D)工程を行ってもよいし、上記(A)〜(D)工程
により適当な形状の架橋ヒアルロン酸スポンジを作製
し、これを本発明の製造方法に用いる架橋ヒアルロン酸
スポンジ層の形状に加工してもよい。
【0048】上記本発明の第1の製造方法においては、
次いで、上記の様にして得られる架橋ヒアルロン酸スポ
ンジからなる二つの層の間にポリマーメッシュ層を積層
するが、積層方法については、上述したのと同様の方法
とすることができる。
【0049】次に、本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ
材料の第2の製造方法について説明する。この製造方法
によれば架橋ヒアルロン酸スポンジ層の形成と前記架橋
ヒアルロン酸スポンジ層とポリマーメッシュ層との積層
が同時に行われるため、作業性や層間の結合性の点で有
利な製造方法と言える。
【0050】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の
第2の製造方法では、(A’)ヒアルロン酸および/ま
たはその誘導体の水溶液と架橋剤を混合して混合液を作
製する工程、(B’)前記(A’)工程で得られた混合
液を、ポリマーメッシュを中間に挟み込むかたちでポリ
マーメッシュと共に成形用容器に導入し、前記混合液を
濃縮して、前記ヒアルロン酸および/またはその誘導体
の分子間架橋物の中間層に前記ポリマーメッシュが積層
された積層体を得る工程、(C’)前記(B’)工程で
得られた積層体を凍結真空乾燥させる工程、(D’)前
記(C’)工程後の積層体をアルコールで洗浄した後、
さらに、水で洗浄する工程、および、(E’)前記
(D’)工程後の積層体を再び凍結真空乾燥して、ヒア
ルロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物を凍
結真空乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジか
らなる二つの層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の
層間に積層されたポリマーメッシュ層とを含む架橋ヒア
ルロン酸スポンジ材料を得る工程を含むことを特徴とす
る。
【0051】ここで、上記本発明の第2の製造方法にお
ける(A’)工程は、上記本発明の第1の製造方法にお
いて説明した架橋ヒアルロン酸スポンジの作製方法にお
ける(A)工程での混合液の作製と全く同様に行うこと
ができる。
【0052】次いで行われる(B’)工程では、上記
(A’)工程で得られた混合液を、ポリマーメッシュを
中間に挟み込むかたちでポリマーメッシュと共に成形用
容器に導入する。成形用容器は、最終的に得られる架橋
ヒアルロン酸スポンジ材料の形状に合わせて適宜選択さ
れる。例えば、成形用容器の形状は得られる架橋ヒアル
ロン酸スポンジ材料が、シート状、棒状、チューブ状等
になる様な形状とすることができる。
【0053】前記ポリマーメッシュと混合液を成形用容
器に導入する方法は、シート状の架橋ヒアルロン酸スポ
ンジ材料を作製する場合には、例えば、まず成形用容器
にポリマーメッシュを挟む一方の側の架橋ヒアルロン酸
スポンジ層の厚さを勘案して適当量の混合液を注入し、
その上にポリマーメッシュを置き、さらにその上にポリ
マーメッシュを挟むもう一方の側の架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ層の厚さを勘案して適当量の混合液を注入する方
法が挙げられる。また、棒状やチューブ状の架橋ヒアル
ロン酸スポンジ材料を作製する場合には、例えば、円筒
状に成形されたポリマーメッシュを成形用容器に設置し
てから、その両側に上記混合液を導入する方法等を挙げ
ることができる。
【0054】さらに、前記ポリマーメッシュと混合液を
成形用容器に導入した後に行われる混合液の濃縮につい
ては、上記本発明の第1の製造方法において説明した架
橋ヒアルロン酸スポンジの作製方法における(A)工程
での混合液の濃縮と全く同様に行うことができる。但
し、上記(A)において濃縮の際に、必要に応じて行わ
れる攪拌は、作製しようとする架橋ヒアルロン酸スポン
ジ材料の形状によっては、行えない場合がある。
【0055】この様にして(B’)工程が行われた後、
引き続き(C’)、(D’)、(E’)の各工程が行わ
れるが、これらの工程はそれぞれ、上記本発明の第1の
製造方法において説明した架橋ヒアルロン酸スポンジの
作製方法における(B)、(C)、(D)の各工程に対
応するものであり、前記(B)、(C)、(D)各工程
について上記で説明したのと全く同様にして、
(C’)、(D’)、(E’)それぞれの工程を行うこ
とができる。
【0056】この様な本発明の第2の製造方法によれ
ば、ポリマーメッシュを架橋ヒアルロン酸スポンジに架
橋化前に組み込んでいるため、その後の各工程、特に洗
浄工程における作業性が特に向上される。
【0057】上記の様にして得られる本発明の架橋ヒア
ルロン酸スポンジ材料は、医療用途での使用にも十分な
程度に空隙率が高く、さらにピンセットでの処理や縫
合、さらには医療用ホッチキスの使用等にも十分耐え得
るような機械的強度を有するものである。
【0058】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料
は、そのまま、例えば、創傷被覆材として組織欠損部の
修復を目的とした医療材料や細胞組み込み型培養皮膚の
マトリックスとして利用可能である。例えば、本発明の
架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を創傷被覆材として用い
る場合には、架橋ヒアルロン酸スポンジは、それ自体は
非水溶性であるが高空隙率のスポンジ構造を有すること
から高吸水能力を有し、それにより創面の湿潤状態を保
持することが可能となり、優れた創傷治癒効果を発揮す
ることが可能である。また、中間層のポリマーメッシュ
は、架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の機械的強度の向上
に大きく貢献して、縫合や医療用ホッチキスの使用等を
可能にしているばかりでなく、それ自体、半閉鎖型の創
傷被覆材として機能して、創面から出る体液等の流出を
阻止する等により、本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ
材料の優れた創傷被覆効果に寄与している。
【0059】さらに、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ材
料に、架橋剤を含有しないヒアルロン酸水溶液を含浸さ
せ、凍結真空乾燥させることにより、ヒアルロン酸ゲル
よりも優れた特性をもつ癒着防止用の医療材料とするこ
とができる。
【0060】また、本発明により得られた架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ材料の片面にコラーゲン膜あるいはヒアル
ロン酸膜を貼付することが可能であり、これにより優れ
た機械的強度と癒着防止効果を有するラミネート型癒着
防止膜の作製が可能となる。
【0061】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
【0062】
【実施例1】 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造 ヒアルロン酸(分子量200万、紀文フードケミファ
製)30gをpH6のイオン交換水2Lに溶解して1.
5%ヒアルロン酸水溶液を作製した。このヒアルロン酸
水溶液に水溶性エポキシ化合物(EX810:エチレン
グリコールジグリシジルエーテル)をヒアルロン酸の繰
り返し単位1モルに対して1/5モルの割合で添加して
撹拌した。得られた混合液の42.7mLを、直径9c
mのプラスチックシャーレに注入し、その上に直径9c
mの300メッシュのナイロンメッシュ(厚さ:0.2
mm)を載せ、さらにナイロンメッシュの上に前記混合
液の42.7mLを注入し、次いでこれを50℃で8時
間静置することで、ナイロンメッシュの上下の混合液の
体積が初期体積の約1/5になるまで濃縮した。こうし
て、前記ヒアルロン酸の分子間架橋物の中間層にナイロ
ンメッシュが積層された積層体を得た。
【0063】得られた積層体を−85℃、10mmHg
で48時間の凍結真空乾燥を行い積層体のヒアルロン酸
分子間架橋物層をスポンジ状にした。次いで、この積層
体をシャーレから取り外し、多量のメタノール中で、約
24時間、撹拌洗浄して未反応の水溶性エポキシ化合物
を除去した。メタノール洗浄後、積層体をメタノールか
ら取り出し、スポンジ内に含まれているメタノールをペ
ーパタオルで除去し、次いで多量のイオン交換水中で、
約24時間、撹拌洗浄した。ここで、メタノール洗浄お
よび水洗浄に用いるメタノールおよび水の量は、上記積
層体10枚に対して1L程度が適当である。
【0064】水洗浄後、ヒアルロン酸分子間架橋物層に
適量のイオン交換水を含んだ積層体をプラスチックシャ
ーレに戻し、再度−85℃、10mmHgで48時間の
凍結真空乾燥により架橋ヒアルロン酸スポンジからなる
二つの層間にナイロンメッシュが積層された架橋ヒアル
ロン酸スポンジ材料を作製した。
【0065】得られた架橋ヒアルロン酸スポンジ材料
は、架橋ヒアルロン酸スポンジ部分が含水状態の際の形
状を維持したまま乾燥されたものであり空隙率が高く、
ナイロンメッシュを内蔵しているため十分な機械的強度
を有するものであった。
【0066】
【実施例2】 創傷被覆材としての評価試験 上記実施例1で得られた架橋ヒアルロン酸スポンジ材料
の創傷被覆材として評価を以下の動物実験により行っ
た。 <動物実験1>SDラットの背部に直径3cmの全層皮
膚欠損創を作製した。実施例1で得られた架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ材料を直径3cmに切り取り、これを前記
全層皮膚欠損創に適用して、一般的な縫合方法により創
周辺と縫合固定した。なお、実施例1の架橋ヒアルロン
酸スポンジ材料は、ナイロンメッシュが組み込まれてい
るため創周辺との縫合が十分に可能な機械的強度を有し
ていた。さらに、この上にバイオクルーシブ(ポリウレ
タンフィルム製創傷被覆材(商品名:J&J製))を適
用し、滅菌ガーゼを載せた上から伸縮性包帯で固定し
た。架橋ヒアルロン酸スポンジ材料適用の2週間後に、
これを取り外して創面を観察した。
【0067】また、対照実験として、上記架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ材料の替わりにソーブサン(アルギン酸カ
ルシウム塩創傷被覆材)を用いた以外は、上記と全く同
様にして、創傷被覆材の動物の皮膚欠損創への適用実験
を行った。
【0068】結果は、実施例1の架橋ヒアルロン酸スポ
ンジ材料を適用したラットは、適用2週間後の観察で、
顕著な肉芽組織形成とそれに伴う創面積の減少(創面積
は直径約2cmまでに減少)が認められた。また、ソー
ブサン適用のラットは、適用2週間後には、創周辺とほ
ぼ同じ高さまで肉芽組織が形成されたが創面積は大きく
変化していなかった(創面積の直径は約2.8cmであ
った)。さらに、アルギン酸線維が一部創面に残留しや
や白色を呈しているのが観察された。 <動物実験2>SDラットの腹部に直径3cmで中央に
直径5mmの皮膚を温存した全層皮膚欠損創を作製し
た。上記と同様に実施例1で得られた架橋ヒアルロン酸
スポンジ材料を直径3cmに切り取り、これを前記全層
皮膚欠損創に適用して、一般的な縫合方法により創周辺
と縫合固定した。なお、実施例1の架橋ヒアルロン酸ス
ポンジ材料は、ナイロンメッシュが組み込まれているた
め創周辺との縫合が十分に可能な機械的強度を有してい
た。さらに、架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の上にバイ
オクルーシブ(ポリウレタンフィルム製創傷被覆材(商
品名:J&J製))を適用し、その上から伸縮性包帯で
固定した。架橋ヒアルロン酸スポンジ材料適用の1週間
後に、これを取り外して創面を観察した。観察後、再度
上記と同様に架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を適用しそ
の1週間後(実験開始2週目)に、再び創面を観察し
た。また、対照実験は、バイオクルーシブと伸縮性包帯
のみとした。
【0069】結果は、実施例1の架橋ヒアルロン酸スポ
ンジ材料を適用したラットは、適用1週間後の観察で、
肉芽組織形成とそれに伴う創面積の減少と中央島状皮膚
の拡大(直径約7mmまでに拡大)が認められ、2週間
後の観察では、創はほぼ閉鎖され中央島状皮膚の拡大が
認められた。また、対照実験のラットは、1週間後の観
察で、肉芽組織形成が認められず、2週間後の観察で
は、肉芽組織形成がわずかに認められたものの、中央島
状皮膚の拡大は認められなかった。
【0070】これらの結果から、本発明の架橋ヒアルロ
ン酸スポンジ材料は、創傷被覆材として使用するのに十
分な機械的強度を有し、また架橋ヒアルロン酸スポンジ
層の有する高い吸水性と保水性により優れた創傷治癒能
力を有することが明らかである。
【0071】
【発明の効果】本発明の架橋ヒアルロン酸スポンジ材料
は、医療用途での使用にも十分な程度に空隙率が高く、
さらにピンセットでの処理や縫合にも十分耐え得るよう
な機械的強度を有する。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸および/またはその誘導体
    の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得られる架橋ヒア
    ルロン酸スポンジからなる二つの層と、前記架橋ヒアル
    ロン酸スポンジ層の層間に積層されたポリマーメッシュ
    層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料。
  2. 【請求項2】 ポリマーメッシュ層が、100〜300
    メッシュのメッシュ幅を有する、ポリアミド、ポリエチ
    レン、ポリプロピレン、ポリエステルから選ばれる素材
    のポリマーメッシュからなる請求項1記載の架橋ヒアル
    ロン酸スポンジ材料。
  3. 【請求項3】 ヒアルロン酸および/またはその誘導体
    の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得られる架橋ヒア
    ルロン酸スポンジからなる二つの層と、前記架橋ヒアル
    ロン酸スポンジ層の層間に積層されたポリマーメッシュ
    層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を製造する方
    法であって、下記(A)〜(D)工程を含む方法により
    架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの層を作製し、
    その層間にポリマーメッシュ層を積層することを特徴と
    する架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造方法: (A)ヒアルロン酸および/またはその誘導体の水溶液
    と架橋剤を混合、濃縮して、前記ヒアルロン酸および/
    またはその誘導体の分子間架橋物を得る工程、(B)前
    記(A)工程で得られた分子間架橋物を凍結真空乾燥さ
    せる工程、(C)前記(B)工程後の分子間架橋物をア
    ルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄する工程、
    (D)前記(C)工程後の分子間架橋物を再び凍結真空
    乾燥して架橋ヒアルロン酸スポンジを得る工程。
  4. 【請求項4】 (A)工程で用いる架橋剤が水溶性エポ
    キシ化合物である請求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 (C)工程で用いるアルコールがメタノ
    ールである請求項3記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 ヒアルロン酸および/またはその誘導体
    の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得られる架橋ヒア
    ルロン酸スポンジからなる二つの層と、前記架橋ヒアル
    ロン酸スポンジ層の層間に積層されたポリマーメッシュ
    層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料の製造方法で
    あって、下記(A’)〜(E’)工程を含む架橋ヒアル
    ロン酸スポンジ材料の製造方法: (A’)ヒアルロン酸および/またはその誘導体の水溶
    液と架橋剤を混合して混合液を作製する工程、(B’)
    前記(A’)工程で得られた混合液を、ポリマーメッシ
    ュを中間に挟み込むかたちでポリマーメッシュと共に成
    形用容器に導入し、前記混合液を濃縮して、前記ヒアル
    ロン酸および/またはその誘導体の分子間架橋物の中間
    層に前記ポリマーメッシュが積層された積層体を得る工
    程、(C’)前記(B’)工程で得られた積層体を凍結
    真空乾燥させる工程、(D’)前記(C’)工程後の積
    層体をアルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄する
    工程、(E’)前記(D’)工程後の積層体を再び凍結
    真空乾燥して前記架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を得る
    工程。
  7. 【請求項7】 (A’)工程で用いる架橋剤が水溶性エ
    ポキシ化合物である請求項6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 (D’)工程で用いるアルコールがメタ
    ノールである請求項6記載の製造方法。
JP10127572A 1998-05-11 1998-05-11 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法 Pending JPH11322808A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10127572A JPH11322808A (ja) 1998-05-11 1998-05-11 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10127572A JPH11322808A (ja) 1998-05-11 1998-05-11 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11322808A true JPH11322808A (ja) 1999-11-26

Family

ID=14963373

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10127572A Pending JPH11322808A (ja) 1998-05-11 1998-05-11 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11322808A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001057121A1 (fr) * 2000-02-03 2001-08-09 Menicon Co., Ltd. Moulage spongieux comprenant un polymere hydrosoluble et procede pour en controler les pores
JP2003055402A (ja) * 2001-08-13 2003-02-26 Shiseido Co Ltd 架橋ヒアルロン酸スポンジの製造方法
CN102210884A (zh) * 2010-04-07 2011-10-12 南京理工大学 抗菌促愈创伤敷料的制备方法
CN114478831A (zh) * 2022-01-21 2022-05-13 湖南益安生物科技有限公司 一种新型高分子材料及其制备方法与应用

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001057121A1 (fr) * 2000-02-03 2001-08-09 Menicon Co., Ltd. Moulage spongieux comprenant un polymere hydrosoluble et procede pour en controler les pores
JP2003055402A (ja) * 2001-08-13 2003-02-26 Shiseido Co Ltd 架橋ヒアルロン酸スポンジの製造方法
JP4728527B2 (ja) * 2001-08-13 2011-07-20 株式会社 資生堂 架橋ヒアルロン酸スポンジの製造方法
CN102210884A (zh) * 2010-04-07 2011-10-12 南京理工大学 抗菌促愈创伤敷料的制备方法
CN114478831A (zh) * 2022-01-21 2022-05-13 湖南益安生物科技有限公司 一种新型高分子材料及其制备方法与应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1259269B1 (en) Agent for the treatment of wounds
CA2861027C (en) Collagen structure, and method for producing collagen structure
AU2002249528B2 (en) A method of preparing a collagen sponge, a device for extracting a part of a collagen foam, and an elongated collagen sponge
US6175053B1 (en) Wound dressing material containing silk fibroin and sericin as main component and method for preparing same
US7098315B2 (en) Method of preparing a collagen sponge, a device for extracting a part of a collagen foam, and an elongated collagen sponge
AU2002249528A1 (en) A method of preparing a collagen sponge, a device for extracting a part of a collagen foam, and an elongated collagen sponge
WO2015145457A1 (en) A ready to use biodegradable and biocompatible device and a method of preparation thereof
JPH0350550B2 (ja)
CN110743044B (zh) 一种口腔科骨引导再生胶原膜及其制备方法
CN113663120B (zh) 止血海绵垫芯及其制备方法
CN101314055A (zh) 一种脱细胞真皮基质复合膜材料及其制备方法
JP2002233542A (ja) 創傷被覆材及びその製造方法
JPH11322808A (ja) 架橋ヒアルロン酸スポンジ材料およびその製造方法
JP4044291B2 (ja) 水膨潤性高分子ゲルおよびその製造法
JP4728527B2 (ja) 架橋ヒアルロン酸スポンジの製造方法
CN117462724A (zh) 一种可水/血液触发的HNTs/MSt膨胀海绵及其制备方法与应用
ES2323126T3 (es) Agente hemostatico que contiene alcohol polivinilico y su puesta a disposicion para la medicina.
CN115737904A (zh) 一种可降解产生呼吸孔的皮肤修复膜及其制备方法
JPH11319066A (ja) 創傷被覆材
CN116284492A (zh) 多糖基高分子交联剂、多糖基生物材料及制备方法与应用
CN107349464B (zh) 一种新型医用止血凝胶敷料的制备方法
KR102409461B1 (ko) 조직 접착용 키토산 하이드로젤
JPH11322807A (ja) 架橋ヒアルロン酸スポンジの製造方法
KR101971652B1 (ko) 자가 팽창형 고분자 매트릭스, 그 제조 방법 및 의학적 응용
JP2005046228A (ja) マット及びそれを用いた医療品

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20050426

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20050427